JP2009011190A - 軽量人工土壌の製造方法および軽量人工土壌基盤の造成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】粒状発泡資材が土壌表層に浮上して飛散や流出するのを抑制できると共に、緑化資材の有する性能を十分に発揮でき、しかも、植物の水ぐされや根ぐされをも防止することのできる軽量人工土壌と、その製造方法、さらにはその人工土壌を用いた軽量土壌基盤の造成方法を提案すること。
【解決手段】粒状発泡資材(A)表面に、鹿沼土、黒土、珪素土、赤玉土、石炭灰、マサ土、火山灰、腐葉土、赤土、ゼオライト、粘土、パーライト、ピートモスおよびバーク堆肥のうちから選ばれるいずれか1種以上の緑化資材(B)を被覆させてなる軽量人工土壌において、前記緑化資材(B)は、水溶性エマルジョン樹脂を含み、かつ、この緑化資材(B)の被覆層は、脱水による多孔質層を形成していること。
【選択図】図1
【解決手段】粒状発泡資材(A)表面に、鹿沼土、黒土、珪素土、赤玉土、石炭灰、マサ土、火山灰、腐葉土、赤土、ゼオライト、粘土、パーライト、ピートモスおよびバーク堆肥のうちから選ばれるいずれか1種以上の緑化資材(B)を被覆させてなる軽量人工土壌において、前記緑化資材(B)は、水溶性エマルジョン樹脂を含み、かつ、この緑化資材(B)の被覆層は、脱水による多孔質層を形成していること。
【選択図】図1
Description
この発明は、屋上緑化等のために使用される軽量人工土壌に関連する技術についての提案であり、特に、粒状発泡資材の表層に緑化資材を固着してなる軽量人工土壌およびその製造方法と、その軽量人工土壌を用いて施工する基盤の造成方法について提案する。
建築物は、一般に、耐震性を考慮し、その屋上に載置できる重量を60kg/m2以下に制限している。そのため、建築物は、屋上緑化等のために天然の土壌を用いると、保水時に荷重が重くなってしまうことから、土壌の層を厚くすることができず(≦約3cm)、植物を効果的に生育させることができないという問題がある。そこで、従来、排水性や保水性、生育性、断熱性に優れると共に、軽い土壌の開発が行われている。
例えば、こうして開発された技術の1つとして、発泡スチロールなどの粒状発泡資材を土壌代替物として使用し、これを下層に敷き、その上に土壌を載せる方法や、土壌に発泡スチロール粒材を混合したものを用いる方法などがある。しかしながら、これらの方法では、土壌の代替物として使用する発泡スチロールが非常に軽いため(かさ比重:0.01程度)、作業時に風等によって飛散すると共に、静電気を帯びやすいため施工に手間がかかる。しかも、土壌に混合した発泡スチロールは、地表に徐々に浮上し、雨水等により飛散や流出するなどの問題もある。
また、特許文献1には、発泡スチロール粒材などの発泡体粒子の表面に、ウレタンポリマー等の樹脂からなる接着材によって親水性の無機質粒子等からなる改質材と抗菌剤とを被覆してなる土壌代替物が提案されている。この土壌代替物によれば、土壌の軽量化を図ると共に、改質材によって植物に保肥性や保水性を与え、さらに発泡体粒子の表面に固着した改質材の凹凸によって各発泡体粒子の流動を抑制し、発泡体粒子の地表への上昇を防止することができる。また、抗菌剤が培土中に露出されることになり、菌やカビと効率よく接触できるので、カビ等の発生や増殖を抑制することができる。
特開平7−50922号公報
しかしながら、特許文献1において接着剤として用いられているウレタンポリマー等の樹脂によって形成される被覆膜は、水不透性であるため、発泡体粒子の表面に改質材等を厚く被覆する場合には、改質材等の表面がウレタンポリマー等の樹脂によって被覆されてしまい、改質材の有する保肥性や保水性等の性能を発揮することができなくなってしまう。一方、発泡体粒子の表面に改質材等を薄く被覆する場合には、改質材がウレタンポリマー等の影響を受けることなく、その性能を発揮することができるが、発泡体粒子の重量をほとんど重くすることができず、さらに改質材の凹凸による各発泡体粒子の流動抑制効果が得られないため、発泡体粒子が土壌表層に浮上し、飛散や流出等する可能性がある。
また、抗菌剤として、カドミウム、砒素、亜鉛、銅、錫等の抗菌性金属や市販の抗菌剤が使用されているが、これらの抗菌剤は、滅菌効果があるものの、人間や環境に対して悪影響を及ぼす可能性があり、また抗菌剤は、菌の増殖を抑制するものであるため、水ぐされや根ぐされまでは防止することはできない。なお、水ぐされや根ぐされは、土壌への通気性不良や水に溶解した有機物の分解等による酸素量の減少によって発生するものである。
