JP3749423B2 - ガスの高密度化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はガスの高密度化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
無機物にはその構造中に何らかの隙間が存在する。例えば、ゼオライト、活性炭などは、0.3nmから1nm前後のいわゆるミクロ孔を有している。一方、シリカやケイ酸ソーダ等を界面活性剤中で加熱することにより得られるMCMと称される多孔材料(C. T. Kresge et al., Nature, vol.359, p710, 1992)や、カネマイト(NaHSi2O5・3H2O)をアルキルトリメチルアンモニウムでイオン交換して得られるFSMと称される多孔材料(S. Inagaki et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun., 680, 1993)は、1.5nm前後から50nm程度のいわゆるメソサイズの細孔(メソ孔)を有している。
【0003】
近年、様々な物質の吸着および/または貯蔵のためにこのような多孔材料を用いることが検討されている。例えば、Chenらは、ミクロ孔性活性炭への高圧メタン吸着特性を計算機実験等により評価した(X. S. Chen et al., Carbon 35, 1251-1258, 1997)。また、Daviesらはミクロ孔性炭素細孔への吸着を計算機実験で検討し、35気圧までの細孔内の吸着メタン密度が細孔径に依存して変化することを示した(G. M. Davies et al., Carbon 36, 1473-1490, 1998)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の文献に示された結果は、孔のサイズや分布が均一な理想的なミクロ孔性多孔材料(スリット細孔等)に対する計算機によるシミュレーションに基づくものであり、孔のサイズや分布が均一ではない実際のミクロ孔性多孔材料の挙動とは必ずしも同一とはならないという問題があった。
【0005】
また、実際のミクロ孔性多孔材料に対して高圧でガスを吸着させる場合、ガスの加圧力を変化させても細孔内に濃縮されるガスの密度が大きく変化しないため、細孔内に取り込まれるガスの密度の可変幅が小さいという問題があった。このために、吸着したガスの密度を操作することにより物質の溶解度を制御するというような、分離濃縮への応用的な使用法に制限があった。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、ガスを高圧で多孔材料に吸着させることにより細孔内部においてガスを高密度化することができ、しかも、ガスの加圧力の変化に対して濃縮されるガスの密度の可変幅を大きくすることの可能なガスの高密度化方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、細孔径がメソサイズであり、細孔配列構造の均一性の高い多孔材料を用いることにより、高圧でガスを吸着させたときに細孔内部でガスを高密度化することができ、さらにガスの加圧力の変化に対して濃縮されるガスの密度の可変幅を大きくすることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明のガスの高密度化方法は、中心細孔直径が1.5〜50nmであり、ヘキサゴナルまたはキュービックの細孔配列構造を有する多孔材料に、高圧でガスを吸着させ、該多孔材料の細孔内部における前記ガスの密度を、細孔外部における前記ガスの密度より増大させることを特徴とするものである。
【0009】
本発明において用いる多孔材料は、メソサイズの細孔がヘキサゴナル(六方構造)またはキュービック(立方構造)で配列しており、細孔配列が極めて規則的である。このような細孔配列を有する多孔材料は、細孔径の均一性も高い。したがって、細孔径の均一性が低くミクロ孔を有する多孔材料を用いる場合に比べて、細孔内における高圧ガスの密度分布の均一性をより高めることが可能になる。また、ガスの加圧力の変化に対して濃縮されるガスの密度の可変幅を大きくすることが可能となる。
【0010】
また、本発明は、中心細孔直径が1.5〜50nmであり、円柱状または多角柱状の細孔を有する多孔材料に、高圧でガスを吸着させ、該多孔材料の細孔内部における前記ガスの密度を、細孔外部における前記ガスの密度より増大させることを特徴とするガスの高密度化方法を提供するものである。
【0011】
