JP3766609B2 - ズームレンズ鏡筒の構造 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の技術分野】
本発明は、いわゆるコンパクトカメラのズームレンズ鏡筒の構造に関する。
【０００２】
【従来技術およびその問題点】
第１レンズ群と最終レンズ群の間隔を一定に保ち、これらに間のレンズ群を移動させることでズーミングするいわゆるインナーズーミング方式の撮影光学系において、電源オフ時には第１レンズ群と最終レンズ群の間隔を縮めるレンズ鏡筒が知られている。このような従来のレンズ鏡筒において、最終レンズ群を保持するレンズ保持環は、基本形状が円筒状であり、部分的に切り欠き形状などを設けて、レンズ枠環自体または内部のレンズ群の移動案内などを可能にしていた。
【０００３】
しかしながら、このような従来のレンズ保持環では、撮影光学系のさらなる小型軽量化を図ることが困難であった。
【０００４】
【発明の目的】
本発明は、ズームコンパクトカメラの小型化と撮影光学系の組み立て作業性の向上を図ることができるズームレンズ鏡筒の構造を提供することを目的とする。
【０００５】
【発明の概要】
この目的を達成する本発明は、ズーミング領域においては第１レンズ群と最終レンズ群の間隔を一定に保ち、該第１、最終レンズ群の間に位置する内部のレンズ群を移動させてズーミングするインナーズーミング方式の撮影光学系を備え、収納時には前記第１レンズ群と最終レンズ群の間隔を縮めるズームレンズ鏡筒であって、前記第１レンズ群を保持する第１レンズ保持環と、該第１レンズ保持環内に配置された、光軸方向に移動自在な直進案内環と、前記最終レンズ群を保持して光軸方向に移動し、前記第１レンズ群との間隔を変える最終レンズ保持枠環とを備え、前記最終レンズ保持枠環は、光軸方向に延びる脚状片を備え、前記直進案内環は、その後端部から光軸方向に前方に延びて前端部が開放された、前記脚状片の両側縁部を光軸方向移動自在に支持する直進案内長穴を備え、前記最終レンズ保持枠環の前記脚状片から光軸までの間隔と、前記直進案内環の直進案内長穴周辺部から光軸までの間隔とが略同一に形成され、前記直進案内長穴の前端部近傍の一部を内方から前記脚状片と摺接可能に塞ぐブリッジ部が形成されていること、に特徴を有する。
本発明の実施形態では、最終レンズ保持枠環の脚状片は、前記ズーミング領域において前記第１レンズ保持環と係合して光軸方向に一緒に移動し、前記第１レンズ群と最終レンズ群の間隔を一定に保持する係合部を備える。そして前記直進案内環の直進案内長穴を有する部分は前記第１レンズ保持環内に位置し、前記最終レンズ枠環の脚状片は、前記直進案内長穴に光軸方向摺動自在に係合して前記最終レンズ群を前記直進案内環に対して相対回転しないで光軸方向に相対移動自在に案内する。
前記直進案内環の直進案内長穴の一部に、最終レンズ保持枠環の脚状片が相対移動する範囲内では常に前記脚状片の全幅を内径側から受けて脱落防止する受け部を備えることが望ましい。前記直進案内環の直進案内長穴の両側縁部および前記最終レンズ保持枠環の脚状片の両側縁部には、該脚状片が該直進案内長穴から内径方向に脱落しないように保持する受け部を形成することが望ましい。
また、本発明は、レンズ鏡筒において光軸方向に相対移動する少なくとも二つの環状部材であって、前記二つの環状部材の一方の環状部材は、本体枠部と、該本体枠部から光軸方向に延びる一または複数の脚状片を備え、他方の環状部材は、円筒部と、該円筒部に形成された、前記脚状片が光軸方向移動自在に嵌る光軸方向に延びて前端部が開放された直進案内長穴を備え、前記直進案内長穴に嵌った脚状片の外周面および内周面の一方または双方が、前記円筒部の外周面および内周面の延長面の一方または双方と略一致すること、前記直進案内長穴の前端部近傍の一部を内方から前記脚状片と摺接可能に塞ぐブリッジ部を備えたことに特徴を有する。
【０００６】
【発明の実施の形態】
