JP3752637B2 - 油吸着機能性オイルネット - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、油吸着材に関し、道路又は工場等の路面上や海又は河川等の水面上に浮遊した油類の拡散防止、吸着および回収除去を行なう吸着機能性オイルネットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、油搬送量の増加に伴い、船舶から流出した多量の油類は、海洋はもちろん沿岸までも汚染して自然環境を破壊している。また、工場や家庭からの産業排水や生活廃水中の油類は、河川や土壌さらには海洋にまで拡散して自然環境を破壊している。これらの流出油の拡散防止方法としては、オイルフェンスを水面上に張り巡らせる方法、吸着方法としては、不織布内に吸油性ゲル粒子を保持するマット状物や生分解性吸収材スポンジや古紙を利用した吸着材等を水面上に投入する方法、回収方法としては、ポンプを用いて水と油の混合水を汲み上げて乳化材等によって処理する方法等が用いられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、オイルフェンスを水面上に張り巡らせる方法では、ほとんどが拡散防止の目的しか果せず、油吸着性を持つものもあるが、その吸着性能は低く、油類の回収除去効率が悪い。種々の吸着材を投入する方法では、油の吸着はできるが油類の流出、拡散は防げない。さらに油類を吸着した油吸着材が、波や風に流されて拡散するので回収作業が困難であった。ポンプを用いて水と油の混合水を汲み上げて乳化剤等によって処理する方法では、油の回収はできるが拡散は防げず、さらに油流出現場で使用する機械器具等の設備に大幅なコストがかかっていた。これら従来の方法では、流出した油類の拡散防止、吸着および回収除去作業を同時に、軽作業で簡単に、低コストで行なうことはできなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、路面上や水面上に流出した油類の拡散防止、吸着および回収除去作業を同時に、軽作業で簡単に、低コストで行なうことができる油吸着機能性に優れたオイルネットを提供することにある。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態を示す油吸着機能性オイルネットの正面図である。この油吸着機能性オイルネットは、仕切部13により複数の区画に区切られ、各区画内に油吸着材を収納できるような袋状の構造としたものである。通常、市販されている油吸着材21のサイズは50×50cmや40×60cm等のマット状に加工されているものが多い。油吸着機能性オイルネットは、ネット11内を1ヶ所以上に設ける仕切部13によって複数の区画に区切り、1枚のネット11内の各区画内にマット状の油吸着材21が1枚以上収納できるようになっている。
【0006】
油吸着機能性オイルネットに収納するマット状の油吸着材21の枚数は、何枚でもよいが、枚数を増やすとそれに比例して、油類を吸着した油吸着機能性オイルネットの総重量も増加する。そのため、油類を吸着した油吸着機能性オイルネットを路面や水面から回収する作業や油吸着材21の交換作業が、重労働になる。また、ネット11に収納する油吸着材の枚数が少なすぎると、油吸着材21の交換作業の回数ばかり増えて、油回収作業の効率が低下する。油吸着機能性オイルネットの一端をつかんで、手繰り寄せる手作業の場合を考えると、1枚の油吸着機能性オイルネットに収納するマット状油吸着材21の枚数は、通常3枚〜8枚、より好ましくは、4枚〜6枚程度であるが、機械を使用する場合には、はるかに多くの吸着材を使用することができる。
【0007】
また、収納形態も仕切部13で区切られた各区画に、マット状の油吸着材21を1枚ずつ横1列に挿入するだけでなく、ネット11を厚くして、1つの袋に油吸着材21を複数毎あるいは複数個重ねて入れてもよい。また、ネット11内を十文字型の仕切部13で2行2列の4区画に区切っても、2つの十文字型の仕切部13で2行3列の6区画に区切っても、3行2列の6区画に区切ってもよい。仕切部13によるネット11の区切り方に限定はない。油吸着材21が簡単に出し入れ可能であって、使用時にオイルネット内にきちんと収納されるものであればよい。
