JP3754007B2 - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の空燃比制御装置に関し、特に内燃機関により駆動される車両の運転者の加減速意志に応じて燃料供給量を補正する加減速補正量を用いた制御を行うものに関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の吸入空気量を制御するスロットル弁の開度を検出し、該検出したスロットル弁開度に応じて、車両の加速時及び減速時に機関に供給する燃料量を補正する手法は従来より広く知られている(例えば特開平5−302536号公報)。この燃料量補正手法によれば、スロットル弁が急激に開弁される加速時には、燃料量の増量補正が行われ、スロットル弁が急激に閉弁される減速時には、燃料量の減量補正が行われる。
【0003】
また適応制御器を用いた内燃機関(エンジン)の空燃比制御装置は、例えば特開平11−73206号公報に示されている。図11は、その適応制御器による空燃比(燃料量)制御と、上記車両加減速時の燃料量補正を行う補正係数KTHによる補正とを行う制御系の構成を示すブロック図である。この制御系は、適応制御器131と、乗算器132〜133と、付着補正部135と、機関システム101aと、排気管113と、空燃比センサ117と、変換部136とからなる。空燃比センサ117の下流側には、排気を浄化する触媒114が設けられる。
【0004】
機関システム101aは、燃料噴射弁,吸気管,及びエンジンを含む。変換部136は、空燃比センサ117の出力を検出当量比KACTに変換する。適応制御器131は、コントローラ141及びパラメータ調整機構142とを備えている。パラメータ調整機構142は、検出当量比KACT及び適応補正係数KSTRに基づいて、モデルパラメータベクトルθを算出する。モデルパラメータベクトルθは、制御対象モデルを定義する複数のモデルパラメータを要素とするベクトルである。コントローラ141は、目標当量比KCMD、検出当量比KACT及び適応補正係数KSTRの過去値に基づき、モデルパラメータベクトルθを用いて、制御対象モデルの伝達関数の逆伝達関数により適応補正係数KSTRを算出する。
【0005】
乗算器132,133及び134により、要求燃料量TCYLが下記のように算出される。要求燃料量TCYLは、1つの気筒における1回の燃焼に必要とされる燃料量である。
TCYL=TIM×KTH×KSTR×KTOTAL (1)
TIMはエンジンシステム101aの吸入空気量に応じて設定される基本燃料量である。KTHは、エンジンシステム101a内のスロットル弁開度の変化量、すなわち運転者の加減速意図に応じて設定される加減速補正係数である。KTOTALは、吸気温TA,機関冷却水温TW,大気圧PAに応じて設定される環境補正係数など、適応補正係数KSTR及び加減速補正係数KTH以外の燃料量補正係数の積である。
【0006】
付着補正部135は、燃料噴射弁から噴射される燃料が吸気管内壁に付着することに起因する燃料の輸送遅れの補正する付着補正を行い、燃料噴射弁による燃料噴射時間TOUTを算出する。
適応制御器131は、制御対象をモデル化した制御対象モデルに基づいて、適応補正係数KSTRの算出を行う。制御対象モデルは下記式(2)により、3制御サイクルのむだ時間を有するDARXモデル(delayed autoregressive model with exogeneous input:外部入力を持つ自己回帰モデル)として定義されている。
【0007】
ここで、b0,r1,r2,r3,s0は、パラメータ調整機構142により同定されるモデルパラメータである。またkは、特定の気筒の燃焼サイクルに対応する制御時刻(サンプル時刻)を示す。
【0008】
モデルパラメータを要素とするモデルパラメータベクトルθ(k)を下記式(3)で定義すると、モデルパラメータベクトルθ(k)は、下記式(4)により算出される。
θ(k)T=[b0,r1,r2,r3,s0] (3)
θ(k)=θ(k-1)+KP(k)ide(k) (4)
【0009】
式(4)のKP(k)は、下記式(5)により定義されるゲイン係数ベクトルであり、式(5)のP(k)は、下記式(6)により定義される5次の正方行列である。またide(k)は下記式(7)により定義される同定誤差であり、式(7)のKACTHAT(k)は、下記式(8)により、最新のモデルパラメータベクトルθ(k-1)を用いて算出される推定当量比である。
【数1】
ide(k)=KACT(k)−KACTHAT(k) (7)
KACTHAT(k)=θ(k-1)Tζ(k) (8)
【0010】
上記式(5)、(6)及び(8)のζ(k)は、下記式(9)で定義される、制御出力(KACT)及び制御入力(KSTR)を要素とするベクトルである。
【0011】
式(6)の係数λ1,λ2の設定により、式(4)〜(9)による同定アルゴリズムは、以下のような4つの同定アルゴリズムのいずれかになる。
λ1=1,λ2=0 固定ゲインアルゴリズム
λ1=1,λ2=1 最小2乗法アルゴリズム
λ1=1,λ2=λ 漸減ゲインアルゴリズム(λは0,1以外の所定値)