中心細孔直径がメソサイズであり、円柱状または多角柱状の細孔を有する多孔材料は、その細孔の長手方向への径がほぼ一定であることを意味するから、細孔径の均一性が非常に高くなり、細孔径の均一性が低くミクロ孔を有する多孔材料を用いる場合に比べて、細孔内における高圧ガスの密度分布の均一性をより高めることが可能になる。また、ガスの加圧力の変化に対して濃縮されるガスの密度の可変幅を大きくすることが可能となる。
【0012】
本発明においては、前記吸着が、1×103〜2×104kPaの圧力で実施されることが好ましく、前記吸着が、前記ガスの超臨界温度以上で実施されることが好ましい。
【0013】
上記圧力または超臨界温度以上での一般の多孔材料に対するガスの吸着では、細孔内部に吸着した吸着ガス分子の密度は、細孔内部の未吸着のガス分子(流体)の密度に比べて大きくなるため、細孔内で密度の異なる吸着分子層と流体分子層が共存すると従来より考えられてきたが、本発明のようにメソサイズの孔が非常に均一に配列した多孔材料に対して、上記圧力または超臨界温度以上でガスの吸着を行う場合においては、細孔内部におけるガス分子の密度が均一になると考えられるため、ガスの高密度化がさらに進行する傾向にあり、また、ガスの加圧力の変化に対して濃縮されるガスの密度の可変幅を大きくすることがより容易となる傾向にある。
【0014】
また、本発明は、前記中心細孔直径をdp、前記ガスの分子径をdmとしたときに、dp/dmが2〜250であることを特徴とするガスの高密度化方法を提供するものである。dp/dmが上記の範囲内にあるときに、メソサイズの細孔を有する多孔材料の細孔内部へ高圧ガスが特に吸着しやすい傾向にあるため、ガスの高密度化をさらに進めることが可能となる。
【0015】
本発明においては、前記多孔材料において、中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積を細孔の全容積で除した値が0.6〜1であることが好ましい。中心細孔直径が上記の範囲内にある場合は、細孔の直径にばらつきが非常に少ないことを意味するから、ガスの高密度化の度合いがさらに高くなる傾向にあり、また、ガスの加圧力の変化に対して濃縮されるガスの密度の可変幅もより大きくなる傾向にある。
【0016】
さらに、本発明においては、前記ガスがメタンであることが好ましい。メタンの分子径は0.38nm程度であり、中心細孔直径が1.5〜50nmのメソ孔を有する多孔材料を用いることにより特に好適に高密度化が可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0018】
本発明のガスの高密度化方法は、多孔材料に高圧でガスを吸着させ、該多孔材料の細孔内部における前記ガスの密度を、細孔外部における前記ガスの密度より増大させるものであるが、前記多孔材料としては、(1)中心細孔直径が1.5〜50nmであり、ヘキサゴナルまたはキュービックの細孔配列構造を有する多孔材料、または(2)中心細孔直径が1.5〜50nmであり、円柱状または多角柱状の細孔を有する多孔材料を用いる。
【0019】
ここで、中心細孔直径とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径である。なお、細孔径分布曲線は、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、多孔材料を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。細孔径分布曲線は、この吸着等温線を用い、Cranston-Inklay法、Dollimore-Heal法、BJH法等の計算法により求めることができる。
【0020】
本発明において、多孔材料がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、多孔材料中の細孔の配置が六方構造であることを意味する。ヘキサゴナルの細孔配列構造としては、2d−ヘキサゴナル(2次元ヘキサゴナル)および3d−ヘキサゴナル(3次元ヘキサゴナル)が知られている。
【0021】
2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有する多孔材料の一形態を図1に模式的に示す。図1に示された多孔材料は、六角柱状の細孔が互いに平行に規則的に配列しており、細孔断面の配置が六方構造になっている。2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造の詳細に関しては、S. Inagaki, et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun., 680, 1993 や S. Inagaki, et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 69, 1449, 1996 等を参照することが可能である。一方、3次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有する多孔材料は、細孔が3次元の周期性で六方構造をとるように配置しており、詳細は、Q. Huo et al., Science, 268, 1324, 1995 等を参照することができる。
