JP3776849B2 - 橋梁およびその施工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁およびその施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば交通量の多い幹線道路等において、渋滞の激しい交差点を立体化する工事は過去にも行われてきたが、従来のこのような立体交差の整備事業は、工事自体の施工費をなるべく安価に抑えることを第一に考えており、工事期間中の幹線道路やその周辺地域の交通渋滞およびそれに伴う都市機能の停滞、工期の長期化に伴う周辺環境の悪化等によって発生する社会的、経済的な損失については一切考慮されていなかった。
【0003】
近年、こういった二次的な損失も含めて総合的に社会基盤の整備事業を評価しようという提案がなされている。その提案とは、上記のような社会的、経済的な損失を金額に換算し、工事自体の施工費と合わせて整備事業の支出とし、その支出額によって整備事業の是非を問うとするものであり、従来型の整備事業の在り方に一石を投じる試みとして注目を集めている。
【0004】
立体交差の整備事業において周辺地域に最も影響を与えるのは、いうまでもなく工事による交通渋滞である。工事のために道路の閉鎖や一部車線の通行規制が長期化すれば、工事区域とその周辺地域の交通量が低下して周辺住民の移動が妨げられるだけでなく、物資の流通が停滞して需要と供給のバランスが崩れる等、直接的、間接的に多大な損失が発生することは想像に難しくない。さらに、工事が長引き、渋滞が増えることで自動車の排気ガスによる環境汚染が起こることも十分予想される。
このようなことから、上記のような社会的、経済的な損失をできるかぎり抑えるために最も有効な手だてとは、如何に工期を短くするか、もしくはたとえ全体の工期は長くなっても道路の閉鎖や一部車線の通行規制を如何に最小限に抑えるか、ということである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、立体交差の橋梁施工に関して工期が長引く要因のひとつに、地盤の不安定さが挙げられる。軟弱な地盤に橋梁の基礎を構築する場合には、例えば地質改良を行って地盤を強化したり、地中の強固な支持地盤に届く杭を打設し、この杭に基礎を固定したりするが、これらの工事は非常に手間がかかり、しかも現場での作業となるので道路の閉鎖や一部車線の通行規制を行わざるを得ない状況になりがちである。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、如何に工期を短くするか、もしくはたとえ全体の工期は長くなっても道路の閉鎖や一部車線の通行規制を如何に最小限に抑えながら、軟弱な地盤上に橋梁を構築することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1に記載の橋梁は、内部に空洞が設けられて上部に橋梁の脚部が立設される基礎構造と、該基礎構造及び前記脚部に対して自在継手を介して連結される軸降伏型ダンパと、前記脚部の各下端面に貼り付けられる低摩擦部材とを有していることを特徴とする。
上記請求項1に記載の橋梁によれば、橋梁の基礎構造を、従来のコンクリート中実構造に比較して、各段に軽量化することができる。
また、このように基礎構造が軽量であることから、この基礎構造を別個に作業ヤード(工場など、現場以外の場所)で予め製造しておくとともに、現場に運んで据え付けるという工法を採用可能としている。
また、この橋梁によれば、基礎構造及び脚部に対して自在継手を介して連結される軸降伏型ダンパの減衰力によって脚部の揺れを確実に抑制することができるので、優れた耐震性能を確保することが可能となる。さらに、脚部の各下端面に低摩擦部材が貼り付けられているので、脚部の揺れを減衰させる要素である、脚部及び基礎構造間の摩擦力と、軸降伏型ダンパの減衰力のうち、前記摩擦力の占める割合を減らすことができる。したがって、軸降伏型ダンパの調整のみで、脚部の揺れの減衰を容易に制御することが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の橋梁は、請求項1に記載の橋梁において、前記基礎構造の前記空洞に、前記基礎構造の躯体よりも単位体積当たりの重量が軽い浮き材が設けられていることを特徴とする。
上記請求項2に記載の橋梁によれば、基礎構造に対して橋脚などが加える圧縮加重を、浮き材が基礎構造の内側から支えることができる。
【0009】