λ1=λ,λ2=1 重み付き最小2乗法アルゴリズム(λは0,1以外の所定値)
【0012】
コントローラ141は、下記式(10)により適応補正係数KSTR(k)を算出する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
図12は、エンジンにより駆動される車両の加減速時に、加減速補正係数KTHを「1.0」に保持した場合における検出当量比KACT及び適応補正係数KSTRの推移を示すタイムチャートである。同図(a)は車速VPの推移を示す。同図(b)に示すように加速時には検出当量比KACTがスパイク状にリーン方向へ変化し、減速時にはスパイク状にリッチ方向へ変化する。本明細書では、急激に突出して元に戻る変化を「スパイク」あるいは「スパイク状の変化」といい、リーン方向のスパイクを「リーンスパイク」、リッチ方向のスパイクを「リッチスパイク」という。また適応補正係数KSTRは、同図(d)に示すように、検出当量比KACTの変化に少し遅れて、検出当量比KACTと逆方向に変化する。リーンスパイクあるいはリッチスパイクの発生により、触媒の浄化率低下や機関運転性の悪化(機関の加速や減速の遅れ)が起きる。
【0014】
図13は、加減速補正係数KTHを加速時には「1.0」より大きな値に設定し、減速時には「1.0」より小さな値に設定した(同図(c)参照)場合における、検出当量比KACT及び適応補正係数KSTRの推移を示すタイムチャートである。同図(a)は車速VPの推移を示す。この場合、加減速補正係数KTHの導入により、加速開始当初あるいは減速開始当初におけるリーンスパイクあるいはリッチスパイクはなくなるが、加減速補正係数KTHが「1.0」に戻った直後にリーンスパイクまたはリッチスパイクが発生している(同図(b)参照)。
【0015】
適応制御器は、PID(比例積分微分)制御に比べると、制御偏差の補正速度が速いため、加減速補正係数KTHによる補正が過補正状態となると、適応補正係数KSTRは、同図(d)に示すように、その過補正分を補正すべく加速時にはリーン方向へ変化し、減速時にはリッチ方向へ変化する。その状態で、同図(b)に示すように加速あるいは減速の終了により加減速補正係数KTHが急激に「1,0」に戻ると、適応補正係数KSTRはその変化に追従できない。そのため、加減速補正係数KTHが「1.0」に戻った直後に検出当量比KACTのリーンスパイクあるいはリッチスパイクが発生し、加減速補正係数KTHを導入した意味がなくなってしまう。
【0016】
このような不具合は、加減速補正係数KTHによる補正が、過補正となっていることに起因している。したがって、加減速補正係数KTHの設定をより正確に行い、目標当量比KCMDと検出当量比KACTの偏差が発生しないようにすれば、上記不具合は発生しない。しかしながら、内燃機関の燃料付着特性にはばらつきがあるため、加減速補正係数KTHはある程度、過補正傾向に設定せざるを得ない。また加減速補正係数KTHを「1.0」に戻す速度をもっと遅くすることによっても上記不具合を無くすことができるが、加減速補正係数KTHによる過補正状態が長く継続するのは、触媒浄化率の低下を招くため好ましくない。
【0017】
加減速補正係数KTHによる補正は、PID制御のような応答性の遅い制御との組み合わせでは特に問題とならなかったが、適応制御のように応答速度の速い制御との組み合わせでは上述したような不具合が発生することがあった。
【0018】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、内燃機関により駆動される車両の加減速時において空燃比制御をより適切に行い、空燃比を目標空燃比に正確に追従させることができる内燃機関の空燃比制御装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関を含む制御対象をモデル化した制御対象モデルのモデルパラメータ(θ)を同定する同定手段(42)と、該同定手段(42)により同定されるモデルパラメータ(θ)を用いて制御入力(KSTR)を算出する制御手段(41)とを備える適応制御器(29)により、前記機関に供給する混合気の空燃比(KACT)を目標空燃比(KCMD)に一致させるように制御する内燃機関の空燃比制御装置において、前記機関の排気系に設けられる空燃比センサ(17)と、前記機関により駆動される車両の運転者の加減速意志を示すパラメータ(DTH)に応じて、前記機関に供給する燃料量を補正する加減速補正量(KTH)を算出する加減速補正量算出手段とを備え、前記同定手段(42)は、前記空燃比センサ(17)により検出される空燃比(KACT)及び前記加減速補正量(KTH)を用いて前記モデルパラメータ(θ)を同定することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、機関により駆動される車両の運転者の加減速意志を示すパラメータに応じて、機関に供給する燃料量を補正する加減速補正量が算出され、空燃比センサにより検出される空燃比及び前記加減速補正量を用いて制御対象モデルのモデルパラメータが同定される。