JP3756026B2 - 送電線の故障点標定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、風雨,氷雪,落雷,樹木・飛来物の接触あるいは鳥獣害等の種々の原因により送電線に事故が発生した場合にその事故区間及び事故地点を特定する送電線の故障点標定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる送電線の故障点標定方法としては、従来、キルヒホッフの第二法則に基づくインピーダンス形が主流であったが、送電回路にキルヒホッフの第一法則及び第二法則を適用したマトリックス演算形が一部実用化されている。
後者の方式は、事故に関係するなるべく多くの情報を取り込み、それをキルヒホッフの法則で定式化し、電線回路の式と事故地点での式とを導出してこれをニュートン・ラフソン法で解くもので、事故線数が多い場合に前者の方式よりも標定精度が高いと考えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来構成では、事故区間及び事故地点の標定精度が必ずしも十分ではなく、標定精度の一層の向上が望まれていた。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、事故区間及び事故地点の標定精度の向上を図る点にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記請求項1記載の構成を備えることにより、事故前の系統状態を示す発電機及び前記負荷の電力情報(例えば、テレメーター情報含んで、送電回路をキルヒホッフの第一及び第二法則で定式化し、これに事故時の電圧検出手段及び電流検出手段の計測値の式を付加し、マトリックス演算によって健全線を特定することにより変数を減少させる。
これによって、事故が生じていない健全線に関する変数は連立方程式から除外することが可能となり、連立方程式の冗長度を増大させて、変数の数に対して利用できる情報量が多くなる。
また、このように冗長度を増大させることによって誤差を含む要素を抑制することが可能となる。
もって、送電線の事故区間及び事故地点の標定精度の向上を図ることができるに至った。
【0005】
又、上記請求項2記載の構成を備えることにより、電圧・電流非計測端の事故中の振る舞いを事故前の前記発電機及び前記負荷のテレメーター情報と潮流計算結果から求めた等価回路で模擬し、前記送電回路の各ノードにキルヒホッフの第一法則を適用し、前記発電機は内部誘起電圧が一定の三相電源とリアクタンスの直列回路で模擬し、前記負荷は事故中に電流が変化しない定電流特性負荷で模擬することにより前記送電回路の定式化を行う。
すなわち、送電回路を定式化するにあたって、上述のようにして、送電線に接続される発電機や負荷を模擬してキルヒホッフの第一法則を適用することで、必ずしも発電機や負荷の接続箇所において直接的に電流・電圧を測定しなくても、事故区間及び事故地点の特定を行うことができ、装置の設置負担の軽減等を図ることが可能となる。
【0006】
又、上記請求項3記載の構成を備えることにより、各送電線を線路亘長に比例する相互インピーダンスとπ形回路で模擬した対地静電容量とで模擬することにより前記送電回路の定式化を行う。
これによって、送電線の簡素且つ的確な定式化が可能となる。
【0007】
又、上記請求項4記載の構成を備えることにより、送電線の接続点間の区間夫々の回路方程式をキルヒホッフの第一法則で結合し、これに前記電圧検出手段及び電流検出手段の計測値の式を付加して、左辺を変数マトリックスとし且つ右辺を定数マトリックスとするマトリックス演算式を作成し、前記左辺の変数マトリックスを、新たな変数を定義することにより少なくとも後の処理で利用する成分については要素が定数のみからなる線形なマトリックスに変形することにより前記送電回路の定式化を行う。
従って、変数の部分と定数の部分とを分離してマトリックスを作成することで、後のマトリックス演算を容易に行うことができる。
【0008】
又、上記請求項5記載の構成を備えることにより、事故地点の相対位置をkとして事故点電流if とk・if だけを変数とするマトリックスとなるように予め前記送電回路の定式化を行い、事故時において電圧検出手段及び電流検出手段の計測値と前記右辺の定数マトリックスとの演算から定数ベクトルを作成し、これによって得られる複素連立方程式を解く。
すなわち、事故前に処理できることは予め処理しておき、事故発生時において事故区間及び事故地点を特定するために必要な処理を少なくすることができ、事故区間及び事故地点の特定を迅速に行うことができる。
