JP3772696B2 - 高強度鋼管用鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスパイプラインや水道配管等の流体輸送用配管、またはガス貯蔵用の鋼管などに好適な鋼管用鋼板及びその製造方法に関し、特に内圧による破壊に対して高い抵抗力を有する高強度鋼管用鋼板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
UOE鋼管はガスパイプラインや水道配管等の流体の輸送用配管として広く用いられているが、近年輸送のコストを削減するために、パイプラインの高圧化に対する要求が高まっている。ラインパイプの溶接欠陥、外的要因により生じた傷、腐食による減肉部等から延性的にき裂が発生する延性破壊が生じると、これが原因でバースト破壊を生じる場合や、長距離き裂伝播(不安定延性破壊)を生じる場合がある。パイプラインが高圧化すると、延性破壊がバースト破壊や不安定延性破壊に進展して鋼管が破壊される危険性が高まることが予想される。不安定延性破壊を防ぐことを目的として、特開昭62−4826号公報には金属組織をベイナイト単一組織とすることによって吸収エネルギーを高めたラインパイプ用鋼板の製造方法が、また特開平10−17986号公報には鋼板表層部を超微細組織とすることによって不安定破壊の停止性能を高めた鋼材が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし一度発生したき裂の高速伝播を抑制することは難しく、また、減圧時に相変態挙動(ガス→ガス+ミスト)を示す天然ガスなどでは、相変態によってガスの減圧が阻害されるため、き裂の停止がさらに困難になる場合がある。
【0004】
よって、ラインパイプの不安定延性破壊を防ぐためには、溶接欠陥や外的要因による傷または腐食による減肉部等からのき裂の発生を抑制することが望ましい。欠陥や傷などからの脆性破壊の発生に対しては、WES2805やBS7910等に脆性破壊に対する安全性の評価手法が示されており、また材料面でも高靭性化の対策が以前からなされているが、延性破壊の発生を防ぐための対策はほとんどなされていないのが実情である。
【0005】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、高い内圧を受ける鋼管において溶接欠陥や外的要因により生じた傷または腐食による減肉部等からの延性破壊の発生を抑制することにより、バースト破壊及び不安定延性破壊を防ぐことができる高強度鋼管用鋼板及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
【0007】
(1)、質量%で、C:0.03〜0.1%、Si:0.01〜1%、Mn:0.5〜2%、P:0.02%以下、S:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、金属組織がベイナイト分率90%以上の組織であり、圧延垂直方向の応力歪曲線において0.5〜3%の降伏伸びを有することを特徴とする鋼板の圧延垂直方向の降伏比が84%以下の高強度鋼管用鋼板。
【0008】
(2)、前記鋼板が、さらに、質量%で、Cu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%の中から選ばれる1種または2種以上、かつNb:0.005〜0.1%、V:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.1%の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、(1)に記載の鋼板の圧延垂直方向の降伏比が84%以下の高強度鋼管用鋼板。
【0010】
(3)、(1)または(2)に記載の化学成分を有する鋼を、1000〜1200℃に加熱し、950℃以下のオーステナイト温度域で圧下率50%以上で圧延を行った後、Ar3温度以上から平均冷却速度10℃/秒以上で400℃超え650℃以下まで冷却することを特徴とする、鋼板の圧延垂直方向の降伏比が84%以下の高強度鋼管用鋼板の製造方法。
【0011】
