JP3758844B2 - 電解水生成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原水に電解促進剤が混合された被処理水を隔膜を有する電解槽内で電気分解する電解水生成装置であって、特に、隔膜の状態を検出する電解水生成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、イオン透過能を有する隔膜で区画された陽極室及び陰極室からなる電解槽に対して原水に食塩等の電解促進剤が混合された被処理水を連続的に供給し、供給された被処理水を電解槽内で電気分解して電解水を得る電解水生成装置が知られている。この種の電解水生成装置は、所望のpHを有する電解水を生成するために被処理水の電解促進剤の濃度、電極間への印加電圧、又は電解電流(陽極室及び陰極室に収容された電極間に流れる電流)を制御する。この場合において装置に何らかの異常が発生すると、電解促進剤濃度や印加電圧等の制御量が予定範囲を逸脱して極めて大きく又は小さくなる。電解水生成装置はこうした状態を検出して外部に警告を発するように構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電解槽内の隔膜は各電極室に生成された酸性水とアルカリ性水が混合することを防ぐ機能を有するが、何らかの原因により隔膜が破れて所期の性能が保てない状態が発生することがある。また、隔膜にスケールが付着することにより陽極室又は陰極室の流路抵抗が変化して、両電極室に流入する被処理水の流量(両電極室から注出される電解水の流量)の比率が予定の範囲から逸脱する場合もある。こうした異常状態下では所期の諸特性を有する電解水が得られないため、同状態が発生したことを速やかに検出することが必要である。しかしながら、このような異常時においては、電解促進剤濃度や印加電圧等の制御量が制御上許容されている範囲を逸脱することが少ないため、上記従来の方法によっては確実に検出することが困難である。
【0004】
【発明の概要】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、電解電流値から電解水(酸性水又はアルカリ性水)のpHに相当する値を推定するとともに、生成された酸性水及びアルカリ性水の各々の電気伝導度の差に基づいて電解水のpHに相当する値を推定し、これらの二つの推定値を比較して隔膜の状態を判定するものである。
【0005】
本発明に係る電解水生成装置が電気分解する被処理水は、原水に塩化ナトリウムや塩化カリウム等の電解促進剤が混合されてなる水溶液である。塩化ナトリウムの水溶液(即ち食塩水)を例にして説明すると、食塩水は塩素イオンとナトリウムイオンを含んでいる。塩素イオンは隔膜を通過して陽極室に吸引され、塩化水素(HCl)を生成する。ナトリウムイオンは隔膜を通過して陰極室に吸引され、水と反応して水酸化ナトリウム(NaOH)を生成する。電解電流値は、塩素イオンとナトリウムイオンの移動量に大きく依存し、隔膜が理想状態であればpHと極めて強い相関を有する。
【0006】
以上から、本発明の第1の特徴における第1推定手段は、生成された電解水のpHに相当する値を電解電流値に基づき推定する。これは隔膜が理想状態であるとの前提に立った推定を行うものである。尚、pHに相当する値とは電解電流から求められるイオン移動量(単位時間当り)やpHそのものを含む値である。
【0007】
HClとNaOHは電離度が高い(電離度が1に近い)強電解質であり、水溶液中でイオンとなっている。また、HClとNaOHは各1価の正・負イオンからなっているため、理論的には陽極室と陰極室において同じモル数だけ生成されていると考えられる。従って、HCl又はNaOHの水溶液中のモル数が判れば水素イオンのモル数が判るので、モル数に基づいてpHに相当する値を得ることができる。HCl又はNaOHの水溶液におけるモル数は、一般にはそれぞれの水溶液の電気伝導度から求めることができる。
