JP3775226B2 - 液圧バルジ成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐デント性に優れた金属板の液圧バルジ成形品およびその成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のドアパネル、ボンネットおよびトランクリッドなどに代表されるような金属薄板のプレス成形品には、局所的な外力が加わった後に凹みが残りにくい性質すなわち耐デント性が要求される。
【0003】
例えば、前記ドアパネルの場合にはドアの開閉の際に取っ手付近に親指での押圧による凹み疵(以下、デントという)が生ずると美観が損なわれる。ボンネットやトランクリッドでも閉じる際の手のひらでの押圧によるデントが美観を損なう。手指による押圧ばかりでなく、走行中に飛来した小石などがこれらドアパネルやボンネットに衝突してデントを形成することもある。
【0004】
耐デント性は上記の自動車パネル部品ばかりでなく、冷蔵庫のドアのような家電機器の部品でも問題となる。デントの生じにくさ、すなわち耐デント性は成形品の板厚と材料の降伏強度の影響を受けることが知られており、板厚および降伏強度の減少とともに耐デント性が低下する。
【0005】
したがって、これら金属板のプレス成形部品の軽量化やコスト低減のために薄肉化する場合には、耐デント性が低下しないように降伏強度を増加させる必要がある。
【0006】
図5は、金属板の成形品からの引張試験片の採取位置を示す図である。上記降伏強度とは、図5に示すように金属板の成形品1の耐デント性が問題となる部位から引張試験片2を切り出して引張試験により求めた降伏強度である。
【0007】
図6は、引張試験における伸びeと引張応力σ(引張荷重/試験片の元断面積)の関係を示す。局部的外力によってパネル部品が僅かに塑性変形するだけで美観上問題となるデントが発生することから、前記降伏強度は図6における降伏点応力σyとするのが通例である。σyが大きいほど耐デント性が向上することはいうまでもない。
上記の自動車パネル部品等の金属板の成形品は、これまでプレス成形により製造されてきた。
【0008】
図7は、従来のプレスによる金属板の成形方法を説明するための図である。図7(a)はダイス周辺部の断面図で成形直前の状態、図7(b)は成形が完了した状態をそれぞれ示し、図7(c)はダイスから取り出した成形品の斜視図である。
【0009】
プレス成形に際し、先ず図7(a)に示すように素材金属薄板3(以下、ブランクという)をプレスベッド11に固定されたダイス4にセットし、上方から図示しない駆動装置で降下せしめたプレスラム12に取り付けられたブランクホルダ5でブランク周縁部3bを所定の荷重でダイス押さえ面4aに押圧する。
【0010】
この時、ダイス穴4eの周囲のダイス押さえ面4aおよびブランクホルダ面5aに対向して設けられた凹凸部8(以下、ビードという)でブランク周縁部3bをクランプする。ついで、上方から図示しない別の駆動装置で降下せしめた別のプレスラム13に取り付けられたパンチ6をブランクホルダ5の内側空間を貫通させて降下せしめる。パンチ6がダイス穴内の金属薄板3を変形させるにつれてその金属薄板に作用する引張力が増大し、ブランク周縁部3bがダイス穴4eに向かって引き込まれ始める。
【0011】
図7(b)は、パンチ6が下死点まで降下し、パンチ底面6aとダイス底面4bの間で成形面7aが形成された状態を示す。この後、パンチ6ついでブランクホルダ5を上昇させて成形品7を取り出す。
【0012】
図7(c)は、成形品7を示し、成形品周縁部7b(以下、フランジという)にはビード8による凹凸模様7dが残る。次工程以降でフランジ7bの切断などを行い、図5に示したような金属板のプレス成形品1とする。
【0013】
上記プレス成形においては、引張力によって成形面7aを伸び変形させることが重要である。
【0014】
第一の理由は、成形面7aが曲面の場合には、伸び変形が極端に小さいと弾性回復によって所定の製品曲率半径が得られないことである。この場合には、成形面7aの張り剛性(弾性的なたわみにくさ)が小さく、局部的な荷重を加えた時にべこつくという不具合がある。