(4)、(1)または(2)に記載の鋼板を、冷間成形により鋼管とした後、拡管率0.5〜2%で拡管を行うことを特徴とする鋼管の管周方向の降伏比が88%以下の高強度鋼管の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、外的要因による傷を想定した切欠きを有する鋼管の内圧による破壊挙動に関して鋭意研究を行い、内圧による切欠きからの延性破壊発生を抑制するためには、鋼管の管周方向での降伏比を低下させて切欠き部への歪の集中を防ぐと共に、鋼材のミクロ組織を最適化して延性き裂の発生を抑制することが効果的であるとの事実を見出した。
【0013】
建築用低降伏比鋼などにおいて、鋼材の低降伏比化により形状不連続部への歪集中が低減され、構造物としての変形性能が向上することが知られており、鋼管においても切欠き部への歪集中を低減することが可能である。内圧を受ける鋼管の場合は管周方向にフープ応力を受けるため、管周方向を低降伏比化する必要がある。管周方向の引張特性の評価は、一般的に矯正により平板とした全厚試験片によってなされるが、この場合、矯正時に鋼管外面側が圧縮変形を受けるため、そのバウシンガー効果によって降伏強度が低下し、見かけ上低降伏比となる。しかし、UOE鋼管などの造管工程で拡管を受ける鋼管は、拡管時の加工硬化によって降伏強度が上昇するため、矯正を受けない部分から切り出した丸棒試験片によって引張特性を評価すると、管周方向の降伏比は高くなる。このように、拡管工程を経て製造された多くの鋼管は、通常の矯正試験片によって管周方向の降伏比は見かけ上低く評価されているが、実際には拡管時の加工硬化によって高降伏比となっている。
【0014】
本発明者らは、拡管後の鋼管の周方向の降伏比を低下させるために必要な鋼板の材質特性及び鋼板の製造条件について検討を行った。拡管時の加工硬化挙動は鋼板の応力歪曲線の影響を大きく受け、加工硬化率の高い鋼材は拡管による降伏強度の上昇が大きくなるが、適当な長さの降伏伸びを有している鋼板を用いれば、拡管時の変形を降伏伸びで吸収することができ、拡管による降伏強度の上昇を抑制することが可能となる。そしてオーステナイト温度域で圧延を行った後、加速冷却を施すことでミクロ組織をベイナイト主体の組織とし、比較的高温で加速冷却を停止すれば、降伏棚を有する応力歪曲線を得ることができ、降伏伸びを有する鋼板が得られることを見出した。
【0015】
上記のような応力歪曲線を有する鋼板を用いて製造された鋼管は、拡管による降伏強度の上昇量が低いため従来の鋼管に比べ管周方向の降伏比が低くなる。これによって内圧を受けるときの切欠き部での歪集中を防ぐことができるため、延性破壊発生の抑制に対して効果的であり、耐内圧破壊特性が向上する。
【0016】
一方、延性破壊は鋼中介在物からのボイド発生、成長そしてその連結によって生じるとされており、介在物の低減によって延性が向上することは以前から知られているが、本発明者らは鋼材の延性き裂発生抵抗を更に向上させるために、鋼材のミクロ組織と延性き裂発生挙動に関して検討を行った。その結果、ベイナイト組織中にフェライト相やマルテンサイト相などの強度の異なる組織が混在すると、鋼材が変形を受けたときに、それらの強度が異なる組織の界面または軟質相へ歪の集中が起こり、その部分からボイドの発生成長を生じるため、延性破壊を生じやすくなることを見出した。すなわち、鋼材の組織をベイナイト主体の組織とすることによって延性破壊の発生を抑制することが可能である。そして、ベイナイト主体の組織を得るために鋼板の製造条件を検討した結果、オーステナイト温度域で圧延を行った後、加速冷却を施し、比較的高温で冷却を停止することによって、フェライトまたはマルテンサイト等のベイナイト以外の組織の生成を抑制でき、ミクロ組織がベイナイト主体の組織となることがわかった。
【0017】
以上のように、本発明の最大の特徴は鋼板の金属組織と応力歪曲線を規定することにより造管後の鋼管の延性破壊発生を防止することであり、これによりバースト破壊及び不安定延性破壊を防止して、耐内圧破壊特性を向上させることができる。以下、本発明の各要素について具体的に説明する。
【0018】