【0008】
しかしながら、電気分解後の電解水中には未電解のNaCl(塩素イオンとナトリウムイオンとなっている)が残存していて、各水溶液(生成された酸性水及びアルカリ性水)の電気伝導度に影響を与える。換言すれば、HCl又はNaOHのモル数は、電気伝導度が同じでも含まれているNaClのモル数に依存して異なる。このため、いずれかの水溶液の電気伝導度のみに基づいてHCl又はNaOHのモル数を知ることはできない。
【0009】
そこで本発明は、NaClは電気分解により消費されるけれども、その残量は各溶液中で同量であるので各水溶液の電気伝導度に対するNaClの寄与分は等しいと考えられること、及びHCl自体とNaOH自体の電気伝導度は互いに異なっていることに着目し、各水溶液の電気伝導度の差を求めればNaClの寄与分を相殺して電解水のpHに応じた値が得られることを利用する。
【0010】
以上を図3を用いて説明すると、図3(A)は陽極室で生成された電解水(酸性水)中に含まれるイオン(正イオン又は負イオンのいずれか、又はそれらの和)のモル数と電気伝導度との関係を示している。第1検出手段が検出する電気伝導度(ラインA)は、陽極室にて生成されたHClと陽極室に未電解のまま残ったNaClの各イオンの量(モル数)が反映された値(両者の和)である。尚、同図においてNaClの電気伝導度への寄与分はラインB1で示されるので、HClの電気伝導度への寄与分は、ラインAとラインB1の差として表されている。
【0011】
同様に図3(B)は、陰極室で生成された電解水(アルカリ性水)中に含まれるイオンのモル数と電気伝導度との関係を示している。第2検出手段が検出する電気伝導度(ラインC)は、陰極室にて生成されたNaOHと陰極室に未電解のまま残ったNaClの各イオンの量(モル数)が反映された値(両者の和)である。同図においては、NaClの電気伝導度への寄与分はラインB2で示されるので、NaOHの電気伝導度への寄与分は、ラインCとラインB2の差として表されている。
【0012】
ここで、未電解のNaCl分に着目すると、生成されたHCl、NaOHが多い程(電解電流が大きい程)NaClは減少するが、その残存量は各電極室内で同じである(ラインB1=ラインB2)。また、HCl自体とNaCl自体の電気伝導度は同じモル数でも異なる。従って、両電気伝導度の差△ECを求めてやれば、図3(C)に示されるようにNaClの電気伝導度に対する寄与分が相殺された値が得られ、この値はHCl(NaOH)のモル数Mと一対一に対応するものとなる。即ち、NaClの電気伝導度に対する寄与分が判らなくても、電解水中に存在するHCl又はNaOHのモル数は電気伝導度の差△ECから一義的に決定される。この原理に従い、本発明の第1の特徴における第2推定手段は、各電極室で生成された電解水の電気伝導度を個別に検出(測定)し、両検出値の差を求めることによってNaClの電気伝導度への寄与分を相殺し、以てpHに応じた値を得る。
【0013】
隔膜の一部が破れた場合においては、電解電流値は隔膜が正常なときの値と変化しない。しかし、HClとNaOHのイオンの一部は、これらが生成された電極室とは反対の電極室に戻ってしまう現象が生ずる。この結果、生成された電解水のpHに相当する値は、電解電流値に基づいて推定される値とは異なるようになる。例えば酸性水のpHについては、電解電流値から推定されるpHに対して実際のpHは大きくなる(酸性水が中性側になる)。
【0014】
上述したように、第1推定手段は電解電流からpHに応じた値を推定する。一方、第2推定手段が推定するpHは現実に生成された電解水の電気伝導度に基づいているので、隔膜の破れによる上記した電解水の中性側への変化を忠実に反映する値となる。これは図3(A)上では、隔膜が正常時の場合の点a1と点b1が、それぞれ点a2と点b2に変化したことに対応する。従って第2推定手段の推定するpHに相当する値(推定モル数)は、電気伝導度の差△EC1が△EC2へと減少したことによってM1からM2へと減少する(図3(C)参照)。尚、図3(A)における破線Cは、図3(B)における実線Cと同じラインである。