以下図面に基づいて本発明を説明する。図１は、本発明を適用した、４群ズームレンズ用の４段繰出し式ズームレンズ鏡筒の実施形態の、中央縦断面図である。この実施形態の撮影光学系は、被写体側から順に、第１レンズ群Ｌ１、第２レンズ群Ｌ２、第３レンズ群Ｌ３および最終レンズ群（第４レンズ群）Ｌ４を備えている。そしてこの撮影光学系は、ズーム領域では第１レンズ群Ｌ１および最終レンズ群Ｌ４が一定の間隔を保って光軸方向に移動し、中間の第２、第３レンズ群Ｌ２、Ｌ３が第１レンズ群Ｌ１および最終レンズ群Ｌ４に対する間隔を替えてズーミングするインナーズーミングレンズである。
【０００７】
ズームレンズ鏡筒は、内周側から順に、第１レンズ群保持環１１、カム環２１、第３レンズ鏡筒３１、第４レンズ鏡筒４１および固定鏡筒５１を備えている。第１レンズ群保持環１１はカム環２１に対して相対回転しないで相対的に光軸方向に移動し、カム環２１、第３レンズ鏡筒３１、および第４レンズ鏡筒４１はそれぞれ、一緒に回転しながら相対的に光軸方向に移動する。第１レンズ群保持環１１の先端部には第１レンズ群Ｌ１が保持され、カム環２１に対して第２、第３レンズ群Ｌ２、Ｌ３、および最終レンズ群Ｌ４が保持されている。なお、これら第１レンズ群保持環１１、カム環２１、第３レンズ鏡筒３１、第４レンズ鏡筒４１および固定鏡筒５１は、通常、合成樹脂の射出成形によって形成される。
【０００８】
固定鏡筒５１は、カメラボディに固定されまたはカメラボディのフレームと一体に形成されていて、その内周面に雌ヘリコイド５１ａが形成されている。
第１レンズ群保持環１１、カム環２１、第３レンズ鏡筒３１および第４レンズ鏡筒４１は、この固定鏡筒５１に対して支持され、第１レンズ群保持環１１は回転しないで光軸方向に相対移動し、その他は一緒に回転しながら光軸方向に相対移動する。次に、各第４レンズ鏡筒４１、第３レンズ鏡筒３１、カム環２１および第１レンズ群保持環１１の構成について説明する。
【０００９】
『第４レンズ鏡筒４１の構成』
第４レンズ鏡筒４１の後端部には、この第４レンズ鏡筒４１と一体に回転および光軸方向移動するように雄ヘリコイド環４２が係合固定されている。この雄ヘリコイド環４２の外周面に形成された雄ヘリコイド４２ａが、固定鏡筒５１の雌ヘリコイド５１ａに螺合している。そして第４レンズ鏡筒４１および雄ヘリコイド環４２の内周には第３直進案内環４３が、相対回動自在にかつ光軸方向には一緒に移動するように嵌合されている。この第３直進案内環４３の後端面にはレンズ規制板４４が固定されている。なお、第３直進案内環４３は、詳細は図示しないが、例えば、外方に突出した直進案内突起が固定鏡筒５１の内周面に光軸方向形成された直進ガイド溝に光軸方向移動自在に嵌り、回転しないで光軸方向に直進移動するように規制されている。
【００１０】
第４レンズ鏡筒４１には、詳細は図示しないが、ズーミング、レンズ収納用の回転が伝達される。例えば、雄ヘリコイド環４２の外周面には、光軸を軸心とするセクタギヤが、雄ヘリコイド４２ａ間に雄ヘリコイド４２ａに沿って形成されている。このセクタギヤには光軸方向に延びるピニオンが螺合している。このピニオンは、減速歯車列を介してズームモータの回転が伝達される。つまりズームモータが正／逆に回転すると、ピニオンを介して雄ヘリコイド環４２が回転し、そのリードに従って第４レンズ鏡筒４１が回転しながら前進または後退する。
【００１１】
『第３レンズ鏡筒３１の構成』
第３レンズ鏡筒３１には、その後端部に、この第３レンズ鏡筒３１と一体に回転および光軸方向移動する雄ヘリコイド環３２が固定されている。この雄ヘリコイド環３２の外周面の雄ヘリコイド３２ａが、第３直進案内環４３の内周面に形成された雌ヘリコイド４３ａに螺合している。
【００１２】
