JP3749514B2 - 超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法 - Google Patents

超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、核磁気共鳴装置(NMR)等に使用される超電導磁石装置に関するもので、特に、超電導磁石を冷却するための蓄冷式冷却機のメンテナンスを容易にしたメンテナンス方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、NMR等に使用される超電導磁石装置は、超電導磁石を極低温に冷却するための冷媒として液体ヘリウムが使用されていたが、液体ヘリウムは蒸発潜熱が小さく、取扱いが困難であり、更に、高価である事から、近年は、冷凍機によって直接超電導磁石を冷却する方式が普及しつつある。
【0003】
係る直冷式超電導磁石装置の代表的な構造としては、特許文献1に開示されている図4に示した如き装置がある。同図において、超電導磁石1は、アルミニウム等の伝熱特性に優れた材料で形成された保持枠1aに取り付けられて真空容器7内に配設された輻射シールド5内に収容配置されている。真空容器7は、内部を高真空に保持され、超電導磁石1や輻射シールド5への熱侵入を抑制する機能を有している。又、超電導磁石1は、前記輻射シールド5に対して第2断熱支持部材14により断熱支持されており、更に、該輻射シールド5は、第1断熱支持部材16により真空容器7に対して断熱支持されている。ここで、前記第2及び第1断熱支持部材16,14は、熱伝導率が小さく且つ強度の高い材料、例えばガラス繊維強化プラスチックで製作されており、前記輻射シールド5は、熱伝導率の大きなアルミニウム又はその合金で形成されている。
【0004】
冷凍機3は、一般には二段蓄冷式冷凍機(以下単に「冷凍機」という)が使用されており、その構造は、外観図である図5及び一部断面図である図6に示している様に、バルブユニット22a及び該バルブユニット22aの切り替え操作を行うモータ22bとからなる駆動部22と、上部の第1シリンダ21a及び下部の第2シリンダ21bが一体に形成されているシリンダ21と、該シリンダ21内に微小間隔で挿入され内部に蓄冷材が充填されている上部の第1ディスプレーサ20a及び下部の第2ディスプレーサ20bとが一体に形成されているディスプレーサ20と、前記バルブユニット22aにヘリウムガスを供給するガス配管27と、該ガス配管27に接続される圧縮機(図示せず)とから構成されている。これにより、圧縮機で加圧されたヘリウムガスが駆動部22でパルス圧に変化され、一部は第1ディスプレイサー20a内を経て該第1ディスプレーサ20aの下部に形成されている小孔23aから第1シリンダ21a下部に噴出し、残部は第2ディスプレイサー20b内を経て該第2ディスプレーサ20bの下部に形成されている小孔23bから第2シリンダ21bの下部に噴出し、前記ディスプレーサ22の上下動に伴うパルス状の圧力変化による断熱膨張によって低温を発生させる様になっている。即ち、前記第1シリンダ21aの先端に第1冷却端部3aを形成し、前記第2シリンダ21bの先端に第2冷却端部3bを形成する。これら第1冷却端部3a及び第2冷却端部3bは、夫々前記輻射シールド5と超電導磁石1を該超電導磁石1の材料に応じた温度に対応した温度、例えば、第1冷却端部3aは50Kに、第2冷却端部3bは4Kに冷却する様に設計されている。
【0005】
又、図4において、冷凍機取付シリンダ30は、前記冷凍機3を着脱可能に保持して該冷凍機3の点検や交換のためのメンテナンスを容易にするもので、取付フランジ32、第1取付シリンダ31a、第1取付熱接続部33、第2取付シリンダ31b及び第2取付熱接続部35から構成されており、前記取付フランジ32によって内部を真空に保持する様に、前記真空容器7に気密に取り付けられている。これにより、前記冷凍機3は、外部から前記真空容器7及び前記輻射シールド5を貫通して挿入可能になっている。又、前記第1取付熱接続部33は前記輻射シールド5に熱接続され、前記第2取付熱接続部35は前記超電導磁石1の保持枠1aに熱接続されており、更に、前記第1冷却端部3aと前記第1取付熱接続部33とが熱接続され、前記第2冷却端部3bと前記第2取付熱接続部35とが熱接続されている。
【0006】
係る構成の超電導磁石装置において、前記冷凍機3の運転を開始すると、超電導磁石1及びその支持枠1aの熱エネルギは、第2取付熱接続部35を介して第二冷却端部3bで吸収され、最終的には、前記冷凍機3の第2冷却端部3bが吸収する熱量(即ち冷凍能力)と外部から熱伝導や熱輻射によって該超電導磁石1とその保持枠1aに伝えられる熱量(即ち侵入熱)とがバランスした温度に超電導磁石1の温度が保たれる事になる。同様に輻射シールド5の熱エネルギは、前記第1取付熱接続部33を通じて第1冷却端部3aで吸収される。従って、該輻射シールド5は、前記冷凍機3の第1冷却端部3aが吸収する熱量(即ち冷凍能力)と外部から熱伝導や熱輻射によって該輻射シールド5に伝えられる熱量(即ち侵入熱)とがバランスした温度に保たれる事になる。
【0007】