【0008】
また油吸着材21には、50×50cmや40×60cm等のマット状に加工されていないものもある。油吸着機能性ネットの中に入れる油吸着材21の形態に限定はなく、マット状、スポンジ状、繊維状、紙状、固形状、粒体状、粉体状等でもよい。これらの油吸着材21は、ネット11の網目から落ちない程度の大きさを持つもの、また油吸着材21がネットの網目から落ちないような加工を施したものが好ましい。さらに、油吸着材21の交換作業の点も考慮すると、油吸着材21は、不織布で覆う等の加工を施したものがより好ましい。油吸着機能性ネットへの油吸着材21の全挿入量は、油類を吸着した油吸着機能性オイルネットの総重量が増加することを考慮して適宜挿入する。
【0009】
またこの油吸着機能性オイルネットは、開閉部12を持ち油吸着材を交換できる構造とするものである。例えば、辺31の一端を開閉部12として、開閉部12の止め具にファスナー等を用いて操作を簡単にし、1枚のネット11に複数の油吸着材21を簡単に出し入れできる構造とすることが好ましい。
【0010】
この油吸着機能性オイルネットの開閉部12は、必ずしも各区画ごとに別けて設ける必要はない。また開閉部12の止め具は、上記の例のファスナーに限らず、ひも、ホック、ボタン、ピン、面ファスナー等でもよく、油吸着材21の出し入れがしやすく、油吸着材21が使用中にネット11から出ないような機能を持つものであればよい。また、この油吸着機能性オイルネットの開閉部12の位置は、一実施例に示した辺31の一端に限らず、辺31と辺31と相対する辺の両端でも、仕切部13でも、仕切部13で区切られた区画内でもよい。開閉部12の位置は、油吸着機能性オイルネットの形態に合わせて、ネット11に油吸着材21を簡単に出し入れできる位置であればよい。
【0011】
またこの油吸着機能性オイルネットは、異なる2種類の連結用部材を持ち、オイルネット同士を連結してオイルフェンスとして使用できる構造とするものである。例えばバックルと面ファスナーを用いる場合を説明すると、辺32の表面にバックル(メス)14を取り付け、辺32の裏面に面ファスナー(メス)16を取り付ける。辺32の他端(辺32と反対側の端部)の表面にバックル(オス)15と面ファスナー(オス)17を取り付ける。複数の油吸着機能性オイルネットを連結させるには、1枚の油吸着機能性オイルネットの面ファスナー(メス)と別の油吸着機能性オイルネットの面ファスナー(オス)を重ねあわせて、圧着接合させる。さらに油吸着機能性オイルネットの連結が水面上浮遊中や、油吸着機能性オイルネットの回収時に外れないように、バックルのオスとメスを合わせる。このように異なる2種類の連結具を用いることでオイルネットの連結をより強固にできる。
【0012】
この油吸着機能性オイルネットの連結部材は、面ファスナーとバックルの併用の例に限らず、どちらか一方でも使用できる場合もあるが、天候が悪く波風が荒い時や、油類を吸着して重量が非常に重くなった油吸着機能性オイルネットを回収する時等の様々な条件の場合を考慮すると、面ファスナーとバックル等、異なる2種の連結部材を併用して、連結の確実性を高めたほうがより好ましい。油吸着機能性オイルネットの連結部材の他の例としては、ひも、ホック、ボタン、ピン、ファスナー等がある。これらの連結具の組み合わせを考えるときは、できるだけ連結部材の強度を考慮する。例えば、タテ方向の引張強度とヨコ方向の引き剥がし強度等、接続方向に対する強度の異なる連結部材を組み合わせるほうがよい。また連結部材取り付け位置は、辺32と辺32の他端の両端に限らない。この油吸着機能性オイルネットの連結部材および取り付け位置は、シケや荒波等の環境下でも連結が外れないように、強固な接続ができて、油類の流出や拡散を防ぐことができるオイルフェンス状に油吸着機能性オイルネットを接続できるものであればよい。
【0013】
