JP3767500B2 - 動的接触角の測定方法および測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は液体と固体の間の動的接触角の測定方法および測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
液体と固体の間の動的接触角には前進接触角と後退接触角があるが、従来、これらの動的接触角の測定方法として、例えば(1)ウィルヘルミー法、(2)拡張収縮法、(3)転落法などが知られている。
【0003】
(1)ウィルヘルミー法は、試料槽内の液体試料中に固体試料を沈める過程で、また沈めたものを引き上げる過程での荷重を測定し、その測定値と固体試料の表面積の値とから動的接触角を求める方法である。固体試料を沈める過程で得られる接触角が前進接触角、引き上げる過程で得られる接触角が後退接触角である。
しかしながら、この測定方法では多量の液体試料を必要とするうえ、固体試料の表面が不均一であると適切な測定が行えないという問題があった。このため、この測定方法で動的接触角を測定できるのは、表面が均一な固体試料に限られていた。
【0004】
(2)拡張収縮法は、注射針やガラス毛細管等の先端から、固体表面上に液体試料を一定流量で押し出すことによって液滴を形成しながら、固体表面と液滴の間の接触角を測定することによって前進接触角を得、逆に注射針やガラス毛細管等の先端から液滴を形成している液体試料を引き込みながら、固体表面と液滴の間の接触角を測定することによって後退接触角を得る方法である。
しかしながら、この測定方法では、固体表面と液滴の間の接触角が90゜以上になるような濡れ性が小さい場合には適切な測定が行えないという不都合があった。
【0005】
(3)転落法は、固体試料上に液滴を形成し、この固体試料を傾ける、あるいは垂直にして固体試料上の液体を転落移動させながら、固体試料と液滴の間の接触角を測定するものである。液体が移動する方向の前方における接触角が前進接触角であり、後方における接触角が後退接触角である。
しかしながら、この測定方法では、固体試料の表面状態および液滴の物性によっては、固体試料を垂直にしても液滴が移動しない場合も多く、測定できる固体試料および液体試料が限られていた。
【0006】
このように、いずれの動的接触角測定方法においても不都合点があり、特に測定可能な固体試料および液体試料に制限があることが問題であった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、あらゆる固体試料および液体試料について動的接触角の測定が可能な汎用性の高い測定方法および測定装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の接触角の測定方法は、固体試料上に液体試料で形成された液滴と前記固体試料との間の動的接触角を測定する動的接触角の測定方法であって、水平に配置された前記固体試料の表面上に、前記固体試料の上方に垂直に配された針状管体の先端から前記液体試料を押し出して前記液滴を形成し、前記液滴内に前記針状管体の先端が挿入されている状態で、前記固体試料を水平方向に移動させながら、前記固体試料の進行方向の前方または後方における、前記固体試料と前記液滴との間の接触角を測定することを特徴とする。
【0008】
本発明において、接触角を測定する際には、例えば図3(a)に例示するように、固体試料1の表面上に形成した液滴2内に針状管体11の先端が挿入されている状態で、固体試料1を水平方向に移動させる。液滴2内に針状管体11が挿入されているので、液滴2と針状管体11との界面張力により、図3(b)に示すように、固体試料1の移動に伴い液滴2が針状管体11に引きずられるように変形する。
【0009】
このように液滴2が変形した状態での固体試料1と液滴2の間の接触角の大きさは、液滴2を成す液体の表面張力、固体試料1を成す固体の表面張力、液体−固体間の界面張力、摩擦力、吸着力、固体表面粗さ等に因るため、この状態での接触角を測定することにより動的接触角を得ることができる。本発明において、固体試料1の移動方向の前方の接触角θ1より後退接触角が得られ、後方の接触角θ2より前進接触角が得られる。
【0010】