上記構成の装置において、駆動部を有する機械部品である冷凍機3には、定期的なメンテナンスが必要になるが、前記冷凍機3の運転によって冷却が進行すると、前記取付シリンダ30と該冷凍機3との間の間隔は、熱収縮率の差によって極めて小さくなる。この状態でメンテナンスのために冷凍機を止めると、外気に接している冷凍機のシリンダ21の温度が上昇して熱膨張してくるので、その間隔は一層小さくなる。しかも前記取付シリンダ30内は真空に保持されているので、該取付シリンダ30から前記冷凍機3を取り出すには大きな取り出し力が必要となる。そこで、該冷凍機3の運転を停止した後、前記取付シリンダ30内に常圧のヘリウムガスを導入し、且つ、これらが略常温にまで昇温した後に取り出し作業を行う必要があった。この状態では、超電導磁石1も常温に昇温されているので、再度運転を開始するには、常温からの冷却から始めなければならず、通常は、この冷凍機3のメンテナンスのために超電導磁石装置の停止期間は1週間程度が必要とされていた。
【0008】
そこで、この停止期間の短縮を目的とした装置として、前記取付シリンダ30の内部にヘリウムガスを供給して液化させておき、前記冷凍機3のメンテナンスのための取出時には、該液体ヘリウムの蒸発によって該取付シリンダ30の内部温度を液体ヘリウム温度に保持させておく事により冷凍機3の昇温膨張を防止して、その取出し作業を容易にする方法が特許文献1に開示されている。このための装置として、前記取付シリンダ30の内部にヘリウムガスを供給して大気圧で液化させて貯蔵しておき、前記冷凍機3のメンテナンス時には、前記取付シリンダ30内の圧力は内部に充填されているヘリウムによって略大気圧に保たれており、且つ、冷凍機3は液体ヘリウムによって冷却されているので大きな取り出し力を要する事なく容易に引き抜く事ができる様にしたものである。具体的には、図4に示している様に、ヘリウム導入管40の一端を前記取付シリンダ30の内部に臨む様に取付フランジ32に取り付け、他端部をヘリウムガスボンベ46の配管44の継手部43に接続し、その間に締切バルブ41、安全弁47、圧力計48、減圧弁45を配置した構成となし、前記取付シリンダ30内にヘリウムを送給可能となしている。これにより、先ず、継手部43によってヘリウム導入管40とヘリウムガスボンベ46とを接続し、締切バルブ41を開け、減圧弁45により大気圧程度に減圧されたヘリウムガスを前記ガスボンベ46からヘリウム導入管40を経て前記取付シリンダ30内に供給する。この状態で前記冷凍機3の運転を開始すると、前記取付シリンダ30内のヘリウムガスも冷却されて内圧が下がってくるが、前記減圧弁45の設定値以下となると、前記ボンベ46から新たにヘリウムガスの供給がなされ、前記取付シリンダ30内の圧力は略大気圧に維持されたまま冷却が進行して行く。そして、最終的に前記第2冷却端部3bの温度が4Kに達すると、該取付シリンダ30の第2シリンダ31b内のヘリウムガスの一部は液化し、液体ヘリウムとなって該第2シリンダ31bの底部に溜まる事になる。所定量の液体ヘリウムが溜まり、新たなヘリウムガスの供給が不要となると、前記締切バルブ41を閉じ、ヘリウムガスボンベ46を継手部43から取り外す事になる。尚、前記取付シリンダ30に連通する液体ヘリウムタンク(図示せず)を付設する事により、多量の液体ヘリウムを蓄える様になす方式も開示されている。
【0009】
係る構成の装置においては、前記冷凍機3を前記取付シリンダ30から抜き出す場合には、該冷凍機3の運転を停止した直後においては、前記取付シリンダ30内の圧力は内部に充填されているヘリウムガスによって略大気圧に保たれており、且つ、液体ヘリウムによって昇温膨張が防止されているので、大きな取り出し力を要する事なく、容易に引き抜きが可能となっている点で、従来装置よりも改善されている。
【0010】
一方、前記冷凍機の点検や取り替え等のメンテナンスが要求されているのは、該冷凍機全体ではなく、該冷凍機3の前記シリンダ21内部の可動部であるディスプレーサ20及びその上部の駆動部22とからなる本体部分のみである点に着目して、この本体部分のみを取り出す様にした方式が特許文献2に開示されている。この方式を図7により説明する。図7は、この方式の超電導磁石装置を示す要部断面概念図であり、同図において、超電導磁石1はアルミニウム等の伝熱特性に優れた材料で形成された保持枠1aに取り付けられて真空容器7内に配設された輻射シールド5内に収容配置されている。冷凍機3は、前記図5,6に示したものと基本的に同一であるが、該冷凍機3のシリンダ21が前記真空容器7に直接取り付けられている点で大きく異なっている。即ち、前記冷凍機3の第1シリンダ21a上部に形成された取付フランジ28が前記真空容器7に気密に取り付けられており、該第1シリンダ21a下部の前記第1冷却端部3aに設けられた第1熱接続部24aは、輻射シールド5にボルト等の固着手段によって緊密に熱接続した状態で取り付けられ、前記第2シリンダ21bの下部の前記第2冷却端部3bに設けられた第2熱接続部24bは、熱スイッチ4の第1伝熱部材8にボルト締結等により固着されて熱接続されている。これにより、前記冷凍機最下端部の低温端部である前記第2熱接続部24bは、前記第1伝熱部材8、第2伝熱部材17、熱スイッチ4、超電導磁石の保持部材(伝熱部材)2及び前記保持枠1aを介して超電導磁石1を冷却する様に構成されている。
【0011】
更に、この装置においては、前記冷凍機3の前記第1シリンダ21a下部外周部の前記第1冷却端部3aの近傍位置にニクロム線等で形成したヒータ9aが巻着されており、又、前記第2シリンダ21bの下部外周部の前記第2冷却端部3bの近傍位置にもニクロム線等で形成したヒータ9bが巻着されており、該ヒータ9a,9bによって夫々第1シリンダ21a及び第2シリンダ21bを加温可能になっている。そして、前記冷凍機のメンテナンス時には、これらのヒータ9a,9bを用いて前記シリンダ21を昇温して該シリンダ21のみを膨張させる事により、該シリンダ21と内部のディスプレーサ20との間隔を広げて、メンテナンスの必要な該シリンダ21内のディスプレーサのみを取り出す様にしている。この取り出しには、次の2通りの方法が開示されている。
