JP3771634B2 - 酸化クロム含有ダストの有効利用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の溶鋼を各種の製鋼炉で製造する際に発生する酸化クロム(例えば、Cr2 O3 など)を含有する酸化クロム含有ダスト、特にあるチャージにおけるステンレス溶鋼を製造する際に発生する酸化クロムに富む酸化クロム含有ダストを、他のチャージにおけるステンレス溶鋼を製造する際に使用することにより、その有効利用を図る酸化クロム含有ダストの有効利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種の溶鋼、特にステンレス溶鋼を製造する際に各種の製鋼炉(例えば、転炉や電炉、AOD炉など)から発生するダスト中に、CrやNiなどの有価金属が多量に含まれていることが広く知られている。
そこで、このCrやNi等の有価金属を再利用する方法が提案されている。
例えば、(1)特公昭56−52965号公報には、精錬初期の底吹き転炉内にペレット状に加工されたダストを装入することにより、その精錬過程で有価な金属を回収する方法が提案されている。
また、(2)特開昭53−46240号公報には、前記のCrやNiなどの有価金属を含有するダストを鋼屑と共に電気炉で溶解した後、酸化精錬して脱炭する方法も提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の方法では、未だ、以下の課題を有していた。
前記(1)の方法では、精錬初期に底吹き転炉内にダストを装入しても、スラグ中の炭素濃度が低く、また、精錬開始後であることから、底吹き転炉内が強酸化性雰囲気となっているため、ダスト中の酸化クロムの還元速度が遅く、十分に還元することができないという問題があった。
また、前記(2)の方法では、CrやNiなどの有価金属を含有するダストを鋼屑と共に電気炉で溶解するため、電気アークによる溶解の際に、ダストが溶解前に再飛散してCrやNiなどの有価金属の還元回収率が低下するという問題があった。また、電気アークによる溶解によってダスト飛散量が上乗せされ、精錬サイクル毎にその量が増加するなどの問題もあった。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、各種の溶鋼を製造する際に発生する酸化クロム含有ダスト、特にあるチャージにおいてステンレス溶鋼を製造する際に発生する酸化クロムに富む酸化クロム含有ダストを、他のチャージにおいてステンレス溶鋼を製造する際に使用して、有効利用を図ると共に、その効率的な還元を図ることができる酸化クロム含有ダストの有効利用方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う請求項1記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法は、クロムを含有する溶鋼を製造する際に発生する酸化クロム含有ダストを、ステンレス溶鋼を製造する際に利用する方法であって、前記酸化クロム含有ダストを、精錬炉内に前チャージで生成された脱炭スラグを残存させたまま装入し、次いで、次チャージ用の溶銑を装入し炭材を添加して吹酸することにより、前記脱炭スラグ及び前記酸化クロム含有ダスト中の酸化クロムを溶鉄中に還元し、その後、前記酸化クロムが還元された後のクロム回収済スラグを排滓し、次いで、フラックスを装入して吹酸することにより、前記脱炭スラグ及び前記酸化クロム含有ダスト中の酸化クロムが還元されてなる溶鉄を脱炭して、前記ステンレス溶鋼を製造する。
【0006】
請求項2記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法は、請求項1記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法において、前記酸化クロム含有ダストとして、該酸化クロム含有ダストにバインダーを加えて形成されたペレットを用いる。