第３レンズ鏡筒３１および雄ヘリコイド環３２の内周には、第３レンズ鏡筒３１および雄ヘリコイド環３２と相対回転自在にかつ光軸方向には一緒に移動するように雄ヘリコイド環３２に係合された第２直進案内環３３が装着されている。第２直進案内環３３は、詳細は図示しないが、その外周面に突設された直進ガイドコマが、第３直進案内環４３の内周面に光軸方向に形成された直進ガイド溝に摺動自在に嵌合していて、この直進ガイドコマおよび溝により、第３直進案内環４３に対して相対回転しないで光軸方向に相対移動するように規制されている。
【００１３】
また、詳細は図示しないが、雄ヘリコイド環３２の外周面には直進ガイドコマが突設され、この直進ガイドコマが、第３直進案内環４３に形成された雌ヘリコイド４３ａに沿うガイドコマ逃げ溝を貫通して第４レンズ鏡筒４１の内周面に光軸方向に形成された直進ガイド溝に嵌合している。したがって、雄ヘリコイド環３２は、第４レンズ鏡筒４１が回転すると一緒に回転し、雄ヘリコイド３２ａ、雌ヘリコイド４３ａのリードに拘束されて回転しながら光軸方向に移動する。つまり、第３レンズ鏡筒３１は、第４レンズ鏡筒４１が回転しながら光軸方向に移動すると、雄ヘリコイド３２ａおよび雌ヘリコイド４３ａのリードに従って第４レンズ鏡筒４１と一緒に回転しながら相対的に光軸方向に移動する。
【００１４】
『カム環２１の構成』
カム環２１には、その外周面後端部近傍に雄ヘリコイド２１ａが形成され、この雄ヘリコイド２１ａが、第２直進案内環３３の内周面に形成された雌ヘリコイド３３ａに螺合している。
【００１５】
さらにカム環２１の外周面には直進ガイドコマ（図示せず）が突設されていて、この直進ガイドコマが、第２直進案内環３３のガイドコマ逃げ空間（または雌ヘリコイド３３ａに沿ったコマ逃げ溝）を通って第３レンズ鏡筒３１の内周面に光軸に対して平行に形成されたガイド溝に相対移動自在に嵌っている。
したがってカム環２１は、第３レンズ鏡筒３１が回転すると、直進ガイドコマによって第３レンズ鏡筒３１と一緒に回転するので、ヘリコイド２１ａ、３３ａのリードによって第３レンズ鏡筒３１に対して相対的に光軸方向に移動する。
【００１６】
カム環２１内には直進案内環として第１直進案内環２２が配置され、これらの環２１、２２は、それぞれの後端部において、相対回転自在にかつ光軸方向には一緒に移動可能に連結支持されている。この第１直進案内環２２は、後端部の外周面に突設された直進ガイド突起２２ｅ（図５）が、第２直進案内環３３の内周面に光軸方向に形成された直進ガイド溝（不図示）に摺動自在に嵌り、回転しないで光軸方向移動自在に案内されている。したがって第１直進案内環２２は、カム環２１の相対回転を許容しつつ、カム環２１と一緒に光軸方向に移動する。
【００１７】
『第１レンズ群保持環１１の構成』
第１レンズ群保持環１１は、カム環２１と第１直進案内環２２の間に位置している。そして第１レンズ群保持環１１の後端部近傍の外周面には、カムフォロワ１１ａが突設されている。このカムフォロワ１１ａが、カム環２１の内周面に形成されたカム溝２１ｂに嵌合している。
【００１８】
この第１レンズ群保持環１１の内周面には直進ガイドコマ（不図示）が突設されていて、第１直進案内環２２の外周面に形成された直進ガイド溝２２ｄに摺動自在に嵌り、第１直進案内環２２に対して回転不能に、かつ光軸方向に相対移動可能に規制されている。
したがって第１レンズ群保持環１１は、カム環２１が回転すると、カム溝２１ｂに沿ってカム環２１に対して相対回転しないで光軸方向に相対的移動する。
【００１９】
なお、第１レンズ群保持環１１の先端部には、レンズ開口を開閉するレンズバリヤ１２が装着されていて、このレンズバリヤ１２は、第１レンズ群保持環１１がワイド端位置と収納位置との間を移動する運動により開閉される。
【００２０】
第１レンズ群保持環１１には、レンズバリヤ１２の後方に、第１レンズ群Ｌ１が保持されている。第１レンズ群Ｌ１の後方には、シャッタブロック１００に保持された中間レンズ群として第２レンズ群Ｌ２および第３レンズ群Ｌ３が配置されている。シャッタブロック１００は、第１直進案内環２２の内周に、相対回転しないようにかつ光軸方向には相対移動自在に支持されている。
