JP3769722B2 - 大水深管の敷設方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大水深管の敷設方法に関し、特に、敷設時における大水深管の浮力調整を容易にして敷設コストの低減を図った大水深管の敷設方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
深層水の豊富な効能が、広い分野において確認されるにつれて、深層水を大量に使用するためにその取水が積極的に展開されており、取水の範囲も大深度化している。
【0003】
このために、深層水を取水するための大水深管に関しても、深さ数百m以深に管口径φ1.5mを越える大口径管路を敷設することから、その構造や敷設時の取扱については従来とは異なる緊迫した問題提起がなされており、早急な解決が求められる傾向にあるが、その中でも大水深管を敷設する際に発生する重量問題等は基本的な問題としてその解決が求められている。
【0004】
従来の技術では、大水深管は管材として鋼管やポリエチレン管が用いられ、波浪や潮流等の海域における海象条件に対して移動安定が図れるような水中重量に調整されており、図3に示すような高重量状態の着底管路として設置されるか、浮遊管路として設置されるように計画されている。
【0005】
着底管路方式は、図3(a)に示すように傾斜状態にある海底10の地形に合わせて設置するものであり、大水深管11に発生するブリッジ現象による支承部の集中荷重に対して、破断しない耐力を有する管断面の諸元と材質及び重量設定で計画されている。
【0006】
又、浮遊管路方式は、図3(b)に示す多点係留式と図3(c)に示す一点係留式とに分類される。多点係留式浮遊管路方式は、海底10の地形によるブリッジ現象等の問題を回避するために、海底に係留チェーン12を配置して、これにハンガーワイヤー13を接続して浮遊管路14を係留するものであり、浮遊管路14には所定の水中重量を発生させるように水中重量等の設定で計画されることになる。
【0007】
そして、一点係留式浮遊管路方式は、浮遊管路部18の上部を着底管路部15として設置し、先端部16を海底10に設けたアンカー17に接合することによって浮遊管路部18として係留しており、浮遊管路部18には所定の水中重量を発生させるように重量設定で計画されることになる。
【0008】
以上のように、いずれの敷設方式においても、大水深管の敷設は大口径管を用いることから、その敷設方法は、リールバージ法、浮遊曳航法、海底曳航法及び半浮遊式海底曳航法を用いることで施工計画されることになる。
【0009】
そして、これらの敷設施工は、コスト面からの要求として、可能な限り小規模の敷設用機械・機器と作業船によって実施できるように要望されるが、上述したように大水深管の敷設は大口径管を用いることから、敷設時における大重量の問題を解決する必要がある。
【0010】
即ち、着底管路方式では、敷設時における管路の水中重量はなるべく軽量にしながら、敷設後は移動安定重量を確保できるだけの浮力を付与する必要がある。同様に、浮遊管路方式においても敷設時における管路の水中重量は可能な限り軽量にし、敷設後は設計で求められる水中重量にすることが必要になる。
【0011】
着底管路方式における浮力の例を、図4に示す敷設状況の下に、周知の計算式に基づいて計算すると、敷設施工時における必要な重量(t/m)と敷設後に必要な水中重量(t/m)とは、大水深管11の重量と大水深管11の揚力との差に対する大水深管11の潮流による抗力とのバランスを考慮することを基本にしながら、条件を以下のように設定することでその数値を求めることが出来る。
【0012】
図において、Wは大水深管の重量、PDは大水深管の潮流による抗力、PLは大水深管の潮流による揚力であり、θは海底の傾斜角度である。
【0013】
条件 1.大水深管は管口径φ2m、
2.潮流は波浪の影響を無視して、0.5m/secのみ、
3.敷設施工時における潮流は0.2m/sec、
4.海底の傾斜角度は8°
○ 敷設施工時における必要な水中重量は、W≧0.012(t/m)
○ 敷設後に必要な水中重量は、 W≧0.079(t/m)
【0014】
従って、上記条件の下に、敷設方法は海底曳航法を採用しながら、着底管路方式で敷設する場合における大水深管の重量は、敷設施工時の重量をW≧0.012(t/m)にし、完成時の重量はW≧0.079(t/m)になるように浮力調整することになる。
