JP3750011B2 - 金属錯体の製造方法とアミノ酸修飾金属錯体 - Google Patents
金属錯体の製造方法とアミノ酸修飾金属錯体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、金属錯体の製造方法とアミノ酸修飾金属錯体に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、光機能性物質等として有用な、複数のビピリジン系化合物二座配位子を有する金属錯体、そしてそれら光学活性体の製造方法と、分子設計による機能性物質の創製として注目されるアミノ酸修飾したこれらの金属錯体に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
ビピリジン配位子にペプチドを接続し、遷移金属錯体に配位させることでペプチドを会合させ、蛋白質類似の二次構造を構築する手法は、蛋白質機能のde novo designの一つの方法として用いられてきている。しかしながら、これらの研究では複数のビピリジン配位子には同一のペプチド鎖が修飾されており、蛋白質類似の高機能性分子の分子設計には、異なるペプチド鎖を接続する手法の開発が必要とされていた。複数の、たとえば3つの異なる配位子を配位させたトリス型錯体の合成としては、〔Ru(CO)2 Cl2 〕nを出発原料として、異なる配位子を有するビス錯体〔Ru(L1)(L2)(CO)2 〕2+を合成し、そこからトリス体へと変換する方法と、同一配位子を有するトリス体を合成して、光配位子脱離反応により1つずつ配位子交換させていく方法が代表的なものとして知られているが、いずれもペプチドあるいはアミノ酸修飾配位子には適さないものであった。
【0003】
より具体的に例示説明すると、これまでに報告されている三種混合配位子ルテニウム錯体の合成については、前記のように、主に2つの方法が挙げられる。第一の方法はKeene らのグループにより報告されている下記の方法で、〔Ru(CO)2 Cl2 〕nを出発物質として用い、二座のピリジン系配位子を順次一つずつ導入している。第一の配位子の導入はメタノール中、refluxすることにより行っているので比較的温和な条件である。しかし、次にビス体の前駆体として〔Ru(L1)(CO)2(CF3 SO3)2 〕を得るため、モノ体にCF3 SO3 H、或いはAg(CF3 SO3 H)を反応させており、配位子にペプチド修飾配位子を用いた場合、側鎖保護基が脱離してしまう可能性がある。第二の配位子の導入はエタノール中、〔Ru(L1)(CO)2(CF3 SO3)2 〕と二つ目の配位子(L2)をrefluxすることでビス体である〔Ru(L1)(L2)(CO)2〕2+を得ていることから、比較的温和な条件で行えるが、同ビス体は安定なため、第三の配位子L3 を導入する際に2−メトキシエタノール中、125℃でrefluxを行なう必要がある。この条件はペプチド修飾配位子を用いるには苛酷である。
【0004】
【化1】
【0005】
第二の方法はRossらにより報告されている下記の方法である。この方法では、一度ルテニウムトリス(ビピリジン)型錯体にした後、過剰のCl- の存在下、光照射を行うことにより配位子を脱離させた単離後、順次別の配位子を導入している。この方法では、配位子を脱離後、再導入する時にエチレングリコール中でrefluxするため、 200℃まで加熱しなければならず、合成に用いる配位子にかなり安定なものを用いなければならない。従って、ペプチド修飾配位子には適用できないと考えられる。更に、各配位子の配位能にある程度の差がなければ不可能な合成法であり、本研究で用いるぺプチド修飾配位子は、全てビピリジンの4,4′−位にカルボキシル基が導入されているため、配位能にそれほど大きな差は期待できない。この点からもRossらの方法は適さない。
【0006】
【化2】
【0007】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の欠点を克服し、ペプチド修飾配位子をも温和な条件で導入することのできる新規な、複数の異なるビピリジン系配位子を有する金属錯体の製造方法を提供することを課題としており、その際に、特に以下の点について考慮することをも課題としている。
【0008】
