JP3750859B2 - レーダ追尾装置及びレーダ追尾処理方法 - Google Patents
レーダ追尾装置及びレーダ追尾処理方法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーダ追尾装置及びレーダ追尾処理方法に係り、より詳しくは、目標の極座標による3次元位置情報に基づいて予測値を算出するレーダ追尾装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のレーダ追尾装置としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。この特許文献1に記載のレーダ装置は、次のように構成される。目標物体の目標信号をレーダによって取得し、測高値を算出し、測高値と前回の平滑化高度との差である高度差を計算し、目標物体の機動状態の指標判定を行い、高度方向の最大移動可能距離を推定し、SIFモードを算出し、SIFモードと前回のSIFモードとの差であるSIFモード高度差を計算し、目標物体の機動状態から高度差とSIFモード高度差を判定し、目標物体の運動状態に応じて運動状態粗判定を行い高度の平滑化定数を設定して目標物体の平滑化高度を算出する。
【0003】
また、従来のレーダ追尾装置の他の例としては、非特許文献1に記載のものがある。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−42036号公報
【非特許文献1】
エス・エス・ブラックマン(S.S.Blackman)著,「マルチプル・ターゲット・トラッキング・ウイズ・レーダ・アプリケーションズ(Multiple Target Tracking with Radar Applications)」,アーテック・ハウス(Artech House)社刊,(Dedham),1986年,p.49−52
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した様な従来のレーダ追尾装置では、海面高度を一定に保ちながら移動する目標に対して、垂直方向の目標運動が非線形となるため、追尾誤差が遠距離において大きくなってしまい、追尾を外してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高度方向の追尾精度を向上させることができるレーダ追尾装置及びレーダ追尾処理方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によるレーダ追尾装置は、目標の極座標による3次元位置情報を出力する観測手段と、位置情報を極座標から海面高度及び水平面内の直交座標に変換し、観測ベクトルとして出力する観測値変換手段と、観測ベクトルに基づいて予測値を生成する予測値生成手段により構成される。
【0008】
この様な構成によれば、海面高度に基づいて予測値を算出することができるので、海面高度を一定に保ちながら移動する目標に対して高度方向の追尾精度を向上させることができる。
【0009】
本発明によるレーダ追尾処理方法は、目標の極座標による3次元位置情報及びこの位置情報の標準偏差を出力する観測ステップと、位置情報を極座標から海面高度及び水平面内の直交座標に変換し、観測ベクトルとして出力する観測値変換ステップと、ゲート内の観測ベクトルを判別するゲート判定ステップと、判別された観測ベクトルから予測ベクトル及び予測誤差共分散行列を生成する予測値生成ステップと、予測ベクトル及び位置情報の標準偏差から観測雑音共分散行列を生成する観測雑音共分散生成ステップからなり、ゲート判定ステップにおいて、予測ベクトル、予測誤差共分散行列及び観測雑音共分散行列に基づいて形成されたゲートにより観測ベクトルを判別するように構成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるレーダ追尾装置の一構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置110は、海面高度に基づいて予測値を算出することにより、海面高度を一定に保ちながら移動する目標に対する高度方向の追尾精度を向上させている。
【0011】
レーダ追尾装置110は、レーダ観測手段1、観測値変換手段2、ゲート判定手段3、予測値生成手段4、表示手段5及び観測雑音共分散算出手段6により構成される。
【0012】
レーダ観測手段1は、目標の極座標による3次元位置情報(距離、仰角及び方位角)と、この位置情報における観測雑音についての標準偏差の出力を行っている。航空機などは、海面高度を一定に保ちながら移動する場合が多い。この様な航空機などの目標について、レーダ観測手段1は位置情報を測定し、位置情報に含まれる観測雑音についての標準偏差を算出している。
【0013】
位置情報の測定は、所定のサンプリング周期で繰り返し行われ、測定した位置情報は、サンプリングごとに観測値変換手段2へ出力される。また、位置情報から算出した標準偏差は、サンプリングごとに観測雑音共分散算出手段6へ出力される。
【0014】
観測値変換手段2は、レーダ観測手段1からの位置情報を極座標から海面高度及び水平面内の直交座標に変換し、観測ベクトルとして出力する観測ベクトル生成手段である。水平面内の直交座標としては、例えば、北基準直交座標における水平成分が用いられ、位置情報は、所定の変換式により極座標から海面高度及び直交座標に変換される。変換後の位置情報は、位置情報を成分にもつ観測ベクトルとしてゲート判定手段3へ出力される。
【0015】
ゲート判定手段3は、観測値変換手段2からの観測ベクトルに対し、ゲートを設けてゲート内の観測ベクトルの判別を行っている。ゲートは、追尾目標に対応した観測ベクトルを選別するために設けられ、予測値生成手段4からの予測値と、観測雑音共分散算出手段6からの観測雑音共分散行列に基づいて形成される。また、予測値及び観測雑音共分散行列に基づいて残差共分散行列が算出され、予測値及び判別した観測ベクトルとともに予測値生成手段4へ出力される。
【0016】
予測値生成手段4は、ゲート判定手段3により判別された観測ベクトルに基づいて、予測ベクトル及び予測誤差共分散行列からなる予測値の生成を行っている。予測値生成手段4は、データ更新手段7、予測手段8及び遅延手段9により構成される。
【0017】
データ更新手段7は、ゲート判定手段3からの観測ベクトル、残差共分散行列及び予測値に基づいて、平滑ベクトル及び平滑誤差共分散行列からなる平滑値を算出する平滑値算出手段である。この平滑値は、追尾目標の運動状態の統計値を表し、例えば、カルマンフィルタの理論に基づいて算出される。また、残差共分散行列及び予測誤差共分散行列に基づいて算出するゲイン行列から生成される。算出した平滑ベクトルは表示手段5へ出力され、平滑ベクトル及び平滑誤差共分散行列は予測手段8へ出力される。
【0018】
予測手段8は、データ更新手段7からの平滑値に基づいて予測値を算出する予測値算出手段である。この予測値は、1サンプリング後の運動状態の推定値を表し、カルマンフィルタの理論に基づいて算出される。また、予測誤差共分散行列は、駆動雑音の共分散行列に基づいて生成される。駆動雑音は、制御理論の運動モデルにおいて定める目標運動のあいまいさを表し、例えば、駆動雑音を大きく設定すると、目標に対する追従性が増す。算出した予測値は、遅延手段9へ出力される。
【0019】
遅延手段9は、予測手段8からの予測値に対して1サンプリング分だけ遅延させる処理を行っている。遅延させた予測ベクトルが観測雑音共分散算出手段6へ出力され、遅延させた予測値がゲート判定手段3へ出力される。
【0020】
表示手段5は、データ更新手段7からの平滑ベクトルに基づいて追尾目標の航跡の表示を行っている。例えば、追尾目標の現時刻における推定位置が画面表示され、移動速度が矢印等により示される。この矢印は、向きが目標の進行方向を表し、長さが目標の速さに相当している。
【0021】
観測雑音共分散算出手段6は、レーダ観測手段1からの位置情報の標準偏差と、遅延手段9からの遅延された予測ベクトルに基づいて、観測雑音の共分散行列の生成を行っている。この観測雑音共分散行列は、海面高度に基づいて算出され、算出した観測雑音共分散行列は、ゲート判定手段3へ出力される。
【0022】
次に、レーダ追尾装置110における処理手順の詳細について説明する。
【0023】
図2は、レーダから見た目標の位置関係の一例を示した説明図である。垂直方向をz軸とし、水平面内における直交方向をx軸及びy軸とする3次元の北基準直交座標において、レーダOから見た追尾目標Tの極座標による位置情報が、距離R、仰角E及び方位角Byである場合を考える。なお、OT間の距離がRであり、線分OTが水平面(xy平面)となす角がEである。また、線分OTの水平面に対する正射影がx軸となす角がByである。
【0024】
このとき、極座標による位置情報(R,E,By)と北基準直交座標による位置情報(x,y,z)との関係は、次式(1)により表される。
【数1】
【0025】
図3は、レーダから見た目標の地球中心に対する位置関係を示した説明図である。本実施の形態では、式(1)におけるz座標の代わりに海面高度hを用いて位置情報を表している。海面高度hは、追尾目標Tの海面からの高さであり、追尾目標T及び地球の中心Kを結ぶ線分TKが海面と交わる点をUとすれば、UT間の距離となる。地球の中心KとレーダOを結ぶ直線をz軸とし、地球半径をρとする。
【0026】
地球を球体と考えた場合、KT間の距離はρ+hとなり、三角形KOTに対する解析学の余弦定理からhは、次式(2)により表される。
【数2】
【0027】
観測値変換手段2は、追尾目標Tの位置情報を式(1)及び(2)に基づいて(R,E,By)から(x,y,h)に変換し、これを観測ベクトルとしてゲート判定手段3に出力する。
【0028】
図4は、観測ベクトルのゲート判定の一例を示した説明図である。サンプリング時刻kにおける観測ベクトルをZo(k)とする。ゲート判定手段3は、次式(3)によりゲートを形成する。
【数3】
【0029】
式(3)において、Zp(k)は予測ベクトルの位置成分を表すベクトルであり、S(k)は残差Zo(k)−Zp(k)の共分散行列である。また、dはゲートの大きさを決めるゲートサイズパラメータである。なお、ベクトル及び行列の添え字「T」は転置を表し、添え字「−1」は逆行列を表している。
【0030】
残差共分散行列S(k)は3×3行列であり、ゲート判定手段3により次式(4)から求められる。
【数4】
【0031】
式(4)において、Pp(k)は予測誤差共分散行列であり、Hは観測行列である。また、Θ(k)は海面高度hを考慮した観測雑音共分散行列である。
【0032】
また、予測ベクトルの位置成分を表すベクトルZp(k)は、予測ベクトルをXp(k)として次式(5)から算出される。
【数5】
【0033】
ところで、予測ベクトルXp(k)の構成は、カルマンフィルタの理論に基づいて、運動モデルにおける目標の状態ベクトルの構成により決められる。ここでは、この状態ベクトルを目標の観測位置及び速度からなる6変量のベクトルとして次式(6)により定める。予測ベクトルXp(k)も同様の構成とする。
【数6】
【0034】
式(6)において、x(k),y(k)及びh(k)はサンプリング時刻kにおける位置x,y及び海面高度hをそれぞれ表し、Vx(k),Vy(k)及びVh(k)は速度のx成分、y成分及びh成分をそれぞれ表している。このとき、観測行列Hは、観測ベクトルZo(k)の次数をnとし、n×n行列の単位行列をIn、n×n行列の零行列をOnとして次式(7)により表される。
【数7】
【0035】
残差Zo(k)−Zp(k)が多変量正規分布に従うと仮定した場合に、図4に示す楕円体の境界を含む内部の領域がゲートを構成する。なお、ゲートの形状を決める確率分布はユーザが目的に応じて変えても良い。
【0036】
サンプリング時刻kにおいて3つの観測ベクトルZo(k,1),Zo(k,2),Zo(k,3)が得られたとすると、これらの観測ベクトルのうち、Zo(k,1)及びZo(k,2)はゲート内の観測ベクトルと判定され、Zo(k,3)はゲート外の観測ベクトルと判定される。
【0037】
残差が多変量正規分布に従うと仮定した場合、各観測ベクトルZo(k,1)〜Zo(k,3)にそれぞれ対応する尤度γ(k,1)〜γ(k,3)が多変量正規分布の確率密度関数により算出される。尤度は、ゲートの中心(Zp(k))からの距離に対応している。
【0038】
これらの尤度γ(k,1)〜γ(k,3)を用いるかまたは、式(3)の左辺で表される2次形式の大きさを用いることにより、ゲートの中心に最も近いゲート内の観測ベクトルの1つであるZo(k,1)が選択され、目標の観測ベクトルとみなされる。
【0039】
データ更新手段7では、目標の観測ベクトルZo(k)と、この観測ベクトルZo(k)に関連する残差共分散行列S(k)、予測ベクトルXp(k)及び予測誤差共分散行列Pp(k)から、カルマンフィルタの理論に基づいて、ゲイン行列K(k)、平滑ベクトルXs(k)及び平滑誤差共分散行列Ps(k)が次式(8)〜(10)により算出される。ここで、状態ベクトルX(k)の次数をmとし、m×m行列の単位行列をImとしている。
【0040】
【数8】
【0041】
