JP3754018B2 - 赤外吸収分光システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、赤外吸収分光システムに係り、特にミリ秒時間分解FT赤外吸収分光システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
時間分解IR測定の最近の主流は、ステップスキャンを用いたマイクロ秒からナノ秒領域の時間分解FTIR(Fourie Transform Infrared Spectrometer)測定である。そのためのステップスキャン装置を用いて数十ミリ秒の時間領域の測定が可能であるが、ラピッドスキャン装置と比較するとかなり高価であり、専門家以外が扱うには敷居の高い装置である。しかもステップスキャン装置を市販しているメーカも限られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
それに対し、ラピッドスキャン装置は多くのメーカで市販されており、主に非可逆過程の観測に用いられてきた。その場合、繰り返し測定ができないためS/N比の向上が望めない。
【0004】
今まで、ミリ秒オーダの時間領域でレーザなどの光源と同期させた可逆な系の観察はラピッドスキャン装置を用いては試みられてこなかった。それは今までの干渉計の動作の安定性にも問題があったかもしれないが、そのようなアプリケーション自体はミリ秒のオーダでは報告されていない。例え、報告されていても厳密に同期を取った測定ではない場合が多い。因みに、分のオーダではレーザと同期を取る必要性はないが、ミリ秒のオーダではレーザと同期を取る必要がある。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑み、汎用性のあるラピッドスキャン方式を用いて、しかもミリ秒のオーダでの時間領域で干渉計の動きに合わせたポンプ−プローブFTIR時分割測定が可能な赤外吸収分光システムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した目的を達成するために、
〔1〕赤外吸収分光システムにおいて、IR光源とこのIR光源からの光線を第1の光線と第2の光線に分けるビームスプリッターと前記第1の光線に作用する可動鏡と前記第2の光線に作用する固定鏡とを含む干渉計と、この干渉計の位置を感知する位置感知センサーと、この位置感知センサーからの出力信号を入力するトリガーボックスインターフェースと、このトリガーボックスインターフェースからの出力を受ける励起光光源と、前記可動鏡と前記固定鏡からのそれぞれの反射光線を前記ビームスプリッターを介して照射するとともに、前記励起光光源からのパルス光を照射する試料と、この試料からの出力光を検出する検出装置とを備え、ミリ秒のオーダで前記干渉計の動きに前記励起光光源を同期させて、ラピッドスキャンによる繰り返しで、レーザーのミリ秒時間分解によりエノール型からケト型の分子の構造に分解することができるポンプ−プローブ時間分解FTIRを行うことを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の赤外吸収分光システムにおいて、前記励起光光源は10Hzのレーザであり、これと同期するためのIRの時間分解能が25msであることを特徴とする。
【0008】
上記時間領域で起こる現象としては生体試料の構造変化、燃焼反応、高分子の構造変化などの現象が知られているが、本発明の赤外吸収分光システムは、気相、液相、固相の各種の系中でのミリ秒のオーダの構造変化の研究に寄与することができる。ステップスキャンを用いたもっと短い時間領域での研究は盛んに行われているが、この時間領域の可逆系の研究例は非常に少ない。時間分解測定としては丁度死角にあたる時間領域である。また、本発明は、一般に広く使われているFTIR装置を少し改良するだけで簡単に時間分解測定が可能になる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の実施例を示すミリ秒時間分解FT赤外吸収分光システムの概略構成図である。
【0011】
この図において、1はHe−Ne/IR光源、2はビームスプリッター、3は位置感知センサー、4は可動鏡、5は固定鏡、6は試料、7はMCT(Mercury Cadmium Telluride)検出器、8は位置感知センサー3に接続されるトリガーボックスインターフェース、9は励起光(レーザなど)光源である。
