JP3757004B2 - 放射性廃液の固化処理方法および濃縮混練装置 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、セメント系固化材を用いる液体放射性廃棄物(放射性廃液)の固化処理方法および放射性廃液の濃縮混練装置に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
原子力発電所、核燃料再処理工場あるいは原子力研究施設などから発生する低レベル放射性廃棄物は、安定な形に固定化処理され、廃棄処分されている。
【0003】
このような原子力利用施設では、固体放射性廃棄物だけでなく種々の低レベル液体放射性廃棄物が発生している。たとえば再処理工場からは硝酸ナトリウム含有廃液が発生し、原子力発電所においては、加圧水型(PWR)軽水炉発電所からはホウ酸含有廃液(ホウ素濃度で2%程度)が発生し、沸騰水型(BWR)軽水炉発電所からはイオン交換樹脂の再生廃液として濃度5〜25%程度の硫酸ナトリウム含有廃液が発生している。
【0004】
従来上記のような放射性廃液の固化材としては、アスファルト、プラスチックあるいはセメントが用いられている。そしてこのような放射性廃液を固化処理する際には、放射性廃液をできる限り濃縮した後に固化させることが、廃棄物の量を低減させる上からも望まれている。
【0005】
たとえば上記のようなPWR発電所から発生するホウ酸含有廃液については、該廃液に水酸化ナトリウムを添加してメタホウ酸含有廃液とした後、加熱したアスファルト中に供給することにより、水分を蒸発して減容(濃縮)し、アスファルトで固化処理するアスファルト固化方法が実施されている。
【0006】
またBWR発電所から発生する硫酸ナトリウムを含むイオン交換樹脂の再生廃液については、この廃液を遠心薄膜乾燥機で乾燥して粉体化し、ついで混練装置中で粉体を不飽和ポリエステル樹脂と混合することにより固化するプラスチック固化方法が実施されている。
【0007】
ところでアスファルトあるいはプラスチックを固化材とする有機系固化体は、核種保持能力が低いため、放射性廃棄物処理固化体の海洋処分から浅地埋設処分への変更に伴って、埋設廃棄物全体の有機系固化体の埋設量は大きく制限されることになった。
【0008】
このため放射性廃液の固化に際しては、固化体の核種保持能力が高く圧縮強度にも優れ、容量(体積)を大幅に減少させることができ、埋設処分に適したセメント系固化方法が必要となってきている。
【0009】
しかしながら従来のセメント系固化材(高炉セメント、バーミキュライトセメントなど)を用いた放射性廃液の固化方法では、固化体の充填量が、200Lドラム(固化体)あたりの廃液中の固形分量で約30kg程度であって、減容性に劣るという問題点があり、これを早急に解決することが望まれている。
【0010】
現在、高減容固化が可能なセメント固化方法としては、PWR発電所で発生するホウ酸含有廃液を水酸化カルシウムで処理して不溶化し、脱水後の上澄液を再濃縮した後、セメント材で固化処理する改良型セメント(AC)方法が実施されている(特公昭63−51519号、同63−52359号参照)が、このAC方法では不溶化処理工程が幾分複雑で、不溶化処理反応槽、固液分離脱水機などの装置が必要であり、プロセスの簡素化、設備コストの低減化が望まれている。
【0011】
上記のように放射性廃液の固化処理においては、簡素なプロセスで高減容化した後に、核種保持能力が高く圧縮強度にも優れた固化体を得ることができるようなセメント系固化処理方法の出現が望まれていた。
【0012】
本発明者は、セメント系固化材を用いる放射性廃液の固化処理方法について鋭意研究したところ、加熱手段を有する濃縮混練装置中で放射性廃液を結晶が析出するまで濃縮した後に、スラグセメント(SC)系固化材によって固化することにより、簡素化されたプロセスで、放射性廃液を高減容固化しうることを見出して本発明を完成するに至った。
【0013】
【発明の目的】