すなわち、加減速補正量による補正を考慮してモデルパラメータが同定されるので、加減速補正量による加減速開始当初の空燃比のリーンスパイク及びリッチスパイクを防止するとともに、加減速補正量が無補正値に戻った直後におけるリーンスパイク及びリッチスパイクを防止することができる。その結果、触媒の浄化効率を高め、排気特性を向上させることができる。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記制御手段(41)は、前記モデルパラメータ(θ)及び前記加減速補正量(KTH)を用いて前記制御入力(KSTR)を算出することを特徴とする。この構成によれば、加減速補正量による補正を考慮して制御入力が算出されるので、空燃比の制御性をより改善することできる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、内燃機関を含む制御対象への制御入力の過去値(KSTR(k-3)〜KSTR(k-6))を用いて適応制御により最新の制御入力(KSTR(k))を決定する制御手段(41)を備え、前記機関に供給する混合気の空燃比(KACT)を目標空燃比(KCMD)に一致させるように制御する内燃機関の空燃比制御装置において、前記機関により駆動される車両の運転者の加減速意志を示すパラメータ(DTH)に応じて、前記機関に供給する燃料量を補正する加減速補正量(KTH)を算出する加減速補正量算出手段を備え、前記制御手段(41)は、前記制御入力の過去値(KSTR(k-3)〜KSTR(k-6))と前記加減速補正量の過去値(KTH(k-3)〜KTH(k-6))の積に基づいて最新の制御入力(KSTR(k))を決定することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、機関により駆動される車両の運転者の加減速意志を示すパラメータに応じて、機関に供給する燃料量を補正する加減速補正量が算出され、制御入力の過去値と加減速補正量の過去値の積に基づいて最新の制御入力が決定される。このように、加減速補正量の過去値を用いることにより、加減速補正量による補正中においても適応制御によって空燃比を目標空燃比に正確に追従させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)及びその空燃比制御装置の構成を示す図である。
【0025】
4気筒のエンジン1の吸気管2にはスロットル弁3が配されている。スロットル弁3にはスロットル弁開度(TH)センサ4が連結されており、スロットル弁開度THに応じた電気信号を出力して電子制御ユニット(以下「ECU」という)5に供給する。
【0026】
燃料噴射弁6はエンジン1とスロットル弁3との間かつ吸気管2の図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にECU5に電気的に接続されて当該ECU5からの信号により燃料噴射弁6の開弁時間が制御される。
【0027】
一方、スロットル弁3の直ぐ下流には吸気管内絶対圧(PBA)センサ8が設けられており、この絶対圧センサ8により電気信号に変換された絶対圧信号は前記ECU5に供給される。また、その下流には吸気温(TA)センサ9が取付けられており、吸気温TAを検出して対応する電気信号を出力してECU5に供給する。
【0028】
エンジン1の本体に装着されたエンジン水温(TW)センサ10はサーミスタ等から成り、エンジン水温(冷却水温)TWを検出して対応する温度信号を出力してECU5に供給する。
ECU5には、エンジン1のクランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ11が接続されており、クランク軸の回転角度に応じた信号がECU5に供給される。クランク角度位置センサ11は、エンジン1の特定の気筒の所定クランク角度位置でパルス(以下「CYLパルス」という)を出力する気筒判別センサ、各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)に関し所定クランク角度前のクランク角度位置で(4気筒エンジンではクランク角180度毎に)TDCパルスを出力するTDCセンサ及びTDCパルスより短い一定クランク角周期(例えば30度周期)で1パルス(以下「CRKパルス」という)を発生するCRKセンサから成り、CYLパルス、TDCパルス及びCRKパルスがECU5に供給される。これらのパルスは、燃料噴射時期、点火時期等の各種タイミング制御及びエンジン回転数(エンジン回転速度)NEの検出に使用される。
【0029】
排気管13には排気中の酸素濃度(エンジン1に供給される混合気の空燃比)にほぼ比例した電気信号を出力する空燃比センサ(以下[LAFセンサ」という)17が設けられている。LAFセンサ17の下流側には三元触媒14が設けられている。三元触媒14は、排気ガス中のHC,CO,NOx等の浄化を行う。
【0030】
LAFセンサ17は、ECU5に接続されており、排気中の酸素濃度に略比例した電気信号をECU5に供給する。