【0012】
先ず、第1の方法は、装置の運転停止後に、前記ヒータ9a,9bに通電して前記第1シリンダ21a及び第2シリンダ21bの第1冷却端部3a及び第2冷却端部3bを加温すると、シリンダ部21a,21bが僅かに膨張し、内部の第1ディスプレーサ20a及び第2ディスプレーサ20bとの間の間隔が僅かに広がるので、この状態で該ディスプレーサ20と上部の駆動部22とからなる本体部分を前記シリンダ21から抜き出して該本体部分のメンテナンスを行う。該本体部分の取り出しを終えるとヒータへの通電を停止して該シリンダの昇温を終了する。前記熱スイッチ4の内部に封入されたヘリウムやネオン等の伝熱媒体は、ヘリウムの場合は液体で存在し、ネオンの場合には固体で存在するので、前記ディスプレーサ20を取り出した後の前記冷凍機の第1シリンダ21a及び第2シリンダ21bを経て熱スイッチ4に流入する外部入熱は、これらヘリウムやネオンの相変化に伴う潜熱によって吸収される事になる。そして、前記冷凍機の保守点検や取り替えは、本体部分のみであるから、取り外しから再装入までの時間は僅かであるので、この間の熱侵入も僅かとなり、熱スイッチ4内の伝熱媒体の熱容量を、この本体部分の取り出し,再装入の時間に耐えられるだけのものに設計されている。
【0013】
次に、第2の方法は、装置の運転停止後に前記ヒータ9a,9bに通電し、前記第1シリンダ21a及び第2シリンダ21bの低温端部3a,3bを加温して該シリンダ21a,21bを僅かに膨張させ、内部のディスプレーサ20を抜き出すと共に、熱スイッチ4内の伝熱媒体を真空ポンプによって抜き出し、熱スイッチ4内を真空にして該熱スイッチ4を熱的にOFFとなす方法である。この場合は、ディスプレーサ20の点検に多少手間取っても前記冷凍機のシリンダを通して超電導磁石1に侵入する外部入熱は、OFF状態の該熱スイッチ4によって最小限に抑える様にしている。
【0014】
【特許文献1】
特開平11−162726号公報(図1)
【特許文献2】
特開2002−252111号公報(図1,図2)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来装置において、先ず、図4に示した特許文献1に記載の装置においては、冷凍機のメンテナンスが必要なのは該冷凍機のシリンダ内部のディスプレーサと駆動部からなる本体部分のみであるにも拘らず、冷凍機全体を取り出す様にしているので、これを取り出した後でも真空容器内の真空状態を維持する為に、該冷凍機を内蔵させるための取付シリンダ30を必要としている点がある。従って、真空容器7や輻射シールド5に別途上下の取付シリンダ31a,31bを設ける必要があり、構造を徒に複雑にしているのみならず、装置の部品点数の増加と共に加工工程や組立工程が増加してコスト増加をもたらしている。更に、取付シリンダ30内に再度新しい冷凍機3を装着した後の前記第1冷却端部3aや第2冷却端部3bの前記第1熱接続部33や第2熱接続部35との接続状態は冷凍機3の装着状態によって変化するので、その接触状態が悪いと大きな熱抵抗を生じさせる問題もあった。又、超電導磁石1との熱的接続状態を良好にするには、超電導磁石1及びその保持枠1a〜第2取付熱接続部35〜第2冷却端部3bの間の熱抵抗を最小限にする必要があり、特に、冷凍機の第2冷却端部3bと前記取付シリンダ30の第2取付熱接続部35との間は着脱自在となっているので、他の部分に比して伝熱抵抗が大きくなるおそれがあり、限られた冷凍能力で超電導磁石の冷却を行わなければならない無冷媒式超電導磁石装置においては、この部分の伝熱抵抗の存在は無視し得ない存在となる。
【0016】
又、特許文献1の装置においては、前記取付シリンダ30内に連通する液体ヘリウム貯槽を別途配置し、前記第2取付熱接続部35を該液体ヘリウムの蒸発潜熱によって所定の温度に保持する構成を取っているが、前述した様に、液体ヘリウムは、蒸発潜熱が非常に小さく、その取扱いも難しく且つ高価であるという問題、即ち、液体ヘリウムに代えて前記冷凍機を採用する際の解決課題を再び持ち込む事になる。従って、前記冷凍機を取り外した期間に超電導磁石に侵入する外部入熱を補償するに充分な液体ヘリウムの貯槽や液体ヘリウムの煩雑な取扱いが要求されるという問題が蒸し返される事になる。
【0017】
一方、特許文献2に記載の装置においては、上記した特許文献1について記載した問題点を解決している点で優れているが、冷凍機の前記ディスプレーサを大気に晒した状態で前記シリンダ内への挿入する事になり、この結果、ディスプレーサ内の蓄冷材の周囲の空間には空気が入り込む事になる。この様にディスプレーサ内に空気が存在する状態で冷却が開始されると、極低温下では空気中の成分である窒素や酸素や炭酸ガスが固化して前記蓄冷材の表面に付着する事になり、蓄冷材とディスプレーサ内を流通するヘリウムガスとの間の伝熱特性が低下し、冷凍機の性能を低下させる問題が生じている。更に、短時間とは言え低温部に積極的に熱を加えるのも、好ましい事ではない。
【0018】
本発明は、係る問題点に鑑みてなされたものであり、液体ヘリウム貯槽の如き取扱いの困難な設備を用いる事なく簡便な構造で容易に冷凍機のメンテナンスが行える様になすと共に、メンテナンス後の冷凍機の性能低下を生じない様にした新たなメンテナンス方法の提供を目的とするものである。即ち、前記特許文献2に記載のメンテナンス方法の改善を図る事を目的とするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