本発明は、放射性廃液を簡素なプロセスで高減容固化でき、しかも核種保持能力に優れるとともに圧縮強度にも優れた固化体を得ることができるような放射性廃液の固化処理方法、およびこれを実施するに好適な放射性廃液の濃縮混練装置を提供することを目的としている。
【0014】
【発明の概要】
本発明に係る放射性廃液の固化処理方法は、加熱手段を有する混合槽に、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムまたはメタホウ酸ナトリウムを含有する放射性廃液を供給して90℃以上に加熱し、放射性廃液中の水分を蒸発させて該放射性廃液を濃縮減容し、次いで濃縮液を60℃以下に冷却して硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムまたはメタホウ酸ナトリウム塩を析出させてスラリーとした後、
得られた晶析スラリーに、固化材としての高炉スラグを含有するセメントおよび該セメントの硬化剤を供給して混練し、次いで混練物を混合槽外に抜き出して固化させることを特徴としている。
【0015】
本発明において、上記加熱手段は、混合槽の濃縮処理液面よりも下方位置に設けられており、この加熱手段は、熱媒体としてのスチームと、冷却媒体としての冷却水とを供給できる機能を兼備えたジャケットであることが望ましい。
【0016】
本発明では、混合槽の外周側壁上方部あるいは蓋体に設けられた冷却ジャケットに冷却水を回分的に流通させ、混合槽内の蒸発水分を冷却することにより凝縮させ、この凝縮水により混合槽の内壁面に付着した析出塩を濃縮処理液中に洗い流すこともできる。
【0017】
本発明に係る放射性廃液の濃縮混練装置は、放射性廃液を濃縮減容してスラリー化するための放射性廃液の濃縮混練装置であって、
混合槽内に供給された放射性廃液を加熱する加熱手段と、
前記放射性廃液、セメント材などを混合槽内で混合する撹拌機構とを備え、
前記加熱手段が、混合槽に供給された放射性廃液を加熱するために、混合槽の前記濃縮処理想定液面より下方位置に配設されており、
前記加熱手段と撹拌機構によって、混合槽内に供給された放射性廃液を加熱、混合することにより、放射性廃液中の水分を蒸発させて放射性廃液を濃縮減容化するとともに、
混合槽内に供給されたセメント材と前記濃縮減容化した放射性廃液とを混練してセメントスラリー化するように構成されている。
【0018】
上記濃縮混練装置では、前記加熱手段で加熱され蒸発した放射性廃液中の水分の一部を凝縮させて、混合槽内壁に沿って流下させて混合槽内に環流する冷却手段が、混合槽の上記加熱手段の上方位置に配設されていてもよい。
【0019】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る放射性廃液の固化処理方法、および放射性廃液の濃縮混練装置を具体的に説明する。
【0020】
放射性廃液の固化処理方法
本発明では、加熱手段を有する混合槽に、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムまたはメタホウ酸ナトリウムを含有する放射性廃液を供給して90℃以上に加熱し、放射性廃液中の水分を蒸発させて該放射性廃液を濃縮減容し、次いで濃縮液を60℃以下に冷却して硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムまたはメタホウ酸ナトリウム塩を析出させてスラリーとした後、
得られた晶析スラリーに、固化材としての高炉スラグを含有するセメントおよび該セメントの硬化剤を供給して混練し、次いで混練物を混合槽外へ抜き出して固化させている。
【0021】
本発明では、放射性廃液として、原子力発電所、核燃料再処理工場あるいは原子力研究施設から発生する種々の放射性廃液が固化処理されるが、これら放射性廃液は、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムまたはホウ酸を含有している。具体的にたとえば、沸騰水型(BWR)発電所から発生する硫酸ナトリウム含有廃液(通常濃度5〜25%の硫酸ナトリウム液)、加圧水型(PWR)発電所から発生するホウ酸含有廃液(通常ホウ素濃度で2%程度のホウ酸液)、再処理工場から発生する硝酸ナトリウム廃液などを固化処理することができる。ここで、ホウ酸含有廃液については、本発明の混合槽に供給する前に、従来行なわれる方法により水酸化ナトリウムを添加してNa/Bモル比が0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.1のメタホウ酸ナトリウム含有廃液としておく必要がある。
