JP3778666B2 - 真空脱ガス装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、取鍋内の溶鋼(溶融金属)からH2 等のガスを除去して精錬するための真空脱ガス装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
脱ガス処理によって溶鋼を精錬するRH式などの真空脱ガス装置は、おおよそ図6に示すような構造になっている。すなわち、RH式の真空脱ガス装置1はガスを上向きに吸引する真空槽2を備えており、この真空槽2の下部に、煉瓦層で内張りされた一対の環流管3′を上下に貫通するようにして設け、この左右環流管3′の下面に、取鍋4内の溶鋼に浸漬する浸漬管5をフランジ結合によって着脱自在に取り付けている。なお、浸漬管5を着脱自在に構成しているのは、当該浸漬管5並びに環流管3の内張り補修を容易にするためである。
【0003】
また、浸漬管5の下部には図示しない不活性ガスの吹き込み管を設けており、真空槽2内を負圧状態にすることに加えて、一方の浸漬管5から不活性ガスを吹き込むことにより、溶鋼6を一方の環流管3′から真空槽2内に上昇させる。そして、真空槽2で脱ガスされた溶鋼6は他方の環流管3′から取鍋4内に流下する。このような溶鋼6の循環を繰り返して取鍋4の内の溶鋼6を満遍なく脱ガスすることにより、溶鋼6の精錬が行われる。
【0004】
図7(A)は一般的な環流管3′の内張り構造を示す縦断正面図、同図(B)は部分平面図である。この図に示すように、一般的な環流管3′の内張りは、多数個の煉瓦8a′,9a′、10a′を平面視で環状に重ね合わせた3段程度の環状煉瓦群8′,9′,10′で構成されている。各煉瓦8a′,9a′、10a′は分図(B)に示すように平面視台形に形成されている。
【0005】
この場合、各環状煉瓦群8′,9′,10′における煉瓦8a′,9a′、10a′の各側面は、環流管3′の軸線(鉛直線)Oと平行に延びるように形成している。換言すると、周方向に隣接した煉瓦8a′,9a′、10a′の合わせ面11′が環流管3′の軸線Oと平行に延びるように設定している。言うまでもないが、各煉瓦8a′,9a′、10a′の合わせ面11′にはモルタル等の目地を充填している。
【0006】
この環流管3′は、溶鋼6を取鍋4と真空槽2との間に循環させるためのスノーケルの役割をもつもので、その内部を溶鋼6が流通するため他の部分に比べて内張りの損傷が著しい。図7の形態での内張り構造の損傷形態としては、目地剤の接着力が溶鋼の浮力と上昇流とに負けて最上段の煉瓦8a′が剥離・浮上してしまう現象と、特に最上段に位置した煉瓦8a′間の合わせ面11′の目地が溶鋼6の流れによって溶損する現象とが代表的なものとして挙げられる。
【0007】
ところで、浸漬管5も損傷が激しいが、浸漬管5は取り外しできるためその補修・交換は比較的容易である。これに対して環流管3′は真空槽2の下部に一体的に組み込まれているため、環流管3′の交換・補修には大幅な操業停止が余儀なくされ、このため浸漬管5と違って頻繁に交換・補修することができない。そこで、図8(A)(B)及び図9に示すように、環流管3′の筒状内張り層の耐久性を向上するための手段が幾つか提案されている。
【0008】
このうち図8(A)は実開平5−14145号公報に記載されているもので、最上段の環状煉瓦群8′の外周面と、上段の環状煉瓦群8′が嵌まる外殻煉瓦層(外巻き煉瓦)12′の内周面とを、上方に向かって窄まるテーパ−面に形成することにより、煉瓦8a′の浮き上がりを防止せんとしたものである。また、図8(B)は実開平5−14146号公報に記載されているのもので、最上段の環状煉瓦群8′の外周面と外殻煉瓦層12′の内周面とに、環状煉瓦群8′が下方から嵌合する環状の段差13′を形成することにより、煉瓦8a′の浮き上がり防止を図ったものである。
【0009】