【0009】
又、上記請求項6記載の構成を備えることにより、前記事故点電流if とk・if だけを変数とするマトリックスにおいて、区間の中央地点で事故が発生したと仮定して事故点電流if を求め、健全線か否かを識別するための設定値より少ない場合、その線を健全線と判定して前記事故点電流if とk・if だけを変数とするマトリックスにおける該当する線の事故点電流if をif =0として、従ってk・if =0として、これによって得られる複素連立方程式を解く。
すなわち、ある線で事故が発生したものと仮定した場合に流れる事故点電流を求めて、その求めた事故点電流の値が事故点電流として妥当なものか否かによって、その線が健全線か否かを判別するのであり、健全線か否かの判断を容易且つ簡便に行える。
送電線の事故の約95%は、3線以下の事故であるので、上述のように健全線を判定することで、変数を大きく減らすことができ、マトリックスの対角化等により極めて容易に且つ精度良く事故区間及び事故地点を特定できる。又、故障点電流が小さい微地絡の場合でも精度良く解を求めることが可能となる。
【0010】
又、上記請求項7記載の構成を備えることにより、前記事故点電流if とk・if だけを変数とするマトリックスにおいて、前記複素連立方程式の式の数が変数の数より大であるときは、前記事故点電流if とk・if だけを変数とするマトリックスをマトリックスの対角化によって直接解くことにより前記相対位置kを求め、前記式の数が変数の数より小であるときは、ニュートン・ラフソン法によって前記相対位置kを求める。
すなわち、複素連立方程式の式の数に余裕があるときは、直接的に式を解いて単純な処理で精度の良い解を求め、余裕がないときは、ニュートン・ラフソン法による繰り返し計算で極力精度の良い解を求めて、状況に応じて可及的に事故区間及び事故地点の標定精度の向上を図るのである。
【0011】
又、上記請求項8記載の構成を備えることにより、送電線の接続点間の区間毎に事故地点の相対位置kを求め、その求めた値が、0〜1.0の範囲にあるとき、その区間が事故区間であると特定する。
従って、送電線の接続点間の区間毎に事故地点の相対位置kを求めることで、事故区間を的確に特定できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明を、三相交流2回線送電線の3端子系統構成に適用した場合の実施の形態について説明する。
以下、等価回路の基本的な考え方から順次説明する。
1.故障点標定の基本式
故障点標定の基礎理論はキルヒホッフの第一,第二法則を使って事故現象を定式化し,この非線形方程式から事故点の位置と事故点の抵抗値を求めるものであるが,この理論が広い分野で一般的に適用できるようマトリックスの表現と解法にいくつかの工夫をしている。
【0013】
以下、図1に示す三相交流2回線送電線の3端子系統構成を対象に説明する。送電線の接続点から接続点までを区間と呼び,図1は3区間で構成されているとする。送電線の亘長上において,短絡・地絡などの事故が発生したときに,事故区間と事故地点を算出する。電気所の母線には発電機,負荷が接続されるが送電線の分岐点には接続されない。本例では区間1の母線1側の情報を取り込むように電圧検出手段としてのPT(変成器)及び電流検出手段としてのCT(変流器)が配置されている。遠隔地点の発電機出力計量装置WG,変電所負荷計量装置WLの測定情報がテレメーターで演算処理装置に入力されている。この故障標定理論では、複数地点の同時事故は考慮せず(両端計測方式では解けるが地点多重事故は極めて少ない),いずれかの区間の一ヶ所とする。分岐点の近くで事故が発生した場合事故区間を判定できないことがあるので,各区間で事故があると仮想し事故点の位置をそれぞれ求めることとする。
【0014】
1.1事故区間におけるキルヒホッフの式
一つの区間を各相毎に表示したのが図2である。1号線1L,2号線2Lにまたがる事故が発生するので,相をNo.1〜No.6により表示する。送電線の送受端子の電圧,電流に添え字S,Rを付け表示してある。kは事故点までの距離で全長を1とおいた割合によって相対位置として示してあり,S端子至近端事故のときk=0である。以下の式の展開でベクトルを小文字の太字(2回線送電線の場合,6次ベクトル),行列を大文字の太字(6×6次,3×3次)で表現する。但し、明細書本文の文章中及び式に一部においては、ベクトル又はマトリックスであっても表記の都合上通常の文字によって表示している。
