JP3767372B2 - 衛星追尾用アンテナ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は衛星追尾用アンテナ制御装置に関し、特に、車両や船舶、航空機等の移動体に搭載可能で、通信衛星との通信を行うための衛星追尾用アンテナ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
通信衛星等の衛星と車両、船舶または航空機等の地上の移動体との衛星通信を行う際には、無指向性アンテナを用いることも多いが、画像データ等のように大量の情報を伝送する場合等には、送信電力や受信分解能の限界から、鋭い指向性を有するアンテナを用いることが望ましい。この場合には、常にアンテナビームを衛星の方向に向けておく必要があり、これを追尾と一般に呼んでいる。図16は、例えば特開平10−48305号公報に示された従来の車載用通信衛星追尾装置を示すブロック図である。図において、101は、x加速度、y加速度、z加速度の検出を行う3軸加速度センサ、102は、x角速度、y角速度、z角速度の検出を行う3軸角速度センサ(レートジャイロ)、103はx加速度およびz加速度の値を用いてピッチ角を生成するピッチ角生成部、107はy加速度およびz加速度の値を用いてロール角を生成するロール角生成部、104は緯度、経度、高度、方位の検出を行うGPS装置(GPS:Global Positioning System(全世界測位システム))、105は車輪回転計から車輪速の検出を行う車輪速センサ、106はアンテナの方位角(アジマス)および仰角(エレベーション)の制御を行うアンテナ方向制御装置である。
【0003】
動作について説明する。3軸角速度センサ102の信号を移動体の回転運動検出に用いるとともに、ピッチ角生成部103およびロール角生成部107で生成した角度信号を姿勢の基準信号として、また、GPS装置104で検出した方位信号を方位の基準信号として用いて、移動体の絶対姿勢および絶対方位を推定し、それを用いてアンテナ方向を制御する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の通信衛星追尾装置においては、3軸角速度センサ102の信号や3軸加速度センサ101の信号を用いて、移動体の絶対姿勢及び絶対方位を推定しているため、3軸角速度センサ102や3軸加速度センサ101の持つドリフト誤差やバイアス誤差に起因して、移動体の絶対姿勢及び絶対方位の推定誤差が発生してしまうため、高精度にアンテナ方向を制御することができないという問題点があった。
【0005】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、3軸角速度センサや3軸加速度センサの持つドリフト誤差やバイアス誤差による移動体の絶対姿勢および絶対方位推定誤差を補償して、高精度にアンテナ方向の制御を行って衛星を追尾するための衛星追尾用アンテナ制御装置を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、アンテナあるいはアンテナビームの方位角及び仰角に基づいて移動体の絶対姿勢および絶対方位を推定する姿勢方位推定手段と、移動体の絶対位置と追尾対象の衛星の絶対位置とから上記衛星の方位角および仰角を算出する衛星絶対方向算出手段と、姿勢方位推定手段により推定された絶対姿勢および絶対方位、および、衛星絶対方向算出手段により算出された方位角および仰角から、移動体に対する衛星の方位角および仰角を算出する衛星相対方向算出手段と、算出された方位角および仰角の方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動するアンテナ駆動手段と、衛星から送信される信号の受信レベルを用いて衛星相対方向を探索する衛星相対方向探索手段とを備えた衛星追尾用アンテナ制御装置であって、姿勢方位推定手段は、移動体の3軸まわりの回転角速度を検出する角速度センサと、移動体の3軸方向の並進加速度を検出する加速度センサと、移動体の絶対方位を検出する磁気方位センサと、移動体の絶対位置を検出するGPS受信機と、移動体の絶対姿勢を推定する姿勢推定フィルタと、移動体の絶対方位を推定する方位推定フィルタとを備え、アンテナ駆動手段は、衛星相対方向算出手段から得られた衛星相対方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動するとともに、当該衛星相対方向に衛星相対方向探索手段から得られた衛星相対方向を重畳した方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動して衛星を指向し、その際の移動体に対するアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角を前記姿勢方位推定手段へ入力し、姿勢方位推定手段は、姿勢推定フィルタにおいて、上記角速度センサにより検出した角速度から絶対姿勢角速度を推定し、当該絶対姿勢角速度を積分して移動体の絶対姿勢を推定し、上記加速度センサにより検出した加速度から絶対姿勢参照値を算出し、推定した移動体の絶対姿勢と当該絶対姿勢参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した姿勢角速度を補正する帰還系を構成するとともに、方位推定フィルタにおいて、上記角速度センサにより検出した角速度から絶対方位角速度を推定し、当該絶対方位角速度を積分して移動体の絶対方位を推定し、磁気方位センサの検出値、GPS受信機の受信値、および、アンテナ駆動手段から入力された方位角および仰角のいずれかから絶対方位参照値を算出し、推定した移動体の絶対方位と当該絶対方位参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した方位角速度を補正する帰還系を構成する衛星追尾用アンテナ制御装置である。
【0007】
また、この発明は、アンテナあるいはアンテナビームの方位角及び仰角に基づいて移動体の絶対姿勢および絶対方位を推定する姿勢方位推定手段と、移動体の絶対位置と追尾対象の衛星の絶対位置とから衛星の方位角および仰角を算出する衛星絶対方向算出手段と、姿勢方位推定手段により推定された絶対姿勢および絶対方位、および、衛星絶対方向算出手段により算出された方位角および仰角から、移動体に対する衛星の方位角および仰角を算出する衛星相対方向算出手段と、算出された方位角および仰角の方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動するアンテナ駆動手段と、衛星から送信される信号の受信レベルを用いて衛星相対方向を探索する衛星相対方向探索手段とを備えた衛星追尾用アンテナ制御装置であって、姿勢方位推定手段は、移動体の3軸まわりの回転角速度を検出する角速度センサと、移動体の3軸方向の並進加速度を検出する加速度センサと、移動体の絶対方位を検出する磁気方位センサと、移動体の絶対位置を検出するGPS受信機と、移動体の絶対姿勢を推定する姿勢推定フィルタと、移動体の絶対方位を推定する方位推定フィルタとを備え、アンテナ駆動手段は、衛星相対方向算出手段から得られた衛星相対方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動し、衛星相対方向探索手段は、衛星から送信される信号の受信レベルを用いて衛星相対方向を探索するとともに、その方向を衛星相対方向算出手段より得られた衛星相対方向に重畳して衛星相対方向を補正し、その補正した移動体に対するアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角を姿勢方位推定手段へ入力し、姿勢方位推定手段は、姿勢推定フィルタにおいて、角速度センサにより検出した角速度から絶対姿勢角速度を推定し、当該絶対姿勢角速度を積分して移動体の絶対姿勢を推定し、上記加速度センサにより検出した加速度から絶対姿勢参照値を算出し、推定した移動体の絶対姿勢と当該絶対姿勢参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した姿勢角速度を補正する帰還系を構成するとともに、上記方位推定フィルタにおいて、上記角速度センサにより検出した角速度から絶対方位角速度を推定し、当該絶対方位角速度を積分して移動体の絶対方位を推定し、磁気方位センサの検出値、GPS受信値、および、アンテナ駆動手段から入力された方位角および仰角のいずれかから絶対方位参照値を算出し、推定した移動体の絶対方位と当該絶対方位参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した方位角速度を補正する帰還系を構成する衛星追尾用アンテナ制御装置である。
【0008】
また、姿勢方位推定手段において、姿勢推定フィルタおよび方位推定フィルタにおける帰還入力から姿勢、方位軸に関する上記角速度センサのドリフト誤差を推定するとともに、移動体の並進加速度推定値が大きい場合には、姿勢推定フィルタにおける帰還系を各姿勢軸に関して独立に切断するとともに、上記移動体の並進速度推定値が小さい場合、あるいは、GPS非受信時の場合において、衛星非見通し時の場合には、上記方位推定フィルタにおける帰還系を切断するとともに、切断時においてはこれまでの帰還入力から推定した角速度センサのドリフト誤差を入力として補償する。
【0009】
また、姿勢方位推定手段において、帰還入力から推定した角速度センサのドリフト誤差に対して、各姿勢方位軸に備えた角速度センサのドリフト特性に応じた低域通過フィルタを適用する。
【0010】
また、衛星の方位角および仰角、姿勢方位推定手段によって推定された移動体の絶対姿勢、衛星見通し時においてアンテナ駆動手段あるいは衛星相対方向探索手段から入力された方位角および仰角を用いて、移動体の絶対姿勢および絶対方位を逐次的に更新して推定し、得られた絶対方位推定値を絶対方位参照値とする。
【0011】
また、衛星の方位角および仰角、姿勢方位推定手段によって推定された移動体の絶対姿勢、衛星見通し時においてアンテナ駆動手段あるいは衛星相対方向探索手段から入力された方位角および仰角を用いて、先ず最小二乗近似の意味で移動体の絶対姿勢を推定し、次にその推定値を用いて絶対方位参照値を推定する。
【0012】
また、逐次的に更新して推定した上記移動体の絶対姿勢、あるいは、最小二乗近似の意味で推定した上記移動体の絶対姿勢を参照して姿勢推定フィルタにおける帰還系を各姿勢軸に関して独立に切断するとともに、切断時においてはこれまでの帰還入力から推定した上記角速度センサのドリフト誤差を入力として補償する。