本発明の目的は、粒状発泡資材が土壌表層に浮上して飛散や流出するのを抑制できると共に、緑化資材の有する性能を十分に発揮でき、しかも、植物の水ぐされや根ぐされをも防止することのできる軽量人工土壌と、その製造方法、さらにはその人工土壌を用いた軽量土壌基盤の造成方法を提案することにある。
従来技術が抱えている上述した課題を克服し、本発明の上記目的を実現するため、鋭意研究を重ねた結果、発明者らは、発泡ポリスチレン等の粒状発泡資材を代替土壌として利用し、その粒状発泡資材の表層に緑化資材を、接着剤を使用することなく、種々の厚さで固着させる技術を開発し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、粒状発泡資材(A)表面に、鹿沼土、黒土、珪素土、赤玉土、石炭灰、マサ土、火山灰、腐葉土、赤土、ゼオライト、粘土、パーライト、ピートモスおよびバーク堆肥のうちから選ばれるいずれか1種以上の緑化資材(B)を被覆させてなる軽量人工土壌において、前記緑化資材(B)は、水溶性エマルジョン樹脂を含み、かつ、この緑化資材(B)の被覆層は、脱水による多孔質層を形成していることを特徴とする軽量人工土壌である。
また、本発明は、粒状発泡資材(A)表面に、鹿沼土、黒土、珪素土、赤玉土、石炭灰、マサ土、火山灰、腐葉土、赤土、ゼオライト、粘土、パーライト、ピートモスおよびバーク堆肥のうちから選ばれるいずれか1種以上の緑化資材(B)を固着することにより軽量人工土壌を製造する方法において、前記緑化資材(B)と水溶性エマルジョン樹脂とを混合し、その後、この混合物を前記粒状発泡資材(A)と混合するか、粒状発泡資材(A)表面に吹付けることにより、該粒状発泡資材(A)表面に、該緑化資材の被覆層を形成すると共に、この被覆層を乾燥、脱水することによって、該粒状発泡資材(A)表面に多孔質緑化資材(B)の層を形成することを特徴とする軽量人工土壌の製造方法を提案する。
なお、本発明においては、前記粒状発泡資材(A)は、粒径が2〜50mmであること、前記緑化資材(B)および水溶性エマルジョン樹脂の混合物と、前記粒状発泡資材(A)との混合比率は、混合物:粒状発泡資材(A)=2〜50vol%:50〜98vol%であること、前記緑化資材(B)の層には、無機系固化剤を含有していること、前記無機系固化剤は、セメント、マグネシアセメント、アルミナセメントおよび石膏のうちのいずれか1種以上からなり、前記緑化資材(B)1m3に対して、10〜100kg混合されていること、前記緑化資材(B)と粒状発泡資材(A)は、緑化資材(B):粒状発泡資材(A)=5〜70vol%:95〜30vol%の割合で混合されていること、前記粒状発泡資材(A)は、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡プロピレン、発泡ガラスおよび発泡軽量骨材のいずれか1種以上からなること、前記水溶性エマルジョン樹脂は、酢酸ビニール、アクリル樹脂、アルキッド樹脂およびエポキシ樹脂のうちから選ばれるいずれか1種以上からなり、前記緑化資材1m3に対して、4〜100kg混合されること、および前記緑化資材(B)は、光合成細菌が混合することにより、より好ましい解決手段を提供することになる。
また、本発明は、前記の軽量人工土壌を用いて土壌基盤を形成することを特徴とする軽量土壌基盤の造成方法を提案する。
なお、本発明の軽量土壌基盤の造成方法においては、前記軽量人工土壌からなる土壌基盤上に、前記緑化資材(B)を載置すること、および前記軽量人工土壌を、網目が約1〜10mmの網袋に封入し、その網袋の上に前記緑化資材(B)を載置して土壌基盤を形成するこにより、好ましい解決手段を提供することになる。
上述した構成を有する本発明によれば、下記のような効果が得られる。即ち、本発明では、軽量の粒状発泡資材を代替土壌として利用し、その粒状発泡資材表面に天然用土や土壌改良材などの緑化資材を、その性質を失うことなく、種々の厚みで固着させることができるため、発泡資材が、ある程度の重みを持つようになり、風や雨水等による発泡粒材資材の飛散や流出等を抑制することができる。
また、本発明の軽量人工土壌では、粒状発泡資材の表層が、植物の生育に必要な養分や水分等を含んだ緑化資材で被覆されているため、植物の根が伸長してきた際に、養水分等を十分に補給することができる。