更に図9に示すのは実開平4−13038号公報に記載されているもので、この従来例では、最上段の環状煉瓦群8′として正面視台形の煉瓦8a″を使用し、この煉瓦8a″を、上方に向かって窄まる姿勢と下方に向かって窄まる姿勢とに交互に姿勢を変えて重ね合わせたものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図8(A)のように環状煉瓦群8′の外周をテーパーに形成しただけでは、テーパ−による抜け止め効果を確実なものにするには、テーパー角度をある程度以上に大きくしなければならないが、かくすると、煉瓦8a′の上端部の肉厚が薄くなって煉瓦8a′の溶損代が少なくなると言う問題がある。
【0011】
また、図8(B)の構造では、抜け止め効果を確実にするために段差13′の寸法を大きくすると、操業・操業停止に伴って膨張・収縮が繰り返されるたびに段差13′の箇所に熱応力が集中して作用するため、段差13′に沿って亀裂が発生して煉瓦8a′が上下に分離してしまい、係止効果が損なわれるケースがしばしば発生していた。
【0012】
更に、これら図8(A)(B)の何れとも、円周方向に隣接した煉瓦8a′の合わせ面11′は溶鋼6の上昇方向と同じ鉛直方向に延びているため、溶鋼6によって目地の箇所が溶損する現象は抑制できなかった。他方、図9の構造では、逆台形状の姿勢に配置した煉瓦8a″は溶鋼6の浮力及び上昇流によって抜け勝手になるため、最上段の煉瓦8a″の剥離・浮上は何ら抑止できないのであった。
【0013】
本発明は、これら従来技術の問題を解消して、環流管の内張りの耐久性を向上することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、内張り層を備えた真空槽の下部に、溶融金属が流れる環流管を上下に貫通するように設けており、前記環流管の内周面を、多数個の煉瓦を平面視環状に並べて成る 環状煉瓦群が上下に複数段積み重ねられた煉瓦層で内張りしており、更に、最上段の環状煉瓦群のうち真空槽の外周寄りに位置した一部を前記真空層の内張り層で押さえ固定している真空脱ガス装置に係るものである。
【0015】
そして、前記複数段の環状煉瓦群のうち最上段に位置した環状煉瓦群は、環流管の放射方向視において左右の側面が同じ角度で傾斜して上向きに窄まった台形の煉瓦と、環流管の放射方向視において左右の側面が同じ角度で傾斜して下向きに窄まった逆台形の煉瓦とを備えており、前記台形の煉瓦は真空槽の軸心寄りの部位に配置され、前記逆台形の煉瓦は真空槽の内張り層と重なる部位に配置されており、台形の煉瓦と逆台形の煉瓦との間に、環流管の放射方向視で左右側面が前記台形の煉瓦の側面に向けて倒れるように傾斜した多数の傾斜煉瓦群を周方向に並べて配置している。
【0016】
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明において従来と同じ構成の箇所は図6と同じ符号を用いる。
本願発明の実施形態の説明に先立ち、図1〜図4で参考例を説明する。図1は第1参考例を示す縦断正面図、図2は第2参考例を示す縦断正面図、図3は図1及び図2の部分平面図である。図1の参考例では、環流管3の内張り層は上中下3段の環状煉瓦群8,9,10によって構成されており、そのうち中段と下段の環状煉瓦群9,10における煉瓦9a,10aの側面は、軸心Oと平行に延びるように形成している。
【0018】
他方、最上段の環状煉瓦群8を構成する全煉瓦8aは、環流管3の軸心から半径外向き方向を見た放射方向視において菱形に形成することにより、相隣接した煉瓦8aの合わせ面11が円周方向に沿って同じ方向に傾くようにした傾斜煉瓦群と成している。換言すると、各煉瓦8aの側面を、軸線Oに対してそれぞれ同じ方向に同じ角度αで傾斜させている。
【0019】
以上のように内張りした環流管3を図6のような真空脱ガス装置1に適用すると、最上段の環状煉瓦群8の煉瓦8aの接合面11がそれぞれ同じ方向に向けて傾斜していることにより、接合面11が溶鋼6の浮力及び上昇流に対して交叉した状態になる。換言すると、最上段の環状煉瓦群8における各煉瓦8aが互いに抜けないように押さえ合った状態になる。従って、最も溶鋼6の浮力と上昇流とに晒される最上段の煉瓦8aの剥離・抜けが防止される。
【0020】
また、煉瓦8aの合わせ面11に充填した目地が溶鋼流の流れ方向と交叉していることから、目地に対する溶鋼の浸透が低減し、目地の先行溶損が抑制される。本発明において最上段煉瓦8aの剥離・浮上防止の効果は、このことも大きく作用している(なお、図1では溶鋼6の浮力及び上昇流の方向を点線の矢印で示している)。
