JP3779701B2 - 樹脂成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂成形品に係り、更に詳しくは、表面がゲルコートで覆われた成形品において、内側の樹脂層部分が直接表出する場合であっても、当該樹脂層部分とゲルコートとの光沢の違いが目立つことなく表現できる樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、注型法によって洗面カウンター等の樹脂成形品を成形するための型は、洗面ボールの下面側若しくは外面側を形成するFRP等からなる下型と、上面側若しくは内面側を形成するFRP等からなる上型とからなり、所定の注入口から樹脂材料を注入して硬化させることによりキャビティ形状に対応した洗面カウンターを成形することができる。
このような洗面カウンターの成形に際しては、樹脂材料の注入に先立ってキャビティ面にゲルコートを塗布しておき、このゲルコートにより、樹脂成形品としての洗面カウンターに光沢を与えることが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような成形においては、キャビティ内面とパーティングラインとの交差位置若しくは領域には、ゲルコートが存在しない状態となるため、内側の樹脂層部分がゲルコートで覆われることなく表出することとなる。この場合、ゲルコートと樹脂層との光沢度の相違によってゲルコートを有しない樹脂層が目立ってしまう、という不都合を招来する。
【0004】
また、洗面ボールの前部領域がカウンタートップの前端よりも前方に突出するタイプの樹脂成形品を成形する場合において、その突出した領域を形成するキャビティ面とパーティングラインとの交差位置を角張った形状(いわゆるピン角)の成形型を用いると、成形後において、前記交差位置に対応する成形品部分にクラックが発生してしまう場合が多く、成形歩留まりを著しく低下させてしまう、という不都合がある。
【0005】
そこで、本発明者は、成形型における前記交差位置を一定の曲面とすることで、成形後のクラックの発生を防止できることを知見した。
しかしながら、成形型がFRP等によって形成されて面精度が金型に及ばないこと、及び、曲面形状を採用したことにより、当該部位からパーティングラインに沿ってバリが発生し易くなる。そして、このバリを除去したときに、前記交差位置を含む一定領域のゲルコートが除去されてしまうことにより、内側の樹脂層部分が露出してゲルコートを有しない部分が目立ってしまう、という不都合を招来する。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、樹脂層が部分的に露出してもゲルコートとの光沢度差を所定値以下に抑えてゲルコートを有しない部分を目立たなくすることができる樹脂成形品を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、成形後に製品面として表出する部位にクラックを発生することがないとともに、バリを除去して樹脂層が部分的に露出してもゲルコートとの光沢度差を所定値以下に抑えてゲルコートを有しない部分を目立たなくすることができる樹脂成形品を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、内側樹脂層の表面にゲルコートが設けられた成形品を成形するキャビティ面とパーティングラインとの交差領域に半径1.5mm以上の曲面が設けられた成形型によって成形される樹脂成形品であって、
前記成形型のパーティングラインにより生じたバリを除去して前記成形品の一部の樹脂層が露出したときに、当該樹脂層の光沢度とゲルコートの光沢度との差を15以下とすることで樹脂層部分とゲルコートとの光沢の違いが目立たない状態とされる、という構成を採り、これにより、前記交差領域に対応する成形品側のクラック発生を防止することができる。
前記交差領域の曲面が半径1.5mm未満であると、成形品を型内で完全硬化しない状態で脱型して二次硬化させる場合に、前記曲面に対応する成形部分にクラックが発生し易くなる。
【0011】
更に、本発明は、略水平面内に位置するカウンタートップと、このカウンタートップに一体形成された洗面ボールとを備え、
前記洗面ボールの前部領域がカウンタートップの前端よりも前方に突出する形状に設けられるとともに、表面にゲルコートが設けられた樹脂成形品であって、
前記洗面ボールの前部領域に対応する位置にパーティングラインが形成されるとともに、このパーティングラインとキャビティ面との交差領域に半径1.5mm以上の曲面が設けられた成形型を用い、