請求項3記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法は、請求項2記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法において、前記ペレットの平均粒径が1〜50mmの範囲内である。
【0007】
請求項4記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法において、前記精錬炉内に残存される前記脱炭スラグの塩基度(CaO/SiO2 )が1〜3の範囲内である。
請求項5記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法において、前記精錬炉内に残存される前記脱炭スラグのMgO濃度が3〜15wt%の範囲内である。
請求項6記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法において、前記ステンレス溶鋼を製造する際に、前記精錬炉内に還元材を装入する。
【0008】
なお、ここで、精錬炉とは、上吹き転炉や上底吹き転炉などに代表される、溶銑又は精錬中の溶鉄に酸化性ガスを吹き付けて、脱炭スラグなどの還元、又は脱炭精錬を行なうことにより、溶鋼を吹酸精錬するものをいう。
また、溶銑とは、高炉で製銑される溶銑や、該溶銑に脱珪又は脱燐若しくは脱硫などのいずれか1以上の溶銑予備処理を行ったものをいう。
また、溶鉄とは、溶銑や溶銑予備処理を行ったものに、脱炭及び/又はスラグ還元などの処理を行っているものをいう。
【0009】
この際、精錬炉内に装入する際の溶銑の温度は1400℃〜1700℃の範囲内であるのが望ましい。
これは、前記温度が1400℃未満になると脱炭スラグや酸化クロム含有ダスト中の酸化クロムを効率的にかつ高反応速度で還元することができなくなる傾向が現れ、また、前記温度が1700℃を超えると精錬炉の炉体を構成する耐火物などが溶損し易くなる傾向が現れるからである。
【0010】
また、酸化クロム含有ダストとは、精錬炉のほか、底吹き転炉などを含む転炉や、電気炉、AOD炉などの製鋼炉から発生する高温の排ガスを、燃焼式や非燃焼式の排ガス冷却設備で冷却処理する際、バグフィルターやベンチュリスクラバー、乾式又は湿式の電気集塵機などの集塵機で回収される約1〜250μm程度の微細なものをいう。
この際、酸化クロム含有ダストは、微粉状のままでは、取扱いが困難であるため、水やベントナイトなどのバインダーを加えてペレット状にするのが望ましい。この場合、ペレットの平均粒径は1〜50mmとするのが望ましい。
これは、平均粒径が1mm未満になると酸化クロム含有ダストが飛散し易くなる傾向が現れ、また、平均粒径が50mmを超えると脱炭スラグとの反応性が悪くなる傾向が現れるからである。
【0011】
また、精錬炉内に残存される脱炭スラグの塩基度は1〜3とするのが望ましい。これは、塩基度が1未満になると脱炭スラグの流動性が悪くなる傾向が現れ、また、塩基度が3を超えると脱炭スラグ中にCaO・Cr2O3が形成され易くなって、脱炭スラグや酸化クロム含有ダスト中の酸化クロムが還元し難くなる傾向が現れるからである。
また、精錬炉内に残存される脱炭スラグのMgO濃度は3〜15wt%とするのが望ましい。これは、MgO濃度が3wt%未満になると脱炭スラグの流動性が悪くなる傾向が現れ、また、MgO濃度が15wt%を超えると脱炭スラグ中にMgO・Cr2O3が形成され易くなって、脱炭スラグや酸化クロム含有ダスト中の酸化クロムが還元し難くなる傾向が現れるからである。
【0012】
また、炭材としては、石炭やコークス、ピッチコークスなどが使用できる。なお、炭材を使用する場合、ステンレス溶鋼を製造する際に、適度な量を連続的又は断続的に装入してもよいし、例えば、酸化クロム含有ダストを装入するときなどに、一度に適度な量入れてもよい。
また、還元材としては、炭材より酸素との親和力の強い、金属Alや、金属Si、又は前記金属Alを含有するアルミ灰、Fe−Si、Fe−Alなどが使用できる。なお、還元材は、脱炭スラグ中のC濃度がある程度低くなって酸化クロムなどが還元され易くなったとき装入するのが望ましい。