係る目的の元になされた本発明のメンテナンス方法は、前記冷凍機のメンテナンス作業を空気の存在しないヘリウムガス雰囲気下で行う様にしたものであり、具体的には、ヘリウムガスを充満させた作業用グローブボックス内でメンテナンス作業を行う方法である。詳しくは、真空容器に装着されている被交換用の古冷凍機の該真空容器から露出している部分を柔軟性を有する材料で形成したグローブボックスで覆う様に、該グローブボックスを前記真空容器に装着すると共に、メンテナンス初期におけるグローブボックス内のガスをヘリウムガスに置換するのを容易にするために、前記グローブボックスに、ヘリウムガスの導入口と、排気は許容するが吸気は許容しない逆止弁とを形成しておき、該グローブボックス内には、内部のガスが予めヘリウムガスで置換されているシリンダ内に装着されたディスプレーサと、該ディスプレーサに連結された駆動部とを有し、内部がヘリウムガスで置換された交換用の新冷凍機が装入されており、且つ、前記ヘリウムガスの導入口を介して前記グローブボックス内にヘリウムガスを充満しておき、該グローブボックス内において、前記新冷凍機の前記シリンダから前記ディスプレーサと駆動部とからなる新本体部分を抜き出して分離すると共に、前記古冷凍機のシリンダからディスプレーサと駆動部とからなる古本体部分を抜き出して分離し、続いて、前記新本体部分を前記古冷凍機のシリンダ内に装入する様にしたものである。あるいは、真空容器に装着されている被交換用の古冷凍機の該真空容器から露出している部分を柔軟性を有する材料で形成したグローブボックスで覆う様に、該グローブボックスを前記真空容器に装着すると共に、メンテナンス初期におけるグローブボックス内のガスをヘリウムガスに置換するのを容易にするために、前記グローブボックスに、ヘリウムガスの導入口と、排気は許容するが吸気は許容しない逆止弁とを形成しておき、該グローブボックス内には、シリンダ内に装着されたディスプレーサと、該ディスプレーサに連結された駆動部とを有し、内部がヘリウムガスで置換された交換用の新冷凍機が装入されており、且つ、前記ヘリウムガスの導入口を介して前記グローブボックス内にヘリウムガスを充満しておき、該グローブボックス内において、前記新冷凍機の前記シリンダから前記ディスプレーサと駆動部とからなる新本体部分を抜き出して分離すると共に、前記古冷凍機のシリンダからディスプレーサと駆動部とからなる古本体部分を抜き出して分離し、続いて、前記新本体部分を前記古冷凍機のシリンダ内に装入し、これら一連の作業が、前記グローブボックス(10)内をヘリウムガスで置換した後に、ヘリウムガスを該グローブボックス(10)内に通気しつつ行われるものであってもよい。尚、前記グローブボックスには、作業員の両手を挿入する両手袋部が内側に突出して形成されているものが特に好ましい。
【0020】
又、低温の前記シリンダ(古冷凍機のもの)に常温の前記ディスプレーサ(新冷凍機のもの)を接触させて、低温の前記シリンダ(古冷凍機のもの)を昇温して膨張させ、かつ、常温の前記ディスプレーサ(新冷凍機のもの)を冷却して収縮させることが好ましい。これにより、新本体部分を前記シリンダ内に挿入するに当り、前記シリンダの上部の常温から約4Kの最下端部の第2冷却端部までの大きな温度勾配が存在するので下方ほど熱収縮しており、常温の前記新本体部分を挿入するには多少の抵抗が存在するが、低温のシリンダに常温のディスプレーサが接すると、シリンダ側は昇温して膨張し、ディスプレーサ側は冷却されて収縮するので、さほど時間を要することなく比較的容易にディスプレーサの挿入を進行させることができる。
又、前記真空容器には台状の突出部が形成されており、該突出部の上面から前記冷凍機が前記真空容器内に装入されており、前記グローブボックスは、前記突出部の外周部に装着する様になすのは好ましい態様である。
【0021】
又、前記新冷凍機の前記シリンダは、冷凍機用の本物である必要はなくダミーのシリンダであってもよい。又、新冷凍機のシリンダ内のガスを予めヘリウムガスに置換する事なく前記グローブボックス内に装入し、該グローブボックス内のガスを真空ポンプで脱気した後、該グローブボックス内にヘリウムガスを供給する事により、グローブボックス内へのヘリウムガスの充填操作と前記新冷凍機の前記シリンダ内のガスのヘリウムガスへの置換操作とを同時に行う様にするのも好ましい態様である。
【0023】
【発明の実施の態様】
以下に本発明を実施例に基づいて図面を用いて説明する。図1は、本発明に係るメンテナンス方法の概念図であり、超電導磁石1を内蔵した真空容器7の上面には台状の突出部7aが形成されており、冷凍機3は、該台状の突出部7aの上面から真空容器7内に挿入されて該冷凍機3のシリンダ21の上部取付フランジ28の部分で該真空容器7内と気密に装着されている。又、前記台状の突出部7aの外周部のグローブボックス取付部11には、作業員の両手を挿入するための両手袋部10a,10bが内側に突出して形成されている柔軟性を有する塩化ビニール等の材料で形成されたグローブボックス10が装着されている。このグローブボックス10は、超電導磁石装置の運転時には取り外されているもので、前記冷凍機3のメンテナンス作業を行う直前に、前記冷凍機3の露出部(駆動部22)を覆い込む様に前記突出部7aの外周部に装着されるものである。
【0024】