エンジン1は、吸気弁及び排気弁のバルブタイミングを、エンジンの高速回転領域に適した高速バルブタイミングと、低速回転領域に適した低速バルブタイミングとの2段階に切換可能なバルブタイミング切換機構30を有する。このバルブタイミングの切換は、弁リフト量の切換も含み、さらに低速バルブタイミング選択時は2つの吸気弁のうちの一方を休止させて、空燃比を理論空燃比よりリーン化する場合においても安定した燃焼を確保するようにしている。
【0031】
バルブタイミング切換機構30は、バルブタイミングの切換を油圧を介して行うものであり、この油圧切換を行う電磁弁及び油圧センサがECU5に接続されている。油圧センサの検出信号はECU5に供給され、ECU5は電磁弁を制御してエンジン1の運転状態に応じたバルブタイミングの切換制御を行う。
【0032】
なお、図示は省略しているが、排気を吸気管2に還流する排気還流機構及び燃料タンクで発生する蒸発燃料をキャニスタに貯蔵し、適時吸気管2に供給する蒸発燃料処理装置が設けられている。
またECU5には大気圧PAを検出する大気圧センサ21が接続されており、大気圧センサ21の検出信号は、ECU5に供給される。
【0033】
ECU5は、上述した各種センサからの入力信号波形を整形して電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変化する等の機能を有する入力回路と、中央処理ユニット(CPU)と、該CPUで実行される各種演算プログラムや後述する各種マップを記憶するROM及び演算結果等を記憶するRAMからなる記憶回路と、燃料噴射弁6等の各種電磁弁や点火プラグに駆動信号を出力する出力回路とを備えている。
【0034】
ECU5は、上述した各種センサの検出信号に基づいて、LAFセンサ17の出力に応じた空燃比のフィードバック制御を行うフィードバック制御運転領域やオープン制御を行うオープン制御運転領域等の種々のエンジン運転領域を判別するとともに、エンジン運転状態に応じ、下記式(21)により要求燃料量TCYLを算出する。要求燃料量TCYLは、1つの気筒における1回の燃焼に必要とされる燃料量である。
TCYL=TIM×KTH×KSTR×KTOTAL (21)
【0035】
ここでTIMは基本燃料量、具体的には燃料噴射弁6の基本燃料噴射時間であり、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに応じて設定されたTIマップを検索して決定される。TIマップは、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに対応する運転状態において、エンジンに供給する混合気の空燃比がほぼ理論空燃比になるように設定されている。すなわち、基本燃料量TIMは、エンジンの単位時間当たりの吸入空気量(質量流量)にほぼ比例する値を有する。
【0036】
KTHは、スロットル弁開度THの変化量DTHに応じて設定される加減速補正係数である。
KSTRは、検出当量比KACT及び目標当量比KCMDに応じて、後述する適応制御器により算出される適応補正係数であり、前記フィードバック制御運転領域において、検出当量比KACTが目標当量比KCMDに一致するように設定される。
【0037】
KTOTALは、エンジン水温TWに応じて設定されるエンジン水温補正係数KTW,吸気温TAに応じて設定される吸気温補正係数KTA,大気圧PAに応じて設定される大気圧補正係数KPA,排気還流実行中に排気還流量に応じて設定されるEGR補正係数KEGR,蒸発燃料処理装置によるパージ実行時にパージ燃料量に応じて設定されるパージ補正係数KPUG等のフィードフォワード補正係数(加減速補正係数KTHを除く)をすべて乗算することにより算出される補正係数である。
【0038】
ECU5は、さらに燃料噴射弁6により吸気管内に噴射された燃料の一部が、吸気管内壁に付着することを考慮した付着補正演算を実行して、燃料噴射弁6による燃料噴射時間TOUTを算出する。付着補正については、例えば特開平8−21273号公報に詳細に開示されている。燃料噴射弁6により、燃料噴射時間TOUTに比例する燃料量が吸気管2内に噴射される。
【0039】
図2は、適応制御器による制御を説明するために制御系の要部を示すブロック図である。図2に示す制御系は、適応制御器31、乗算器32,33,及び34,付着補正部35,エンジンシステム1a、排気管13、LAFセンサ17、変換部36によって構成される。エンジンシステム1aは、図1に示した燃料噴射弁6,吸気管2,及びエンジン1を含む。適応制御器31、乗算器32〜34、付着補正部35、及び変換部36は、実際にはECU5のCPUによる演算処理によって実現される。
【0040】
図11に示す従来の制御系では、乗算器132からLAFセンサ117までを制御対象とし、適応補正係数KSTRが制御入力であるのに対し、本実施形態では、乗算器33からLAFセンサ17までを制御対象とし、制御入力は加減速補正係数と適応補正係数の積(KTH×KSTR)となっている。図2に示す制御系の構成要素1a,13,17,31〜36は、それぞれ図11に示す構成要素101a,113,117,131〜136に対応し、同様の機能を有するが、本実施形態では、加減速補正係数KTHがコントローラ41及び同定器42に入力されている点が、図11に示す従来の制御系と異なっている。