i)ペプチド鎖を修飾した配位子でも耐えうる条件であること
ii)各中間体での単離が行えること
iii)ペプチドの側鎖保護基に影響を与えない試薬を用いること
iv) 配位能を考慮しなくて良いこと
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、
次式(I)
〔M(D)A2 〕2
(Mは、遷移金属原子を示し、Dは、ジェン系または芳香環系化合物配位子を、Aは一価のアニオン基を示す。)
で表わされる錯体化合物に、ビピリジン系化合物(L1)を反応させて次式(II)〔M(L1)A(D)〕(A)
(M,D、およびAは前記のものを示し、L1 は、ビピリジン系化合物の二座配位子を示す。)
の錯体化合物を生成させ、次いで、さらにビピリジン系化合物(L2 )を反応させて次式(III)
M(L1)(L2)A2
(M,L1 、およびAは、前記のものを示し、L2 はL1 とは異なるビピリジン系化合物の二座配位子を示す。)
で表わされる金属錯体を製造することを特徴とする金属錯体の製造方法を提供する。
【0010】
また、この出願の発明は、第2には、次式(III)
M(L1)(L2)A2
(Mは、遷移金属原子を示し、Aは一価のアニオン基を示し、L1 およびL2 は、各々異なる、ビピリジン系化合物の二座配位子を示す。)
で表わされている金属錯体に、ビピリジン系化合物(L3 )を反応させて、次式(IV)
〔M(L1)(L2)(L3)〕2+
(M,L1 、およびL2 は前記のものを示し、L3 は、L1 およびL2 とは異なるビピリジン系化合物の二座配位子を示す。)
で表わされるカチオンの錯体を製造することを特徴とする金属錯体の製造方法を提供する。
【0011】
そして、この出願の発明は第3には、ビピリジン系化合物の二座配位子L1 およびL2 のうちの少なくとも一方は、アミノ酸基もしくはペプチド基を有している前記第1発明の金属錯体の製造方法を、第4には、ビピリジン系化合物の二座配位子L1 、L2 およびL3 のうちの少くとも一つには、アミノ酸基もしくはペプチド基を有している前記第2の発明の金属錯体の製造方法を提供し、第5には、一価のアニオン基Aは、ハロゲンアニオンである前記のいずれかの金属錯体の製造方法を、第6には、遷移金属原子Mは、周期律表第8族の貴金属原子である前記のいずれかの金属錯体の製造方法をも提供する。
【0012】
さらに、この出願の発明は、第7には、次式(V)
〔M(LA ) (LB )(LC )〕2+
(Mは遷移金属原子を示し、LA ,LB ,LC は、各々、別異のビピリジン系化合物の二座配位子であって、このうちの少なくとも一つには、アミノ酸基もしくはペブチド基を有していることを特徴とするアミノ酸修飾金属錯体を、
第8には、遷移金属原子Mは、周期律表第8族の貴金属原子である前記の金属錯体を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は以上のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0014】
まず、この出願の発明の製造方法については、次のような従来技術についての考案を踏まえている。
すなわち、従来の技術においても、たとえば、ルテニウムトリス(ビピリジン)型錯体の合成にとって、最も重要で取り扱いやすいビス(ビピリジン)中間体はRu(L1)(L2)Cl2 であると考えられるが、実施には、これまでの例では〔Ru(L1)(L2)(CO)2 〕2+の合成・単離が報告されているのみで、Ru(L1)(L2)Cl2 の合成・単離の報告例は見当たらないのである。〔Ru(L1)(L2)(CO)2〕2+は安定な錯体であり、トリス体にするためにはKeene らの報告のように過酷な条件(125℃でreflux) が必要であるが、Ru(L1)(L2)Cl2 を得ることができれば、温和な条件でトリス体へ変換できることが既に知られている。以上のことから、この二つの異なる配位子を有するビス型錯体(Ru(L1)(L2)Cl2)を比較的温和な条件で得ることのできる方法を含む発明が完成されたのである。
【0015】
Ru(L1)(L2)Cl2 のようなビス型錯体を製造するために、この出願の発明では、ジェン系化合物を配位子とする前記の式(I):
〔M(D)A2 〕2