前記グローブボックス10には、ヘリウムガス導入口12と、排気は許容するが吸気は許容しない逆止弁13とが設けられている。これにより、メンテナンス作業に先立って、前記突出部7aの外周部に装着されたグローブボックス10を萎ませて内部の空気を前記逆止弁13から排出し、続いて、予め準備されているヘリウムガスボンベ46から圧力調整弁45を有するヘリウム配管44を前記ヘリウムガス導入口12に接続して、グローブボックス10内にヘリウムガスを供給して、該グローブボックス10内の空気をヘリウムガスで置換する。この置換作業は、グローブボックス内へのヘリウムガス供給→グローブボックス内のガス放出→ヘリウムガス供給→ガス放出→ガス供給−−−−の作業を繰り返して、グローブボックス内には残留空気が実質的に存在しない程度にまで数回実施する。尚、上述の説明では、グローブボックスに逆止弁13を設けた例について説明しているが、これは、開閉弁を有する排気ノズルであっても構わない。この場合には、内部ガスを排気するときには主動で弁を開け、ヘリウムガスの供給時には弁を閉じる操作を行う事は言うまでもない。又、排気ノズルを使用する場合には、該排気ノズルを真空ポンプに接続して強制排気した後にヘリウムガスボンベ46からヘリウムガスを供給する様になせば、上記したヘリウムガス供給→ガス放出の工程を1回程度に短縮することが可能となる。
【0025】
次に、本発明のメンテナンス方法を、図2に示す工程図によって説明する。先ず、同図(a)は準備工程を示すもので、前述の要領でグローブボックス10を前記真空容器7の突出部7aに装着すると共に、グローブボックス内の残留空気をヘリウムガスに置換する。この工程で重要な事は、図示している様に、交換用の新しい冷凍機(新冷凍機)3Aを、前記グローブボックス10内に予め装入している点である。又、この新冷凍機3Aは、前述のシリンダ21Aの内部にディスプレーサ20Aが挿入されており、上部には、該ディスプレーサ20Aに接続され且つ2本のヘリウムガス配管(ヘリウムガス導入用と排出用)27を備えた駆動部22Aが配置されている。そこで、前記グローブボックス10内に該新冷凍機3Aを装入する前に、前記ヘリウムガス配管27からヘリウムガスを供給して、新冷凍機内部、特に、ディスプレーサ内部に残留している空気をヘリウムガスに置換しておくのが好ましい。尚、新冷凍機3Aの内部ガスをヘリウムガスに置換する方法としては、上述のヘリウムガス流通法の他、前記配管27に接続した配管に切替弁を配置し、一方をヘリウムガスボンベに接続し、他方を真空ポンプに接続して、先ず内部を真空にした後に切替弁の操作によってヘリウムガスを供給する方法も可能である。これにより、新冷凍機3A内の蓄冷材表面に空気中の酸素や窒素や炭酸ガスが氷結して該蓄冷材と流通ヘリウムとの熱交換効率を低下させるのを防止する事が可能となる。
【0026】
尚、前記新冷凍機3Aは、新品の完成品でもよいが、本発明では、後述する如く前記ディスプレーサ20Aと駆動部22Aとからなる冷凍機本体部分のみを取り替えるものであるので、新冷凍機3Aの前記シリンダ21Aは、本物と同一寸法形状のダミーでもよい。
【0027】
次に、図2(b)の工程では、作業員は、図1に示しているグローブボックス10内に形成されている作業用両手袋10a,10b内に両手を入れて、前記グローブボックス10内に装入されている新冷凍機3Aから、駆動部22A,ディスプレーサ20Aとからなる新本体部分3A’を抜き出す。この状態では、グローブボックス10内にはヘリウムガスが充満しているので、露出したディスプレーサ20A内にヘリウムガス以外のガスが侵入する事はない。又、ボルトを回すためのレンチやスパナ等のメンテナンス用工具も、前記新冷凍機3Aと共に、前記グローブボックス10内に事前に装入されている事もいうまでもない。又、図1ではグローブボックス10内に作業用両手袋10a,10bを形成している図が示されているが、グローブボックス自体は塩化ビニール樹脂やポリエチレン或いはポリプロピレンの如き柔軟性を有する薄い樹脂フィルム或いはシートで形成されるものであるので、この作業用両手袋10a,10bを省略し、グローブボックス自体の柔軟性を利用して外部から該グローブボックス内の部品や工具を掴んで作業を行う事も可能である。
【0028】
次に、図2(c)の工程では、作業員は、前述の両手袋10a,10b内に両手を装入して、前記グローブボックス10内で、前記真空容器7から使用済の古冷凍機3Bから、シリンダ21Bを残して駆動部22Bとディスプレーサ20Bとからなる古冷凍機の本体部分(古本体部分)3B’を抜き出す。
【0029】
次に、図2(d)の工程では、取り出した古本体部分3B’に替えて前記新本体部分3A’を真空容器7に装着されている前記古冷凍機のシリンダ21B内に挿入固定して、冷凍機の取り替えを行う。この新本体部分3A’を前記シリンダ21B内に挿入するに当り、前記シリンダ21Bの上部の常温から約4Kの最下端部の第2冷却端部3bまでの大きな温度勾配が存在するので下方ほど熱収縮しており、常温の前記新本体部分3A’を挿入するには多少の抵抗が存在するが、前記シリンダ内面と前記ディスプレーサとの間にはヘリウムガスが流通する微小間隔が存在し、且つ、低温のシリンダに常温のディスプレーサが接すると、シリンダ側は昇温して膨張し、ディスプレーサ側は冷却されて収縮するので、さほど時間を要することなく比較的容易にディスプレーサの挿入が進行する。
【0030】
この一連の作業が終了すると、前記グローブボックス10を真空容器7から取外して、新冷凍機による冷却運転を開始し、超電導磁石装置の運転を再開する事になす。
【0031】
以上の説明から明らかな様に、グローブボックス10の内部は、作業員にとって内視可能でなければならないので、該グローブボックス10は、全体を透明な樹脂シートで形成するか、少なくとも作業員にとってボルトの位置や取り替え部品の配置位置が容易に分かる様な適度の大きさの覗き窓が形成されている事はいうまでもない。
【0032】
又、グローブボックス10内は、常に正圧に保持しておく事が好ましいので、図1において、作業中もヘリウム導入口12からヘリウムガスを少量づつ供給すると共に、逆止弁13又は排出ノズルからヘリウムガスを排出しつつ、即ち、ヘリウムガスを通気しつつメンテナンス作業を行う様になす方法もある。