さらに、本発明の製造方法は、水溶性エマルジョン樹脂や無機系固化剤を利用して、粒状発泡資材の表層に緑化資材を固着させる方法であるから、従来技術のように緑化資材表面が透水性のない接着剤によって被覆されるようなことがなく、緑化資材の性質を十分に発揮させることができる。
水溶性エマルジョン樹脂中の水分は、特に、時間の経過と共に蒸発し、その部分に生成する空隙を介して優れた通気性および透水性を発揮させることができる。したがって、水ぐされや根ぐされの発生を防ぐことができる。
また、本発明では、軽量の粒状発泡資材表面に、緑化資材を固着させてある程度の重みを持たせた軽量人工土壌を用いること、あるいは、粒状発泡資材または前記軽量人工土壌を網袋内に封入し、その上に緑化資材を盛ること、によって土壌基盤を造成することにより、植物の根を十分に伸長させることができる程度に土壌を厚くすることができると共に、土壌の飛散や流出を、効果的に抑制することができる。
発泡ポリスチレン等が用いられる発泡資材(A)は、非常に軽量で、水の浸透がなく、また強度もあるため、軽量化が必要とされる屋上緑化等の代替土壌として好適である。さらに、この発泡体は、空隙率が大きいため、断熱効果があり、土壌下層部からの水分の蒸発を抑制することができると共に、蒸発した水分を、土壌中を上昇する過程で水滴化させる効果(マルチストーン効果)がある。
そこで、本発明では、この発泡資材(A)を粒状とし、これを天然土壌の代替物として利用する際に必要な条件について検討した。ここで、発泡資材(A)を粒状とするのは、発泡資材(A)間に多くの空隙を形成するためであり、これによって、土壌に通気性および透水性を与えることができると共に、発泡資材(A)間に植物の根が十分に伸長できるような隙間を与えるためである。
しかしながら、このような粒状発泡資材(A)は、軽いために、風や雨水等によって飛散、流出等しやすいこと、および発泡資材(A)自体に保水性や吸着性がなく、かつ養分等がないため、植物の生育に必要な養分や水分を供給できなという問題がある。
そこで、本発明では、このような問題点を克服するために鋭意研究した結果、水溶性エマルジョン樹脂が接着剤として機能することに知見し、この知見に基いて各種の緑化資材(B)を、その表面に付着させて、軽量で植物の生育に必要な条件を備える軽量人工土壌にすることにした。即ち、緑化資材(B)としての性能を失うことなく、粒状発泡資材(A)の表面に種々の厚みで、しかも多くの空隙を有する緑化資材(B)の多孔質層を形成した軽量人工土壌を開発した。
本発明のかかる人工土壌は、土壌代替物の本体となる粒状発泡資材(A)は、軽量であるため、この人工土壌による厚さを大きくしても重くなって屋根に負担がかかるようなことがなく、しかも植物の根が十分に伸びるようにすることができると共に、この粒状発泡資材(A)の表面に被覆された緑化資材(B)の層によって保肥性や吸水性も得られ、さらには、全体としては適度の重さになることで、風や降雨等によって粒状発泡資材(A)が地表に浮上して、飛散や流出するようなことがなくなるという効果も得られる。
なお、本発明において使用する粒状発泡資材(A)の粒径は、2〜50mm程度の大きさとする。これは、粒材の大きさが、2mmより小さいと、非常に軽いために風等による飛散がおこりやすく、また、その粒材が静電気を帯びると、飛散や付着が生じ、加工が難しくなるためである。一方、この粒径が、50mmより大きいと、粒状発泡資材(A)間の隙間が少なくなり、植物の根が伸長できる場所が少なく、植物の生育に必要な養水分が不足するようになると共に、根の成長が悪くなるためである。
本発明において用いられる発泡資材(A)としては、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡プロピレン、発泡ガラスおよび発泡軽量骨材のいずれか1種以上からなることが好ましい。
また、緑化資材(B)としては、従来より天然土壌として用いられているものを用いる。例えば、鹿沼土や黒土、廃葉土、火山灰土、マサ土、赤玉土などの天然用土、パーライト、バーミキュライトなどの無機質発泡体粒子、ゼオライト、粘土、珪素土、大谷石細粉、石炭灰などの無機質粒子、およびピートモス、バーク堆肥、木炭、ヤシ繊維などの有機質土壌改良材のうちから選ばれるいずれか一種以上のものを用いる。
本発明では、緑化資材(B)と水溶性エマルジョン樹脂とを混合した後、この混合物を、粒状発泡資材(A)と混合するか、あるいは発泡資材(A)に吹付けることにより、発泡資材(A)の表面に緑化資材(B)層を形成する。
