JP3775588B2 - エネルギーサブトラクション処理方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエネルギーサブトラクション処理方法および装置に関し、詳細にはエネルギーサブトラクション処理のためのパラメータ変更の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、放射線写真フイルムに記録された放射線画像を光電的に読み取って画像データを得、この画像データに適切な画像処理を施した後、画像を再生記録することが種々の分野で行われている。たとえば、後の画像処理に適合するように設計されたガンマ値の低いX線フィルムを用いてX線画像を記録し、このX線画像が記録されたフィルムからX線画像を光電的に読み取って電気信号を得、この画像信号をデジタル画像データに変換し、この画像データに画像処理を施した後、コピー写真等に可視像として再生することにより、コントラスト、シャープネス、粒状性等の画質性能の良好な再生画像を得ることが行われている(特公昭61-5193 号参照)。
【0003】
また本願出願人により、放射線(X線,α線,β線,γ線,電子線,紫外線等)を照射すると、この放射線エネルギーの一部が蓄積され、その後可視光等の励起光を照射すると蓄積されたエネルギーに応じて輝尽発光を示す蓄積性蛍光体(輝尽性蛍光体)を利用して、人体等の被写体の放射線画像情報を一旦シート状の蓄積性蛍光体に記録し、この蓄積性蛍光体シートをレーザー光等の励起光で走査して輝尽発光光を生ぜしめ、得られた輝尽発光光を光電的に読み取って画像データを得、この画像データに基づき被写体の放射線画像を写真感光材料等の記録材料、CRT等に可視像として出力させる放射線画像記録再生システムがすでに提案されている(特開昭55-12429号,同56-11395号,同55-163472 号,同56-104645 号,同55- 116340号等)。このシステムは、従来の銀塩写真を用いる放射線写真システムと比較して極めて広い放射線露出域にわたって画像を記録しうるという実用的な利点を有している。
【0004】
上記システムにおいて、蓄積性蛍光体シートに照射された放射線の線量等に応じて最適な読取条件で読み取って画像信号を得る前に、予め低レベルの光ビームにより蓄積性蛍光体シートを走査してこのシートに記録された放射線画像の概略を読み取る先読みを行い、この先読みにより得られた先読画像信号を分析し、その後上記シートに高レベルの光ビームを照射して走査し、この放射線画像に最適な読取条件で読み取って画像信号を得る本読みを行うように構成されたシステムが知られている。
【0005】
ここで読取条件とは、読取りにおける輝尽発光光の光量と読取装置の出力との関係に影響を与える各種の条件を総称するものであり、例えば入出力の関係を定める読取ゲイン、スケールファクタ、あるいは読取りにおける励起光のパワー等を意味するものである。
【0006】
また、この先読みを行わずに読取条件を設定するための方法が本願出願人により提案されている(特開昭55-48672号,同55-50180号,同56-11348号等)。この方法は、蓄積性蛍光体シートに放射線を照射したときにシートから発せられる瞬時発光光を検光検出器により検出し、この瞬時発光光から放射線画像の特性あるいは蓄積性蛍光体シートに蓄積記録された放射線の蓄積量等の情報を得て、読取条件を決定する方法である。
【0007】
さらに、この先読みを行うシステムか先読みを行わないシステムかによらず、得られた画像信号(先読画像信号を含む)を分析し、画像信号に画像処理を施す際の最適な画像処理条件を決定するようにしたシステムもある。ここで画像処理条件とは、画像信号に基づく再生画像の階調や感度等に影響を及ぼす処理を該画像信号に施す際の各種の条件を総称するものであり、前述した先読みを行なわないシステムにおいては前述した読取条件である読取ゲイン、スケールファクタをも含むものである。この画像信号に基づいて最適な画像処理条件を決定する方法は、蓄積性蛍光体シートを用いるシステムに限られず、たとえば従来のX線フィルム等の記録シートに記録された放射線画像から画像信号を得るシステムにも適用されている(以下、本明細書中、このような読取条件および/または画像処理条件を決定するシステムをEDR(Exposure Data Recognizer)処理システムまたはEDR処理手段ということがある)。
【0008】
