JP3761134B2 - 油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体 - Google Patents

油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の駆動力配分に使用することのできる油圧式動力伝達継手に関し、とくに、油圧式動力伝達継手を構成するプランジャおよびカムリングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の油圧式動力伝達継手としては、例えば、トルク伝達装置に関する特開昭62−286838号公報,回転差感応型継手に関する特開昭63−101567号公報,油圧式動力伝達継手に関する特開平3−41230号公報に開示されているものがある。
【0003】
このうち、特開平3−41230号公報には、相対回転可能な入出力軸間に設けられ前記両軸の回転速度差に応じた量の流体を流動させる流量発生手段と、前記流体の流動抵抗を発生する流動抵抗発生手段を備え、前記流動抵抗により前記入出力軸間の伝達トルクが制御される動力伝達継手であって、前記入出力軸と一体となる一方の部材に軸方向に往復動する流量発生手段としての複数のプランジャ式ポンプを備えるととともに、他の部材の内側面に前記プランジャの往復運動を規制するカム面を形成し、前記プラジャ先端部と接触するカム面の形状を前記プランジャがカムリングの回転にともなって所定のストローク運動をした時にプランジャによって創成される形状とし、この場合に、プラジャ先端部の形状を、カム面との摺動方向に対しては円弧もしくは楕円形状とし、それと直交する方向に対しては直線形状とした油圧式動力伝達継手が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の油圧式動力伝達継手においては、プランジャとカムリングのそれぞれ摺動面での接触面圧が高いため、従来から使用されている共析浸炭材では常温での硬さあるいは摺動による発熱に伴う軟化抵抗が十分でないことから、母材が軟化することがあり、摩耗やピッチングなどの発生による耐久性や信頼性に問題があった。
【0005】
【発明の目的】
このような油圧式動力伝達継手におけるプランジャとカムリングのそれぞれ摺動面ではそれらの接触面圧が高いため、従来から使用されている共析浸炭材では常温での硬さあるいは摺動による発熱に伴う軟化抵抗が十分でなく、母材が軟化することがあり、摩耗やピッチングなどの発生による耐久性や信頼性に問題がある。そこで、本発明では、熱処理を通常の共析浸炭から高濃度浸炭とし、基材表面に微細な炭化物を形成するとともに、さらに高濃度浸炭後に微細粒によるショットピーニングを行うことにより、耐摩耗性・耐ピッチング性・耐焼き付き性に優れた油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体は、請求項1に記載しているように、一方の軸に連結されかつリング形状のカム面からなるカムリング側摺動面をそなえたカムリングと、他方の軸に連結されかつ複数のプランジャ室を軸方向に形成したロータの前記複数のプランジャ室内に往復移動自在に収納されて前記カムリング側摺動面にリターンスプングの押圧力で圧接するプランジャ側摺動面をそなえた複数のプランジャと、前記ロータに形成されかつ前記プランジャ室に通じる吐出孔と該吐出孔に連通する高圧室を有するとともに前記プランジャの往復移動による吐出油の流動により流動抵抗を発生する流動抵抗発生手段を有するバルブを備え、前記プランジャの頭部に吸入用のワンウエイバルブをまた前記吐出孔内に吐出用のワンウエイバルブをそれぞれ設けていて前記両軸の回転速度差に応じたトルクを伝達する油圧式動力伝達継手において、前記プランジャおよびカムリングのうちいずれか一方あるいは両方が少なくともクロムを含む機械構造用鋼からなり、表面炭素濃度が1.2〜3.0重量%、表面硬さがHv770以上で、摺動部に炭化物が析出している鋼表面に、平均粒径が10〜200μmでビッカース硬さが750Hv以上の微細粒を100m/s以上の速度で投射した摺動面を有するものとしたことを特徴としている。
【0007】
そして、本発明に係わる油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体においては、請求項2に記載しているように、プランジャおよびカムリングのうちいずれか一方あるいは両方の微細粒投射前の鋼表面において、炭化物の面積率が2〜40面積%、炭化物の平均径が3μm以下であるものとすることができる。
【0008】
