JP3777999B2 - 冷却システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水の蒸発熱によって壁や塀などを冷却するようにした冷却システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多孔質の素焼レンガを積んで壁体を構築し、この多孔質の素焼レンガに水を吸収させると共に、その吸収した水を表面より蒸発させ、その際の蒸発潜熱によって壁体を冷却する冷却壁体が提案されている(例えば、特開平9−279707号)。
【0003】
同号公報の実施の形態では、この冷却壁体に供給する水として雨水を用いているが、同号公報第0097段落には中水道を利用してもよい旨記述されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
蒸発潜熱利用法式の冷却システムにおいて、水源を雨水のみとしたのでは、夏季の渇水期には水切れを起こすおそれが大きい。中水道として浄化槽処理水を用いることも考えられるが、浄化槽処理水には窒素やリンなどの栄養成分が多く含まれているため、特に日当たりの良い壁体に藻などが多量に発生するおそれがある。一旦藻が発生すると、美観が損なわれるだけでなく、蒸発冷却機能が低下したり、藻の腐食による悪臭が発生するおそれもある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決し、蒸発潜熱を利用した冷却システムにおいて、蒸発部材への給水として浄化槽処理水を利用して水源を確保すると共に、蒸発部材における悪臭の発生を防止することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の冷却システムは、表面から水を蒸発させる蒸発部材と、該蒸発部材に水を供給する給水装置とを有する冷却システムにおいて、該給水装置は、浄化槽と、該浄化槽からの処理水を浄化処理する高度浄化装置とを有する冷却システムであって、該高度浄化装置は、建物の屋根に設けられており、該高度浄化装置は、底板と、該底板の両側辺から立設された仕切板とを備えたトレーと、該トレーに嵌め込まれた植物の生育が可能な無機多孔板とを有し、前記トレーは、前記両側辺の仕切板が水勾配方向となるように連なって配設されていることを特徴とするものである。
【0007】
かかる冷却システムにあっては、浄化槽処理水を高度浄化装置によって浄化処理するため、蒸発部材での藻などの発生を防止することができる。もちろん、蒸発部材の給水源を浄化槽処理水としているため、渇水期でも水源が枯渇することはない。
【0008】
特に、一般住宅などにあっては、住宅で人が生活していれば必ず生活排水が浄化槽に流入して浄化処理水が生じるので、蒸発部材に必ず水が供給されることになる。
【0009】
この高度浄化装置は、建物の屋根に設けられる。このようにすれば、屋根を高度浄化装置の設置スペースに利用することができるだけでなく、屋根の断熱を図ることもできる。
【0010】
この場合、高度浄化装置として植物の生育が可能な無機多孔板を用いることにより、屋上緑化あるいは壁面緑化を図り、断熱効果の促進と、ヒートアイランド現象の防止等も実現することができる。さらに、この無機多孔板に生育した植物が浄化槽処理水中の窒素(N)やリン(P)を摂取するようになるので、浄化槽処理水中から藻発生の原因物質を除去することができる。
【0011】
本発明では、浄化槽処理水に炭酸水素ナトリウムを添加してもよい。このように炭酸水素ナトリウムを添加すると、浄化槽処理水あるいはこの浄化槽処理水が供給された蒸発部材に藻や悪臭が発生することを防止できる。
【0012】
なお、炭酸水素ナトリウムが添加された浄化槽処理水は蒸発部材以外の水需要箇所(例えば水洗トイレ)に供給してもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は本発明の実施の形態に係る冷却システムの構成を示す模式的なブロック図である。
【0014】
住宅等から排出される生活排水が浄化槽aに導入され、処理される。この浄化槽は、例えば沈降室、生物処理室、固液分離手段、殺菌筒等を備えた公知のものを用いることができる。
【0015】
この殺菌筒と接触して殺菌剤が添加された浄化槽処理水に炭酸水素ナトリウム(重曹)が好ましくは1〜50g/L程度の割合で添加された後、貯水槽bへ導入される。
【0016】