また上記のようにX線フイルムや蓄積性蛍光体シート等を用いるシステムにおいて、記録された複数の放射線画像を読み取って複数の画像データを得た後、これらの画像データに基づいて上記放射線画像のサブトラクション処理を施すことがある。
【0009】
ここで、放射線画像のサブトラクション処理とは、互いに異なった条件で撮影された複数の放射線画像の差に対応する画像を得る処理をいい、具体的にはこれら複数の放射線画像を所定のサンプリング間隔で読み取って各放射線画像に対応する複数のデジタルの画像データを得、これら複数の画像データの各対応するサンプリング点(画素)毎に減算処理を施すことにより、放射線画像中の特定の被写体部分(以下、組織または構造物等の陰影とも称する)のみを強調または抽出した放射線画像を得る処理をいう。
【0010】
このサブトラクション処理には基本的には次の二つがある。すなわち、造影剤の注入により被写体の特定の部分(たとえば人体を被写体としたときの血管等の陰影)が強調された放射線画像から造影剤が注入されていない放射線画像を引き算(サブトラクト)することによって被写体の特定の部分(血管等の陰影)を抽出するいわゆる時間サブトラクションと、被写体の特定の部分が互いに異なるエネルギーを有する放射線に対して異なる放射線吸収率を有することを利用して、同一の被写体に対して互いに異なるエネルギーを有する放射線を照射してこれら互いに異なるエネルギーを有する各放射線による複数の放射線画像を得、これら複数の放射線画像を適当に重み付けしてその差を演算すること(下記式(3)参照)によって被写体の特定部分を抽出するいわゆるエネルギーサブトラクションとがある。本出願人も蓄積性蛍光体シートを用いたエネルギーサブトラクションについて提案している(特開昭59-83486号,特開昭60-225541号)。
【0011】
Sproc=Ka・H−Kb・L+Kc (3)
ただし、Sprocはサブトラクション処理により得られるサブトラクション画像データ、Ka,Kbは重み付け係数、Kcはバイアス成分(以下、Ka,Kb,Kcをまとめてサブトラクション処理のパラメータという)、Hはいわゆる高圧側の画像データ、Lはいわゆる低圧側の画像データをそれぞれ意味する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記エネルギーサブトラクション処理に関し、被写体の放射線撮影を行なう際、所定のエネルギー分布を有する放射線を被写体に照射すると、例えば被写体の体厚に応じて放射線透過率が異なり、しかも低エネルギーの放射線ほど透過率が低いため、放射線が被写体を透過するにしたがって放射線のエネルギー分布が全体として高エネルギー側に偏るいわゆるビームハードニングの現象が生じることが知られている。
【0013】
例えば骨部の骨塩定量をエネルギーサブトラクション処理によって行なう場合、骨部の厚さが同一であってもこの骨部を取り囲む軟部組織の厚さが厚い場合はビームハードニングによる影響が大きいため骨部濃度が薄くなり、一方、軟部組織の厚さが薄い場合はビームハードニングによる影響が小さいため骨部濃度が濃くなる。
【0014】
このようにビームハードニングの影響の大小によって、抽出した組織の濃度が変動したのでは的確な診断に悪影響を与えることになる。特に過去に得られたエネルギーサブトラクション画像と現在得られたエネルギーサブトラクション画像とを比較する場合に、両画像間でビームハードニングの影響度合に差があれば、現在も病巣部が存在するにも拘らず、治癒したとの誤った判断がなされる虞れもある。
【0015】
またエネルギーサブトラクション画像は、放射線の被写体内部における散乱の影響を受けやすく、散乱の度合に応じてエネルギーサブトラクション画像の画質が変化する。したがってエネルギーサブトラクション画像の画質を向上させるためには放射線の被写体内部における散乱の影響も考慮する必要がある。
【0016】
そこで本出願人は、ビームハードニングを低減すべく、被写体の体厚やこの体厚と相関を有する所定の画像処理条件に応じて、上記サブトラクション処理の各パラメータKa,Kb,Kcをそれぞれ独立して変更するエネルギーサブトラクション処理方法を提案している(特願平8-278236号(特開平10-118056号))。
【0017】
しかし、上述したパラメータのうちバイアス成分であるパラメータKcは、エネルギーサブトラクション画像全体の濃度シフト量を規定するパラメータであるため、他のパラメータから独立して変更すると、エネルギーサブトラクション画像全体の濃度がビームハードニングの大小によって変化してしまうおそれがある。