【0022】
多孔材料がキュービックの細孔配列構造を有するとは、多孔材料中の細孔の位置が立方構造であることを意味する。キュービック構造としてはIa3d(J. C. Vartuli et al., Chem. Mater., 6, 2317, 1994 参照)、あるいはPm3n(Q. Huo et al., Nature, 368, 317, 1994 参照)の対称性を有するものが知られている。
【0023】
なお、本発明において用いられる多孔材料は、その全ての細孔配列がヘキサゴナルまたはキュービックの細孔配列構造となっている必要はない。しかしながら、全ての細孔のうち80%以上はヘキサゴナルまたはキュービックの細孔配列構造となっていることが好ましい。
【0024】
本発明においては、上述のように円柱状または多角柱状の細孔を有する多孔材料を使用してもよい。円柱状または多角柱状の細孔は、互いに並行に配列していることが好ましく、その配列方法も規則的であることが好ましい。また、多孔材料における円柱状または多角柱状の細孔の細孔径は、互いに異なっていてもよい。なお、円柱状の細孔には、長手方法に垂直な断面が円形である細孔(円柱形の細孔)と楕円形である細孔(楕円柱形の細孔)の両方が含まれる。また、多孔材料は、異なる形状の多角柱状細孔を有していてもよい。例えば、六角柱状の細孔と八角柱状の細孔の両方を有していてもよい。同様に、多孔材料は、円柱形の細孔と楕円柱形の細孔の両方を有していてもよい。
【0025】
本発明においては、前記多孔材料において、中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積を細孔の全容積で除した値が0.6〜1であることが好ましい。
【0026】
ここで、「中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積を細孔の全容積で除した値が0.6〜1である」とは、例えば、中心細孔直径が3.00nmである場合、この3.00nmの±40%、すなわち1.80〜4.20nmの範囲にある細孔の容積の合計が、全細孔容積の60%以上を占めていることを意味する。この条件を満たす多孔質材料は、細孔の直径が非常に均一であることを意味する。
【0027】
本発明において用いられる多孔材料の構成成分に関しては特に制限はない。構成成分としては、各種金属酸化物、複合酸化物が好適に用いられる。構成成分としては、二酸化ケイ素(SiO2)または二酸化ケイ素を含有する複合酸化物を用いることが特に好ましい。
【0028】
本発明においては、六角柱状の細孔が2次元ヘキサゴナルに配列した、図1にに示されるような多孔材料を使用することが好ましい。このような多孔材料は、例えば、図2(a)〜(c)に模式的に示すような方法で作成可能である。
【0029】
まず、ケイ酸ソーダを700℃で焼成した後に水に浸漬してカネマイト1を作成する。カネマイト1はケイ酸塩単層11が複数積層した構造を有している(図2(a))。ケイ酸塩単層11の層間にはナトリウムイオンが存在しており、これを70℃程度の水中にてpH11.5〜12.5の条件で、アルキルトリメチルアンモニウム21でイオン交換するとケイ酸塩単層11が折れ曲がり、アルキルトリメチルアンモニウム/ケイ酸塩複合体2が形成される(図2(b))。次いでpHを8.5程度に低下させることによりケイ酸塩単層11間の縮合反応を生じせしめ、その後、焼成もしくは酸の添加によりアルキルトリメチルアンモニウム21を除去することにより、六角柱状の細孔が2次元ヘキサゴナルに配列した多孔材料3を得ることができる(図2(c))。
【0030】
なお、六角柱状の細孔が2次元ヘキサゴナルに配列した多孔材料の合成方法の詳細に関しては、特開平8−67578号公報、特開平8−277105号公報等を参照することができる。
【0031】
本発明においては、上述した多孔材料に対して高圧でガスを吸着させるが、用いるガスの種類には特に制限はない。ガスとしては、メタン、窒素、酸素、六フッ化硫黄、二酸化炭素、アルゴン等が挙げられ、なかでもメタンを用いることが好ましい。
【0032】
