JP3776441B2 - 青銅合金 - Google Patents

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本発明は、所定の切削性を確保しつつ、機械的性質を向上させ、更には、鋳造性をも向上させた青銅合金に関する。
合金のうち、特に、青銅鋳物(CAC406)は、鋳造性、耐食性、被削性、耐圧性に優れ、溶融時の湯流れが良好であり、ある程度複雑な形状の鋳物部品に適しているため、従来より、バルブ、コック、継手等の一般配管器材などにも多く用いられている。
このCAC406は、健全な鋳物が得られやすく、質量比で5%程度のPbを含有しているので、被削性が特に良好であるため、この種の配管器材用の接水金具に多く使用されている。
この青銅合金をバルブ等の接水金具の材料に使用する場合、青銅鋳物にほとんど固溶されることなく含有されている鉛が、水中に溶出して水質を悪化させる結果となる。この現象は、特に前記接水金具内に水が滞留した場合、顕著となる。そこで、現在、盛んにいわゆる鉛レス銅合金の開発が行われ、いくつかの新合金が提案されている。その代表例を以下に説明する。
例えば、青銅合金中の鉛に代えてBiを添加し、切削性を上げ、脱亜鉛を防止した鉛レス銅合金が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、BC6(CAC406)等にCaを添加して、主にPとの化合物(CaP、Ca3)を形成させ、切削くずを細かくする作用を得ることにより、切削性を向上した無鉛青銅が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。CaPの金属間化合物を析出させることを特徴としているが、銅合金中へのCa添加はCaが活性金属である為、酸化が激しく歩留まりが著しく低いため実用上使用が困難である。また、切削性向上のためのBi添加による鋳造時のポロシティ発生を、Sbの添加により抑制し、機械的強度を上げた無鉛青銅が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。また、Niの添加については、マトリックスの強化と偏析の防止を狙って添加したものである。Tiを添加し、置換型金属間化合物として結晶を微細化すると共に、Bを添加し、侵入型金属間化合物として結晶粒界強度を補強した青銅鋳物材料が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。また、Biを添加して切削性、耐焼付性を改善すると共に、Sn、Ni、Pを添加して、耐脱亜鉛性と機械的性質を確保した無鉛快削青銅合金が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。さらに、SeとBiの添加により、特にSe−Zn化合物を析出させ、機械的性質及び切削性をCAC406と同等とした青銅合金が提案されている(例えば、特許文献6参照。)。
特公平5−63536号公報(第2−3頁) 特許第2949061号公報(第2−3頁、第2図) 特許第2889829号公報(第3−6頁) 特許第2723817号公報(第2−10頁) 特開2000−336442号公報(第3−4頁) 米国特許第5614038号明細書(第1−4頁)
上記のように、提案されている鉛レス青銅合金材料は、何れも、JIS H5120の青銅合金(CAC406)規定値(引張り強さ195N/mm以上、伸び15%以上)を確保してはいるが、市場に流通しているCAC406材の上記各特性は、引張り強さが240N/mm前後、伸びが33%前後と、JISの規格値を大幅に上回るものであり、この市場流通材と同等の機械的特性、及び切削性を確保できる合金が開発されていないのが現状であった。また、上記鉛レス青銅合金は、Pbの代替成分としてSe、Bi等を添加しているが、これらの元素は高価な希少元素であることから、希少元素の添加量を低減しつつ、市場流通材のCAC406と同等の上記各特性を確保した合金の開発が求められていた。さらに、上記鉛レス青銅合金は、機械的特性や切削性の向上に注目して提案されているものであるが、Pbは鋳物の健全性にも寄与している成分であり、鉛レス青銅合金において鋳物の健全性をどのように確保するかという点については、未解明であった。