【0041】
変換部36は、LAFセンサ出力を検出当量比KACTに変換する。適応制御器31は、コントローラ41及び同定器42とからなる。同定器42は、検出当量比KACT、適応補正係数KSTR及び加減速補正係数KTHに基づいて、モデルパラメータベクトルθを算出する。モデルパラメータベクトルθは、後述する制御対象モデルを定義する複数のモデルパラメータを要素とするベクトルである。コントローラ41は、目標当量比KCMD、検出当量比KACT、並びに適応補正係数KSTR及び加減速補正係数KTHの過去値に基づき、モデルパラメータベクトルθを用いて、制御対象モデルの伝達関数の逆伝達関数により適応補正係数KSTRを算出する。
【0042】
乗算器32〜34は、前記式(21)の演算を実行し、要求燃料量TCYLを算出する。付着補正部35は、付着補正処理を行い、燃料噴射時間TOUTを算出する。
【0043】
本実施形態では、制御対象モデルは下記式(22)により定義される。
ここで、b0,r1,r2,r3,s0は、同定器42により同定されるモデルパラメータである。またkは、特定の気筒の燃焼サイクルに対応する制御時刻(サンプル時刻)、すなわちクランク角720度周期に対応する制御時刻を示す。
【0044】
モデルパラメータを要素とするモデルパラメータベクトルθ(k)は、下記式(23)で示され、下記式(24)により算出される。式(24)に含まれるゲイン係数ベクトルKP(k)及び同定誤差ide(k)は、前記式(5)〜(8)と同一の式(25)〜(28)で与えられるが、制御出力(KACT)及び制御入力(KSTR×KTH)からなるベクトルζ(k)は、前記式(9)とは異なる式(29)で与えられる。
【0045】
θ(k)T=[b0,r1,r2,r3,s0] (23)
θ(k)=θ(k-1)+KP(k)ide(k) (24)
【数2】
【0046】
式(29)により定義されるベクトルζは、適応補正係数KSTRにそれぞれの時刻における加減速補正係数KTHが乗算された制御入力(KSTR×KTH)を要素としている。これにより、エンジン1に供給する混合気の空燃比が加減速補正係数KTHにより過剰に補正され、その過剰な補正が検出当量比KACTに表れても、同定器42は、制御対象(図2参照)への制御入力(KSTR×KTH)が変化したことによるものであることを認識できる。そのため、空燃比(検出当量比KACT)の過剰補正分を補正する動作をしない。その結果、適応制御器を用いた空燃比制御に、加減速補正係数KTHの導入することに起因する不具合を防止することができる。
【0047】
コントローラ41は、下記式(30)により適応補正係数KSTR(k)を算出する。式(30)は、式(10)のKSTR(k-1),KSTR(k-2),及びKSTR(k-3)を、それぞれKSTR(k-1)×KTH(k-1),KSTR(k-2)×KTH(k-2),KSTR(k-3)×KTH(k-3)に置き換えたものである。
【0048】
図3は、上述したように改良された適応制御器を適用した場合における、エンジン1により駆動される車両の加減速時の検出当量比KACT及び適応補正係数KSTRの推移を示すタイムチャートである。本実施形態では、加減速補正係数KTHによるリッチ方向及びリーン方向の補正実行時に、適応補正係数KSTRによるKTH過補正分の補正が行われない(同図(c)(d)参照)。したがって、加減速補正係数KTHを「1.0」に戻したときに検出当量比KACTのリッチスパイクあるいはリーンスパイクが発生せず(同図(b)参照)、良好な空燃比制御特性を得ることができる。
【0049】
なお、上記式(26)の係数λ1を「1」に設定し、係数λ2を「0」に設定した固定ゲインアルゴリズムを採用する場合には、前記式(25)に代えて下記式(25a)が用いられる。式(25a)において、Pは定数を対角要素とする対角行列である。
【数3】
【0050】
また同定されるモデルパラメータのドリフト防止のために、上記式(24)に代えて下記式(24a)により、モデルパラメータベクトルθを算出するようにしてもよい。
θ(k)=SGMθ(k-1)+KP(k)ide(k) (24a)
【0051】
ここで、SGMは、下記式(31)に示すように「1」及び忘却係数σを対角要素とし、その他の要素を「0」とした忘却係数行列である。忘却係数σは、0から1の間の値に設定され、同定誤差の過去値の影響を低減する機能を有する。
【数4】
【0052】
次に図4〜9を参照して、加減速補正係数KTH及び適応補正係数KSTRの算出処理を説明する。以下に説明する処理は、ECU5のCPUで実行される。
【0053】
図4は、要求燃料量TCYLを算出するメインルーチンの要部を示すフローチャートである。この処理は、TDCパルスの発生に同期してECU5のCPUで実行される。
ステップS11では、図5に示すKACCの算出処理を実行し、加速補正係数KACCを算出する。ステップS12では、図7に示す減速補正係数KDECを算出する。ステップS13では、下記式(32)により、加減速補正係数KTHを算出する。
KTH=KACC×KDEC (32)
【0054】