【0013】
また、初期衛星捕捉時、あるいは、衛星非見通し時から見通し時への復帰時において、姿勢方位推定手段における方位推定フィルタを、アンテナ駆動手段あるいは衛星相対方向探索手段より得られたアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角を用いて推定した絶対方位推定値で初期化する。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による衛星追尾用アンテナ制御装置を説明するための図である。図1において、1は移動体の絶対姿勢および絶対方位を推定する姿勢方位推定手段、2は移動体の絶対位置と追尾する衛星の絶対位置から衛星の方位角および仰角を算出する衛星絶対方向算出手段、3は移動体の絶対姿勢および絶対方位、衛星の方位角および仰角から移動体に対する衛星の方位角および仰角を算出する衛星相対方向算出手段、4は移動体に対する方位角および仰角方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動するアンテナ駆動装置、5は衛星から送信される信号の受信レベルを用いて衛星相対方向を探索する衛星相対方向探索手段、6は衛星追尾用アンテナ、7は移動体のアンテナ取り付け面、8は追尾する衛星である。
【0015】
この衛星追尾用アンテナ制御装置における動作の説明のために以下の座標系を導入する。
[a0]を慣性座標系とする。これは慣性空間に固定された座標系で、原点は地球中心にある。ただし地球の公転の影響は無視する。
[ae]を地球固定座標系とする。これは地球に固定された座標系で、原点は地球中心にある。xe 、ye軸は赤道面内にあり、xe 軸はグリニッジ子午線(経度零)を通る。またze軸は北極方向を向いている。
[al]を局所水平面座標系とする。これは機体の質量中心に原点を持ち、地球上の局所水平面(接平面)上で規定された座標系である。xl 、yl 、zl軸はそれぞれ地理上の北、東、接平面垂直下方向を向いている。
[ab]を移動体固定座標系とする。これは移動体の質量中心に原点を持ち、移動体に固定された座標系である。xb 、yb 、zb軸がそれぞれ移動体のロール軸、ピッチ軸、ヨー軸に対応する。
[ag]をジャイロ検出軸座標系とする。これは姿勢方位推定手段1に固定された座標系である。xg 、yg 、zg軸がそれぞれ、姿勢方位推定手段1に搭載されたジャイロ検出軸方向と一致する。
[aa]を加速度計検出軸座標系とする。これは姿勢方位推定手段1に固定された座標系である。xa 、ya 、za軸がそれぞれ、姿勢方位推定手段1に搭載された加速度計検出軸方向と一致する。
【0016】
さらに以下の記号を定義する。
Aijを座標系[aj]から座標系[ai]への座標変換行列とする。ωijを座標系[aj]に対する座標系[ai]の角速度とする。移動体の絶対位置を表す緯度、経度、高度をそれぞれ
【数1】
また、移動体の絶対姿勢および絶対方位を表すロール角、ピッチ角、真方位角をそれぞれφ、θ、ψで表す。vbeを地球固定座標系[ae]に対する移動体の並進速度とする。また、gを単位質量あたりに作用する重力ベクトルとする。
【0017】
衛星絶対方向算出手段2では、追尾する衛星の絶対位置とGPS受信機(図2の符号19参照)で受信した移動体の絶対位置から、衛星の方位角および仰角を算出する。地球中心から移動体までの距離ベクトルrb、および地球中心から衛星までの距離ベクトルrsはそれぞれ、Rを地球半径として次式で与えられる。
【0018】
【数2】
【0019】
【数3】
【0020】
ここで右肩添字eは表現されている座標系を表す。また下付き添字sは追尾する衛星に関する諸量を表すものとする。この時、移動体から衛星までの距離ベクトルは、局所水平面座標系 [al] で次のように表される。
【0021】
【数4】
【0022】
これより衛星の方位角αaと仰角αeがrsb lの3成分を用いて次のように算出される。
【0023】
【数5】
【0024】
姿勢方位推定手段1における信号処理は、移動体の回転運動に関する姿勢方位推定フィルタ、および移動体の並進運動に関する位置速度推定フィルタに分類される。
【0025】
先ず姿勢方位推定フィルタについて説明する。図2は姿勢方位推定フィルタにおける信号処理の概略を示すブロック図である。図2において、9は3軸ジャイロ、10は角速度算出部、11は姿勢方位角速度推定部、12は積分演算部、13は回転系帰還入力算出部、14は3軸加速度計、15は座標変換部、16は絶対姿勢参照値算出部、17は絶対方位参照値算出部、18は磁気コンパス、19はGPS受信機、4は図1に示したアンテナ駆動装置である。
【0026】
図2における角速度算出部10において、3軸ジャイロ9によって検出された角速度ωg = [ωxg ,ωyg ,ωzg]Tを用いて局所水平面座標系[al]に対する移動体固定座標系[ab]の角速度を算出する。なお、ここでは、簡単のため地球の自転の影響は無視した。
【0027】
【数6】
【0028】
次に姿勢方位角速度推定部11において、移動体の回転運動に関する運動方程式から移動体の絶対姿勢角速度(ロール角速度とピッチ角速度)および絶対方位角速度を推定する。すなわち
【0029】
【数7】
【0030】
また行列Sは現時点の絶対姿勢推定値φ、θから構成される下記の3×3行列である。
【0031】
【数8】
【0032】
またurは回転系帰還入力算出部13から算出された入力量で、この詳細については後述する。
【0033】
次に積分演算部12において、推定した絶対姿勢角速度および絶対方位角速度を積分することにより、移動体の絶対姿勢推定値(ロール角推定値とピッチ角推定値)および絶対方位推定値を得る。
【0034】
一方、座標変換部15において、3軸加速度計14によって検出された加速度fa = [fxa ,fya ,fza]Tを移動体固定座標系[ab]で表現する。
【0035】
【数9】
【0036】
絶対姿勢参照値算出部16では、座標変換部15において算出した加速度を用いて移動体固定座標系[ab]での重力ベクトルを推定し、その方向から移動体の絶対姿勢参照値を推定する。重力ベクトルは、移動体の並進運動に関する運動方程式から次のように求められる。
【0037】
【数10】
【0038】
ここで×は外積演算を表す。移動体の並進運動加速度vbe lドットに関しては、それが小さいものと仮定して零と置くか、あるいは、GPS受信機19より検出した絶対位置を数値的に2階微分して算出する。また並進速度vbe lに関しては、後述する位置速度推定フィルタより得られた推定値を用いる。こうして求めた移動体固定座標系[ab]での重力ベクトルgbの3成分を用いて、絶対姿勢参照値が次のように求められる。
【0039】
【数11】
【0040】
絶対方位参照値算出部17では、複数のセンサから絶対方位参照値の候補を得、それらの中から適切な絶対方位参照値を選択する。先ず移動体に搭載した磁気コンパス18から、移動体の絶対方位が検出される。ただしこの検出値の信頼性は、移動体の周囲環境の磁気的外乱に大きく左右される。また移動体に搭載したGPS受信機19から、移動体の進行方向方位が検出される。ただしこの検出値が利用可能な場合は、GPSが測位時で、かつ移動体が並進運動している場合に限られる。またその信頼性は主に移動体の並進速度に依存している。あるいはもしGPS受信機19が干渉測位可能な受信機である場合には、これより移動体の絶対方位が検出される。最後の絶対方位の候補は、衛星見通し時にアンテナ駆動装置4から得られた移動体に対するアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角を用いて推定される。その手法を以下に述べる。
【0041】
衛星絶対方向算出手段2より得られた衛星の方位角αaおよび仰角αe、衛星見通し時における移動体に対するアンテナあるいはアンテナビームの方位角βaハットおよび仰角βeハット、移動体の絶対姿勢(ロール角φとピッチ角θ) の間には次の関係式が成立している。
【0042】
【数12】
【0043】
ここで絶対姿勢に関して姿勢推定フィルタにおける現時点での推定値を利用すれば、上式は未知数である絶対方位ψに関する方程式となる、これを解くことによって絶対方位に関する正弦sinψと余弦cosψが得られる。これから絶対方位参照値が次のように推定される。
【0044】
【数13】
【0045】
ただしこの推定値が利用可能な場合は、衛星が見通し可能な場合に限られる。
【0046】
このように搭載したセンサあるいは装置から3通りの絶対方位参照値の候補を得、現時点で移動体が直面している状況に応じて最も信頼性の高い推定値を選択して絶対方位参照値とする。図3はその選択方法の一例を示す図である。磁気コンパス18は常時絶対方位を検出可能であるが、その精度は周囲環境の磁気的外乱に大きく左右されるため、磁気的外乱には影響されないGPS受信機19で検出した進行方向方位を用いてその信頼性を判定する。先ずGPS受信機19が未測位あるいは検出した速度があらかじめ決定した閾値未満の場合には(ステップS1)、検出した進行方向方位の信頼性は乏しい。その場合において、衛星が見通し時の場合は(ステップS2)、アンテナあるいはアンテナビームの方位角βaハットおよび仰角βeハットから求めた絶対方位推定値を絶対方位参照値とする(ステップS3)。衛星が見通し不可の場合は(ステップS2)、絶対方位参照値が得られなかったものとして、後述する回転系帰還入力urの方位軸に関する成分を零とする(ステップS4)。GPS測位時において検出した速度が閾値以上の場合には(ステップS1)、GPS受信機19で検出した進行方向方位と磁気コンパス18で検出した絶対方位を一定時間の間比較し、両者の間の偏差があらかじめ決定した閾値未満なら(ステップS5)、磁気コンパス18で検出した絶対方位は信頼できるものとし、それを絶対方位参照値とする(ステップS6)。それ以外の場合には(ステップS5)、信頼性に乏しいものとし、GPS受信機19で検出した進行方向方位を絶対方位参照値とする(ステップS7)。
あるいは図4に示すように選択してもよい。先ず衛星が見通し時の場合は(ステップS8)、アンテナあるいはアンテナビームの方位角βaハットおよび仰角βeハットから求めた絶対方位推定値を絶対方位参照値とする(ステップS9)。次に衛星が見通し不可の場合において(ステップS8)、GPS受信機19が未測位あるいは検出した速度があらかじめ決定した閾値未満の場合には(ステップS10)、絶対方位参照値が得られなかったものとして、後述する回転系帰還入力urの方位軸に関する成分を零とする(ステップS11)。GPS測位時において検出した速度が閾値以上の場合には(ステップS10)、GPS受信機19で検出した進行方向方位と磁気コンパス18で検出した絶対方位を一定時間の間比較し、両者の間の偏差があらかじめ決定した閾値未満なら(ステップS12)、磁気コンパス18で検出した絶対方位は信頼できるものとし、それを絶対方位参照値とする(ステップS13)。それ以外の場合には(ステップS12)、信頼性に乏しいものとし、GPS受信機19で検出した進行方向方位を絶対方位参照値とする(ステップS14)。