【0018】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、放射線のビームハードニング、散乱の影響を低減しつつ、得られるエネルギーサブトラクション画像の濃度を安定させることができるエネルギーサブトラクション処理方法および装置を提供することを目的とするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明のエネルギーサブトラクション処理方法および装置は、所定のパラメータに基づいたサブトラクション処理を行なうときの、エネルギーサブトラクション画像全体の濃度シフト量に関するパラメータを、他のパラメータに基づいて算出することにより、放射線のビームハードニングや散乱の影響を低減しつつ、エネルギーサブトラクション画像の濃度を安定させるものである。
【0020】
すなわち本発明のエネルギーサブトラクション処理方法は、同一の被写体を撮影したエネルギー状態の互いに異なる複数の放射線画像を表す複数の放射線画像データについて、対応する画素ごとに前記放射線画像データの、所定のパラメータに基づいたサブトラクション処理を行なうことにより、前記放射線画像中の所望の組織の陰影を抽出または強調するエネルギーサブトラクション処理方法において、
前記所定のパラメータのうち、エネルギーサブトラクション処理によって得られるエネルギーサブトラクション画像全体の濃度シフト量に関するパラメータを、前記所定のパラメータのうち前記濃度シフト量に関するパラメータを除いた他のパラメータに基づいて算出することを特徴とするものである。
【0021】
ここで、所定のパラメータに基づいたエネルギーサブトラクション処理とは、例えば下記式に示すものを意味する。
【0022】
Sproc=Ka・H−Kb・L+Kc (1′)
ただし、Sprocはサブトラクション画像を表すサブトラクション画像データ、Hはサブトラクション処理の対象となる2つの画像データのうち高圧側の画像データ、Lは低圧側の画像データ、Ka,Kbは上記他のパラメータ(重み付けのパラメータ)、Kcは濃度シフト量に関するパラメータをそれぞれ意味する。
【0023】
高圧側の画像データ、低圧側の画像データとは、それぞれ、他方に対して相対的に高エネルギー成分が強調された(または、低エネルギー成分が抑制された)画像データ、低エネルギー成分が強調された(または高エネルギー成分が抑制された)画像データを意味するものであり、例えば、エネルギー分離フィルターを介して2枚の蓄積性蛍光体シートを重ねるなどして、1回の放射線照射でエネルギー分布が互いに異なるこれら2つの画像データをそれぞれの蓄積性蛍光体シートに略同時に記録する、いわゆる1ショットエネルギーサブトラクション撮影においては、被写体から遠い側に配された蓄積性蛍光体シートからは高圧側の画像データが得られ、被写体に近い側に配された蓄積性蛍光体シートからは低圧側の画像データが得られる。
【0024】
ここで上記式(1′)に示したエネルギーサブトラクション処理のパラメータのうち上記他のパラメータKa,Kbは、エネルギーサブトラクション処理の対象となる2つの画像データH,Lのうち一方(HまたはL)または両者を加算して得られた加算画像データ(αH+βL)を、平滑化して得られた平滑化低圧画像データXuに基づいて算出されたもの(Ka(Xu),Kb(Xu))とするのが好ましい。特にパラメータKa,Kbを、低圧側の画像データLを平滑化して得られた平滑化低圧画像データLuに依存するように算出されたもの(Ka(Lu),Kb(Lu))とするのが好ましく、式(1′)は下記式(1)のように示される。
【0025】
Sproc=Ka(Lu)・H−Kb(Lu)・L+Kc (1)
ただし、Sprocはサブトラクション画像を表すサブトラクション画像データ、Hはサブトラクション処理の対象となる2つの画像データのうち高圧側の画像データ、Lは低圧側の画像データ、Ka(Lu),Kb(Lu)は平滑化低圧画像データについての重み付けのパラメータ、Kcは濃度シフト量に関するパラメータをそれぞれ意味する。
【0026】
濃度シフト量に関するパラメータを除いた他のパラメータに基づいて算出する場合の演算としては、例えば下記式(2)を適用するのが好ましい。
【0027】
Kc=(1−Ka(Lu)+Kb(Lu))×Lu (2)
ただし、Luは平滑化低圧画像データを意味する。
【0028】