炭酸水素ナトリウムを添加するには、例えば炭酸水素ナトリウム水溶液タンクと、ポンプとを用いる。好ましくは、浄化槽流出水量に応じてポンプを作動させ、所定量の炭酸水素ナトリウムを添加する。
【0017】
なお、炭酸水素ナトリウム水溶液のタンクは浄化槽aと一体とされてもよいが、市販の浄化槽や既設の浄化槽を利用する場合には貯水槽を別途設置することになる。この貯水槽内の浄化槽処理水が高度浄化装置cに供給されて高度浄化処理された後、蒸発部材dへ送られ、蒸発する。この蒸発に伴って蒸発潜熱により蒸発部材dが冷却される。なお、高度浄化処理した水の一部をトイレ等に供給してもよい。
【0018】
この蒸発部材としては、多孔質材よりなるブロックが多段に積み重ねられた壁本体と、該壁本体に灌水する灌水手段とを有する壁体が好適である。この灌水手段から該壁本体に灌水されると、壁本体が湿潤し、水の蒸発潜熱により壁本体が冷却される。この壁本体に貫通孔が設けられ、該貫通孔を通り抜ける風が冷却されるようにしてもよい。
【0019】
前記の通り、上記の高度浄化装置cは、植物の生育が可能な無機多孔板を備える。この無機多孔板としては、粒状の無機多孔体とガラス粉とを混合して焼成し、熔融して固化したガラスによって粒状無機多孔体同士を結着したものが好適である。
【0020】
この粒状の無機多孔体としては、ゼオライト、バーミキュライト、鹿沼土、マサ土、赤玉土などが好適である。この無機多孔体の平均粒径は、0.5〜10mm特に2〜5mmが好ましい。この無機多孔体は、天然鉱物を粗砕して上記粒度に篩分けしたのものであってもよく、それよりも細かい粒度のものを造粒して焼成し、粒状としたものであってもよい。
【0021】
この無機多孔体がゼオライトである場合、N,P両成分を除去することができる。無機多孔体がバーミキュライトであれば、N分を除去でき、鹿沼土であればP分を除去できる。無機多孔体が、鉄分の多い都市ゴミなどの焼却灰(例えばFeを1%以上特に10%以上含むもの)や、鉄屑、石灰石、貝殻など、鉄イオン、カルシウムイオンを供給するものを含有する場合、P分をリン酸鉄やリン酸カルシウムとして除去することができる。
【0022】
この焼却灰等は、ゼオライト、バーミキュライト、鹿沼土などの粉体あるいは粉粒体と混合され、造粒及び焼成されて粒状体とされる。焼却灰等の配合割合は、ゼオライト等100重量部に対し、都市ゴミ焼却灰の場合5〜20重量部、鉄屑の場合1〜15重量部、石灰石及び貝殻の場合5〜50重量部程度が好ましい。
【0023】
上記粒状無機多孔体に対しガラス粉を添加し、このガラスの融点よりも高い温度にまで加熱し、ガラスを熔融させ、次いで冷却してガラスを固化させ、この固化したガラスによって粒状無機多孔体同士を結着することができる。
【0024】
このガラスとしては珪酸ソーダガラス、ホウ珪酸ソーダガラスなどの珪酸系のものが好適であるが、これに限定されるものではない。ガラスは、新品のガラスであってもよく、廃ガラスであってもよい。釉薬に用いられるガラスフリットであってもよい。ガラス粉の平均粒径は10〜2000μm特に10〜50μmが好ましい。ガラス粉の配合量は無機多孔体100重量部に対し5〜100重量部特に20〜50重量部程度が好ましい。
【0025】
製造された無機多孔板には、粒状無機多孔体同士の間に平均して500μm〜5mm程度の空隙が形成されていることが好ましい。
【0026】
この無機多孔板の無機多孔体同士の間の空隙に、有機系バインダーが配合された土を詰めてもよい。この有機系バインダーとしては、デンプン、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、「とびこ(飛粉)」と称されるこんにゃく滓などが好適である。有機系バインダーの添加量は、乾燥重量で100重量部の土に対し、10〜30重量部が好適である。
【0027】
このような土を目詰めした無機多孔板又は土を目詰めしていない無機多孔板の上に土の保持層を設け、この土の保持層に土を詰めるか又は土の保持層の上に土を堆積させてもよい。この土としては、降雨による流去や風による飛散を防止するために上記の有機系バインダー配合土を用いる。
【0028】
土の保持層としては、ヤシやココナツの木の繊維をマット状に成形したヤシマットやココナツマット、ガラス繊維、スラグ繊維等の鉱物質繊維の不織布、ウレタン等の軟質合成樹脂のスポンジ等が好適である。この土保持層の厚さは10〜50mm程度が好適である。この土保持層は、繊維同士の間やスポンジ孔等に土の少なくとも一部が入り込むので土の流去や飛散を防止する機能を有する。
【0029】