【0015】
以上に基づいて本発明の第1の特徴における隔膜状態判定手段は、第1推定手段及び第2推定手段が各々推定したpHに相当する値を比較することにより隔膜の状態を判定する。例えば、両者の差が大きければ隔膜に破れ等が生じた状態であると判定し、差が小さければ隔膜は正常であると判定する。従って、第1の特徴を有する電解水生成装置によれば、隔膜の状態を確実に判定できる。また、通常の電気伝導度検出器が採用できるため高価でかつメンテナンスが必要な市販のpH計を用いる必要がなく、装置のコスト上昇を抑制できる。
【0016】
隔膜にスケールが付着して陽極室側の流路抵抗が高まった場合には、電解電流値が同じであっても酸性水中のHClの濃度が大きくなる。これに伴い第1検出手段が検出する電気伝導度は大きくなるので、第2検出手段が検出する電気伝導度との差は大きくなる。これを図3(A)上で説明すれば、点b1はそのままであるが、点a1が点a3に移動して電気伝導度差が△EC3に増大した状態である。従って、第2推定手段が推定する酸性水のpHはモル数M3に対応した値となり(図3(C)参照)、隔膜が正常であるとの前提の下に電解電流値に基づいて推定される酸性水のpHに比べて小さくなる。そこで、本発明の第2の特徴における隔膜状態判定手段は、こうした状況(第1推定手段による推定pHに対し第2推定手段の推定pHが所定値以上小さいこと)が発生したときに「隔膜につまりが発生した」と判定する。
【0017】
酸性水のpHが判れば、アルカリ性水のpHは所定値から酸性水のpHを差引いたものとして特定できる。従って、本発明の第3の特徴においては、第2の特徴が酸性水の推定pHを用いて隔膜のつまりを判定したのに対し、アルカリ性水の推定pHを用いて隔膜のつまりを判定する。即ち、第3の特徴においては、隔膜のつまりにより陽極側の流路抵抗が高まった場合には第1推定手段により推定されるアルカリ性水のpHに対し第2推定手段により推定されるアルカリ性水の推定pHが所定値以上大きくなることを利用して「隔膜につまりが発生した」と判定する。
【0018】
隔膜にスケールが付着して陰極室側の流路抵抗が高まった場合には、電解電流値が同じであってもアルカリ性水中のNaOHの濃度が大きくなる。これに伴い第2検出手段が検出するアルカリ性水の電気伝導度は大きくなるので、第1検出手段が検出する酸性水の電気伝導度との差は小さくなる。図3(A)上では、点a1はそのままであるが、点b1が点b3に移動して電気伝導度差が△EC4に減少した状態である。従って、第2推定手段が推定する酸性水のpHはモル数M4に対応した値となり(図3(C)参照)、隔膜が正常であるとの前提の下に電解電流値に基づいて推定される酸性水のpHに比べ大きくなる。
【0019】
しかしながら前述したように、隔膜の一部にやぶれが発生した場合にも電気伝導度差は小さくなるために第2推定手段の推定する酸性水のpHは大きくなる。この場合、第1及び第2推定手段の推定するpHには大きな差が現れるため、この状態(pHに大きな差が現れたこと)を検出して隔膜に異常があることは判定できるものの、それが「隔膜の陰極側のつまり」なのか「隔膜の破れ」なのかが特定できない。そこで、本発明の第4の特徴は、第3検出手段により電気分解前の被処理水の電気伝導度も検出し、第1検出手段の検出する電気分解後の電解水(酸性水)の電気伝導度との差に基づいて酸性水のpHを推定する第3推定手段を備えた。第3推定手段のpHの推定は、電気分解前後における電気伝導度の差は電気分解に伴うイオンの移動量に応じているのでHClのモル数とほぼ等しい関係にあることを利用している。
【0020】
第3推定手段の推定したpHは実際のpHを示す。従って、第4の特徴における隔膜状態判定手段は、第1及び第2推定手段の推定pH間に大きな差がある場合に、第1推定手段の推定pHよりも第3推定手段の推定pHが大きければ(中性側であれば)隔膜に破れが発生していると判定し、そうでなければ隔膜へのスケール付着による「陰極側のつまり」と判定する。