上記式(2)は、平滑化低圧画像データLuに基づいて式(1′)に示したパラメータKa,Kbを求め(すなわち、Ka(Lu),Kb(Lu)を求める)、サブトラクション画像Sprocとして軟部組織を適用した場合(軟部組織を強調・抽出することを意味する)に、式(1)において、Sproc=Lu=H=Lなる近似を適用することにより導出される。なお、この近似を適用する場合は、平滑化する以前の低圧側画像データLを、所望とする組織の陰影を最適な階調で再生し得る画像処理条件にしたがった規格化処理を予め施しておくことが好ましく、高圧側画像データについても同様に規格化処理を施しておくことが好ましい。また平滑化して得られた平滑化低圧画像データLuについてさらに規格化処理を施してもよい。高圧側画像データH、低圧側画像データL、および平滑化低圧画像データLuの濃度およびコントラストが安定し、近似するのに適切なものとなるからである。
【0029】
パラメータKa(Lu),Kb(Lu)は、そのような低圧画像についての画像処理条件と高圧画像についての画像処理条件との比に応じて変更するのも好適であり、エネルギーサブトラクション処理の対象となる2つの画像の例えばコントラストに関する条件の比、具体的には上述したEDR処理等の規格化処理において決定される読取条件および/または画像処理条件の比などである。このような読取条件または画像処理条件の比としては、その処理による放射線画像データの入出力比を表すスケールファクター値(Gp値)の比またはラチチュード値(L値=4/Gp)の比を適用するのが好ましい。
【0030】
具体的には、スケールファクタ(Gp1;高圧側,Gp2;低圧側)の比(=Gp2/Gp1)が大きくなるにしたがって、パラメータKa(Lu),Kb(Lu)を大きくすればよく、またはラチチュード(L1;高圧側,L2;低圧側)の比(=L2/L1)が小さくなるにしたがって、パラメータKa(Lu),Kb(Lu)を大きくすればよい。
【0031】
なお上述した本発明のエネルギーサブトラクション処理方法においては、エネルギーサブトラクション処理の各パラメータを、サブトラクション処理の対象画素の全てにおいて同一の値を採る必要はなく、対象画素ごとに変化するものとするのが好ましい。
【0032】
本発明のエネルギーサブトラクション処理装置は、上記本発明のエネルギーサブトラクション処理方法を実施するための装置であって、同一の被写体を撮影したエネルギー状態の互いに異なる複数の放射線画像を表す複数の放射線画像データについて、対応する画素ごとに前記放射線画像データの、所定のパラメータに基づいたサブトラクション処理を行なうことにより、前記放射線画像中の所望の組織の陰影を抽出または強調するエネルギーサブトラクション処理装置において、
前記所定のパラメータのうち、エネルギーサブトラクション処理によって得られるエネルギーサブトラクション画像全体の濃度シフト量に関するパラメータを、前記所定のパラメータのうち前記濃度シフト量に関するパラメータを除いた他のパラメータに基づいて算出する濃度パラメータ算出手段を備えたことを特徴とするものである。
【0033】
ここで、エネルギーサブトラクション処理の対象となる2つの画像データのうち一方を平滑化して得られた平滑化画像データに基づいて、または2つの画像データの加算である加算画像データを平滑化して得られた平滑化画像データに基づいて、上記他のパラメータを算出する重み付けパラメータ算出手段を備えたものとするのが好ましい。特に、エネルギーサブトラクション処理を上記演算式(1)により規定されるものとし、濃度パラメータ算出手段を上記演算式(2)にしたがって濃度シフト量に関するパラメータを算出するものとするのが好ましい。
【0034】
また、上記他のパラメータを、放射線画像中の所望とする組織の陰影を最適な階調で再生し得る、各放射線画像に対する画像処理の処理条件の比に応じて変更する重み付けパラメータ変更手段をさらに備えたものとするのが好ましく、このパラメータ変更手段を、放射線画像データの入出力比を表すスケールファクター値またはラチチュード値を上記画像処理条件として適用して、他のパラメータを変更するものとするのがより好ましい。
【0035】
【発明の効果】