ステップS14では、図9に示すKSTRの算出処理を実行し、適応補正係数KSTRを算出する。
ステップS13及びS14で算出される加減速補正係数KTH及び適応補正係数KSTRは、図示しない処理で算出される基本燃料量TIM及び補正係数KTOTALとともに前記式(21)に適用され、要求燃料量TCYLが算出される。
【0055】
図5は、図4のステップS11で実行されるKACC算出処理のフローチャートである。
ステップS21では、スロットル弁開度THの変化量DTH(=TH(n)−TH(n-1),nは本処理の制御周期(クランク角度180度)に対応する制御時刻である)が、加速判定閾値XDTHKACCH(例えば1.8deg)より大きいか否かを判別する。DTH>XDTHKACCHであるときは、加速フラグFKACCが「1」であるか否かを判別する(ステップS27)。加速開始フラグFKACCはエンジン1により駆動される車両の急加速開始と判定したとき「1」に設定される(ステップS33)。
【0056】
ステップS27でFKACC=0であるときは、スロットル弁開度THが所定開度XTHKACCH(例えば35deg)より大きいか否かを判別する(ステップS28)。加速開始当初は、この答は否定(NO)であるので、ステップS29に進み、吸気管内絶対圧PBAが所定吸気圧XPBKACCH(例えば73kPa(550mmHg)))より高いか否かを判別する。加速開始当初はこの答も否定(NO)となるので、ステップS32に進み、スロットル弁開度変化量DTHに応じて、図6に示すKACCテーブルを検索し、加速補正係数KACCを算出する。KACCテーブルは、スロットル弁開度変化量DTHが第1設定値DTH1と第2設定値DTH2の間にあるときは、スロットル弁開度変化量DTHが増加するほど加速補正係数KACCが増加するように設定されている。またスロットル弁開度変化量DTHが第1設定値DTH1より小さいときは、加速補正係数KACCは「1.0」に設定され、第2設定値DTH2より大きいときは、最大値KACCHに設定される。
【0057】
ステップS33では加速開始フラグFKACCが「1」に設定される。加速開始フラグが「1」に設定されると、次の本処理実行時においてはステップS27からステップS34に進み、加速開始フラグFKACCは「0」に戻される。
加速開始フラグFACCが「0」であり、かつスロットル弁開度THが所定開度XTHKACCHより大きいとき、または吸気管内絶対圧PBAが所定吸気圧XPBKACCHより大きいときは、ステップS30に進み、加速補正係数KACCを「1.0」に設定し、次いで加速開始フラグFKACCを「0」に設定する(ステップS31)。
【0058】
ステップS21でDHT≦XDTHKACCHであるときは、スロットル弁開度変化量DTHが負の所定変化量−XDTHKACCL(例えば−0.3deg)より小さいか否かを判別する(ステップS22)。DTH≧−XDTHKACCLであるときは、スロットル全閉フラグFTHIDLEが「1」であるか否かを判別する(ステップS23)。
【0059】
DTH<−XDTHKACCLであってスロットル弁3が急速に閉弁しているとき、またはFTHIDLE=1であってスロットル弁3が全閉状態にあるときは、加速補正係数KACCを「1.0」に設定に設定し(ステップS24)、ステップS34に進む。一方FTHIDLE=0であるときは、加速補正係数KACCを所定量XDKACC(例えば0.01)だけデクリメントし(ステップS25)、次いで加速補正係数KACCの最小値が「1.0」となるようにリミット処理を行う(ステップS26)。すなわちこのリミット処理では、加速補正係数KACCが「1.0」より小さいか否かを判別し、KACC<1.0であるときは、加速補正係数KACCを「1.0」に設定する。
【0060】
図7は、図4のステップS12で実行されるKDEC算出処理のフローチャートである。
ステップS41では、スロットル弁開度変化量DTHが正の所定変化量XDTHKDECH(例えば0.1deg)より大きいか否かを判別する。DTH≦XDTHKDECHであるときは、エンジン回転数NEが所定回転数XNEDEC(例えば1300rpm)より高いか否かを判別する(ステップS42)。そして、DTH>XDTHKDECHであるときまたはNE≦XNEDECであるときは、減速補正係数KDECを「1.0」に設定する(ステップS43)。
【0061】
NE>XNEDECであるときは、さらにスロットル弁開度変化量DTHが負の減速判定閾値XDTHKDEC(例えば−0.8deg)以下か否かを判別する(ステップS44)。そして、DTH≦XDTHKDECであってスロットル弁の閉弁速度が大きいときは、スロットル弁開度変化量DTHの絶対値を、絶対変化量DTHABSとする(ステップS47)。次いで、絶対変化量DTHABSに応じて図8に示すKDECテーブルを検索し、減速補正係数KDECを算出すする(ステップS48)。KDECテーブルは、絶対変化量DTHABSが第1設定値DTHABS1と第2設定値DTHABS2の間にあるときは、絶対変化量DTHABSが増加するほど減速補正係数KDECが減少するように設定されている。また絶対変化量DTHABSが第1設定値DTHABS1より小さいときは、減速補正係数KDECは「1.0」に設定され、第2設定値DTHABS2より大きいときは、最小値KDECLに設定される。