請求項3に記載の橋梁の施工方法は、内部に空洞を有する基礎を地上に設置し、別個に作業ヤードにて製作し各下端面に低摩擦部材が貼り付けられた橋梁の脚部を前記基礎上に立設し、該基礎及び前記脚部に対して自在継手を介して軸降伏型ダンパを連結することを特徴とする。
上記請求項3に記載の橋梁の施工方法によれば、従来のコンクリート中実構造に比較して各段に軽量な基礎であるため、軟弱地盤上に設置しても深く沈み込むことがない。
また、この施工方向における脚部は、別個に作業ヤード(工場など、現場以外の場所)で予め製造しておくとともに、現場に運んで基礎上に載置するものであるため、現場で製造せずに済む。
また、この橋梁の施工方法によれば、脚部の各下端面に低摩擦部材を貼り付けるので、脚部の揺れを減衰させる要素である、脚部及び基礎構造間の摩擦力と、軸降伏型ダンパの減衰力のうち、前記摩擦力の占める割合を減らすことができる。したがって、軸降伏型ダンパの調整のみで、脚部の揺れの減衰を容易に制御することが可能となる。
【0010】
請求項4に記載の橋梁の施工方法は、請求項3に記載の橋梁の施工方法において、前記基礎をも別個に作業ヤードにて製作することを特徴とする。
上記請求項4に記載の橋梁の施工方法によれば、脚部に加えて、基礎の製造も、作業ヤード(工場など、現場以外の場所)で予め製造しておくとともに、現場に運んで据え付けるものであるため、現場作業を減らすことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の橋梁およびその施工方法の一実施形態を、図1及び図2を参照しながら以下に説明するが、本発明がこれのみに限定解釈されるものでないことは勿論である。なお、図1における橋軸は、紙面垂直方向であり、図2における橋軸は、紙面左右方向である。
【0012】
同図に示すように、本実施形態の橋梁は、地上に上面が露出するように埋設された基礎1(基礎構造)と、該基礎1上に立設された脚部2Aと、この脚部2A上に架設された床板4と、1本の軸降伏型ダンパ5とを備えた概略構成をなしている。脚部2Aは、基礎1上に立設された4本の橋脚2と、これら橋脚2によって支持された主桁3を有するラーメン橋脚である。
【0013】
そして、これら構成要素のうち、上部に平滑面1aが形成された基礎1と、下端面に平滑な滑り面2aが形成され、この滑り面2aを平滑面1aに載せるようにして基礎1上に立設された脚部2Aと、基礎1と脚部2Aとの間に架設された軸降伏型ダンパ5とで、耐震構造が構成されている。
【0014】
基礎1は、鋼板からなる平板形状の下フーチング6及び上フーチング7と、浮き材8を備えている。下フーチング6及び上フーチング7は、互いに平行をなすように配置されており、内部に空洞10を有する躯体をなしている。そして、この躯体の空洞10内に、自らの躯体よりも単位体積当たりの重量が軽い前記浮き材8が詰め込まれている。この浮き材8としては、例えば発泡スチロール(EPS)などの軽量素材が好適に用いられる。この浮き材8によれば、前記躯体をコンクリートからなる中実構造にする場合に比較して、基礎1の大幅な軽量化に貢献すると同時に、上フーチング7に対して加わる圧縮荷重を強固に支持して、上フーチング7の変形を防げるようになっている。
なお、この浮き材8を省いて前記躯体内を完全に空洞化する構成も、採用可能である。この場合、上フーチング7の変形を防ぐために、前記空洞内に補強部材(図示せず)を設けることが好ましい。
【0015】
前記各橋脚2は、実質的に主桁3と一体構造をなしており、地震などによる外力が作用した場合に、一体となって、前記平滑面1a上を水平方向に滑るようになっている。
なお、脚部2Aの各橋脚2の各下端面に、低摩擦部材(図示せず)を貼り付けるものとしても良い。この低摩擦部材としては、各滑り面2aと平滑面1aとの間における摩擦抵抗を極力低減できるものであれば良く、例えば、テフロン(登録商標)材などが好適に用いられる。また、この低摩擦部材は、基礎1の上面側に設けても良いし、さらには、脚部2Aの各下端面と基礎1の上面の双方に設けても良い。
このような低摩擦部材を備えた場合には、脚部2Aの揺れを減衰させる要素である、脚部2A及び基礎1間の摩擦力と、軸降伏型ダンパ5の減衰力のうち、前記摩擦力の占める割合を減らすことができる。したがって、軸降伏型ダンパ5の調整のみで、脚部2Aの揺れの減衰を容易に制御することが可能となる。
【0016】
また、脚部2Aの各橋脚2の下部には、ジャッキアップ装置9がそれぞれ設けられている。これらジャッキアップ装置9は、橋梁の据え付け後に、地盤沈下による基礎1の沈みを吸収すべく、脚部2Aの持ち上げを可能としている。