本発明のエネルギーサブトラクション処理方法、装置によれば、所定のパラメータに基づいたサブトラクション処理を行なうときの、エネルギーサブトラクション画像全体の濃度シフト量に関するパラメータを、他のパラメータに基づいて算出することにより、放射線のビームハードニングや散乱の影響を低減しつつ、エネルギーサブトラクション画像の濃度を安定させることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のエネルギーサブトラクション処理方法、装置の具体的な実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0037】
図1は本発明のエネルギーサブトラクション処理装置の一実施形態の構成を示すブロック図、図2は放射線撮影装置の概略図、図3は放射線画像読取装置と、画像処理装置および図1に示したエネルギーサブトラクション処理装置を内包する画像処理表示装置を示す斜視図である。
【0038】
図示のエネルギーサブトラクション処理装置10は、エネルギー状態が相異なる2つの放射線画像P1,P2(P1;高エネルギー成分が相対的に強調された画像(以下、高圧画像という),P2;低エネルギー成分が相対的に強調された画像(以下、低圧画像という))をそれぞれ読み取って得られた2つの放射線画像データS1,S2(S1;高圧画像を読み取って得られた高圧画像データ,S2;低圧画像を読み取って得られた低圧画像データ)の規格化処理された画像データS1′,S2′(S1′;高圧画像データを規格化処理して得られた規格化高圧画像データ,S2′;低圧画像データを規格化処理して得られた規格化低圧画像データ)を記憶する内部メモリ4と、外部の画像処理装置20から入力された、低圧画像データS2を規格化した後(規格化低圧画像データS2′)に平滑化処理して得られた平滑化低圧画像データSLu′に基づいて、エネルギーサブトラクションのパラメータKa(Lu′),Kb(Lu′)を算出する重み付けパラメータ算出手段1と、同じく画像処理装置20から入力された高圧画像データS1についてのスケールファクターGp1と低圧側画像データS2についてのスケールファクターGp2との比(=Gp2/Gp1)が大きくなるにしたがって、重み付けパラメータKa(Lu′),Kb(Lu′)をそれぞれKa(Lu′)′,Kb(Lu′)′に変更する重み付けパラメータ変更手段2と、変更された重み付けパラメータKa(Lu′)′,Kb(Lu′)′および平滑化低圧画像データSLu′に基づいて濃度シフトパラメータKcを算出する濃度パラメータ算出手段3と、パラメータKa(Lu′)′,Kb(Lu′)′およびKcに基づいて、下記式(1″)にしたがって内部メモリ4に記憶された2つの規格化画像データS1′,S2′に対してサブトラクション処理を行なうエネルギーサブトラクション処理手段5とを備えた構成である。
【0039】
Sproc=Ka(Lu′)′・S1′−Kb(Lu′)′・S2′+Kc (1″)
ただし、Sprocはサブトラクション処理により得られるサブトラクション画像データを意味する。
【0040】
ここで外部の画像処理装置20は、入力された各画像データS1,S2についてそれぞれ、画像データのレベルごとの頻度の分布を示すヒストグラムを作成し、このヒストグラムの形状に基づいて所望とする画像部分に対応する画像データを認識し、その画像部分を最適な階調の可視像として再生し得るように画像データS1,S2に対して規格化処理(EDR処理)を行うとともに、規格化して得られた規格化低圧画像データS2′に対してさらに平滑化処理を施して平滑化低圧画像データSLu′を算出するものであり、具体的には、高圧画像データS1についてその頻度分布を表すヒストグラムを作成し、このヒストグラムに基づいてスケールファクターGp1,ゲインSk1を求め、これらスケールファクターGp1,ゲインSk1に基づいて高圧画像データS1に対して規格化処理を施して規格化高圧画像データS1′を得、低圧画像データS2についてヒストグラムを作成し、このヒストグラムに基づいてスケールファクターGp2,ゲインSk2を求め、これらスケールファクターGp2,ゲインSk2に基づいて低圧画像データS2に対して規格化処理を施して規格化低圧画像データS2′を得、規格化低圧画像データS2′を平滑化して平滑化低圧画像データSLu′を得る処理をなす。
【0041】
濃度パラメータ算出手段3は詳しくは、重み付けパラメータKa(Lu′)′,Kb(Lu′)′および平滑化低圧画像データSLu′に基づき、下記式(2′)にしたがって式(1″)における濃度シフトパラメータKcを算出する作用をなす。
【0042】
Kc=(1−Ka(Lu′)′+Kb(Lu′)′)×SLu′ (2′)