S は事故点のS側各相電流、hR は事故点のR側各相電流、vf は事故点の各相電圧、if は事故点の各相電流、r(1)〜r(6)は各相の事故点抵抗、it は塔脚電流、ut は鉄塔の電位、zt は塔脚インピーダンス、Zは送電線の相互インピーダンス、yは各線の対地静電容量である。これらの諸元で事故区間の電圧,電流の関係を定式化すると(1)〜(8)となる。ここで各変数v,i,h,ut は複素数で,k,rは実数である。
【数1】
Figure 0003756026
(1)〜(6)の式を変数を共通にしてマトリックス表現すると(9)式となる。
【数2】
Figure 0003756026
S ,iR にかかるマトリックスの要素に変数を入れないように、新たに変数k・if を変数として設定して、(9)式を更に対角化すると(10)式となる。
【数3】
Figure 0003756026
(10)式で送電線の両端電流が、両端電圧vS ,vR と事故点電流if の関数として表せることがわかる。F4 ,F5 の部分の式を事故区間の式として後で使用する。
【0015】
1.2 発電機と負荷の模擬
両端計測方式の場合(10)式のiS ,iR ,vS ,vR が既知であり連立方程式は解けるが,片端計測方式の場合更に式を増す必要がある。事故前のテレメーター値あるいは推定値を使い発電機と負荷を等価回路で定式化し,各ノードにキルヒホッフの第一法則を適用する。
【0016】
(1)事前潮流計算
図1で発電機出力と負荷の値がそれぞれWG ,WL で与えられ,計測端の電圧,電流が与えられた場合,遠隔端子のノード電圧は潮流計算で求めることができる。さらに,この電圧とWG ,WL から,負荷と発電機の等価回路を次のように求める。
【0017】
(2)発電機の等価回路
発電機を、図3に示すように、3相対称内部誘起電圧eG と直列インピーダンスzG で表すと,発電機端子電圧vG と相電流iG の関係は(11)式の通りとなる。
【数4】
Figure 0003756026
(11)式の内部誘起電圧eG とインピーダンスzG は次の2点を満足するように設定する。
・事故前の発電機出力がWG であること。
・発電機の至近端事故での故障電流が発電機の次過渡リアクタンス(xd '')で短絡されたものに等しいこと。
一般に事故前の端子電圧をvGOとすると内部誘起電圧eGO
GO=vGO+jxd ''・(WG * /vGO * ) ………… (12)
但し,*は共役を表す。
発電機の次過渡リアクタンスは運転状態に関係ないので
y=1/jxd ''
G =yG GO−YG G =iGO−YG G ………… (13)
(13)式の第2項は定数マトリックスに組み込むことができる。第1項は発電機出力によって決まる固定分で事前に設定する。以下の式の展開ではiGOをiG と読みかえて表現する。
【0018】
(3)負荷の等価回路
負荷の電圧特性は通常定インピーダンス特性,定電流特性,定電力特性に分類されている。全国的調査結果によると定電力特性60%,定インピーダンス特性40%の割合が実測に近いことがわかっており,ここでは定電流特性を採用することする。事故前の負荷をWL ,電圧をvLOとすると,負荷電流iL は,
L =(WL /vLO* ………… (14)
で表わされる。
【0019】
1.3各区間マトリックスの統合
図1の3端子送電線を例にしてマトリックスを統合し,全系の電圧・電流の関係を定式化する。
(イ)キルヒホッフの第2法則
(10)式のF4 及びF5 を各区間に適用すると(15)式のF-2nd部分となる。
(ロ)キルヒホッフの第1法則
ノード1は計測端であるので除き,その他のノードについてキルヒホッフの第一法則を適用するとF-1stの部分の式となる。右辺のiG ,iL は前節の式から求めるもので運用状態によって変化する可変部分である。
(ハ)電圧等式
送電線の分岐点あるいは電気所の母線で送電線は接続される。一方ここでは送電線の両端電圧は区間毎,個別の変数として扱っているので区間接続の式が必要になる。それが(15)式のF-VEQの部分となる。
(ニ)PT,CT計測値の式
図1で母線の電圧はPTで送電線の電流はCTで計測される。この計測値をもとにして事故様相を特定する。
【数5】
Figure 0003756026
(15)式のFPCT の部分がそれで,片端,両端計測それぞれについて,変数と計測値を対応させる。右辺の定数マトリックスは適用する送電線毎にあらかじめ計算され,計測値を代入すると列ベクトルbW となる。
W =〔iG ,iL ,vPT,iCT1 ,iCT2 T ………… (16)
【0020】
1.4 統合マトリックスの対角化