予測手段8では、サンプリング時刻kにおける平滑ベクトルXs(k)及び平滑誤差共分散行列Ps(k)から、カルマンフィルタの理論に基づいて、次のサンプリング時刻k+1における予測ベクトルXp(k+1)及び予測誤差共分散行列Pp(k+1)が次式(11),(12)により算出される。
【0042】
【数9】
【0043】
式(11)及び(12)において、Φ(k)は状態遷移行列であり、Q(k)は駆動雑音の共分散行列である。Q(k)はm×m行列である。状態ベクトルX(k)を式(6)で定めた場合、状態遷移行列Φ(k)は、サンプリングの時間間隔をTk=tk−tk−1として、次式(13)により表される。
【数10】
【0044】
遅延手段9では、サンプリング時刻k+1における予測ベクトルXp(k+1)及び予測誤差共分散行列Pp(k+1)を1サンプリング分だけ遅延させ、サンプリング時刻kにおける予測ベクトルXp(k)及び予測誤差共分散行列Pp(k)が算出される。
【0045】
観測雑音共分散算出手段6では、遅延された予測ベクトルXp(k)と、極座標による観測位置の標準偏差σR,σE及びσByから、海面高度h(k)に基づく観測雑音共分散行列Θ(k)が次式(14)〜(16)により算出される。
【数11】
【0046】
式(14)及び(15)において、Λ(k)は極座標による観測雑音共分散行列であり、式(14)中の「diag」は対角行列であることを表している。また、式(14)におけるΩ(k)は式(16)から求められる。なお、「∂」は微分記号である。
【0047】
式(16)において、x,y,hには、予測ベクトルXp(k)の位置成分x(k),y(k),h(k)がそれぞれ代入され、R,E,Byには、予測ベクトルXp(k)の位置成分を代入し、逆算することにより式(1)及び(2)から求められる値が代入される。ここで、式(16)の右辺は、解析学の1次近似を表し、さらに次式(17)のように表される。
【0048】
【数12】
【0049】
図5は、レーダと海面高度一定で移動する目標の位置関係を示した説明図である。地表面または海面IJの上空を一定高度hでHからTまで移動する目標を追尾目標Tとして想定し、従来のレーダ追尾装置の問題点について、次に説明する。なお、地表面あるいは海面から一定の高度をもってレーダOを配置しても良いが、説明を簡単にするため、レーダOは地表面あるいは海面上に設置されているものとする。
【0050】
海面高度h一定で移動する目標Tの位置情報を、水平面ABをxy平面、天頂方向OCをz軸とする北基準直交座標により表すと、z軸方向の目標運動が非線形になる。式(1)の北基準直交座標におけるx,y,zにより状態ベクトルを定め、線形な等速直線運動モデルを仮定する従来のレーダ追尾装置では、非線形な目標運動を追尾すると、特に非線形性が顕著になる遠距離において、z軸方向の追尾誤差が大きくなってしまうという問題があった。
【0051】
また、民間航空機などは、防衛用の航空機などとは異なり、高度方向について急激な変化を伴う運動を行うことが少ない。このため、状態ベクトルのz成分を一定とする運動モデルを用いて追尾装置を構成することが従来から行われている。z成分が一定の運動モデルは、状態ベクトルにおける速度のz成分をゼロとおいたものと等価である。従来のレーダ追尾装置では、このz成分を一定とする運動モデルを仮定すると、目標運動の軌道がDFGEになり、z成分を一定とした場合の目標位置Gと実際の目標位置TとのずれGTが遠距離になるほど大きくなってしまい、z軸方向の追尾誤差が大きくなるという問題があった。
【0052】
この様に従来のレーダ追尾装置では、z軸方向の追尾誤差が大きくなるが、z軸方向の追尾誤差が大きくなると、例えば、観測雑音共分散行列を算出する過程において、xがzと相関する項、及び、yがzと相関する項に影響するので、最終的に、x及びy軸方向の追尾誤差も大きくなってしまう。このため、ゲート内に追尾目標Tの観測ベクトルを捕捉できず、追尾を外してしまう場合があった。
【0053】
本実施の形態では、式(6)により海面高度h(k)を状態変数とする状態ベクトルX(k)を定め、式(14)〜(17)により観測雑音共分散行列Θ(k)を算出しているので、海面高度一定で移動する目標に対して目標運動が線形になる。このため、追尾誤差を低減することができる。
【0054】
図6のステップST1〜ST9は、図1のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。追尾処理が開始されると、まず、レーダ観測手段1から極座標における観測諸元を取得する(ステップST1)。極座標観測諸元は、追尾目標Tの観測位置(R,E,By)及びその標準偏差(σR,σE,σBy)である。
【0055】
次に、観測値変換手段2は、レーダ観測手段1からの極座標観測位置(R,E,By)を式(1)及び(2)に代入して、海面高度h(k)に基づく観測位置(x(k),y(k),h(k))を算出し、観測ベクトルZo(k)として出力する(ステップST2)。一方、観測雑音共分散算出手段6は、式(14)〜(16)に、レーダ観測手段1からの標準偏差(σR,σE,σBy)と、遅延手段9からの予測ベクトルXp(k)の位置成分を代入し、海面高度h(k)を考慮した観測雑音共分散行列Θ(k)を算出する(ステップST3)。
【0056】
ゲート判定手段3は、遅延手段9からの予測ベクトルXp(k)及び予測誤差共分散行列Pp(k)と、観測雑音共分散算出手段6からの観測雑音共分散行列Θ(k)から、式(3)〜(5)によりゲートを形成し、レーダ観測手段1からの観測ベクトルZo(k)のゲート判定を行う(ステップST4)。ゲート判定の結果、ゲート内のゲート中心に最も近いベクトルが目標の観測ベクトルとして出力される。
【0057】
データ更新手段7は、ゲート判定手段3からの観測ベクトルを式(8)〜(10)に代入し、平滑諸元を算出する(ステップST5)。平滑諸元は、ゲイン行列K(k)、平滑ベクトルXs(k)及び平滑誤差共分散行列Ps(k)である。
【0058】
表示手段5は、データ更新手段7からの平滑ベクトルXs(k)を用いて、追尾目標Tの航跡を表示する(ステップST6)。
【0059】
予測手段8は、データ更新手段7からの平滑諸元を式(11)及び(12)に代入し、予測諸元を算出する(ステップST7)。予測諸元は、サンプリング時刻k+1における予測ベクトルXp(k+1)及び予測誤差共分散行列Pp(k+1)である。予測諸元は遅延手段9により遅延された後、観測雑音共分散算出手段6及びゲート判定手段3に出力される。
【0060】
サンプリング時刻kがサンプリングの終了時刻kend以下である場合は、サンプリング時刻kを次のサンプリング時刻k+1に置き換え(ステップST8,ST9)、ステップST1〜ST7の処理手順を繰り返す。
【0061】
そして、サンプリング時刻kが終了時刻kendを越えると、この追尾処理は終了する。
【0062】
本実施の形態によれば、海面高度h(k)を状態変数とする状態ベクトルX(k)に基づいて追尾フィルタを構成することにより、海面高度一定で移動する目標の追尾誤差が低減され、高度方向の追尾精度を向上させることができる。
【0063】
実施の形態2.
本実施の形態のレーダ追尾装置120は、図1のレーダ追尾装置110(実施の形態1)と比較して、式(1)のxy座標の代わりに次に説明するスラント座標を用いて位置情報を表している。
【0064】
図7は、レーダから見た目標の位置関係を示した説明図である。水平面内における北方向をx軸、東方向をy軸とし、垂直方向をz軸とする北基準直交座標に対し、次式(18)により表される位置情報(rx,ry)をスラント座標と呼ぶことにする。
【数13】
【0065】
レーダOと追尾目標Tを結ぶ直線OTのxy平面に対する正射影を直線OFとすると、OF=Rであり、rx=OFcosBy=FD,ry=OFsinBy=FGである。式(1)及び(18)から(x,y)と(rx,ry)との関係は、次式(19)により表される。
【数14】
【0066】
式(19)によれば、仰角Eが十分小さいとみなせるほど遠距離の追尾目標Tに対しては、cosE≒1とみなせるので、スラント座標(rx,ry)は、(x,y)と一致することがわかる。
【0067】
観測値変換手段2は、レーダ観測手段1からの極座標による3次元位置情報を、式(2)及び(18)により海面高度h(k)及びスラント座標からなる位置情報(rx,ry,h)に変換し、観測ベクトルZo(k)として出力している。つまり、水平成分については、スラント座標からなる観測ベクトルZo(k)が出力される。このとき、状態ベクトルX(k)は、次式(20)により定められる。
【数15】
【0068】
観測雑音共分散算出手段6は、海面高度h(k)及びスラント座標に基づく観測雑音共分散行列Ξ(k)を次式(21)〜(23)により算出する。
【0069】
【数16】
【0070】
式(21)において、Λ(k)は式(15)により算出される。また、式(22)及び(23)において、rx,ry,hには、予測ベクトルXp(k)の位置成分rx(k),ry(k),h(k)がそれぞれ代入され、R,E,Byには、予測ベクトルXp(k)の位置成分を式(2)及び(18)に代入して得られる値が用いられる。
【0071】
ゲート判定手段3は、式(4)においてΘ(k)の代わりに、海面高度及びスラント座標に基づく観測雑音共分散行列Ξ(k)によりS(k)を算出し、ゲートを構成する。
【0072】
図8は、本発明の実施の形態2によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST1において、極座標による観測諸元が取得されると、観測値変換手段2により、式(2)及び(18)からrx(k),ry(k)及び海面高度h(k)の観測値が算出される(ステップST2a)。
【0073】
一方、観測雑音共分散算出手段6は、式(21)〜(23)からスラント座標及び海面高度を考慮した観測雑音共分散行列Ξ(k)を算出する(ステップST3a)。ステップST4〜ST9は、図6のステップST4〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0074】
距離R及び方位角Byのみ観測できる2次元レーダにおいて追尾を行う場合は、スラント座標(rx,ry)が用いられるケースが多かった。2次元レーダで観測される距離R及び方位角Byを用いてスラント座標(rx,ry)により追尾を行う場合を2D追尾と呼び、仰角Eまで観測できる3次元レーダで観測される距離R、方位角By及び仰角Eを用いて追尾を行う場合を3D追尾と呼ぶことにする。2D追尾及び3D追尾の両方を行うことができるレーダでは、従来、2D追尾から3D追尾へ、あるいは、3D追尾から2D追尾への切り換えを行おうとすると、特に切り換えの初期時間帯において不具合が生じることがあった。
【0075】
すなわち、追尾の切り換えの際、切り換えに伴う位置情報の(rx,ry)から(x,y)への変換、あるいは、その逆の変換によって、追尾誤差が大きくなり、切り換えがスムーズに行えなかった。このため、追尾を外してしまうという問題があった。
【0076】
本実施の形態によれば、状態ベクトルX(k)をスラント座標(rx,ry)に基づいて定めているので、3D追尾から2D追尾への切り換え、あるいは、その逆の切り換えをスムーズに行うことができる。
【0077】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置130は、図1のレーダ追尾装置110(実施の形態1)と比較して、予測値生成手段4に高度駆動雑音調整手段10を備えている点で異なる。
【0078】
高度駆動雑音調整手段10は、高度h方向に急上昇または急下降する追尾目標に対して、駆動雑音の調整を行っている。高度駆動雑音調整手段10は、データ更新手段7からサンプリング周期ごとに出力される平滑ベクトルXs(k)を順次に蓄積し、蓄積した平滑ベクトルから得られる追尾目標の高度差に基づいて、式(12)の駆動雑音共分散行列Q(k)の海面高度h(k)に関する成分を調整する。
【0079】
平滑ベクトルXs(k)は、L(>2)サンプリング分蓄積され、このうち、現時刻kにおける平滑ベクトルXs(k)がLサンプリング前の平滑ベクトルと比較される。比較は、平滑ベクトルXs(k)の海面高度h(k)に関する成分について行われ、各平滑ベクトルの成分の差から追尾目標がLサンプリング間に移動した高度差が判別される。この高度差が所定の閾値よりも大きい場合は、追尾目標が急上昇または急下降しているとみなされ、Q(k)の海面高度h(k)に関する成分を大きく設定するための制御信号が予測手段8へ出力される。
【0080】
予測手段8は、高度駆動雑音調整手段10からの制御信号に基づいて、Q(k)の設定を行っている。
【0081】
図10は、図9のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST6における追尾目標の航跡表示の後、高度駆動雑音調整手段10により駆動雑音共分散行列Q(k)の調整が行われる(ステップST6b)。そして、調整後のQ(k)に基づいて予測諸元が算出される。ステップST1〜ST5,ST8及びST9は、図6のステップST1〜ST5,ST8及びST9の処理手順と同様にして行われる。
【0082】
本実施の形態によれば、高度方向に急上昇または急下降する追尾目標に対する追従性を向上させることができるので、高度方向の追尾外れを防ぐことができる。
【0083】
実施の形態4.