【0013】
また、吹酸とは、精錬炉内の溶銑又は溶鉄に酸化性ガス(例えば、純酸素や、該純酸素にArガスやN2 ガスなどの不活性ガス、又はCO2 ガスなどの希反応性ガス、そのほか空気などを混合したものなど)を吹き込むことをいう。
また、フラックスとしては、生石灰やドロマイト、蛍石などが使用できる。また、必要に応じて、フラックスと共に、ステンレス溶鋼のCr濃度を調整するクロム調整材(例えば、フェロクロム合金など)を装入してもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係る酸化クロム含有ダストの有効利用方法を適用するステンレス溶鋼の製造方法の説明図、図2は溶銑(又は溶鉄)の精錬時間と溶銑(又は溶鉄)中のCr濃度との関係を示す特性図である。
本発明の一実施の形態に係る酸化クロム含有ダストの有効利用方法の特徴は、各種の溶鋼を製造する際に発生する酸化クロムを含有する酸化クロム含有ダスト、例えば、図示しないOG方式の非燃焼式排ガス冷却設備における集塵器、例えば、ベンチュリスクラバーで回収された集塵ダストを、ステンレス溶鋼を製造する際に使用する点である。以下、これらについて詳しく説明する。
【0015】
まず、本発明の一実施の形態に係る酸化クロム含有ダストの有効利用方法に用いる精錬炉の一例である上底吹き転炉10について説明する。
図1(a)〜(c)に示すように、上底吹き転炉10は、上端部に炉口11a、及び上部側方に出鋼口11bを有すると共に、底部のガス送気口(図示せず)に接続されたガス送気管12を有する、ほぼ徳利状の炉体11を、傾動手段の一例であるトラニオンリング方式の傾動手段によって、傾動可能に支持した周知構造のものであり、その周囲には、炉体11内に溶銑16を装入する取鍋13が、搬送手段の一例であるクレーン(図示せず)により移動可能に配置されると共に、炉体11内に酸化性ガスの一例である純酸素14aを吹き込むランス14が上下動自在に配置されている。なお、溶銑16は脱珪や脱燐、脱硫などの溶銑予備処理を行った次チャージ用のものである。
【0016】
なお、図1中、符号15は前チャージで生成された脱炭スラグ、符号15aは集塵ダスト及び炭材の一例であるコークスを含む脱炭スラグ、符号15bは吹酸中の脱炭スラグ、符号15cは脱炭スラグ15b中の酸化クロムを後述する溶鉄16b中に還元してなるクロム回収済スラグ、符号15dはクロム回収済スラグ15cを排滓した後、吹酸を行っている際の脱炭スラグ、符号16aは吹酸中の溶鉄、符号16bはクロム回収済スラグ15cを排滓している際の溶鉄、符号16cはクロム回収済スラグ15cを排滓した後、吹酸を行っている際の溶鉄である。
【0017】
続いて、本発明の一実施の形態に係る酸化クロム含有ダストの有効利用方法について説明する。
まず、図1(a)に示すように、前チャージで生成された塩基度(CaO/SiO2 )1〜3、MgO濃度3〜15wt%の脱炭スラグ15を、上底吹き転炉10の炉体11内に残存させたまま、市販のペレタイザーなどにより形成された平均粒径1〜50mmのペレット状の集塵ダストを装入した後、複数回、炉体11を揺すって攪拌する。
【0018】
次に、図1(b)に示すように、炉体11を取鍋13の方へ傾けた後、取鍋13を炉体11の方へ傾けながら、炉体11内に1400〜1700℃の溶銑16を装入し、次いで、コークスを添加した後、図1(c)に示すように、炉体11を起こして、ランス14を降下させ、炉体11内に純酸素14aを吹き込んで、吹酸を開始する。
この際、溶銑16の温度が約1400〜1500℃のときは、脱炭スラグ15aの還元の際に溶銑16の吹酸昇温及び炭材の燃焼昇温を行って、約1600〜1700℃となるまで昇温してもよい。
【0019】
次に、溶銑16及び脱炭スラグ15aが吹酸されてなる溶鉄16a及び脱炭スラグ15bが吹酸され、脱炭スラグ15b(即ち、脱炭スラグ15及び集塵ダスト)中の酸化クロムが溶鉄16a中に還元されることにより、該溶鉄16a中のCr濃度が所望のCr濃度値となると、純酸素14aの送給を停止すると共に、ランス14を上方に引き上げて、吹酸を停止する。
