JP3760184B2 - 水電解槽 - Google Patents

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  • Electrolytic Production Of Non-Metals, Compounds, Apparatuses Therefor (AREA)

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、液漏れをなくした水電解槽に関し、より詳細には半導体や液晶等の電子機器の洗浄に使用する金属汚染のない高純度の酸性水及びアルカリ水を製造するための電解槽に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】
電子部品の製造や洗浄には、従来から該用途のために特別に調製された硫酸、フッ酸、過酸化水素、塩酸、オゾン水等が使用されてきた。これらは今後も用途に応じて使用されるが、それぞれに応じた化学プロセスで製造された製品を特別に精製して得られたものであり、製造過程の触媒等から混入してくる金属成分の除去等を行なうために操作が煩雑で結果的に高価な製品となっている。又精製操作を丁寧に行なっても電子デバイスの高度化に伴う許容不純物量の低下に対しては必ずしも十分に対応できるものではなく、新たな代替手法が要請されている。
【0003】
この代替処理液として、いわゆる酸性水あるいは超酸性水があり、該酸性水は通常pHが3以下で酸化還元電位(ORP)が1.2 V以上であり、酸化力を有するため、有機物分解を行なったり金属析出物を溶解して除去する等の効果を有し、電子デバイスの洗浄用等として使用され始めている。
この酸性水製造と同時に前記電解槽の陰極室ではpHが10以上でORPが0V以下のアルカリ水が副生し、該アルカリ水の洗浄等の用途への使用も実用化段階に達している。
【0004】
これらの改質された酸性水やアルカリ水(電解活性水あるいは電解イオン水)は、高純度の酸、アルカリあるいは過酸化水素などの試薬と同等の洗浄効果が得られ、電解活性水は格段に安価であるため、多大な経費節減を達成できる。
前記酸性水及びアルカリ水の電解製造時には、通常、隔膜であるイオン交換膜により陽極室と陰極室に区画された2室型電解槽が使用され、一般に超純水と呼ばれる電気抵抗が18MΩcm以上の絶縁性の水を電解して前記酸性水及びアルカリ水が製造される。前記超純水はその絶縁性のため、直接の電解が行なえず、補助電解質として固体電解質として機能するイオン交換膜を使用し、所謂ゼロギャップ又はSPE方式で電解を行なう。ところが陽極及び陰極をイオン交換膜に密着させて電解を行なうゼロギャップ方式では、陰極で発生した水素が前記イオン交換膜を通して漏洩し、陰極側から陽極側へ移行する現象が起こることがある。電解で生成する酸性水が酸性を示す要因は該酸性水に含まれる水又は酸素の電解生成物であり、僅かな水素の移行でも該水素が前記酸性水の酸化還元電位を下げてしまい、酸性水としての機能が大きく低下するという問題点がある。
【0005】
例えば電解液中に塩素などの陰イオンが含有されていると、この電解液の電解反応は、
2H2 O → O2 + 4H+ + 4e:
2Cl- → Cl2 + 2e:及び、
Cl2 + H2 O → HClO + H+ + Cl-
であり、この反応で生ずる次亜塩素酸による酸化性により酸性水が生成し、更に副反応の水電解によって水素イオンが生成し低pHとなる。塩素イオンのような陰イオンが存在しない場合は、3H2 O→ O3 + 6H+ +6eという反応により生成するオゾンによる酸化性により酸性水が生成するとされている。しかしオゾンは不安定であり水との反応によって活性なOH、Oラジカルを生成し、これらは水素と容易に反応して分解することが知られている。該水素による分解は前記水素の移行を防止すれば回避できる。
【0006】