【００２１】
第３レンズ群Ｌ３の後方には、最終レンズ群Ｌ４が配置されている。最終レンズ群Ｌ４は、最終レンズ群保持環６１の後端部に最終レンズ保持枠６６を介して装着されている。
最終レンズ群保持環６１は、詳細は後述するが、第１直進案内環２２に対して相対回転不能にかつ光軸方向には相対移動自在に支持されている。そしてシャッタブロック１００と最終レンズ群保持環６１との間には、第３レンズ群Ｌ３と最終レンズ群Ｌ４を離反させる方向に常時付勢する圧縮コイルばね６７が嵌装されている。
【００２２】
以上は、このズームレンズ鏡筒の基本構成である。次に、本発明の実施形態の特徴である最終レンズ群保持環６１および第１直進案内環２２のより詳細な構成について説明する。最終レンズ群保持環６１の外観斜視図を図４に、第１直進案内環２２の外観斜視図を図５に示した。
【００２３】
最終レンズ群保持環６１は、円形枠状の本体枠部６２と、この本体枠部６２の外周面から、光軸と平行に前方に延びる可撓性を有し、方持ち梁状に支持された脚状片６３を備えている。この脚状片６３は、本体枠部６２の外周に沿って３枚設けられている。
各脚状片６３の先端部（自由端部）には、先端部側から本体枠部６２方向に延びて脚状片６３の外周面よりもさらに径方向外方に突出した可撓性の爪６３ａが形成されている。さらに各脚状片６３の長手方向両縁の受け部６３ｂは、横断面形状において径方向外方側が突出した相欠き継ぎ形状に形成されている。また、各脚状片６３の後端面６３ｃは、カメラの電源オフ時（収納時）にレンズ規制板４４に当接するストッパとして機能する。
【００２４】
さらに本体枠部６２の外周面には、少なくとも１個の直進ガイドコマ６４が突設されている。この直進ガイドコマ６４は、本体枠部６２の可動範囲において、第１直進案内環２２の内周面に形成された光軸方向に延びる直進ガイド溝に嵌合され、直進ガイドとして機能する。
【００２５】
この最終レンズ群保持環６１を光軸方向移動自在に支持する第１直進案内環２２の形状は、次の通りである。第１直進案内環２２は全体として略円筒形状を呈し、その後端部には環状枠部２３を備えている。この環状枠部２３には、カム環２１の後端部に形成された係合部と相対回動自在にかつ光軸方向に一緒に移動するように係合する係合溝２３ａを備えている。
【００２６】
この第１直進案内環２２には、最終レンズ群保持環６１の各脚状片６３が光軸方向に摺動自在に嵌る、光軸と平行に延びる３本の直進案内長穴２２ａと、各直進案内長穴２２ａの一部分を内方から塞いで脚状片６３の全幅と接触し、摺接して光軸方向移動可能に支持するとともに脚状片６３が内方に落ち込むのを、また脚状片６３の自由端部が内方に潜り込むのを防止するブリッジ部２２ｂを備えている。さらに各直進案内長穴２２ａの両側縁には、脚状片６３の受け部６３ｂが摺動自在に嵌合する受け部２２ｃが形成されている。受け部２２ｃは、横断面形状において内径側が周方向に突出した相欠き継ぎ形状を呈しているので、脚状片６３の受け部６３ｂと相俟つて脚状片６３が内方に落ち込むのを効果的に防止している。直進案内長穴２２ａは、図５に示したように前端部が開放されていて、脚状片６３が直進案内長穴２２ａの前端部から突出するのを許容している。
【００２７】
図６には、第１直進案内環２２と最終レンズ群保持環６１を嵌合させた組み立て状態を示している。組み立の際、最終レンズ群保持環６１を脚状片６３の自由端部（前端部）の方から第１直進案内環２２に挿入する。挿入の際、先ず、最終レンズ群保持環６１の脚状片６３を第１直進案内環２２内に挿入し、脚状片６３が直進案内長穴２２ａに進入するように光軸周りの相対角度決めする。そして受け部６３ｂと受け部２２ｃが係合し摺接する状態でさらに挿入すると、図６に示した組み立て完了状態になる。
【００２８】