同じく、本発明に係わる油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体においては、請求項3に記載しているように、プランジャおよびカムリングのうちいずれか一方あるいは両方の微細粒投射後の表面粗さをJIS B0601−199−1994で制定する中心線平均粗さRaで0.55μm以下および/またはJIS B0601−199−1994で制定する最大高さRyで3.5μm以下のものとすることができる。
【0009】
同じく、本発明に係わる油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体においては、請求項4に記載しているように、プランジャおよびカムリングのうちいずれか一方あるいは両方の摺動面の表面硬さ(表面から0.005mm位置の硬さ)がHv850以上および/または圧縮残留応力が1000MPa以上であるものとすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1ないし図3は、本発明による油圧式動力伝達継手およびその一部を構成するプランジャ・カムリング摺動体の一実施の形態を示すものであって、この油圧式動力伝達継手1は、一方の軸2に連結されかつリング形状のカム面からなるカムリング側摺動面3Sをそなえたカムリング3と、他方の軸4に連結されかつ複数のプランジャ室5を軸方向に形成したロータ6の前記複数のプランジャ室5内に往復移動自在に収納されて前記カムリング側摺動面3Sにリターンスプング7の押圧力で圧接するプランジャ側摺動面8Sをそなえた複数のプランジャ8と、前記ロータ6に形成されかつ前記プランジャ室5に通じる吐出孔9と該吐出孔9に連通する高圧室10を有するとともに前記プランジャ8の往復移動による吐出油の流動により流動抵抗を発生する流動抵抗発生手段を有するバルブ11,12を備え、前記プランジャ8の頭部に吸入用のワンウエイバルブ11をまた前記吐出孔9内に吐出用のワンウエイバルブ12をそれぞれ設けていて前記両軸2,4の回転速度差に応じたトルクを伝達する構造を有し、前記プランジャ8およびカムリング3のうちいずれか一方あるいは両方が少なくともクロムを含む機械構造用鋼からなり、表面炭素濃度が1.2〜3.0重量%、表面硬さがHv770以上で、摺動部に炭化物が析出している鋼表面に、平均粒径が10〜200μmでビッカース硬さが750Hv以上の微細粒を100m/s以上の速度で投射したプランジャ側摺動面8Sおよび/またはカムリング側摺動面3Sを有するものとしている。
【0011】
このように、本発明では、摺動部に炭化物が析出している鋼表面に、微細粒を高速で投射するショットピーニングが施されたものとすることにより、摺動特性に優れた摩耗量が少ないプランジャ側摺動面8Sおよび/またはカムリング側摺動面3Sが形成されたものとしているが、場合によってはこのようなショットピーニング無しであっても摺動面に炭化物が析出しているものとすることにより鋼表面の硬さが十分高いものとなり、それ自体でも比較的良好な摺動特性を示すものとなる。
【0012】
そして、上記したように、少なくとも摺動部表面に炭化物が析出していて、摺動部表面において、C量が1.2〜3.0重量%となっているものとする。
【0013】
すなわち、摺動部表面のC量が1.2重量%未満では炭化物量が不足し、Hv770以上の表面硬さを確保するのが困難となるので、1.2重量%以上であるようにするのがよく、3.0重量%を超えると炭化物量が過剰となり、かえって衝撃強度や曲げ疲労強度が低下することとなるので、摺動部表面のC量は1.2〜3.0重量%であるようにする。
【0014】
また、このような炭化物が析出している鋼表面に、微細粒を高速で投射するショットピーニングを施すことにより、表面に圧縮の残留応力が付与され、また、硬度が上昇することにより、耐摩耗性および耐ピッチング性が著しく向上する。さらにまた、摺動面の表面微細形状においてランダムな凹凸が多数形成されているものとなるため、油膜形成能力が向上することとなり、これにより凝着に由来する摩耗が防止されることとなる。
【0015】
そしてこの場合に、投射エネルギが十分でかつ表面粗度を悪化させないために、ショットピーニングの際に用いる微細粒としては、硬さがHv750以上で、平均粒径が10μm以上200μm以下の範囲のものが適当であり、微細粒の投射速度は100m/s以上とするのが良い。
【0016】