【0022】
以下、図1を参照しながら本発明に係る放射性廃液の固化処理方法を具体的に説明する。
濃縮混練装置1は、混合槽2と、この下方位置に設けられた加熱手段3を有しており、上部の蓋体には、蒸発水抜き出しライン4、放射性液体廃棄物(廃液)供給口5、セメント材供給口6、硬化剤供給口7が設けられており、混合槽2の底部にはスラリー排出口8が設けられている。
【0023】
本発明において、加熱手段3は、混合槽2の濃縮処理液面よりも下方位置に設けられているのが好ましい。この加熱手段3は、放射性廃液を90℃以上に加熱して水分を蒸発させ濃縮減容させることができれば、具体的にスチームジャケットであってもよく、あるいは内装電熱コイルであってもよいが、スチームジャケットであることが好ましい。特に熱媒体としてのスチームと、冷却媒体としての冷却水とを供給できる機能を兼備えたジャケットは、濃縮処理終了後にジャケット内にスチームに代え冷却水を流通させることによって濃縮液の温度を調節することができ好ましい。また前記加熱手段3が内装電熱コイルである場合には、内装電熱コイル近辺に冷却用ジャケットを設け、この冷却用ジャケットに冷却水を流通することによって濃縮液の温度を調節することができる。
【0024】
このような濃縮混練装置1により放射性廃液を固化処理するに際して、まず上記のような加熱手段3を有する混合槽2中に、廃液供給口5から放射性廃液を供給する。放射性廃液は、処理量全量を一度に混合槽2中に供給してもよいが、最初にある程度供給した後、水分を蒸発させながら追加供給することが望ましい。
【0025】
混合槽2中に供給された放射性廃液は、加熱手段3により加熱して濃縮減容し、次いで濃縮液を冷却して放射性廃液中の塩を析出させ、晶析スラリーとしている。
【0026】
加熱時に放射性廃液から蒸発した水分は、蒸発水抜き出しライン4から混合槽2外に排出される。濃縮液の冷却は、濃縮処理後のジャケットに冷却水を流すことにより行うことができる。
【0027】
上記において、放射性廃液の加熱は水分を蒸発させる温度、好ましくは90℃以上の温度で行なえばよいが、濃縮液の冷却温度は、60℃以下とする必要があり、好ましくは40〜55℃である。
【0028】
上記のような放射性廃液を加熱濃縮、冷却して晶析スラリーとする際には、廃液中に含まれる塩の種類、廃液温度によって塩の溶解度が異なるので、各廃液に応じて処理条件を選択することが望ましい。
【0029】
具体的に、放射性廃液が硫酸ナトリウムまたは硝酸ナトリウムを含有する放射性廃液である場合には、これらの化合物(塩)の飽和溶解度を越えて濃縮することが可能なので、加熱中にこれら塩の析出が見られ、したがって濃縮減容後に濃縮液を晶析スラリー状で得ることができる。
【0030】
一方放射性廃液がホウ酸ナトリウムを含有する放射性廃棄物である場合には、通常濃縮減容中には塩が析出せず、濃縮液を60℃以下に冷却することによりメタホウ酸ナトリウムが析出する。
【0031】
このような加熱濃縮処理において、硫酸ナトリウム廃液または硝酸ナトリウム廃液は、硫酸ナトリウムまたは硝酸ナトリウム濃度を40〜70重量%好ましくは50〜60重量程度に濃縮することができる。
【0032】
ホウ酸ナトリウム廃液は、メタホウ酸ナトリウム濃度で80〜90重量%好ましくは86〜88重量%程度に濃縮することができる。ホウ酸ナトリウム廃液はたとえば塩濃度88%で100℃まで加熱しても濃縮処理液中に塩の析出は見られないので、装置壁面などへの塩析出付着を生じにくく、高濃度に濃縮することができる。
【0033】