この土の保持層に詰めるか又はその上に堆積させる土の量は植物の種類に応じて適宜定めればよい。
【0030】
この無機多孔板やその上の土に生育させる植物は、スナゴケ、ハイゴケ等のコケ類、メキシコマンネングサ、ツルマンネングサ、サカサマンネングサなどのセダム類が好適である。このセダム類は、多年草であり、成長しても高さが低く、屋根において生育させるのに好適である。
【0031】
以下、第2図〜第4図に示す冷却システム付き建物について説明する。第2図は実施の形態に係る冷却システムを備えた建物(この場合は戸建て住宅)の斜視図、第3図は該建物の屋根の構成を示す分解斜視図、第4図は高度浄化装置を構成するトレー及び緑化基盤の斜視図である。
【0032】
この建物1の屋根は、第3図の通り、垂木2上に野地板3を釘留めし、この野地板3の上にアスファルトルーフィング4を施して防水層を形成し、その上に多数のトレー5を水勾配方向に列状に配設し、各トレー5に無機多孔板6Aをベースとした緑化基盤6を嵌め込んだものである。
【0033】
このトレー5は、第4図に示す通り、略方形のトレー底板7と、このトレー底板7の両側辺から立設された仕切板8とを備えている。このトレー5は、その最水上部5bがビス9(釘でも良い。)によって野地板3に留め付けられる。トレー5の最水下部5aは最水上部5bよりも幅が小さくなっており、水下側に先に取り付け施工されたトレー5の最水上部5bに対し、後から取り付け施工されるトレー5の最水下部5aが内嵌され、ビス9に上方から覆い被さる。
【0034】
即ち、トレー5は、屋根の軒側から順次に取り付け施工される。この場合、まず、第3図のように棟先用トレー10を屋根の棟先に配置し、ビスにて野地板3に留め付け、この棟先用トレー10の最水上部に対しトレー5の最水下部5aを内嵌させる。当然ながら、トレー5は、両側辺の仕切板8が水勾配方向となるように向きが定められる。このトレー5の最水下部5aを棟先用トレー10に内嵌させてそのトレー底板7をアスファルトルーフィング4上に重ねた後、ビス9を打ってトレー5を固定する。
【0035】
次に、このトレー5の水上側に下から2番目のトレー5を配置し、固定する。即ち、この2番目のトレーの最水下部5aを上から1番目の固定済みトレー5の最水上部5bに内嵌させてビス9を覆い、その後、該2番目のトレー5の水上部5bをビス9で野地板3に留め付ける。以下、3番目以降のトレー5も同様にして配置され、固定される。このようにして、水勾配方向にトレー10,5が連なってトレーの列が形成される。
【0036】
このトレー10,5の列は、水勾配と直交方向に複数列形成される。なお、トレー10,5の列は1列ずつ形成されてもよく、各列のトレー10を取り付け施工し、その次に各列のトレー5をそれぞれ取り付け施工してもよい。
【0037】
第3図の通り、棟先用トレー10は、長方形状の底板部11と、この底板部11の1対の短手辺から立設された仕切板12と、底板部11の1つの長手辺から立設された立壁13とを有しており、この立壁13が水下側となるように配置される。前記の通り、この棟先用トレー10の水上側がビスで野地板3に固定され、このビスを覆うように、1番目のトレー5の最水下部5aが棟先用トレー10の水上部に内嵌される。
【0038】
この棟先用トレー10の水下側は、棟先から突出しており、この突出した部分に水の流出部として孔、スリット等の開口14が設けられる。この開口14の下方に、軒先に沿って雨樋15が設置されている。
【0039】
棟先用トレー10の仕切板12は、各トレー5の仕切板8と一直線状に連なって水勾配方向に配設される。この仕切板8,12は、隣接するトレー列の仕切板8,12と背中合わせになるので、この背中合わせとなった仕切板8,12同士に上方からカバー16を被冠させる。このカバー16は、1対の垂下片16aと、該垂下片16aの上端同士を連結している天片16bとを有した下向き略コ字形状のものである。垂下片16a,16aが仕切板8,12の内側面(背中合わせ面と反対面)に沿って垂下するようにカバー16を装着し、必要によってカバー16をビスによって仕切板8,12に固定する。
【0040】
このようにして配設されたトレー5に対し、前記緑化基盤6を嵌め込む。この緑化基盤6は、透水性の無機多孔板6Aをベースとし、その上に土保持層6aを介して土6bを堆積させ、植物6cを植えたものである。
【0041】