【0015】
第二の理由は、伸び変形による成形面7aの降伏応力σyの増加が小さいと前述の耐デント性が問題となることである。成形面7aの材料は周囲から引張力が作用する二軸引張状態にあり、成形面7aの伸び変形量を増加させるには、プレス成形中の成形面7aに作用する引張力を大きくする必要がある。金属薄板材料の強度、板厚および成形面7aの面積が大きいほど成形面7aを伸ばすのに必要な引張り力が大きくなる。この引張力はパンチ6によってフランジ7bがダイス穴4eに引き込もうとする時の抵抗(以下、絞り抵抗という)によって生み出される。絞り抵抗は、ブランクホルダ5の押さえ力(以下、しわ押さえ力という)およびフランジ7bの面積が大きいほど大きくなる。しかし、しわ押さえ力は使用するプレス機械の能力によって制約され、フランジ7bの面積は材料歩留の点から最小にされるので、絞り抵抗をこれらの手段で確保することは難しい。
【0016】
ビード8は絞り抵抗の不足を補うもので、フランジ7bが通過する際の曲げ変形によって絞り抵抗を付与する。ビード8は、図7(c)に示すように、ダイス穴輪郭の直辺部などフランジの絞り抵抗が小さい部位に配置される。
【0017】
ところで、上記プレス成形においては、絞り抵抗が成形面7aを伸び変形させる力として直接的に伝わりにくいという問題がある。この要因は二つある。
【0018】
第一の要因は、パンチ底面6aおよびパンチ肩6bと材料の間の摩擦で、この摩擦力が成形面7aの伸び変形を抑制する。パンチ底面6aの面積が大きいほど摩擦の影響が大きいことはいうまでもない。
【0019】
第二の要因は、パンチ肩6bでの材料の曲げである。成形面7aで材料が伸びるためにはパンチ肩6bを通って材料が壁側にせり出す必要があり、パンチ肩6bでの曲げと摩擦抵抗がその邪魔をする。パンチ肩6bの曲げ半径が小さいほどその影響が大きい。
【0020】
以上の要因によって成形面7aの伸び変形が抑制されるので、図7(c)に示す成形深さHを増加させても、成形面7aの伸び変形を増加させることは難しい。プレス成形法で成形面7aに付与できる二軸引張伸びを一軸引張伸びに換算した値(以下、成形面相当ひずみという)は高々2%程度であり、張り剛性を満足しても耐デント性の不足が問題となる。成形面相当ひずみをさらに増加させ、加工硬化で成形面7aの降伏応力σyを向上させることは上記プレス成形法では困難である。そのため、プレス成形で得られる程度の大きさの成形面相当ひずみで耐デント性に必要な降伏応力σyが得られるように、素材金属薄板の強度特性を選定するという考え方がとられてきた。すなわち、耐デント性が問題となるプレス成形品の板厚を減少させる場合には耐デント性が低下しないように高強度の金属薄板を選定する必要があり、鋼板の分野ではいわゆる高張力鋼板が使用されるようになってきたのである。
【0021】
耐デント性の観点からプレス成形品の成形に高強度の金属薄板を使用する場合には二つの問題がある。
【0022】
第一は、材料の伸び延性が低下するので、図7(b)において伸び変形が集中するパンチ肩6bとダイス肩4cの間で材料が破断し易くなることである。
【0023】
第二は、材料の強度増加とともにプレス成形後の成形面7aの弾性回復が大きくなり、所定の曲面形状が得られなくなることである。これらの問題から素材金属薄板の強度が制約され、例えばドアパネル用の鋼板の場合の降伏点は250MPa、引張強さは380MPa前後が上限とされている。したがって、耐デント性の点から素材鋼板を薄くすることが制約され、自動車のパネル部品用の鋼板では0.7mm程度が下限となっている。成形面相当ひずみを増加させ、加工硬化によって降伏強度を向上させることができれば、張り剛性を満足する範囲で素材鋼板の板厚をさらに薄くしても耐デント性を確保することが可能となる。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、膨出面(プレス成形品における成形面に相当)における相当ひずみが2%以上である耐デント性に優れた金属板の液圧バルジ成形品を製造する方法を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のような状況に鑑み、成形面における相当ひずみを2%以上と高めることを目標に実験、検討した結果、以下の知見を得るに至った。