本発明の好ましい実施様態においては上記のように濃縮処理液面の下方に設けられた加熱手段3によって濃縮処理を行っており、濃縮処理液面より上方部壁面は加熱されず、したがって混合槽の上部内壁面には塩(特に硫酸ナトリウム)が析出付着しにくい。すなわち混合槽の外周部全面に加熱手段を付設して、混合槽全面で加熱すると、濃縮処理液の気液界面付近は濃縮と乾燥が繰り返されて、塩(特に硫酸ナトリウム)が混合槽内壁面に硬く固着する現象が生じやすいが、加熱手段を濃縮処理液面より下方に設けると、このような気液界面付近での混合槽内周面への塩の固着を効果的に防止できる。なお混合槽の内周面に塩が固着すると、濃縮混練装置を正常に作動させることが困難になり、また強力な洗浄が必要になることに加え、洗浄廃液処理タンクなどを大型化させ、二次廃棄物の処理費が増大する。
【0034】
本発明では、混合槽2の外周側壁上方部あるいは蓋体に冷却ジャケット10を設け、該冷却ジャケットに冷却水を回分的に流通させ、混合槽2内の蒸発水分を冷却することにより凝縮させ、内壁面あるいは内蓋体に析出付着した結晶を濃縮処理液中に洗い流すこともできる。特に硫酸ナトリウムまたは硝酸ナトリウムを含有する放射性廃液を処理する場合には、加熱中にこれらの塩の析出が始まるので、この手段を備えることが好ましい。
【0035】
また上記のような濃縮混練装置1は、モータMによって駆動される攪拌機能9を有していることが望ましく、攪拌することにより、濃縮により析出した結晶塩の沈降による伝熱効率の低下を防止することができる。
【0036】
また撹拌回転数を増加させると、濃縮処理液に渦流が生じ、液位が上昇するため伝熱面を大きく設計することもできる。結果として、蒸発速度を増加させることが可能となる。
【0037】
上記のように混合槽2内で廃液を晶析スラリーにした後、次いで該混合槽2に、セメント系固化材を加えて混練する。
本発明では、このセメント系固化材として特に高炉スラグを主成分とするセメント(SC)およびセメント硬化剤を用いている。
【0038】
本発明で用いられる高炉スラグを主成分とするセメント(SC)は、「潜在水硬性セメント」に分類されるものであり、例えば高炉水砕スラグ(新日鉄社製)、シリカフューム(日本重化学工業社製)、針状無機質粉末ウォラストナイト等の混合物である。
【0039】
上記のようなセメントは、晶析スラリー100重量部に対して、40〜250重量部、好ましくは65〜250重量部の量で加えることが望ましい。
またセメント硬化剤としては、アルカリ硬化剤が好ましく、具体的には、25重量%NaOH水溶液を用いることが望ましい。
【0040】
セメント硬化剤は、セメント100重量部に対して、5〜15重量部、好ましくは7〜12重量部の量で加えることが望ましい。
また本発明では、上記セメントおよびセメント硬化剤に加えて、必要に応じて分散剤、例えばアクリル酸・マレイン酸共重合物(9:1)のナトリウム塩を添加することもできる。
【0041】
上記のようなSCを含むセメント系固化材の詳細については、本願出願人により先に出願された特願平7−270171号に記載されており、本発明においても該出願明細書に記載された技術を利用することができる。
【0042】
固化材を加えてから、混練は通常3〜5分行なわれる。
なお硫酸ナトリウム廃液の場合は、この混練は通常32℃以上で、好ましくは35℃〜45℃の温度で行われることが望ましい。たとえば32℃以下に冷却すると、析出塩が硫酸ナトリウム無水塩から10水塩に転移しやすく、混練スラリー中の水分が失われてスラリーの流動性が低下しやすい。
【0043】
上記のようにして得られた混練スラリーは、次いで濃縮混練装置のスラリー排出口8から抜き出して、常法により固化させる。
本発明では、固化材として上記のような高炉スラグセメントおよびセメント硬化剤を用いることにより、放射性廃液を高濃度に濃縮した晶析スラリーとした後でも、セメント混練スラリーのフロー値は、通常180〜300mm以上、好ましくは250〜300mmであり、流動性に優れている。
【0044】
またセメント系固化材を加える際に、晶析スラリーの温度は前述のように60℃以下に冷却されており、晶析スラリーとセメント材との混練および排出時に、混練物の流動性を充分に維持することができる。なお高温のままの廃液濃縮液と上記の高炉スラグを主成分とするセメント材とを混練すると、水和反応(硬化)が促進され、混練物を混合槽2から排出する際に充分な流動性が得られないことがある。