【0021】
本発明の第5の特徴は、隔膜につまりが生じていると判定された場合に、電極間に流れる電流方向を反転してスケールを除去するものである。これにより、隔膜のつまりに対して適切な処置を行い、電解水生成装置の電解水生成能力を維持することが可能となる。また、本発明の第6の特徴は、上記した第1から第4の特徴による隔膜状態の判定結果に応じて外部に警告を与えるものである。これにより、隔膜の交換等の処置を促すことが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1に示された本発明の実施形態に係る電解水生成装置は、供給される食塩水を電気分解する電解槽10、電解槽10に低濃度の食塩水(塩化ナトリウム水溶液、以下、希塩水という)を供給するための給水管20、電解槽10内の電極間に直流電圧を印加する電源30、制御回路40及び警告ランプであるLED50a,50b等を備えている。電解槽10は通水式のもの(連続的に希塩水を電気分解するもの)であって、イオン透過能を有する隔膜11により陽極室12と陰極室13に区画されている。各電極室12,13は陽極14及び陰極15とを対向して収容している。
【0023】
給水管20は、図示しない外部給水源から原水が供給されるとともに同原水に濃塩水を所定量だけ混合して濃度の調整された希塩水を生成する塩濃度調整手段21と接続されていて、更に、塩濃度が調整された希塩水を電解槽10の各電極室に連続的に供給する電動ポンプ22等を介装している。給水管20は下流にて二股状に分岐し、端部が電解槽10の電極室12,13の入口に各々接続されている。電解槽10の陽極室12の出口には第1注出管23が接続され、同様に陰極室13の出口には第2注出管24が接続されている。第1及び第2注出管23,24は、管内に流れる電解水の電気伝導度を検出(計測)する第1,第2電気伝導度検出器25,26をそれぞれ介装している。また、電動ポンプ22と電解槽10との間の給水管20には、同管内に流れる電気分解前の希塩水の電気伝導度を検出する第3電気伝導度検出器27が介装されている。
【0024】
発生電圧が調整可能であって、電圧印加方向が反転可能に構成された定電圧電源30は陽極14及び陰極15と接続されている。同電源30は両電極14,15に対し所定の電圧の直流電圧を所定の方向に印加する。電源30と両電極14,15を結ぶ回路には、両電極14,15間を流れる電流(電解電流)を計測するための電流計31が直列に介装されている。
【0025】
制御回路40は、マイクロコンピュータを含んで構成されていて、塩濃度調整手段21、電動ポンプ22、第1〜第3電気伝導度検出器25〜27、及び電流計31と電気的に接続されている。また、制御回路40には、制御回路40が隔膜の破れを検出したときに点灯して外部に警告を与えるためのLED50aと、隔膜のつまりを検出したときに点灯して外部に警告を与えるためのLED50bとが接続されている。制御回路40のマイクロコンピュータが有する内部メモリーは、予め標準的な原水を使用して測定した電解電流値と酸性水のpH(実測)との関係、酸性水とアルカリ性水の電気伝導度差と酸性水のpHとの関係(図3(c)の横軸をpHに変換した関係)、及び酸性水の電気伝導度と電気分解前の被処理水(希塩水)の電気伝導度との差とpHとの関係を記憶している。更に、同内部メモリーは、電解水生成装置が設置された場所における原水の影響を補正するため、設置場所の原水を用いて所定の基準電解電流値を有する電流を流したときの酸性水のpHを市販のpH計で計測し、そのpHを補正値として記憶している。
【0026】