【0033】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
〔実施例1〕
図3は、本発明によるメンテナンス方法によって冷凍機の取り替え作業を行った場合の、冷凍機の運転を停止してからの経過時間と、超電導磁石装置の各部の温度変化を示したグラフであり、図中(a)は超電導磁石1の温度変化を示し、(b)は冷凍機の第2冷却端部3bの温度変化を示し、(c)は冷凍機の第1冷却端部3aの温度変化を示し、(d)は輻射シールド5の温度変化を夫々示している。尚、使用した新冷凍機の内部は、事前にヘリウムガスによって略完全に置換されている。同図において、時間t0で冷凍機の運転を停止し、直ちに冷凍機の配管27の取り外しとグローブボックス10の装着及び該グローブボックス10内のヘリウムガス置換並びに新冷凍機3Aから新本体部分3A’の抜き出しが行われ、続いて古冷凍機3Bから古本体部分3B’の抜き出しが行われ、その一連の作業は、前記冷凍機停止から約15分後の時間t1で終了している。この時間帯(t0〜t1)においては、古冷凍機を通して行われる常温の外気と低温の内部との熱伝導及び輻射シールドへの熱輻射によって該冷凍機の第1冷却端部3aの温度が上昇を開始している(曲線c参照)。しかしながら、他の部分(曲線a,b,d)の温度上昇は殆ど認められない。続いて、時間t1から前記新本体部分3A’の挿入が開始され、冷凍機停止後約19分経過した時間t2で、その挿入取り付けが完了する。この間の初期には、古シリンダ21B内に常温のヘリウムガスが流入してくると共に、常温の新本体部分3A’が徐々に挿入されてくるので、第1冷却端部3a及び第2冷却端部3bの温度も急速に上昇する(曲線c,b参照)。又、前記第1冷却端部3aの昇温により該第1冷却端部3aによって冷却されている輻射シールド5の温度も昇温を始める(曲線d参照)。続いて、時間t2から時間t3(冷凍機停止後約25分経過した時点)の間は、前記グローブボックス10の取り外し作業と露出した新本体部分3A’の配管27を通して行う新冷凍機内部のヘリウムガスパージを行う期間であり、この間に、前記第1冷却端部3aと輻射シールド5の昇温は僅かに認められるが、第2冷却端部3bの温度上昇は殆ど生じていない。続いて、新本体部分3A’のヘリウム配管27への配管復旧作業が行われ、全ての作業が完了した時間t4(冷凍機停止後約28分経過した時点)で新冷凍機の運転か再開され、前記第1冷却端部3aと第2冷却端部3bの冷却が開始されている。尚、前記第2冷却端部3bの昇温により、超電導磁石の温度上昇も始まっているが、その最高到達温度も高々32K程度である(曲線a参照)。
【0034】
上記の実施例から、本発明のメンテナンス法によると、冷凍機の停止から約28分で冷凍機の取り替え作業が完了して新冷凍機による運転再開が行われている事が分かる。この間に超電導磁石の温度は約32K程度にまで昇温しているが、元の4Kレベルにまで下がって超電導磁石の励磁が可能な状態に回復するには、約2.5時間程度である(曲線a参照)。又、尚、第2冷却端部3bが冷凍機停止前の温度レベル(約4K)に回復するのも、約2.5時間程度である(曲線b参照)。従って、本発明方法によると、冷凍機停止から超電導磁石を再励磁するまでに必要な時間は僅かに2時間半程度であり、これは、1週間の装置停止が要求されていた従来のメンテナンス方法と対比すると、驚異的な値であることが理解されよう。
【0035】
更に、図7に示した如く第2冷却端部3bと超電導磁石1との間に、ヘリウムやネオンを充填した熱スイッチ4を配置している場合には、メンテナンスのための冷凍機の停止に合わせて、該熱スイッチ内のガスを真空ポンプで脱気する様にしておけば、前記第2冷却端部3bが多少昇温しても、熱スイッチ内が真空状態(OFF状態)になっているので、該第2冷却端部3bから超電導磁石1への入熱を一層抑制する事が可能になり、その結果、超電導磁石1の昇温が抑制され、前述した冷凍機停止から超電導磁石の再励磁までの時間を更に短縮する事も可能である。
【0036】
次に、前記新冷凍機3A内をヘリウムガスで置換した場合の効果について、実施例を用いて説明する。
〔実施例2〕
次の3つのケースについて、超電導温度まで冷却させて冷却能力を比較した。その結果を表1に示す。
ケース1:冷凍機内部の残留空気をヘリウムガスで完全に置換した新冷凍機を用いて、これをヘリウムガスを充満させたグローブボックス内で交換した場合(実施例1のケース)
ケース2:新冷凍機のシリンダから本体部分を大気中で抜き出し、その後に、該本体部分のみをグローブボックス内に装入して交換した場合
ケース3:ケース2で超電導温度まで冷却された冷凍機を、一旦室温まで昇温して内部をヘリウムガスで置換し、再度超電導温度まで冷却した場合
【0037】
【表1】
Figure 0003749514
【0038】
表1において、1st,2ndは、夫々冷凍機3の第1冷却端部3a及び第2冷却端部3bを意味し、ヒータの欄の数字は、夫々前記第1冷却端部及び第2冷却端部のシリンダ外周部に捲着したヒータからの入熱であって、冷凍機3への熱負荷を意味し、又、温度の欄は、夫々前記第1冷却端部3a及び第2冷却端部3bの各熱負荷状態における到達温度を意味している。
【0039】