【0045】
上記のような本発明によれば、核種保持能力に優れ、しかも圧縮強度にも優れた固化体が得られる。
また本発明では、放射性廃液を高減容固化することができ、たとえばBWR発電所廃液(硫酸ナトリウム含有廃液)について、硫酸ナトリウム濃度60%の濃縮処理液とすることができ、最終的に約110kg/200Lドラムの量(充填率30%)で固化処理することができる。したがって従来のセメント固化処理による充填量約30kg/200L(充填率8%)ドラムに比べて3倍以上の充填量を達成することができ、すなわち埋設廃棄物量(発生ドラム数)を3分の1に低減することができる。
【0046】
またPWR発電所廃液(ホウ酸含有廃液)については、改良型セメントプロセス(AC)およびアスファルト固化プロセスと同等の充填量を達成することができる。具体的に、塩濃度88%まで濃縮して、メタホウ酸ナトリウム・4水塩として固化体充填率60%を達成することができる。
【0047】
しかも本発明では、上記のような高減容固化を簡素なプロセスで行うことができ、ホウ酸含有廃液については不溶化工程、脱水工程、再濃縮工程などの前処理工程が省略されるので、AC法に比べてプロセスを簡素化することができ、設備面においても優れている。
【0048】
放射性廃液の濃縮混練装置
本発明に係る放射性廃液の濃縮混練装置は、放射性廃液を濃縮減容してスラリー化するための放射性廃液の濃縮混練装置であって、
混合槽内に供給された放射性廃液を加熱する加熱手段と、
前記放射性廃液、セメント材などを混合槽内で混合する撹拌機構とを備え、
前記加熱手段が、混合槽に供給された放射性廃液を加熱するために、混合槽の前記濃縮処理想定液面より下方位置に配設されており、
前記加熱手段と撹拌機構によって、混合槽内に供給された放射性廃液を加熱、混合することにより、放射性廃液中の水分を蒸発させて放射性廃液を濃縮減容化するとともに、
混合槽内に供給されたセメント材と前記濃縮減容化した放射性廃液とを混練してセメントスラリー化するように構成されている。
【0049】
上記加熱手段は、スチームジャケットであってもよく、あるいは内装電熱コイルであってもよいが、熱媒体としてのスチームと冷却媒体としての冷却水を供給できる機能を兼備えたジャケットであることが好ましい。
【0050】
本発明に係る放射性廃液の濃縮混練装置において、加熱手段としてジャケット3を有する態様例を図1に示す。図1中、各符号の説明は前述したとおりである。
【0051】
上記濃縮混練装置では、前記加熱手段で加熱され蒸発した放射性廃液中の水分の一部を凝縮させて、混合槽内壁に沿って流下させて混合槽内に環流する冷却手段10が、混合槽の上記加熱手段の上方位置に配設されていてもよい。
【0052】
本発明に係る放射性廃液の濃縮混練装置は、上記のような放射性廃液の固化処理方法を好適に実施するすることができる。
【0053】
【発明の効果】
上記のような本発明によれば、放射性廃液を、簡素化されたプロセスによって、高減容固化して、高充填固化体にすることができる。この固化体は、核種保持能力に優れ、しかも圧縮強度にも優れており、陸地埋設廃棄体に適応する。
【0054】
さらに本発明では、BWR発電所、PWR発電所、再処理工場などから発生する種々の放射性廃液にかかわらず、高減容固化することができる。
本発明によれば、埋設廃棄物量を低減することができる。
【0055】
また本発明では、放射性廃液の濃縮固化処理を、特に前処理用装置を用いなくても濃縮混練装置によって行うことができ、設備面でも優れている。
【0056】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
以下の実施例では、図1に示すような濃縮混練装置として、上部ジャケット10と、混合槽2の下部に混合槽2の1/3高さまで設けられたジャケット3とを有し、各ジャケットにそれぞれスチーム、冷却水を供給できるような構造のヘンシェルミキサーを用いた。