また、ショットピーニング前は、プランジャ8およびカムリング3のうちいずれか一方あるいは両方の微細粒投射前の鋼表面において、炭化物の面積率が2〜40面積%、炭化物の平均径が3μm以下となっているものとするのが望ましい。すなわち、摺動部表面における炭化物の面積率が2面積%よりも少ない場合には、Hv770以上の表面硬さを確保するのが困難となる傾向となるので好ましくなく、また、炭化物の面積率が40面積%よりも多かったり、炭化物の平均径が3μmよりも大きかったりした場合には、靭性が劣化する傾向となるので好ましくなく、このようなことから、摺動部表面における炭化物の面積率が2〜40面積%、炭化物の平均径が3μm以下であるものとするのが好ましい。
【0017】
さらにまた、プランジャ8およびカムリング3のうちいずれか一方あるいは両方のショットピーニングによる微細粒投射後の摺動面の表面粗さをJIS B0601−1994で制定する中心線平均粗さRaで、0.55μm以下とすることが望ましく、このようになすことによって摺動面の摩耗が著しく少ないものとなる。
【0018】
また、プランジャ8およびカムリング3のうちいずれか一方あるいは両方のショットピーニングによる微細粒投射後の摺動面の表面粗さをJIS B0601−1994で制定する最大高さRyで3.5μm以下とすることが望ましく、このようになすことによって表面粗さが過大となった場合の摩耗深さの増大が防止されることになると共に耐焼き付き性や耐ピッチング性がさらに向上したものとなる。
【0019】
さらにまた、プランジャ8およびカムリング3のうちいずれか一方あるいは両方の摺動面の表面硬さ(表面から深さ0.005mm位置の硬さ)がHv850以上および/または圧縮残留応力が1000MPa以上であるものとすることにより、摺動面の摩耗量が少なく、また、微少な亀裂が表面に生成したとしても圧縮残留応力値が大きいため亀裂の進展が抑制され、耐ピッチング性に著しく優れたものとなる。
【0020】
このようなプランジャ8およびカムリング3の素材としては、少なくともクロムを含む機械構造用鋼が用いられ、例えば、JIS G4102〜JIS G4106−1979で制定するSNC,SNCM,SCr,SCM,SMnC等が用いられ、さらには適宜の合金元素を添加したものが用いられる。
【0021】
【発明の効果】
本発明による油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体では、請求項1に記載しているように、一方の軸に連結されかつリング形状のカム面からなるカムリング側摺動面をそなえたカムリングと、他方の軸に連結されかつ複数のプランジャ室を軸方向に形成したロータの前記複数のプランジャ室内に往復移動自在に収納されて前記カムリング側摺動面にリターンスプングの押圧力で圧接するプランジャ側摺動面をそなえた複数のプランジャと、前記ロータに形成されかつ前記プランジャ室に通じる吐出孔と該吐出孔に連通する高圧室を有するとともに前記プランジャの往復移動による吐出油の流動により流動抵抗を発生する流動抵抗発生手段を有するバルブを備え、前記プランジャの頭部に吸入用のワンウエイバルブをまた前記吐出孔内に吐出用のワンウエイバルブをそれぞれ設けていて前記両軸の回転速度差に応じたトルクを伝達する油圧式動力伝達継手において、前記プランジャおよびカムリングのうちいずれか一方あるいは両方が少なくともクロムを含む機械構造用鋼からなり、表面炭素濃度が1.2〜3.0重量%、表面硬さがHv770以上で、摺動部に炭化物が析出している鋼表面に、平均粒径が10〜200μmでビッカース硬さが750Hv以上の微細粒を100m/s以上の速度で投射した摺動面を有するものとしたから、油圧式動力伝達継手のプランジャやカムリングの摺動面における耐摩耗性および耐ピッチング性ならびに耐焼き付き性をより一層向上したものにすることが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0022】
そして、請求項2に記載しているように、プランジャおよびカムリングのうちいずれか一方あるいは両方の微細粒投射前の鋼表面において、炭化物の面積率が2〜40面積%、炭化物の平均径が3μm以下であるものとすることによって、摺動部表面における所要の硬さが確保され、耐摩耗性,耐ピッチング性,耐焼き付き性に優れていると共に靭性にも優れた油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体を提供することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0023】