【0021】
図2の第2参考例では、上段の環状煉瓦群8を図1と同様の構造にする一方、中段の環状煉瓦群9をも、各煉瓦9aを適宜角度βで傾斜させた傾斜煉瓦群に構成している。この場合、中段の環状煉瓦群9の煉瓦9aは、上段の環状煉瓦群8の煉瓦8aとは逆方向に傾斜させている。この第2参考例の場合、αとβの値は同じでも良いし互いに異ならせても良い。
【0022】
上記両参考例のように環流管3の内張りを複数段の環状煉瓦群で構成する場合、環状煉瓦群の段数は3段には限らず2段や4段以上であっても良い。また、全段の環状煉瓦群8,9,・・の煉瓦8a,9a・・を傾斜させても良い。更に、複数段の環状煉瓦群8,9,・・の煉瓦8a,9a・・を傾斜させる場合、傾斜方向を各環状煉瓦群8,9,・・とも同じに設定しても良い。
【0023】
図4に示すのは第3参考例である。すなわち、この参考例は、環流管3の内張りを1つの環状煉瓦群14によって構成した場合において、当該一つの環状煉瓦群14の各煉瓦14aをすべて円周方向に沿って同じ方向に傾斜させることにより、内張り層の全体を傾斜煉瓦群にて成したものである。
【0024】
図5に示すのは本願発明の実施形態であり、このうち(A)は平面図、(B)は(A)矢印Bの範囲で展開した状態の正面図である。この実施形態では、前記第1及び第2参考例と同様に内張り層は3段の環状煉瓦群8,9,10から成っており、上段の環状煉瓦群8のみを傾斜煉瓦群からなる構成として、その上面のうち真空槽2の外周寄りの一部を、真空槽2の内張り層2aによって押さえ固定している。真空槽2の内張り層2aは、平面視で環流管3の各環状煉瓦群8,9,10と内接するように設定している。
【0025】
上段の環状煉瓦群8を構成するに当たって、真空槽2の軸心S寄りの部位に、半径外向き方向(放射方向)から見て上窄まりの台形に形成した煉瓦8bを配置し、この台形の煉瓦8bを挟んだ左右両側の煉瓦群8aを、それぞれ台形の煉瓦8aに寄りかかるように互いに逆向きに同じ角度αで傾斜した状態で重ね合わせている。
【0026】
そして、環流管3の軸心Oを挟んで前記台形の煉瓦8bと反対側に位置した部位には、環流管3の半径外向き方向から見た放射方向視で下窄まりの逆台形に形成した煉瓦8cを嵌め込むことにより、上段の環状煉瓦群8を隙間のない状態に形成している。このように構成すると、内張り施工に際しては、最初に台形の煉瓦8bを積んでからその両側に同時に菱形の煉瓦8aを重ねていけば良いため、内張り施工を能率良く行える利点がある。
【0027】
また、使用状態では、台形の煉瓦8bは左右両側から菱形の煉瓦8aによって押さえられているから、台形の煉瓦8bの浮き上がりは生じない一方、逆台形の煉瓦8bは真空槽2の内張り煉瓦層2aによって押さえ固定されているから、溶鋼6と接した各煉瓦8a,8b,8cに浮き上がりは生じない。更に、溶鋼6に晒されている各煉瓦8a,8b,8cの側面は傾斜しているから、それら煉瓦8a,8bが溶鋼6の浮力や上昇流によって浮き上がることを防止又は著しく抑制できると共に、合わせ面11の箇所の溶損を抑制できる。
【0028】
上記実施形態において傾斜姿勢にした煉瓦8a,8b・・・の肉厚や幅寸法、高さ寸法は特に制約を受けることはない。また、各環状煉瓦群8,9,・・・における煉瓦8a,9a・・の個数は環流管3の内径によって異なるが、煉瓦の製造性の面から8〜40個とする。一般的には20〜40個が望ましい。
【0029】
煉瓦8a,9a・・・の傾斜角度α、βは、煉瓦8a,9a・・・の長さL1、L2によって適正値が異なるため一概には言えないが、例えば長さL1,L2が400mm程度の場合には3〜20°程度が好ましい。長さL1,L2が400mm程度の場合で傾斜角度α、βが3°未満では浮上防止の効果が不十分であり、20°を超えると煉瓦形状が複雑となって製造(プレス成形)が困難になると共に、安定性が低下するため積み付けが困難となる。
【0030】