図11は、本発明の実施の形態4によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置140は、観測ベクトルの判別に2つのゲートを用いて駆動雑音の調整を行うことにより、追尾目標に対する追従性を向上させている。
【0084】
ゲート判定手段3aは、直進目標用ゲート及び旋回目標用ゲートの2つのゲートを設けて観測ベクトルZo(k)の判別を行っている。旋回目標用ゲートは、直進目標用ゲートよりもゲートサイズが大きく、直進目標用ゲートを内包するように構成される。
【0085】
ゲートの構成は、式(3)において、直進目標用ゲートに対するゲートサイズパラメータをdsとし、旋回目標用ゲートに対するゲートサイズパラメータをdmとすると、dm≧dsとなるようにゲートサイズパラメータを設定することにより行われる。
【0086】
観測ベクトルZo(k)の判別は、はじめに、直進目標用ゲートにより行われる。このゲート内に観測ベクトルが得られた場合には、ゲート中心に最も近い観測ベクトルが追尾目標の観測ベクトルとして出力される。このとき、追尾目標は直進しているとみなす。直進目標用ゲート内に観測ベクトルが得られない場合には、次に、旋回目標用ゲートにより判別が行われる。
【0087】
旋回目標用ゲート内に観測ベクトルが得られた場合には、ゲート中心に最も近い観測ベクトルが出力される。このとき、追尾目標は旋回しているとみなされ、追尾目標に対する旋回追従性を向上させるための制御信号が予測手段8へ出力される。
【0088】
予測手段8は、ゲート判定手段3aからの制御信号に基づいて、式(12)における駆動雑音共分散行列Q(k)の旋回性に関する成分を大きくする設定を行っている。
【0089】
図12は、図11のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST3において、観測雑音共分散行列が算出されると、ゲート判定手段3aは、直進目標及び旋回目標用ゲートを形成し、観測ベクトルZo(k)を判別する(ステップST4c)。このとき、直進目標用ゲート内に観測ベクトルが存在すると判定された場合には、このゲート内の観測ベクトルのうちゲート中心に最も近い観測ベクトルが出力される。
【0090】
一方、直進目標用ゲート内に観測ベクトルが存在しないと判定された場合には、旋回目標用ゲート内に観測ベクトルが存在するか否かが判別される。旋回目標用ゲート内に観測ベクトルが存在する場合には、このゲート内の観測ベクトルのうちゲート中心に最も近い観測ベクトルが出力される。この場合、追尾目標に対する旋回追従性を向上させるため、駆動雑音の調整が行われる。ステップST1,ST2,ST5〜ST9は、図6のステップST1,ST2,ST5〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0091】
本実施の形態によれば、直進目標に対する追従性を確保しながら、旋回目標に対する追従性を向上させることができる。
【0092】
実施の形態5.
図13は、本発明の実施の形態5によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置150は、図1のレーダ追尾装置110(実施の形態1)と比較して、予測値生成手段4に航跡解除手段11を備えている点で異なる。
【0093】
航跡解除手段11は、優先順位の低い平滑ベクトルに対する追尾処理を解除する平滑値選別手段である。優先順位は、データ更新手段7から複数の追尾目標に対応して出力される平滑ベクトルに、所定の選別条件に基づいて付与され、この優先順位に基づいて平滑値の選別が行われる。
【0094】
データ更新手段7からの各追尾目標ごとの平滑ベクトルに対し、例えば、平滑ベクトルから追尾目標の進行方向が判別され、判別結果に基づいて優先順位が付与される。優先順位の低い平滑値を除外した後の平滑値が表示手段5及び予測手段8へ出力される。
【0095】
図14は、図13のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST5において、平滑諸元が算出されると、航跡解除手段11は、各追尾目標に対応する平滑ベクトルの選別を行い、優先順位の低い平滑ベクトルの航跡を解除する(ステップST5d)。ステップST1〜ST4,ST6〜ST9は、図6のステップST1〜ST4,ST6〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0096】
本実施の形態によれば、優先順位の低い平滑値に対する追尾処理を解除することにより、演算負荷を軽減することができる。
【0097】
実施の形態6.
図15は、本発明の実施の形態6によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置160は、図13のレーダ追尾装置150(実施の形態5)と比較して、レーダ観測手段1からの追尾目標に対する識別情報に基づいて優先順位の付与を行っている。
【0098】
レーダ観測手段1は、追尾目標に対する味方識別情報を取得し、航跡解除手段11へ出力している。航跡解除手段11は、この味方識別情報に基づいて、平滑ベクトルに優先順位を付与し、平滑値の選別を行っている。
【0099】
図16は、図15のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST5eにおいて、航跡解除手段11は、識別情報に基づいて優先順位を付与し、平滑値の選別が行われる。ステップST1〜ST5,ST6〜ST9は、図14のステップST1〜ST5,ST6〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0100】
本実施の形態によれば、優先度の高い追尾目標を逃すことなく、演算負荷を効果的に軽減させることができる。
【0101】
実施の形態7.
図17は、本発明の実施の形態7によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置170は、図1のレーダ追尾装置110(実施の形態1)と比較して、平滑値選択手段12を備えている点で異なる。
【0102】
本実施の形態では、式(6)の状態ベクトルに基づく追尾処理と、式(20)の状態ベクトルに基づく追尾処理が並行して行われ、各状態ベクトルに対応する平滑ベクトルを所定の選択条件により選択して表示を行っている。
【0103】
観測値変換手段2は、位置情報を水平成分について北基準直交座標からなる(x,y,h)に変換して出力するとともに、スラント座標からなる(rx,ry,h)に変換して出力する。データ更新手段7は、各状態ベクトルに対応する平滑ベクトルを算出し、平滑値選択手段12へ出力する。ここで、式(6)の状態ベクトルに対応して算出された平滑ベクトルを平滑ベクトルAと表し、式(20)の状態ベクトルに対応して算出された平滑ベクトルを平滑ベクトルBと表す。
【0104】
平滑値選択手段12は、データ更新手段7からの平滑ベクトルに基づいて、各平滑ベクトルの選択を行っている。平滑ベクトルA及びBが入力されると、平滑ベクトルAまたはBのいずれかの平滑ベクトルに基づいて、選択が行われる。どの平滑ベクトルを用いて判別するかは予め定めておく。
【0105】
平滑ベクトルの判別は、平滑ベクトルから算出される平滑距離に基づいて行われる。この平滑距離は、平滑ベクトルの位置成分から算出され、追尾目標までの距離を表している。平滑距離は所定の閾値ωと比較され、平滑距離が閾値ω以下の場合には、平滑ベクトルAが選択される。ここで、閾値ωは、目標距離が十分に遠距離であるとみなせる値とする。
【0106】
一方、平滑距離が閾値ωよりも大きい場合には、ユーザが平滑ベクトルAまたはBのいずれかを選択する。選択された平滑ベクトルは、表示手段5へ出力され、表示される。
【0107】
近距離の場合、レーダ信号処理の理論におけるマルチパスの影響が小さいと、仰角精度が良いと考えられる。このため、平滑距離が閾値ω以下の場合に、北基準直交座標に基づいて算出された平滑ベクトルAの精度の方が、スラント座標に基づいて算出された平滑ベクトルBの精度よりも良いと考えられる。従って、本実施の形態では、精度の良い平滑ベクトルが出力表示されるので、表示航跡のばらつきを低減することができる。
【0108】
図18は、図17のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST5において、平滑諸元が算出されると、平滑値選択手段12は、北基準直交座標に基づいて算出された平滑ベクトルAと、スラント座標に基づいて算出された平滑ベクトルBの選択を行う(ステップST5f)。そして、選択された平滑ベクトルが表示手段5に表示される。ステップST1〜ST4,ST6〜ST9は、図6のステップST1〜ST4,ST6〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0109】
本実施の形態によれば、精度の良い平滑ベクトルを表示させることができ、表示航跡におけるばらつきを抑えることができる。また、レーダの覆域を外れる追尾目標を継続して追尾を行うために、もしくは、より追尾精度を向上させるために、他のレーダシステムに平滑ベクトルを移管しなければならない場合には、高精度な平滑ベクトルを移管することができるので、他のレーダシステムに対する追尾誤差の影響を低減させることが可能である。
【0110】
実施の形態8.