水溶性エマルジョン樹脂は、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂および塩化ビニル樹脂のうちのいずれか一種以上からなり、溶剤である水が蒸発することによって接着作用を発揮する性質を有している。
そのため、水溶性エマルジョン樹脂を緑化資材(B)と共に、発泡資材(A)に混合あるいは吹付けた後、水溶性エマルジョン樹脂の溶剤(水)を蒸発させることにより、水溶性エマルジョン樹脂が接着材として作用し、発泡資材(A)上に緑化資材(B)からなる被覆層が固着されることになる。
このようにして形成された本発明の軽量人工土壌4は、図1に示したように、発泡資材(A)1表面に緑化資材(B)からなる被覆層2が固着された構造を有する。緑化資材(B)からなる被覆層2は、水溶性エマルジョン樹脂の溶剤(水)が蒸発した箇所に、多くの空孔3が形成されてネット状となり、その空孔3を通して、通気性や透水性を得ることができると共に、緑化資材(B)の有する保肥性や保水性等の性能を発揮することができる。なお、溶剤が蒸発した後の水溶性エマルジョン樹脂は、水には容易に溶解しないが、水分や養分等を通す性質を有しているため、緑化資材(B)の性能が水溶性エマルジョン樹脂によって阻害されることはない。
なお、水溶性エマルジョン樹脂は、緑化資材(B)1m3に対して、4〜100kg混合する。この樹脂量が、4kg未満では、接着力が小さく、付着させた緑化資材(B)層が剥離してしまい、一方、100kg超では、緑化資材(B)層の樹脂含有量が多く、水が蒸発した際に空隙がほとんど生成されないため、植物の根が緑化資材(B)から十分な養水分を得ることができないからである。
また、前記緑化資材(B)と水溶性エマルジョン樹脂との混合物は、粒状発泡資材(A)に対して、混合物:粒状発泡資材(A)=2〜50vol%:50〜98vol%の割合で混合あるいは吹付けることが好ましい。その理由は、混合物量が2vol%未満では、形成される被覆層が薄いため、適度な重量が得られず、さらに植物の生育に必要な養水分を供給できないためであり、一方、50vol%超では、重量が重くなりすぎてしまい、土壌の軽量化ができないためである。
また、本発明においては、前記緑化資材(B)および水溶性エマルジョン樹脂に無機系固化剤を添加した混合物を、発泡資材(A)表面に被覆することにより、緑化資材(B)層を形成してもよい。
前記の無機系固化剤としては、セメント、マグネシアセメント、アルミナセメントおよび石膏のうちのいずれか1種を用いる。また、この無機系固化剤は、緑化資材(B)1m3に対して、10〜100kg混合する。この範囲としたのは、無機系固化剤の量が10kg未満では、発泡資材(A)表面に緑化資材(B)層を固化させる力が小さく、その役割を果たせないためである。一方、100kg超では、緑化資材(B)層が固くなり過ぎてしまい、植物の根が、緑化資材(B)層に伸長することができず、養水分を十分に得られないためである。
また、、前記緑化資材(B)および水溶性エマルジョン樹脂に無機系固化剤を添加した混合物を、発泡資材(A)表面に被覆する場合には、前記緑化資材(B)と粒状発泡資材(A)は、緑化資材(B):粒状発泡資材(A)=5〜70vol%:95〜30vol%の割合で混合することが好ましい。この理由は、緑化資材(B)の量が、5vol%未満では、緑化資材(B)の付着量が少ないため、緑化資材(B)の有する性能を十分に発揮することができない他、重量があまり重くならないため、風等により飛散する可能性があるからである。一方、70vol%超では、重量が重くなりすぎてしまい、土壌の軽量化ができないためである。
さらに、本発明においては、緑化資材に光合成細菌を混合することが好ましい。光合成細菌は、土壌微生物によるアミノ酸の吸収を抑制して空気中の窒素を固定し、速やかにアンモニアと硝酸への生成を促して植物に窒素を供給しやすくする他、水に溶解している汚染有機物等の分解浄化や悪臭の除去等の作用がある。この光合成細菌の混合により、植物の水ぐされや根ぐされを抑制することができると共に、化学窒素肥料の削減もできるため、窒素肥料の流出による河川水の汚染を抑制することができる。その他、緑化資材には、保水剤や肥料、活力剤、着色剤、pH調整剤などを組み合わせて用いてもよい。
次に、上記軽量人工土壌の製造方法について説明する。