その手段としては幾つかの手法がある。例えば第1に陽極側から圧力を掛けて陰極質との間に圧力差を設けて水素の移行を防ぐ、第2にイオン交換膜の厚さを厚くして又は複数の薄いイオン交換膜を接合して厚い1枚のイオン交換膜として使用することにより水素移行の抵抗を大きくする手法である。第2の手法が効果的であり実際上はこの手法が採用されるが、第1の手法においても耐圧力性をイオン交換膜に付与するために実質的には複数の薄いイオン交換膜を接合した厚いイオン交換膜又は当初から厚く成形したイオン交換膜を使用している。
この厚いイオン交換膜の使用により水素移行に対する抵抗は大きくなるものの、逆にイオン交換膜と該イオン交換膜を挟持して固定している電極室フレームとの間のシール性に問題が生じる。つまりイオン交換膜自体は高分子化合物ではあるが、比較的硬く、従ってそれ自体によるシール性は期待できず、更にイオン交換膜は液透過性であり、かつ多くの貫通孔を有するので、通常のシールのみでは液漏れを起こしてしまうという問題点がある。特にイオン交換膜が厚くなるとこの傾向が強くなり、かつシール材として耐食性で溶出分が全くないフッ素樹脂を使用すると、該フッ素樹脂に弾性が殆どないため、両者共にシール性を有しないシール材及びイオン交換膜とにより液シールを行なうことになり、当然にシールが不十分になり、生成する水素や電解液が漏れだす恐れが強くなる。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、前述の従来技術の問題点を解消した、つまり厚いイオン交換膜を使用してもシールを確実に行ない酸性水の高酸化還元電位を維持できる水電解槽を提供することを目的とする。
【0008】
【問題点を解決するための手段】
本発明は、その内面に陽極を収容する凹状の陽極室を有する陽極室フレーム、その内面に陰極を収容する凹状の陰極室を有する陰極室フレーム、及び厚さが100 μm以上でありかつその外径が前記両フレームより小径で前記陽極室及び陰極室より大径でありその周縁を前記両フレームにより挟持された陽イオン交換膜を含んで成る水電解槽において、前記陽イオン交換膜の周縁部と前記陽極室フレーム又は陰極室フレーム間に第1シール材を配置しかつ前記陽イオン交換膜より外方の前記陽極室フレームと陰極室フレーム間に第2シール材を配置したことを特徴とする水電解槽であり、電解液と接触する第1シールは耐食性の高い例えばフッ素樹脂製シールとし、電解液と接触しない第2シールはシール性に優れたゴム製シールとすることが望ましい。
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の特徴は、100 μm以上の厚いイオン交換膜を装着した水電解槽の該イオン交換膜のシールを確実に行なうために該シールを二重シールとした点にある。複数のイオン交換膜から成るイオン交換膜又は単一の厚いイオン交換膜を水電解槽の隔膜として使用すると、通常のO−リングでは該O−リングを完全に潰しても十分なシール性は得られない。特に水電解により生成する酸性水及びアルカリ水と接触して劣化することを防止するために、前記O−リングは通常弾性の殆どないフッ素樹脂やフッ素樹脂被覆ゴムで成形されるため、この傾向は更に顕著になり、化学的耐食性と機械強度(弾性強度)を両立させることは困難である。
従って本発明では、この化学的耐食性と機械的強度を両立させるためにシールを二重にし、両シールの一方に化学的耐食性を又他方に機械的強度を持たせることにより、全体として前記耐食性と強度を両立させることを可能にすることを意図している。
【0010】
二重シールのうち、内方のシールはイオン交換膜と陽極室フレーム又は陰極室フレームとの間をシールしかつイオン交換膜を固定するもので、通常は前記陽極室フレーム又は陰極室フレームのイオン交換膜との接触面にドーナツ状の第1の凹溝を形成し、この凹溝にO−リング等の第1のシール材を充填する。この第1のシール材は電極室内の電解液、例えば酸化性の強い酸性水と接触する可能性が高いため、前述のフッ素樹脂等を使用してシール性をある程度犠牲にしても耐食性のある材料(例えばフッ素樹脂包みリング、デュポン社のカルレッツ)で成形することが望ましい。