【0015】
しかしながら、水深数百mの深海で使用できる浮きは、強化プラスチックを用いた0.1m3程度の球形の超小能力を有する浮力材か、ガラスバルーンを接着剤で固めたような浮きに限定されているのが現状であり、適正価格の浮力調整材が未開発であるところから、これらの非常に高価な浮きを用いざるを得なくなっている。
【0016】
このために、管口径φ2mを越える大口径の大水深管を敷設するためには、調達する浮きの費用だけでも数十億円になり、大口径の大水深管を敷設することの実現には大きな障害になっていた。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の状況に鑑みて検討されたものであり、大水深管の管内に海水よりも低密度の液体を注入することで大水深管の重量を調整して、敷設施工する際には所望の浮力を確保して敷設を容易にすると共に、敷設後は所定の水中重量を確保することで必要な移動安定荷重を大水深管に設定する大水深管の敷設方法を提供している。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明である大水深管の敷設方法は、深層水を取水するために海底に敷設する大水深管の敷設方法において、敷設作業時には大水深管の陸側管端を陸上から所定の高さに設置して海水より低密度の液体を大水深管に満水状態にすることで海上との間に液位差を確保して大水深管の管内にある液体に所定の水圧を加え、海底に敷設した後は大水深管の陸側管端を海水とほぼ同レベルに降下させることで液体に対する海水の密度差で押圧力を加えて大水深管から液体を排出することを特徴としており、これによって敷設施工時においては、大水深管の水中重量を所望の値に軽減して施工の効率化を図ると共に、大水深管を敷設させた後には、必要な水中重量に復元させて移動安定荷重を確保する操作を簡潔に実施することによって、大水深管を敷設する際の施工コストを大幅に低減している。また、注入する液体の加圧や液体の排出に特別の装置を用いないので、上記機能に加えて、施工コストの低減を図ることが出来る。
【0019】
請求項2に記載の発明である大水深管の敷設方法は、請求項1に記載の大水深管の敷設方法において、注入する液体を淡水にすることを特徴としており、上記機能に加えて、施工コストをさらに低減できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明による大水深管の敷設方法は、深層水を取水するために海底に敷設する大水深管の敷設方法において、敷設作業時には大水深管に海水より低密度の液体を海水に対して加圧状態に注入し、海底に敷設した後は大水深管から液体を排出することから構成しており、これによって、大水深管の水中重量(水中自重)を簡潔に調整している。
【0023】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、理解を容易にするために、従来と同様の部位については同様の符号によって表示している。
【0024】
図1は、本発明による大水深管の敷設方法を説明するための概要図であり、海底曳航法による着底管路方式に適用した場合の実施の形態である。
【0025】
図において、4は海上であって、5は大水深管の引出しタグボート、6は鼻先引上げウインチである。
【0026】
本実施の形態では、敷設する大水深管11は、引出しタグボート5によって陸上3から海上4に引き出され、海底10の傾斜に沿って敷設されている。この際の大水深管11は、引出しタグボート5によって海底10と所定の間隔を保たせながら曳航されており、その沖合側管端7は開放状態にしてある。
【0027】
大水深管11の陸側管端8からは、淡水1が淡水注水ホース2によって大水深管11の管内に注入され、満水状態を維持することになるが、海水の密度が1.03t/m3であるの対して、淡水の密度は1.00t/m3であることから、この密度差に基づく浮力を大水深管に与えながらも、陸側管端8を海水面よりも十分上方に配置することによる液位差(水位差)によって、淡水が管外にこぼれることはない。
【0028】
ここで、本実施の形態における水中重量等について確認すると、大水深管11を管口径φ2mにした場合の浮力規模は、上記密度差に基づいて計算すると、0.094t/mとなる。
【0029】
