JP3750279B2 - タンク形避雷器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電力用変電所に使用される避雷器に係り、特にガス絶縁開閉装置もしくは電力用変圧器に接続されるタンク形避雷器に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガス絶縁タンク形避雷器については、避雷器規格JBC−2372−1995が制定され、187kVから500kV用の高性能避雷器に対して運用がなされている。この避雷器は、動作開始電圧が200V/mm程度の酸化亜鉛素子をベースとして構成されている。この酸化亜鉛素子では、単純に素子を直列に接続して避雷器を構成すると、長さが長くなり過ぎ、ガス絶縁開閉装置用のタンク形避雷器として適用できないので、例えば素子を4柱に配置し、これらの素子をジグザグに接続して素子の全接続長を短縮している。これにより避雷器の高さを縮小している。
【0003】
これに対して、酸化亜鉛素子の粒径を小さくして、粒子の直列個数を増加させて高抵抗にすることで、例えば動作開始電圧を400V/mmにできる。この結果、素子1枚当たりの使用電圧を上げることができ、酸化亜鉛素子の接続長を約1/2に短縮できる。このように酸化亜鉛素子の長さを短縮することにより、従来の素子を3〜4柱配置し、その柱をシグザグに接続しなくても、酸化亜鉛素子を直線的に積み立てる一直線状の配置でガス絶縁開閉装置用のタンク形避雷器として適用可能となる。例えば、154kV〜500kVクラスについて、直線状の素子配置のタンク形避雷器は実現できるようになる。すなわち、酸化亜鉛素子を高抵抗化して使用個数を低減することによりガス絶縁タンク形避雷器の縮小化が図れるようになる。
【0004】
しかし、高抵抗化した高耐圧酸化亜鉛素子では、酸化亜鉛素子の粒径が小さくなるため、従来の素子に比較して素子の静電容量が小さくなる弱点を有する。素子の静電容量が小さくなるとタンク形避雷器において、接地タンクに対する浮遊容量の影響を受けやすくなり、素子間の電圧分担が不均一になってしまう欠点が生じてしまう。この結果、高課電率で使用している高性能避雷器においては、電圧分担の面から素子の課電寿命特性が問題となり、実使用に耐えなくなる欠点があった。
【0005】
従来の酸化亜鉛素子間の電位分担制御には、特開昭55−105989号公報やヨーロッパ公開公報であるEPO634757B1 に示されるように、同心リング状金属シールドを頭部シールドと下部シールドの径を同一にして、高圧側から離散的に配置していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭55−105989号公報やヨーロッパ公開公報であるEPO634757B1 に記載の方法を適用した図10に示すタンク形避雷器では、電位分担は図9の点線で示すように約1.18 であり、課電率が100%程度に至るため、高課電率の避雷器には不適当となる。すなわち、通常タンク形避雷器では課電率を90%以内に設定して、酸化亜鉛素子の課電寿命特性を確保しているが、この値を越えてしまうという問題がある。これを満足させるためには、図9の実線に示すように電位分担を1.1 以内にして、課電率を90%以内に設定する技術が必要となる。このように、従来の技術では、高抵抗化酸化亜鉛素子を使用した避雷器においても電位分担が1.1 以内にできるタンク形避雷器を提供できないものであった。
【0007】