また、ガスの分子径をdm、多孔材料の中心細孔直径をdpとしたときに、dp/dmが2〜250となるようなガスを用いることが好ましい。dp/dmは3〜250であることがより好ましく、3〜10であることが特に好ましい。dp/dmが2未満である場合は、ガスの分子径が大きくなりすぎて細孔内の分子充填密度が低下する傾向にある。また、dp/dmが250を超える場合は、ガスの分子径に対して細孔径が大きくなりすぎて、濃縮されるガスの密度が小さくなる傾向にある。なお、ガスの分子径は、標準状態におけるガス分子の運動論的直径を意味する。
【0033】
本発明において、上述の多孔材料に対して上述のガスを高圧で吸着させる方法に関しては、特に制限はない。例えば、粉末状に調製した多孔材料を、オートクレーブ等のような加熱加圧が可能な容器に入れ、この容器中に、例えば、1×102〜5×104kPaになるようにガスを導入し吸着平衡に達するまで保持すればよい。なお、本発明においては、ガス導入後も容器を高圧に維持する必要がある。
【0034】
ガスは高圧になるにつれて密度が上昇していく。本発明の方法によりガスの吸着を行い高圧で維持した場合においては、細孔内に存在するガスの密度は、多孔材料に吸着させずに同一の圧力に加圧した場合におけるガスの密度に比べて大きな値となる。すなわち、多孔材料にガスを高圧で吸着させることにより高密度化が達成される。また、ガスの加圧力の変化に対して濃縮されるガスの密度の可変幅を大きくすることも可能となる。
【0035】
本発明においては、ガスの吸着は1×103〜2×104kPaの圧力で実施されることが好ましい。圧力が1×103kPa未満である場合は、ガスの高密度化の度合いが不十分になる傾向にある。一方、圧力が2×104kPaを超す場合は、ガスを導入するための装置やガスが導入される容器が大がかりとなる傾向にある。
【0036】
本発明においては、ガスの超臨界温度以上で吸着を行うことが好ましい。ガスをその超臨界温度以上で吸着を行う場合は、多孔材料の細孔内部にガスが非常に高密度で充填される傾向にある。本発明においては、ガスを超臨界温度以上かつ超臨界圧力以上にして超臨界流体を形成させ、この超臨界流体を多孔材料に吸着させることがさらに好ましい。超臨界流体は、液体と同等の溶解能力と、気体に近い拡散性及び粘性を有するため、高密度化によって物質の溶解性を非常に高めることが可能になる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
まず、中心細孔直径が1.5〜50nmのヘキサゴナルの細孔配列構造を有する多孔材料の合成例を説明する。
【0039】
(合成例1)
水に溶解させた0.1gのAl(NO3)3・9H2Oを50gの水ガラス1号に添加し、充分に攪拌した。なお、水ガラス1号の組成は、35〜38重量%のSiO2、17〜19重量%のNa2O、0.03重量%以下のFe、0.2重量%以下の不溶分よりなる。次いで、105℃の乾燥機で上記水ガラス中の水分を蒸発させ、更に真空乾燥機により、70℃の下、減圧乾燥した。これにより、更に水ガラス中の水分を除去し、水ガラスを膨張させた。
次に、上記膨張した水ガラスを炉内に入れて700℃にて6時間焼成した。これにより、アルミニウムを骨格中に取り込んだ結晶(δ─Na2Si2O5)が生成した。次いで、この結晶を、常温の水中で3時間攪拌することにより水中に分散させて、カネマイトを得た。
次に、カネマイトに、水及び臭化オクチルトリメチルアンモニウムを添加した。添加量は、50gのδ─Na2Si2O5から得られるカネマイトに対して、水1リットル、臭化オクチルトリメチルアンモニウム0.1molとなるようにした。
次いで、カネマイト、水、臭化オクチルトリメチルアンモニウムを混合し、そのままのpHで70℃、3時間攪拌した。次いで、2Nの塩酸を加えてpHを8.5に下げて、70℃、3時間以上攪拌した。次いで、水中の固形物を濾過し、洗浄した後、固形物をある程度乾燥させ、その後700℃にて6時間焼成し、オクチルトリメチルアンモニウムを除去し、多孔材料を得た。以下、得られた多孔材料をFSM−16−Ocと呼ぶ。FSM−16−OcのX線回折を行った結果、2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していることがわかった。
【0040】
(合成例2)
合成例1における、0.1molの臭化オクチルトリメチルアンモニウムに代えて0.1molの臭化ドデシルトリメチルアンモニウムを用いた他は合成例1と同様にして多孔材料を得た。以下、得られた多孔材料をFSM−16−Doと呼ぶ。FSM−16−DoのX線回折を行った結果、2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していることがわかった。
【0041】
(合成例3)