そしてまた、請求項3に記載しているように、プランジャおよびカムリングのうちいずれか一方あるいは両方の微細粒投射後の表面粗さをJIS B0601−199−1994で制定する中心線平均粗さRaで0.55μm以下および/またはJIS B0601−199−1994で制定する最大高さRyで3.5μm以下のものとすることによって、摺動面の摩耗が著しく少ない耐焼き付き性や耐ピッチング性に優れた油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体を提供することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0024】
さらにまた、請求項4に記載しているように、プランジャおよびカムリングのうちいずれか一方あるいは両方の摺動面の表面硬さ(表面から0.005mm位置の硬さ)がHv850以上および/または圧縮残留応力が1000MPa以上であるものとすることによって、摺動面の摩耗量が少なくかつまた微少な亀裂が表面に生成したとしても圧縮残留応力値が大きいため亀裂の進展が抑制されて耐ピッチング性が著しく向上した油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体を提供することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明はこのような実施例のみに限定されないことはいうまでもない。
【0026】
図1ないし図3に示した油圧式動力伝達装置1を構成するカムリング3のカムリング側摺動面3Sおよびプランジャ8のプランジャ側摺動面8Sの耐ピッチング性、耐摩耗性および曲げ疲労強度を評価するために、ローラピッチング試験および回転曲げ疲労試験を行った。
【0027】
このうち、ローラピッチング試験は、外径φ26mmの小ローラとクラウニング半径R150mmをもつ外径φ130mmの大ローラとが転がりすべり運動を行う2円筒型試験機を用い、面圧:3GPa、すべり率:−60%、油度:90℃のもと、合成油(動粘度:90cSt@40℃)を用いて行った。そして、ローラピッチング用小ローラおよび回転曲げ試験片には以下の熱処理を施した。なお、ローラピッチング用大ローラにはSCM435Hに浸炭焼入れ焼戻し処理を施し、その後研削仕上げを行ったものを用いた。
【0028】
熱処理は、(1)有効硬化層深さECDが1.1mmとなるように1030℃の高温浸炭と球状化炭化物析出処理を行い、油焼入れした後、170℃×90分の焼戻しを行った高濃度浸炭(表1の実施例2〜4,比較例3〜6)と、(2)950℃にして浸炭・拡散後、840℃に保持して油焼入れを行ったあと、170℃×60分の焼戻しを行ったガス共析浸炭(表1の比較例1,2)の2種類である。
【0029】
そして、表1の比較例2〜4に関してはそのまま供試し、実施例2〜4および比較例1,5に関してはこの後に平均粒径:50μm、ビッカース硬さ:Hv830のスチールビーズからなる微細粒投射材をエアー圧力:0.5MPa(投射速度:150m/s)で試料表面に60sec投射した。また、比較例6のショットピーニング条件は、平均粒径:0.5mm、ビッカース硬さ:Hv830のスチールビーズからなる投射材をエアー圧力:0.5MPa(投射速度:80m/s)で試料表面に60sec投射した。そして、各供試片につき、硬さ、残留応力、炭化物面積率および平均粒径、面粗度、表面炭素濃度の測定をそれぞれ行った。
【0030】
このうち、硬さは、マイクロビッカース硬度計を用い、荷重300gで測定した。また、表面残留応力は、微小部X線応力測定装置(理学電機製)を用いて測定した。さらに、炭化物面積率および平均粒径は、試料を切断した後、バフ研磨し、5%ピクリン酸水溶液にて腐食した後、10000倍で走査型エレクトロンマイクロスコープ(SEM)観察し、画像解析によりそれぞれ算出した。さらにまた、面粗度は、触針式の粗さ計を用いてGaussian Filter、カットオフ0.25、測定長さ2mmとして測定した。さらにまた、表面炭素濃度は、電子プローブマイクロアナリシス(EPMA)および発光分光分析法により定量化した。
【0031】
表1は、実施例2〜4および比較例1〜6の材料の内質調査結果とピッチング試験ならびに回転曲げ疲労試験の結果である。
【0032】
【表1】
Figure 0003761134
【0033】
表1より明らかなように、実施例2〜4のいずれも、ピッチングの発生は見られず、また、摩耗量も2μm以下と小さいものであった。さらにまた、曲げ疲労強度(107強度)も1000MPa以上と極めて高いものとなり、耐ピッチング性、耐摩耗性および疲労強度とも極めて向上したものとなっていることがわかった。
【0034】
これに対し、比較例1では、ガス共析浸炭としたため、微細粒を用いたショットピーニング前の鋼表面に炭化物の析出は見られず、ピッチング寿命、摩耗量、回転曲げ疲労強度(107強度)とも実施例に比較して劣る結果となった。