金属組織:ベイナイト主体の組織とする。ベイナイト組織は強度靭性を兼ね備えた優れた組織であるが、軟質なフェライト相が混在すると、変形時にフェライト相に優先的に変形が集中するため、降伏棚のある応力歪曲線が得られないだけでなく、フェライト相がボイドの発生場所となるため延性き裂が発生しやすくなる。また、ベイナイトより硬質なマルテンサイト相が混在する場合も、降伏棚のある応力歪曲線が得られず、ベイナイトとマルテンサイトの界面近傍に歪が集中しボイドの発生を促進し、延性破壊が生じやすくなる。また、パーライトが混在した組織の場合も同様に組織の界面近傍に歪集中を起こし延性破壊が生じやすくなる。よって、金属組織はベイナイト主体の組織にする必要がある。しかし、ベイナイト以外の組織の体積分率が低い場合はその影響が無視できるため、トータルの体積分率で10%以下、好ましくは5%以下の他の金属組織、すなわちフェライト、マルテンサイト、パーライトの1種以上を含有してもよい。
【0019】
圧延方向に対して垂直な方向(圧延垂直方向)の応力歪曲線:降伏棚を有し、0.5〜3%の降伏伸びを有するものとする。図1に応力歪曲線における降伏伸びの定義を示す。応力歪曲線における降伏点の不連続部(降伏棚)の長さが降伏伸びである。一般に、鋼板の圧延方向に対して垂直な方向(圧延垂直方向)が鋼管の管周方向と一致しているため、鋼板の圧延垂直方向の引張特性が重要である。応力歪曲線に降伏棚がある場合、拡管による圧延垂直方向の引張変形を降伏伸びによって吸収することができ、加工硬化による降伏強度の上昇量が低減できるため、従来の鋼管に比べ管周方向の降伏比を低くすることが可能となる。降伏伸びが0.5%未満では拡管による加工硬化量が大きくなるため、鋼管の降伏比が上昇する。一方、降伏伸びが3%を超えると、拡管後も管軸方向の応力歪曲線に長い降伏伸びが残留するため、座屈特性が劣化する。よって、鋼板の圧延垂直方向の応力歪曲線における降伏伸びを0.5〜3%有するものとする。
【0020】
次に成分の限定理由について述べる。
【0021】
C:0.03〜0.1%とする。Cは鋼材の強度を確保するとともに、ベイナイトの生成を促進するために必要な元素である。0.03%未満ではベイナイト変態が生成し難く、0.1%を超えて添加すると溶接性を劣化させるので、0.03〜0.1%とする。
【0022】
Si:0.01〜1%とする。Siは脱酸のため添加するが、0.01%未満では脱酸効果が十分でなく、1%を超えると靭性や溶接性を劣化させるため、Si含有量を0.01〜1%とする。
【0023】
Mn:0.5〜2%とする。Mnは強度、靭性のため添加するが、0.5%未満ではその効果が十分でなく、2%を超えると溶接性が劣化するため、Mn含有量を0.5〜2%とする。
【0024】
P:0.02%以下とする。Pは不可避不純物として含有されるが、靭性及び溶接性を劣化させるため、P含有量の上限を0.02%とする。
【0025】
S:0.005%以下とする。Sは不可避不純物として含有されるが、一般的に鋼中においてはMnS介在物となりボイドの発生起点となるため、延性き裂の発生を防ぐためにはその含有量を厳しく規制する必要がある。しかし、0.005%以下であれば問題ないので、S含有量の上限を0.005%とする。
【0026】
本発明では上記の化学成分の他に、以下の元素を選択元素として含有することができる。
【0027】
Cu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%とする。Cu、Ni、Cr、Moは選択元素であり、強度を高める場合、Cu、Ni、Cr、Moの中から選択される1種または2種以上添加することができる。各元素とも、0.05%未満では効果がなく、0.5%を超えると溶接性が劣化するので、添加する場合は0.05〜0.5%とする。
【0028】
Nb:0.005〜0.1%、V:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.1%とする。Nb、V、Tiは選択元素であり、靭性および強度を高める場合、Nb、V、Tiのうち、いずれか1種または2種以上添加することができる。各元素とも、0.005%未満では効果がなく、0.1%を超えると溶接部の靭性を劣化させるので、添加する場合は0.005〜0.1%とする。
【0029】
Ca:0.0005〜0.0025%とする。Caは介在物の制御のために添加することができる。0.0005%未満では効果がなく、0.0025%を超えると介在物量が増えて靭性が劣化するので、添加する場合は0.0005〜0.0025%とする。
【0030】
B:0.001%以下とする。Bは焼入れ性向上による高強度化のために添加することができる。0.001%を超えると靭性が劣化するので、添加する場合は0.001%以下とする。
【0031】