本実施の形態のレーダ追尾装置180は、データ更新手段7から順次に出力される平滑ベクトルに対して1次のフィルタ処理を行うことにより、表示航跡を滑らかにしている。
【0111】
表示手段5は、サンプリング時刻mと、1サンプリング前のサンプリング時刻m−1のそれぞれにおける平滑ベクトルに対して、1次のフィルタ処理を次式(24)及び(25)により行っている。
【数17】
【0112】
式(24)において、mは表示が行われる時刻であり、xx(m)は時刻mにおける平滑ベクトルである。また、yy(m)はフィルタ処理により表示用に算出される平滑ベクトルである。式(24)におけるλ(m)は、xx(m)及びxx(m−1)に対する重みを表し、式(25)から算出される。τ(m)は時刻m及びm−1のサンプリング時間間隔であり、μは予め定められる時定数である。
【0113】
この様にして、制御理論に基づく1次のフィルタ処理が施され、平滑ベクトルyy(m)が表示される。
【0114】
図19は、本発明の実施の形態8によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST5において平滑諸元が算出されると、表示手段5は、平滑ベクトルに対して1次のフィルタ処理を行う(ステップST6g)。そして、処理後の平滑ベクトルに基づいて追尾目標の航跡が表示される。ステップST1〜ST4,ST7〜ST9は、図6のステップST1〜ST4,ST7〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0115】
本実施の形態によれば、1次のフィルタ処理により表示航跡を滑らかにすることができ、表示が見やすくなる。
【0116】
実施の形態9.
本実施の形態のレーダ追尾装置190は、判別用のゲート内に観測ベクトルが複数存在する場合に、各観測ベクトルの尤度に基づいて相関処理を行っている。
【0117】
ゲート判定手段3は、式(3)によるゲート判定の結果、ゲート内に観測ベクトルZo(k)が複数存在する場合に、ゲート内の各観測ベクトルに対する尤度を抽出する。これらの尤度に基づいて各観測ベクトルの相関確率β(k,i)が次式(26)〜(28)から算出される。
【0118】
【数18】
【0119】
式(26)において、m(k)はサンプリング時刻kにおけるゲート内の観測ベクトル数を表し、γ(k,i)はゲート内のi番目の観測ベクトルに対する尤度を表している。ただし、式(26)の相関確率β(k,i)はi≠0の場合を表し、i=0の場合は式(27)及び(28)により求められる。
【0120】
式(27)において、Pd(k)はサンプリング時刻kにおける目標の探知確率を表し、PG(k)はゲート内に目標が存在する確率を表している。また、βft(k)はサンプリング時刻kにおける目標以外からの誤信号が得られる誤信号密度を表している。
【0121】
ここで、γ(k,0)は、観測ベクトルが誤信号である場合の尤度を表し、ゲート内に目標が探知されない場合に、ゲート内に存在する観測ベクトルはすべて目標以外からの誤信号であるとの前提に基づいている。式(28)のβ(k,0)は、ゲート内の観測ベクトルが誤信号である場合の相関確率を表している。
【0122】
ゲート判定手段3は、ゲート内の全観測ベクトルと、ゲート内の各観測ベクトルに対応する相関確率β(k,i)をデータ更新手段7へ出力する。データ更新手段7は、各観測ベクトルに対応するゲイン行列及び平滑値を観測ベクトルごとに算出するとともに、相関確率β(k,i)に基づいてゲイン行列及び平滑値に対して相関処理を行っている。
【0123】
図20は、本発明の実施の形態9によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST3において、観測雑音共分散行列が算出されると、ゲート判定手段3は、相関確率β(k,i)を考慮したゲート判定を行う(ステップST4h)。すなわち、ゲート内の各観測ベクトルに対応する尤度から相関確率β(k,i)が算出され、ゲート内の各観測ベクトルとともに出力される。
【0124】
データ更新手段7は、相関確率β(k,i)を考慮した平滑値の算出を行う。すなわち、各観測ベクトルから各観測ベクトルに対応する平滑ベクトル及び平滑誤差共分散行列を算出し、相関確率β(k,i)に基づいて各平滑値に対して相関処理を行う(ステップST5h)。そして、処理後の平滑値が表示手段5及び予測手段8に出力される。ステップST1,ST2,ST6〜ST9は、図6のステップST1,ST2,ST6〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0125】
本実施の形態によれば、平滑諸元に対して相関処理を行うことにより、ゲート内に誤信号が多数入っている場合であってもそれらの影響が低減され、追尾目標に対する追従性を向上させることができる。
【0126】
実施の形態10.
本実施の形態のレーダ追尾装置200は、海面高度hの算出精度を上げることにより、追尾精度を向上させている。
【0127】
観測値変換手段2は、式(2)の代わりに次式(29)に基づいて、海面高度hを算出する。
【数19】
【0128】
式(29)において、ρは地球半径を、latsはレーダの設置緯度を、lonsはレーダの設置経度を、altsはレーダの設置高度を、αは地球の扁平率をそれぞれ表し、既知であるとする。また、fはhがこれらの関数であることを表している。
【0129】
観測値変換手段2は、式(29)から海面高度hを算出し、この海面高度hに基づく観測ベクトルZo(k)をゲート判定手段3へ出力する。観測雑音共分散算出手段6は、式(29)に基づいて観測雑音共分散行列の算出を行っている。
【0130】
図21は、本発明の実施の形態10によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST1において、観測諸元を取得すると、観測値変換手段2は、x,y及び地球楕円体の海面高度hの観測値を算出する(ステップST2i)。ここで、式(29)に基づいて地球楕円体を考慮した海面高度hが算出され、観測ベクトルZo(k)として出力される。
【0131】
観測雑音共分散算出手段6は、式(29)に基づいて観測誤差共分散行列を算出する(ステップST3i)。ステップST4〜ST9は、図6のステップST4〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0132】
本実施の形態によれば、地球が楕円体であることを考慮して海面高度hが算出されるので、より正確な海面高度hに基づいて追尾処理を行うことができ、追尾精度が向上する。
【0133】
実施の形態11.
図22は、本発明の実施の形態11によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置210は、レーダ追尾装置190(実施の形態9)と比較して、ゲート内観測値制限手段13を備えている点で異なる。
【0134】
ゲート内観測値制限手段13は、演算負荷に応じてゲート内の観測値数を制限するための制御信号をゲート判定手段3及びデータ更新手段7へ出力している。ゲート判定手段3は、この制御信号に基づいて、ゲート内の複数の観測ベクトルのうち尤度の高い所定数の観測ベクトルの判別を行っている。このとき、N個の観測ベクトルが判別され、判別された観測ベクトルの尤度に基づいて、相関確率β(k,i)が算出される。
【0135】
データ更新手段7は、判別された観測ベクトルに対応する相関確率β(k,i)に基づいて、平滑値に対する相関処理を行っている。
【0136】
図23は、図22のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST3において、観測雑音共分散行列が算出されると、ゲート判定手段3は、ゲート内観測値制限手段13からの制御信号に基づいて、ゲート内の観測ベクトルを尤度の高いものだけに制限して、相関確率β(k,i)を算出する(ステップST4j,ST4k)。
【0137】
データ更新手段7は、ゲート内観測値制限手段13からの制御信号に基づいて、尤度の高いN個の観測ベクトルに対応する平滑値に対して相関処理を行い、相関確率β(k,i)を考慮した平滑諸元を算出する(ステップST5j)。ステップST6〜ST9は、図20のステップST6〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0138】
本実施の形態によれば、平滑諸元に対して相関処理を行うことにより、ゲート内に誤信号が多数入っている場合であっても、追尾目標に対する追従性を確保することができるとともに、ゲート内の観測値数を制限することにより、演算負荷を低減させることができる。
【0139】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によるレーダ追尾装置及びレーダ追尾処理方法によれば、海面高度に基づいて予測値を算出するので、海面高度一定で移動する目標に対する追尾誤差が低減され、目標追尾を高精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1によるレーダ追尾装置の一構成例を示したブロック図である。
【図2】 レーダから見た目標の位置関係の一例を示した説明図である。
【図3】 レーダから見た目標の地球中心に対する位置関係を示した説明図である。
【図4】 観測ベクトルのゲート判定の一例を示した説明図である。
【図5】 レーダと海面高度一定で移動する目標の位置関係を示した説明図である。
【図6】 図1のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図7】 レーダから見た目標の位置関係を示した説明図である。
【図8】 本発明の実施の形態2によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図9】 本発明の実施の形態3によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。
【図10】 図9のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図11】 本発明の実施の形態4によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。
【図12】 図11のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図13】 本発明の実施の形態5によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。
【図14】 図13のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図15】 本発明の実施の形態6によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。
【図16】 図15のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図17】 本発明の実施の形態7によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。
【図18】 図17のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図19】 本発明の実施の形態8によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図20】 本発明の実施の形態9によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図21】 本発明の実施の形態10によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図22】 本発明の実施の形態11によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。
【図23】 図22のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
1 レーダ観測手段、2 観測値変換手段、3,3a ゲート判定手段、
4 予測値生成手段、5 表示手段、6 観測雑音共分散算出手段、
7 データ更新手段、8 予測手段、9 遅延手段、
10 高度駆動雑音調整手段、11 航跡解除手段、12 平滑値選択手段、
13 ゲート内観測値制限手段、110〜210 レーダ追尾装置。