【0035】
また、比較例2では、微細粒を用いたショットピーニングを行わなかったために、ピッチング寿命は更に低下し、また、摩耗量は増大し、回転曲げ疲労強度(107強度)も低い値を示した。
【0036】
さらに、比較例3では、ショットピーニングを行っていないため、摺動面の表面硬さおよび圧縮残留応力が本発明実施例によるものに比べて低いため、耐ピッチング性、耐摩耗性および曲げ疲労強度ともに劣る結果となった。
【0037】
さらにまた、比較例4では、比較例3と同様にショットピーニングを行っていないが、表面炭素濃度および炭化物面積率が多いためピッチング寿命は向上したものとなっていた。しかし、摩耗量が多く、また、曲げ疲労強度は低い値となった。
【0038】
さらにまた、比較例5では、ショットピーニング前の鋼表面の炭素濃度および炭化物面積率が本発明実施例に比べて多いため、耐ピッチング性および耐摩耗性には優れているものの、曲げ疲労強度が悪化する結果となった。
【0039】
さらにまた、比較例6では、ショットピーニングの条件が適切でないため、本発明実施例に比べて、摺動面の表面粗さが大きいことからスコーリングを発生し、耐摩耗性も劣る結果となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】油圧式動力伝達継手の構造例を示す断面説明図である。
【図2】図1に示す油圧式動力伝達継手を構成するカムリングの斜面説明図である。
【図3】図1に示す油圧式動力伝達継手を構成するプランジャの斜面説明図(図3の(A)),正面説明図(図3の(B))および側面説明図(図3の(C))である。
【符号の説明】
1 油圧式動力伝達継手
2 一方の軸
3 カムリング
3S カムリング側摺動面
4 他方の軸
5 プランジャ室
6 ロータ
7 リターンスプリング
8 プランジャ
8S プランジャ側摺動面
9 吐出孔
10 高圧室
11 吸入用のワンウエイバルブ
12 吐出用のワンウエイバルブ

Claims (4)

  1. 一方の軸に連結されかつリング形状のカム面からなるカムリング側摺動面をそなえたカムリングと、他方の軸に連結されかつ複数のプランジャ室を軸方向に形成したロータの前記複数のプランジャ室内に往復移動自在に収納されて前記カムリング側摺動面にリターンスプングの押圧力で圧接するプランジャ側摺動面をそなえた複数のプランジャと、前記ロータに形成されかつ前記プランジャ室に通じる吐出孔と該吐出孔に連通する高圧室を有するとともに前記プランジャの往復移動による吐出油の流動により流動抵抗を発生する流動抵抗発生手段を有するバルブを備え、前記プランジャの頭部に吸入用のワンウエイバルブをまた前記吐出孔内に吐出用のワンウエイバルブをそれぞれ設けていて前記両軸の回転速度差に応じたトルクを伝達する油圧式動力伝達継手において、前記プランジャおよびカムリングのうちいずれか一方あるいは両方が少なくともクロムを含む機械構造用鋼からなり、表面炭素濃度が1.2〜3.0重量%、表面硬さがHv770以上で、摺動部に炭化物が析出している鋼表面に、平均粒径が10〜200μmでビッカース硬さが750Hv以上の微細粒を100m/s以上の速度で投射した摺動面を有することを特徴とする油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体。
  2. プランジャおよびカムリングのうちいずれか一方あるいは両方の微細粒投射前の鋼表面において、炭化物の面積率が2〜40面積%、炭化物の平均径が3μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体。
  3. プランジャおよびカムリングのうちいずれか一方あるいは両方の微細粒投射後の表面粗さをJIS B0601−199−1994で制定する中心線平均粗さRaで0.55μm以下および/またはJIS B0601−199−1994で制定する最大高さRyで3.5μm以下としたことを特徴とする請求項1または2に記載の油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体。
  4. プランジャおよびカムリングのうちいずれか一方あるいは両方の摺動面の表面硬さ(表面から0.005mm位置の硬さ)がHv850以上および/または圧縮残留応力が1000MPa以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の油圧式動力伝達継手のプランジャ・カムリング摺動体。
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