(15)式を対角化すると(17)式となる。
最終的に事故点の位置kと事故点抵抗r1 〜r6 を求めたいわけであるが,状態変数を減らして方程式をコンパクトにするための手順を順次説明する。(17)式で事故点電流 f を表すマトリックスDf は(15)式の対角化で一度の計算されているが、仮想する事故区間によって対象とする一つが選択される。
【数6】
Figure 0003756026
(17)式の非対角化行の式を新しく定義したDf ,DB マトリックスで表すと(18)式となる。
【数7】
Figure 0003756026
1.5 連立方程式の作成
故障点標定に関係する基本式を縮約したわけであるが、残ったのはk,if の関係を示すコンパクトな(18)式となった。(18)式の変数と式の数を図1の例で示すと、変数の数に関しては、複素数のif が6個、実数のkが1個の計13個となり、又、式の数に関しては、複素数の式が6本で計12個となる。従って、(18)式だけではkを求められない。
【0021】
2.連立方程式の解法
(18)式は事故前の系統状態と事故中の計測端の情報をすべて含んでおり,この連立方程式を解いて事故点の位置kを求める。
2.1 両端計測方式
複数の接続点で変成器PT等の計測情報が得られる両端計測方式では、式の数が変数の数に比較して余裕がある場合(18)式からkを解くことは容易である。
(18)式を単位化し、(19)式の通りk・if とif を右辺定数で表し、その比からkが求まる。尚、右辺DB は固定マトリックスで事前に設定されており、事故時入力データとの演算で列ベクトルbk が計算される。
すなわち、
【数8】
Figure 0003756026
(i) =(k・if(i))/if(i)=bk(1+6)/bk(i)
kは各線毎に求まり、その平均値kavを事故点の位置とする。
【数9】
Figure 0003756026
2.2 片端計測方式
(1)解法
(18)式のDfは、(6×12)の次数を持つマトリックスでこの左半分を対角化したあとのマトリックスを(20)のようにDK ,DBKとする。
1・if +kDK f =DBK・bW …………… (20)
((20)式において、「1」は単位行列を示す)
更に右辺定数項をbK とすると(21)式が得られる。
【数10】
Figure 0003756026
ここで、事故地点を区間の中央と仮定して、すなわち
f =(1+kDK -1k …………… (22)
において、k=0.5として事故点電流if を求める。
このように求めたif の値が、設定しきい値(例えば、if の最大値の1/2)より少ない電線の場合、その線を事故が発生していない健全線と判定して、その線(n)に関するif(n)とk・if(n)とを変数から消去する。
【0022】
(1−1) 複素連立方程式の式の数と変数の数との差が大であるとき
例えば、#4〜#6線が健全線の場合、(21)式は(23)式となり、
【数11】
Figure 0003756026
左辺のk・if の部分を対角化すると(24)式となり、この時の右辺定数ベクトルbKuは、if とk・if の解となり、(25)式から#n線のkが求まる。
(n) =k・if(n)/if(n)=bKu(n) /bKu(n+3) …… (25)
このようにして求めたk(n) が0〜1.0の範囲にあるとき、その区間が事故区間であると特定する。
又、kの平均値kavは(26)式から求まる。
av=(1/3)Σk(n) …………… (26)
尚、事故線数が少なく(23)式の変数の数が6より少ない場合、k・if の列の要素の値が大きい行を選び式の数と変数の数とを等しくして対角化を行い、k(n) の標定精度の向上を図る。
【0023】
(1−2) 複素連立方程式の式の数と変数の数との差が小であるとき
健全線と判定できる線の数が少なく、複素連立方程式の式の数と変数の数との差が小であるとき、ニュートン・ラフソン法の繰り返し計算によって相対位置kを求める。より具体的には、健全線とは判定できず事故を起こしている可能性のある線夫々についてif とk・if とを独立した変数と考え、夫々の式をk,if (n) について偏微分する形でニュートン・ラフソン法を適用して、繰り返し計算によりkの修正量Δkが許容値より小さくなったときに計算を終了し、kを求める。
そのようにして求めたkが0〜1.0の範囲にあるとき、その区間が事故区間であると特定する。
(1−3) 健全線の数が零である場合
この場合は、上述のように(18)式のみでは、解を求めることができないので、更に式を追加して連立方程式を解く。