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーダ追尾装置及びレーダ追尾処理方法に係り、より詳しくは、目標の極座標による3次元位置情報に基づいて予測値を算出するレーダ追尾装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のレーダ追尾装置としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。この特許文献1に記載のレーダ装置は、次のように構成される。目標物体の目標信号をレーダによって取得し、測高値を算出し、測高値と前回の平滑化高度との差である高度差を計算し、目標物体の機動状態の指標判定を行い、高度方向の最大移動可能距離を推定し、SIFモードを算出し、SIFモードと前回のSIFモードとの差であるSIFモード高度差を計算し、目標物体の機動状態から高度差とSIFモード高度差を判定し、目標物体の運動状態に応じて運動状態粗判定を行い高度の平滑化定数を設定して目標物体の平滑化高度を算出する。
【0003】
また、従来のレーダ追尾装置の他の例としては、非特許文献1に記載のものがある。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−42036号公報
【非特許文献1】
エス・エス・ブラックマン(S.S.Blackman)著,「マルチプル・ターゲット・トラッキング・ウイズ・レーダ・アプリケーションズ(Multiple Target Tracking with Radar Applications)」,アーテック・ハウス(Artech House)社刊,(Dedham),1986年,p.49−52
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した様な従来のレーダ追尾装置では、海面高度を一定に保ちながら移動する目標に対して、垂直方向の目標運動が非線形となるため、追尾誤差が遠距離において大きくなってしまい、追尾を外してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高度方向の追尾精度を向上させることができるレーダ追尾装置及びレーダ追尾処理方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によるレーダ追尾装置は、目標の極座標による3次元位置情報を出力する観測手段と、位置情報を極座標から海面高度及び水平面内の直交座標に変換し、観測ベクトルとして出力する観測値変換手段と、観測ベクトルに基づいて予測値を生成する予測値生成手段により構成される。
【0008】
この様な構成によれば、海面高度に基づいて予測値を算出することができるので、海面高度を一定に保ちながら移動する目標に対して高度方向の追尾精度を向上させることができる。
【0009】
本発明によるレーダ追尾処理方法は、目標の極座標による3次元位置情報及びこの位置情報の標準偏差を出力する観測ステップと、位置情報を極座標から海面高度及び水平面内の直交座標に変換し、観測ベクトルとして出力する観測値変換ステップと、ゲート内の観測ベクトルを判別するゲート判定ステップと、判別された観測ベクトルから予測ベクトル及び予測誤差共分散行列を生成する予測値生成ステップと、予測ベクトル及び位置情報の標準偏差から観測雑音共分散行列を生成する観測雑音共分散生成ステップからなり、ゲート判定ステップにおいて、予測ベクトル、予測誤差共分散行列及び観測雑音共分散行列に基づいて形成されたゲートにより観測ベクトルを判別するように構成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるレーダ追尾装置の一構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置110は、海面高度に基づいて予測値を算出することにより、海面高度を一定に保ちながら移動する目標に対する高度方向の追尾精度を向上させている。
【0011】
レーダ追尾装置110は、レーダ観測手段1、観測値変換手段2、ゲート判定手段3、予測値生成手段4、表示手段5及び観測雑音共分散算出手段6により構成される。
【0012】
レーダ観測手段1は、目標の極座標による3次元位置情報(距離、仰角及び方位角)と、この位置情報における観測雑音についての標準偏差の出力を行っている。航空機などは、海面高度を一定に保ちながら移動する場合が多い。この様な航空機などの目標について、レーダ観測手段1は位置情報を測定し、位置情報に含まれる観測雑音についての標準偏差を算出している。
【0013】
位置情報の測定は、所定のサンプリング周期で繰り返し行われ、測定した位置情報は、サンプリングごとに観測値変換手段2へ出力される。また、位置情報から算出した標準偏差は、サンプリングごとに観測雑音共分散算出手段6へ出力される。
【0014】
観測値変換手段2は、レーダ観測手段1からの位置情報を極座標から海面高度及び水平面内の直交座標に変換し、観測ベクトルとして出力する観測ベクトル生成手段である。水平面内の直交座標としては、例えば、北基準直交座標における水平成分が用いられ、位置情報は、所定の変換式により極座標から海面高度及び直交座標に変換される。変換後の位置情報は、位置情報を成分にもつ観測ベクトルとしてゲート判定手段3へ出力される。
【0015】
ゲート判定手段3は、観測値変換手段2からの観測ベクトルに対し、ゲートを設けてゲート内の観測ベクトルの判別を行っている。ゲートは、追尾目標に対応した観測ベクトルを選別するために設けられ、予測値生成手段4からの予測値と、観測雑音共分散算出手段6からの観測雑音共分散行列に基づいて形成される。また、予測値及び観測雑音共分散行列に基づいて残差共分散行列が算出され、予測値及び判別した観測ベクトルとともに予測値生成手段4へ出力される。
【0016】
予測値生成手段4は、ゲート判定手段3により判別された観測ベクトルに基づいて、予測ベクトル及び予測誤差共分散行列からなる予測値の生成を行っている。予測値生成手段4は、データ更新手段7、予測手段8及び遅延手段9により構成される。
【0017】
データ更新手段7は、ゲート判定手段3からの観測ベクトル、残差共分散行列及び予測値に基づいて、平滑ベクトル及び平滑誤差共分散行列からなる平滑値を算出する平滑値算出手段である。この平滑値は、追尾目標の運動状態の統計値を表し、例えば、カルマンフィルタの理論に基づいて算出される。また、残差共分散行列及び予測誤差共分散行列に基づいて算出するゲイン行列から生成される。算出した平滑ベクトルは表示手段5へ出力され、平滑ベクトル及び平滑誤差共分散行列は予測手段8へ出力される。
【0018】
予測手段8は、データ更新手段7からの平滑値に基づいて予測値を算出する予測値算出手段である。この予測値は、1サンプリング後の運動状態の推定値を表し、カルマンフィルタの理論に基づいて算出される。また、予測誤差共分散行列は、駆動雑音の共分散行列に基づいて生成される。駆動雑音は、制御理論の運動モデルにおいて定める目標運動のあいまいさを表し、例えば、駆動雑音を大きく設定すると、目標に対する追従性が増す。算出した予測値は、遅延手段9へ出力される。
【0019】
遅延手段9は、予測手段8からの予測値に対して1サンプリング分だけ遅延させる処理を行っている。遅延させた予測ベクトルが観測雑音共分散算出手段6へ出力され、遅延させた予測値がゲート判定手段3へ出力される。
【0020】
表示手段5は、データ更新手段7からの平滑ベクトルに基づいて追尾目標の航跡の表示を行っている。例えば、追尾目標の現時刻における推定位置が画面表示され、移動速度が矢印等により示される。この矢印は、向きが目標の進行方向を表し、長さが目標の速さに相当している。
【0021】
観測雑音共分散算出手段6は、レーダ観測手段1からの位置情報の標準偏差と、遅延手段9からの遅延された予測ベクトルに基づいて、観測雑音の共分散行列の生成を行っている。この観測雑音共分散行列は、海面高度に基づいて算出され、算出した観測雑音共分散行列は、ゲート判定手段3へ出力される。
【0022】
次に、レーダ追尾装置110における処理手順の詳細について説明する。
【0023】
図2は、レーダから見た目標の位置関係の一例を示した説明図である。垂直方向をz軸とし、水平面内における直交方向をx軸及びy軸とする3次元の北基準直交座標において、レーダOから見た追尾目標Tの極座標による位置情報が、距離R、仰角E及び方位角Byである場合を考える。なお、OT間の距離がRであり、線分OTが水平面(xy平面)となす角がEである。また、線分OTの水平面に対する正射影がx軸となす角がByである。
【0024】
このとき、極座標による位置情報(R,E,By)と北基準直交座標による位置情報(x,y,z)との関係は、次式(1)により表される。
【数1】
【0025】
図3は、レーダから見た目標の地球中心に対する位置関係を示した説明図である。本実施の形態では、式(1)におけるz座標の代わりに海面高度hを用いて位置情報を表している。海面高度hは、追尾目標Tの海面からの高さであり、追尾目標T及び地球の中心Kを結ぶ線分TKが海面と交わる点をUとすれば、UT間の距離となる。地球の中心KとレーダOを結ぶ直線をz軸とし、地球半径をρとする。
【0026】
地球を球体と考えた場合、KT間の距離はρ+hとなり、三角形KOTに対する解析学の余弦定理からhは、次式(2)により表される。
【数2】
【0027】
観測値変換手段2は、追尾目標Tの位置情報を式(1)及び(2)に基づいて(R,E,By)から(x,y,h)に変換し、これを観測ベクトルとしてゲート判定手段3に出力する。
【0028】
図4は、観測ベクトルのゲート判定の一例を示した説明図である。サンプリング時刻kにおける観測ベクトルをZo(k)とする。ゲート判定手段3は、次式(3)によりゲートを形成する。
【数3】
【0029】
式(3)において、Zp(k)は予測ベクトルの位置成分を表すベクトルであり、S(k)は残差Zo(k)−Zp(k)の共分散行列である。また、dはゲートの大きさを決めるゲートサイズパラメータである。なお、ベクトル及び行列の添え字「T」は転置を表し、添え字「−1」は逆行列を表している。
【0030】
残差共分散行列S(k)は3×3行列であり、ゲート判定手段3により次式(4)から求められる。
【数4】
【0031】
式(4)において、Pp(k)は予測誤差共分散行列であり、Hは観測行列である。また、Θ(k)は海面高度hを考慮した観測雑音共分散行列である。
【0032】
また、予測ベクトルの位置成分を表すベクトルZp(k)は、予測ベクトルをXp(k)として次式(5)から算出される。
【数5】
【0033】
ところで、予測ベクトルXp(k)の構成は、カルマンフィルタの理論に基づいて、運動モデルにおける目標の状態ベクトルの構成により決められる。ここでは、この状態ベクトルを目標の観測位置及び速度からなる6変量のベクトルとして次式(6)により定める。予測ベクトルXp(k)も同様の構成とする。
【数6】
【0034】
式(6)において、x(k),y(k)及びh(k)はサンプリング時刻kにおける位置x,y及び海面高度hをそれぞれ表し、Vx(k),Vy(k)及びVh(k)は速度のx成分、y成分及びh成分をそれぞれ表している。このとき、観測行列Hは、観測ベクトルZo(k)の次数をnとし、n×n行列の単位行列をIn、n×n行列の零行列をOnとして次式(7)により表される。
【数7】
【0035】
残差Zo(k)−Zp(k)が多変量正規分布に従うと仮定した場合に、図4に示す楕円体の境界を含む内部の領域がゲートを構成する。なお、ゲートの形状を決める確率分布はユーザが目的に応じて変えても良い。
【0036】
サンプリング時刻kにおいて3つの観測ベクトルZo(k,1),Zo(k,2),Zo(k,3)が得られたとすると、これらの観測ベクトルのうち、Zo(k,1)及びZo(k,2)はゲート内の観測ベクトルと判定され、Zo(k,3)はゲート外の観測ベクトルと判定される。
【0037】
残差が多変量正規分布に従うと仮定した場合、各観測ベクトルZo(k,1)〜Zo(k,3)にそれぞれ対応する尤度γ(k,1)〜γ(k,3)が多変量正規分布の確率密度関数により算出される。尤度は、ゲートの中心(Zp(k))からの距離に対応している。
【0038】
これらの尤度γ(k,1)〜γ(k,3)を用いるかまたは、式(3)の左辺で表される2次形式の大きさを用いることにより、ゲートの中心に最も近いゲート内の観測ベクトルの1つであるZo(k,1)が選択され、目標の観測ベクトルとみなされる。
【0039】
データ更新手段7では、目標の観測ベクトルZo(k)と、この観測ベクトルZo(k)に関連する残差共分散行列S(k)、予測ベクトルXp(k)及び予測誤差共分散行列Pp(k)から、カルマンフィルタの理論に基づいて、ゲイン行列K(k)、平滑ベクトルXs(k)及び平滑誤差共分散行列Ps(k)が次式(8)〜(10)により算出される。ここで、状態ベクトルX(k)の次数をmとし、m×m行列の単位行列をImとしている。
【0040】
【数8】
【0041】
予測手段8では、サンプリング時刻kにおける平滑ベクトルXs(k)及び平滑誤差共分散行列Ps(k)から、カルマンフィルタの理論に基づいて、次のサンプリング時刻k+1における予測ベクトルXp(k+1)及び予測誤差共分散行列Pp(k+1)が次式(11),(12)により算出される。
【0042】
【数9】
【0043】