次いで、図1(d)に示すように、出鋼口11bが上方になるように、炉体11を傾けて、クロム回収済スラグ15cの一部又は大部分を排滓する。
【0020】
そして、図1(e)に示すように、炉体11を起こして、フラックスの一例である生石灰、及びクロム調整材の一例であるフェロクロム合金を装入した後、再度、ランス14を降下させると共に、炉体11内に純酸素14aを吹き込んで、吹酸を開始する。
最後に、溶鉄16cの脱炭が進んで、溶鉄16cのC濃度が所望のC濃度となったとき、純酸素14aの送給を停止すると共に、ランス14を引き上げて、吹酸を停止し、その後、図1(f)に示すように、出鋼口11bが下方になるように、炉体11を傾けて、ステンレス溶鋼16dを出鋼する。
【0021】
以上のように本発明の一実施の形態に係る酸化クロム含有ダストの有効利用方法においては、上底吹き転炉10内に前チャージで生成された脱炭スラグ15を残存させたまま、平均粒径1〜50mmのペレット状の集塵ダストを装入し、次いで、次チャージ用の溶銑16を装入しコークスを添加して吹酸することにより、脱炭スラグ15及び集塵ダスト中の酸化クロムを溶鉄16a中に還元し、その後、クロム回収済スラグ15cを排滓し、次いで、生石灰及びフェロクロム合金を装入して吹酸することにより、溶鉄16cを脱炭して、ステンレス溶鋼16dを製造するので、集塵ダストの廃棄などを防止して、ステンレス溶鋼16dを製造する際に有効利用することができると共に、集塵ダストを流動性の良好な脱炭スラグ15に一旦溶解させることにより、集塵ダスト中の酸化クロムを容易に還元することができ、かつ、その反応速度を速めることができる。
【0022】
【実施例】
続いて、本発明の一実施の形態に係る酸化クロム含有ダストの有効利用方法の確認試験を行った結果について説明する。
(実施例1〜4、比較例1、2)
まず、許容転炉容量175tの上吹き転炉による精錬操業の予備試験として、この上吹き転炉の縮小版である試験炉内に、脱炭スラグとして、特開平7−216429号公報などに記載のステンレス溶鋼の製造方法と略同様にして、Cr系ステンレス溶鋼を製造する際に発生する塩基度(CaO/SiO2 )約1.5、MgO濃度約10wt%の脱炭スラグを装入すると共に、酸化クロム含有ダストとして、OG方式の非燃焼式冷却設備のベンチュリスクラバーにより回収された平均粒径約60μm程度の集塵ダストを装入して攪拌した後、溶銑として、C濃度約3.5〜4wt%、Cr濃度約0.02wt%、約1400℃の溶銑を70kg装入し、その後、純酸素を吹き込んで、20分間精錬を行った(実施例1〜4)。なお、許容転炉容量とはその転炉で精錬できる溶銑の重量である。
【0023】
また、前記試験炉内に(前記脱炭スラグを装入せずに)前記集塵ダスト及び前記溶銑を70kg装入した後、前記と同様、純酸素を吹き込んで、20分間精錬を行った(比較例1、2)。
この際、実施例1、2の脱炭スラグの装入量はいずれも2kg、実施例3、4の脱炭スラグの装入量は4kg、実施例1、2及び比較例1の集塵ダストの装入量は2kg、実施例3、4及び比較例2の集塵ダストの装入量は4kgとした。
その結果を表1及び図2に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
なお、表1中「評価」の欄は、精錬開始から20分経過してできたステンレス溶鋼中のCr濃度がより高いものを◎、高いものを○、低いものを△、低過ぎるものを×で評価した。
【0026】
表1及び図2から明らかなように、集塵ダストの装入量を2kgとした実施例1、2及び比較例1では、精錬開始から20分経過してできたステンレス溶鋼中のCr濃度が、それぞれ、0.20wt%(実施例1)、0.17wt%(実施例2)、0.10wt%(比較例1)であった。
また、集塵ダストの装入量を4kgとした実施例3、4及び比較例2では、精錬開始から20分経過してできたステンレス溶鋼中のCr濃度が、それぞれ、0.38wt%(実施例3)、0.33wt%(実施例4)、0.28wt%(比較例2)であった。
【0027】