放射線撮影装置30の放射線管31から発せられた放射線Xが被写体(人体の胸部)40に照射される。被写体40を透過した放射線Xaは、被写体40に近い側に配された第2の蓄積性蛍光体シート52に照射され、第2のシート52に被写体40の放射線画像P2が蓄積記録される。なおこの放射線画像P2は、後述する高圧画像P1に対して相対的に低エネルギー成分を多く含むものであるため、低圧画像と称する。
【0043】
第2のシート52を透過した放射線Xbはさらに放射線の低エネルギー成分を抑制するフィルタ55に到達し、放射線Xbのエネルギーのうち低エネルギー成分が抑制された成分(相対的に高エネルギー成分が強調された成分)Xcがフィルタ55を透過し、この相対的に高エネルギー成分が強調された放射線Xcが第1の蓄積性蛍光体シート51に到達し、これにより第1のシート51に被写体40の高圧画像P1が蓄積記録される。
【0044】
被写体40には、サブトラクション処理を行なうにあたって2つの放射線画像P1,P2の位置合わせを行なうための基準となる2つのマーク41が付されている。なお上記放射線撮影装置30は1回の撮影(1ショット)で2つのシート51,52にそれぞれ放射線画像P1,P2を略同時に蓄積記録するものであるが、中間層にエネルギー分離フィルター55を有し両面に蓄積性蛍光体層を備えた単一の蓄積性蛍光体シートを用いて撮影を行なうものであってもよいし、時間的に相前後した2つのタイミングでそれぞれ1枚ずつのシートに撮影を行なうもの(2ショット)であってもよい。
【0045】
図2に示した放射線撮影装置30で撮影が行なわれた後、第1および第2の蓄積性蛍光体シート51,52が一枚ずつ放射線画像読取装置60の所定位置にセットされる。ここでは、第1の蓄積性蛍光体シート51に蓄積記録された高圧画像P1の読取りの場合について説明する。
【0046】
所定位置にセットされた、高圧画像P1が蓄積記録された蓄積性蛍光体シート51は、図示しない駆動手段により駆動されるエンドレスベルト等のシート搬送手段61により、矢印Y方向に搬送(副走査)される。一方、レーザ光源62から発せられた光ビームLはモータ63により駆動され矢印R方向に高速回転する回転多面鏡64によって反射偏向され、fθレンズ等の集束レンズ65を通過した後、ミラー66により光路を変えて蓄積性蛍光体シート51に入射し、副走査の方向(矢印Y方向)に略直交する矢印X方向に主走査する。蓄積性蛍光体シート51の、光ビームLが照射された箇所からは、蓄積記録されている高圧画像P1に応じた光量の輝尽発光光M1が発せられ、この輝尽発光光M1は光ガイド67によって導かれ、フォトマルチプライヤ(光電子増倍管)68によって光電的に検出される。
【0047】
フォトマルチプライヤ68から出力されたアナログ信号A1は、ログアンプ69で対数的に増幅された後、A/D変換器70に入力され、サンプリングされてデジタルの高圧画像データS1が得られる。この高圧画像データS1は画像処理装置20内の内部メモリ(図示せず)に一旦記憶される。
【0048】
画像処理表示装置80は、画像処理装置20およびサブトラクション処理装置10を内包するものであり、画像信号に対して各種の画像処理を施すものであり、種々の指示等を入力するキーボード81、指示のための補助情報や画像データに基づく可視画像を表示するCRTディスプレイ82、並びに画像処理装置20、サブトラクション処理装置10およびその他の演算機能を備えた本体部83が備えられている。
【0049】
次に上記と同様にして、第2の蓄積性蛍光体シート52に蓄積記録された低圧画像P2を表わす低圧画像データS2が得られ、この低圧画像データS2も画像処理装置20内の内部メモリに一旦記憶される。
【0050】
画像処理装置20は内部メモリに記憶された各画像データS1,S2についてそれぞれ規格化処理を施して規格化画像データS1′,S2′を得、その過程でスケールファクターGp1,Gp2を得る。さらに画像処理装置20は、規格化低圧画像データS2′に対して平滑化処理を施して平滑化画像データSLu′を算出し、この平滑化低圧画像データSLu′を重み付けパラメータ算出手段1に入力する。また、規格化画像データS1′,S2′は、サブトラクション処理装置10内の内部メモリ3に一旦記憶され、各スケールファクターGp1,Gp2は重み付けパラメータ変更手段2に入力される。
【0051】