同表から明らかな様に、新冷凍機の内部を事前にヘリウムガスに置換し、グローブボックス内で本体部分を抜き出して古い冷凍機の本体部分と取り替えたケース1では、第2冷却端部3bの温度は、熱負荷がない場合には3.21Kに到達し、1Wの熱負荷を与えた場合でも4.72Kに達している。一方、新冷凍機から大気中で本体部分を抜き出し、グローブボックス内で古い冷凍機の本体部分と取り替えたケース2では、第2冷却端部3bの温度は、熱負荷がない場合には3.28Kに到達しているが、1Wの熱負荷を与えた場合には5.17Kと、0.45Kも高い値で止まっている。これは、ケース2の場合には、冷凍機内に空気が残留しており、これが冷却過程で液化してディスプレーサ内の蓄冷材の表面に付着し、更に冷却が進行すると固化して蓄冷材表面に氷結体の薄膜を形成する結果、ディスプレーサ内部を流通するヘリウムガスとの伝熱性能が低下して冷凍機の性能を低下させているものと考えられる。特に、通常の超電導磁石に使用されているNbTiやNb3Snからなる超電導線では、4K近傍における臨界電流値の温度依存性が非常に大きいので、上記第2冷却端部における熱付加時の0.45Kの到達温度の差は、超電導磁石への通電電流値の上限を大きく左右し、単なる伝熱特性の良否に留まらず、超電導磁石の発生磁場レベルの差となって現れてくる。この意味から、事前に冷凍機内をヘリウムガスで置換しておくことは、極めて大きな効果のあることが分かる。因みに、このケース2の冷凍機を常温まで昇温して内部をヘリウムガスでパージする事により、ディスペーサ20内の蓄冷材表面に付着していた空気を除去して再度冷却試験を行ったケース3では、前記第2冷却端部における熱付加時の到達温度は4.84Kであり、ケース2に比して0.33Kも改善されている。
【0040】
上記実施例2から、冷凍機の本体部分を取り替える際に、事前に冷凍機内部をヘリウムガスで置換しておく事は冷凍機の性能を最高に発揮させる為には極めて重要な事が分かる。尚、上記ケース1では、グローブボックス内に新冷凍機を装入する前に該冷凍機内のガスをヘリウムガスに置換する操作を行っているが、グローブボックス内に装入する時点では係る内部ガスの置換を行う事なく装入しておき、グローブボックスの内部を真空脱気する事により、該グローブボックス内に置かれている新冷凍機内も真空に脱気されるので、その後にグローブボックス内にヘリウムガスを供給する事によって、該グローブボックス内へのヘリウムガスの充満操作と新冷凍機の内部ガスのヘリウムガスへの置換操作とを同時に行う事も可能である。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述した如く、本発明によれば、冷凍機3のメンテナンス作業をヘリウムガスを充満させたグローブボックス内で行う様になし、且つ、冷凍機全体を取り替えるのではなく、シリンダを除く本体部分のみを交換する様にしているので、メンテナンス操作が極めて短時間に行える様になり、超電導磁石装置の停止時間も短くって、装置の稼働率を飛躍的に高める事が可能となる。
【0042】
又、本発明では、冷凍機の取り替えに当り、シリンダ部分は残して本体部分のみを交換する様にしているので、図4に示した従来装置の如く冷凍機取付シリンダ30を不要とし、従って、装置の構成部品も少なくなり、超電導磁石装置のコストダウンに貢献する。又、前記冷凍機取付シリンダ30の存在による伝熱抵抗も少なくなるので、従来の冷凍機全体を再装着した場合に生じる前記冷凍機取付シリンダ30と輻射シールド5や超電導磁石1との熱接続の不安定さの問題は全く生じる事はなく、超電導磁石装置の冷却効率も向上させる事が可能となる。
【0043】
又、冷凍機の取り替えに当り、事前にディスプレーサ内のガスをヘリウムガスに置換しているので、該ディスプレーサ内に残留する空気の液化及び固化による蓄冷材と内部流通ヘリウムガスとの熱交換特性の低下も生じないので、冷凍機の性能を十分に発揮させる事ができ、超電導磁石装置の性能も初期性能を維持させる事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法を示す概念図である。
【図2】本発明に係る超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法の工程を示す概念図である。
【図3】本発明に係る超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法によるメンテナンス時間の経過と超電導磁石装置の主要内部温度の変化を示すグラフである。
【図4】従来の超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法を示す装置の概略図である。
【図5】二段蓄冷式冷凍機の外観図である。
【図6】図5に示した二段蓄冷式冷凍機の要部断面図である。
【図7】従来の超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法を示す他の装置の概略図である。
【符号の説明】
1 超電導磁石
3 二段蓄冷式冷凍機(冷凍機)
3a 第1冷却端部
3b 第2冷却端部
3A 新冷凍機
3A’ 新冷凍機の本体部分
3B 古い冷凍機
3B’ 古い冷凍機の本体部分
4 熱スイッチ
5 輻射シールド
7 真空容器
7a 台状の突出部
10 グローブボックス
10a,10b グローブボックスの両手袋部
11 グローブボックス取付部
12 グローブボックスのヘリウム導入口
13 グローブボックスの逆止弁
20 冷凍機のディスプレーサ
20a 第1ディスプレーサ
20b 第2ディスプレーサ
20A 新冷凍機のディスプレーサ
20B 古冷凍機のディスプレーサ
21 冷凍機のシリンダ
21a 第1シリンダ
21b 第2シリンダ
21A 新冷凍機のシリンダ
21B 古冷凍機のシリンダ
22 駆動部
22a バルブユニット
22b モーター
22A 新冷凍機の駆動部
22B 古冷凍機の駆動部
27 ヘリウムガス配管