【0017】
前記軸降伏型ダンパ5は、平断面視した場合に四角形の四隅位置に配置される各橋脚2の略中央位置に立設した状態に配置されている。そして、この軸降伏型ダンパ5の下端と基礎1の上面(平滑面1a)との間、および、軸降伏型ダンパ5の上端と脚部2Aにおける主桁3の下端との間には、それぞれ、介装されて両者を連結する自在継ぎ手5aが備えられている。
【0018】
この軸降伏型ダンパ5は、外力を受けて伸びた場合に、元の長さ寸法に戻ろうとする復元力を有しており、同図の実線に示す通常状態から、同図の二点差線に示すように揺動されて伸展した場合に、再び元の通常位置に復元しようとする。
各自在継手5aは、図示を省略するが、一方側に固定され、内部に球状の空間が形成された凹型軸受と、他方側に固定され、前記球状の空間内で摺動する球状軸受とを備えて構成されている。そして、これら自在継手5aによれば、基礎1に対する軸降伏型ダンパ5の自由な傾倒動作と、主桁3に対する軸降伏型ダンパ5の自由な傾倒動作とを可能としている。
【0019】
したがって、脚部2Aが同図の白矢印に示す橋軸方向または橋軸に垂直な方向に水平移動した場合には、軸降伏型ダンパ5の復元力によって脚部2Aを元の位置に復帰させるべく、揺れを減衰させるものとなっている。しかも、この軸降伏型ダンパ5は、各自在継手5aを介して基礎1及び脚部2Aに接続されているので、これらの連結部が剛に連結している場合に比較して、脚部2Aを転倒させるような力を軸降伏型ダンパ5が働かすのを防げるようになっている。
【0020】
なお、本実施形態では、軸降伏型ダンパ5の上端を、主桁3に接続する構成を採用したが、これに限らず、各橋脚2の上端に直接接続するものとしても良い。さらには、軸降伏型ダンパ5の本数としては、1本に限らず、2本以上用いる構成も、勿論採用可能である。
また、この軸降伏型ダンパ5を着脱可能とする構成も、採用可能である。この場合、軸降伏型ダンパ5が降伏または故障した場合に、他の軸降伏型ダンパと容易に交換することが可能となる。
【0021】
以上説明の構成を有する橋梁の耐震構造の動作について、以下に説明する。
地震の発生により、水平方向の地震力が脚部2Aに加わると、平滑面1aに対して各滑り面2aが滑るため、基礎1に対する脚部2Aの相対的な水平方向位置が変化する。
このときの軸降伏型ダンパ5は、自らの減衰力により、脚部2Aを元の位置に復帰させるように動きを減衰させるため、脚部2Aの揺れを抑制することができる。しかも、軸降伏型ダンパ5と、基礎1及び主桁3との間の連結は、自在継手5aによってなされているので、これらの連結部が剛に連結している場合に比較して、脚部2Aを転倒させるような力を軸降伏型ダンパ5が働かすのを防いでいる。
【0022】
次に、以上説明の橋梁の基礎構造の施工方法について、以下に説明する。
まず、例えば工場(作業ヤード)において、基礎1及び脚部2Aのそれぞれを、予め別個に製造しておく。このようにして製造された基礎1の上部には前記平滑面1aが形成され、また、脚部2Aの下端面には前記滑り面2aが形成されている。
そして、これらを、橋梁を据え付ける現場まで搬送し、まず、基礎1を、その平滑面1aが露出するように埋設する。その後、滑り面2aを平滑面1aに載せるようにして、脚部2Aを基礎1上に立設する。さらに、基礎1と脚部2Aの主桁3との間に、軸降伏型ダンパ5を架設する。この時、軸降伏型ダンパ5と基礎1との間、および軸降伏型ダンパ5と主桁3との間は、それぞれ前記各自在継ぎ手5aを介装して両者を連結する。
【0023】
以上説明の構成を有する、本実施形態の橋梁の基礎構造と、その施工方法によれば、基礎1の内部に空洞10を設けて浮き材8を充填する構成を採用した。この構成によれば、従来構造に比較して各段に軽量化できるので、軟弱地盤上に設置しても深く沈み込むことがない基礎構造とすることが可能になる。したがって、軟弱な地盤上に橋梁を構築することが可能となっている。
なおかつ、本実施形態の基礎構造及びその施工方法によれば、基礎1及び脚部2Aの製造を、現場で行わずに済むので、道路の閉鎖や一部車線の通行規制など、社会的、経済的な損失を最小限に抑えることも可能としている。さらには、現場での作業は、出来上がった基礎1及び脚部2Aを据え付けるだけですむので、工期を大幅に短縮することができ、この点からも、社会的、経済的な損失を最小限に抑えることに貢献している。