【0058】
【実施例1】
模擬廃液として25%硫酸ナトリウム溶液を用いて、廃液の濃縮・固化試験を実施した。
【0059】
上記のようなヘンシェルミキサーの混合槽に、上記模擬廃液を50kg供給した後、下部ジャケットにスチームを供給して模擬廃液を103〜105℃に加熱昇温し、コンデンサーから凝縮水が発生した後、模擬廃液を追加供給した。
【0060】
最終的に模擬廃液を全量で151kg供給し、101kgの水を混合槽から排出し、硫酸ナトリウム濃度50%まで濃縮減容し、濃縮液を得た。
次いで下部ジャケットにスチームに代えて冷却水を供給し、得られた濃縮液を40℃まで冷却した。
【0061】
次いで得られた晶析スラリーに、SC材としての高炉スラグ(新日本製鉄株式会社製エスメントスーパー100P)、シリカヒューム(日本重化学工業株式会社製)、ウォラストナイトを8:1:1(重量比)で混合したものを98.5kg、分散液としてのアクリル酸・マレイン酸共重合物(9:1)のナトリウム塩を5.4kg、アルカリ硬化剤としての25wt%NaOH水溶液を9.3kg供給して5分間混練した後、全量をドラム缶に移して固化させ、100Lの固化体を得た。
【0062】
固化体中の硫酸ナトリウム充填率は20%であった。
ドラム缶に移す際の流動性はフロー値300mm以上で良好であった。
硬化後にブリージングは見られなかった。
【0063】
硬化後の固化体の圧縮強度は200kg/cm2 であった。
【0064】
【実施例2】
模擬廃液として25%硫酸ナトリウム溶液を用いて、廃液の濃縮・固化試験を実施した。
【0065】
上記ヘンシェルミキサーの混合槽に、模擬廃液を80kg供給した後、下部ジャケットにスチームを供給して模擬廃液を103〜106℃に加熱昇温し、コンデンサーから凝縮水が発生した後、模擬廃液を追加供給した。
【0066】
最終的に模擬廃液を全量で240kg供給し、140kgの水を混合槽から排出し、硫酸ナトリウム濃度60%まで濃縮減容し、濃縮液を得た。
加熱濃縮の間、上部ジャケットに冷却水を間欠的に流し、実験終了後、混合槽側壁を観察したところ、該側壁への塩の付着は見られなかった。
【0067】
下部ジャケットにスチームに代えて冷却水を供給し、得られた濃縮液を40℃まで冷却した。
次いで得られた晶析スラリーと、実施例1と同様のSC材を87.2kg、分散液を4.8kg、硬化液を8.2kg供給して5分間混練した後、全量をドラム缶に移して固化させ、100Lの固化体を得た。
【0068】
固化体中の硫酸ナトリウム充填率は30%であった。
ドラム缶に移す際の流動性はフロー値300mm以上で良好であった。
硬化後にブリージングは見られなかった。
【0069】
硬化後の固化体の圧縮強度は380kg/cm2 であった。
【0070】
【実施例3】
模擬廃液として52.3%メタホウ酸ナトリウム・4水塩溶液を用いて、廃液の濃縮・固化試験を実施した。
【0071】
上記ヘンシェルミキサーの混合槽に、上記模擬廃液を63kg供給した後、下部ジャケットにスチームを供給して模擬廃液を105〜112℃に加熱昇温し、コンデンサーから凝縮水が発生した後、模擬廃液を追加供給した。
【0072】
最終的に模擬廃液を全量で185.1kg供給し、71.8kgの水を混合槽から排出し、メタホウ酸ナトリウム・4水塩濃度86%まで濃縮減容した。
下部ジャケットにスチームに代えて冷却水を供給し、この濃縮液を44℃まで冷却すると晶析が始まり、54℃まで温度上昇した。
【0073】
得られた晶析スラリーに、実施例1と同様のSC材を54.1kg、分散液を3.3kg、硬化液を3.8kg供給して5分間混練した後、全量をドラム缶に移して固化させ、100Lの固化体を得た。
【0074】
固化体中のメタホウ酸ナトリウム充填率は54%であった。
ドラム缶に移す際の流動性はフロー値300mm以上で良好であった。
硬化後にブリージングは見られなかった。
【0075】
硬化後の固化体の圧縮強度は270kg/cm2 であった。
【0076】
【実施例4】
模擬廃液として50%メタホウ酸ナトリウム・4水塩溶液を用いて、廃液の濃縮・固化試験を実施した。