まず、緑化資材(B)と水溶性エマルジョン樹脂とを混合し、この混合物を、粒状発泡資材(A)と混合するか、あるいは発泡資材(A)表面に吹付けることにより、発泡資材(A)の表面に水溶性エマルジョン樹脂と緑化資材(B)との混合層を被覆形成する。そして、前記混合層中の水分(水溶性エマルジョン樹脂の溶剤)が、乾燥に伴って蒸発した後も、水溶性エマルジョン樹脂の接着作用により、接着剤として機能し、緑化資材(B)が発泡資材(A)表面にしっかりと固着されることになる。なお、発泡資材(A)表面に形成された緑化資材(B)層の水分の蒸発した部分には、空孔が形成されるため、緑化資材(B)層は多孔質層であり、該空孔を通して通気性および透水性を得ることができる。
まず、緑化資材(B)と水溶性エマルジョン樹脂とを混合し、この混合物を、粒状発泡資材(A)と混合するか、あるいは発泡資材(A)表面に吹付けることにより、発泡資材(A)の表面に水溶性エマルジョン樹脂と緑化資材(B)との混合層を被覆形成する。そして、前記混合層中の水分(水溶性エマルジョン樹脂の溶剤)が、乾燥に伴って蒸発した後も、水溶性エマルジョン樹脂の接着作用により、接着剤として機能し、緑化資材(B)が発泡資材(A)表面にしっかりと固着されることになる。なお、発泡資材(A)表面に形成された緑化資材(B)層の水分の蒸発した部分には、空孔が形成されるため、緑化資材(B)層は多孔質層であり、該空孔を通して通気性および透水性を得ることができる。
前記水溶性エマルジョン樹脂は、緑化資材(B)1m3に対して、4〜100kg混合する。その理由は、水溶性エマルジョン樹脂量が4kg未満では、接着力が小さく、付着させた緑化資材(B)層が剥離してしまい、一方、100kg超では、緑化資材(B)層の樹脂含有量が多く、水が蒸発した際に空隙がほとんど生成されないため、植物の根が緑化資材(B)から十分な養水分を得ることができないからである。
また、前記緑化資材(B)と水溶性エマルジョン樹脂との混合物は、粒状発泡資材(A)に対して、混合物:粒状発泡資材(A)=2〜50vol%:50〜98vol%の割合で混合あるいは吹付けることが好ましい。その理由は、混合物量が2vol%未満では、緑化資材(B)の付着量が少なく、植物の根に十分な養水分を与えることができないためであり、一方、50vol%超では、重量が重くなり、土壌の軽量化が期待できないのためである。
また、緑化資材(B)、水溶性エマルジョン樹脂および無機形固化剤からなる混合物を、粒状発泡資材(A)表面に被覆し、緑化資材(B)の層を固着させる方法は、粒状発泡資材(A)と、無機系固化剤、緑化資材(B)、水溶性エマルジョン樹脂、水およびpH緩衝剤(過燐酸石灰:必要に応じて添加)からなる混合物とを混合し、前記被覆膜中の水分(水溶性エマルジョン樹脂の溶剤)が、乾燥に伴って蒸発することにより、水溶性エマルジョン樹脂が接着材として作用することによる。
前記の無機系固化剤としては、セメント、マグネシアセメント、アルミナセメントおよび石膏のうちから選ばれる。そして、この無機系固化剤は、緑化資材(B)1m3に対して、10〜100kg混合する。この範囲としたのは、無機系固化剤の量が10kg未満では、発泡資材(A)表面に緑化資材(B)層を固化させる力が小さく、その役割を果たさないためである。一方、100kg超では、緑化資材(B)層が固くなり過ぎてしまい、植物の根が、緑化資材(B)層に伸長することができず、養水分を十分に得られないためである。
また、前記緑化資材(B)および水溶性エマルジョン樹脂に無機系固化剤を添加した混合物を、発泡資材(A)表面に被覆する場合には、前記緑化資材(B)と粒状発泡資材(A)は、緑化資材(B):粒状発泡資材(A)=5〜70vol%:95〜30vol%の割合で混合することが好ましい。この理由は、緑化資材(B)の量が、5vol%未満では、緑化資材(B)の付着量が少ないため、緑化資材(B)の有する性能を十分に発揮することができない他、重量があまり重くならないため、風等により飛散する可能性があるからである。一方、70vol%超では、重量が重くなりすぎてしまい、土壌の軽量化ができないためである。
次に、本発明にかかる上述した軽量人工土壌を用いた軽量人工土壌基盤の造成法方について説明する。
植物を生育させるための土壌基盤は、本発明によって得られた軽量人工土壌を、植物の根が伸長できる程度の厚さ(5〜60cm程度)に盛土することによって造成する。本発明の軽量人工土壌では、緑化資材の有する性能を失うことなく、発泡ポリスチレン粒材表面に固着させる緑化資材の層厚を変化させることによって、土壌の比重を自由に調整することができるため、その土壌を、一面に敷き詰めて盛土することのみにより土壌基盤を造成したとしても、土壌がある程度の比重を有しているため、風雨等により飛散や流出することがなく、好適に植物を生育することができる。