図2に一例として示された上述の第1電気伝導度検出器25は、管径が拡大された第1注出管23の拡径部25a内に所定の間隔を隔てて配置された正電極25b及び負電極25cを有している。正電極25b及び負電極25cは、白金又はチタン等からなっていて、前述した制御回路40に接続されている。又、負電極は抵抗Rを介して接地されている。電気伝導度の測定(検知)は、正電極25bに所定の一定電圧が与えられて負電極25bとの間に電流が流れ、この電流による抵抗Rの両端に生ずる電圧降下が制御回路40に入力されることにより達成される。即ち、正・負電極25b,25c間に一定電圧を与えたときの電流値を検知することにより、第1注出管23内に流れる電解水の電気伝導度が測定される。尚、第2電気伝導度検出器26及び第3電気伝導度検出器27は第1電気伝導度検出器25と同構造である。
【0027】
以上のように構成された電解水生成装置は、制御回路40内のマイクロコンピュータが図示しないメインプログラムを実行して、電解水を生成するための動作を行う。具体的には、マイクロコンピュータは塩濃度調整手段21に指示を与えて電解槽10に供給される希塩水の濃度を所定の値になるように調整する。この濃度調整は、予め一定の高濃度に調整されている濃塩水タンクと原水が供給される希塩水タンクを結ぶ管路に配設された電磁バルブを作動(開閉制御)して、希塩水タンク内の原水に所定量の濃塩水を加えることで達成される。同時に、マイクロコンピュータは電動ポンプ22を作動して濃度が調整された希塩水を電解槽10へ連続的に供給する。マイクロコンピュータは電源30にも指示を与えて、両電極14,15に所定方向の直流電圧を印加する。以上により、電解槽10内の希塩水が電気分解され、電解水が注出管23,24を介して外部に注出される。
【0028】
また、制御回路40のマイクロコンピュータは、図4に示された隔膜状態検出用のプログラムを所定時間毎にステップ400から実行する。先ず、マイクロコンピュータはステップ405において、電解電流値Iを電流計31から入力する。続くステップ410では、電解電流値Iから陽極室12で生成された酸性水のpH(pHi)を推定する。具体的には、内部メモリーに記憶してある電解電流値IとpHの関係とステップ405で得た現在の電解電流値Iから推定基準pHを得る。次に、内部メモリーに記憶してある補正値(設置場所の原水を用いて所定の基準電解電流を流したときの酸性水のpH)を用いて推定基準pHを補正し、設置場所における原水の影響を除去した推定pH(pHi)を得る。
【0029】
マイクロコンピュータはステップ415に進んで、第1電気伝導度検出器25から酸性水の電気伝導度aを検出(測定)し、ステップ420にて第2電気伝導度検出器26からアルカリ性水の電気伝導度bを検出(測定)する。次のステップ425では、検出された電気伝導度aと電気伝導度bの差△ECを求めてステップ430に進む。ステップ430では、ステップ425で得た電気伝導度の差△ECとメモリーに予め記憶してある電気伝導度と酸性水のpHとの関係から、陽極室12で生成された酸性水のpH(pHec)を推定する。
【0030】
マイクロコンピュータはステップ435に進んで、ステップ430で求めたppHecがステップ410で求めたpHiよりも所定値α以上小さいか否かを判定する。所定値以上小さい場合には、隔膜にスケールが付着して陽極側がつまった状態にあると判断できるのでステップ440に進んで警告ランプ50bを点灯する。同時にステップ445にて両電極14,15への直流電圧の印加方向をそれまでの印加方向とは反転させる指示を電源30に与えて電解電流の方向を反転してスケールの除去を行う。ステップ445の実行後はステップ465に進み、一旦本ルーチンを終了する。
【0031】
一方、pHecがpHiよりも所定値α以上小さくない場合には、ステップ450に進んでpHecがpHiよりも所定値β以上大きいか否かを判かを判定する。所定値β以上大きい場合には、ステップ455に進み図5に示された「つまり又は破れ識別ルーチン」を実行し、所定値β以上大きくない場合にはpHecがpHi近傍にあるので隔膜は正常であると判定してステップ460に進み、その時点で点灯している警告ランプ50a,50bを消灯する。