本発明の目的は、酸化亜鉛素子の高抵抗化により酸化亜鉛素子の固有の静電容量が小さくなっても、適切な電位分担が制御できる高性能なタンク形避雷器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のタンク形避雷器は、酸化亜鉛素子が直線的に重なるように配置されて構成される酸化亜鉛素子ユニットの頭部に位置し、対地との絶縁を制御するための頭部環状シールドと、前記酸化亜鉛素子ユニットの上段で、かつ、前記頭部環状シールドの下方に位置する上部環状シールドと、該上部環状シールドの下方に位置し、該上部環状シールドより径が大きい下部環状シールドとで構成される環状リングと、前記上部環状シールドと下部環状シールドとの間に対向して配置され両者を電気的に接続する2つの円筒状の導体とを備え、前記下部環状シールドは前記酸化亜鉛素子ユニットの軸方向に対して垂直方向に設置された高圧母線と電気的に接続され、前記2つの円筒状の導体は前記高圧母線の延長上の垂直面に位置され、かつ、前記酸化亜鉛素子ユニットの頭部と前記頭部環状シールド、該頭部環状シールドと前記上部環状シールド及び該上部環状シールドと前記下部環状シールドは電気的に接続されていることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施例を図1から図4により説明する。図1は、本実施例のタンク形避雷器の構成を示す縦断面図、図2は、図1の矢視A−A断面図、図3は、酸化亜鉛素子部を拡大して示す横断面図、図4は、酸化亜鉛素子部を拡大して示す縦断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施例のタンク形避雷器は、SF6 ガスもしくは油絶縁されたタンク15内に避雷器が設置されており、その避雷器は酸化亜鉛素子12から構成され、酸化亜鉛素子12はタンク15の底部に設けられたタンク底板18に絶縁板45を介して固定されている。この酸化亜鉛素子12は、動作開始電圧が200V/mm以上の素子で形成されている。酸化亜鉛素子12は、図2から図4に示すように、2列並列に配置されており、それぞれの酸化亜鉛素子12は絶縁棒27にガイドされ支持されている。酸化亜鉛素子12の高さが高くなると、耐震性,輸送強度が問題となることから、絶縁筒20,21を酸化亜鉛素子12に接して配置し、断面係数を大きくして強度を増加させている。絶縁筒20,21には、タンク底部18側にフランジ24,25が設けられており、このフランジ24,25をボルト26によりタンク底板18に固定している。又、絶縁棒27のタンク底部18側にもフランジが設けられており、このフランジをボルトによりタンク底部18に固定している。酸化亜鉛素子12の底部には、そのそれぞれに接続導体22が設けられており、この2つの接続導体22は接続導体23に接続されている。接続導体23は、タンク底板18から固定金具46に固定されている。固定金具46には絶縁板13が付加してあり、固定金具46はタンク15から絶縁されている。密封端子16と接続導体23は連結されており、接地導体17に接続されている。この接地導体17は、高圧母線1の延長上の垂直面に位置するように設けられている。このように構成することにより、キュービクル14を接地導体17と同一方向に配置でき、避雷器のキュービクル内に通常使用されている避雷器動作報知器,記録器などの点検が容易となるため、避雷器としての保守点検が行い易くなり、運用上の信頼性が向上する。
【0014】
酸化亜鉛素子12で構成される避雷器の上端側(頭部ともいう)には、バネ10を介して接続板9が設けられており、酸化亜鉛素子12には、タンク底板18と接続板9との間にバネ10を短絡する導体8が設けられている。接続板9の上側には、電界緩和用の環状リング7(絶縁緩和用環状シールド7ともいう)が設けられ、接続板9と電気的に接続されている。環状リング7は、接続板9の下方側に設けられた上部環状リング6(上部環状シールド6ともいう)と電気的に接続されており、この上部環状リング6は円筒状の導体5によって下部環状リング4(下部環状シールド4ともいう)と接続されている。下部環状リング4は、接続導体3を介してSF6 ガスもしくは油絶縁された高圧母線1に接続されている。この高圧母線1は、大地電位からは絶縁された状態で絶縁スペーサ2で支持されている。
【0015】