なお、軽量人工土壌の飛散や流出を抑制すると共に、植物に十分な養水分を供給するため、上記軽量人工土壌を敷き詰めた上に、一般の緑化資材等を載置することが好ましい。
植物を生育させるための土壌基盤は、本発明によって得られた軽量人工土壌を、植物の根が伸長できる程度の厚さ(5〜60cm程度)に盛土することによって造成する。本発明の軽量人工土壌では、緑化資材の有する性能を失うことなく、発泡ポリスチレン粒材表面に固着させる緑化資材の層厚を変化させることによって、土壌の比重を自由に調整することができるため、その土壌を、一面に敷き詰めて盛土することのみにより土壌基盤を造成したとしても、土壌がある程度の比重を有しているため、風雨等により飛散や流出することがなく、好適に植物を生育することができる。
なお、軽量人工土壌の飛散や流出を抑制すると共に、植物に十分な養水分を供給するため、上記軽量人工土壌を敷き詰めた上に、一般の緑化資材等を載置することが好ましい。
さらに、本発明では、上記軽量人工土壌を、その土壌の粒径よりも網目の小さな網袋(網目:約1〜10mm)に封入した後、その1ないし複数個の網袋を、一面に敷き詰め、さらにその上に緑化資材を載置することにより土壌基盤を造成してもよい。これにより、網袋内に軽量人工土壌が固定されることになり、風雨等によって軽量人工土壌が飛散や流出することがなく、さらに網袋上に載置した緑化資材が、植物の生育に必要な養水分を供給できると共に、錘となって土壌を固定することができる。なお、この網袋内に人工土壌を封入する方法を用いれば、緑化資材を付着させていない未加工の粒状発泡資材を用いても土壌を造成することができる。
(実施例1)
緑化資材、水溶性エマルジョン樹脂および水を混合して泥状にした資材に、粒状に粉砕した発泡資材を混合し、これを乾燥させることによって粒状発泡資材表面に緑化資材を付着させ、乾燥固着させる方法により、8種類の資材を製造した。なお、無機系固化剤を添加する場合には、まず緑化資材に無機系固化剤を添加し、これに水溶性エマルジョン樹脂および水を加えて混合する。各資材の条件を、表1に示す。
緑化資材、水溶性エマルジョン樹脂および水を混合して泥状にした資材に、粒状に粉砕した発泡資材を混合し、これを乾燥させることによって粒状発泡資材表面に緑化資材を付着させ、乾燥固着させる方法により、8種類の資材を製造した。なお、無機系固化剤を添加する場合には、まず緑化資材に無機系固化剤を添加し、これに水溶性エマルジョン樹脂および水を加えて混合する。各資材の条件を、表1に示す。
表1に示す本発明および比較例の各資材に、高度化成肥料3kg/m3を混合し、それぞれ屋上緑化用の0.5m(横)×0.5m(縦)×0.1m(厚さ)のユニットに、8cm厚さになるように充填した。ここに、マツバギク、メキシコマンネングサ、コーラルカーペット、キリンソウ、ツルマンネングサの苗を各5株づつ植えて、その生育状況を観察すると共に、重量計測を行った。その結果を表2に示す。
この結果より、本発明の水溶性エマルジョン樹脂を用いた方法により製造した軽量人工土壌(本発明1〜4)を用いた場合には、土壌厚さを8cmにして造成しても、土壌の重量は、屋上緑化の許容重量(60kg/m2)以下となった。また、生育性については、前記の有機溶剤を用いた方法および加熱による方法に比較して若干劣るが、約4〜5ヶ月でユニット全面が植物で覆われるようになった。
これに対し、比較例1および比較例4では、緑化資材が多くなり、土壌重量が屋上緑化の許容重量を超えてしまった。また、比較例2および3では、水溶性エマルジョン樹脂または無機系固化剤が多すぎるため、緑化資材から養水分を十分に吸収することができず、枯死してしまった。
これに対し、比較例1および比較例4では、緑化資材が多くなり、土壌重量が屋上緑化の許容重量を超えてしまった。また、比較例2および3では、水溶性エマルジョン樹脂または無機系固化剤が多すぎるため、緑化資材から養水分を十分に吸収することができず、枯死してしまった。
(実施例2)
実施例1の本発明1の資材に、高度化成肥料3kg/m3を混合し、それぞれ屋上緑化用の0.5m(横)×0.5m(縦)×0.1m(厚さ)のユニットに、4cm厚さになるように充填した後、その上に天然用土など従来、屋上緑化で使用されている土壌に高度化成肥料を3kg/m3混合したものを厚さ4cmに敷き詰めて、8cm厚さの土壌を造成し、ここに、マツバギク、メキシコマンネングサ、コーラルカーペット、キリンソウ、ツルマンネングサの苗を各5株づつ植えて、その生育状況を観察すると共に、重量計測を行った。