次に第2のシール材は前記イオン交換膜より外側の陽極室フレームと陰極室フレーム間をシールするもので、該シール材は電解液と接触しないため、耐食性は殆ど考慮する必要はなく、シール性のみを考慮し該シール性に優れた材料例えばゴム等から成形できるが、耐食性及びシール性に優れたデュポン社製のバイトン(商品名)等のフッ素樹脂製ゴムも使用でき、この第2のシール材は、前記第1の凹溝より外側の前記陽極室フレーム又は陰極室フレーム面に第2の凹溝を形成して、その中に充填する。この第2のシール材は、その内側に厚いイオン交換膜が存在し、第1のシール材と同一太さとすると、イオン交換膜の厚みの分だけ圧縮が不十分となりシール性に問題が生ずる恐れがあるため、第1のシール材よりやや太くすることが望ましい。このような太さとすると、第1のシール材に対して最適な締め付けを行なうと、該締め付けが第2のシール材に対してもほぼ最適に近い締め付けとなり好都合である。
【0011】
本発明の水電解槽で使用する陽極は、酸化に対して安定な貴金属、チタン、タンタル等の金属、非金属である炭素、炭化珪素等の導電性セラミックスを基材として用い、陽極物質として酸性水製造の際の溶出に対して耐性のある物質、つまり貴金属や貴金属酸化物、具体的には白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム等、及びこの他に導電性セラミックスやダイヤモンドを使用し、これを前記基材に被覆して製造する。陽極物質の厚さは特に限定されないが、1〜50μmが好ましい。
又陰極は、生成するアルカリ水の純度を保つために、還元に対して安定な貴金属、チタン、ジルコニウム、タンタル等の金属、カーボンあるいは炭化珪素等の導電性セラミックスを基材として用い、白金、ルテニウム、イリジウム等の貴金属、導電性セラミックス、ダイヤモンド等を陰極物質として前記基材上に被覆して製造する。陰極物質の厚さは1〜50μmが好ましい。
これらの電極の形状は特に限定されないが、反応を円滑に進行させるためには、40〜80%の開口率を有する板状に成形することが望ましい。
陽極室フレームや陰極室フレームは、石英やPTFE樹脂のような安定な皮膜を表面に形成した材料により構成することが好ましい。
【0012】
図1は本発明の水電解槽の一例を示す分解縦断面図である。
電解槽本体1は、内面に凹部2が形成され該凹部に多孔性の陽極3が収容された陽極室フレーム4と、内面に凹部5が形成され該凹部に多孔性の陰極6が収容された陰極室フレーム7とを含み、前記陽極3及び陰極4間には、その周縁部が前記陽極3及び陰極4の周縁部より広がったイオン交換膜8が両極により挟持されるように固定されている。
前記陰極室フレーム7の前記イオン交換膜8の周縁部に対応する箇所には第1凹溝9がドーナツ状に形成され、該第1凹溝9には、フッ素樹脂製の第1シール材10が収容され、更に前記陰極室フレーム7の更に外方の前記陽極室フレーム4と直接接触する箇所には第2凹溝11がドーナツ状に形成され、該第2凹溝11には、ゴム製の第2シール材12が収容され、両シール材10、12は前記陽極室フレーム及び陰極室フレームを内方に向けて押圧することにより変形して前記両凹溝9及び11内に弾性的に充填される。第1シール材9は陰極室フレーム7とイオン交換膜8間をシールして陰極液の液漏れを防止し、万一該第1シール材9を通って液漏れが生じても、更に外側に存在する第2シール材12により電解槽外への液漏れは確実に防止される。
【0013】
【実施例】
次に本発明に係わる水電解槽による液漏れ実験の実施例を記載するが、該実施例は本発明を限定するものではない。
【0014】
【実施例1】
図1に示す電解槽を使用して液漏れ実験を行なった。
厚さ120 μmで外径18cmの陽イオン交換膜ナフィオン117 (デュポン社製)の陽極面側に、イリジウム酸化物触媒を担持したチタン製の多孔性陽極を、陰極面側に、白金触媒を担持したチタン製の多孔性陰極をそれぞれ密着させた。陽極室フレーム及び陰極室フレームとも外径を30cmとし、陰極室フレーム面の周縁から6.5 cmの箇所にドーナツ状の5mm幅で深さ3mmの第1凹溝を、周縁から5cmの箇所にドーナツ状の5mm幅で深さ3mmの第2凹溝をそれぞれ形成した。