【0012】
ここで、He−Ne/IR光源1からの光線は、ビームスプリッター2を介して、可動鏡4を経由する光線▲1▼と、固定鏡5を経由する光線▲2▼とに別れ、可動鏡4、固定鏡5からの反射光はビームスプリッター2に入射し、そのビームスプリッター2からの出力光▲3▼は試料6に照射される。一方、励起光光源9からはパルス光▲4▼が試料6に照射される。試料6からの出力光▲5▼はMCT検出器7で検出される。
【0013】
このように構成したので、ビームスプリッター2と可動鏡4間を辿る光路▲1▼と、ビームスプリッター2と固定鏡5間を辿る光路▲2▼が等しい時に、インターフェログラム(干渉写真)が強度最大となる。
【0014】
図2は本発明の実施例を示すミリ秒時間分解FT赤外吸収分光システムにおけるタイミングチャートである。この図において、横軸は時間、縦軸は干渉計の位置を示しており、点a〜点iはIRデータ取り込みポイントであり、測定条件により可変となる。また、トリガーボックスインターフェース8から点a,e,iでトリガー信号を取り出すようにしている。そして、このトリガー信号を図1のパルス光▲4▼(レーザ光)に同期させるようにしている。
【0015】
図3は本発明のトリガーボックスインターフェースの入出力信号を示す図であり、図3(a)は干渉計からのトリガーボックスインターフェースの入力信号を示す図、図3(b)〜(e)はトリガーボックスインターフェースから励起光(レーザなど)光源への信号を示す図である。
【0016】
これらの図に示すように、干渉計からトリガーボックスインターフェース8への入力信号は、ν(Hz)の信号である。一方、トリガーボックスインターフェース8からの励起光光源9への出力信号としては、例えば、図3(b)に示すようにν(Hz)の信号、図3(c)に示すようにν/2(Hz)の信号、図3(d)に示すようにν/3(Hz)の信号、図3(e)に示すようにν/n(Hz)の信号を生成させることができる。
【0017】
図4は本発明の実験例を示す分子の構造変化を示す図、図5はそのミリ秒時間分解のためのタイミングチャートであり、横軸に時間(秒)、縦軸に強度(相対単位)を示している。図6はその際の波数(wavenumber)と吸光度(absorbance)の特性図である。
【0018】
図4に示すように、本発明の実験例によれば、図5に示すようなミリ秒時間分解によりenol form(エノール型)からketo form(ケト型)の分子の構造に分解することができることが明らかになった。すなわち、例えば、図5に示すように、レーザの照射をOFF3−ON−OFF1−OFF2−OFF3−ONと行うようにする。ここで、レーザは5nsパルス(686nm)、レーザのON時間は25msである。また、OFF3の場合の波数と吸光度は、図6(a)に示すようであり、ON−OFF3の場合の波数と吸光度は、図6(b)に示すようであり、OFF1−ONの場合の波数と吸光度は、図6(c)に示すようであり、OFF2−OFF1の場合の波数と吸光度は、図6(d)に示すようであり、OFF3−OFF2の場合の波数と吸光度は、図6(e)に示すようであり、ON−ONの場合の波数と吸光度は、図6(f)に示すようでありる。なお、それぞれの差スペクトルのΔabsのスケールは、−0.002〜0.002である。
【0019】
図7は本発明の実験例の分子の構造変化と波数と吸光度の関係を示す図であり、横軸に波数/cm-1、縦軸にΔ吸光度を示している。
【0020】
この図から明らかなように、トリガーボックスインターフェース8からの出力信号ν(O−H)〔O−H基の生成〕は3600波数近傍、信号ν(N−H)〔N−H基の生成〕は3400波数近傍、信号ν(C=O)〔C=O基の生成〕は1600〜1700波数近傍であると帰属される。
【0021】
図8は本発明の実験例を示す高速スキャン法による干渉計可動鏡の運動と双方向データコレクションを示す図であり、横軸にスキャンの時間、縦軸に光路差を示している。図9は各部の動作を示すタイミングチャートである。
【0022】
図8において、所定時限Δtでインターフェログラム(干渉写真)をとることができる。また、Fはフォワードスキャン、Bはバックワードスキャンを示している。