上記以外に脱酸剤としてのAl、介在物の制御のためのREMを必要に応じて添加することができる。
【0032】
上記以外の残部は実質的にFeからなる。残部が実質的にFeからなるとは、本発明の作用効果を無くさない限り、不可避不純物をはじめ、他の微量元素を含有するものが本発明の範囲に含まれ得ることを意味する。
【0033】
次に本発明の製造方法について説明する。本発明の鋼板の金属組織及び圧延垂直方向の応力歪曲線は、上記の化学成分を有する鋼を、1000〜1200℃に加熱し、950℃以下のオーステナイト温度域で圧下率50%以上で圧延を行った後、Ar3温度以上から平均冷却速度10℃/秒以上で400℃超え650℃以下まで冷却することによって得ることができる。加熱温度、圧延条件、冷却開始温度、鋼板平均冷却速度、冷却停止温度の限定理由は以下の通りである。
【0034】
加熱温度:1000〜1200℃とする。本発明の成分を有する鋼(スラブ)の圧延前の加熱温度が1000℃未満では強度が得られず、1200℃を超えると靭性やDWTT特性が劣化するため、1000〜1200℃とする。
【0035】
圧延条件:950℃以下のオーステナイト温度域で圧下率60%以上とする。加速冷却前の鋼板の結晶粒が粗大であると、冷却後の鋼板強度が上昇し、靭性が劣化する。オーステナイト未再結晶温度域に相当する950℃以下のオーステナイト温度域で圧下率60%以上で圧延を行うことにより結晶粒を微細化することができる。
【0036】
冷却開始温度:Ar3温度以上とする。圧延終了後、引き続いて加速冷却をフェライト生成量が多くなる温度域から開始すると、フェライト相が混在したベイナイト組織となり、本発明の効果が得られないため、冷却開始温度をAr3温度以上とする。ここで、Ar3温度はフェライト変態が開始する温度であり、たとえば下記(1)式により求めることができる。
Ar3(℃)=910-310C-80Mn-20Cu-15Cr-55Ni-80Mo・・・(1)
ただし、(1)式に示す元素記号は各元素の質量%を表す。
【0037】
鋼板平均冷却速度:10℃/秒以上とする。圧延後の冷却速度が速いほど微細で均質なベイナイト組織が得られるため、強度・靭性が向上するだけでなく、耐延性き裂抵抗も高まる。しかし、10℃/秒未満では十分な効果が得られず、また冷却過程でパーライトが生成するため耐内圧破壊特性が低下するので、鋼板平均冷却速度を10℃/秒以上とする加速冷却を行う。
【0038】
冷却停止温度:400℃超え、650℃以下とする。加速冷却における冷却停止温度が400℃以下になると、マルテンサイト変態が生じる場合や、ベイナイト組織中に島状マルテンサイトが生成する場合があるため、本発明の効果が得られない。また650℃を超える温度で加速冷却を停止するとベイナイト組織を得ることができず、十分な強度が得られない。よって、加速冷却の停止温度は400℃超え、650℃以下とする。加速冷却停止後は、空冷を行う。
【0039】
次に、本発明の鋼板を用いた鋼管の製造方法を説明する。上記の鋼板を用いて、冷間成形によって鋼管とし、造管工程において拡管率0.5〜2%で拡管を行う。冷間成形方法はいかなる方法によっても良いが、工業的にはUOEプロセス、プレスベンドプロセスまたはロール成形等があり、その後溶接によって鋼管とする。拡管率は、拡管前の鋼管の直径に対する、拡管後の鋼管の直径の増加分の比で定義する。温間または熱間で成形を行うと、強度の低下を招くだけでなく、ベイナイトの分解によってセメンタイトが生成し、延性き裂が発生しやすくなるため、鋼管成形は冷間で行う必要がある。また鋼管の真円度を高めるために、通常は造管の最終工程において拡管を行う。拡管率が0.5%未満だと、高い真円度が得られないだけでなく、管軸方向の応力歪曲線においても長い降伏棚が残留し、耐座屈性能が劣化する。拡管率が2%を超えると、加工硬化によって管周方向の降伏強度の上昇量が高くなるため、鋼管の管周方向の降伏比が高くなる。よって、拡管率を0.5〜2%とする。
【0040】
【実施例】