脚状片６３の外周面の径と直進案内長穴２２ａ周辺の第１直進案内環２２の外周面の径は、略同一に設定してある。つまり、脚状片６３が直進案内長穴２２ａに嵌った状態では、脚状片６３の外周面は直進案内長穴２２ａを囲む第１直進案内環２２の外周面と一体化して、一つの円筒を形成する。したがって、ほぼ脚状片６３の厚み内に第１直進案内環２２が収まる。言い換えると、脚状片６３の外形と直進案内環２２の外形とは略同一である。
【００２９】
第１直進案内環２２と最終レンズ群保持環６１を組み付けた後、または組み付ける前に、最終レンズ群保持環６１の後方（フィルム側）から最終レンズ群保持環６１内に、最終レンズ群Ｌ４を保持した最終レンズ保持枠６６を挿入し、最終レンズ保持枠６６を本体枠部６２の内周面に突設した位置決め突起６５に当接させて固定する。
【００３０】
第１直進案内環２２にシャッタブロックを後から挿入し、間に圧縮コイルばね６７を挟むようにして、最終レンズ群Ｌ４を備えた最終レンズ群保持環６１を後から挿入する。ブリッジ部２２ｂは、シャッタブロック１００の外周面に光軸方向に形成された逃げ溝１００ａ内に光軸方向移動自在に位置し、シャッタブロック１００は、その外周面に突設された突起（不図示）が第１直進案内環２２に光軸方向に形成された直進ガイド溝２２ｆに嵌められ第１直進案内環２２に対して相対回転不能にかつ光軸方向に相対移動自在に支持される。
【００３１】
レンズ保持枠６６（位置決め突起６５）とシャッタブロック１００との間には、これらを離反する方向に付勢する圧縮コイルばね６７が嵌装されている。したがって、最終レンズ群保持枠６１は、シャッタブロック１００（直進案内環２２）に対して相対的に後方に移動する方向に付勢されている。つまり、最終レンズ群Ｌ４は、常に、第３レンズ群Ｌ３から離反する方向に付勢されている。
【００３２】
図７には、図１の切断線VII−VII位置における最終レンズ群保持環６１、第１直進案内環２２、シャッタブロック１００の断面の概要を示し、図８には、図１の切断線VIII−VIII位置における最終レンズ群保持環６１、第１直進案内環２２、ブリッジ部２２ｂ、シャッタブロック１００の断面の概要を示してある。
【００３３】
シャッタブロック１００は、外周面に光軸方向に形成された脚状突起（図示せず）が溝２２ｆに摺動自在に嵌り、第１直進案内環２２に対して回転しないで相対的に直進移動するようにガイドされている。さらにシャッタブロック１００の脚状突起には、詳細は図示しないが、カムフォロワピンが突設されていて、このカムフォロワピンの先端部は、カム環に形成されたカム溝に嵌入している。したがって、カム環２１が光軸方向に回転しながら進退動すると、シャッタブロック１００は、カム環２１のカム溝に規制されて、第１直進案内環２２に対して相対回転しないで光軸方向に相対移動する。
【００３４】
なお、このズームレンズは、ワイドズーム領域とテレズーム領域とで第２レンズ群Ｌ２と第３レンズ群Ｌ３との間隔が切り替わる構成である。つまり、ワイドズーム領域では離反し、テレズーム領域では接近する。
【００３５】
次に、このズームレンズ鏡筒のズーミング動作について説明する。図１は、カメラの電源がオフされた収納状態であり、ズームレンズ鏡筒の全長が最短になった最短縮状態である。この状態は、固定鏡筒５１に対して第４レンズ鏡筒４１が、第４レンズ鏡筒４１に対して第３レンズ鏡筒３１が、第３レンズ鏡筒３１に対してカム環２１が、およびカム環２１に対して第１レンズ群保持環１１がそれぞれ最も引き込まれた状態である。そしてこの最短縮状態では、圧縮コイルばね６７の付勢力によって最終レンズ群保持環６１が後方に付勢され、その後端面６３ｃがレンズ規制板４４に当接してそれ以上後退できない状態にあり、その結果、最終レンズ群保持環６１が第１レンズ群保持環１１に対して最も突出した状態、すなわち、最終レンズ群Ｌ４が第３レンズ群Ｌ３に対して最も接近した状態にある。
【００３６】
この最短縮状態において、第１レンズ群Ｌ１の光軸Ｏ上の被写体側面と最終レンズ群Ｌ４の光軸Ｏ上のフィルム側面との間隔をｄとする。