【0062】
ステップS44で、DTH>XDTHKDECであるときは、減速補正係数KDECを所定量XDKDEC(例えば0.01)だけインクリメントし(ステップS45)、次いで減速補正係数KDECの最大値が「1.0」となるようにリミット処理を行う(ステップS46)。すなわちこのリミット処理では、減速補正係数KDECが「1.0」より大きい否かを判別し、KDEC>1.0であるときは、減速補正係数KDECを「1.0」に設定する。
【0063】
図9は、図4のステップS14で実行されるKSTR算出処理のフローチャートである。
ステップS51では、気筒特定パラメータiが「4」以上か否かを判別し、i<4であるときは直ちにステップS53に進む。i≧4であるときは、気筒特定パラメータiを「0」にリセットするとともに、制御時刻kを「1」だけインクリメントし(ステップS52)、ステップS53に進む。
【0064】
気筒特定パラメータiは、0から3までの値をとり、i=0,1,2,3がそれぞれ#1気筒、#3気筒、#4気筒、#2気筒に対応する。制御時刻kは特定の気筒(例えば#1気筒)の燃焼サイクル(クランク角720度周期)に対応する時刻であるため、各気筒に対応させてモデルパラメータベクトルθ及び適応補正係数KSTRを算出するために、気筒特定パラメータiが導入されている。
【0065】
ステップS53では、気筒特定パラメータiを「1」だけインクリメントする。次いで下記式(47)、(48)及び(49)により、同定誤差ide(k,i)を算出し(ステップS54)、さらに下記式(43)〜(46)により、モデルパラメータベクトルθ(k,i)を算出する(ステップS55)。下記式(43)〜(49)は、上述した式(23)〜(29)の制御時刻を示すパラメータ(k)を、制御時刻kと気筒特定パラメータiとからなる、制御時刻を示すパラメータ(k,i)に変更したものである。
【0066】
【数5】
【0067】
続くステップS56では、下記式(50)により、適応補正係数KSTR(k,i)を算出する。
【0068】
なお、上記式(47)、(49)及び(50)の検出当量比KACTは、気筒毎に検出されるものではないが、便宜的に同じ制御時刻を示すパラメータ(k,i)を付している。また式(49)及び(50)の加減速補正係数KTH、及び式(50)の目標当量比KCMDは、気筒毎に設定されるわけではないが、同様に同じ制御時刻を示すパラメータ(k,i)を付している。本処理の実行周期に対応する制御時刻nを用いると、下記のように表すことができる。
KACT(k,i)=KACT(n)
KACT(k-3,i)=KACT(n-12)
KTH(k-j,i)=KTH(n-4j) (j=1〜6)
KCMD(k,i)=KCMD(n)
【0069】
以上詳述したように本実施形態では、検出当量比KACTだけでなく、加減速補正係数KTHをも用いてモデルパラメータベクトルθを同定し、該同定したモデルパラメータベクトルθ及び加減速補正係数KTHを用いて適応補正係数KSTRを算出するようにしたので、加減速補正係数KTHによる検出当量比KACTの変化を考慮したモデルパラメータベクトルθの設定及び適応補正係数KSTRの算出を行うことができる。その結果、加減速補正係数KTHによる加減速開始当初の空燃比のリーンスパイク及びリッチスパイクを防止するとともに、加減速補正係数KTHが無補正値(1.0)に戻った直後におけるリーンスパイク及びリッチスパイクを防止することができる。
【0070】
本実施形態では、ECU5が、同定手段及び制御手段を備える適応制御器と、加減速補正量算出手段とを構成する。具体的には、図9のステップS54及び55が同定手段に相当し、同図のステップS56が制御手段に相当し、図4のステップS11〜S13並びに図5及び図7の処理が加減速補正量算出手段に相当する。
【0071】
(変形例)
上述した実施形態では、図2に示すように加減速補正係数KTHをコントローラ41及び同定器42に入力するようにしたが、図10に示すように、加減速補正係数KTHをコントローラ41には入力せずに、同定器42のみに入力するようにしてもよい。
【0072】
この場合、適応補正係数KSTRは式(30)ではなく、式(10)により算出される。
このようにコントローラ41に加減速補正係数KTHを入力しない構成としても、図3に示す制御特性は僅かに悪化するものの、実用上問題のない程度の変化であることが、実験により確認されている。
【0073】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態では、車両運転者の加減速意志を示すパラメータとして、スロットル弁開度THを用いたが、当該車両のアクセルペダルの踏み込み量ACCを用いてもよい。
【0074】
また上述した実施形態では、加減速補正量として、基本燃料量TIMに乗算する補正係数KTHを用いたが、正の加速補正項TACC及び負の減速補正項TDECを加算することにより得られる加減速補正項TTHを基本燃料量TIMに加算するようにしてもよい。その場合、加減速補正項TTHが加減速補正量に相当する。