重み付けパラメータ算出手段1は、入力された平滑化低圧画像データSLu′に基づいてエネルギーサブトラクションのパラメータKa(Lu′)およびKb(Lu′)を算出する。パラメータ変更手段2は入力されたスケールファクターGp1,Gp2の比(=Gp2/Gp1)を算出し、重み付けパラメータ算出手段1から入力されたKa(Lu′),Kb(Lu′)を、それぞれKa(Lu′)′,Kb(Lu′)′に変更する。そして変更された重み付けパラメータKa(Lu′)′,Kb(Lu′)′は、濃度パラメータ算出手段3およびサブトラクション処理手段5に入力される。
【0052】
濃度パラメータ算出手段3は、入力された重み付けパラメータKa(Lu′)′,Kb(Lu′)′および規格化された平滑化低圧画像データSLu′に基づいて、式(2′)にしたがって濃度シフトパラメータKcを算出し、得られた濃度シフトパラメータKcをサブトラクション処理手段5に入力する。
【0053】
サブトラクション処理手段5には、内部メモリ3から規格化高圧画像データS1′および規格化低圧画像データS2′が入力され、重み付けパラメータ変更手段2から入力された新たなパラメータKa(Lu′)′およびKb(Lu′)′、並びに濃度パラメータ算出手段3から入力された濃度シフトパラメータKcを用いた上記式(1″)にしたがって、サブトラクション画像データSprocを算出する。
【0054】
このように算出されたサブトラクション画像データSprocは、濃度シフト量に関するパラメータKcを、他のパラメータKa(Lu′)′,Kb(Lu′)′に基づいて算出することにより、放射線のビームハードニングや散乱の影響を低減しつつ、エネルギーサブトラクション画像Pproc(エネルギーサブトラクション画像データSprocが表すエネルギーサブトラクション画像)の濃度を安定させることができる。
【0055】
そして得られたサブトラクション画像データSprocは、CRT82に入力され、ビームハードニングの影響が十分に低減されるとともに安定的に所定の濃度範囲になる、診断性能の高い可視像であるサブトラクション画像Pprocとして再生され、画像読影および診断に供される。
【0056】
なお、本実施形態のエネルギーサブトラクション処理装置は、パラメータ変更手段2が、スケールファクターの比(=Gp2/Gp1)に応じて、パラメータKa(Lu′),Kb(Lu′)を変更するものとしたが、本発明のエネルギーサブトラクション処理方法、装置は、この態様に限定されるものではなく、高圧画像データS1の画像処理条件(特にコントラストに係るもの)と低圧画像データS2の画像処理条件(特にコントラストに係るもの)との比に応じてパラメータを変更するものであれば、如何なるものであってもよく、例えば、ラチチュード値(L値=4/Gp)の比に応じてパラメータを変更するものなどを適用することもできる。ラチチュード値の比に応じてパラメータを変更する場合は、このラチチュード値の比(=L2/L1:L1;高圧側画像データS1についてのラチチュード,L2;低圧側画像データS2についてのラチチュード)が小さくなるにしたがって、パラメータKa(Lu′),Kb(Lu′)が大きくなるように変更すればよい。
【0057】
なお、処理対象の複数の放射線画像データを得る方式は、上記のような蓄積性蛍光体シートを走査する方式に限られるものではなく、固体検出器を用いる方式などでもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエネルギーサブトラクション処理装置の一実施形態の構成を示すブロック図
【図2】放射線撮影装置の概略図
【図3】放射線画像読取装置と画像処理表示装置を示す図
【符号の説明】
1 重み付けパラメータ算出手段
2 重み付けパラメータ変更手段
3 濃度パラメータ算出手段
4 内部メモリ
5 サブトラクション処理手段
10 エネルギーサブトラクション処理装置
20 画像処理装置
30 放射線撮影装置
40 被写体
51,52 蓄積性蛍光体シート
82 CRT
Claims (8)
- 同一の被写体を撮影したエネルギー状態の互いに異なる複数の放射線画像を表す複数の放射線画像データについて、対応する画素ごとに前記放射線画像データの、所定のパラメータに基づいたサブトラクション処理を行なうことにより、前記放射線画像中の所望の組織の陰影を抽出または強調するエネルギーサブトラクション処理方法において、
前記サブトラクション処理が、下記演算式(1′)により規定されるエネルギーサブトラクション処理であり、