【００３７】
ここで電源がオンされ、レンズモータがレンズ繰出し方向に回転すると、第４レンズ鏡筒４１が固定鏡筒５１に対して回転しながら突出移動し、第３レンズ鏡筒３１が第４レンズ鏡筒４１に対して回転しながら突出移動し、カム環２１が第３レンズ鏡筒３１に対して回転しながら突出移動し、第１レンズ群保持環１１がカム環２１に対して回転しないで突出移動して、ワイド端に至る。
【００３８】
この移動の過程で、最終レンズ群保持環６１は、第４レンズ鏡筒４１に対して光軸方向に相対的に突出移動するので、後端面６３ｃがレンズ規制板４４から離反し、本体枠部６２とシャッタブロック１００との間に嵌装された圧縮コイルばね６７の付勢力によってシャッタブロック１００に対して離反する方向に移動する。つまり、第３レンズ群Ｌ３が最終レンズ群Ｌ４に対して離反する。
そして、ワイド端では、脚状片６３の爪６３ａが第１レンズ群保持環１１の後端部内周面に突設された突起１１ｂに当接して、それ以上の離反方向移動が阻止される。このとき、第１レンズ群Ｌ１の光軸Ｏ上の被写体側面と最終レンズ群Ｌ４の光軸Ｏ上のフィルム側面との間隔は、ｄよりも広いＤとなる。以後、このズームレンズのズーミング領域、つまり図２のワイド端から図３のテレ端間において、この間隔Ｄが保たれる。
【００３９】
カメラの電源がオフされると、第４レンズ鏡筒４１、第３レンズ鏡筒３１、カム環２１はそれぞれ一緒に回転しながら、第１レンズ群保持環１１は回転しないでそれぞれ相対的に後退し、図２のワイド端位置を経て図１の収納位置（電源オフ位置）まで移動する。
【００４０】
図２のワイド端位置を越えた収納動作において、脚状片６３の後端面６３ｃがレンズ規制板４４に当接して移動規制され、第４レンズ鏡筒４１の相対移動が規制され、第４レンズ鏡筒４１と一緒に後退する。つまり第１直進案内環２２は、最終レンズ群保持環６１に対して、受け部２２ｃ、６３ｂが摺接しながら相対移動するので、第１レンズ群Ｌ１は最終レンズ群Ｌ４に対して接近する。そして、図１に示した収納状態に至る。
【００４１】
以上の通り本発明の実施形態は、最終レンズ群Ｌ４を支持する部材を鏡筒ではなく、脚状片６３を備えた最終レンズ群保持環６１によって構成し、この脚状片６３が直進案内環２２の直進案内長穴２２ａに嵌め、二つの部材を略同一径としたので、ズームレンズ鏡筒の径方向を小さくすることが可能になった。なお、この脚状片６３を備えた最終レンズ群保持環６１と直進案内長穴２２ａの構造は、このズームレンズ鏡筒に限定されない構造であって、他の鏡筒、他のレンズ構成のレンズ鏡筒にも適用できる。
【００４２】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな通り本発明は、最終レンズ群を保持する部材を、円筒ではなく、環状枠部から光軸方向に延びる脚状片によって構成したので、軽量化を図ることが可能になり、さらに、脚状片と略同一の径の筒状部に光軸方向に形成した長穴等に該脚状片を支持させるので、径方向のスペースが小さくてすみ、レンズ鏡筒の小径化を図ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明を適用した、３群ズームレンズ用の４段繰出し式のズームレンズ鏡筒の実施形態の最短縮状態における中央縦断面図である。
【図２】 同実施形態のワイド端状態における中央縦断面図である。
【図３】 同実施形態のテレ端状態における中央縦断面図である。
【図４】 同実施形態の最終レンズ群保持環の外観斜視図である。
【図５】 同実施形態の第１直進案内環の外観斜視図である。
【図６】 同実施形態の最終レンズ群保持環および第１直進案内環を組み付けた状態の外観斜視図である。
【図７】 図１の切断線VII−VII位置における最終レンズ群保持環、第１直進案内環、およびシャッタブロックの概要を示す断面図である。
【図８】 図１の切断線VIII−VIII位置における最終レンズ群保持環、第１直進案内環、およびＡＦ・シャッタブロックの概要を示す断面図である。