【0077】
ヘンシェルミキサーの混合槽に、上記模擬廃液を80kg供給した後、下部ジャケットにスチームを供給して模擬廃液を105〜112℃に加熱昇温し、コンデンサーから凝縮水が発生した後、模擬廃液を追加供給した。
【0078】
最終的に模擬廃液を全量で201kg供給し、87.3kgの水を混合槽から排出し、メタホウ酸ナトリウム・4水塩濃度88%まで濃縮減容した。
下部ジャケットにスチームに代えて冷却水を供給し、この濃縮液を冷却すると44℃で晶析が始まり、54℃まで温度上昇した。
【0079】
得られた晶析スラリーに、実施例1と同様のSC材を47.1kg、分散液を2.9kg、硬化液を3.4kg供給して5分間混練した後、全量をドラム缶に移して固化させ、100Lの固化体を得た。
【0080】
固化体中のメタホウ酸ナトリウム充填率は60%であった。
ドラム缶に移す際の流動性はフロー値180mmであった。
硬化後にブリージングは見られなかった。
【0081】
硬化後の固化体の圧縮強度は230kg/cm2 であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る放射性廃液の濃縮混練装置において、加熱手段としてジャケットを有する態様例で示すとともに、本発明に係る放射性廃液の固化処理プロセスを示す。
Claims (6)
- 加熱手段を有する混合槽に、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムまたはメタホウ酸ナトリウムを含有する放射性廃液を供給して90℃以上に加熱し、放射性廃液中の水分を蒸発させて該放射性廃液を濃縮減容し、次いで濃縮液を60℃以下に冷却して硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムまたはメタホウ酸ナトリウム塩を析出させてスラリーとした後、
得られた晶析スラリーに、固化材としての高炉スラグを含有するセメントおよび該セメントの硬化剤を供給して混練し、次いで混練物を混合槽外に抜き出して固化させることを特徴とする放射性廃液の固化処理方法。 - 加熱手段が混合槽の濃縮処理液面よりも下方位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の固化処理方法。
- 加熱手段が、熱媒体としてのスチームと、冷却媒体としての冷却水とを供給できる機能を兼備えたジャケットであることを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の固化処理方法。
- 混合槽の外周側壁上方部あるいは蓋体に設けられたジャケットに冷却媒体としての冷却水を回分的に流通させ、混合槽内の蒸発水分を冷却することにより凝縮させ、この凝縮水により混合槽の内壁面に付着した析出塩を濃縮処理液中に洗い流すことを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の固化処理方法。
- 放射性廃液を濃縮減容してスラリー化するための放射性廃液の濃縮混練装置であって、
混合槽内に供給された放射性廃液を加熱する加熱手段と、
前記放射性廃液、セメント材などを混合槽内で混合する撹拌機構とを備え、
前記加熱手段が、混合槽に供給された放射性廃液を加熱するために、混合槽の前記濃縮処理想定液面より下方位置に配設されており、
前記加熱手段と撹拌機構によって、混合槽内に供給された放射性廃液を加熱、混合することにより、放射性廃液中の水分を蒸発させて放射性廃液を濃縮減容化するとともに、
混合槽内に供給されたセメント材と前記濃縮減容化した放射性廃液とを混練してセメントスラリー化するように構成したことを特徴とする放射性廃液の濃縮混練装置。 - 前記加熱手段で加熱され蒸発した放射性廃液中の水分の一部を凝縮させて、混合槽内壁に沿って流下させて混合槽内に環流する冷却手段が、混合槽の前記加熱手段の上方位置に配設されていることを特徴とする請求項5に記載の放射性廃液の濃縮混練装置。
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