【0047】
回転系帰還入力算出部13では、3軸ジャイロ9のドリフト誤差による姿勢方位推定フィルタにおける発散を防止するために、先に推定した絶対姿勢参照値と絶対方位参照値、および現時点での絶対姿勢推定値と絶対方位推定値を用いてそれらの間の偏差を計算し、適切なゲインを乗じて帰還入力urとし姿勢方位角速度推定部11へ帰還する。
【0048】
次に、姿勢方位推定手段1における信号処理の2つ目である位置速度推定フィルタについて説明する。図5は位置速度推定フィルタにおける信号処理の概略を示すブロック図である。図5において、20は座標変換部、21は並進加速度推定部、22は積分演算部、23は測地座標速度推定部、24は積分演算部、25は絶対位置参照値算出部、26は絶対速度参照値算出部、27は並進系帰還入力算出部である。符号14、15,19は、図2と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0049】
図5における座標変換部15において、3軸加速度計14によって検出された加速度fa = [fxa ,fya ,fza]T を移動体固定座標系[ab]で表現する。
【0050】
【数14】
【0051】
さらに座標変換部20において、前述の姿勢方位推定フィルタより推定された絶対姿勢推定値および絶対方位推定値を用いて、局所水平面座標系[al] に変換する。
【0052】
【数15】
【0053】
次に並進加速度推定部21において、移動体の並進運動に関する運動方程式から移動体の並進加速度を推定する。すなわち
【0054】
【数16】
【0055】
ここでutは並進系帰還入力算出部27から算出された入力量で、この詳細については後述する。
【0056】
次に積分演算部22において、推定した並進加速度を積分することにより、移動体の並進速度推定値vbe lを得る。
【0057】
また測地座標速度推定部23において、現時点の位置速度推定値を用いて、移動体の並進運動に関する運動方程式から移動体の絶対位置を表す測地座標の時間微分値を推定する。すなわち
【0058】
【数17】
【0059】
これを積分演算部24において積分することにより、移動体の絶対位置推定値
【数18】
を得る。
【0060】
絶対位置参照値算出部25では、GPS受信機19で受信した移動体の絶対位置(緯度、経度、高度)を絶対位置参照値とする。また並進速度参照値算出部26では、GPS受信機19で受信した移動体の絶対位置を数値的に1階微分することにより移動体の並進速度vbe lを推定し、これを並進速度参照値とする。
【0061】
並進系帰還入力算出部27では、3軸加速度計14のバイアス誤差による位置速度推定フィルタにおける発散を防止するために、絶対位置参照値と並進速度参照値、および現時点での絶対位置推定値と並進速度推定値を用いてそれらの間の偏差を計算し、適切なゲインを乗じて帰還入力utとし並進加速度推定部21へ帰還する。なおGPS19が受信不可で絶対位置参照値あるいは並進速度参照値が得られない場合には、それまでの受信値を保持して算出するか、あるいは対応する帰還入力を零とする。
【0062】
衛星相対方向算出手段3では、姿勢方位推定手段1で推定した移動体の絶対姿勢φ、θおよび絶対方位ψ、および衛星絶対方向算出手段で算出した衛星の方位角αaおよび仰角αeから、移動体に対する方位角仰βaおよび角βeを算出する。衛星指向方向単位ベクトルに着目すると、これらの諸量の間には以下の関係式が成立している。
【0063】
【数19】
【0064】
従ってこの第3式から移動体に対する衛星の仰角βe、また第1、2式から移動体に対する衛星の方位角βaが算出される。
【0065】
ここで求めたβa、βeを指令値としてアンテナ駆動装置4において、アンテナあるいはアンテナビームを推定される衛星方向に指向させる。さらにこれとは独立して、衛星相対方向探索手段5においては、衛星から送信される信号の受信レベルを用いて、それが最大となる衛星相対方向が探索される。例えばアンテナあるいはアンテナビームを、衛星相対方向算出手段3で算出した方向を中心として、移動体に対する方位角および仰角方向に微小量駆動し、その近傍でのアンテナ受信レベルを数点に渡って記憶しておき、それらを補間して最大受信レベル位置を決定することにより、最も確からしい衛星相対方向を探索し、その際の方位角および仰角増分信号Δβa、Δβeを衛星相対方向算出手段3より算出した方位角および仰角信号βa、βeに重畳してアンテナあるいはアンテナビームを指向させる。これとともにアンテナ駆動装置4には方位角および仰角を検出するためのエンコーダが備え付けられており、その際の方位角βaハット(=βa+Δβa)および仰角βeハット(=βe+Δβe)が検出されて姿勢方位推定手段1に入力される。姿勢方位推定手段1では前述したように、これらの値を用いて絶対方位参照値の候補が決定される。
【0066】
このように、本実施の形態においては、衛星相対方向算出手段3から得られた衛星相対方向に、衛星相対方向探索手段5から得られた衛星相対方向を重畳してアンテナあるいはアンテナビームを駆動するため、移動体の機敏な運動にも対処でき、また角速度センサのドリフト誤差や加速度センサのバイアス誤差により衛星相対方向算出手段3から得られる衛星相対方向に誤差が生じても、衛星見通し時である限り衛星相対方向探索手段5によりその誤差を補償することができ、長時間に渡り高精度にアンテナ方向を制御して衛星を追尾することができる。
【0067】
また、このように姿勢方位推定手段1における姿勢推定フィルタにおいて、加速度センサ検出値から絶対姿勢参照値を推定して帰還系を構成したので、角速度センサのドリフト誤差による姿勢推定フィルタの発散を防ぐことができるとともに、絶対姿勢推定精度を高めることができる。また方位推定フィルタフィルタにおいて、磁気方位センサ検出値、GPS受信値、およびアンテナ駆動装置4から入力された方位角および仰角から絶対方位参照値を推定して帰還系を構成したので、角速度センサのドリフト誤差による姿勢推定フィルタの発散を防ぐことができるとともに、周囲環境の磁気的外乱や移動速度の影響が少ない絶対方位参照値を得ることができるので、絶対方位推定精度を高めることができるとともに、方位軸に関して比較的安価な角速度センサを利用することができる。
【0068】
これより衛星相対方向算出手段3から得られる衛星相対方向の推定精度を高めることができる。また障害物等により衛星の見通しが不可な場合においてもアンテナあるいはアンテナビームを高精度に衛星方向に指向させておくことができるので、見通し状態に復帰した場合に迅速に衛星追尾を再開することができる。
【0069】
実施の形態2.
図6は、この発明を実施するための実施の形態2による衛星追尾用アンテナ制御装置を説明するための図である。図において、32は本実施の形態における衛星相対方向探索手段であり、衛星相対方向探索手段32内には、衛星から送信される信号の受信レベルを用いて衛星相対方向を探索する衛星相対方向探索部32aと、探索された当該衛星相対方向を衛星相対方向算出手段3より得られた衛星相対方向に重畳するための加算器32b,32cが設けられている。
【0070】
実施の形態1においてアンテナ駆動装置4は、衛星相対方向算出手段3で得られた衛星相対方向に衛星相対方向探索手段5で得られた衛星相対方向を重畳してアンテナあるいはアンテナビームを駆動したが、これは下記のようにしても同様の効果を実現することができる。
【0071】
アンテナ駆動装置4は衛星相対方向算出手段3より得られた方位角および仰角方向βa,βeにアンテナあるいはアンテナビームを駆動する。また、衛星相対方向探索手段32では、衛星相対方向算出手段3より得られた衛星相対方向を中心として衛星相対方向が探索され、その際の方位角および仰角増分信号Δβa、Δβeを衛星相対方向算出手段3より得られた方位角および仰角βa,βeに重畳し、姿勢方位推定手段1へ入力する。姿勢方位推定手段1ではこれを用いて実施の形態1の場合と同様にして絶対方位参照値の候補が推定され、絶対方位参照値を決定し帰還系が構成される。
【0072】
このように、本実施の形態においては、衛星相対方向探索手段32において、衛星から送信される信号の受信レベルを用いて衛星相対方向を探索するとともに、それを衛星相対方向算出手段3より得られた衛星相対方向に重畳して衛星相対方向を補正し、その補正した移動体に対するアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角を姿勢方位推定手段1へ入力するとともに、姿勢方位推定手段1ではその値を用いて絶対方位参照値を推定し帰還系を構成したため、移動体の機敏な運動にも対処でき、また衛星見通し時である限り、角速度センサのドリフト誤差や加速度センサのバイアス誤差による衛星相対方向算出手段3における衛星相対方向推定誤差の発生を補償することができ、長時間に渡り高精度にアンテナ方向を制御して衛星を追尾することができる。
【0073】
このように姿勢方位推定手段1における姿勢推定フィルタにおいて、加速度センサ検出値から絶対姿勢参照値を推定して帰還系を構成したので、角速度センサのドリフト誤差による姿勢推定フィルタの発散を防ぐことができるとともに、絶対姿勢推定精度を高めることができる。また方位推定フィルタフィルタにおいて、磁気方位センサ検出値、GPS受信値、および、衛星相対方向探索手段32から入力された方位角および仰角から絶対方位参照値を推定して帰還系を構成したので、角速度センサのドリフト誤差による姿勢推定フィルタの発散を防ぐことができるとともに、周囲環境の磁気的外乱や移動速度の影響が少ない絶対方位参照値を得ることができるので、絶対方位推定精度を高めることができるとともに、方位軸に関して比較的安価な角速度センサを利用することができる。
【0074】
これより衛星相対方向算出手段3から得られる衛星相対方向の推定精度を高めることができる。また障害物等により衛星の見通しが不可な場合においてもアンテナあるいはアンテナビームを高精度に衛星方向に指向させておくことができるので、見通し状態に復帰した場合に迅速に衛星追尾を再開することができる。
【0075】
実施の形態3.