なお、本発明に加えて、図8と同様に、最上段の環状煉瓦群8の外周面を上窄まりのテーパーに形成したり段差を設けたりしても良い。この場合、煉瓦8aの側面を傾斜させたことによる浮上防止機能により、溶損代を減らさない程度のテーパー面に形成したり、熱応力の集中を生じない程度の段差に形成したりすることができるから、問題の生じない状態で環状煉瓦群の外周面をテーパーに形成したり段差を形成したりすることができる。
【0031】
【実施例】
250t容量のRH式真空脱ガス装置の環流管において、実機試験を行った。すなわち、環流管の内周面に煉瓦積みして、内径600mm、外径800mm、高さ650mmとなるように内張りした。この環流管の内張り層は上下3段の環状煉瓦群で構成し、各環状煉瓦群はそれぞれ30個の煉瓦で構成した。そして、最上段の環状煉瓦群における各煉瓦の側面をそれぞれ軸線に対して同じ方向に5°傾斜させた。
【0032】
最上段の環状煉瓦群における煉瓦の側面を傾斜させない従来構造では、煉瓦の浮上や目地溶損のため、環流管の内張りの寿命は250t取鍋の溶鋼処理について420チャージ(回)であるのに対し、本発明実施例では560チャージ(回)であった。また、本発明の構成にすると、煉瓦浮上の防止効果だけでなく、使用後に目視で観察したところ、煉瓦の側面を傾斜させたことにより、耐溶損性も向上していることが確認された。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明より明らかな通り、本発明によると、環流管の内張り層のうち少なくとも溶鋼の浮力を受ける箇所に位置した煉瓦が互いに押さえ合った状態で接している。また、溶鋼の流れに最も強く晒される部位において、周方向に隣接した煉瓦の合わせ面(目地)が溶鋼流と平行でないため、溶鋼による目地のえぐり現象(先行溶損)が低減して、目地の箇所からの溶損が抑制される。これによって、溶鋼の浮力及び上昇流によっ煉瓦が剥離・浮上することが防止又は著しく抑制される。
【0034】
煉瓦の剥離・浮上は環流管の寿命を著しく低下させるが、本発明はこれを防止して環流管の耐久性を向上することができるため、補修材費用や施工工数の節減、真空脱ガス装置の稼働率の向上などの顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1参考例を示す縦断正面図である。
【図2】第2参考例を示す縦断正面図である。
【図3】図1及び図2の部分平面図である。
【図4】第3参考例を示す図で、(A)は平面図、(B)は(A)のうちBで示した範囲の展開図である。
【図5】本願発明の実施形態を示す図である。
【図6】真空脱ガス装置の概略を示す断面図である。
【図7】従来例を示す図で、(A)は縦断正面図、(B)は(A)の平面図である。
【図8】(A)(B)とも他の従来例を示す縦断正面図である。
【図9】更に他の従来例を示す展開図である。
【符号の説明】
1 真空脱ガス装置
2 真空槽
2a 真空槽の内張り層
3 環流管
6 溶鋼
8,9,10,14 環状煉瓦群
8a,9a,10a,14a 煉瓦単体
8b 台形の煉瓦
8c 逆台形の煉瓦
11 合わせ面

Claims (1)

  1. 内張り層を備えた真空槽の下部に、溶融金属が流れる環流管を上下に貫通するように設けており、前記環流管の内周面を、多数個の煉瓦を平面視環状に並べて成る環状煉瓦群が上下に複数段積み重ねられた煉瓦層で内張りしており、更に、最上段の環状煉瓦群のうち真空槽の外周寄りに位置した一部を前記真空層の内張り層で押さえ固定している真空脱ガス装置であって、
    前記複数段の環状煉瓦群のうち最上段に位置した環状煉瓦群は、環流管の放射方向視において左右の側面が傾斜して上向きに窄まった台形の煉瓦と、環流管の放射方向視において左右の側面が傾斜して下向きに窄まった逆台形の煉瓦とを備えており、前記台形の煉瓦は真空槽の軸心寄りの部位に配置され、前記逆台形の煉瓦は真空槽の内張り層と重なる部位に配置されており、台形の煉瓦と逆台形の煉瓦との間に、環流管の放射方向視で左右側面が前記台形の煉瓦の側面に向けて倒れるように傾斜した多数の傾斜煉瓦群を周方向に並べて配置している、
    真空脱ガス装置。
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