具体的には、無機多孔板6Aは、粒径1〜3mmであり平均粒径2mmのバーミキュライト100重量部に対しガラスフリット(平均粒径30μm)30重量部をCMC80重量部と共に添加して混合した後、15×15×3cmの大きさに成形し、乾燥した後、800℃×8Hr焼成し、次いで自然冷却することにより製造されたものである。この無機多孔板6Aを構成するバーミキュライト粒状体同士の間には、平均して1mmの空隙があいている。この無機多孔板6Aの上に、土保持層6aとしてヤシマットを1cm厚に敷き、その上に土6bとして有機系バインダー配合土を2g/cmの割合で目詰めしながら堆積させ、次いで植物6cとしてスナゴケを植えてある。なお、有機系バインダーとしては飛粉を土100重量部(乾燥重量)に対し20重量部の割合で添加したものを用いている。
【0042】
第2図の通り、トレー10,5の各列に水を均等に供給するように、棟に沿って散水管22を配設する。
【0043】
建物1から排出される排水を地中に配置された小型合併浄化槽20aに流入させ、処理した浄化槽処理水が炭酸水素ナトリウムの添加を受けた後、貯水槽20b、ポンプ(図示略)及び配管21を介して散水管22に供給し、該散水管22から各トレー列の最も水上側のトレー5に流出させる。
【0044】
この水は、各緑化基盤6、特にその無機多孔板6Aを透過しながらトレー5の列を水勾配に従って流れ、やがて棟先用トレー10に至り、開口14から雨樋15に流れ込む。この雨樋15に流れ込んだ水は、緑化基盤6を透過して濾過処理及びイオン交換処理されると共に、緑化基盤6に生育した植物6cによって浄化処理(例えばリンや窒素の吸収)を受けたものであり、浄化槽処理水よりも水質が良好なものとなっている。そこで、この雨樋15内の水を配管23を介して地中等に配置された貯水槽24に導入し、ポンプによって蒸発冷却塀25に供給する。この蒸発冷却塀25は、多孔質ブロックを積んだものであり、上部及び内部に灌水用の給水路が設けられている。なお、この貯水槽24内の水の一部を建物1内のトイレ洗浄水や庭の散水栓等に供給してもよい。
【0045】
この貯水槽24へは、屋根に降った雨水も流入し、蒸発冷却に利用される。
【0046】
この貯水槽24内の水は、緑化基板6によって窒素及びリンが除去されたものであり、蒸発冷却塀25に藻などが生じることが防止される。また、この水に炭酸水素ナトリウムが添加されているので、臭気の発生も防止される。
【0047】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態としてもよい。例えば、貯24を建物の上部に設け、水頭差によって蒸発冷却塀25に給水してもよい。
【0048】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によると、蒸発潜熱を利用した冷却システムにおいて、蒸発部材への給水として浄化槽処理水を利用して水源を確保すると共に、蒸発部材における藻や悪臭などの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態に係る冷却システムのブロック図である。
【図2】 実施の形態に係る冷却システムを備えた建物の斜視図である。
【図3】 図2の屋根の構成を示す分解斜視図である。
【図4】 トレー及び緑化基盤の斜視図である。
【符号の説明】
1 建物
2 垂木
3 野地板
4 アスファルトルーフィング
5 トレー
5a 最水下部
5b 最水上部
6 緑化基盤
6A 無機多孔板
7 トレー底板
8 仕切板
9 ビス
10 棟先用トレー
15 雨樋
16 カバー

Claims (3)

  1. 表面から水を蒸発させる蒸発部材と、該蒸発部材に水を供給する給水装置とを有する冷却システムにおいて、
    該給水装置は、浄化槽と、該浄化槽からの処理水を浄化処理する高度浄化装置とを有する冷却システムであって、
    該高度浄化装置は、建物の屋根に設けられており、
    該高度浄化装置は、底板と、該底板の両側辺から立設された仕切板とを備えたトレーと、該トレーに嵌め込まれた植物の生育が可能な無機多孔板とを有し、
    前記トレーは、前記両側辺の仕切板が水勾配方向となるように連なって配設されていることを特徴とする冷却システム。
  2. 請求項において、無機多孔板がイオン交換能を有することを特徴とする冷却システム。
  3. 請求項1又は2において、高度浄化装置に流入する水に炭酸水素ナトリウムを添加する手段を有することを特徴とする冷却システム。
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