【0023】
図9においては、実例1と実例2が示されており、それぞれ図9(a)にIRランプトリガー信号(+5V)、図9(b)にQ−SW(Q−スイッチ:トリガーボックスインターフェース8に内蔵)、図9(c)にコレクト(検出)、図9(d)に移動鏡の位置感知センサのそれぞれのタイミングチャートが示されている。
【0024】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0025】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、ミリ秒のオーダーで干渉計の動きに光源を同期させてポンプ−プローブ時間分解FTIRを可能にする。特に、10HzのYAGレーザと同期するためにIRの時間分解能は25msで実験した。この時間領域での干渉計の動きに合わせたポンプ−プローブFTIR時分割測定システムは画期的である。この時間領域で起こる現象としては生体試料の構造変化、燃焼反応、高分子の構造変化などの現象がある。また、一般に広く使われているFTIR装置を少し改良するだけで簡単に時間分解測定を可能にすることができる。
【0026】
主な特徴を挙げると、以下のようである。
【0027】
(1)高価なステップ・スキャン装置と異なり、安価なラピッド・スキャンFTIR装置を利用することができる。
【0028】
(2)干渉計の動きと厳密に同期を取り、信号の取り込みを数十ミリ秒オーダで行う。
【0029】
(3)広範囲の中赤領域の時間変化を短時間で簡便に測定することができ、積算が可能になることにより高いS/N比を得ることができる。
【0030】
なお、繰り返し可変のレーザと組み合わせることにより、数十ミリ秒から分のオーダの可逆・非可逆過程の両方を測定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すミリ秒時間分解FT赤外吸収分光システムの概略構成図である。
【図2】本発明の実施例を示すミリ秒時間分解FT赤外吸収分光システムにおけるタイミングチャートである。
【図3】本発明のトリガーボックスインターフェースの入出力信号を示す図である。
【図4】本発明の実験例を示す分子の構造変化を示す図である。
【図5】本発明の実験例を示すミリ秒時間分解のためのタイミングチャートである。
【図6】図5におけるミリ秒時間分解のための波数(wavenumber)と吸光度(absorbance)の特性図である。
【図7】本発明の実験例の分子の構造変化と波数と吸光度の関係を示す図である。
【図8】本発明の実験例を示す高速スキャン法による干渉計移動鏡の運動と双方向データコレクションを示す図である。
【図9】図8における各部の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 He−Ne/IR光源
2 ビームスプリッター
3 位置感知センサー
4 可動鏡
5 固定鏡
6 試料
7 MCT検出器
8 トリガーボックスインターフェース
9 励起光光源
Claims (2)
- (a)IR光源と該IR光源からの光線を第1の光線と第2の光線に分けるビームスプリッターと前記第1の光線に作用する可動鏡と前記第2の光線に作用する固定鏡とを含む干渉計と、
(b)該干渉計の位置を感知する位置感知センサーと、
(c)該位置感知センサーからの出力信号を入力するトリガーボックスインターフェースと、
(d)該トリガーボックスインターフェースからの出力を受ける励起光光源と、
(e)前記可動鏡と前記固定鏡からのそれぞれの反射光線を前記ビームスプリッターを介して照射するとともに、前記励起光光源からのパルス光を照射する試料と、
(f)該試料からの出力光を検出する検出装置とを備え、
(g)ミリ秒のオーダで前記干渉計の動きに前記励起光光源を同期させて、ラピッドスキャンによる繰り返しで、レーザーのミリ秒時間分解によりエノール型からケト型の分子の構造に分解することができるポンプ−プローブ時間分解FTIRを行うことを特徴とする赤外吸収分光システム。 - 請求項1記載の赤外吸収分光システムにおいて、前記励起光光源は10Hzのレーザであり、これと同期するためのIRの時間分解能が25msであることを特徴とする赤外吸収分光システム。
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