の錯体化合物を原料として、2段階反応により、順次にビピリジン系化合物(L1)(L2)を反応させる。最初に、前記の式(II):
〔M(L1)A(D)〕(A)
の錯体化合物を合成し、次いで、式(III):
M(L1)(L2)A2
の金属錯体を合成する。
【0016】
この方法においては、遷移金属原子Mとしては多価遷移金属の各種のものであってよく、たとえば周期律表第8族の金属、なかでもRu,Pd,Rh,Pt等の貴金属が望ましいものとして示される。最も代表的なものはRu(ルテニウム)である。
【0017】
一価のアニオン基も各種のものでよいが、代表的なもの、望ましいものとしてはハロゲン原子、なかでも塩素原子アニオンが例示される。
そして、L1 およびL2 は、また、前記のL3 は、各々異なるビピリジン系化合物もしくはその二座配位子を示しているが、ここで、「ビピリジン系」との規定は、ビピリジン骨格を有し、この骨格を構成する二つの窒素(N)原子が前記の遷移金属Mに、二座配位する各種の化合物であることを意味している。たとえば、2,2’−ビピリジン骨格を持つもの、そして、この骨格に炭素環が縮合している1,10−フェナントロリン類などがこの発明の「ビピリジン系」となる。つまり、ビピリジン骨格には、各種の置換基を有していてもよいのである。L1 およびL2 、さらにはL3 が互いに異なることは、置換基を含めた全体の分子構造として相違していることを意味している。
【0018】
合成反応においては、式(I)から式(II)の錯体、式(II)から式(III)の錯体へ導くための役割として、ジェン系もしくは芳香環系化合物配位子:Dの存在が重要である。ジェン系化合物は、環状、あるいは鎖状のものであってよく、たとえば適当なものとしてはシクロヘキサジェン、シクロペンタジェン、シクロオクタジェン等の脂環式ジェン化合物が例示される。芳香環系化合物は、たとえばベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等の化合物が例示される。もちろんこれに限定されることはない。配位子L1 およびL2 の導入は、一般的には、アルコール、THF,DMF,DMSO,ニトリル等の有機溶媒を用いて、室温〜90℃以下の範囲が、温和な条件で進行する。L1 およびL2 のための配位子化合物の使用量は当量を目安とし、より少くしても、あるいはより多くしてもよい。
【0019】
式(III):
M(L1)(L2)A2
の錯体からは、さらにこの発明においては、別種のビピリジン系化合物と、上記同様の条件下で反応させることで、前記の式(V)
〔M(LA ) (LB ) (LC )〕2+
のカチオンの錯体化合物を導くことができる。
【0020】
この出願の発明のカチオンは、3種の異なる配位子(L1)(L2)(L3)を持つものであるが、合成あるいは精製過程において使用される各種のアニオンとの結合状態として取得されることになる。この場合のアニオンは、たとえば、PF6 - ,Cl- ,I- ,ClO4 - ,Br- 等の各種のものであってよい。
【0021】
L1,L2 およびL3 としてのビピリジン系化合物もしくはその二座配位子についてさらに説明すると、これらのもののビピリジンン骨格には、各種の置換基が結合されていてもよく、これを例示すると、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール等の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、シアノ基、カルボキシル基、アミド基、カルバメート基、アミノ基、ベプチド基等の各種のものが挙げられる。
【0022】
特にこの発明においては、ビピリジン系化合物二座配位子として、L1 およびL2 のうちのいずれか一方がアミノ酸基もしくはペプチド基を有している式(III)の錯体、そして、L1,L2 およびL3 のうちの少くとも一つがアミノ酸基もしくはペプチド基を有している式(IV) の錯体が挙げられる。この後者のものは、式(V)にも相当する金属錯体である。L1,L2 およびL3 は、LA,LB,およびLC に相当している。
【0023】