したがって本発明の測定方法は、固体試料上の液滴内に針状管体の先端を挿入した状態で前記固体試料を水平方向に移動させることにより、表面エネルギーや摩擦等の上記因子を調べることなく、その結果として引き起こされる動的接触角のみを測定することができるものであり、あらゆる固体試料および液体試料について動的接触角の測定を適切に行うことができる。
【0011】
本発明において、特に前記固体試料を一定速度で水平方向に移動させ、前記固体試料と液滴との間の接触角が略一定に保たれている状態での前記接触角を動的接触角とすることが好ましい。
【0012】
本発明において、固体試料を一定速度で移動させると、ある時点で液滴と針状管体との間の付着力と、液滴と固体試料との間の付着力とが釣り合った状態となり、固体試料が移動し続けても液滴の形状が一定に保たれるようになる。
図4は、固体試料1を一定速度で移動させたときの、固体試料1と液滴2と間の接触角の経時変化の例を示したものである。図4中、実線は固体試料1の進行方向前方における接触角θ1の経時変化を示し、破線は固体試料1の進行方向後方における接触角θ2の経時変化を示す。このように、前方の接触角θ1は、固体試料1が移動し始めると減少し、ある角度に達したところで、固体試料1が移動しても一定に保たれるようになる。この一定となっているときの接触角θ1を測定することにより後退接触角が得られる。
一方、後方の接触角θ2は、固体試料1が移動し始めると増加し、ある角度に達したところで、固体試料1が移動しても一定に保たれるようになる。この一定となっているときの接触角θ2を測定することにより前進接触角が得られる。
【0013】
したがって、本発明の測定方法によれば、前述のように表面エネルギー、摩擦、表面状態等の因子が平衡になる状態を作り出すことができ、この状態での接触角を測定することにより動的接触角をより適切に求めることができる。
【0014】
本発明において、前記固体試料と液滴との間の接触角を測定する際に、前記固体試料の移動方向に対して垂直な水平方向から前記液滴を撮像し、得られた画像データを接線法に基づいて演算処理することが好ましい。
かかる構成によれば、移動中の固体試料と、この固体試料上で針状管体に引きずられるように変形している液滴との間の接触角を、精度良く測定することができる。
【0015】
本発明の動的接触角の測定装置は、固体試料上に液体試料で形成された液滴と前記固体試料との間の動的接触角を測定する動的接触角の測定装置であって、前記固体試料を水平に保持するステージと、前記ステージを水平方向に移動させる駆動手段と、前記ステージの上方に垂直に配された針状管体と、前記針状管体の先端から液体試料を押し出させる液体供給機構と、前記固体試料上に前記液体試料で形成された前記液滴と前記固体試料との間の接触角を測定する接触角測定手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0016】
本発明の測定装置によれば、前記固体試料上の前記液体試料で形成された前記液滴内に、前記針状管体の先端を挿入した状態で前記ステージを移動させることができる。
したがって、前述の各因子の平衡状態を作り出して動的接触角を測定することができる。
【0017】
本発明の装置において、前記ステージの移動速度が可変であることが好ましい。これは、前述の各因子が平衡状態に達するステージ速度は液体−固体の種類で異なるためである。
かかる構成によれば、固体試料の移動速度を、固体試料が移動し続けても液滴の形状が一定に保たれる特定の速度に調整することができる。このような特定の移動速度でステージを移動させることにより、前述の各因子の平衡状態を作り出すことができ、この状態での接触角を測定することによって動的接触角をより適切に求めることができる。
【0018】
前記測定手段が、前記液滴を、前記ステージの移動方向に垂直な水平方向から撮像する撮像手段と、前記撮像手段からの画像データを用いて接触角を求める演算手段とを備えてなることが好ましい。
かかる構成によれば、移動中の固体試料と、この固体試料上で針状管体に引きずられるように変形している液滴との間の接触角を、精度良く測定することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。図1は本発明の動的接触角測定装置の一実施形態を示した概略構成図である。