また、本実施形態の基礎構造及びその施工方法によれば、軸降伏型ダンパ5の減衰力によって脚部2Aの揺れを確実に抑制することができるので、優れた耐震性能を確保することが可能となる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の橋梁は、基礎構造の内部に空洞を有する構造を採用した。この構成によれば、従来構造に比較して各段に軽量化できるので、軟弱地盤上に設置しても深く沈み込むことがない基礎構造とすることが可能になる。したがって、軟弱な地盤上に橋梁を構築することが可能となる。
なおかつ、本発明の基礎構造によれば、基礎構造の製造を現場で行わずに済むので、道路の閉鎖や一部車線の通行規制など、社会的、経済的な損失を最小限に抑えることも可能としている。さらには、現場での作業は、出来上がった基礎構造を据え付けるだけですむので、工期を大幅に短縮することができ、この点からも、社会的、経済的な損失を最小限に抑えることに貢献している。
また、本発明の請求項1に記載の橋梁は、基礎構造及び脚部に対して自在継手を介して連結される軸降伏型ダンパの減衰力によって脚部の揺れを確実に抑制することができるので、優れた耐震性能を確保することが可能となる。さらに、脚部の各下端面に低摩擦部材が貼り付けられているので、軸降伏型ダンパの調整のみで、脚部の揺れの減衰を容易に制御することが可能となる。
これにより、工期の短縮、もしくは工事中の交通の妨げを最小限にしながら、軟弱地盤上に耐震構造を有する橋梁を容易に構築することができる。
【0025】
また、請求項2に記載の橋梁の基礎構造は、前記空洞に、自らの躯体よりも重量密度が小さい浮き材を設ける構成を採用した。この構成によれば、基礎構造の構造強度を向上させると同時に、軽量化を保つことも可能となる。
【0026】
また、請求項3に記載の橋梁の施工方法は、内部に空洞を有する基礎を地上に設置し、別個に作業ヤードにて製作した脚部を基礎上に立設する方法を採用した。この方法によれば、軟弱地盤上に設置しても沈まない基礎構造にすることができるので、軟弱な地盤上に橋梁を構築することが可能となる。
なおかつ、本発明の施工方法によれば、脚部の製造を現場で行わずに済むので、道路の閉鎖や一部車線の通行規制など、社会的、経済的な損失を最小限に抑えることも可能としている。さらには、現場での作業は、出来上がった脚部を据え付けるだけですむので、工期を大幅に短縮することができ、この点からも、社会的、経済的な損失を最小限に抑えることに貢献している。
また、本発明の施工方法によれば、基礎構造及び脚部に対して自在継手を介して連結される軸降伏型ダンパの減衰力によって脚部の揺れを確実に抑制することができるので、優れた耐震性能を確保することが可能となる。さらに、脚部の各下端面に低摩擦部材が貼り付けられているので、軸降伏型ダンパの調整のみで、脚部の揺れの減衰を容易に制御することが可能となる。
これにより、工期の短縮、もしくは工事中の交通の妨げを最小限にしながら、軟弱地盤上に耐震構造を有する橋梁を容易に構築することができる。
【0027】
また、請求項4に記載の橋梁の施工方法は、前記基礎をも別個に作業ヤードにて製作する方法を採用した。脚部に加えて、基礎の製造も現場で行わずに済むようになるので、道路の閉鎖や一部車線の通行規制など、社会的、経済的な損失をより抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の橋梁の基礎構造の一実施形態を示す図であって、図2のA−A矢視図である。
【図2】同橋梁の基礎構造を示す図であって、図1のB−B矢視図である。
【符号の説明】
10・・・空洞
2A・・・脚部
8・・・浮き材
Claims (4)
- 内部に空洞が設けられて上部に橋梁の脚部が立設される基礎構造と、
該基礎構造及び前記脚部に対して自在継手を介して連結される軸降伏型ダンパと、
前記脚部の各下端面に貼り付けられる低摩擦部材とを有していることを特徴とする橋梁。 - 前記基礎構造の前記空洞に、前記基礎構造の躯体よりも単位体積当たりの重量が軽い浮き材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の橋梁。
- 内部に空洞を有する基礎を地上に設置し、
別個に作業ヤードにて製作し各下端面に低摩擦部材が貼り付けられた橋梁の脚部を前記基礎上に立設し、
該基礎及び前記脚部に対して自在継手を介して軸降伏型ダンパを連結することを特徴とする橋梁の施工方法。 - 前記基礎をも別個に作業ヤードにて製作することを特徴とする請求項3に記載の橋梁の施工方法。
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