【0032】
ステップ450からステップ455に進んだ場合には、マイクロコンピュータは図5に示された「(隔膜の)つまり又は破れ識別ルーチン」を実行する。先ずステップ505においては、マイクロコンピュータは第3電気伝導度検出器27の出力に基づき被処理水(希塩水)の電気伝導度cを検出する。次に、ステップ510に進んで、酸性水の電気伝導度aと被処理水の電気伝導度cとの差△EC0(=a―c)を求める。次にステップ515にて、メモリーに予め記憶させてある酸性水と被処理水(希塩水)の電気伝導度の差とpHとの関係と、ステップ510にて求めた電気伝導度の差△EC0とに基づいて酸性水のpH(pHec0)を求める。
【0033】
続いてマイクロコンピュータはステップ520を実行する。ステップ520では、pHec0がpHi(先のステップ410にて電解電流値Iから求めた推定pH)より所定値γ以上大きいか否かを判定し、大きい場合にはステップ525に進む。pHec0がpHiより所定値γ以上大きいことは、生成された電解水が電解電流から推定されるよりも中性側に変化してしまっていることを意味するので、隔膜に破れが生じていると判断できる。従って、ステップ525にて隔膜の破れを警告する警告ランプ50aを点灯する。
【0034】
一方、ステップ520にてpHec0がpHiより所定値γ以上大きくないと判定された場合は、隔膜へのスケール付着により陰極側の電解室内の被処理水流路につまりが生じていると判定できるので、ステップ530に進んで隔膜のつまりを警告する警告ランプ50bを点灯し、ステップ535にてステップ445と同様に両電極14,15への直流電圧印加方向をそれまでの印加方向とは反転させてスケールの除去を行う。ステップ535又はステップ525の実行後はステップ540を経由して図4のステップ465へ戻り、所定時間後に再びステップ400から図4のプログラムを実行する。尚、ステップ445又はステップ535において電圧印加方向が反転された場合には、酸性水及びアルカリ性水の生成される電極室(陽極室と陰極室、陽極と陰極)が逆転するので、第1,第2電気伝導度検出器を使いわける。
【0035】
以上説明したように、本実施形態においては酸性水、アルカリ性水及び電気分解前の被処理水の電気伝導度と電解電流値とから隔膜の状態を判定する。従って、高価でかつメンテナンスが必要な市販のpH計を用いる必要がなく、装置のコスト上昇の抑制とメンテナンスフリーの実現が達成できる。また、隔膜のつまりが検出されたときには印加電圧の方向(電解電流の方向)を反転させてスケールの除去を自動的に行うので、所期の電解水を継続して得ることができる。尚、本実施形態では電解促進剤として塩化ナトリウムを用いたものを説明したが塩化カリウム等も用いることができる。尚、上記実施形態においては酸性水のpHを各推定手段から推定して隔膜状態を判定したが、アルカリ性水のpHを推定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る電解水生成装置の全体図である。
【図2】 図1に示した電気伝導度検出器の断面図である。
【図3】 本発明の実施形態に係る電解水中の各イオンのモル数と電気伝導度の関係を示す図である。
【図4】 図1に示した制御回路40内のマイクロコンピュータが実行するプログラムを示すフローチャートである。
【図5】 図4のプログラムにおけるステップ455の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10…電解槽、12…陽極室、13…陰極室、14…陽極、15…陰極、20…給水管、21…塩濃度調整手段、25…第1電気伝導度検出器、26…第2電気伝導度検出器、27…第3電気伝導度検出器、30…電源、40…制御回路、50a,50b…警告ランプ

Claims (6)

  1. 隔膜で区画された陽極室及び陰極室の各々に陽極及び陰極を有する電解槽と、