従って、大水深管11に淡水1を満水状態にした場合の浮力は、従来例において算出した敷設後に移動安定荷重を確保するために必要な水中重量、0.079t/mを超越した浮力性能になっていることから、安定した設置状態を確立できる。又、大水深管11の自重を、淡水による浮力0.094t/mを差し引いても、従来例で算出した敷設施工時に必要な重量、0.012t/mになる、0.106t/m以上に調整することが可能であることから、敷設施工時においても大水深管11を容易に引き出し曳航することが充分に可能である。
【0030】
大水深管11の浮力を調整するためには、大水深管11に淡水1を注入して満水状態にした後に、海水との密度差に基づく圧力差を勘案した加圧状態の下で淡水量を調整する必要がある。
【0031】
その加圧手段としては、注入ポンプ等によっても所望の加圧状態に形成することは可能であるが、本発明による大水深管の敷設方法では、このようなコストを要する手段を用いずに自然の力を活用することによって、コストの掛からない方式を採用している。
【0032】
即ち、本実施の形態での加圧手段は、大水深管11の陸側管端8を櫓等に載置することで、図示のように陸上3から所定の高さに設置するものであり、これによって、大水深管11に淡水1を満水状態にした状態では海上4との間に液位差Hを確保しており、大水深管11の管内にある淡水1に所定の水圧を加えることで、海水との密度差に基づく圧力差を勘案しながら大水深管11の浮力を調整している。
【0033】
又、大水深管11を敷設した後には、大水深管11に注入してある淡水1を管外に排出することで、移動安定荷重を確保するために必要な水中重量に設定する必要がある。この時は、上述したように注入ポンプ等によって大水深管11の管内を加圧状態を形成している場合には、大水深管11の陸側管端8を開放することでも淡水1を管外に排出することが可能になる。
【0034】
しかして、本発明による大水深管の敷設方法では、この場合にも、排出ポンプ等によって淡水1を排出する手段を採用せずにコストの低減を図っている。
【0035】
即ち、この場合にも、大水深管11の陸側管端8を設置していた櫓等で確保されている高さから海水とほぼ同レベルの陸上3に降下させるのみで、海水と淡水との密度差に基づく押出力となる上昇流を海水から淡水に加えるという自然の力を活用した排水を実施しており、淡水は他の動力を用いなくても自然に大水深管11の管外に排水されてくる。
【0036】
以上のように、本発明による大水深管の敷設方法は、海底曳航法による着底管路方式に適用した場合にも充分に適用可能であり、大水深管が大口径になってもその敷設を低コストで施工できるものである。
【0037】
次に、本発明による大水深管の敷設方法を他の管路方式に適用した場合について説明する。
【0038】
図2は、本発明による大水深管の敷設方法を半浮遊式海底曳航法による多点係留式浮遊管路方式に適用した場合の実施の形態である。
【0039】
本実施の形態では、敷設する浮遊管路14は、係留チェーン12にハンガーワイヤー13で接続された状態で陸上3から海上4に引き出されており、引出しタグボート5によって係留チェーン12を引き出すことによって、浮遊管路14を海底10から所定の間隔で支持する状態で海底10の傾斜に沿って敷設している。
【0040】
この際の大水深管1は、鼻先引上げウインチ6によって海底と所定の間隔を保たせながら曳航されており、その沖合側管端7は開放状態にしてある。
【0041】
本実施の形態の場合も、淡水1は浮遊管路14の陸側管端8から浮遊管路14を形成する大水深管内に注入されて満水状態を維持することになるが、淡水1は浮遊管路14に密度差に基づく浮力を大水深管に与えることになる。
【0042】
本実施の形態における水中重量等も、上記実施の形態と同様の検証によって、敷設後に移動安定荷重を確保するために必要な水中重量を超越した浮力性能を確保することを確認できると共に、敷設施工時に必要な重量以上になるように大水深管の自重を調整することが可能であることも確認できている。
【0043】
以上のように、本発明による大水深管の敷設方法は、半浮遊式海底曳航法による多点係留式浮遊管路方式に適用した場合にも充分に適用可能であり、大水深管が大口径になってもその敷設を低コストで施工できるものである。
尚、本実施の形態においても、大水深管の浮力を調整するための手段は、上記実施の形態の場合と同様に、浮遊管路の陸側管端の位置を上下させる方式を採用することによって、他のポンプ特別の装置を用意することなく容易に実施可能であり、この点においても低コストで施工できるものである。