本実施形態の測定装置10は、ステージ12と、その上方に配された針状管体11と、針状管体11の先端から液体試料を押し出させる液体供給機構13と、ステージ12上に形成された液滴2の接触角を測定する測定手段20とから概略構成されている。
【0020】
ステージ12は、その上に固体試料1を水平に保持できるように構成されている。またステージ12は、水平方向において少なくとも一方向(X方向)に移動可能であるとともに、垂直方向(Z方向)にも移動可能に構成されており、そのためにX軸方向駆動手段(図示略)およびZ軸方向駆動手段(図示略)を備えている。
Z軸方向駆動手段は、ステージ12と針状管体11の先端との距離を微調整可能に構成され、モータ駆動による制御がなされる。
X軸方向駆動手段は、ステージ12の水平方向における移動速度を調整可能に構成され、同様にモータ駆動による制御がなされる。
【0021】
針状管体11は、その先端から数μmの液体試料を、滴下しないように押し出すことができるものが用いられ、長さ方向が垂直となるように配置されている。針状管体11の内径は、大きすぎると押し出す液体量の制御が難しいので、0.1〜1.2mm程度が好ましい。また針状管体11の外径は、大きすぎると、液滴2中に針状管体11を挿入した状態で接触角を測定する際に、液体サンプルが針状管体11に引き寄せられてしまうため、0.5〜1.5mm程度が好ましい。本実施形態では、内径0.8mm、外径1.0mmの針状管体11が用いられている。
【0022】
針状管体11の表面の材質は、液滴2の物性に応じて適切なものを選択するのが好ましい。すなわち、針状管体11の表面の材質によっては、ステージ12上に保持された固体試料1上の液滴2に針状管体11を挿入した状態でステージ12を移動させたときに、液滴2が針状管体11に引きずられたような変形を生じない場合があるので、かかる不都合が生じないように針状管体11として適切な材質のものを選択する。
目安としては、液体試料の表面張力が約30mN/m程度またはこれよりも小さい場合、好ましくは液体試料の表面張力が40N/m以下である場合には、外表面にテフロン(登録商標)からなる被覆が施された針状管体11を用いることが好ましい。例えばエタノール(表面張力24.05mN/m)や、後述の実施例で用いた液体サンプルC(表面張力30.2mN/m)は、この場合に該当する。
一方、液体試料の表面張力が30mN/mを越える程度に大きい場合、好ましくは液体試料の表面張力が40N/mより大きい場合には、ステンレス製の針状管体11を用いることが好ましい。例えば水(表面張力75.7mN/m)は、この場合に該当する。
【0023】
液体供給機構13は、針状管体11に液体試料を、予め設定された所定量だけ供給することによって、針状管体11の先端から液体試料を所定量だけ押し出させて液滴2を形成できるように構成されている。
【0024】
測定手段20は、ステージ12上に保持された固体試料1上の液滴2を拡大撮像してその画像データを信号出力するCCDカメラ(撮像手段)21と、撮像時に液滴2を照明するための光源22、CCDカメラ21からの画像データ信号を演算処理して接触角を求めるコンピュータ(演算手段)23およびコンピュータ23に接続されたモニター24を備えている。
CCDカメラ21は、液滴2を、ステージ12の移動方向(X方向)に対して垂直な水平方向(Y方向)から撮像するように配置されている。
また符号15は、液体供給機構13から針状管体11への液体供給、ステージ12の移動、およびCCDカメラ21での撮像の各動作を制御する制御装置である。
【0025】
次に、かかる構成の装置を用いて動的接触角を測定する一実施形態について説明する。本実施形態では後退接触角を測定する。
まず、動的接触角を測定しようとする固体試料1をステージ12上に固定して保持させ、液体試料を液体供給機構13にセットする。
そして、図2に示すように、固体試料1の上方に配置されている針状管体11の先端から所定量の液体試料を押し出し、続いてステージ12をZ方向上方へ移動させて、押し出された液体試料に固体試料1を接触させることにより、図3(a)に示すように固体試料1上に液滴2を形成する。
針状管体11の先端から押し出される液体試料の量は、液滴2において自重による重力の影響が無視できる程度の量とすることが好ましい。具体的には、固体試料1上に形成された液滴2の、接触面における外径が3〜5mm程度となるように設定することが好ましい。