上述の実施の形態1および実施の形態2における姿勢方位推定手段1において、アンテナ駆動装置4あるいは衛星相対方向探索手段32から得られた移動体に対するアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角から、移動体の絶対方位を推定する手法は以下のようにしてもよい。姿勢方位推定手段1で推定した移動体の絶対姿勢φ、θおよび絶対方位ψ、および、衛星見通し時におけるアンテナあるいはアンテナビームの方位角βaハットおよび仰角βeハットを用いると、衛星指向方向単位ベクトルに着目して、衛星絶対方向(方位角αaハットと仰角αeハット)を次式から推定することができる。
【0076】
【数20】
【0077】
この第3式から追尾する衛星の仰角推定値αeハット、また第1、2式から方位角推定値αaハットを得る。ここで求めた方位角推定値αaハットと衛星絶対方向算出手段2で算出した実際の衛星の方位角αa、および現時点の姿勢方位推定手段1における絶対方位推定値ψを用いて、移動体の絶対方位参照値の候補が次のように決定される。
【0078】
【数21】
【0079】
なお、本実施の形態においても、上述の実施の形態1及び実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0080】
実施の形態4.
上述の実施の形態1および実施の形態2における姿勢方位推定手段1において、姿勢推定フィルタにおける絶対姿勢参照値は3軸加速度計14を用いて算出したが、これはこの限りではない。例えば移動体のロール軸とピッチ軸のみに配置した2軸加速度計を用いても同様なことが行える。この場合には加速度ベクトルの大きさが重力加速度と同じであると仮定し、ヨー軸方向加速度はその重力加速度からロール軸方向加速度、ピッチ軸方向加速度を除いた成分であるとする。
【0081】
本実施の形態においても、上述の実施の形態1及び実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0082】
また、姿勢推定精度は低下するが、3軸加速度計14の代わりにロール角、ピッチ角が検出可能な液面傾斜計を備え、その検出値を絶対姿勢参照値としてもよい。この場合には加速度計に比べて検出可能な加速度の帯域は劣るが、姿勢方位推定手段1の低価格化を図ることができる。
【0083】
実施の形態5.
図7は、この発明を実施するための実施の形態5による衛星追尾用アンテナ制御装置を説明するための部分構成図である。図7は、衛星追尾用アンテナ制御装置における姿勢方位推定手段1の、姿勢方位推定フィルタにおける信号処理の概略を示すブロック図である。ドリフト誤差推定部28において、回転系帰還入力算出部13から算出された入力量urを用いてジャイロ9の持つドリフト誤差を推定する。ジャイロ9により検出される角速度信号に含まれる誤差として、加法的なドリフト誤差を考慮すると、ドリフト誤差は次のように推定される。
【0084】
【数22】
【0085】
絶対姿勢参照値算出部16および絶対方位参照値算出部17において信頼性のある絶対姿勢参照値および絶対方位参照値が得られ、それを用いて帰還入力urが計算された場合には、上式によってドリフト誤差を計算して、その推定値を時々刻々更新する。
【0086】
回転系帰還入力算出部13では、移動体の並進速度推定値、並進加速度推定値、GPS受信時、非受信時、および、衛星見通し時、非見通し時の場合に応じて、帰還入力が切断される。先ず姿勢推定フィルタについて説明する。絶対姿勢参照値算出部16において算出される絶対姿勢参照値は、前述したように移動体の並進運動方程式を用いて推定した重力ベクトルの3成分に基づいて導出されている。ロール角参照値φ(ref)は重力ベクトルのyb軸成分とzb軸成分の2成分から導出され、ピッチ角参照値θ(ref)は重力ベクトルのxb軸成分とzb軸成分の2成分から導出されるため、例えば旋回に伴って移動体のyb軸成分の運動加速度が大きい場合や、加減速に伴ってxb軸成分の運動加速度が大きい場合には、算出した絶対姿勢参照値の信頼性が低下する可能性がある。そこで位置速度推定フィルタにおける並進加速度推定部21において推定した移動体の並進加速度vbe lドットを用いてその信頼性を判定する。先ず推定した並進加速度を移動体固定座標系[ab]に変換する。
【0087】
【数23】
【0088】
ここで推定した並進加速度vbe bドットのyb軸成分とzb軸成分が大きい場合には、求めたロール角参照値φ(ref)の信頼性は低いものとし、姿勢推定フィルタにおけるロール角推定部における帰還入力を切断する。また推定したvbe bドットのxb軸成分とzb軸成分が大きい場合には、求めたピッチ角参照値θ(ref)の信頼性は低いものとし、姿勢推定フィルタにおけるピッチ角推定部における帰還入力を切断する。さらに帰還入力を切断した場合には、それによるフィルタの発散を防止するために、図8に示すように現時点でのジャイロドリフト誤差推定値dgを用いて対応する入力urを計算し、ジャイロ9の持つドリフト誤差の影響を補償する。
【0089】
方位推定フィルタについても同様である。絶対方位参照値算出部17では、磁気コンパス18から検出された絶対方位、GPS受信機19から検出した移動体の進行方向方位、衛星見通し時においてアンテナあるいはアンテナビームの方位角βaハットおよび仰角βeハットから推定した絶対方位を候補として、その3通りの候補の中から適切なものを選択して絶対方位参照値とする。信頼性のある絶対方位参照値が得られなかった場合には、方位推定フィルタにおける帰還入力を切断する。さらに帰還入力を切断した場合には、それによるフィルタの発散を防止するために、図8に示すように現時点でのジャイロドリフト誤差推定値dgを用いて対応する入力を計算し、ジャイロ9の持つドリフト誤差の影響を補償する。
【0090】
また図9は、衛星追尾用アンテナ制御装置における姿勢方位推定手段1の、位置速度推定フィルタにおける信号処理の概略を示すブロック図である。バイアス誤差推定部29において、並進系帰還入力算出部27から算出された入力量utを用いて加速度計14の持つバイアス誤差を推定する。加速度計14により検出される加速度信号に含まれる誤差として、加法的なバイアス誤差を考慮すると、バイアス誤差は次のように推定される。
【0091】
【数24】
【0092】
GPS測位時においては、絶対位置参照値算出部25および絶対速度参照値算出部26において絶対位置参照値および絶対速度参照値が得られ、それを用いて帰還入力utが計算された場合には、上式によってバイアス誤差を計算して、その推定値を時々刻々更新する。
【0093】
GPSが未測位の場合には位置速度推定フィルタにおける帰還入力を切断する。さらに帰還入力を切断した場合には、それによるフィルタの発散を防止するために、図10に示すように現時点での加速度計バイアス誤差推定値baを用いて対応する入力utを計算し、加速度計14の持つバイアス誤差の影響を補償する。
【0094】
このように本実施の形態においては、移動体の運動や受信状況に応じて、姿勢推定フィルタにおける帰還系および方位推定フィルタにおける帰還系を各姿勢方位軸に関して独立に切断することにより、移動体の並進運動加速度によって絶対姿勢参照値が高精度に得られない場合や、あるいは移動体静止時においてGPSから絶対方位参照値が高精度に得られない場合等において、帰還系による姿勢方位推定精度の低下を防ぐことができる。またその場合にこれまでの帰還入力から推定した角速度センサドリフト誤差を入力して補償することにより、その区間での姿勢推定フィルタの発散、あるいは方位推定フィルタの発散を防ぐことができるとともに、高精度な絶対姿勢推定精度および絶対方位推定精度を保持することができる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段3において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【0095】
実施の形態6.
図11及び図12は、この発明を実施するための実施の形態6による衛星追尾用アンテナ制御装置を説明するための図であり、特に、図11は、衛星追尾用アンテナ制御装置における姿勢方位推定手段1の、姿勢方位推定フィルタにおける信号処理の概略を示すブロック図、また図12は位置速度推定フィルタにおける信号処理の概略を示すブロック図である。これらの図において、30及び31は低域通過フィルタであり、低域通過フィルタ30は、3軸ジャイロ9が有するドリフト特性に対応した低域の所定の値をしきい値とし、それよりも高い周波数の高域成分を除去するためのものである。同様に、低域通過フィルタ31は3軸加速度計14が有するバイアス特性に対応した低域の所定の値をしきい値とし、それよりも高い周波数の高域成分を除去するためのものである。
【0096】
上述の実施の形態5において、ジャイロ9の持つドリフト誤差推定値および加速度計14の持つバイアス誤差推定値は、回転系帰還入力urおよび並進系帰還入力utから算出し、帰還入力切断時においては、それらを用いて対応する補償入力を計算して、ドリフト誤差およびバイアス誤差の影響を補償した。しかし回転系帰還入力urおよび並進系帰還入力utには、一般に移動体の運動に伴う高域成分(高周波成分)が含まれており、それを用いてドリフト誤差およびバイアス誤差を推定すると、推定値には本来ジャイロや加速度計が有していない高域成分が含まれる場合があり、推定精度を高く保てない可能性がある。したがってこの推定値を用いて補償入力を計算した場合には、ドリフト誤差およびバイアス誤差の影響を高精度に補償できない可能性がある。そこで、本実施の形態においては、搭載したジャイロ9や加速度系14の持つドリフト特性およびバイアス特性をあらかじめ調べておき、図11および図12に示すように、ドリフト誤差推定部28で推定した推定値およびバイアス誤差推定部29で推定した推定値に対して、それぞれの特性に応じた低域通過フィルタ30、31を時々刻々適用し、ドリフト推定値およびバイアス推定値の推定精度を高める。帰還入力切断時には、これらの高域成分が除去されたドリフト誤差推定値およびバイアス誤差推定値を用いて対応する補償入力を計算し、ドリフト誤差およびバイアス誤差の影響を補償する。
【0097】
このように、本実施の形態においては、3軸ジャイロ9のドリフト特性に応じた低域通過フィルタ30を適用することにより、帰還入力から推定した角速度センサドリフト誤差に含まれる移動体の機敏な運動が要因の高域成分を除去することができ、角速度センサが持つドリフト誤差をより高精度に推定することができる。またそれを用いて補償入力を算出することにより、帰還入力切断時においても高精度な絶対姿勢推定精度および絶対方位推定精度を保持することができる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段3において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【0098】
また同様に、本実施の形態においては、3軸加速度計14のバイアス特性に応じた低域通過フィルタ31を適用することにより、帰還入力から推定したバイアス誤差に含まれる移動体の機敏な運動が要因の高域成分を除去することができ、バイアス誤差をより高精度に推定することができる。またそれを用いて姿勢方位推定フィルタにおける補償入力を算出することにより、帰還入力切断時においても高精度な絶対姿勢推定精度および絶対方位推定精度を保持することができる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段3において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【0099】
実施の形態7.