内側の第1凹溝には、耐食性のあるフッ素樹脂包みリングを嵌合し、外側の第2凹溝には、バイトンリングを嵌合した。純水を満たし、0.3 MPaの圧力を掛けながら1昼夜保持したが、液漏れは観察されなかった。
【0015】
【比較例1】
陽イオン交換膜の厚さを50μmとしたこと、陰極室フレームに実施例1の第1凹溝のみを形成し、この凹溝にフッ素樹脂包みリングを嵌合したこと以外は実施例1と同一条件で電解槽を構成し、純水を満たし、0.3 MPaの圧力を掛けながら1昼夜保持したが、液漏れは観察されなかった。
【0016】
【比較例2】
50μmの厚さの陽イオン交換膜を、それぞれ2枚あるいは3枚重ねて見掛け厚100 μm又は150 μmの陽イオン交換膜としたこと以外は比較例1と同一条件で液漏れ実験を行なったところ、2枚重ねの場合には僅かな液の滲みが観察されたのみであったが、3枚重ねの場合には液垂れが目視できる程度まで液漏れが進行した。これによりイオン交換膜の厚さが100 μmを越えると単一のシールでは不十分であり、前記実施例のように、二重シールが必要であることが判った。
【0017】
【発明の効果】
本発明は、その内面に陽極を収容する凹状の陽極室を有する陽極室フレーム、その内面に陰極を収容する凹状の陰極室を有する陰極室フレーム、及び厚さが100 μm以上でありかつその外径が前記両フレームより小径で前記陽極室及び陰極室より大径でありその周縁を前記両フレームにより挟持された陽イオン交換膜を含んで成る水電解槽において、前記陽イオン交換膜の周縁部と前記陽極室フレーム又は陰極室フレーム間に第1シール材を配置しかつ前記陽イオン交換膜より外方の前記陽極室フレームと陰極室フレーム間に第2シール材を配置したことを特徴とする水電解槽である。
【0018】
本発明では、イオン交換膜と両電解室フレーム面間の第1(内方)シール、及び両電解室フレーム面間の第2(外方)シールの二重シールを行なっているため、仮に電解液が第1シールを透過して外方に漏れだしても、第2シールが存在するため、より以上外方に液漏れが進行することがない。
更に本発明では前記第1シールをフッ素樹脂から成るO−リングとし、前記第2シールがをム製のO−リングとすることが望ましく、これにより電解液と接触する可能性の高い第1シールではシール性を犠牲にしても耐食性を向上させ、該第1シールを透過する電解液に関しては、耐食性を考慮する必要がなくシール性のみを重視して材料選択ができる第2シール材により確実に液漏れを止めて、耐食性及びシール性の両者を兼ね備えたシール構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水電解槽の一例を示す分解縦断面図。
【符号の説明】
1・・・電解槽本体 2・・・凹部 3・・・陽極 4・・・陽極室フレーム5・・・凹部 6・・・陰極 7・・・陰極室フレーム 8・・・イオン交換膜 9・・・第1凹溝 10・・・第1シール材 11・・・第2凹溝 12・・・第2シール材

Claims (2)

  1. その内面に陽極を収容する凹状の陽極室を有する陽極室フレーム、その内面に陰極を収容する凹状の陰極室を有する陰極室フレーム、及び厚さが100 μm以上でありかつその外径が前記両フレームより小径で前記陽極室及び陰極室より大径でありその周縁を前記両フレームにより挟持された陽イオン交換膜を含んで成る水電解槽において、前記陽イオン交換膜の周縁部と前記陽極室フレーム又は陰極室フレーム間に第1シール材を配置しかつ前記陽イオン交換膜より外方の前記陽極室フレームと陰極室フレーム間に第2シール材を配置したことを特徴とする水電解槽。
  2. 第1シール材がフッ素樹脂から成るO−リングであり、第2シール材がゴム製のO−リングである請求項1に記載の水電解槽。
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