本発明は、鋭意研究の結果開発に至ったものであって、その目的とするところは、Pbの代替成分である希少元素(Bi、又はBiとSe)等の真の特性を正確に捉えることにより、合金中の希少元素(Bi、又はBiとSe)の含有量を低減しても、従来から一般に用いられてきた青銅合金(CAC406)と同等の切削性を確保しつつ、CAC406と同等以上の機械的性質を有すると共に、未解明であったPbの代替成分(Bi、又はBiとSe)の減少が鋳物の健全性に与える影響を解明することで、鋳造欠陥の発生を抑制することを可能にし、更には、希少元素の低減により、安価に製造可能とした青銅合金とその合金を用いた鋳塊又は接液部品を提供することにある。
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、Zn5.0〜10.0質量%、Sn2.8〜5.0質量%、Bi0.4〜3.0質量%、0≦Se≦0.35質量%、0<P<0.5質量%と、残部Cuと不可避不純物からなる青銅合金であって、この青銅合金中のBiの非固溶物又はBiとSeとの組み合わせによる非固溶物の少なくとも一方の含有量を、1.20Vol%〜4.90Vol%とした青銅合金である。
本発明によると、Pbの代替成分である希少元素(Bi、又はBiとSe)等の真の特性を正確に捉えることにより、合金中の希少元素(Bi、又はBiとSe)の含有量を低減しても、従来から一般に用いられてきた青銅合金(CAC406)と同等の切削性を確保しつつ、CAC406と同等以上の機械的性質を有することが可能となった。
また、未解明であったPbの代替成分(Bi、又はBiとSe)の減少が鋳物の健全性に与える影響を解明したことにより、鋳造欠陥の発生を抑制することが可能となった。
特に、本発明によると、効果的に非固溶物量を含有することが可能となり、鋳造欠陥の発生を抑制し、耐圧性等に優れた鉛レス青銅合金を得ることが可能となった。
本発明の青銅合金は、Pbの代替成分である希少元素(Bi、又はBiとSe)等、各元素の真の特性を正確に捉え、各元素の真の特性に基づいて本発明における青銅合金の組成範囲として開発された青銅合金であり、所定の切削性、及び鋳物の健全性を確保しつつ、機械的性質を向上させるための最も好適な組成範囲により構成されており、以下に、本発明における青銅合金とその合金を用いた鋳塊又は接液部品の一実施形態を説明する。本発明における青銅合金は、Zn5.0〜10.0質量%、Sn:2.8〜5.0質量%、Bi:0.4〜3.0質量%、0≦Se≦0.35質量、及び残部Cuと不可避不純物からなる形態を採用している。本発明における青銅合金の好ましい一形態は、Sn:2.8〜5.0質量%、Bi:0.4〜3.0質量%、0≦Se≦0.35質量、Zn:5.0〜10.0質量%、Ni:3.0質量%以下、0<P<0.5質量%、Pb:0.2質量%未満、及び残部Cuからなる青銅合金である。なお、上記Seの含有量は、0.2質量%以下が好ましく、上記Snの含有量は、3.5〜4.5質量%が好ましい。
本発明における青銅合金の組成範囲とその理由について説明する。
Bi:0.4〜3.0質量%
切削性を向上させるために有効である。鋳造の凝固過程で鋳造品に発生するポロシティに入り込み、引け巣等の鋳造欠陥の発生を抑制し、鋳物の健全性を確保するためには、0.2質量%以上のSeの含有と共に、Biを0.4質量%以上含有することが有効である。一方、必要とされる機械的性質を確保するためには、3.0質量%以下とすることが有効であり、とりわけ1.7質量%以下とすることが含有量を抑えつつ、機械的性質を十分確保するために有効である。実用的には、Seの含有と共にBiを0.8〜1.7質量%含有することが好ましく、Seの最適含有量も考慮すると、約1.3質量%が最適である。