実施例1の本発明1の資材に、高度化成肥料3kg/m3を混合し、それぞれ屋上緑化用の0.5m(横)×0.5m(縦)×0.1m(厚さ)のユニットに、4cm厚さになるように充填した後、その上に天然用土など従来、屋上緑化で使用されている土壌に高度化成肥料を3kg/m3混合したものを厚さ4cmに敷き詰めて、8cm厚さの土壌を造成し、ここに、マツバギク、メキシコマンネングサ、コーラルカーペット、キリンソウ、ツルマンネングサの苗を各5株づつ植えて、その生育状況を観察すると共に、重量計測を行った。
その結果、土壌重量は46kg/m2となり、本発明の軽量人工土壌のみから土壌を造成した場合(実施例1の本発明1)よりも土壌重量が重くなるものの、屋上緑化の許容重量(60kg/m2)以下となり、また約3ヶ月でユニット全面が植物で覆われ、生育性にも優れていた。
(実施例3)
網目2mmの2リットル容量の網袋に、実施例1の本発明1の人工土壌を充填したものを用意した。この網袋を屋上緑化用の0.5m(横)×0.5m(縦)×0.1m(厚さ)のユニットに、厚さが4cmになるように一面に敷き、さらに網袋上に、天然用土など従来、屋上緑化で使用されている人工土壌に高度化成肥料を3kg/m3混合したものを厚さ4cmに敷き詰めた。ここに、マツバギク、メキシコマンネングサ、コーラルカーペット、キリンソウ、ツルマンネングサの苗を各5株づつ植えて、その生育状況を観察すると共に、重量計測を行った。
網目2mmの2リットル容量の網袋に、実施例1の本発明1の人工土壌を充填したものを用意した。この網袋を屋上緑化用の0.5m(横)×0.5m(縦)×0.1m(厚さ)のユニットに、厚さが4cmになるように一面に敷き、さらに網袋上に、天然用土など従来、屋上緑化で使用されている人工土壌に高度化成肥料を3kg/m3混合したものを厚さ4cmに敷き詰めた。ここに、マツバギク、メキシコマンネングサ、コーラルカーペット、キリンソウ、ツルマンネングサの苗を各5株づつ植えて、その生育状況を観察すると共に、重量計測を行った。
その結果、土壌重量は47kg/m2となり、約3ヶ月でユニット全面が植物で覆われ、生育性にも優れていた。また、本発明の軽量人工土壌は、網袋内に封入されているため、風雨等によって土壌表面に浮上することがなく、植物の根は、網袋の網目を通って袋内に伸長し、十分な養水分を得ることができた。また、網袋内に封入しない場合(表2参照)に比べて、土壌重量を軽くすることができた。
本発明の軽量人工土壌およびその製造方法、造成方法の技術は、ビルの屋上緑化や壁面緑化等に必要な人工土壌のみならず、軽量化が必要とされる他の分野で使用される代替土壌としても利用することができる。
1 発泡資材
2 緑化資材
3 空隙
4 人工軽量土壌
2 緑化資材
3 空隙
4 人工軽量土壌
Claims (21)
- 粒状発泡資材(A)表面に、鹿沼土、黒土、珪素土、赤玉土、石炭灰、マサ土、火山灰、腐葉土、赤土、ゼオライト、粘土、パーライト、ピートモスおよびバーク堆肥のうちから選ばれるいずれか1種以上の緑化資材(B)を被覆させてなる軽量人工土壌において、
前記緑化資材(B)は、水溶性エマルジョン樹脂を含み、かつ、この緑化資材(B)の被覆層は、脱水による多孔質層を形成していることを特徴とする軽量人工土壌。 - 前記粒状発泡資材(A)は、粒径が2〜50mmであることを特徴とする請求項1に記載の軽量人工土壌。
- 前記緑化資材(B)および水溶性エマルジョン樹脂の混合物と、前記粒状発泡資材(A)との混合比率は、混合物:粒状発泡資材(A)=2〜50vol%:50〜98vol%であることを特徴とする請求項1または2に記載の軽量人工土壌。
- 前記緑化資材(B)の層は、無機系固化剤を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の軽量人工土壌。
- 前記無機系固化剤は、セメント、マグネシアセメント、アルミナセメントおよび石膏のうちのいずれか1種以上からなり、前記緑化資材(B)1m3に対して、10〜100kg混合されていることを特徴とする請求項4に記載の軽量人工土壌。
- 前記緑化資材(B)と粒状発泡資材(A)は、緑化資材(B):粒状発泡資材(A)=5〜70vol%:95〜30vol%の割合で混合されていることを特徴とする請求項4または5に記載の軽量人工土壌。
- 前記粒状発泡資材(A)は、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡プロピレン、発泡ガラスおよび発泡軽量骨材のいずれか1種以上からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の軽量人工土壌。