この結果、(1)集塵ダストの装入量が増加するに伴ってステンレス溶鋼中のCr濃度が増加すること、(2)脱炭スラグの有無により、ステンレス溶鋼中のCr濃度が変化する(即ち、脱炭スラグを装入して精錬を行ったときのステンレス溶鋼中のCr濃度の方が、脱炭スラグを装入しないで精錬を行ったときのステンレス溶鋼中のCr濃度より高くなっている)ことがわかった。
【0028】
ここで、前記(2)の結果は、集塵ダストを溶銑(又は溶鉄)中の炭素で還元する場合、該集塵ダストを一旦流動性の良好な脱炭スラグに溶解させることにより、前記酸化クロムを溶銑中に容易に還元することができると共に、酸化クロムの還元(即ち、溶銑中へのクロムの増加)速度を向上させることができたためであると考えられる。
【0029】
即ち、(1)集塵ダストは鉄の周囲を酸化クロムが覆った構造、又は全体が酸化クロム主体の酸化物となっているため、溶銑との反応性が悪い、(2)集塵ダストと溶銑との濡れ性が悪いため、溶銑と集塵ダストとの接触面積が小さくなって、反応性が悪い、(3)脱炭スラグや溶銑の熱などにより集塵ダスト同士が吸着合体するため、溶銑との反応性が低下する、(4)集塵ダストが微粉であるため、その取扱い性を考慮して、ペレット化するなど、平均粒径を大きくすると、前記の如く、吸着合体して、更に反応性が低下する。
【0030】
これに対し、(1)上吹き転炉内に溶銑を装入しない状態で、脱炭スラグと集塵ダストを接触させると(図1(a)参照)、脱炭スラグと集塵ダストのいずれもが酸化物同士であるため、脱炭スラグと集塵ダストとの濡れ性が非常に良好で、これにより、集塵ダストの脱炭スラグへの溶解速度は非常に速くなる、(2)脱炭スラグと溶銑とは互いに溶融した液体であるため、脱炭スラグと溶銑の接触性が良好で、これにより、反応に必要な界面積を確保することができる。
【0031】
従って、酸化クロムを含有する集塵ダストを一旦脱炭スラグに溶解させ、その後、脱炭スラグ中の酸化クロムを溶銑中の炭素などで還元することができ、しかも、還元速度を向上させることが可能となったと推察される。
【0032】
また、その場合、集塵ダスト中の酸化クロムを脱炭スラグ中に溶解させるに障害となるCaO・Cr2 O3 やMgO・Cr2 O3 の極力形成されない条件とするのが望ましく、それには、塩基度(CaO/SiO2 )を1〜3、MgO濃度を3〜15wt%の範囲内にすることが望ましいこともわかった。
【0033】
(実施例5〜11、比較例3〜5)
次に、許容転炉容量175tの上吹き転炉内に、前記脱炭スラグを20t残存させたまま、表2に示す通り、前記集塵ダスト及び炭材としてコークスをそれぞれ所定量装入した後、複数回炉振りを行い、その後、前記溶銑を約160t装入し、次いで、純酸素を吹き込んで、吹酸を開始した。以下、本発明の一実施の形態に係る酸化クロム含有ダストの有効利用方法と同様にして、精錬操業を行った(実施例5〜11)。
【0034】
【表2】
【0035】
また、前記上吹き転炉内に前記脱炭スラグ20tを残存させたまま(前記集塵ダストを装入せずに)、表2に示した通り、前記炭材を所定量装入して複数回炉振りした後、前記溶銑を160t装入し、次いで、純酸素を吹き込んで吹酸を開始し、その後、本発明の一実施の形態に係る酸化クロム含有ダストの有効利用方法と同様にして、精錬操業を行った(比較例3〜5)。
【0036】
この際、コークスの装入量は1チャージ当たり5tとした。また、集塵ダストの装入量は、それぞれ、溶銑1t当たり、20kg(実施例5)、25kg(実施例6)、40kg(実施例7)、50kg(実施例8)、40kg(実施例9〜11)とした。
【0037】
また、実施例9〜11では、前記集塵ダストと共に還元材(但し、実施例9では、還元材の一例である金属Alを溶銑1t当たり40kg、実施例10では、還元材の一例である金属Siを溶銑1t当たり50kg、実施例11では、還元材の一例であるアルミ灰を溶銑1t当たり60kg)を装入した。
その結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