またこの油吸着機能性オイルネットは、ロープ通し輪18等のロープや重鎮の取付け部材や穴等のロープや重鎮の取付け箇所を有する等、ロープや重鎮等を通すことができる構造とするものである。例えば、辺31の一端(ファスナー側)にロープ通し輪18を付け、辺31の他端にロープ通しおよび重鎮接続用のハトメ19を付けている。ロープ通し輪18、ハトメ19の使用例を挙げる。1.多くの油吸着機能性オイルネットを直線状に連結させたオイルネットのロープ通し輪18にロープを通し、河川をまたがせて岸に固定させて、オイルネットを水面に浮かせて、河川で油類の流れを堰き止める。2.図2に示すごとく、油吸着機能性ネットを連結させたオイルフェンスのハトメ19に、重鎮41を結びつけ、水面上に浮いているオイルフェンスを沈めて、河川や海洋上の水面上だけでなく、水面近くの水中に浮遊する油類をより多く吸着させる。また、図2のロープ42の代わりに、予め設置されたオイルフェンスに取付けて使用することも非常に油吸着回収の効果をあげる。3.図3に示すごとく、油吸着オイルネットを1つまたは複数連結させ、帯状オイルネット51を作成し、河川の流れ方向52に沿って、1本の帯状オイルネット51のロープ通し輪18とハトメ19にロープ42を通し、辺32をロープ42に平行接続して、帯状オイルネット51間の間隔を空けて、複数の帯状オイルネット51の吹き流しをつくる。河川の水流に合わせて、この吹き流しを複数設置したり、設置密度を調節する等して、河川の水の流れは堰き止めずに、油類のみ油吸着材21に吸着させる。4.海洋上で流出した油類の拡散を防ぐために、油吸着機能性オイルネットを環状につないだオイルフェンスで流出油類を包囲する。また、予め環状に設置されたオイルフェンスの内側に油吸着機能性オイルネットを取付けて使用すると非常に油吸着回収の効果がある。
【0014】
このように油類流出状況に合わせてロープ通し輪18、ハトメ19、重鎮41およびオイルフェンスを使って、油吸着機能性オイルネットをいろいろな形態に接続して使用することができる。また、これら使用実施例以外でも油吸着機能性オイルネットの設置、回収作業および油吸着材21の交換作業等では、ロープを通していなくても、オイルネットの一端をつかんで、手繰り寄せることにより簡単に行なうことは可能であるが、油吸着機能性オイルネットにロープを通していると、作業を効率よく行なうことができる。
【0015】
この油吸着機能性オイルネットのロープ取付け部材は、ロープ通し輪18やハトメに限らない。またロープ取付け部材の取り付け位置は、辺31の両端に限らない。この油吸着機能性オイルネットのロープ取付け部材および取り付け位置は、油吸着機能性オイルネットの投入、オイルフェンスの接岸作業、油吸着機能性オイルネットの回収および油吸着材21の交換作業を、簡単に行なえる位置であればよい。
【0016】
また油吸着機能性オイルネットは、構成部材(ネット11、開閉部12の止め具、連結部材、ロープ取付け部材)の素材に、オレフィン系樹脂等の耐油性のある焼却可能な素材を用いることが非常に好ましい。例えば、オレフィン系樹脂等は比較的軽量であるため、油吸着機能性オイルネットの総重量は軽量である。油流出現場への投入、回収作業や油吸着材21の交換作業を容易に行なうことができる。
【0017】
また油吸着機能性オイルネットの構成部材は、オレフィン系樹脂等の耐油性に優れた素材を用いており、大量の油類に長時間接していても、油吸着機能性オイルネットを使用中に、ネットが切れたり破れたり、開閉部12の止め具、連結部材およびロープ取付け部材が破損したり、外れたりする恐れはない。さらに、油吸着材21の交換により、油吸着機能性オイルネットは、何度も繰り返し使用できる。
【0018】
またオレフィン系樹脂等は、焼却しても発生する熱量や排ガスも比較的少ないので、油吸着機能性オイルネットは焼却処分が可能である。そのため、油吸着材21に特開平7−155590号のような天然素材や古紙等の焼却可能な素材を用いた場合、油吸着機能性オイルネットが再使用不可能な状態になったときは、油吸着材21の焼却時に、油吸着機能性オイルネットごと焼却可能である。
【0019】