【符号の説明】
１１ 第１レンズ群保持環
１１ａ カムフォロワ
２１ カム環
２１ａ 雄ヘリコイド
２１ｂ カム溝
２２ 第１直進案内環
２２ａ 直進案内長穴
２２ｂ ブリッジ部
２２ｃ 受け部
２２ｄ 直進ガイド溝
２２ｅ 直進ガイド突起
３１ 第３レンズ鏡筒
３２ 雄ヘリコイド環
３２ａ 雄ヘリコイド
３３ 第２直進案内環
３３ａ 雌ヘリコイド
４１ 第４レンズ鏡筒
４２ 雄ヘリコイド環
４２ａ 雄ヘリコイド
４３ 第３直進案内環
４３ａ 雌ヘリコイド
４４ レンズ規制板
５１ 固定鏡筒
５１ａ 雌ヘリコイド
６１ 最終レンズ群保持環
６２ 本体枠部
６３ 脚状片
６３ａ 爪（係合部）
６３ｂ 受け部
６３ｃ 後端面
６４ 直進ガイドコマ
６５ 位置決め突起
６６ 最終レンズ保持枠
６７ 圧縮コイルばね

Claims (6)

1. ズーミング領域においては第１レンズ群と最終レンズ群の間隔を一定に保ち、該第１、最終レンズ群の間に位置する内部のレンズ群を移動させてズーミングするインナーズーミング方式の撮影光学系を備え、収納時には前記第１レンズ群と最終レンズ群の間隔を縮めるズームレンズ鏡筒であって、
   前記第１レンズ群を保持する第１レンズ保持環と、
   該第１レンズ保持環内に配置された、光軸方向に移動自在な直進案内環と、
   前記最終レンズ群を保持して光軸方向に移動し、前記第１レンズ群との間隔を変える最終レンズ保持枠環とを備え、
   前記最終レンズ保持枠環は、光軸方向に延びる脚状片を備え、
   前記直進案内環は、その後端部から光軸方向に前方に延びて前端部が開放された、前記脚状片の両側縁部を光軸方向移動自在に支持する直進案内長穴を備え、
   前記最終レンズ保持枠環の前記脚状片から光軸までの間隔と、前記直進案内環の直進案内長穴周辺部から光軸までの間隔とが略同一に形成され、
   前記直進案内長穴の前端部近傍の一部を内方から前記脚状片と摺接可能に塞ぐブリッジ部が形成されていることを特徴とするズームレンズ鏡筒の構造。
2. 前記最終レンズ保持枠環の脚状片は、前端部近傍において外方に突出し、前記ズーミング領域において前記第１レンズ保持環と係合し、前記第１レンズ群と最終レンズ群の光軸方向の相対間隔を一定に保持する係合部を備えた請求項１記載のズームレンズ鏡筒の構造。
3. 前記直進案内環の直進案内長穴を有する部分は前記第１レンズ保持環内に位置し、前記最終レンズ枠環の脚状片は、前記直進案内長穴に光軸方向摺動自在に係合して前記最終レンズ群を前記直進案内環に対して相対回転しないで光軸方向に相対移動自在に案内する請求項１または２記載のズームレンズ鏡筒の構造。
4. 前記直進案内環の直進案内長穴の一部に、最終レンズ保持枠環の脚状片が相対移動する範囲内では常に前記脚状片の全幅を内径側から受けて脱落防止する受け部を備えている請求項３記載のズームレンズ鏡筒の構造。
5. 前記直進案内環の直進案内長穴の両側縁部および前記最終レンズ保持枠環の脚状片の両側縁部には、該脚状片が該直進案内長穴から内径方向に脱落しないように保持する受け部が形成されている請求項３または４記載のズームレンズ鏡筒の構造。
6. レンズ鏡筒において光軸方向に相対移動する少なくとも二つの環状部材であって、
   前記二つの環状部材の一方の環状部材は、本体枠部と、該本体枠部から光軸方向に延びる一または複数の脚状片を備え、
   他方の環状部材は、円筒部と、該円筒部に形成された、前記脚状片が光軸方向移動自在に嵌る光軸方向に延びて前端部が開放された直進案内長穴を備え、
   前記直進案内長穴に嵌った脚状片の外周面および内周面の一方または双方が、前記円筒部の外周面および内周面の延長面の一方または双方と略一致すること、
   前記直進案内長穴の前端部近傍の一部を内方から前記脚状片と摺接可能に塞ぐブリッジ部を備えたことを特徴とするレンズ鏡筒の構造。

Images