式(11)及び(12)において、Φ(k)は状態遷移行列であり、Q(k)は駆動雑音の共分散行列である。Q(k)はm×m行列である。状態ベクトルX(k)を式(6)で定めた場合、状態遷移行列Φ(k)は、サンプリングの時間間隔をTk=tk−tk−1として、次式(13)により表される。
【数10】
【0044】
遅延手段9では、サンプリング時刻k+1における予測ベクトルXp(k+1)及び予測誤差共分散行列Pp(k+1)を1サンプリング分だけ遅延させ、サンプリング時刻kにおける予測ベクトルXp(k)及び予測誤差共分散行列Pp(k)が算出される。
【0045】
観測雑音共分散算出手段6では、遅延された予測ベクトルXp(k)と、極座標による観測位置の標準偏差σR,σE及びσByから、海面高度h(k)に基づく観測雑音共分散行列Θ(k)が次式(14)〜(16)により算出される。
【数11】
【0046】
式(14)及び(15)において、Λ(k)は極座標による観測雑音共分散行列であり、式(14)中の「diag」は対角行列であることを表している。また、式(14)におけるΩ(k)は式(16)から求められる。なお、「∂」は微分記号である。
【0047】
式(16)において、x,y,hには、予測ベクトルXp(k)の位置成分x(k),y(k),h(k)がそれぞれ代入され、R,E,Byには、予測ベクトルXp(k)の位置成分を代入し、逆算することにより式(1)及び(2)から求められる値が代入される。ここで、式(16)の右辺は、解析学の1次近似を表し、さらに次式(17)のように表される。
【0048】
【数12】
【0049】
図5は、レーダと海面高度一定で移動する目標の位置関係を示した説明図である。地表面または海面IJの上空を一定高度hでHからTまで移動する目標を追尾目標Tとして想定し、従来のレーダ追尾装置の問題点について、次に説明する。なお、地表面あるいは海面から一定の高度をもってレーダOを配置しても良いが、説明を簡単にするため、レーダOは地表面あるいは海面上に設置されているものとする。
【0050】
海面高度h一定で移動する目標Tの位置情報を、水平面ABをxy平面、天頂方向OCをz軸とする北基準直交座標により表すと、z軸方向の目標運動が非線形になる。式(1)の北基準直交座標におけるx,y,zにより状態ベクトルを定め、線形な等速直線運動モデルを仮定する従来のレーダ追尾装置では、非線形な目標運動を追尾すると、特に非線形性が顕著になる遠距離において、z軸方向の追尾誤差が大きくなってしまうという問題があった。
【0051】
また、民間航空機などは、防衛用の航空機などとは異なり、高度方向について急激な変化を伴う運動を行うことが少ない。このため、状態ベクトルのz成分を一定とする運動モデルを用いて追尾装置を構成することが従来から行われている。z成分が一定の運動モデルは、状態ベクトルにおける速度のz成分をゼロとおいたものと等価である。従来のレーダ追尾装置では、このz成分を一定とする運動モデルを仮定すると、目標運動の軌道がDFGEになり、z成分を一定とした場合の目標位置Gと実際の目標位置TとのずれGTが遠距離になるほど大きくなってしまい、z軸方向の追尾誤差が大きくなるという問題があった。
【0052】
この様に従来のレーダ追尾装置では、z軸方向の追尾誤差が大きくなるが、z軸方向の追尾誤差が大きくなると、例えば、観測雑音共分散行列を算出する過程において、xがzと相関する項、及び、yがzと相関する項に影響するので、最終的に、x及びy軸方向の追尾誤差も大きくなってしまう。このため、ゲート内に追尾目標Tの観測ベクトルを捕捉できず、追尾を外してしまう場合があった。
【0053】
本実施の形態では、式(6)により海面高度h(k)を状態変数とする状態ベクトルX(k)を定め、式(14)〜(17)により観測雑音共分散行列Θ(k)を算出しているので、海面高度一定で移動する目標に対して目標運動が線形になる。このため、追尾誤差を低減することができる。
【0054】
図6のステップST1〜ST9は、図1のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。追尾処理が開始されると、まず、レーダ観測手段1から極座標における観測諸元を取得する(ステップST1)。極座標観測諸元は、追尾目標Tの観測位置(R,E,By)及びその標準偏差(σR,σE,σBy)である。
【0055】
次に、観測値変換手段2は、レーダ観測手段1からの極座標観測位置(R,E,By)を式(1)及び(2)に代入して、海面高度h(k)に基づく観測位置(x(k),y(k),h(k))を算出し、観測ベクトルZo(k)として出力する(ステップST2)。一方、観測雑音共分散算出手段6は、式(14)〜(16)に、レーダ観測手段1からの標準偏差(σR,σE,σBy)と、遅延手段9からの予測ベクトルXp(k)の位置成分を代入し、海面高度h(k)を考慮した観測雑音共分散行列Θ(k)を算出する(ステップST3)。
【0056】
ゲート判定手段3は、遅延手段9からの予測ベクトルXp(k)及び予測誤差共分散行列Pp(k)と、観測雑音共分散算出手段6からの観測雑音共分散行列Θ(k)から、式(3)〜(5)によりゲートを形成し、レーダ観測手段1からの観測ベクトルZo(k)のゲート判定を行う(ステップST4)。ゲート判定の結果、ゲート内のゲート中心に最も近いベクトルが目標の観測ベクトルとして出力される。
【0057】
データ更新手段7は、ゲート判定手段3からの観測ベクトルを式(8)〜(10)に代入し、平滑諸元を算出する(ステップST5)。平滑諸元は、ゲイン行列K(k)、平滑ベクトルXs(k)及び平滑誤差共分散行列Ps(k)である。
【0058】
表示手段5は、データ更新手段7からの平滑ベクトルXs(k)を用いて、追尾目標Tの航跡を表示する(ステップST6)。
【0059】
予測手段8は、データ更新手段7からの平滑諸元を式(11)及び(12)に代入し、予測諸元を算出する(ステップST7)。予測諸元は、サンプリング時刻k+1における予測ベクトルXp(k+1)及び予測誤差共分散行列Pp(k+1)である。予測諸元は遅延手段9により遅延された後、観測雑音共分散算出手段6及びゲート判定手段3に出力される。
【0060】
サンプリング時刻kがサンプリングの終了時刻kend以下である場合は、サンプリング時刻kを次のサンプリング時刻k+1に置き換え(ステップST8,ST9)、ステップST1〜ST7の処理手順を繰り返す。
【0061】
そして、サンプリング時刻kが終了時刻kendを越えると、この追尾処理は終了する。
【0062】
本実施の形態によれば、海面高度h(k)を状態変数とする状態ベクトルX(k)に基づいて追尾フィルタを構成することにより、海面高度一定で移動する目標の追尾誤差が低減され、高度方向の追尾精度を向上させることができる。
【0063】
実施の形態2.
本実施の形態のレーダ追尾装置120は、図1のレーダ追尾装置110(実施の形態1)と比較して、式(1)のxy座標の代わりに次に説明するスラント座標を用いて位置情報を表している。
【0064】
図7は、レーダから見た目標の位置関係を示した説明図である。水平面内における北方向をx軸、東方向をy軸とし、垂直方向をz軸とする北基準直交座標に対し、次式(18)により表される位置情報(rx,ry)をスラント座標と呼ぶことにする。
【数13】
【0065】
レーダOと追尾目標Tを結ぶ直線OTのxy平面に対する正射影を直線OFとすると、OF=Rであり、rx=OFcosBy=FD,ry=OFsinBy=FGである。式(1)及び(18)から(x,y)と(rx,ry)との関係は、次式(19)により表される。
【数14】
【0066】
式(19)によれば、仰角Eが十分小さいとみなせるほど遠距離の追尾目標Tに対しては、cosE≒1とみなせるので、スラント座標(rx,ry)は、(x,y)と一致することがわかる。
【0067】
観測値変換手段2は、レーダ観測手段1からの極座標による3次元位置情報を、式(2)及び(18)により海面高度h(k)及びスラント座標からなる位置情報(rx,ry,h)に変換し、観測ベクトルZo(k)として出力している。つまり、水平成分については、スラント座標からなる観測ベクトルZo(k)が出力される。このとき、状態ベクトルX(k)は、次式(20)により定められる。
【数15】
【0068】
観測雑音共分散算出手段6は、海面高度h(k)及びスラント座標に基づく観測雑音共分散行列Ξ(k)を次式(21)〜(23)により算出する。
【0069】
【数16】
【0070】
式(21)において、Λ(k)は式(15)により算出される。また、式(22)及び(23)において、rx,ry,hには、予測ベクトルXp(k)の位置成分rx(k),ry(k),h(k)がそれぞれ代入され、R,E,Byには、予測ベクトルXp(k)の位置成分を式(2)及び(18)に代入して得られる値が用いられる。
【0071】
ゲート判定手段3は、式(4)においてΘ(k)の代わりに、海面高度及びスラント座標に基づく観測雑音共分散行列Ξ(k)によりS(k)を算出し、ゲートを構成する。
【0072】
図8は、本発明の実施の形態2によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST1において、極座標による観測諸元が取得されると、観測値変換手段2により、式(2)及び(18)からrx(k),ry(k)及び海面高度h(k)の観測値が算出される(ステップST2a)。
【0073】
一方、観測雑音共分散算出手段6は、式(21)〜(23)からスラント座標及び海面高度を考慮した観測雑音共分散行列Ξ(k)を算出する(ステップST3a)。ステップST4〜ST9は、図6のステップST4〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0074】
距離R及び方位角Byのみ観測できる2次元レーダにおいて追尾を行う場合は、スラント座標(rx,ry)が用いられるケースが多かった。2次元レーダで観測される距離R及び方位角Byを用いてスラント座標(rx,ry)により追尾を行う場合を2D追尾と呼び、仰角Eまで観測できる3次元レーダで観測される距離R、方位角By及び仰角Eを用いて追尾を行う場合を3D追尾と呼ぶことにする。2D追尾及び3D追尾の両方を行うことができるレーダでは、従来、2D追尾から3D追尾へ、あるいは、3D追尾から2D追尾への切り換えを行おうとすると、特に切り換えの初期時間帯において不具合が生じることがあった。
【0075】
すなわち、追尾の切り換えの際、切り換えに伴う位置情報の(rx,ry)から(x,y)への変換、あるいは、その逆の変換によって、追尾誤差が大きくなり、切り換えがスムーズに行えなかった。このため、追尾を外してしまうという問題があった。
【0076】
本実施の形態によれば、状態ベクトルX(k)をスラント座標(rx,ry)に基づいて定めているので、3D追尾から2D追尾への切り換え、あるいは、その逆の切り換えをスムーズに行うことができる。
【0077】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置130は、図1のレーダ追尾装置110(実施の形態1)と比較して、予測値生成手段4に高度駆動雑音調整手段10を備えている点で異なる。
【0078】
高度駆動雑音調整手段10は、高度h方向に急上昇または急下降する追尾目標に対して、駆動雑音の調整を行っている。高度駆動雑音調整手段10は、データ更新手段7からサンプリング周期ごとに出力される平滑ベクトルXs(k)を順次に蓄積し、蓄積した平滑ベクトルから得られる追尾目標の高度差に基づいて、式(12)の駆動雑音共分散行列Q(k)の海面高度h(k)に関する成分を調整する。
【0079】
平滑ベクトルXs(k)は、L(>2)サンプリング分蓄積され、このうち、現時刻kにおける平滑ベクトルXs(k)がLサンプリング前の平滑ベクトルと比較される。比較は、平滑ベクトルXs(k)の海面高度h(k)に関する成分について行われ、各平滑ベクトルの成分の差から追尾目標がLサンプリング間に移動した高度差が判別される。この高度差が所定の閾値よりも大きい場合は、追尾目標が急上昇または急下降しているとみなされ、Q(k)の海面高度h(k)に関する成分を大きく設定するための制御信号が予測手段8へ出力される。
【0080】
予測手段8は、高度駆動雑音調整手段10からの制御信号に基づいて、Q(k)の設定を行っている。
【0081】
図10は、図9のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST6における追尾目標の航跡表示の後、高度駆動雑音調整手段10により駆動雑音共分散行列Q(k)の調整が行われる(ステップST6b)。そして、調整後のQ(k)に基づいて予測諸元が算出される。ステップST1〜ST5,ST8及びST9は、図6のステップST1〜ST5,ST8及びST9の処理手順と同様にして行われる。
【0082】
本実施の形態によれば、高度方向に急上昇または急下降する追尾目標に対する追従性を向上させることができるので、高度方向の追尾外れを防ぐことができる。
【0083】
実施の形態4.