前記パーティングラインにより生じたバリを除去するにあたり、洗面ボールの前部領域の上部外周面と上端面とをバイアスする方向に面取りして樹脂層を部分的に露出させたときに、当該樹脂層の光沢度とゲルコートの光沢度との差を15以下とすることで樹脂層部分とゲルコートとの光沢の違いが目立たない状態とされる、という構成を採ることができる。このような構成とすることで、カウンタートップの前端から突出する洗面ボールの前部領域における上部でバリを除去した跡が目立たない状態となる。
【0012】
本発明において、前記曲面の半径は3mm以上とすることが好ましい。3mm以上とすることで、前述した硬化後のクラック発生を一層確実に防止することができる。
また、本発明に係る樹脂成形品は、人工大理石等の樹脂層(人大層)と、その表面に設けられた透明なゲルコートを備えたものであれば対象とすることができる。樹脂層の成形材料としては、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ樹脂等が例示でき、これに、水酸化アルミ等の充填材、及び硬化剤が所定量添加される。
前記ゲルコートの光沢度は80、好ましくは85以上とされる一方、樹脂層の光沢度は75以上、好ましくは80以上とされ、且つ、ゲルコートと樹脂層の光沢度差が15以下、好ましくは10以下とされる。ここで、光沢度は、BYK株式会社製の「micro−TRI−gloss光沢計」において、60°光沢の値で特定されるものである。ゲルコート及び樹脂層の光沢度をそれぞれ80,75以上としたのは、その程度ないと良好な光沢を得ることができないためであり、光沢度差を15以下としたのは、樹脂層部分が直接表出しても、ゲルコートとの光沢の違いが僅かとなり、ゲルコートを有しない樹脂層部分が目立たなくなるからである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書における方向若しくは位置を示す用語は、図1中矢印A方向から見た場合を基準とし、「前」とは矢印A方向から見た場合の手前側を示す一方、「後」とは、同奥行き側について用いられる。
【0014】
図1には、本発明に係る樹脂成形品が洗面カウンターに適用された実施形態の概略斜視図が示されている。この図において、樹脂成形品としての洗面カウンター10は、内部に所定の収容空間を備えたキャビネット11の上部に配置されたカウンタートップ12と、このカウンタートップ12と一体成形されるとともに、当該カウンタートップ12の領域内に設けられた洗面ボール13とを備えた形状に設けられている。この洗面カウンター10は、キャビネット11上に配置された状態で、少なくとも外側から見ることのできる領域若しくは面にゲルコートを備えた製品とされている。
【0015】
前記カウンタートップ12は略水平面内に位置する平面部15と、この平面部15の後部に位置する立ち上がり部16とを備え、平面部15の左側領域を部分的に落ち込ませることによって前記洗面ボール13が一体に形成されている。
【0016】
前記洗面ボール13は平面視で略円形をなし、後方寄りの中央部が最も低くなる椀形状に設けられている。この洗面ボール13の前部領域13Aは、カウンタートップ12の前端12Aよりも前方(手前側)に突出する形状に設けられ、当該前部領域13Aの外面側、すなわち、洗面ボール13の内面の反対側となる面は、キャビネット11で覆われることなく目視される表出面(製品面)となってゲルコートを備えている。
【0017】
図2には、前記洗面カウンター10の成形型20が示されている。この成形型20は、カウンタートップ12及び洗面ボール13の下面側を形成する下型20Aと、上面側を形成する上型20Bとからなり、前部領域13Aに対応する位置にパーティングラインPLが形成されている。下型20Aにおいて、前記前部領域13Aの上部外周面を形成する型内面部分20CとパーティングラインPLとの交差領域P1は、半径1.5mmの曲面として形成されている。また、カウンタートップ12の後端面12Dを形成する型内面部分20DとパーティングラインPLとの交差領域P2も同様に半径1.5mmの曲面が形成されている。
【0018】
前記洗面カウンター10の成形に際しては、図3に示されるように、予めキャビティ面内にゲルコート24を塗布しておく。そして、成形型20を閉型した後に樹脂材料Mを図示しない注入口から注入する。次いで、所定時間経過して完全硬化する前の段階で脱型し、取り出された洗面カウンター10を二次硬化により完全硬化させる。
【0019】