Se:0≦Se≦0.35質量%
青銅合金中にBi−Se、Se−Zn、Cu−Seの金属間化合物として存在し、Biと同様に、切削性や鋳物の健全性の確保に寄与する成分である。従って、Seの含有は、Biの含有量を抑えつつ、機械的性質や後述する鋳物の健全性の確保に有効である。ここで、量産レベルにおける青銅合金の引張り強さ等の機械的特性値は、鋳物の成分値が略同一でも、鋳造条件により、約20%の範囲内で変動するものであることが、発明者の経験により判明している。この変動により、引張り強さが最も低い値となった場合でもJISの規格値を満たすには、Seの含有量と引張り強さとの関係における引張り強さが最高値(約250)の約97%の引張り強さを確保する必要があることから、0.35質量%を上限値とした。またSeは、微量の含有でも鋳物の健全性の確保に寄与するが、その作用を確実に得るためには、0.1質量%以上の含有が有効であり、この値を好適な下限値とした。とりわけ約0.2質量%が最適である。
Sn:2.8〜5.0質量%
α相に固溶し、強度、硬さの向上、及びSnOの保護皮膜の形成により、耐摩耗性と耐食性を向上させるために含有する。Snは、実用成分範囲において、含有量を増やすにつれて、切削性を直線的に低下させる元素である。従って、含有量を抑えつつ、さらには耐食性を低下させない範囲で、機械的性質を確保することが必要となる。より好ましい範囲として、Sn含有量の影響を受けやすい伸びの特性に注目し、最高値(Sn=4.0質量%付近)の伸びを鋳造条件等が多少変化しても確実に得られる範囲として、3.5〜4.5質量%を見出した。また、従来Snは、含有量が増えるにつれてマトリックスを強化し、機械的特性を向上させる成分として知られていたが、鋭意研究の結果、Sn含有量と引張り強さの関係で、Sn含有量の低領域では、Snの含有量の増加に伴い、引張り強さが向上するが、4.4質量%付近でピークとなり、それ以上の含有では、引張り強さは低下する。さらに、Sn含有量と伸びとの関係も、引張り強さの特性と略同じ傾向を示すという特性を得た。
Zn:5.0〜10.0質量%
切削性に影響を与えずに、硬さや機械的性質、とりわけ伸びを向上させる元素として有効である。また、Znは、溶湯中へのガス吸収によるSn酸化物の生成を抑制し、溶湯の健全性にも有効であるので、この作用を発揮させるために5.0質量%以上の含有が有効である。より実用的には、BiやSeの抑制分を補う観点から7.0質量%以上の含有が望ましい。一方、Znは、蒸気圧が高いので、作業環境の確保や、鋳造性を考慮すると、10.0質量%以下の含有が好ましい。経済性も考えると、とりわけ約8.0質量%が最適である。
Ni:3.0質量%以下
Niを全く含まない場合でも、必要な引張り強さなどの機械的性質は得られるが、より効果的に合金の機械的性質を向上する場合に添加する。Niは、ある一定量まではα固溶体に固溶し、マトリックスを強化させ、機械的性質を向上させる。それ以上の含有は、Cu、Snと金属間化合物を形成し、切削性を向上させる一方、機械的性質を低下させる。機械的強度を向上させるためには、Ni0.2質量%以上の含有が有効であるが、機械的強度のピークが、約0.6質量%に存在する。よって、好適なNi含有量を0.2〜0.75質量%とした。
P:0.5質量%未満
青銅合金溶湯の脱酸を促進し、健全な鋳物、連鋳鋳塊を製作することを目的として、0.5質量%未満を添加する。過剰の含有は固相線が低下し偏析を起こしやすく、また、P化合物を生じ脆弱化する。従って、型鋳造の場合は、200〜300ppmの含有が好ましく、連続鋳造の場合には、0.1〜0.2質量%の含有が好ましい。
Pb:0.2質量%未満