このように構成されたタンク形避雷器には、高圧母線1を通して、高圧側が課電される。高圧母線1は絶縁スペーサ2で大地電位から絶縁されており、避雷器先端の接続導体3を通して避雷器に高電圧が課電される。課電された接続導体3は下部環状リング4,円筒状の導体5,上部環状リング6を経て接続板9に導通される。固定金具46に固定された接続導体23は、密封端子16を介して接地導体17に接続されており、酸化亜鉛素子12の電流で高圧側の高圧母線1で発生したサージは大地に通流される。
【0016】
酸化亜鉛素子は、図1に示すように、単純に酸化亜鉛素子の1直列構成で避雷器は構成されており、このようなタンク形避雷器において、電気的課題として、酸化亜鉛素子12がタンクへの浮遊容量C1の影響を受け、酸化亜鉛素子12間の電圧分担が乱れるという課題がある。これを補正するために、酸化亜鉛素子12と導体5との間で浮遊容量C2を形成させている。補正用の浮遊容量は導体5と導体11を対向させて形成させ、この補正により、電圧分担率は1.1 以内にできるが、導体5や導体11を複数本配置し、過補償にすると電圧分担が悪化する。
【0017】
このため、本実施例では、酸化亜鉛素子12の頭部に環状リングを3本配置し、最頭部は対地との絶縁緩和用環状シールド7を、上部には上部環状シールド6を、下部には末広がり形状に形成した下部環状シールド4を配置し、上部環状シールド6と下部環状シールド4との間には円筒状の導体5と導体11を形成している。この導体5と導体11とは、高圧母線1の延長上の垂直面に位置するように配置されている。このように構成することによって、酸化亜鉛素子12と導体5との間で浮遊容量C2を調整することにより、酸化亜鉛素子間の電圧分担率は図9の実線で示すように均等となり、分担比1.1 を満足できるようになる。又、円筒状の導体5,11を高圧母線1の延長上の垂直面に位置するように設けているので、円筒状の導体5と接続導体3を一直線配置することができ、接続導体3の突起による電界の乱れの影響がなくなり、素子間の電圧分担への悪影響を抑えられる。又、機械的強度が増すため、シールドの振動による金属異物などの異物の発生を抑えられる。
【0018】
一方、タンク形避雷器のニーズとして、絶縁協調上さらに優れた保護特性が必要とされる。この要求に対しても、酸化亜鉛素子を並列に配置することで、例えば500kV用避雷器で870kVかつ10kAに対して830kVかつ10kAが実現できる。
【0019】
このように、電位分担制御用シールド形状と酸化亜鉛素子への接続方法の最適化により、酸化亜鉛素子の高抵抗化により酸化亜鉛素子の固有の静電容量が小さくなっても、適切な電位分担(電圧分担率1.1 以下)を設定できる高性能タンク形避雷器の提供が可能となる。
【0020】
本発明の他の実施例を図5から図8により説明する。図5は、本実施例のタンク形避雷器の構成を示す縦断面図、図6は、図5の矢視B−B断面図、図7は、酸化亜鉛素子部を拡大して示す横断面図、図8は、酸化亜鉛素子部を拡大して示す縦断面図である。
【0021】
本実施例では、さらに高定格の避雷器例えば800kV用避雷器について説明する。このような高定格の避雷器に対しても、図1に示す構成で単純に素子直列数を積み上げることで対応可能であるが、この場合はタンク形避雷器の高さが高くなり、トラック輸送の条件を越えてしまう。そのため、本実施例では、酸化亜鉛素子を往復配置している。
【0022】
本実施例のタンク形避雷器は、図1から図4に示す実施例と同様に構成されているが、本実施例では、酸化亜鉛素子30は、絶縁板29と接続導体28により構成されており、酸化亜鉛素子柱47と酸化亜鉛素子柱48間で往復通電するように構成している。同様に、酸化亜鉛素子柱49と酸化亜鉛素子柱50間で往復通電するように構成されている。これらの酸化亜鉛素子は最終的に接続導体35に接続されており、この接続導体35は接続導体36に連結されている。酸化亜鉛素子30の往復配置は、従来の素子をジグザグにして接続する配置より低インダクタンス化できる。これら酸化亜鉛素子柱47,48,49,50間には絶縁筒31,32,33を配置して連接し、酸化亜鉛素子群としての断面係数を多くとり、輸送,振動,耐震に耐えるようにしている。
【0023】