具体的には、事故点ブランチの式すなわち計測端のCT計測値から事故点の塔脚電流it を、
【数12】
Figure 0003756026
と推定して、(7)式に代入することにより式を追加できる。尚、この式で、YSUM は、CT設置点から見た対地充電容量の合計値である。
この後、連立方程式をニュートン・ラフソン法の繰り返し計算によって相対位置kを求める。
そのようにして求めたkが0〜1.0の範囲にあるとき、その区間が事故区間であると特定する。
【0024】
(2)標定精度
(23)式〜(26)式による解法の精度が従来の非線形連立方程式をニュートン・ラフソン法で解く方法よりも優れていることを図2のような2端子2回線送電線を例に説明する。非計測端には定電流負荷iL が接続されており、左辺DK ,右辺DBKマトリックスは、(27)式で表すことができる。
【数13】
Figure 0003756026
この式でDは以下の式で定義されるものである。
2回線送電線における6線間の相互インピーダンスをZとして、Z-1を4分割してA1 〜A4 とする。
【数14】
Figure 0003756026
ここで、
D≡A12 -1(A1 +A2 +A3 +A4 ) ……………… (29)
と定義する。
通常、送電線は、1号線と2号線とで対象配置となっており、
1 =A4 ,A2 =A3 ,A12=A34 …………… (30)
が成立する。
(30)式の関係があるので、(29)式のDは(31)式のように単位行列となる。
D=A12 -1(2A12)=2・1 …………… (31)
((31)式の最右辺で「1」は、単位行列である)
(30),(31)を(27)式の代入すると(32)式が得られる。
【数15】
Figure 0003756026
(23)式の例のように、#4〜#6線が健全線の場合、#1〜#3の事故線(n)について、
(n) =(k・if(n))/if(n)
=(2iCT2(n)−iL(n))/(iCT1(n)+iCT2(n)−iL(n)
………… (33)
となり、この(33)式からkが求まる。(33)式は送電線の相互インピーダンスZの影響を受けないことがわかる。すなわち、A相,B相,C相の夫々に健全線が1本以上あれば(33)式からkが求まり、送電線の相互インピーダンスの影響を受けない。
(32)式を合計し、零相CT電流をI01,I02とすると、(34)式が得られる。
k=2I02/(I01+I02) ………… (34)
但し、
【数16】
Figure 0003756026
このように、負荷電流iL の影響を受けない単純な式となる。すなわち1線地絡事故(1φG)の場合には負荷電流の影響を受けないことになる。
一般に、送電線の相互インピーダンスZや負荷電流iL は正確な特定が必ずしも容易ではなく誤差要因となるため、上述のようにそれらの影響を受けずに事故地点の相対位置kが特定できることで、相対位置kの標定精度が高いことがわかる。
【0025】
3. シミュレーション計算例
以上説明した解法の実用性を検証するためプログラムを作成し、154kV2回線2端子送電線(101.5km)を対象にシミュレーションを計算した。受電端には240MWの発電機と300AのNGR(変圧器中性点接地抵抗)を接続し、事故電流は汎用回路解析プログラムであるEMTPで求めた。
表1にこのシミュレーション結果を示す
【表1】
Figure 0003756026
表1において、「従来型」として示しているのは、従来のニュートン・ラフソン法によるものであり、k=0.5,Rf=500Ωの1線地絡事故(1φG)に対し、標定誤差は20.6%と実用性に乏しい状態であった。
これに対して、表1において「新型」として示す本発明を適用した場合は、−2.6%と桁違いに精度が上がっている。2φG(2線地絡事故),3φG(3線地絡事故)についてもこの傾向は同じである。
500Ωの地絡は154kVでは30%程度のVoであり、本発明を適用した場合は非常に高感度であることが分かる。
【0026】
4. 故障点標定装置
以上説明した送電線の故障点標定方法の処理を、図1に示す演算処理装置OPに実行させることによって、送電線の故障点標定装置を構成することができる。
前記送電回路の定式化を、事故地点の相対位置をkとして事故点電流if とk・if だけを変数とする上記(20)式又は(21)式のマトリックスとなるように行って、予め、演算処理装置OPに備えられたメモリ等の記憶手段に記憶しておき、事故時においてPT計測値及びCT計測値と右辺の定数マトリックスとの演算から定数ベクトルを作成し、これによって得られる複素連立方程式を解くことにより、事故区間及び事故地点を特定する。複素連立方程式を解く過程は、(22)式以降で説明した通りである。