    原水に電解促進剤を溶解してなる被処理水を前記陽極室及び前記陰極室に連続的に供給する手段とを備え、
    前記陽極及び前記陰極に電圧を印加して前記被処理水を電気分解する電解水生成装置において、
    前記陽極と前記陰極の間に流れる電流の電流値を検出する電流値検出手段と、
    生成された電解水のpHに相当する値を前記検出された電流値に基づいて推定する第1推定手段と、
    前記陽極室で生成された電解水の電気伝導度を検出する第1検出手段と、
    前記陰極室で生成された電解水の電気伝導度を検出する第2検出手段と、
    生成された電解水のpHに相当する値を前記第1検出手段及び前記第2検出手段の各々により検出された電気伝導度の差に基づいて推定する第2推定手段と、
    前記第1推定手段及び前記第2推定手段が推定したpHに相当する値を比較して前記隔膜の状態を判定する隔膜状態判定手段とを具備したことを特徴とする電解水生成装置。
  2. 請求項1に記載の電解水生成装置において、
    前記第1推定手段及び前記第2推定手段は前記陽極室で生成される酸性水のpHをそれぞれ推定する手段であり
    前記隔膜状態判定手段は、前記第1推定手段により推定したpHに対し前記第2推定手段が推定したpHが所定値以上小さいときに前記隔膜につまりが発生していると判定することを特徴とする電解水生成装置。
  3. 請求項1に記載の電解水生成装置において、
    前記第1推定手段及び前記第2推定手段は前記陰極室で生成されるアルカリ性水のpHをそれぞれ推定する手段であり
    前記隔膜状態判定手段は、前記第1推定手段により推定したpHに対し前記第2推定手段が推定したpHが所定値以上大きいときに前記隔膜につまりが発生していると判定することを特徴とする電解水生成装置。
  4. 隔膜で区画された陽極室及び陰極室の各々に陽極及び陰極を有する電解槽と、
    原水に電解促進剤を溶解してなる被処理水を前記陽極室及び前記陰極室に連続的に供給する手段とを備え、
    前記陽極及び前記陰極に電圧を印加して前記被処理水を電気分解する電解水生成装置において、
    前記陽極と前記陰極の間に流れる電流の電流値を検出する電流値検出手段と、
    前記陽極室で生成された電解水のpHを前記検出された電流値に基づいて推定する第1推定手段と、
    前記陽極室で生成された電解水の電気伝導度を検出する第1検出手段と、
    前記陰極室で生成された電解水の電気伝導度を検出する第2検出手段と、
    前記陽極室で生成された電解水のpHを前記第1検出手段及び前記第2検出手段の各々により検出された電気伝導度の差に基づいて推定する第2推定手段と、
    前記被処理水の電気分解前の電気伝導度を検出する第3検出手段と、
    前記陽極室で生成された電解水のpHを前記第3検出手段により検出された電気伝導度と前記第1検出手段により検出された電気伝導度との差から推定する第3推定手段と、
    第1推定手段及び第2推定手段による推定pHの差が第1の所定値以上であるときに第1推定手段及び第3推定手段による推定pHの差が第2の所定値以上であれば前記隔膜に破れが発生していると判定し、第2の所定値未満であれば前記隔膜につまりが発生していると判定する隔膜状態判定手段とを具備したことを特徴とする電解水生成装置。
  5. 前記隔膜状態判定手段が前記隔膜につまりが発生していると判定したときに、前記電極間に流れる電流の方向を反転させる電流方向反転手段を具備したことを特徴とする請求項2、請求項3又は請求項4に記載の電解水生成装置。
  6. 前記隔膜状態判定手段による隔膜状態の判定結果に応じて外部に対し警告を行う警告手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の電解水生成装置。
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