なお、表3中「生産性」の欄は、特開平7−216429号公報などに記載のステンレス溶鋼の製造方法と略同等の精錬時間であったものを○で評価した。また、表3中「評価」の欄は、出鋼後のステンレス溶鋼のCr還元量がより高いものを◎、高いものを○、低いものを△で評価した。
【0040】
表3から明らかなように、実施例5〜8では、前記と同様、集塵ダストの装入量を増加させると、ステンレス溶鋼中のCr還元量が、それぞれ、ステンレス溶鋼1t当たり、26.2kg(実施例5)、27.5kg(実施例6)、28.2kg(実施例7)、29.1kg(実施例8)と増加することがわかった。
【0041】
また、実施例9〜11では、集塵ダスト及び炭材の装入量を一定にしたまま、還元材を装入すると、ステンレス溶鋼中のCr還元量が、それぞれ、ステンレス溶鋼1t当たり、33.2kg(実施例9)、32.5kg(実施例10)、31.5kg(実施例11)と増加することがわかった。
【0042】
また、実施例5〜11及び比較例3〜5から明らかなように、集塵ダストを装入しないと、ステンレス溶鋼中のCr還元量が、それぞれ、ステンレス溶鋼1t当たり、22.0kg(比較例3)、20.5kg(比較例4)、23.7kg(比較例5)と低いことがわかった。
【0043】
従って、(1)前チャージで発生した脱炭スラグを上吹き転炉内に残留させたまま、酸化クロムを含有する集塵ダストを装入して、精錬操業を行うことにより、ステンレス溶鋼中のCr還元量を増加できること、即ち、集塵ダスト中のクロム分を溶銑中に回収することが可能であること、(2)集塵ダストの装入量を増加させるに従って、ステンレス溶鋼中のCr還元量を増加できること、(3)還元材を装入することにより、ステンレス溶鋼中のCr還元量を増加できること、(4)還元材として酸素との親和力の強いものを装入することにより、この還元材の装入量を減じながらも、ステンレス溶鋼中のCr還元量を増加できることがわかった。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない条件の変更などは全て本発明の適用範囲である。
例えば、ペレット状の酸化クロム含有ダストを用いる場合、仮焼若しくは焼結したものも使用することができる。また、溶銑の温度が低い場合、炭材などの投入後、吹酸を行って、炭材を燃焼させることにより、適正温度に保持することも可能である。また、溶銑として、溶銑や溶鉄中に屑鉄を含めてもよい。さらに、酸化クロムの還元材として、還元力の強い金属Siや金属Al、アルミ灰などを用いてもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1〜6記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法においては、酸化クロム含有ダストを、精錬炉内に前チャージで生成された脱炭スラグを残存させたまま装入することにより、酸化クロム含有ダストを脱炭スラグに一旦溶解させ、次いで、次チャージ用の溶銑を装入して吹酸して、脱炭スラグ及び酸化クロム含有ダスト中の酸化クロムを溶鉄中に還元するので、酸化クロム含有ダストを廃棄などすることなくステンレス溶鋼を製造する際に有効利用することができると共に、酸化クロム含有ダスト中の酸化クロムを容易に還元することができ、しかも、その反応速度を速めることができる。
【0046】
特に、請求項2記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法においては、酸化クロム含有ダストとして、該酸化クロム含有ダストにバインダーを加えて形成されたペレット状のものを用いるので、集塵機などで回収されたままの微粉状態では、粉塵が舞うなど取扱い性が困難になるのを防止することができる。
請求項3記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法においては、ペレット状の酸化クロム含有ダストの平均粒径が1〜50mmの範囲内であるので、前記と同様、平均粒径が小さいことによる取扱い性の低下を防止することができると共に、精錬炉内に装入した際、ペレット同士が吸着合体して反応性が極めて低下するのを防止することができる。