【0026】
a)プレス成形法において、成形面の伸び変形が抑制されるのは、成形の初期段階において素材金属板がパンチ底の曲面およびパンチ肩部に巻き付き、パンチと素材金属板間の摩擦抵抗およびパンチ肩部での曲げ抵抗がパネル面の伸びを阻害している。したがって、成形面の伸び変形を増加させて耐デント性を向上させるためには成形面の中央領域から伸び変形が開始する成形方法を採用する必要がある。
【0027】
b)その成形方法としては、液圧バルジ成形方法が最適である。
【0028】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
【0030】
(1)成形品の外郭形状と同じ内郭形状をしたダイス穴とそのダイス穴の周縁部全周にビード溝を有するダイス押え面とを備えたダイスと、前記ビード溝に嵌合するビード山を有するブランクホルダ押え面を備えたブランクホルダとを用いて金属板を液圧バルジ成形し、耐デント性に優れた成形品を液圧バルジ成形する方法であって、ブランクホルダに金属板を載置し、ダイス押さえ面とブランクホルダ押さえ面とで金属板を押圧狭持し、ダイス穴に対向する部位の金属板とブランクホルダ間に加工液を注入し、その液圧により金属板を前記ダイス穴内に膨出せしめるとともに、前記ビード山と金属板との間に作用する圧力によりブランクホルダと金属板の間からの加工液の漏れを防止しつつ、前記ダイス押さえ面とブランクホルダ押さえ面の間からダイス穴に流入する金属板の流入量を調整し、ダイス穴の内郭形状と同一形状に成形することを特徴とする金属板の液圧バルジ成形方法。
【0031】
(2)ダイス押え面とブランクホルダ押え面とで金属板に加える押圧力を制御することによりダイス穴への金属板の流入量を成形加工中に調整することにより、膨出面の相当ひずみ量を調整する前記(1)に記載の液圧バルジ成形方法。ここで、相当ひずみとは、膨出面における二軸引張り伸びを一軸引張り伸びに換算した値をいう。
【0032】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の液圧バルジ成型品の成形方法の実施態様の一例を説明するための図である。図1(a)は、金属板をブランクホルダにセットした成形直前のダイス周辺の断面図、図1(b)は成形完了状態を示すダイス周辺の断面図、図1(c)は液圧バルジ成形品の斜視図である。
【0033】
図1は、素材の金属板3(以下ブランクという)を図示しないプレス機のベッド31に固定されたブランクホルダ21の上面にセットし、ダイス20を取り付けたプレス機のスライド30を図示しない駆動装置で降下せしめ、図示しない加圧装置でブランク3をブランクホルダ21に所定の力(以下、ダイス押え力という)で押しつけた状態を示す。
【0034】
なお、ダイス20とブランクホルダ21の上下関係を逆にしても特に問題はないが、以下に述べる成形終了後の加工液の排出の容易さを考慮すれば、図1(a)に示す上下関係が好ましい。
【0035】
ダイス20は、製品の成形品の外郭形状と同一内郭形状のダイス穴20aを有し、以後の成形工程においてダイス穴内の空気を外部に逃がす空気抜き孔20dが穿たれている。空気抜き孔20dは成形品にその圧痕が残らないように、例えば隅R部20fに設ける。ブランクホルダ21には、ダイス穴20aに対面するブランクホルダ上面に開口している加工液注入路21dおよび加工液排出路21eが設けられている。これら注入路および排出路は着脱自在の継ぎ手22を介して、それぞれ外部配管23、24に連結されている。ダイス面20bにはダイス穴20aの周囲を取り囲むビード溝20gが設けられており、またこれに対向してブランクホルダ面21bに設けられたビード山21gが設けられている。これらビードによりブランク周縁部3bがクランプされている。
【0036】
図2は、クランプ状態を示すブランク周縁部の拡大断面図である。図2(a)は、成形前のクランプ状態を示す図、図2(b)は成形途中のビード部の金属板の状態を示す図、図2(c)は、ビード山をブランクホルダ面ではなくダイス面に設けた場合を示す図である。