【0026】
次いで、図3(b)に示すように、ステージ12をX方向へ一定速度で移動させながら、CCDカメラ21で液滴2を撮像し、得られた画像データから、ステージ12の進行方向前方における液滴2の接触角θ1を測定する。
ステージ12が移動し始めると、液滴2が針状管体11に引きずられるように変形し、前方の接触角θ1は図4に実線で示すように、経時的に減少してある角度に達すると固体試料1が移動しても接触角θ1は一定となる。この一定となっているときの接触角θ1の値を後退接触角として採用する。
ステージ12のX方向への移動速度は特に限定されず、液滴2が針状管体11に引きずられるように変形した後、ステージ12が移動しても一定形状を保つように設定されていればよい。そのために、必要であればステージ12の移動速度を調整する。ステージ12のX方向への移動速度は、例えば1〜4mm/sec程度に好ましく設定される。
【0027】
CCDカメラ21で取り込んだ画像データを用い、コンピュータ23で接触角θ1を測定する方法としては、次のような接線法を用いることが好ましい。図5は接線法により移動方向前方における接触角θ1を測定する方法を原理的に説明するための図である。
後退接触角を測定する場合、まず、図5(a)に示すように、ステージ12の移動方向(X方向)の前方において、液滴2の最先端の第1の端点(図では左側の端点)L1と、この第1の端点L1から予め設定された間隔で選ばれた第2の端点L2、および第3の端点L3を取得する。
次に、図5(b)に示すように、第1〜第3の端点L1、L2、L3が1つの円O1の円弧上にあるとみなして、この円O1の中心M1を求め、第1の端点L1における円O1の接線mを求める。
液滴2と固体試料1との接触面に相当する直線Sと、求めた接線mとのなす角度が移動方向前方における接触角θ1となる。
そして、ステージ12を移動させながら、この移動方向前方における接触角θ1を所定間隔で経時的に測定し、直前の測定値との差を求める。この前回の測定値との差が小さくて、接触角θ1の値が略一定となったら、このときのθ1の値を後退接触角の値として採用する。
例えば、接触角θ1を連続して2回測定したときの測定値の差が5°以下であるときに、接触角θ1の値がほぼ一定であると見なすことができる。
【0028】
本実施形態によれば、水平方向に移動している固体試料1上で、後方に引きずられるように変形した液滴2の最先端の接触角を測定することにより後退接触角が得られる。
また、本実施形態では、固体試料1上に形成した液滴2内に針状管体11の先端を挿入した状態で固体試料1を水平方向に適切な一定速度で移動させることにより、固体試料1および液体試料の表面状態や物性等に関係なく、あらゆる因子の平衡状態を達成できるため、あらゆる固体試料および液体試料について後退接触角の測定を適切に行うことができる。
例えば、従来のウィルヘルミー法では適切な測定が困難であった表面均一性が低い固体試料についても、従来の拡張収縮法では適切な測定が困難であった撥水性が高い固体試料と液体試料との組み合わせについても、また従来の転落法では適切な測定が困難であった付着力が高い固体試料と液体試料との組み合わせについても、適切に動的接触角を測定することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、ステージ12の移動方向前方における接触角θ1を測定することによって後退接触角を求める場合を例に挙げて説明したが、同様の手順でステージ12の移動方向後方における接触角θ2を測定することによって前進接触角を求めることができる。移動方向後方における接触角θ2は、図4に破線で示すように、ステージ12が移動し始めると経時的に増加してある角度に達すると固体試料1が移動しても接触角θ2は一定となるので、この一定となっているときの接触角θ2の値を前進接触角として採用する。
【0030】
また、本実施形態では、液滴2と固体試料1の間の接触角を測定するための測定装置20として、CCDカメラを使って画像を取り込み、接線法により画像データを演算処理する方法を用いたが、液滴2と固体試料1の間の接触角θ1(またはθ2)を測定できる方法であれば、他の手法を用いることもできる。
【0031】
【実施例】
以下、具体的な実施例を示して本発明の効果を明らかにする。