【0044】
以上、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明してきたが、本発明による大水深管の敷設方法は、基本的に、深層水を取水するために海底に敷設する大水深管の敷設方法において、敷設作業時の大水深管に海水より低密度の液体を充満状態に注入し、海底に敷設した後は大水深管から液体を排出することから構成しているので、敷設施工時においては、大水深管の水中重量を所望の値に軽減して施工の効率化を図ると共に、大水深管を敷設させた後には、必要な水中重量に復元させて移動安定荷重を確保するものであるから、上記実施の形態に何ら限定されるものでなく、大水深管の敷設方法や管路方式及び注入液体の種類等に関して、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【0045】
【発明の効果】
本発明による大水深管の敷設方法は、深層水を取水するために海底に敷設する大水深管の敷設方法において、敷設作業時には大水深管の陸側管端を陸上から所定の高さに設置して海水より低密度の液体を大水深管に満水状態にすることで海上との間に液位差を確保して大水深管の管内にある液体に所定の水圧を加え、海底に敷設した後は大水深管の陸側管端を海水とほぼ同レベルに降下させることで液体に対する海水の密度差で押圧力を加えて大水深管から液体を排出することを特徴としているので、敷設施工時においては、大水深管の水中重量を所望の値に軽減して施工の効率化を図ると共に、大水深管を敷設させた後には、必要な水中重量に復元させて移動安定荷重を確保する操作を簡潔に実施することによって、大水深管を敷設する際の施工コストを大幅に低減している。また、注入する液体の加圧や液体の排出に特別の装置を用いないので、上記機能に加えて、施工コストの低減を図ることが出来る。
【0046】
又、本発明による大水深管の敷設方法は、上記効果に加えて、以下の効果も発揮するものである。
【0047】
▲1▼ 大水深管を取水管路として使用する場合には、管内のエアー残留に伴うエアーロックの発生を回避出来る。
【0048】
▲2▼ 浮力体は、大水深管の管内に注入されて移動の心配が無い安定した状態にあり、移動に伴う波及問題が発生しない。
【0049】
▲3▼ 敷設施工中に管内の液体が漏出しても、陸上側から注水することで容易に復元できる。
【0050】
▲4▼ 管内の液体は、管路の敷設後に陸上側から排出するものであるから、海域環境の保全に何らの影響も与えることがない。
【0051】
さらに、本発明による具体的な発明である大水深管の敷設方法では、 請求項2に記載の発明である大水深管の敷設方法は、請求項1に記載の大水深管の敷設方法において、注入する液体を淡水にすることを特徴としているので、上記効果に加えて、施工コストをさらに低減できる効果を発揮している。
【図面の簡単な説明】
【 図1】本発明による大水深管の敷設方法を説明する実施の形態の概要図
【 図2】本発明による大水深管の敷設方法を説明する他の実施形態の概要図
【 図3】従来の各種敷設方法の概要図
【 図4】従来の各種敷設方法における水中荷重算定のための想定図
【符号の説明】
1 淡水、 2 淡水注水ホース、 3 陸上、 4 海上、
5 引出しタグボート、 6 鼻先引上げウインチ、 7 沖合側管端、
8 陸側管端、 10 海底、 11 大水深管、 12 係留チェーン、
13 ハンガーワイヤー、 14 浮遊管路、 15 着底管路部、
16 管路の先端部、 17 アンカー、 18 浮遊管路部、
Claims (2)
- 深層水を取水するために海底に敷設する大水深管の敷設方法であって、敷設作業時には大水深管の陸側管端を陸上から所定の高さに設置して海水より低密度の液体を大水深管に満水状態にすることで海上との間に液位差を確保して大水深管の管内にある液体に所定の水圧を加え、海底に敷設した後は大水深管の陸側管端を海水とほぼ同レベルに降下させることで液体に対する海水の密度差で押圧力を加えて大水深管から液体を排出することを特徴とする大水深管の敷設方法。
- 注入する液体が、淡水であることを特徴とする請求項1に記載の大水深管の敷設方法。
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