【0037】
図2(a)に示すように、ビード溝20gとビード山21gの間隔g1は、後述する加工液をシールするのに重要であり、ビード溝20gがビード山21gに沿ってブランクが押しつけられるように設定する。間隔g1はブランク3の板厚tと同一でよいが、ブランク3をクランプする際にビード山21gに当接する部位で板厚が減少する場合には、それを見込んで間隔g1を板厚tよりも小さくしておくのがよい。なお、間隔g1を小さくし過ぎると、ビード山21gより外側でブランク周縁部3bを押さえられなくなるので、この後の成形工程でブランク周縁部にしわが生ずる危険がある。
【0038】
図1(a)に示すようにブランク3をクランプした後、図示しないポンプにより、配管23から加工液注入路21dを通して加工液を、ダイス穴20aと対向する部位のブランク3とブランクホルダ21との間に注入する。ブランク3とブランクホルダ21間には空気が残っており、また加工液注入路21dから加工液とともに空気が入ってくることがあるので、この空気を加工液とともに加工液排出路21eから配管24を通して排出する。
【0039】
なお、空気の排出は、加工液の昇圧が残留空気によってスムースに行われなくなるのを防止するためである。この後、配管24の延長上にある図示しないバルブを閉じ、加工液の圧力を増加させると、ダイス穴20a内のブランク3は膨出し、点線で示すドーム状の膨出部30aが形成される。ブランク周縁部3bがクランプされているので、膨出部30aは二軸引張状態で伸ばされ、その伸び変形量はドーム中心部で最も大きい。ドームの頂部がダイス面20bに接触した後は、接触域の拡がりとともに伸び変形が大きい領域がその周縁部に拡大していく。なお、接触部ではダイス内郭部20cとの摩擦抵抗によって伸び変形が増加しにくくなるので、ダイス内郭部20cは平滑に仕上げておくことが望ましい。
【0040】
図1(b)は、膨出部40aがダイス穴内郭部全体に接触し、成形が終了した状態を示す。この後、加工液25の圧力を低下させ、配管24の延長上の図示しないバルブを解放して加工液を排出し、ダイス20を上昇させ、図1(c)に示す成形品40を取り出す。しかる後、ビード模様40cを有するフランジ40bは必要部位を残して切り落とされ、図5に示すような液圧バルジ成形品となる。本発明の成型品は、液圧バルジ成形加工によりブランクに膨出部を成形した製品であり、膨出部の形状は限定されなく、耐デント性が問題となる自動車の外板や家電製品および電気機器のパネル部品等である。金属板は、主に鋼板であるがアルミニウムやその合金等の金属板も含む。
【0041】
上記成形工程における加工液圧力は、成形終了時に最大となるように設定するのが通例である。
【0042】
図3は、成形工程における成形終了直前の状態を示すクランプ部周辺の断面図である。例えば、図3に示すように、ダイス内郭部で最も曲率半径が小さい隅R部20fにブランクを押しつけるのに必要な加工液25の圧力が最大となる。
【0043】
加工液圧力を所定の値にするには、図1(b)におけるフランジ40bとブランクホルダ周縁部21bから加工液が漏れないようにシールすることが重要であることはいうまでもない。上記成形法でのシールは、主としてビード山21gとブランクの間に作用する面圧で行う。もちろん、ダイス押え力によるブランクホルダ面21bとフランジ40bの間でのシールもある程度は可能であるが、大面積のフランジ全体をシールするのはプレス機のスライド30の加圧能力から限界がある。また、成形中にフランジ40bがダイス穴20aに向かって流入すると、フランジの周方向部位によって肉厚変化が異なるためにフランジ面の加圧力が小さい部位が生じ、シールができなくなる。これに対し、ビード山21gでの面圧によるシールは、ダイス押え力が小さくても成形の全過程で有効に行うことができる。
【0044】