- 前記水溶性エマルジョン樹脂は、酢酸ビニール樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂およびエポキシ樹脂のうちから選ばれるいずれか1種以上からなり、前記緑化資材1m3に対して、4〜100kg混合されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の軽量人工土壌の製造方法。
- 前記緑化資材(B)は、光合成細菌が混合されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の軽量人工土壌。
- 粒状発泡資材(A)表面に、鹿沼土、黒土、珪素土、赤玉土、石炭灰、マサ土、火山灰、腐葉土、赤土、ゼオライト、粘土、パーライト、ピートモスおよびバーク堆肥のうちから選ばれるいずれか1種以上の緑化資材(B)を固着することにより軽量人工土壌を製造する方法において、
前記緑化資材(B)と水溶性エマルジョン樹脂とを混合し、その後、この混合物を前記粒状発泡資材(A)と混合するか、粒状発泡資材(A)表面に吹付けることにより、該粒状発泡資材(A)表面に、該緑化資材の被覆層を形成すると共に、
この被覆層を乾燥、脱水することによって、該粒状発泡資材(A)表面に多孔質緑化資材(B)の層を形成することを特徴とする軽量人工土壌の製造方法。 - 前記粒状発泡資材(A)は、粒径が2〜50mmであることを特徴とする請求項10に記載の軽量人工土壌の製造方法。
- 前記緑化資材(B)および水溶性エマルジョン樹脂の混合物と、前記粒状発泡資材(A)との混合比率は、混合物:粒状発泡資材=2〜50vol%:50〜98vol%であることを特徴とする請求項10または11に記載の軽量人工土壌の製造方法。
- 前記緑化資材(B)と水溶性エマルジョン樹脂との混合物に、無機系固化剤を添加し、これを前記粒状発泡資材(A)表面に被覆することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の軽量人工土壌の製造方法。
- 前記無機系固化剤は、セメント、マグネシアセメント、アルミナセメントおよび石膏のうちのいずれか1種以上からなり、前記緑化資材(B)1m3に対して、10〜100kg混合することを特徴とする請求項13に記載の軽量人工土壌の製造方法。
- 前記緑化資材(B)と粒状発泡資材(A)とは、緑化資材(B):粒状発泡資材(A)=5〜70vol%:95〜30vol%の割合で混合することを特徴とする請求項13または14に記載の軽量人工土壌。
- 前記粒状発泡資材(A)は、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡プロピレン、発泡ガラスおよび発泡軽量骨材のいずれか1種以上からなることを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の軽量人工土壌の製造方法。
- 前記水溶性エマルジョン樹脂は、酢酸ビニール、アクリル樹脂、アルキッド樹脂およびエポキシ樹脂のうちから選ばれるいずれか1種以上からなり、前記緑化資材1m3に対して、4〜100kg混合することを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載の軽量人工土壌の製造方法。
- 前記緑化資材(B)は、光合成細菌が混合されていることを特徴とする請求項10〜17のいずれか1項に記載の軽量人工土壌の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の軽量人工土壌を用いて土壌基盤を形成することを特徴とする軽量土壌基盤の造成方法。
- 前記軽量人工土壌からなる土壌基盤上に、前記緑化資材(B)を載置することを特徴とする請求項19に記載の軽量土壌基盤の造成方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の軽量人工土壌を、網目が約1〜10mmの網袋に封入し、その網袋の上に前記緑化資材(B)を載置して土壌基盤を形成することを特徴とする軽量土壌基盤の造成方法。
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2007
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