合成例1における、0.1molの臭化オクチルトリメチルアンモニウムに代えて0.1molの臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムを用いた他は合成例1と同様にして多孔材料を得た。以下、得られた多孔材料をFSM−16−Teと呼ぶ。FSM−16−TeのX線回折を行った結果、2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していることがわかった。
【0042】
(合成例4)
合成例1における、0.1molの臭化オクチルトリメチルアンモニウムに代えて0.1molの臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを用いた他は合成例1と同様にして多孔材料を得た。以下、得られた多孔材料をFSM−16−Heと呼ぶ。FSM−16−HeのX線回折を行った結果、2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していることがわかった。
【0043】
合成例1〜4で得られた多孔材料を、それぞれ液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、その吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得た。この吸着等温線を用い、中心細孔直径および細孔の全容積を求めた。さらに、中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積を細孔の全容積で除した値を求めた。得られた結果をまとめて以下の表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
次に、上記合成例1〜4で得られた多孔材料を用いて、高圧でガスを吸着させガスを高密度化させた。
【0046】
(実施例1)
ガスの吸着に先立って、FSM−16−Ocを1×10-3Paの真空下、120℃にて2時間加熱し前処理を行った。磁気浮遊式吸着天秤を備えた重量法吸着測定装置(日本ベル社製、FMS-AD-H100)に、前処理を行ったFSM−16−Oc 1gを入れ、ガスが吸着されたときの重量変化をモニタリングできるようにした。この吸着測定装置に、導入圧力が0〜10000kPaになるようにメタンを導入した。このとき、系の温度をメタンの超臨界温度以上である304kになるように保った。なお、メタンは導入圧力4600kPaで超臨界圧力に達した。
【0047】
メタンを導入するに当たっては、導入圧力を一定値にしてFSM−16−Ocの重量変化をモニタリングし、重量変化がなくなった時点で吸着平衡に達したものとみなして、細孔内に吸着されたメタンの重量を求めた。重量測定後、メタンの導入圧力を上昇させて、同様の操作を行った。このようにして、メタンの導入圧力を10000kPaまで段階的に上昇させ、吸着等温線を得た。
【0048】
なお、高圧の超臨界ガス導入を行った場合、ガスの流体密度は圧力に比例して大きくなるため、測定試料に浮力が働き、実測の重量変化(吸着及び浮力によるもの)は高圧状態では負の変量を示すことがある。したがって、このような場合は、アルキメデスの原理により浮力の寄与を排除する必要がある。すなわち、測定系内において、ある密度を示す流体を排除する体積分を求めることで、重量測定時に働く浮力を決定可能となる。浮力に寄与する排除体積はヘリウム浮力測定を行うことで決定した。室温状態におけるヘリウム吸着は無視できるため、ヘリウムの流体密度と重量変化から排除体積を測定可能である。メタン吸着測定に先立ってヘリウム浮力測定を行い、排除体積を決定してからメタン吸着測定を行った。ある圧力における高圧メタンガスの密度は、吸着測定装置に付属の密度測定用のシンカー(体積既知の錘)を用いて測定した。
【0049】
(実施例2)
実施例1におけるFSM−16−Ocに代えて、同量のFSM−16−Doを用いた他は実施例1と同様にしてメタンの吸着等温線を得た。
【0050】
(実施例3)
実施例1におけるFSM−16−Ocに代えて、同量のFSM−16−Teを用いた他は実施例1と同様にしてメタンの吸着等温線を得た。
【0051】
(実施例4)
実施例1におけるFSM−16−Ocに代えて、同量のFSM−16−Heを用いた他は実施例1と同様にしてメタンの吸着等温線を得た。
【0052】
実施例1〜4で得られた304kにおける吸着等温線を図3にまとめて示す。図3の縦軸は多孔材料の単位重量当たりに吸着したメタン吸着重量を多孔材料の細孔容積で除した値である。これは単位容積当たりの細孔に存在するメタン重量(密度)に対応する。吸着重量はヘリウム浮力測定で決定された試料体積による浮力の寄与分および細孔内部に吸着したメタンの吸着分子相による寄与を補正した値である。