加工液の圧力が小さい成形初期段階では、図2(a)に示すように、ビード溝20gでのビード山21gへの押しつけでシールが可能である。加工液の圧力が増加して図2(b)に示すように膨出部40aに作用する引張り力が増加すると、ビード山21gに巻き付いているブランク3の板厚も若干減少し、ビード溝20gによるビード山21gへの押しつけ力が消滅する。しかし、成形途中の膨出部40aからの矢印ロで示す引張力によってブランクがビード山21gに押しつけられるので、その面圧によってシールが行われる。加工液圧力が増加するほどビード山21gでの面圧が増加して、シール能力が向上するという機能もある。なお、ビード山21gにブランクを押しつけるためには矢印ハで示すビード山21gの外側からの引張力も必要で、成形終了時点においてもビード山21gの外側にフランジが残るようにしておく必要がある。
【0045】
ところで、ビード山21gをブランクホルダ面21bではなくダイス面20bに設けた場合には、加工液圧力が大きくなるにつれてシールが難しくなる。図2(c)はこの状況を示し、ビード山21gから内側のブランクの板厚が減少すると、加工液のシールはビード溝肩部21i、21jで行わざるを得ない。これらの部位でのブランクの巻き付き角θ2、θ3は、図2(b)でのビード山20gへの巻き付き角θ1よりも小さく、かつ板厚減少によってさらに巻き付き角が減少するので加工液が漏れ易い。したがって、ビード山21gはブランクホルダ面21bに設けることが推奨される。
【0046】
なお、図2aにおいて、ビード山21gおよびビード溝断面形状が円弧状のいわゆる丸ビードが示されているが、必ずしも丸ビードに限定されるものではない。ダイス穴20a内のブランクの膨出に伴う引張り力によってビード山21gあるいはビード溝肩部20i、20jでブランクが破断しないように丸みを持たせ、必要に応じてダイス押え力を低下させた時にフランジがビード山21gとビード溝20gの間を通過できるような形状であればよい。
【0047】
上述のように、図1で説明した成形方法においては製品膨出面となる膨出部40aの中央部から伸び変形が開始され、それが周辺に拡大していくので、図7で示したプレス成形法よりも大きな膨出面相当ひずみを与えることができる。膨出面相当ひずみを大きくするには、膨出部40aの大部分の領域がダイス内郭部20cに接触するまでの過程でダイス穴20aへのフランジ40bの流入を防止すればよい。また、これ以上に膨出面相当ひずみを大きくする必要がある場合には、図1(c)に示す膨出深さHを増加させ、図1(a)においてダイス内郭部20cに接触するまでのドーム状膨出部40aの高さを大きくとればよい。逆に、膨出深さHが大きい条件で膨出面相当ひずみを適当な大きさに抑制する必要がある場合には、ダイス押さえ力を低下させるなどの手段で成形の初期段階からフランジ流入を適宜許容すればよい。膨出面相当ひずみを適当な大きさに抑制するのは、膨出面の板厚の影響を考慮する必要があることによる。
【0048】
第1に、膨出面相当ひずみの増加に伴う板厚減少が張り剛性の低下をもたらすという問題がある。第2に、膨出面相当ひずみが増加するにつれて降伏強度σyの上昇代が小さくなる一方、板厚減少の影響で耐デント性が向上しなくなると考えられる。
【0049】
本発明者らは、板厚0.7mm、降伏点210MPa、引張強さ370MPaの薄鋼板を使用し、図1における内郭部20cが平面寸法400mm角、底面曲率半径2000mmのダイスを用いて、膨出面相当ひずみを変化させた図1cに示す深さH=50mmの成形品40を作製し、膨出部40aの中央に半径25mmの半球状ゴム圧子を介して集中荷重を負荷し、深さ0.02mmのデントを生ずる荷重(以下、デント荷重という)を調査した。
【0050】
図4は、実験結果を示すデント荷重と膨出相当歪みとの関係を示す図である。図4から明らかなように、膨出面相当ひずみの増加とともにデント荷重は増加するが、膨出面相当ひずみ10%付近でデント荷重が飽和し、これ以上の膨出面相当ひずみではデント荷重が低下する傾向がある。したがって、膨出面の相当ひずみの上限を10%とした。一方、膨出面相当ひずみが2%未満のものは従来のプレス成形法でも得られるので、下限を2%とした。
【0051】
なお、膨出面における二軸引張り伸びの一軸引張り伸びへの換算は、一般に使用される下記の式を用いることによりおこなうことができる。
【0052】
【数1】
【実施例】