完全硬化した洗面カウンター10において、洗面ボール13の前部領域13Aにおける上部外周面はパーティングラインによって生じたバリ25が繋がった状態となる(図4参照)。このバリ25は、前部領域13Aにおける上部外周面26と上端面27との間をバイアスする方向に沿って除去して研磨することによって完全に除去される。このとき、ゲルコート24を表面に有しない樹脂層Mの部分M1が前端上部に表れることになるが、ゲルコート24と樹脂層Mとの光沢度が15以下となる材料を用いているため、その光沢の違いは識別できない程度となって、ゲルコート24を表面に有しない樹脂層Mの部分M1を目立たなくすることができる。
【0020】
従って、このような実施例によれば、洗面ボール13の前部領域13Aの上部外周面26に対応するキャビティ面20CとパーティングラインPLとの交差領域P1に、半径1.5mm以上の曲面を設けたから、成形後に当該曲面に対応した成形品側にクラックを発生させることがない、という効果を得ることができる。しかも、パーティングラインPLによって生じたバリ25を除去して樹脂層の部分M1が直接外面に表出することとなっても、ゲルコート24との光沢の違いが僅かになって目立たなくすることができる。従って、カウンタートップ12の前端12Aから洗面ボール13の前部領域13Aが突出するタイプの洗面カウンター10とした場合であっても、製品としての価値を低下させることなく成形することが可能となる。
【0021】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、材料、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材料などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材料などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0022】
例えば、前記実施形態では、洗面ボール13の前部領域13Aがカウンタートップ12の前端12Aよりも前方に突出する形状を備えた洗面カウンター10を対象としたが、表面にゲルコート24が設けられる樹脂成形品一般に適用することができ、その中でも製品面に対応する位置にパーティングラインが形成される樹脂成形品に特に好適に適用することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、樹脂層の表面にゲルコートを設けた樹脂成形品において、樹脂層部分がゲルコートで覆われることなく直接表出するようにしても、樹脂層部分とゲルコートとの光沢の違いが目立つことがない、という従来にない優れた効果を奏する樹脂成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例に係る洗面カウンターの概略斜視図。
【図2】 図1のB−B線に沿って示した場合の成形型の断面図。
【図3】 図2の要部拡大断面図。
【図4】 バリを除去した状態を示す要部拡大断面図。
【符号の説明】
10…洗面カウンター(樹脂成形品)、12…カウンタートップ、13…洗面ボール、13A…前部領域、26…上部外周面、27…上端面、M…樹脂材料(樹脂層)、M1…樹脂層の部分、P1,P2…交差領域、PL…パーティングライン
Claims (2)
- 内側樹脂層の表面にゲルコートが設けられた成形品を成形するキャビティ面とパーティングラインとの交差領域に半径1.5mm以上の曲面が設けられた成形型によって成形される樹脂成形品であって、
前記成形型のパーティングラインにより生じたバリを除去して前記成形品の一部の樹脂層が露出したときに、当該樹脂層の光沢度とゲルコートの光沢度との差を15以下とすることで樹脂層部分とゲルコートとの光沢の違いが目立たない状態とされていることを特徴とする樹脂成形品。 - 略水平面内に位置するカウンタートップと、このカウンタートップに一体形成された洗面ボールとを備え、
前記洗面ボールの前部領域がカウンタートップの前端よりも前方に突出する形状に設けられるとともに、表面にゲルコートが設けられた樹脂成形品であって、
前記洗面ボールの前部領域に対応する位置にパーティングラインが形成されるとともに、このパーティングラインとキャビティ面との交差領域に半径1.5mm以上の曲面が設けられた成形型を用い、
前記パーティングラインにより生じたバリを除去するにあたり、洗面ボールの前部領域の上部外周面と上端面とをバイアスする方向に面取りして樹脂層を部分的に露出させたときに、当該樹脂層の光沢度とゲルコートの光沢度との差を15以下とすることで樹脂層部分とゲルコートとの光沢の違いが目立たない状態とされていることを特徴とする樹脂成形品。
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