これら錯体において、「アミノ酸基もしくはペプチド基を有する」との規定は、ビピリジン骨格に対し、アミノ酸もしくはペプチドを構成するアミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、さらには炭素原子等が直接結合している場合、もしくは他の原子や置換基との結合を介して結合している場合のいずれであってもよいことを意味している。
【0024】
また、アミノ酸基、ペプチド基は、これを構成するアミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基等が一般的な意味で、保護基によって保護されていてもよい。
たとえば以上のとおりのこの発明の金属錯体は、たとえばHPLC等の手段によって光学分割(Δ・Λ)を行うことが可能とされる。
【0025】
そしてこの出願の発明の金属錯体は、各種の光機能物質をはじめ、配位子L1 ,L2 ,L3 (またはLA ,LB ,LC )を各々別異のものに選択する等によって、近年注目されているデンドリマーのコア(中核)を形成するものとして注目されるものである。
【0026】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。
【0027】
【実施例】
(実施例1)
<a>〔Ru(C6 H6 )Cl2 〕2
RuCl3 ・nH2 Ol. 70g(8.20mmol)、1, 3−cyclohexadiene 6ml(63mmol)そして100ml ethanol/water(9:1,v/v)を200mlのナスフラスコに入れ、約45℃で3時間攪拌した。攪拌終了後、溶媒を濾過して不純物を除去し、濾液をエバポレートして除去した。これをメタノール/エーテルで再結晶を行うと橙黄色の結晶が得られた。収量1.57g 収率76.6%
【0028】
【表1】
【0029】
<b>〔Ru(bpy)(C6 H6 )Cl〕Cl
〔Ru(C6 H6 )Cl2 〕2 0.20g(0.40mmol)、2,2′−bipylidyl(bpy)0.16g(1.0mmol)そして25ml methanolを100mlのナスフラスコに入れ、1時間室温で攪拌した。攪拌終了後、濾過して未反応の原料を除去し、濾液をエバポレートした。これをメタノール/エーテルにて再結晶した。得られた化合物は橙黄色の針状結晶である。収量250mg 収率76.9%
【0030】
【表2】
【0031】
<c>Ru(bpy)(dmbpy)Cl2
〔Ru(bpy)(C6 H6 )Cl〕Cl 0.15g(0.37mmol)、4,4′−dimethyl−2,2′−bipyridyl(dmbpy) 0.10g(0.55mmol),LiCl0.05g(1.11mmol)を20mlのDMF中で、窒素気流下24時間80−90℃で攪拌した。溶液は橙黄色から黒紫色に変化。攪拌終了後、DMFをエバポレートして15ml程度に濃縮し、これにアセトンを150ml加えて冷蔵庫に一晩静置した。得られた結晶を濾過し、アセトンで十分洗浄してから真空乾燥した。
収量92mg 収率48.5%
【0032】
【表3】
【0033】
(実施例2)
次の反応スキームに従って、三種混合配位子ルテニウム錯体として、光励起により配位子中のカルボン酸のpKaを変化させることが期待できる〔Ru(Asp(OcHex)bpy)(Ser(Bzl)bpy)(dcbpy)〕2+錯体を合成した。
【0034】
【化3】
【0035】
<a>〔Ru(Asp(OcHex)bpy)Cl(C6 H6 )〕Cl(モノ錯体)
実施例1の<a>により合成した〔RuCl2 (C6 H6 )〕2 0.108g(0.22mmol)、下記の式で表わされるAsp(OcHex)bpy 0.300g(0.43mmol)、Ethanol 25mlそしてchloroform15mlを50mlのナスフラスコに入れ、約5時間室温で攪拌した。攪拌終了後、溶媒をエバポレートして乾固し、カラムクロマトグラフィー(Wakogel; C−200,chloroform/methanol =9/1)による分離精製を行った。
収量0.36g 収率88.6%
【0036】
【表4】
【0037】
【化4】
【0038】
<b>〔Ru(Asp(OcHex)bpy)(Ser(Bzl)bpy)Cl2 〕(ビス錯体)