固体試料1の例として、▲1▼表面に共析メッキを施した固体サンプルA、および▲2▼表面にテフロン膜が成膜された固体サンプルBを用意した。
▲1▼固体サンプルAは、ステンレスプレートを、金属イオン(ニッケルイオン)と撥水性樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)の粒子を分散させた電解液に浸漬してメッキ処理した後、さらに撥水性樹脂の融点以上の温度で加熱処理することにより強固な撥水性の共析メッキ層を形成したものを使用した。
【0032】
▲2▼固体サンプルBは、ステンレスプレートに、プラズマ重合法により撥水処理を施したものを使用した。
具体的には、まずC4F10やC8F16などの直鎖状PFCからなる原料液の蒸気をプラズマ処理装置においてプラズマ化する。このようにして直鎖状PFCの蒸気がプラズマ化されると、直鎖状PFCの結合が一部切断されて活性化する。活性化されたPFCをステンレスプレートの表面に接触させることにより、ステンレスプレート上でPFCが互いに重合し、撥液性を有するフッ素樹脂重合膜が形成されたものを使用した。
【0033】
▲3▼一方、液体試料としては、ドデシルベンゼンとテトラリンを体積比1:1で混合してなる極成溶媒99.6重量%に対して、発光材料としてポリジオクチルフルオレン0.4重量%を添加してなる有機EL素子の発光層を形成する材料(以下液体サンプルCという)を用いた。この液体サンプルCの表面張力は30.2mN/mであった。
【0034】
(実施例1)
図1に示す構成の測定装置10を用い、本発明に係る測定方法で固体サンプルAと液体サンプルCとの間の後退接触角を測定した。
まず、固体サンプルAをステージ12上に固定して保持させ、液体サンプルCを液体供給機構13にセットした。針状管体11としては、外表面にテフロン(登録商標)からなる被覆が施された、外径1.0mm、内径0.8mmのテフロンコート針を用いた。
そして、図2に示すように、固体サンプルAの上方に配置されている針状管体11の先端から4μlの液体サンプルCを押し出し、続いてステージ12をZ方向上方へ移動させることにより、図3(a)に示すように固体サンプルA上に液体サンプルCからなる液滴2を形成した。
次いで、図3(b)に示すように、ステージ12をX方向へ2mm/秒の一定速度で移動させながら、この液滴2をY方向からCCDカメラ21で撮像し、得られた画像データから接線法によりステージ12の進行方向前方における液滴2の接触角θ1を測定した。
ステージ12の移動中に、接触角θ1がほぼ一定となったときの接触角θ1の値を後退接触角として求めた。
後退接触角の測定を5回行い、5回の測定値の平均値、および最大値と最小値との差(Max−Min)をそれぞれ求めた。その結果を下記表1に示す。
【0035】
(実施例2)
上記実施例1において、固体サンプルAに代えて固体サンプルBを用いた他は同様にして、固体サンプルBと液体サンプルCとの間の後退接触角を測定した。
5回の測定により得られた後退接触角の平均値、および最大値と最小値との差(Max−Min)を下記表1に示す。
【0036】
(比較例1)
従来法である拡張収縮法を用いて、固体サンプルAと液体サンプルCとの間の後退接触角を測定した。
まず、固体サンプルA上に内径0.8mmの注射針から4μlの液体サンプルCを押し出して液滴を形成した後、この液滴中に注射針の先端を挿入させた状態で、液滴から液体サンプルCを一定流量で引き抜きながら、液滴が縮小していく過程をCCDカメラで撮像した。得られた画像データから液滴と固体サンプルAとの接触面の直径Lと液滴の高さHを測定し、下記数式(1)で表される後退接触角θrを求めた。
θr=2tan-12H/L …(1)
このようにして後退接触角θrの測定を5回行い、5回の測定値の平均値、および最大値と最小値との差(Max−Min)をそれぞれ求めた。その結果を下記表1に示す。
【0037】
(比較例2)
上記比較例1において、固体サンプルAに代えて固体サンプルBを用いた他は同様にして、固体サンプルBと液体サンプルCとの間の後退接触角θrを測定した。
5回の測定により得られた後退接触角θrの平均値、および最大値と最小値との差(Max−Min)を下記表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の結果より、測定値のばらつきは、比較例1,2では3.5゜であったのに対して、実施例1,2では2.4゜〜3.2゜と小さくて再現性が良いことが認められた。