実施の形態1あるいは実施の形態2で説明したように、姿勢方位推定手段1における絶対方位推定精度を高めるためには、高精度な絶対方位参照値が必要である。衛星指向方向単位ベクトルに着目すると、衛星見通し時におけるアンテナあるいはアンテナビームの方位角βaハットおよび仰角βeハット、移動体の絶対姿勢(ロール角φとピッチ角θ)および絶対方位ψ、衛星の方位角αaおよび仰角αeの間には、以下の関係式が成立しなければならない。
【0100】
【数25】
【0101】
ここで、sr=sinφ、cr=cosφ、sp=sinθ、cp=cosθ、sh=sinψ、ch=cosψとする。アンテナあるいはアンテナビームの方位角βaハットおよび仰角βeハットはアンテナ駆動装置4あるいは衛星相対方向探索手段32から得ることができる。移動体の絶対姿勢および絶対方位は姿勢方位推定手段1から得ることができる。また衛星の方位角αaおよび仰角αeに関しては衛星絶対方向算出手段2より得ることができる。
【0102】
上式はこれらの諸量の間で成立しなければならない拘束条件式であるが、実際には満足されず、その主な要因は姿勢方位推定手段1における絶対姿勢推定誤差および絶対方位推定誤差の存在にある。そこで姿勢推定フィルタで得られた現時点での絶対姿勢推定値を初期値として、上記拘束条件式を満足するように絶対姿勢推定値および絶対方位推定値を逐次的に更新し、絶対方位参照値の候補を得る手法を説明する。
【0103】
先ず上式を絶対方位に関する方程式と見なせば、第1、2式を変形して
【0104】
【数26】
【0105】
次に絶対姿勢に関する方程式と見なせば、第1、2式の左辺からψを消去し、第3式と並べて
【0106】
【数27】
【0107】
これら2つの関係式を用いて、次のように絶対姿勢および絶対方位を逐次的に更新し、最終的に得られた絶対方位を絶対方位参照値の候補とする。
【0108】
先ず姿勢方位推定フィルタにおける現時点の絶対姿勢推定値(ロール角φとピッチ角θ)をそれぞれφ(i)、θ(i)とする。i=0にセットする(ステップS21)。
【0109】
次にロール角推定値φ(i)およびピッチ角推定値θ(i)を用いて、上記絶対方位に関する方程式をsinψ、cosψに関して解き、これから絶対方位推定値ψを得る。得られた絶対方位推定値をψ (i)とする(ステップS22)。
【0110】
次にロール角φおよびピッチ角θを1次の微小項まで次のように展開する。
【0111】
【数28】
【0112】
これを上記絶対姿勢に関する方程式に代入して整理すると、未知数Δφ、Δθに関する連立一次方程式を得る。これを解いてΔφ、Δθを得、それを用いて更新したロール角推定値φ(i+1)およびピッチ角推定値θ(i+1)を得る。i←i+1としてステップS22へ戻る(ステップS23)。
【0113】
以下、ステップS22で得られる絶対方位推定値が収束するまで上記手続きを繰り返し、最終的に得られた絶対方位推定値を絶対方位参照値算出部17における絶対方位参照値の候補として採用する(ステップS24)。
【0114】
このように衛星見通し時において前記アンテナ駆動装置4あるいは衛星相対方向探索手段32から入力された方位角および仰角を用いて、移動体の絶対姿勢および絶対方位を逐次的に更新して推定し、得られた絶対方位推定値を絶対方位参照値の候補とすることにより、周囲環境の磁気的外乱の影響を受けやすい磁気方位センサ、移動体の進行方向方位(速度ベクトル方位)を出力するGPS受信装置に比べて、より高精度の絶対方位推定値を得ることができ、それを絶対方位参照値とすることにより姿勢方位推定フィルタの絶対方位推定精度を高めることができる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段3において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【0115】
実施の形態8.
上述の実施の形態1あるいは実施の形態2で説明したように、姿勢方位推定手段1における絶対方位推定精度を高めるためには、高精度な絶対方位参照値が必要である。衛星指向方向単位ベクトルに着目すると、衛星見通し時におけるアンテナあるいはアンテナビームの方位角βaハットおよび仰角βeハット、移動体の絶対姿勢(ロール角φとピッチ角θ)および絶対方位ψ、衛星の方位角αaおよび仰角αeの間には、以下の関係式が成立しなければならない。
【0116】
【数29】
【0117】
ここでsr=sinφ、cr=cosφ、sp=sinθ、cp=cosθ、sh=sinψ、ch=cosψとする。アンテナあるいはアンテナビームの方位角βaハットおよび仰角βeハットはアンテナ駆動装置4あるいは衛星相対方向探索手段32から得ることができる。絶対姿勢および絶対方位は姿勢方位推定手段1から得ることができる。また衛星の方位角αaおよび仰角αeに関しては衛星絶対方向算出手段2より得ることができる。
【0118】
上式はこれらの諸量の間で成立しなければならない拘束条件式であるが、実際には満足されず、その主な要因は姿勢方位推定手段1における絶対姿勢推定誤差および絶対方位推定誤差の存在にある。そこで姿勢推定フィルタで得られた現時点での絶対姿勢推定値を初期値として、上記拘束条件式を満足するような絶対姿勢推定値および絶対方位推定値を得る手法を説明する。
【0119】
上式の第3式に着目すると、これは移動体の絶対方位ψには関係なく、絶対姿勢のロール角φおよびピッチ角θのみが満たすべき拘束条件となっている。この第3式を書き直すと
【0120】
【数30】
【0121】
ここで
【0122】
【数31】
【0123】
eaは鉛直下方向単位ベクトル(移動体固定座標系[ab]表現)、eβは衛星指向軸方向単位ベクトル(移動体固定座標系[ab]表現)を表している。eaおよびeβが単位ベクトルであることに注意すると、上式は2つのベクトルeaとeβの内積演算を定義した拘束条件式であり、図13に示すようにベクトルeaはベクトルeβを中心軸として角度(π/2+αe)だけ隔てた円錐面上に分布すべき諸量であることが分かる。しかし姿勢方位推定フィルタによって推定したロール角φおよびピッチ角θには推定誤差が含まれるため、この推定値を用いて生成したベクトルeaハットは、実際にはこの円錐面上に存在していない。そこで図13に示すようにベクトルeβとベクトルeaハットにより張られる平面γを考え、この平面γと上記円錐面との交線をベクトルeaの候補値ea *として採用する。すなわちベクトルeaハットに最小二乗近似の意味で最も近い円錐面上のベクトルをベクトルeaの候補値ea *として採用する。
【0124】
平面γ上でベクトルeβに垂直な単位ベクトルは
【0125】
【数32】
【0126】
したがってベクトルeaの候補値ea *は次式で与えられる。
【0127】
【数33】
【0128】
これより先ずロール角、ピッチ角の候補値が、ベクトルea *の3成分を用いて次のように求められる。
【0129】
【数34】
【0130】
ここで求めたロール角φ*とピッチ角θ*を用いて、実施の形態7で述べた絶対方位に関する方程式を解くことによって、絶対方位推定値を得ることができ、これを絶対方位参照値の候補とする。
【0131】
このように、本実施の形態においては、最小二乗近似の意味で先ず最も確からしい移動体の絶対姿勢を推定し、次にそれを用いて絶対方位を推定したことにより、周囲環境の磁気的外乱の影響を受けやすい磁気方位センサ、移動体の進行方向方位(速度ベクトル方位)を出力するGPS受信装置に比べて、より高精度の絶対方位推定値を得ることができ、それを絶対方位参照値の候補とすることにより方位推定フィルタの絶対方位推定精度を高めることができる。また絶対方位参照値を得るための計算負荷も小さくなる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段3において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【0132】
実施の形態9.