図11は、本発明の実施の形態4によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置140は、観測ベクトルの判別に2つのゲートを用いて駆動雑音の調整を行うことにより、追尾目標に対する追従性を向上させている。
【0084】
ゲート判定手段3aは、直進目標用ゲート及び旋回目標用ゲートの2つのゲートを設けて観測ベクトルZo(k)の判別を行っている。旋回目標用ゲートは、直進目標用ゲートよりもゲートサイズが大きく、直進目標用ゲートを内包するように構成される。
【0085】
ゲートの構成は、式(3)において、直進目標用ゲートに対するゲートサイズパラメータをdsとし、旋回目標用ゲートに対するゲートサイズパラメータをdmとすると、dm≧dsとなるようにゲートサイズパラメータを設定することにより行われる。
【0086】
観測ベクトルZo(k)の判別は、はじめに、直進目標用ゲートにより行われる。このゲート内に観測ベクトルが得られた場合には、ゲート中心に最も近い観測ベクトルが追尾目標の観測ベクトルとして出力される。このとき、追尾目標は直進しているとみなす。直進目標用ゲート内に観測ベクトルが得られない場合には、次に、旋回目標用ゲートにより判別が行われる。
【0087】
旋回目標用ゲート内に観測ベクトルが得られた場合には、ゲート中心に最も近い観測ベクトルが出力される。このとき、追尾目標は旋回しているとみなされ、追尾目標に対する旋回追従性を向上させるための制御信号が予測手段8へ出力される。
【0088】
予測手段8は、ゲート判定手段3aからの制御信号に基づいて、式(12)における駆動雑音共分散行列Q(k)の旋回性に関する成分を大きくする設定を行っている。
【0089】
図12は、図11のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST3において、観測雑音共分散行列が算出されると、ゲート判定手段3aは、直進目標及び旋回目標用ゲートを形成し、観測ベクトルZo(k)を判別する(ステップST4c)。このとき、直進目標用ゲート内に観測ベクトルが存在すると判定された場合には、このゲート内の観測ベクトルのうちゲート中心に最も近い観測ベクトルが出力される。
【0090】
一方、直進目標用ゲート内に観測ベクトルが存在しないと判定された場合には、旋回目標用ゲート内に観測ベクトルが存在するか否かが判別される。旋回目標用ゲート内に観測ベクトルが存在する場合には、このゲート内の観測ベクトルのうちゲート中心に最も近い観測ベクトルが出力される。この場合、追尾目標に対する旋回追従性を向上させるため、駆動雑音の調整が行われる。ステップST1,ST2,ST5〜ST9は、図6のステップST1,ST2,ST5〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0091】
本実施の形態によれば、直進目標に対する追従性を確保しながら、旋回目標に対する追従性を向上させることができる。
【0092】
実施の形態5.
図13は、本発明の実施の形態5によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置150は、図1のレーダ追尾装置110(実施の形態1)と比較して、予測値生成手段4に航跡解除手段11を備えている点で異なる。
【0093】
航跡解除手段11は、優先順位の低い平滑ベクトルに対する追尾処理を解除する平滑値選別手段である。優先順位は、データ更新手段7から複数の追尾目標に対応して出力される平滑ベクトルに、所定の選別条件に基づいて付与され、この優先順位に基づいて平滑値の選別が行われる。
【0094】
データ更新手段7からの各追尾目標ごとの平滑ベクトルに対し、例えば、平滑ベクトルから追尾目標の進行方向が判別され、判別結果に基づいて優先順位が付与される。優先順位の低い平滑値を除外した後の平滑値が表示手段5及び予測手段8へ出力される。
【0095】
図14は、図13のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST5において、平滑諸元が算出されると、航跡解除手段11は、各追尾目標に対応する平滑ベクトルの選別を行い、優先順位の低い平滑ベクトルの航跡を解除する(ステップST5d)。ステップST1〜ST4,ST6〜ST9は、図6のステップST1〜ST4,ST6〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0096】
本実施の形態によれば、優先順位の低い平滑値に対する追尾処理を解除することにより、演算負荷を軽減することができる。
【0097】
実施の形態6.
図15は、本発明の実施の形態6によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置160は、図13のレーダ追尾装置150(実施の形態5)と比較して、レーダ観測手段1からの追尾目標に対する識別情報に基づいて優先順位の付与を行っている。
【0098】
レーダ観測手段1は、追尾目標に対する味方識別情報を取得し、航跡解除手段11へ出力している。航跡解除手段11は、この味方識別情報に基づいて、平滑ベクトルに優先順位を付与し、平滑値の選別を行っている。
【0099】
図16は、図15のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST5eにおいて、航跡解除手段11は、識別情報に基づいて優先順位を付与し、平滑値の選別が行われる。ステップST1〜ST5,ST6〜ST9は、図14のステップST1〜ST5,ST6〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0100】
本実施の形態によれば、優先度の高い追尾目標を逃すことなく、演算負荷を効果的に軽減させることができる。
【0101】
実施の形態7.
図17は、本発明の実施の形態7によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置170は、図1のレーダ追尾装置110(実施の形態1)と比較して、平滑値選択手段12を備えている点で異なる。
【0102】
本実施の形態では、式(6)の状態ベクトルに基づく追尾処理と、式(20)の状態ベクトルに基づく追尾処理が並行して行われ、各状態ベクトルに対応する平滑ベクトルを所定の選択条件により選択して表示を行っている。
【0103】
観測値変換手段2は、位置情報を水平成分について北基準直交座標からなる(x,y,h)に変換して出力するとともに、スラント座標からなる(rx,ry,h)に変換して出力する。データ更新手段7は、各状態ベクトルに対応する平滑ベクトルを算出し、平滑値選択手段12へ出力する。ここで、式(6)の状態ベクトルに対応して算出された平滑ベクトルを平滑ベクトルAと表し、式(20)の状態ベクトルに対応して算出された平滑ベクトルを平滑ベクトルBと表す。
【0104】
平滑値選択手段12は、データ更新手段7からの平滑ベクトルに基づいて、各平滑ベクトルの選択を行っている。平滑ベクトルA及びBが入力されると、平滑ベクトルAまたはBのいずれかの平滑ベクトルに基づいて、選択が行われる。どの平滑ベクトルを用いて判別するかは予め定めておく。
【0105】
平滑ベクトルの判別は、平滑ベクトルから算出される平滑距離に基づいて行われる。この平滑距離は、平滑ベクトルの位置成分から算出され、追尾目標までの距離を表している。平滑距離は所定の閾値ωと比較され、平滑距離が閾値ω以下の場合には、平滑ベクトルAが選択される。ここで、閾値ωは、目標距離が十分に遠距離であるとみなせる値とする。
【0106】
一方、平滑距離が閾値ωよりも大きい場合には、ユーザが平滑ベクトルAまたはBのいずれかを選択する。選択された平滑ベクトルは、表示手段5へ出力され、表示される。
【0107】
近距離の場合、レーダ信号処理の理論におけるマルチパスの影響が小さいと、仰角精度が良いと考えられる。このため、平滑距離が閾値ω以下の場合に、北基準直交座標に基づいて算出された平滑ベクトルAの精度の方が、スラント座標に基づいて算出された平滑ベクトルBの精度よりも良いと考えられる。従って、本実施の形態では、精度の良い平滑ベクトルが出力表示されるので、表示航跡のばらつきを低減することができる。
【0108】
図18は、図17のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST5において、平滑諸元が算出されると、平滑値選択手段12は、北基準直交座標に基づいて算出された平滑ベクトルAと、スラント座標に基づいて算出された平滑ベクトルBの選択を行う(ステップST5f)。そして、選択された平滑ベクトルが表示手段5に表示される。ステップST1〜ST4,ST6〜ST9は、図6のステップST1〜ST4,ST6〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0109】
本実施の形態によれば、精度の良い平滑ベクトルを表示させることができ、表示航跡におけるばらつきを抑えることができる。また、レーダの覆域を外れる追尾目標を継続して追尾を行うために、もしくは、より追尾精度を向上させるために、他のレーダシステムに平滑ベクトルを移管しなければならない場合には、高精度な平滑ベクトルを移管することができるので、他のレーダシステムに対する追尾誤差の影響を低減させることが可能である。
【0110】
実施の形態8.
本実施の形態のレーダ追尾装置180は、データ更新手段7から順次に出力される平滑ベクトルに対して1次のフィルタ処理を行うことにより、表示航跡を滑らかにしている。
【0111】
表示手段5は、サンプリング時刻mと、1サンプリング前のサンプリング時刻m−1のそれぞれにおける平滑ベクトルに対して、1次のフィルタ処理を次式(24)及び(25)により行っている。
【数17】
【0112】
式(24)において、mは表示が行われる時刻であり、xx(m)は時刻mにおける平滑ベクトルである。また、yy(m)はフィルタ処理により表示用に算出される平滑ベクトルである。式(24)におけるλ(m)は、xx(m)及びxx(m−1)に対する重みを表し、式(25)から算出される。τ(m)は時刻m及びm−1のサンプリング時間間隔であり、μは予め定められる時定数である。
【0113】
この様にして、制御理論に基づく1次のフィルタ処理が施され、平滑ベクトルyy(m)が表示される。
【0114】
図19は、本発明の実施の形態8によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST5において平滑諸元が算出されると、表示手段5は、平滑ベクトルに対して1次のフィルタ処理を行う(ステップST6g)。そして、処理後の平滑ベクトルに基づいて追尾目標の航跡が表示される。ステップST1〜ST4,ST7〜ST9は、図6のステップST1〜ST4,ST7〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0115】
本実施の形態によれば、1次のフィルタ処理により表示航跡を滑らかにすることができ、表示が見やすくなる。
【0116】
実施の形態9.
本実施の形態のレーダ追尾装置190は、判別用のゲート内に観測ベクトルが複数存在する場合に、各観測ベクトルの尤度に基づいて相関処理を行っている。
【0117】
ゲート判定手段3は、式(3)によるゲート判定の結果、ゲート内に観測ベクトルZo(k)が複数存在する場合に、ゲート内の各観測ベクトルに対する尤度を抽出する。これらの尤度に基づいて各観測ベクトルの相関確率β(k,i)が次式(26)〜(28)から算出される。
【0118】
【数18】
【0119】
式(26)において、m(k)はサンプリング時刻kにおけるゲート内の観測ベクトル数を表し、γ(k,i)はゲート内のi番目の観測ベクトルに対する尤度を表している。ただし、式(26)の相関確率β(k,i)はi≠0の場合を表し、i=0の場合は式(27)及び(28)により求められる。
【0120】
式(27)において、Pd(k)はサンプリング時刻kにおける目標の探知確率を表し、PG(k)はゲート内に目標が存在する確率を表している。また、βft(k)はサンプリング時刻kにおける目標以外からの誤信号が得られる誤信号密度を表している。
【0121】
ここで、γ(k,0)は、観測ベクトルが誤信号である場合の尤度を表し、ゲート内に目標が探知されない場合に、ゲート内に存在する観測ベクトルはすべて目標以外からの誤信号であるとの前提に基づいている。式(28)のβ(k,0)は、ゲート内の観測ベクトルが誤信号である場合の相関確率を表している。
【0122】
ゲート判定手段3は、ゲート内の全観測ベクトルと、ゲート内の各観測ベクトルに対応する相関確率β(k,i)をデータ更新手段7へ出力する。データ更新手段7は、各観測ベクトルに対応するゲイン行列及び平滑値を観測ベクトルごとに算出するとともに、相関確率β(k,i)に基づいてゲイン行列及び平滑値に対して相関処理を行っている。
【0123】
図20は、本発明の実施の形態9によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST3において、観測雑音共分散行列が算出されると、ゲート判定手段3は、相関確率β(k,i)を考慮したゲート判定を行う(ステップST4h)。すなわち、ゲート内の各観測ベクトルに対応する尤度から相関確率β(k,i)が算出され、ゲート内の各観測ベクトルとともに出力される。
【0124】
データ更新手段7は、相関確率β(k,i)を考慮した平滑値の算出を行う。すなわち、各観測ベクトルから各観測ベクトルに対応する平滑ベクトル及び平滑誤差共分散行列を算出し、相関確率β(k,i)に基づいて各平滑値に対して相関処理を行う(ステップST5h)。そして、処理後の平滑値が表示手段5及び予測手段8に出力される。ステップST1,ST2,ST6〜ST9は、図6のステップST1,ST2,ST6〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0125】
本実施の形態によれば、平滑諸元に対して相関処理を行うことにより、ゲート内に誤信号が多数入っている場合であってもそれらの影響が低減され、追尾目標に対する追従性を向上させることができる。
【0126】
実施の形態10.