【0047】
請求項4記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法においては、精錬炉内に残存される脱炭スラグのCaO/SiO2 を1〜3の範囲内とするので、脱炭スラグ中のCaO濃度を低下させ、酸化クロムを還元する際に障害となるCaO・Cr2 O3 の生成を防止することができ、これにより、酸化クロムの還元速度を速めることができる。
請求項5記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法においては、精錬炉内に残存される脱炭スラグのMgO濃度を3〜15wt%の範囲内とするので、脱炭スラグ中のMgO濃度を低下させ、酸化クロムを還元する際に障害となるMgO・Cr2 O3 の生成を防止することができ、これにより、酸化クロムの還元速度を速めることができる。
請求項6記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法においては、ステンレス溶鋼を製造する際に、精錬炉内に還元材を装入するので、酸化クロムの還元速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る酸化クロム含有ダストの有効利用方法を適用するステンレス溶鋼の製造方法の説明図である。
【図2】溶銑(又は溶鉄)の精錬時間と溶銑(又は溶鉄)中のCr濃度との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
10 上底吹き転炉(精錬炉) 11 炉体
11a 炉口 11b 出鋼口
12 ガス送気管 13 取鍋
14 ランス 14a 純酸素(酸化性ガス)
15 脱炭スラグ 15a 脱炭スラグ
15b 脱炭スラグ 15c クロム回収済スラグ
15d 脱炭スラグ 16 溶銑(溶鉄)
16a 溶鉄 16b 溶鉄
16c 溶鉄 16d ステンレス溶鋼
Claims (6)
- クロムを含有する溶鋼を製造する際に発生する酸化クロム含有ダストを、ステンレス溶鋼を製造する際に利用する方法であって、
前記酸化クロム含有ダストを、精錬炉内に前チャージで生成された脱炭スラグを残存させたまま装入し、次いで、次チャージ用の溶銑を装入し炭材を添加して吹酸することにより、前記脱炭スラグ及び前記酸化クロム含有ダスト中の酸化クロムを溶鉄中に還元し、その後、前記酸化クロムが還元された後のクロム回収済スラグを排滓し、次いで、フラックスを装入して吹酸することにより、前記脱炭スラグ及び前記酸化クロム含有ダスト中の酸化クロムが還元されてなる溶鉄を脱炭して、前記ステンレス溶鋼を製造することを特徴とする酸化クロム含有ダストの有効利用方法。 - 前記酸化クロム含有ダストとして、該酸化クロム含有ダストにバインダーを加えて形成されたペレットを用いることを特徴とする請求項1記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法。
- 前記ペレットの平均粒径が1〜50mmの範囲内であることを特徴とする請求項2記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法。
- 前記精錬炉内に残存される前記脱炭スラグの塩基度(CaO/SiO2 )が1〜3の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法。
- 前記精錬炉内に残存される前記脱炭スラグのMgO濃度が3〜15wt%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法。
- 前記ステンレス溶鋼を製造する際に、前記精錬炉内に還元材を装入することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化クロム含有ダストの有効利用方法。
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