また、両測定方法による平均値の差は、固体サンプルAを用いた場合は1.9゜であり、固体サンプルBを用いた場合は1.3゜であるが、この差は上記の測定値のばらつきよりも小さいものであり、測定誤差の範囲内であると認められる。したがって、実施例1,2の測定結果は、比較例1,2の測定結果と良く一致していることが認められた。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、固体試料および液体試料の表面状態や物性等に関係なく、ほぼ全ての材料について動的接触角を測定することができ、汎用性の高い測定方法および測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る動的接触角の測定装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】 本発明に係る動的接触角の測定方法を説明するための図であり、針状管体の先端から液体材料を押し出した状態を示す側面図である。
【図3】 本発明に係る動的接触角の測定方法を説明するための図であり、(a)は固体試料上に液滴を形成した状態を示す側面図、(b)は固体試料を移動させた状態を示す側面図である。
【図4】 本発明に係る測定方法において、接触角の測定値の経時変化の例を示すグラフである。
【図5】 本発明に係る測定方法において、接線法を用いた演算処理により接触角を求める方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1…固体試料
2…液滴
11…針状管体
12…ステージ
13…液体供給機構
15…制御装置
20…測定手段
21…CCDカメラ(撮像手段)
23…コンピュータ(演算手段)
Claims (6)
- 固体試料上に液体試料で形成された液滴と前記固体試料との間の動的接触角を測定する動的接触角の測定方法であって、
水平に配置された前記固体試料の表面上に、前記固体試料の上方に垂直に配された針状管体の先端から前記液体試料を押し出して前記液滴を形成し、前記液滴内に前記針状管体の先端が挿入されている状態で、前記固体試料を水平方向に移動させながら、前記固体試料の進行方向の前方または後方における、前記固体試料と前記液滴との間の接触角を測定することを特徴とする動的接触角の測定方法。 - 前記固体試料を一定速度で水平方向に移動させ、前記固体試料と液滴との間の接触角が略一定に保たれている状態での前記接触角を動的接触角とすることを特徴とする請求項1記載の動的接触角の測定方法。
- 前記固体試料と液滴との間の接触角を測定する際に、前記固体試料の移動方向に対して垂直な水平方向から前記液滴を撮像し、得られた画像データを接線法に基づいて演算処理することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の動的接触角の測定方法。
- 固体試料上に液体試料で形成された液滴と前記固体試料との間の動的接触角を測定する動的接触角の測定装置であって、
前記固体試料を水平に保持するステージと、
前記ステージを水平方向に移動させる駆動手段と、
前記ステージの上方に垂直に配された針状管体と、
前記針状管体の先端から液体試料を押し出させる液体供給機構と、
前記固体試料上に前記液体試料で形成された前記液滴と前記固体試料との間の接触角を測定する接触角測定手段と、
を備え、
前記固体試料上の前記液体試料で形成された前記液滴内に、前記針状管体の先端を挿入した状態で前記ステージを移動させながら動的接触角を測定することを特徴とする動的接触角の測定装置。 - 前記ステージの移動速度が可変であることを特徴とする請求項4記載の動的接触角の測定装置。
- 前記測定手段が、前記液滴を、前記ステージの移動方向に垂直な水平方向から撮像する撮像手段と、前記撮像手段からの画像データを用いて接触角を求める演算手段とを備えてなることを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載の動的接触角の測定装置。
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