本実施の形態のレーダ追尾装置200は、海面高度hの算出精度を上げることにより、追尾精度を向上させている。
【0127】
観測値変換手段2は、式(2)の代わりに次式(29)に基づいて、海面高度hを算出する。
【数19】
【0128】
式(29)において、ρは地球半径を、latsはレーダの設置緯度を、lonsはレーダの設置経度を、altsはレーダの設置高度を、αは地球の扁平率をそれぞれ表し、既知であるとする。また、fはhがこれらの関数であることを表している。
【0129】
観測値変換手段2は、式(29)から海面高度hを算出し、この海面高度hに基づく観測ベクトルZo(k)をゲート判定手段3へ出力する。観測雑音共分散算出手段6は、式(29)に基づいて観測雑音共分散行列の算出を行っている。
【0130】
図21は、本発明の実施の形態10によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST1において、観測諸元を取得すると、観測値変換手段2は、x,y及び地球楕円体の海面高度hの観測値を算出する(ステップST2i)。ここで、式(29)に基づいて地球楕円体を考慮した海面高度hが算出され、観測ベクトルZo(k)として出力される。
【0131】
観測雑音共分散算出手段6は、式(29)に基づいて観測誤差共分散行列を算出する(ステップST3i)。ステップST4〜ST9は、図6のステップST4〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0132】
本実施の形態によれば、地球が楕円体であることを考慮して海面高度hが算出されるので、より正確な海面高度hに基づいて追尾処理を行うことができ、追尾精度が向上する。
【0133】
実施の形態11.
図22は、本発明の実施の形態11によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ追尾装置210は、レーダ追尾装置190(実施の形態9)と比較して、ゲート内観測値制限手段13を備えている点で異なる。
【0134】
ゲート内観測値制限手段13は、演算負荷に応じてゲート内の観測値数を制限するための制御信号をゲート判定手段3及びデータ更新手段7へ出力している。ゲート判定手段3は、この制御信号に基づいて、ゲート内の複数の観測ベクトルのうち尤度の高い所定数の観測ベクトルの判別を行っている。このとき、N個の観測ベクトルが判別され、判別された観測ベクトルの尤度に基づいて、相関確率β(k,i)が算出される。
【0135】
データ更新手段7は、判別された観測ベクトルに対応する相関確率β(k,i)に基づいて、平滑値に対する相関処理を行っている。
【0136】
図23は、図22のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。ステップST3において、観測雑音共分散行列が算出されると、ゲート判定手段3は、ゲート内観測値制限手段13からの制御信号に基づいて、ゲート内の観測ベクトルを尤度の高いものだけに制限して、相関確率β(k,i)を算出する(ステップST4j,ST4k)。
【0137】
データ更新手段7は、ゲート内観測値制限手段13からの制御信号に基づいて、尤度の高いN個の観測ベクトルに対応する平滑値に対して相関処理を行い、相関確率β(k,i)を考慮した平滑諸元を算出する(ステップST5j)。ステップST6〜ST9は、図20のステップST6〜ST9の処理手順と同様にして行われる。
【0138】
本実施の形態によれば、平滑諸元に対して相関処理を行うことにより、ゲート内に誤信号が多数入っている場合であっても、追尾目標に対する追従性を確保することができるとともに、ゲート内の観測値数を制限することにより、演算負荷を低減させることができる。
【0139】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によるレーダ追尾装置及びレーダ追尾処理方法によれば、海面高度に基づいて予測値を算出するので、海面高度一定で移動する目標に対する追尾誤差が低減され、目標追尾を高精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1によるレーダ追尾装置の一構成例を示したブロック図である。
【図2】 レーダから見た目標の位置関係の一例を示した説明図である。
【図3】 レーダから見た目標の地球中心に対する位置関係を示した説明図である。
【図4】 観測ベクトルのゲート判定の一例を示した説明図である。
【図5】 レーダと海面高度一定で移動する目標の位置関係を示した説明図である。
【図6】 図1のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図7】 レーダから見た目標の位置関係を示した説明図である。
【図8】 本発明の実施の形態2によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図9】 本発明の実施の形態3によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。
【図10】 図9のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図11】 本発明の実施の形態4によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。
【図12】 図11のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図13】 本発明の実施の形態5によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。
【図14】 図13のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図15】 本発明の実施の形態6によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。
【図16】 図15のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図17】 本発明の実施の形態7によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。
【図18】 図17のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図19】 本発明の実施の形態8によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図20】 本発明の実施の形態9によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図21】 本発明の実施の形態10によるレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【図22】 本発明の実施の形態11によるレーダ追尾装置の構成例を示したブロック図である。
【図23】 図22のレーダ追尾装置における追尾動作の一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
1 レーダ観測手段、2 観測値変換手段、3,3a ゲート判定手段、
4 予測値生成手段、5 表示手段、6 観測雑音共分散算出手段、
7 データ更新手段、8 予測手段、9 遅延手段、
10 高度駆動雑音調整手段、11 航跡解除手段、12 平滑値選択手段、
13 ゲート内観測値制限手段、110〜210 レーダ追尾装置。
Claims (15)
- 目標の極座標による3次元位置情報を出力する観測手段と、位置情報を極座標から海面高度及び水平面内の直交座標に変換し、観測ベクトルとして出力する観測値変換手段と、観測ベクトルに基づいて予測値を生成する予測値生成手段を備えたことを特徴とするレーダ追尾装置。
- ゲートを設けてゲート内の観測ベクトルを判別するゲート判定手段と、予測値から観測雑音共分散行列を生成する観測雑音共分散生成手段を備え、
上記観測手段は、位置情報の標準偏差を出力し、
上記予測値生成手段は、判別された観測ベクトルから予測ベクトル及び予測誤差共分散行列を生成し、
上記ゲート判定手段は、予測ベクトル、予測誤差共分散行列及び観測雑音共分散行列に基づいてゲートを形成し、
上記観測雑音共分散生成手段は、予測ベクトル及び位置情報の標準偏差に基づいて観測雑音共分散行列を算出することを特徴とする請求項1に記載のレーダ追尾装置。 - 上記予測値生成手段は、ゲート判定手段により判別された観測ベクトルから平滑ベクトル及び平滑誤差共分散行列を算出する平滑値算出手段と、平滑ベクトル及び平滑誤差共分散行列に基づいて予測ベクトル及び予測誤差共分散行列を算出する予測値算出手段を備え、
平滑値算出手段は、予測ベクトル、予測誤差共分散行列及び観測雑音共分散行列に基づいて平滑ベクトル及び平滑誤差共分散行列を算出することを特徴とする請求項2に記載のレーダ追尾装置。 - 上記観測値変換手段が、水平成分についてスラント座標からなる観測ベクトルを出力することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレーダ追尾装置。
- 上記予測値生成手段は、駆動雑音共分散行列の海面高度に関する成分を調整する駆動雑音調整手段を備え、
駆動雑音調整手段は、平滑値算出手段から所定のサンプリング周期で出力される平滑ベクトルを蓄積し、蓄積した平滑ベクトルから得られる目標高度差に基づいて駆動雑音共分散行列の調整を行い、
上記予測値算出手段は、調整された駆動雑音共分散行列に基づいて予測ベクトル及び予測誤差共分散行列の算出を行うことを特徴とする請求項3に記載のレーダ追尾装置。 - 上記ゲート判定手段が、直進目標用ゲート及びこのゲートを内包する旋回目標用ゲートの2つのゲートを設けて観測ベクトルを判別することを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のレーダ追尾装置。
- 上記予測値生成手段は、平滑値算出手段から複数の目標に対応して出力された平滑ベクトル及び平滑誤差共分散行列を選別する平滑値選別手段を備え、
平滑値選別手段は、各平滑ベクトルに所定の選別条件に基づいて優先順位を付与し、優先順位の低い平滑ベクトルに対する追尾処理を解除することを特徴とする請求項3に記載のレーダ追尾装置。 - 上記平滑値選別手段が、観測手段から出力される目標の識別情報に基づいて優先順位を付与することを特徴とする請求項7に記載のレーダ追尾装置。
- 平滑ベクトルを選択する平滑ベクトル選択手段を備え、
上記観測値変換手段が、水平成分について北基準直交座標からなる第1の観測ベクトルとともに、スラント座標からなる第2の観測ベクトルを出力し、
平滑ベクトル選択手段は、第1の観測ベクトルまたは第2の観測ベクトルのいずれかに対応する平滑ベクトルから得られる目標距離に基づいて、各観測ベクトルに対応する平滑ベクトルの選択を行うことを特徴とする請求項3に記載のレーダ追尾装置。 - 上記平滑ベクトル選択手段は、算出した目標距離を所定の閾値と比較し、目標距離が閾値以下の場合に、第1の観測ベクトルに対応する平滑ベクトルを選択することを特徴とする請求項9に記載のレーダ追尾装置。
- 上記平滑値算出手段から順次に出力される平滑ベクトルに対して1次のフィルタ処理を行い、処理後の平滑ベクトルを表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載のレーダ追尾装置。
- 上記ゲート判定手段は、ゲート内に複数の観測ベクトルが存在する場合に、ゲート内の各観測ベクトルの尤度に基づいてゲート内の各観測ベクトルの相関確率を算出し、
上記平滑値算出手段が、算出された相関確率に基づいて、各観測ベクトルに対応する平滑ベクトル及び平滑誤差共分散行列に対して相関処理を行うことを特徴とする請求項3に記載のレーダ追尾装置。 - 上記ゲート判定手段が、尤度の高い所定数の観測ベクトルに対して相関確率を算出することを特徴とする請求項12に記載のレーダ追尾装置。
- 上記観測値変換手段が、地球の扁平率と、レーダの設置緯度、設置経度及び設置高度とに基づいて海面高度を算出することを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載のレーダ追尾装置。
- 目標の極座標による3次元位置情報及びこの位置情報の標準偏差を出力する観測ステップと、位置情報を極座標から海面高度及び水平面内の直交座標に変換し、観測ベクトルとして出力する観測値変換ステップと、ゲート内の観測ベクトルを判別するゲート判定ステップと、判別された観測ベクトルから予測ベクトル及び予測誤差共分散行列を生成する予測値生成ステップと、予測ベクトル及び位置情報の標準偏差から観測雑音共分散行列を生成する観測雑音共分散生成ステップからなり、
ゲート判定ステップにおいて、予測ベクトル、予測誤差共分散行列及び観測雑音共分散行列に基づいて形成されたゲートにより観測ベクトルを判別することを特徴とするレーダ追尾処理方法。
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