Pbを積極的に含有させない不可避不純物の範囲として、0.2質量%未満とした。
本発明における青銅合金は、Pbの代替成分による非固溶物量を、1.20Vol%以上含有し、鋳造欠陥の発生を抑制している。非固溶物とは、合金中のマトリックスに固溶せず、結晶粒界や粒内に存在する元素や化合物のことをいい、この非固溶物は、青銅鋳物特有の凝固様式によるミクロポロシティーに侵入し、これを埋める作用を有するので、引け巣等の鋳造欠陥の発生を抑制し、鋳造品の耐圧性を確保した健全な鋳物を得ることができる。本発明における青銅合金は、この非固溶物を、少なくともBiにより、或いは少なくともBiとSeとの組合せにより確保している。この非固溶物の含有量は、4.90Vol%以下とすることが望ましい。
上記した本発明における青銅合金は、鋳塊(インゴット)や連続鋳造品等の中間品として提供したり、直接、鋳造・加工成形した接液部品に適用する。この接液部品は、例えば、飲料水用のバルブ、ステム、弁座、ジスク等のバルブ部品、水栓、継手等の配管器材、給排水管用機器、接液するストレーナ、ポンプ、モータ等の器具或は、接液する水栓金具、更には、給湯機器などの温水関連機器、上水ラインなどの部品、部材等、更には、上記最終製品、組立体等以外にもコイル、中空棒等の中間品にも広く適用することができる。
次に、本発明における青銅合金の試験例を説明する。表1、2に示す成分は、引張り試験片、切削性試験片を実際に分析した結果であり、特に、Pb成分は不純物レベル(0.02質量%以下)であり、また、Sb成分も不純物レベル(0.2質量%未満)となっている。
(引張り試験)
引張り試験片は、温度1130℃で鋳込み鋳造し、アムスラー試験機にて試験を行った。引張り試験の試験結果を表3に示す。
(切削性試験)
切削性試験片は、円柱状の被削物を旋盤にて旋削加工し、バイトに掛かる切削抵抗を青銅鋳物CAC406の切削抵抗を100とした切削性指数で評価した。試験条件は、鋳込み温度1180℃(CO鋳型)、被切削物の形状φ31×260mm、表面粗さR3.2、切り込み深さ片肉3.0mm、旋盤回転数1800rpm、送り量0.2mm/rev、油使用無しである。切削性試験の試験結果を表3に示す。





















Figure 0003776441










Figure 0003776441

Figure 0003776441
に、本発明における青銅合金の鋳造性について分析を行う。
青銅鋳物は、凝固温度範囲が広いため、マッシー型の凝固様式となってデンドライト間隙に微細な収縮巣を発生させる。その結果、鋳物の耐圧性能(鋳造性)を著しく劣化させる傾向がある。青銅中においてPbは、このデンドライト間隙に凝集し、微細な収縮巣を埋める役割を持つ。Pbを含有しない本発明合金では、このPbの役割をBiやSeの含有によって補っている。しかし、これらBiやSeの含有及び含有量が鋳物の耐圧性能に与える影響はあまり知られておらず、不必要にBiやSeを含有させ、材料コストを高くし、機械的性質を低下させてしまう可能性がある。そこで、Bi及びSeが鋳物の鋳造性に与える影響について調査を行い、Bi及びSeの最適配合量を決定すると同時に、Se含有の有意性を明確にする。
青銅合金は、鋳物内部に微細な収縮巣が発生しやすいことは上記の通りであるが、この傾向は徐冷される鋳物の厚肉部で特に顕著となる。これを質量効果という。質量効果の程度の評価を行うために、階段状鋳物試験片を作製し、これを切断して染色浸透探傷試験を行った。また、非固溶物(Bi相、Se−Zn相)量の体積比率の測定を併せて行った。
先ず、染色浸透探傷試験の試験方法、及び試験結果を説明する。図は、階段状鋳型の鋳造方案である。階段状鋳物の鋳造方案では、湯道にφ70×120の押湯を取り付けることが一般的であるが、図に示すように、本試験では、あえて押湯を取り除いた。これは青銅鋳物の実生産を考慮したもので、実生産の場合、型1枠における取り付け個数、鋳物形状の複雑さ、歩留り等の問題から、効果的な押湯を取り付けることが困難なためである。