【0075】
また本発明は、クランク軸を鉛直方向とした船外機などのような船舶推進機用エンジンなどの制御にも適用が可能である。
【0076】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1に記載の発明によれば、機関により駆動される車両の運転者の加減速意志を示すパラメータに応じて、機関に供給する燃料量を補正する加減速補正量が算出され、空燃比センサにより検出される空燃比及び前記加減速補正量を用いて制御対象モデルのモデルパラメータが同定される。すなわち、加減速補正量による補正を考慮してモデルパラメータが同定されるので、加減速補正量による加減速開始当初の空燃比のリーンスパイク及びリッチスパイクを防止するとともに、加減速補正量が無補正値に戻った直後におけるリーンスパイク及びリッチスパイクを防止することができる。その結果、触媒の浄化効率を高め、排気特性を向上させることができる。
【0077】
請求項2に記載の発明によれば、加減速補正量による補正を考慮して制御入力が算出されるので、空燃比の制御性をさらに改善することできる。
【0078】
請求項3に記載の発明によれば、機関により駆動される車両の運転者の加減速意志を示すパラメータに応じて、機関に供給する燃料量を補正する加減速補正量が算出され、制御入力の過去値と加減速補正量の過去値の積に基づいて最新の制御入力が決定される。このように、加減速補正量の過去値を用いることにより、加減速補正量による補正中においても適応制御によって空燃比を目標空燃比に正確に追従させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその空燃比制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】適応制御器による制御を説明するために制御系の要部を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の適応制御器による制御特性を示すタイムチャートである。
【図4】要求燃料量(TCYL)を算出する処理の要部を示すフローチャートである。
【図5】加速補正係数(KACC)を算出する処理のフローチャートである。
【図6】図5の処理で使用するテーブルを示す図である。
【図7】減速補正係数(KDEC)を算出する処理のフローチャートである。
【図8】図7の処理で使用するテーブルを示す図である。
【図9】適応補正係数(KSTR)を算出する処理のフローチャートである。
【図10】図2に示す制御系の変形例の構成を示すブロック図である。
【図11】従来の制御系の構成を示すブロック図である。
【図12】加減速補正係数(KTH)を使用しない場合の制御特性を示すタイムチャートである。
【図13】加減速補正係数(KTH)を使用する場合の制御特性を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 内燃機関
2 吸気管
5 電子制御ユニット(同定手段、制御手段、加減速補正量算出手段)
6 燃料噴射弁
13 排気管
17 空燃比センサ
31 適応制御器
41 コントローラ(制御手段)
42 同定器(同定手段)
Claims (3)
- 内燃機関を含む制御対象をモデル化した制御対象モデルのモデルパラメータを同定する同定手段と、該同定手段により同定されるモデルパラメータを用いて制御入力を算出する制御手段とを備える適応制御器により、前記機関に供給する混合気の空燃比を目標空燃比に一致させるように制御する内燃機関の空燃比制御装置において、
前記機関の排気系に設けられる空燃比センサと、
前記機関により駆動される車両の運転者の加減速意志を示すパラメータに応じて、前記機関に供給する燃料量を補正する加減速補正量を算出する加減速補正量算出手段とを備え、
前記同定手段は、前記空燃比センサにより検出される空燃比及び前記加減速補正量を用いて前記モデルパラメータを同定することを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 前記制御手段は、前記モデルパラメータ及び前記加減速補正量を用いて前記制御入力を算出することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 内燃機関を含む制御対象への制御入力の過去値を用いて適応制御により最新の制御入力を決定する制御手段を備え、前記機関に供給する混合気の空燃比を目標空燃比に一致させるように制御する内燃機関の空燃比制御装置において、
前記機関により駆動される車両の運転者の加減速意志を示すパラメータに応じて、前記機関に供給する燃料量を補正する加減速補正量を算出する加減速補正量算出手段を備え、
前記制御手段は、前記制御入力の過去値と前記加減速補正量の過去値の積に基づいて最新の制御入力を決定することを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
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