図14は、この発明を実施するための実施の形態9による衛星追尾用アンテナ制御装置を説明するための図である。図14は特に姿勢方位推定フィルタにおける信号処理の概略を示すブロック図である。実施の形態7および実施の形態8において、アンテナ駆動装置4で検出したアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角を用いて、絶対方位参照値算出部17で絶対姿勢および絶対方位推定値を得、その絶対方位推定値を絶対方位参照値の候補として用いたが、そこでの絶対姿勢推定値は回転系帰還入力算出部13における姿勢推定フィルタの帰還信号の構成に用いることができる。
【0133】
絶対姿勢参照値算出部16では、3軸加速度計14の信号を用いて絶対姿勢参照値が算出される。ただし実施の形態5で説明したように、その精度は移動体の並進運動加速度に大きく依存しているため、実施の形態5では移動体の並進運動加速度を推定し、その値に応じて姿勢推定フィルタの帰還系を切断した。
【0134】
しかるにアンテナ駆動装置4で検出したアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角を用いて、絶対方位参照値算出部17で推定された絶対姿勢推定値は、移動体の並進運動加速度には依存しないため、この推定値を絶対姿勢参照値算出部16に入力し、回転系帰還入力算出部13における姿勢推定フィルタの帰還系切断の判定に利用することができる。例えば3軸加速度計14の信号を用いて算出された絶対姿勢参照値と、絶対方位参照値算出部17において推定された絶対姿勢推定値を一定時間の間比較し、その間の偏差が大きい場合には、3軸加速度計14の信号を用いて算出された絶対姿勢参照値の信頼性は低いものとし、姿勢推定フィルタにおける対応する姿勢軸の帰還系を切断する。さらに帰還入力を切断した場合には、それによるフィルタの発散を防止するために、現時点でのジャイロドリフト誤差推定値を用いて対応する入力urを計算し、ジャイロ9の持つドリフト誤差の影響を補償する。
【0135】
このように、本実施の形態においては、移動体の並進運動加速度には依存しない絶対姿勢推定値を用いて姿勢推定フィルタにおける帰還系を各姿勢方位軸に関して独立に切断することにより、加速度センサを用いても移動体の並進運動加速度によって絶対姿勢参照値が高精度に得られない場合において、帰還系による姿勢方位推定精度の低下を防ぐことができる。またその場合にこれまでの帰還入力から推定した角速度センサドリフト誤差を入力して補償することにより、その区間での姿勢推定フィルタの発散を防ぐことができるとともに、高精度な絶対姿勢推定精度を保持することができる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段3において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【0136】
実施の形態10.
図15は、この発明を実施するための実施の形態10による衛星追尾用アンテナ制御装置を説明するための図である。図15は特に姿勢方位推定フィルタにおける信号処理の概略を示すブロック図である。実施の形態7および実施の形態8において、衛星相対方向探索手段32より得られた方位角および仰角を用いて絶対姿勢および絶対方位推定値を算出し、その絶対方位推定値を絶対方位参照値の候補として用いたが、実施の形態9で述べたのと同様に、そこでの絶対姿勢推定値は回転系帰還入力算出部13における帰還信号の構成に用いることができる。
【0137】
絶対姿勢参照値算出部16では、3軸加速度計14の信号を用いて絶対姿勢参照値が算出される。ただし実施の形態5で説明したように、その精度は移動体の並進運動加速度に大きく依存しているため、実施の形態5では移動体の並進運動加速度を推定し、その値に応じて姿勢推定フィルタの帰還系を切断した。
【0138】
しかるに衛星相対方向探索手段32より得られた方位角および仰角を用いて、絶対方位参照値算出部17で推定された絶対姿勢推定値は、移動体の並進運動加速度には依存しないため、この推定値を絶対姿勢参照値算出部16に入力し、回転系帰還入力算出部13における姿勢推定フィルタの帰還系切断の判定に利用することができる。例えば3軸加速度計14の信号を用いて算出された絶対姿勢参照値と、絶対方位参照値算出部17において推定された絶対姿勢推定値を一定時間の間比較し、その間の偏差が大きい場合には、3軸加速度計14の信号を用いて算出された絶対姿勢参照値の信頼性は低いものとし、姿勢推定フィルタにおける対応する姿勢軸の帰還系を切断する。さらに帰還入力を切断した場合には、それによるフィルタの発散を防止するために、現時点でのジャイロドリフト誤差推定値を用いて対応する入力urを計算し、ジャイロ9の持つドリフト誤差の影響を補償する。
【0139】
このように、本実施の形態においては、移動体の並進運動加速度には依存しない絶対姿勢推定値を用いて姿勢推定フィルタにおける帰還系を各姿勢方位軸に関して独立に切断することにより、加速度センサを用いても移動体の並進運動加速度によって絶対姿勢参照値が高精度に得られない場合において、帰還系による姿勢方位推定精度の低下を防ぐことができる。またその場合にこれまでの帰還入力から推定した角速度センサドリフト誤差を入力して補償することにより、その区間での姿勢推定フィルタの発散を防ぐことができるとともに、高精度な絶対姿勢推定精度を保持することができる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段3において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【0140】
実施の形態11.
実施の形態1あるいは実施の形態2で説明したように、姿勢方位推定手段1における絶対方位推定精度を高めるためには、高精度な絶対方位参照値が必要である。衛星見通し時である限り、アンテナあるいはアンテナビームの方位角βaハットと仰角βeハットから推定された絶対方位の精度は、周囲環境の磁気的外乱や移動体の運動に依存しないため、一般には磁気コンパス18やGPS受信機19に比べて精度の良い絶対方位参照値を与える。そこで初期衛星補足時、あるいは衛星非見通し時から見通し時への復帰時において、実施の形態1、実施の形態3、実施の形態7あるいは実施の形態8で記述した手法によって絶対方位推定値が得られた時点で、これを絶対方位参照値として姿勢方位推定手段1における方位推定フィルタを初期化する。
【0141】
これにより、本実施の形態においては、姿勢方位推定フィルタにおける絶対方位推定誤差を迅速に零に収束させることができ、以後の絶対方位推定精度を高めることができる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【0142】
【発明の効果】
この発明は、アンテナあるいはアンテナビームの方位角及び仰角に基づいて移動体の絶対姿勢および絶対方位を推定する姿勢方位推定手段と、移動体の絶対位置と追尾対象の衛星の絶対位置とから衛星の方位角および仰角を算出する衛星絶対方向算出手段と、姿勢方位推定手段により推定された絶対姿勢および絶対方位、および、衛星絶対方向算出手段により算出された方位角および仰角から、移動体に対する衛星の方位角および仰角を算出する衛星相対方向算出手段と、算出された方位角および仰角の方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動するアンテナ駆動手段と、衛星から送信される信号の受信レベルを用いて衛星相対方向を探索する衛星相対方向探索手段とを備えた衛星追尾用アンテナ制御装置であって、姿勢方位推定手段は、移動体の3軸まわりの回転角速度を検出する角速度センサと、移動体の3軸方向の並進加速度を検出する加速度センサと、移動体の絶対方位を検出する磁気方位センサと、移動体の絶対位置を検出するGPS受信機と、移動体の絶対姿勢を推定する姿勢推定フィルタと、移動体の絶対方位を推定する方位推定フィルタとを備え、アンテナ駆動手段は、衛星相対方向算出手段から得られた衛星相対方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動するとともに、当該衛星相対方向に衛星相対方向探索手段から得られた衛星相対方向を重畳した方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動して衛星を指向し、その際の移動体に対するアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角を前記姿勢方位推定手段へ入力し、姿勢方位推定手段は、姿勢推定フィルタにおいて、上記角速度センサにより検出した角速度から絶対姿勢角速度を推定し、当該絶対姿勢角速度を積分して移動体の絶対姿勢を推定し、上記加速度センサにより検出した加速度から絶対姿勢参照値を算出し、推定した移動体の絶対姿勢と当該絶対姿勢参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した姿勢角速度を補正する帰還系を構成するとともに、方位推定フィルタにおいて、上記角速度センサにより検出した角速度から絶対方位角速度を推定し、当該絶対方位角速度を積分して移動体の絶対方位を推定し、磁気方位センサの検出値、GPS受信機の受信値、および、アンテナ駆動手段から入力された方位角および仰角のいずれかから絶対方位参照値を算出し、推定した移動体の絶対方位と当該絶対方位参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した方位角速度を補正する帰還系を構成する衛星追尾用アンテナ制御装置であるので、移動体の機敏な運動にも対処でき、また角速度センサのドリフト誤差や加速度センサのバイアス誤差により衛星相対方向算出手段から得られる衛星相対方向に誤差が生じても、衛星見通し時である限り衛星相対方向探索手段によりその誤差を補償することができ、長時間に渡り高精度にアンテナを制御して衛星を追尾することができる。また、このように姿勢方位推定手段における姿勢推定フィルタにおいて、上記角速度センサにより検出した角速度から絶対姿勢角速度を推定し、当該絶対姿勢角速度を積分して移動体の絶対姿勢を推定し、上記加速度センサにより検出した加速度から絶対姿勢参照値を算出し、推定した移動体の絶対姿勢と当該絶対姿勢参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した姿勢角速度を補正する帰還系を構成したので、角速度センサのドリフト誤差による姿勢推定フィルタの発散を防ぐことができるとともに、絶対姿勢推定精度を高めることができる。また方位推定フィルタにおいて、上記角速度センサにより検出した角速度から絶対方位角速度を推定し、当該絶対方位角速度を積分して移動体の絶対方位を推定し、磁気方位センサの検出値、GPS受信機の受信値、および、アンテナ駆動手段から入力された方位角および仰角のいずれかから絶対方位参照値を算出し、推定した移動体の絶対方位と当該絶対方位参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した方位角速度を補正する帰還系を構成したので、角速度センサのドリフト誤差による姿勢推定フィルタの発散を防ぐことができるとともに、周囲環境の磁気的外乱や移動速度の影響が少ない絶対方位参照値を得ることができるので、絶対方位推定精度を高めることができる。また、これより衛星相対方向算出手段から得られる衛星相対方向の推定精度を高めることができる。