【0027】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
▲1▼ 上記実施の形態では、本発明を三相交流2回線送電線の3端子系統構成に適用した場合を例示しているが、その他の種々の系統構成に適用できるのは明らかである。
▲2▼ 上記実施の形態では、健全線を特定するためにk=0.5を(22)式に代入しているが、このときのkの値は0.5近辺の値であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる電力系統のシステム構成図
【図2】本発明の実施の形態にかかる2回線送電線の事故区間の等価回路
【図3】本発明の実施の形態にかかる発電機の等価回路
【符号の説明】
CT 電流検出手段
f 事故点電流
k 事故地点の相対位置
PT 電圧検出手段
i 対地静電容量
Z 相互インピーダンス

Claims (8)

  1. 事故前の系統状態を示す発電機及び負荷の電力情報を含んで送電回路をキルヒホッフの第一及び第二法則で定式化し、
    これに事故時の送電線の電流検出手段及び電圧検出手段の計測値の式を付加し、
    マトリックス演算によって健全線を特定することにより変数を減少させ、
    事故点電流と事故地点を変数とする連立方程式を解くことによって事故区間及び事故地点を特定する送電線の故障点標定方法。
  2. 電圧・電流非計測端の事故中の振る舞いを事故前の前記発電機及び前記負荷のテレメーター情報と潮流計算結果から求めた等価回路で模擬し、前記送電回路の各ノードにキルヒホッフの第一法則を適用し、前記発電機は内部誘起電圧が一定の三相電源とリアクタンスの直列回路で模擬し、前記負荷は事故中に電流が変化しない定電流特性負荷で模擬することにより前記送電回路の定式化を行う請求項1記載の送電線の故障点標定方法。
  3. 各送電線を線路亘長に比例する相互インピーダンスとπ形回路で模擬した対地静電容量とで模擬することにより前記送電回路の定式化を行う請求項1又は2記載の送電線の故障点標定方法。
  4. 送電線の接続点間の区間夫々の回路方程式をキルヒホッフの第一法則で結合し、これに前記電圧検出手段及び電流検出手段の計測値の式を付加して、左辺を変数マトリックスとし且つ右辺を定数マトリックスとするマトリックス演算式を作成し、前記左辺の変数マトリックスを、新たな変数を定義することにより少なくとも後の処理で利用する成分については要素が定数のみからなる線形なマトリックスに変形することにより前記送電回路の定式化を行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の送電線の故障点標定方法。
  5. 事故地点の相対位置をkとして事故点電流if とk・if だけを変数とするマトリックスとなるように予め前記送電回路の定式化を行い、事故時において電圧検出手段及び電流検出手段の計測値と前記右辺の定数マトリックスとの演算から定数ベクトルを作成し、これによって得られる複素連立方程式を解くことにより、事故区間及び事故地点を特定する請求項4記載の送電線の故障点標定方法。
  6. 前記事故点電流if とk・if だけを変数とするマトリックスにおいて、区間の中央地点で事故が発生したと仮定して事故点電流if を求め、健全線か否かを識別するための設定値より少ない場合、その線を健全線と判定して前記事故点電流if とk・if だけを変数とするマトリックスにおける該当する線の事故点電流if をif =0として、これによって得られる複素連立方程式を解くことにより、事故区間及び事故地点を特定する請求項5記載の送電線の故障点標定方法。
  7. 前記事故点電流if とk・if だけを変数とするマトリックスにおいて、前記複素連立方程式の式の数が変数の数より大であるときは、前記事故点電流if とk・if だけを変数とするマトリックスをマトリックスの対角化によって直接解くことにより前記相対位置kを求め、前記式の数が変数の数より小であるときは、ニュートン・ラフソン法によって前記相対位置kを求める請求項5又は6記載の送電線の故障点標定方法。
  8. 送電線の接続点間の区間毎に事故地点の相対位置kを求め、その求めた値が、0〜1.0の範囲にあるとき、その区間が事故区間であると特定する請求項1〜7のいずれか1項に記載の送電線の故障点標定方法。
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