階段状鋳物試験片の鋳造条件は、溶解は15Kg高周波実験炉で行い、溶解量は12Kgとし、鋳込み温度1180℃、鋳込み時間7秒、鋳型はCO鋳型、脱酸処理はP270ppm添加とした。なお、染色浸透探傷試験は、試験片の切断面に浸透液を吹き付け、これを10分間放置した後に浸透液を拭き取り、さらに、現像液を吹き付けて切断面に浮き出る赤色表示により、鋳造欠陥の有無を判定する試験である。表に、各供試品の化学成分値を表す。
Figure 0003776441
に、各供試品の染色浸透探傷試験の試験結果を表す。図2及び図3は、染色浸透探傷試験の試験結果を示した写真であり、黒く表示されている位置には、鋳造欠陥が存在することを示している。染色浸透探傷試験結果より、供試品No.6,7,14を合格とする。合格の定義は、従来材料であるCAC406(JIS)と同等の鋳造性を持ち、同様の鋳造方案での生産が可能である(○)とした。供試品No.5,13に関しては、引け巣が確認できるが、これもCAC406と同様の鋳造方案で対応できると考え、合格(△)とする。ただし、製品形状や鋳造条件によっては、欠陥の発生する製品もあり、鋳造条件や鋳造方案に多少の変更を加えなければならないと思われる。その他の供試品に関しては、不合格(×)とする。不合格となったものに関しても、鋳造方案の変更や鋳造によって良品の鋳造は可能ではあるが、コストと手間がかかることは否めない。
Figure 0003776441
次に、非固溶物(Bi相、Se−Zn相)量の体積比率の測定方法、及び測定結果について説明する。非固溶物とは、合金中のマトリックスに固溶せず、結晶粒界や粒内に存在する元素や化合物のことをいう。この非固溶物は、青銅鋳物特有の凝固様式によるミクロポロシティーに侵入し、これを埋める作用を有するので、引け巣等の鋳造欠陥の発生を抑制し、鋳造品の耐圧性を確保した健全な鋳物を得ることができる。非固溶物の例として、大多数が単独で存在するBi、Pbや、化合物として存在するSe(Bi−Se、Se−Znなど)等が挙げられる。なお、図は、非固溶物(Bi相、Se−Zn相)を示した金属組織写真(倍率400倍)である。また、Bi含有量、Se含有量とは、合金中におけるBiやSeの含有量を成分値(単位:質量%)として示したものであり、Bi相析出量、Se−Zn相析出量とは、合金中におけるBiやZnとの化合物として存在するSe−Znの含有量を体積比率(単位:Vol%)として示したものである。
非固溶物量は、合金中の組成から算出することができ、以下にその手順を示す。まず、X線解析により合金中に存在する非固溶物の種類を特定する。その後、EPMA(電子線マイクロアナライザー)、EDX(エネルギー分散型X線分析器)などを用いて面分析(マッピング)を行い、X線解析により特定された非固溶物毎にその存在比率を算出する。このようにして算出した各供試品の非固溶物量を表に表す。供試品の形状は、JIS4号引張り試験片であり、この評点中央部断面を対象に分析した。Vol%(体積比率)とは、合金全体に対する非固溶物量の体積比のことをいう。また、表中の非固溶物量実測値は、非固溶物を構成するBi相、及びSe−Zn相のVol%の合計値を表している。
非固溶物量の減少に伴い、引け巣が発生する傾向が確認された。具体的には非固溶物量が、合金全体に対する体積比率として1.4Vol%を下回ると引け巣が生じ、さらに、0.95Vol%を下回ると、引け巣が多数発生した。一方、非固溶物量が0.95Vol%より多くなると引け巣は減少した。従って、非固溶物量は、0.95Vol%より多い1.20Vol%以上、よりCAC406と同等の鋳造性を得るためには、1.4Vol%以上確保するのが有効である。