前記所定のパラメータのうち、前記エネルギーサブトラクション処理によって得られるエネルギーサブトラクション画像全体の濃度シフト量に関するパラメータを除いた他のパラメータを、前記エネルギーサブトラクション処理の対象となる2つの画像データのうち一方または両者の加算である加算画像データを平滑化して得られた平滑化画像データに基づいて算出し、
前記濃度シフト量に関するパラメータを前記他のパラメータに基づいて算出することを特徴とするエネルギーサブトラクション処理方法。
S proc =Ka・H−Kb・L+Kc (1′)
ただし、S proc はサブトラクション画像を表すサブトラクション画像データ、Hはサブトラクション処理の対象となる2つの画像データのうち高圧側の画像データ、Lは低圧側の画像データ、Ka,Kb,Kcは前記所定のパラメータをそれぞれ意味する。 - 前記エネルギーサブトラクション処理が下記演算式(1)により規定されるものであり、前記濃度シフト量に関するパラメータが下記演算式(2)により算出されるものであることを特徴とする請求項1記載のエネルギーサブトラクション処理方法。
Sproc=Ka(Lu)・H−Kb(Lu)・L+Kc (1)
Kc=(1−Ka(Lu)+Kb(Lu))×Lu (2)
ただし、Luは低圧側の画像データを平滑化して得られた平滑化低圧画像データ、Ka(Lu),Kb(Lu)は前記他のパラメータ、Kcは前記濃度シフト量に関するパラメータをそれぞれ意味する。 - 前記他のパラメータを、前記放射線画像中の所望とする組織の陰影を最適な階調で再生し得る、前記各放射線画像に対する画像処理の処理条件の比に応じて変更することを特徴とする請求項1または2記載のエネルギーサブトラクション処理方法。
- 前記処理条件が、前記放射線画像データの入出力比を表すスケールファクター値またはラチチュード値であることを特徴とする請求項3記載のエネルギーサブトラクション処理方法。
- 同一の被写体を撮影したエネルギー状態の互いに異なる複数の放射線画像を表す複数の放射線画像データについて、対応する画素ごとに前記放射線画像データの、所定のパラメータに基づいたサブトラクション処理を行なうことにより、前記放射線画像中の所望の組織の陰影を抽出または強調するエネルギーサブトラクション処理装置において、
前記サブトラクション処理が、下記演算式(1′)により規定されるエネルギーサブトラクション処理であり、
前記所定のパラメータのうち、前記エネルギーサブトラクション処理によって得られるエネルギーサブトラクション画像全体の濃度シフト量に関するパラメータを除いた他のパラメータを、前記エネルギーサブトラクション処理の対象となる2つの画像データのうち一方または両者の加算である加算画像データを平滑化して得られた平滑化画像データに基づいて算出する重み付けパラメータ算出手段と、
前記濃度シフト量に関するパラメータを前記他のパラメータに基づいて算出する濃度パラメータ算出手段とを備えたことを特徴とするエネルギーサブトラクション処理装置。
S proc =Ka・H−Kb・L+Kc (1′)
ただし、S proc はサブトラクション画像を表すサブトラクション画像データ、Hはサブ トラクション処理の対象となる2つの画像データのうち高圧側の画像データ、Lは低圧側の画像データ、Ka,Kb,Kcは前記所定のパラメータをそれぞれ意味する。 - 前記エネルギーサブトラクション処理が下記演算式(1)により規定されるものであり、前記濃度パラメータ算出手段が下記演算式(2)にしたがって前記濃度シフト量に関するパラメータを算出するものであることを特徴とする請求項5記載のエネルギーサブトラクション処理装置。
Sproc=Ka(Lu)・H−Kb(Lu)・L+Kc (1)
Kc=(1−Ka(Lu)+Kb(Lu))×Lu (2)
ただし、Luは低圧側の画像データを平滑化して得られた平滑化低圧画像データ、Ka(Lu),Kb(Lu)は前記他のパラメータ、Kcは前記濃度シフト量に関するパラメータをそれぞれ意味する。 - 前記他のパラメータを、前記放射線画像中の所望とする組織の陰影を最適な階調で再生し得る、前記各放射線画像に対する画像処理の処理条件の比に応じて変更する重み付けパラメータ変更手段をさらに備えたことを特徴とする請求項5または6記載のエネルギーサブトラクション処理装置。
- 前記パラメータ変更手段が、前記放射線画像データの入出力比を表すスケールファクター値またはラチチュード値を前記処理条件として、前記他のパラメータを変更するものであることを特徴とする請求項7記載のエネルギーサブトラクション処理装置。
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