(実施例1)板厚0.7mm、降伏点210MPa、引張強さ370MPaの薄鋼板を使用し、図7(a)における底面6aが平面寸法400mm角、曲率半径2000mmのパンチ6を用いて、図7(c)に示す深さH=50mmの成形品7を作製した。この時の成形面相当ひずみは1.5%であった。成形面7aの中央に半径25mmの半球状ゴム圧子を介して集中荷重を負荷したところ、深さ0.02mmのデントが生ずる荷重デント荷重は14kgであった。一方、図1で説明した本発明の方法によれば、図4に示すように、膨出面相当ひずみを2〜10%に選択することにより、19kg〜29kgのデント荷重が得られ、プレス成形法では達成困難な高い耐デント性を有するパネル部品が得られた。
【0053】
(実施例2)板厚0.75mm、降伏点190MPa、引張強さ350MPaの薄鋼板を使用し、実施例1と同一のダイスを用いてプレス成形法により、図7(c)に示す深さH=50mmの成形品7を作製した。この時の成形面相当ひずみは1.8%であった。実施例1と同様の試験方法でデント荷重を調査したところ18kgであった。一方、前記薄鋼板とほぼ同一の強度特性を有する板厚0.65mm、降伏点180MPa、引張強さ350MPaの薄鋼板を使用し、図1で説明した本発明の方法により前記プレス成形法と同一寸法の図1cに示した成形品40を作製した。成形面相当ひずみは5%であった。同様の試験方法でデント荷重を調査したところ20kgであった。すなわち、本発明の成形方法により、同等以上の耐デント性を有する成形品を約14%薄厚の鋼板で製作できた。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、浅底大面積の金属板の液圧バルジ成形品の膨出面の伸び変形を従来のプレス成形法よりも大きくすることが可能であり、加工硬化によってパネル面の耐デント性を向上させることができる。その結果、使用する金属板の板厚を減らすことが可能であり、成形品の重量およびコストの低減に大きな効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液圧バルジ成形品の成形方法法を説明するためのダイス周辺部の断面図である。
【図2】ビード山、ビード溝による加工液シール状態を説明するための図である。
【図3】成形終期における金属板とダイス形状との関係を説明するための図である。
【図4】膨出面相当ひずみとデント荷重との関係を示す図である。
【図5】成形品から引張試験片を採取する状態を説明するための図である。
【図6】 引張り試験片での引張試験における降伏点応力を説明するための図である。
【図7】プレス成形に使用する金型と成形法を説明するための図である。
【符号の説明】
3 金属板
4、20 ダイス
5、21 ブランクホルダ
20a ダイス穴
20g ビード溝
21 ブランクホルダ
21g ビード山
20b ダイス押さえ面
21b ブランクホルダ押さえ面
21d 加工液注入路
21e 加工液排出路
Claims (2)
- 成形品の外郭形状と同じ内郭形状をしたダイス穴とそのダイス穴の周縁部全周にビード溝を有するダイス押え面とを備えたダイスと、前記ビード溝に嵌合するビード山を有するブランクホルダ押え面を備えたブランクホルダとを用いて金属板を液圧バルジ成形し、耐デント性に優れた成形品を液圧バルジ成形する方法であって、
ブランクホルダに金属板を載置し、ダイス押さえ面とブランクホルダ押さえ面とで金属板を押圧狭持し、ダイス穴に対向する部位の金属板とブランクホルダ間に加工液を注入し、その液圧により金属板を前記ダイス穴内に膨出せしめるとともに、前記ビード山と金属板との間に作用する圧力によりブランクホルダと金属板の間からの加工液の漏れを防止しつつ、前記ダイス押さえ面とブランクホルダ押さえ面の間からダイス穴に流入する金属板の流入量を調整し、ダイス穴の内郭形状と同一形状に成形することを特徴とする金属板の液圧バルジ成形方法。 - ダイス押え面とブランクホルダ押え面とで金属板に加える押圧力を制御することによりダイス穴への金属板の流入量を成形加工中に調整することにより、膨出面の相当ひずみ量を調整すること特徴とする請求項1に記載の液圧バルジ成形方法。
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