非固溶物量は、4.90Vol%を越えると、引張り強さがCAC406の規格値195N/mmの+20の製造誤差を考慮した215N/mmを下回ることが判明した。従って、Biの含有を最少に抑えてSeの含有を最大にすると共に、切削性、鋳物の健全性、及び機械的性質を確保することが可能である非固溶物量として、4.90Vol%を非固溶物量の上限値とし、1.20Vol%を下限値とするのが望ましい。
次に、BiやSeが非固溶物量の確保に、どれくらいの割合で作用しているかについて、表の実測、及び試験結果に基づいて説明する。鉛代替成分としてBiのみを含有し、1.4Vol%以上の非固溶物量を確保するためには、1.5質量%以上のBiの含有が必要である。これに対し、鉛代替成分として、Bi及びSeを含有した場合では、Seを約0.1〜0.25質量%含有することにより、Biの含有量を0.7〜1.2質量%に抑制した状態で、略同量の非固溶物量を確保することができる。これは、非固溶物のうち、Biなどは一般に単独で組織中に存在し、Biの1質量%は、非固溶物量(Bi相)0.9Vol%程度に相当するのに対し、Seは、主にSe−Zn等の金属間化合物として存在することによって、Seの1質量%は、非固溶物量(Se−Zn相)2.9Vol%程度に相当し、合金中における非固溶物量の体積比率が多く確保されることによる。
さらに、グラフを用いて説明する。Bi含有量(質量%)とBi相の析出量(Vol%)の関係を図に、Se含有量(質量%)とSe−Zn相の析出量(Vol%)の関係を図に示す。図に示すグラフの回帰直線より、Bi相は、Biの含有量(質量%)に対し、0.93倍の体積を占めることがわかる。また、図に示すグラフの回帰直線より、Se−Zn相は、Seの含有量(質量%)に対して2.86倍の体積を占めることがわかる。
Seは、Se自らの比重の軽さ(Biと比較)と、Znとの金属間化合物を作ることによって、非固溶物の析出量(Se−Zn相)がBiの3倍量得られる。従って、Seを含有することにより、Biの含有量を抑えることができ、希少元素であるPb代替成分の含有総量を抑制し、材料コストを低減させると共に、効果的に非固溶物量を確保することができ、鋳造欠陥の発生を抑制し、耐圧性に優れた鉛レス銅合金を得ることができる。
における非固溶物量理論値とは、図に示すグラフで得られた直線の回帰式Y=0.93XにBi含有量(質量%)を代入し、図に示すグラフで得られた直線の回帰式Y=2.86XにSe含有量(質量%)を代入し、それぞれ得られた値を加えることで表される理論値である。つまり、非固溶物量理論値とは下式にて表される。
非固溶物量理論値(Vol%)=0.93Bi(質量%)+2.86Se(質量%)
に示すように、非固溶物量の実測値と理論値には、やや開きのある供試品もあるが、比較的正しく近似されていることから、上記理論式に各成分値を代入することにより、材料の量産レベルでの非固溶物量を、その都度、実験を行わずとも把握でき、鋳造欠陥の発生を抑制し、耐圧性等に優れた鉛レス銅合金を得ることができる。
階段状鋳物試験片の鋳造方案を示した説明図である。 染色浸透探傷試験の試験結果(No.1〜No.7)を示した写真である。 染色浸透探傷試験の試験結果(No.8〜No.14)を示した写真である。 非固溶物(Bi相、Se−Zn相)を示した金属組織写真(倍率400倍)である。 Bi含有量とBi相析出量の関係を示したグラフである。 Se含有量とSe−Zn相析出量の関係を示したグラフである。

Claims (1)

  1. Zn5.0〜10.0質量%、Sn2.8〜5.0質量%、Bi0.4〜3.0質量%、0≦Se≦0.35質量%、0<P<0.5質量%と、残部Cuと不可避不純物からなる青銅合金であって、この青銅合金中のBiの非固溶物又はBiとSeとの組み合わせによる非固溶物の少なくとも一方の含有量を、1.20Vol%〜4.90Vol%としたことを特徴とする青銅合金。
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