表1に本実施例で用いた供試鋼(鋼種A〜C)の化学成分を、表2に各供試鋼から製造した鋼板(No.1〜10)の製造条件、金属組織、機械的性質を示す。本実施例で用いた供試鋼はいずれも化学成分が本発明の範囲内であり、1100℃に加熱した後、950℃以下のオーステナイト温度域で圧下率60%で熱間圧延を施した。冷却開始温度、冷却速度、冷却停止温度は表2に示すように変化させた。鋼板の機械的性質を全厚試験片を用いて評価し、圧延垂直方向の降伏応力(YS)、引張強度(TS)、降伏比(YR)、降伏伸びを測定した。そして、これらの鋼板を用いてUOEプロセスにより、管厚18mm、外径760mmの鋼管を製造し、その最終工程で種々の拡管率で拡管を施した。拡管後の鋼管について、管周方向から丸棒試験片(平行部径:6mmφ、標点間距離:25mm)を切り出して、降伏応力(YS)、引張強度(TS)、降伏比(YR)を測定した。また拡管後の鋼管について図2に示すように、長さ8mの鋼管1の中央部の管軸方向に、深さ14mm、幅4mm、長さ350mmの表面切欠2を機械加工によって付与し、鋼管1の両端部に耐圧キャップ3を取り付けたのち、水圧によるバースト試験を行い、バースト破壊圧力を測定して耐内圧破壊特性を評価した。表2に拡管率、鋼管の管周方向特性、バースト破壊圧力を併せて示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
No.1〜6は本発明例であり、いずれもベイナイト単一の組織で、鋼管の管周方向の降伏比(YR)が低いために、バースト試験でのバースト破壊圧力が高い。一方、No.7は冷却開始温度が本発明範囲より低いため、組織がベイナイトとフェライトの混合組織となり、さらに、鋼板の応力歪曲線に降伏伸びが見られないため、鋼管のYRが高くなっており、バースト破壊圧力が低い。No.8は冷却速度が本発明範囲より遅いために、フェライト+パーライト組織となり、降伏伸びが本発明の範囲外となり、バースト破壊圧力が低い。No.9は冷却停止温度が低いため、島状マルテンサイトを含んだベイナイト組織となり、また降伏伸びもないため拡管後のYRが高く、バースト破壊圧力が低くなっている。No.10は鋼板の製造条件は本発明の範囲内であるが、造管時の拡管率が本発明範囲より高いため、鋼管の管周方向のYRが高くなりすぎ、バースト破壊圧力が低下している。
【0044】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、内圧に対して高い耐延性破壊性能を有した鋼管を提供することができ、ガスパイプライン、水道配管等の流体輸送用または貯蔵用等で高い内圧下で使用できる鋼管が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】応力歪曲線における降伏伸びを示すグラフ。
【図2】バースト試験における表面切欠きの説明図。
【符号の説明】
1、鋼管
2、表面切欠
3、耐圧キャップ
Claims (4)
- 質量%で、C:0.03〜0.1%、Si:0.01〜1%、Mn:0.5〜2%、P:0.02%以下、S:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、金属組織がベイナイト分率90%以上の組織であり、圧延垂直方向の応力歪曲線において0.5〜3%の降伏伸びを有することを特徴とする鋼板の圧延垂直方向の降伏比が84%以下の高強度鋼管用鋼板。
- 前記鋼板が、さらに、質量%で、Cu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%の中から選ばれる1種または2種以上、かつNb:0.005〜0.1%、V:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.1%の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の鋼板の圧延垂直方向の降伏比が84%以下の高強度鋼管用鋼板。
- 請求項1または請求項2に記載の化学成分を有する鋼を、1000〜1200℃に加熱し、950℃以下のオーステナイト温度域で圧下率50%以上で圧延を行った後、Ar3温度以上から平均冷却速度10℃/秒以上で400℃超え650℃以下まで冷却することを特徴とする、鋼板の圧延垂直方向の降伏比が84%以下の高強度鋼管用鋼板の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載の鋼板を、冷間成形により鋼管とした後、拡管率0.5〜2%で拡管を行うことを特徴とする鋼管の管周方向の降伏比が88%以下の高強度鋼管の製造方法。
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