【0143】
また、この発明は、アンテナあるいはアンテナビームの方位角及び仰角に基づいて移動体の絶対姿勢および絶対方位を推定する姿勢方位推定手段と、移動体の絶対位置と追尾対象の衛星の絶対位置とから衛星の方位角および仰角を算出する衛星絶対方向算出手段と、姿勢方位推定手段により推定された絶対姿勢および絶対方位、および、衛星絶対方向算出手段により算出された方位角および仰角から、移動体に対する衛星の方位角および仰角を算出する衛星相対方向算出手段と、算出された方位角および仰角の方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動するアンテナ駆動手段と、衛星から送信される信号の受信レベルを用いて衛星相対方向を探索する衛星相対方向探索手段とを備えた衛星追尾用アンテナ制御装置であって、姿勢方位推定手段は、移動体の3軸まわりの回転角速度を検出する角速度センサと、移動体の3軸方向の並進加速度を検出する加速度センサと、移動体の絶対方位を検出する磁気方位センサと、移動体の絶対位置を検出するGPS受信機と、移動体の絶対姿勢を推定する姿勢推定フィルタと、移動体の絶対方位を推定する方位推定フィルタとを備え、アンテナ駆動手段は、衛星相対方向算出手段から得られた衛星相対方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動し、衛星相対方向探索手段は、衛星から送信される信号の受信レベルを用いて衛星相対方向を探索するとともに、その方向を衛星相対方向算出手段より得られた衛星相対方向に重畳して衛星相対方向を補正し、その補正した移動体に対するアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角を上記姿勢方位推定手段へ入力し、姿勢方位推定手段は、姿勢推定フィルタにおいて、上記角速度センサにより検出した角速度から絶対姿勢角速度を推定し、当該絶対姿勢角速度を積分して移動体の絶対姿勢を推定し、上記加速度センサにより検出した加速度から絶対姿勢参照値を算出し、推定した移動体の絶対姿勢と当該絶対姿勢参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した姿勢角速度を補正する帰還系を構成するとともに、方位推定フィルタにおいて、上記角速度センサにより検出した角速度から絶対方位角速度を推定し、当該絶対方位角速度を積分して移動体の絶対方位を推定し、磁気方位センサの検出値、GPS受信値、および、アンテナ駆動手段から入力された方位角および仰角のいずれかから絶対方位参照値を算出し、推定した移動体の絶対方位と当該絶対方位参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した方位角速度を補正する帰還系を構成する衛星追尾用アンテナ制御装置であるので、移動体の機敏な運動にも対処でき、また衛星見通し時である限り、角速度センサのドリフト誤差や加速度センサのバイアス誤差による衛星相対方向算出手段における衛星相対方向推定誤差の発生を補償することができ、長時間に渡り高精度にアンテナを制御して衛星を追尾することができる。また、姿勢方位推定手段における姿勢推定フィルタにおいて、上記角速度センサにより検出した角速度から絶対姿勢角速度を推定し、当該絶対姿勢角速度を積分して移動体の絶対姿勢を推定し、上記加速度センサにより検出した加速度から絶対姿勢参照値を算出し、推定した移動体の絶対姿勢と当該絶対姿勢参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した姿勢角速度を補正する帰還系を構成したので、角速度センサのドリフト誤差による姿勢推定フィルタの発散を防ぐことができるとともに、絶対姿勢推定精度を高めることができる。また方位推定フィルタにおいて、上記角速度センサにより検出した角速度から絶対方位角速度を推定し、当該絶対方位角速度を積分して移動体の絶対方位を推定し、磁気方位センサの検出値、GPS受信値、および、アンテナ駆動手段から入力された方位角および仰角のいずれかから絶対方位参照値を算出し、推定した移動体の絶対方位と当該絶対方位参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した方位角速度を補正する帰還系を構成したので、角速度センサのドリフト誤差による姿勢推定フィルタの発散を防ぐことができるとともに、周囲環境の磁気的外乱や移動速度の影響が少ない絶対方位参照値を得ることができるので、絶対方位推定精度を高めることができる。また、これより衛星相対方向算出手段から得られる衛星相対方向の推定精度を高めることができる。
【0144】
また、姿勢方位推定手段において、姿勢推定フィルタおよび方位推定フィルタにおける帰還入力から姿勢、方位軸に関する上記角速度センサのドリフト誤差を推定するとともに、上記移動体の並進加速度推定値が大きい場合には、姿勢推定フィルタにおける帰還系を各姿勢軸に関して独立に切断するとともに、上記移動体の並進速度推定値が小さい場合、あるいは、GPS非受信時の場合において、衛星非見通し時の場合には、上記方位推定フィルタにおける帰還系を切断するとともに、切断時においてはこれまでの帰還入力から推定した角速度センサのドリフト誤差を入力として補償するので、移動体の並進運動加速度によって絶対姿勢参照値が高精度に得られない場合や、あるいは移動体静止時においてGPSから絶対方位参照値が高精度に得られない場合等において、帰還系による姿勢方位推定精度の低下を防ぐことができる。また切断時にこれまでの帰還入力から推定した角速度センサドリフト誤差を入力して補償することにより、その区間での姿勢推定フィルタの発散、あるいは方位推定フィルタの発散を防ぐことができるとともに、高精度な絶対姿勢推定精度および絶対方位推定精度を保持することができる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【0145】
また、姿勢方位推定手段において、帰還入力から推定した角速度センサのドリフト誤差に対して、各姿勢方位軸に備えた角速度センサのドリフト特性に応じた低域通過フィルタを適用するので、帰還入力から推定した角速度センサドリフト誤差に含まれる移動体の機敏な運動が要因の高域成分を除去することができ、角速度センサが持つドリフト誤差をより高精度に推定することができる。またそれを用いて姿勢方位推定フィルタにおける補償入力を算出することにより、帰還入力切断時においても高精度な絶対姿勢推定精度および絶対方位推定精度を保持することができる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【0146】
また、衛星の方位角および仰角、姿勢方位推定手段によって推定された移動体の絶対姿勢、衛星見通し時においてアンテナ駆動手段あるいは衛星相対方向探索手段から入力された方位角および仰角を用いて、移動体の絶対姿勢および絶対方位を逐次的に更新して推定し、得られた絶対方位推定値を絶対方位参照値とするので、周囲環境の磁気的外乱の影響を受けやすい磁気方位センサ、移動体の進行方向方位(速度ベクトル方位)を出力するGPS受信装置に比べて、より高精度の絶対方位推定値を得ることができ、それを絶対方位参照値とすることにより姿勢方位推定フィルタの絶対方位推定精度を高めることができる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【0147】
また、衛星の方位角および仰角、姿勢方位推定手段によって推定された移動体の絶対姿勢、衛星見通し時においてアンテナ駆動手段あるいは衛星相対方向探索手段から入力された方位角および仰角を用いて、先ず最小二乗近似の意味で移動体の絶対姿勢を推定し、次にその推定値を用いて絶対方位参照値を推定するので、周囲環境の磁気的外乱の影響を受けやすい磁気方位センサ、移動体の進行方向方位(速度ベクトル方位)を出力するGPS受信装置に比べて、より高精度の絶対方位推定値を得ることができ、それを絶対方位参照値の候補とすることにより姿勢方位推定フィルタの絶対方位推定精度を高めることができる。また絶対方位参照値を得るための計算負荷も小さくなる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【0148】
また、逐次的に更新して推定した上記移動体の絶対姿勢、あるいは、最小二乗近似の意味で推定した上記移動体の絶対姿勢を参照して姿勢推定フィルタにおける帰還系を各姿勢軸に関して独立に切断するとともに、切断時においてはこれまでの帰還入力から推定した上記角速度センサのドリフト誤差を入力として補償するので、加速度センサを用いても移動体の並進運動加速度によって絶対姿勢参照値が高精度に得られない場合において、帰還系による姿勢方位推定精度の低下を防ぐことができる。またその場合にこれまでの帰還入力から推定した角速度センサドリフト誤差を入力して補償することにより、その区間での姿勢推定フィルタの発散を防ぐことができるとともに、高精度な絶対姿勢推定精度を保持することができる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【0149】
また、初期衛星捕捉時、あるいは、衛星非見通し時から見通し時への復帰時において、姿勢方位推定手段における方位推定フィルタを、アンテナ駆動手段あるいは衛星相対方向探索手段より得られたアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角を用いて推定した絶対方位推定値で初期化するので、方位推定フィルタにおける絶対方位推定誤差を迅速に零に収束させることができ、以後の絶対方位推定精度を高めることができる。またそれを用いて衛星相対方向算出手段において高精度に衛星相対方向を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1による衛星追尾用アンテナ制御装置の構成を示したブロック図である。
【図2】 本発明の実施の形態1による衛星追尾用アンテナ制御装置に設けられた姿勢方位推定手段の姿勢方位推定フィルタにおける信号処理の概略を示したブロック図である。
【図3】 本発明の実施の形態1による衛星追尾用アンテナ制御装置に設けられた姿勢方位推定手段の姿勢方位推定フィルタにおける最も信頼性の高い方位推定値の選択方法を示した流れ図である。
【図4】 本発明の実施の形態1による衛星追尾用アンテナ制御装置に設けられた姿勢方位推定手段の姿勢方位推定フィルタにおける最も信頼性の高い方位推定値の選択方法の一例を示した流れ図である。
【図5】 本発明の実施の形態1による衛星追尾用アンテナ制御装置に設けられた姿勢方位推定手段の位置速度推定フィルタにおける信号処理の概略を示したブロック図である。
【図6】 本発明の実施の形態2による衛星追尾用アンテナ制御装置の構成を示したブロック図である。
【図7】 本発明の実施の形態5による衛星追尾用アンテナ制御装置に設けられた姿勢方位推定手段の姿勢方位推定フィルタにおける信号処理の概略を示したブロック図である。
【図8】 本発明の実施の形態5による衛星追尾用アンテナ制御装置に設けられた姿勢方位推定手段の姿勢方位推定フィルタにおけるドリフト誤差の補償方法を示したブロック図である。