Claims (7)

  1. 真空容器(7)内に超電導磁石(1)を配置し、該超電導磁石(1)を、前記真空容器(7)に装着された冷凍機(3)によって冷却する構成の超電導磁石装置における前記冷凍機(3)のメンテナンス方法であって、
    前記真空容器(7)に装着されている被交換用の古冷凍機(3B)の該真空容器(7)から露出している部分を柔軟性を有する材料で形成したグローブボックス(10)で覆う様に、該グローブボックス(10)を前記真空容器(7)に装着すると共に、
    前記グローブボックス(10)に、ヘリウムガスの導入口(12)と、排気は許容するが吸気は許容しない逆止弁(13)とを形成しておき、
    前記グローブボックス(10)内には、内部のガスが予めヘリウムガスで置換されているシリンダ(21A)内に装着されたディスプレーサ(20A)と、該ディスプレーサ(20A)に連結された駆動部(22A)とを有し、内部がヘリウムガスで置換された交換用の新冷凍機(3A)が装入されており、且つ、前記ヘリウムガスの導入口(12)を介して前記グローブボックス(10)内にヘリウムガスを充満させておき、
    前記グローブボックス(10)内において、前記新冷凍機(3A)の前記シリンダ(21A)から前記ディスプレーサ(20A)と駆動部(22A)とからなる新本体部分(3A')を抜き出して分離すると共に、前記古冷凍機(3B)のシリンダ(21B)からディスプレーサ(20B)と駆動部(22B)とからなる古本体部分(3B')を抜き出して分離し、
    続いて、前記新本体部分(3A')を前記古冷凍機のシリンダ(21B)内に装入することを特徴とする超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法
  2. 真空容器(7)内に超電導磁石(1)を配置し、該超電導磁石(1)を、前記真空容器(7)に装着された冷凍機(3)によって冷却する構成の超電導磁石装置における前記冷凍機(3)のメンテナンス方法であって、
    前記真空容器(7)に装着されている被交換用の古冷凍機(3B)の該真空容器(7)から露出している部分を柔軟性を有する材料で形成したグローブボックス(10)で覆う様に、該グローブボックス(10)を前記真空容器(7)に装着すると共に、
    前記グローブボックス(10)に、ヘリウムガスの導入口(12)と、排気は許容するが吸気は許容しない逆止弁(13)とを形成しておき、
    前記グローブボックス(10)内には、シリンダ(21A)内に装着されたディスプレーサ(20A)と、該ディスプレーサ(20A)に連結された駆動部(22A)とを有し、内部がヘリウムガスで置換された交換用の新冷凍機(3A)が装入されており、且つ、前記ヘリウムガスの導入口(12)を介して前記グローブボックス(10)内にヘリウムガスを充満させておき、
    前記グローブボックス(10)内において、前記新冷凍機(3A)の前記シリンダ(21A)から前記ディスプレーサ(20A)と駆動部(22A)とからなる新本体部分(3A ' )を抜き出して分離すると共に、前記古冷凍機(3B)のシリンダ(21B)からディスプレーサ(20B)と駆動部(22B)とからなる古本体部分(3B ' )を抜き出して分離し、
    続いて、前記新本体部分(3A ' )を前記古冷凍機のシリンダ(21B)内に装入するものであり、
    これら一連の作業が、前記グローブボックス(10)内をヘリウムガスで置換した後に、ヘリウムガスを該グローブボックス(10)内に通気しつつ行われるものであることを特徴とする超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法
  3. 低温の前記シリンダ(21B)に常温の前記ディスプレーサ(20A)を接触させて、前記シリンダ(21B)を昇温して膨張させ、かつ、前記ディスプレーサ(20A)を冷却して収縮させることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法
  4. 前記グローブボックス(10)には、作業員の両手を挿入する両手袋部(10a,10b)が内側に突出して形成されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法
  5. 前記真空容器(7)には台状の突出部(7a)が形成されており、該突出部(7a)の上面から前記冷凍機(3)が前記真空容器(7)内に装入されており、前記グローブボックス(10)は、前記突出部(7a)の外周部に装着されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法
  6. 前記新冷凍機(3A)の前記シリンダ(21A)が、ダミーシリンダである請求項1乃至のいずれか1項に記載の超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法
  7. 前記新冷凍機(3A)の前記シリンダ(21A)内のガスを予めヘリウムガスに置換する事なく前記グローブボックス(10)内に装入し、該グローブボックス(10)内のガスを真空ポンプで脱気した後、該グローブボックス(10)内にヘリウムガスを供給する事により、グローブボックス内へのヘリウムガスの充填操作と前記新冷凍機(3A)の前記シリンダ(21A)内のガスのヘリウムガスへの置換操作とを同時に行う様にしてなる請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超電導磁石装置用冷凍機のメンテナンス方法
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