また、油吸着機能性オイルネットのネット部本体、開閉部の止め具、連結部材およびロープ取付け部材等は、オレフィン系樹脂等を素材としたので、製造が容易で大量生産可能である。また仕切部13、開閉部12の止め具、連結部材およびロープ取付け等の部材をオイルネットに取り付ける作業も簡単にできる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の油吸着機能性オイルネットは、路面上や河川での油流出はもちろん、海洋上でのオイルタンカーの座礁等による油流出の大事故の場合でも、市販の油吸着材を多量に収納可能であるため、油吸着材の投入や回収作業を簡単、かつ効率よく行なうことが可能である。また、オイルネットの開閉部12を辺31にファスナーを取付ける等の方法により、油吸着材の交換作業がしやすい構造となっている。また、油吸着機能性オイルネットは、油吸着材の交換により、何回も使えるので油類の回収除去作業のコストを低くすることができる。
【0021】
更に、油吸着機能性オイルネットは、異なる2種の連結部材、ロープや重鎮の取付け部材、取付け箇所を持つので、油吸着機能性オイルネット1枚単体で使用するだけでなく、河川、海洋、路面等現場に合わせて油吸着機能性オイルネットの接続形態を様々に変えてつなぎ、オイルフェンスとして使用したり、オイルフェンスに取付けて油吸着回収材として使用することができる。そのため、効率よく油類の流出や拡散を防ぎ、オイルフェンスの投入、設置、回収作業を簡単に行なうことができる。
【0022】
また連結部材をはじめ、オイルネットのほとんどの部材をオレフィン系樹脂製としたので、油吸着機能性オイルネットは軽量で、耐油性に優れていて丈夫である。油吸着材の交換により、油吸着機能性オイルネットを何回も使うことができ、油吸着作業コスト低くすることができる。さらにオレフィン系樹脂は、大量生産が可能で安価に製造することができ、処分方法は焼却した場合に環境汚染の恐れが小さく、油吸着材21ごと焼却できるため簡単である。
【0023】
本発明の油吸着機能性オイルネットを用いることにより、道路又は工場等の路面上や、海又は河川等の水面上に浮遊する油類の流出拡散防止、吸着および回収除去を、同時に軽作業で簡単に、低コストで行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一部を省略した一実施形態の示す油吸着機能性オイルネットの正面図である。
【図2】本発明の油吸着機能性オイルネットを河川に設置した一実施例の模式断面図である。
【図3】本発明の油吸着機能性オイルネットを河川に設置した一実施例の上面図である。
【符号の説明】
11 ネット
12 開閉部
13 仕切部
14 バックル(メス)
15 バックル(オス)
16 面ファスナー(メス)
17 面ファスナー(オス)
18 ロープ通し輪
19 ハトメ
21 油吸着材
31〜32 油吸着機能性オイルネットの一辺
41 重鎮
42 ロープ
43 杭
44 岸
51 帯状オイルネット
52 河川の流れ方向
53 連結部
Claims (3)
- 袋状のネット11内を、複数の区画に仕切部13で区切り、該仕切部13で区切られた各区画の各開閉部12から、少なくとも1枚以上または1個以上の油吸着材21を各区画毎に収納および交換可能とし、袋状のネット11内の周辺にロープ通し部材や重鎮の取付け部材、またはロープ通しや重鎮の取付け箇所や取り付け穴の1種以上を設け、水面に対して平行に浮かばせるオイルネットとしてだけでなく、水面に対して垂直に設置するオイルフェンスとしても利用可能となり、油類の拡散防止、吸着および回収除去を同時に行うことを特徴とする油吸着機能性オイルネット。
- 油吸着機能性オイルネットを複数枚連結させるために異なる方向に対する接続強度を持つ連結部材が2種以上取付けられており、複数枚連結させた油吸着機能性オイルネットの連結部において、一方向性だけでない強度の強固な接続ができて、油類の流出や拡散を防ぐことができる接続部材を持つことを特徴とする請求項1記載の油吸着機能性オイルネット。
- 油吸着機能性オイルネットを構成する各部材に、オレフィン系樹脂素材を用いたことを特徴とする請求項1又は2記載の油吸着機能性オイルネット。
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