【図9】 本発明の実施の形態5による衛星追尾用アンテナ制御装置に設けられた姿勢方位推定手段の位置速度推定フィルタにおける信号処理の概略を示したブロック図である。
【図10】 本発明の実施の形態5による衛星追尾用アンテナ制御装置に設けられた姿勢方位推定手段の位置速度推定フィルタにおけるバイアス誤差の補償方法を示したブロック図である。
【図11】 本発明の実施の形態6による衛星追尾用アンテナ制御装置に設けられた姿勢方位推定手段の姿勢方位推定フィルタにおける信号処理の概略を示したブロック図である。
【図12】 本発明の実施の形態6による衛星追尾用アンテナ制御装置に設けられた姿勢方位推定手段の位置速度推定フィルタにおける信号処理の概略を示したブロック図である。
【図13】 本発明の実施の形態8による衛星追尾用アンテナ制御装置において、鉛直下方向単位ベクトルeaと衛星指向軸方向単位ベクトルeβとの関係を示した説明図である。
【図14】 本発明の実施の形態9による衛星追尾用アンテナ制御装置に設けられた姿勢方位推定手段の姿勢方位推定フィルタにおける信号処理の概略を示したブロック図である。
【図15】 本発明の実施の形態10による衛星追尾用アンテナ制御装置に設けられた姿勢方位推定手段の姿勢方位推定フィルタにおける信号処理の概略を示したブロック図である。
【図16】 従来の衛星追尾装置の構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
1 姿勢方位推定手段、2 衛星絶対方向算出手段、3 衛星相対方向算出手段、4 アンテナ駆動装置、5,32 衛星相対方向探索手段、6 衛星追尾用アンテナ、7 移動体のアンテナ取り付け面、8 衛星、9 3軸ジャイロ、10 角速度算出部、11 姿勢方位角速度推定部、12 積分演算部、13 回転系帰還入力算出部、14 3軸加速度計、15 座標変換部、16 絶対姿勢参照値算出部、17 絶対方位参照値算出部、18 磁気コンパス、19 GPS受信機、20 座標変換部、21 並進加速度推定部、22 積分演算部、23 測地座標速度推定部、24 積分演算部、25 絶対位置参照値算出部、26 絶対速度参照値算出部、27 並進系帰還入力算出部、28 ドリフト誤差推定部、29 バイアス誤差推定部、30,31 低域通過フィルタ。
Claims (8)
- アンテナあるいはアンテナビームの方位角及び仰角に基づいて移動体の絶対姿勢および絶対方位を推定する姿勢方位推定手段と、
上記移動体の絶対位置と追尾対象の衛星の絶対位置とから上記衛星の方位角および仰角を算出する衛星絶対方向算出手段と、
上記姿勢方位推定手段により推定された上記絶対姿勢および上記絶対方位、および、上記衛星絶対方向算出手段により算出された上記方位角および上記仰角から、上記移動体に対する上記衛星の方位角および仰角を算出する衛星相対方向算出手段と、
算出された上記方位角および上記仰角の方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動するアンテナ駆動手段と、
上記衛星から送信される信号の受信レベルを用いて衛星相対方向を探索する衛星相対方向探索手段とを備えた衛星追尾用アンテナ制御装置であって、
上記姿勢方位推定手段は、
上記移動体の3軸まわりの回転角速度を検出する角速度センサと、
上記移動体の3軸方向の並進加速度を検出する加速度センサと、
上記移動体の絶対方位を検出する磁気方位センサと、
上記移動体の絶対位置を検出するGPS受信機と、
上記移動体の絶対姿勢を推定する姿勢推定フィルタと、
上記移動体の絶対方位を推定する方位推定フィルタとを備え、
上記アンテナ駆動手段は、
上記衛星相対方向算出手段から得られた衛星相対方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動するとともに、当該衛星相対方向に上記衛星相対方向探索手段から得られた衛星相対方向を重畳した方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動して衛星を指向し、その際の移動体に対するアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角を前記姿勢方位推定手段へ入力し、
上記姿勢方位推定手段は、
上記姿勢推定フィルタにおいて、
上記角速度センサにより検出した角速度から絶対姿勢角速度を推定し、当該絶対姿勢角速度を積分して移動体の絶対姿勢を推定し、
上記加速度センサにより検出した加速度から絶対姿勢参照値を算出し、
推定した移動体の絶対姿勢と当該絶対姿勢参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した姿勢角速度を補正する帰還系を構成するとともに、
上記方位推定フィルタにおいて、
上記角速度センサにより検出した角速度から絶対方位角速度を推定し、当該絶対方位角速度を積分して移動体の絶対方位を推定し、
上記磁気方位センサの検出値、上記GPS受信機の受信値、および、上記アンテナ駆動手段から入力された方位角および仰角のいずれかから絶対方位参照値を算出し、
推定した移動体の絶対方位と当該絶対方位参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した方位角速度を補正する帰還系を構成する
ことを特徴とする衛星追尾用アンテナ制御装置。 - アンテナあるいはアンテナビームの方位角及び仰角に基づいて移動体の絶対姿勢および絶対方位を推定する姿勢方位推定手段と、
上記移動体の絶対位置と追尾対象の衛星の絶対位置とから上記衛星の方位角および仰角を算出する衛星絶対方向算出手段と、
上記姿勢方位推定手段により推定された上記絶対姿勢および上記絶対方位、および、上記衛星絶対方向算出手段により算出された上記方位角および上記仰角から、上記移動体に対する上記衛星の方位角および仰角を算出する衛星相対方向算出手段と、
算出された上記方位角および上記仰角の方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動するアンテナ駆動手段と、
上記衛星から送信される信号の受信レベルを用いて衛星相対方向を探索する衛星相対方向探索手段とを備えた衛星追尾用アンテナ制御装置であって、
上記姿勢方位推定手段は、
上記移動体の3軸まわりの回転角速度を検出する角速度センサと、
上記移動体の3軸方向の並進加速度を検出する加速度センサと、
上記移動体の絶対方位を検出する磁気方位センサと、
上記移動体の絶対位置を検出するGPS受信機と、
上記移動体の絶対姿勢を推定する姿勢推定フィルタと、
上記移動体の絶対方位を推定する方位推定フィルタとを備え、
上記アンテナ駆動手段は、
上記衛星相対方向算出手段から得られた衛星相対方向にアンテナあるいはアンテナビームを駆動し、
上記衛星相対方向探索手段は、上記衛星から送信される信号の受信レベルを用いて衛星相対方向を探索するとともに、その方向を上記衛星相対方向算出手段より得られた衛星相対方向に重畳して衛星相対方向を補正し、その補正した移動体に対するアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角を上記姿勢方位推定手段へ入力し、
上記姿勢方位推定手段は、
上記姿勢推定フィルタにおいて、
上記角速度センサにより検出した角速度から絶対姿勢角速度を推定し、当該絶対姿勢角速度を積分して移動体の絶対姿勢を推定し、
上記加速度センサにより検出した加速度から絶対姿勢参照値を算出し、
推定した移動体の絶対姿勢と当該絶対姿勢参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した姿勢角速度を補正する帰還系を構成するとともに、
上記方位推定フィルタにおいて、
上記角速度センサにより検出した角速度から絶対方位角速度を推定し、当該絶対方位角速度を積分して移動体の絶対方位を推定し、
上記磁気方位センサの検出値、上記GPS受信機の受信値、および、上記アンテナ駆動手段から入力された方位角および仰角のいずれかから絶対方位参照値を算出し、
推定した移動体の絶対方位と当該絶対方位参照値の偏差を求め、当該偏差から帰還入力を算出し、当該帰還入力を用いて上記角速度センサにより検出した角速度から推定した方位角速度を補正する帰還系を構成する
ことを特徴とする衛星追尾用アンテナ制御装置。 - 上記姿勢方位推定手段において、
上記姿勢推定フィルタおよび上記方位推定フィルタにおける帰還入力から姿勢、方位軸に関する上記角速度センサのドリフト誤差を推定するとともに、
上記移動体の並進加速度推定値が大きい場合には、上記姿勢推定フィルタにおける帰還系を各姿勢軸に関して独立に切断するとともに、
上記移動体の並進速度推定値が小さい場合、あるいは、GPS非受信時の場合において、衛星非見通し時の場合には、上記方位推定フィルタにおける帰還系を切断するとともに、
切断時においてはこれまでの帰還入力から推定した上記角速度センサのドリフト誤差を入力として補償することを特徴とする
請求項1または2に記載の衛星追尾用アンテナ制御装置。 - 上記姿勢方位推定手段において、帰還入力から推定した上記角速度センサのドリフト誤差に対して、各姿勢方位軸に備えた角速度センサのドリフト特性に応じた低域通過フィルタを適用することを特徴とする請求項3に記載の衛星追尾用アンテナ制御装置。
- 上記衛星の方位角および仰角、上記姿勢方位推定手段によって推定された上記移動体の絶対姿勢、上記衛星見通し時において上記アンテナ駆動手段あるいは上記衛星相対方向探索手段から入力された方位角および仰角を用いて、上記移動体の絶対姿勢および絶対方位を逐次的に更新して推定し、得られた絶対方位推定値を絶対方位参照値とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の衛星追尾用アンテナ制御装置。
- 上記衛星の方位角および仰角、上記姿勢方位推定手段によって推定された上記移動体の絶対姿勢、上記衛星見通し時において上記アンテナ駆動手段あるいは上記衛星相対方向探索手段から入力された方位角および仰角を用いて、先ず最小二乗近似の意味で移動体の絶対姿勢を推定し、次にその推定値を用いて絶対方位参照値を推定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の衛星追尾用アンテナ制御装置。
- 逐次的に更新して推定した上記移動体の絶対姿勢、あるいは、最小二乗近似の意味で推定した上記移動体の絶対姿勢を参照して上記姿勢推定フィルタにおける帰還系を各姿勢軸に関して独立に切断するとともに、
切断時においてはこれまでの帰還入力から推定した上記角速度センサのドリフト誤差を入力として補償することを特徴とする
請求項5または6に記載の衛星追尾用アンテナ制御装置。 - 初期衛星捕捉時、あるいは、衛星非見通し時から見通し時への復帰時において、上記姿勢方位推定手段における上記方位推定フィルタを、上記アンテナ駆動手段あるいは上記衛星相対方向探索手段より得られたアンテナあるいはアンテナビームの方位角および仰角を用いて推定した絶対方位推定値で初期化することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の衛星追尾用アンテナ制御装置。
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