〔Ru(Asp(OcHex)bpy)(C6 H6 )Cl2 〕 150mg(0.16mmol)、下記の式で表わされるSer(Bzl)bpy 115.2mg(0.18mmol)そしてLiCl20.3mg(0.48mmol)を50mlのナスフラスコに入れ、DMF30mlに溶解させた。これを窒素気流下20時間80−90℃で攪拌した。溶液は橙黄色から黒緑色へ変化。攪拌終了後、溶媒をエバポレートで10ml程度まで濃縮してからアセトン50mlに溶解させ、更にエーテルを加えて結晶化させた。
粗収量213.6g 粗収率88.4%
【0039】
【表5】
【0040】
【化5】
【0041】
<c>〔Ru(Asp(OcHex)bpy)(Ser(Bzl)bpy)(dcbpy)〕(PF6 )2 (トリス錯体)
〔Ru(Asp(OcHex)bpy)(Ser(Bzl)bpy)Cl2 〕199.35mg(0.13mmol),下記の式で表わされるdcbpy 38.41mg(0.16mmol),ethanol 20mlを100mlのナスフラスコに入れ、0.62g(7.5mmol)H3 PO3 と0.30g(7.5mmol)NaOHを5mlの水にそれぞれ溶かし、ゆっくりと混ぜ合わせた物を加えた。これを窒素気流下、2日間80−90℃で環流した。この時、溶液は黒紫色から血赤色へと変化。攪拌終了後、溶媒をエバポレートして除去、無色透明の油状物が生じるが、メタノールには溶けないのでデカンテーションで分離した。メタノールをエバポレート後、カラムクロマトグラフィーによる精製を行った。しかし、通常のシリカゲルカラムクロマトグラフィー、Sephadexを用いた精製法では限界があるため、分取カラムによる精製を行った。完全に分離できた物は20mg,80−90%程度の純度で得られたのが22mgである。
粗収量44mg 粗収率19.0%
【0042】
【表6】
【0043】
【化6】
【0044】
図1には、
合成した〔Ru(Asp(OcHex)bpy)(Ser(Bzl)bpy)(dcbpy)〕2+の構造と、そのNMRスペクトルを示した。
(実施例3)
合成したルテニウム錯体(〔Ru(Asp(OcHex)bpy)(Ser(Bzl)bpy)(dcbpy)〕2+)の光学活性体(Δ・Λ)は、キラルカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により光学分割することに成功した。得られた光学活性体のCDスペクトルを図2に示した。配位子はL−アミノ酸を修飾しており、光学活性体はジアステレオマーであるため、CDスペクトルはミラーイメージにはならないと予想された。実際、300nm以上の長波長側ではほぼミラーイメージであったものの、300nm以下の短波長領域ではミラーイメージとならないジアステレオマーの特徴が観測された。
【0045】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、各々異なるビピリジン系配位子を持つ金属錯体を温和な条件で、確実に製造することが可能となる。
【0046】
また、より具体的にも、ルテニウムトリス(ビピリジン)錯体の光触媒能に、蛋白質様機能を付加する目的からの、ビピリジン配位子にアミノ酸を接続した化合物の分子設計が可能とされ、アミノ酸が接続した3つの異なるビピリジン型配位子を有するルテニウム錯体をマイルドな条件で合成する新規な合成方法が提供される。さらに合成したルテニウム錯体のHPLCによる光学分割(Δ・Λ)も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2により合成したカチオン錯体のNMRスペクトル図である。
【図2】実施例3による光学活性体のCDスペクトル図である。
Claims (3)
- 〔Ru(C 6 H 6 )Cl 2 〕 2 に、2,2′−bipylidylを反応させて〔Ru(bpy)(C 6 H 6 )Cl〕Cl[式中、bpyは2,2′−bipylidylを示す。]を生成させ、次いで、さらに4,4′−dimethyl−2,2′−bipylidylを反応させることを特徴とするRu(bpy)(dmbpy)Cl 2 [式中、bpyは前記に同じ。dmbpyは4,4′−dimethyl−2,2′−bipylidylを示す。]の製造方法。
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