なお、図10に示すように高圧母線1を導体5に直接接続しても良く、この場合も同様な効果がある。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のタンク形避雷器によれば、酸化亜鉛素子間の電圧分担率を均等にでき、分担比1.1 以下にできる。その結果、課電寿命特性が確保でき、高性能のタンク形避雷器が実用化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるタンク形避雷器の構成を示す縦断面図である。
【図2】図1の矢視A−A断面図である。
【図3】図1の酸化亜鉛素子部を拡大して示す横断面図である。
【図4】図1の酸化亜鉛素子部を拡大して示す縦断面図である。
【図5】本発明の他の実施例タンク形避雷器の構成を示す縦断面図である。
【図6】図5の矢視B−B断面図である。
【図7】図5の酸化亜鉛素子部を拡大して示す横断面図である。
【図8】図5の酸化亜鉛素子部を拡大して示す横断面図である。
【図9】酸化亜鉛素子の電圧分担率を示す図である。
【図10】タンク形避雷器の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1…高圧母線、2…絶縁スペーサ、3,22,23,28,35,36,42…接続導体、4…下部環状リング、5,8,11…導体、6…上部環状リング、7…環状リング、9…接続板、10…バネ、12,30,40,43…酸化亜鉛素子、13,29,44,45…絶縁板、14…キュービクル、15,41…タンク、16…密封端子、17…接地導体、18…底板、19…ハンドホール、20,21,31,32,33…絶縁筒、24,25…フランジ、26,37…ボルト、27,34…絶縁棒、38…シールド、39…同心状シールド、46…固定金具、47,48,49,50…酸化亜鉛素子柱。

Claims (7)

  1. 酸化亜鉛素子が直線的に重なるように配置されて構成される酸化亜鉛素子ユニットの頭部に位置し、対地との絶縁を制御するための頭部環状シールドと、前記酸化亜鉛素子ユニットの上段で、かつ、前記頭部環状シールドの下方に位置する上部環状シールドと、該上部環状シールドの下方に位置し、該上部環状シールドより径が大きい下部環状シールドとで構成される環状リングと、前記上部環状シールドと下部環状シールドとの間に対向して配置され両者を電気的に接続する2つの円筒状の導体とを備え、
    前記下部環状シールドは前記酸化亜鉛素子ユニットの軸方向に対して垂直方向に設置された高圧母線と電気的に接続され、前記2つの円筒状の導体は前記高圧母線の延長上の垂直面に位置され、かつ、前記酸化亜鉛素子ユニットの頭部と前記頭部環状シールド、該頭部環状シールドと前記上部環状シールド及び該上部環状シールドと前記下部環状シールドは電気的に接続されていることを特徴とするタンク形避雷器。
  2. 前記高圧導体が接続部を介して前記下部環状シールドに接続されていることを特徴とする請求項1記載のタンク形避雷器。
  3. 前記酸化亜鉛素子の動作開始電圧が200V/mm以上の素子であることを特徴とする請求項1記載のタンク形避雷器。
  4. 前記酸化亜鉛素子ユニットを2列並列に配置すると共に、該酸化亜鉛素子ユニットの周囲に、該酸化亜鉛素子ユニットと接するように絶縁筒が配置されていることを特徴とする請求項1記載のタンク形避雷器。
  5. 前記酸化亜鉛素子ユニットを4柱配置すると共に、柱間の酸化亜鉛素子ユニットを絶縁物と接続導体を介して往復配置していることを特徴とする請求項1記載のタンク形避雷器。
  6. 前記高圧母線のサージを大地に流すための接地導体を、前記高圧導体の延長上の垂直面に位置するように配置したことを特徴とする請求項1記載のタンク形避雷器。
  7. 前記高圧母線が前記2つの円筒状の導体の1つに直接接続されていることを特徴とする請求項1記載のタンク形避雷器。
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