【0053】
図3に示された吸着等温線はLangmuir型に近い形状であり、各多孔材料の細孔内のメタン密度はバルク流体密度(ガス状態のメタンの密度)の約2倍となっており、メタンが細孔内部で高密度化されたことがわかった。また、細孔内メタン密度と中心細孔直径には相関があり、中心細孔直径の拡大に伴ってメタン密度は減少する傾向を示した。これは、細孔の個体表面と吸着分子間に働く吸着相互作用により細孔内の分子密度が高められる際に、その吸着相互作用が細孔径と吸着分子の分子径との比によって変化するためである。
【0054】
そこで、細孔内のメタンの密度が、中心細孔直径(dp)とメタンの分子径(dm)の比(dp/dm)によりどの程度変化するかを、実施例1〜4で得られた結果に基づいて整理した。その結果を図4に示す。なお、メタンの分子径は0.38nmであり、各多孔材料におけるdp/dmは以下の表2の通りであった。
【0055】
【表2】
【0056】
図4からわかるように、ある圧力におけるメタン密度は中心細孔直径の増加に伴い単調減少しており、dp/dmの極限(dp/dm→∞)においては多孔材料に吸着しない状態でのメタンの密度に集束する。図4よりdp/dmが3〜10の範囲で、dp/dm→∞の値より十分大きな密度が得られることから、この範囲においてメタンの高密度化が特に良好に達成できることがわかった。
【0057】
次に、ガスの加圧力の変化に対して濃縮されるガスの密度の可変幅を調べる実験を行った。
【0058】
(実施例5)
メタンの導入圧力を0〜200気圧(0〜約20000kPa)にした他は、実施例4と同様にしてFSM−16−Heを用いた場合の吸着等温線を得た。
【0059】
(比較例1)
実施例1におけるFSM−16−Ocに代えて、同量のモルデナイトを用い、メタンの導入圧力を0〜200気圧(0〜約20000kPa)にした他は、実施例1と同様にして、メタンの吸着等温線を得た。なお、モルデナイトは中心細孔直径0.7nmのミクロ孔を有し、メタンを吸着させる本比較例においてdp/dmは1.84であった。
【0060】
(比較例2)
実施例1におけるFSM−16−Ocに代えて、同量の椰子殻活性炭を用い、メタンの導入圧力を0〜200気圧(0〜約20000kPa)にした他は、実施例1と同様にして、メタンの吸着等温線を得た。なお、椰子殻活性炭は中心細孔直径1.0nmのミクロ孔を有し、メタンを吸着させる本比較例においてdp/dmは2.63であった。
【0061】
実施例5および比較例1〜2に関して、得られた吸着等温線をもとに、0〜1気圧、1〜10気圧、10〜100気圧、および100〜200気圧において細孔内のメタンの密度をどの程度変化させ得るかを調べ、それを図5に示した。
図5に示されたモルデナイト、椰子殻活性炭、およびFSM−16−Heの結果を比較することにより、実際的な加圧条件である10〜200気圧(1×103〜2×104kPa)におけるメタンの密度の可変幅は、本発明のFSM−16−Heを用いる方法においては、モルデナイトおよび椰子殻活性炭を用いる方法に比較して約2倍広くなることがわかった。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガスを高圧で多孔材料に吸着させることにより細孔内部においてガスを高密度化することができ、しかも、ガスの加圧力の変化に対して濃縮されるガスの密度の可変幅を大きくすることの可能なガスの高密度化方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有する多孔材料の一形態を示す斜視図である。
【図2】(a)はカネマイトを示す斜視図であり、(b)はアルキルトリメチルアンモニウム/ケイ酸塩複合体を示す斜視図であり、(c)は多孔材料を示す斜視図である。
【図3】メタン圧力とメタン密度の関係を示す図である。
【図4】中心細孔直径とメタンの分子径の比(dp/dm)と、メタン密度の関係を示す図である。
【図5】モルデナイト、椰子殻活性炭、およびFSM−16−Heの細孔内のメタン密度を示す図である。
【符号の説明】
1…カネマイト、2…アルキルトリメチルアンモニウム/ケイ酸塩複合体、3…多孔材料、11…ケイ酸塩単層、21…アルキルトリメチルアンモニウム。
Claims (5)
- 中心細孔直径が1.5〜50nmであり、ヘキサゴナルまたはキュービックの細孔配列構造を有する多孔材料に、高圧でガスを吸着させ、該多孔材料の細孔内部における前記ガスの密度を、細孔外部における前記ガスの密度より増大させるガスの高密度化方法であって、
前記中心細孔直径をdp、前記ガスの分子径をdmとしたときに、dp/dmが3〜10であり、
前記吸着が、1×10 3 〜2×10 4 kPaの圧力、及び前記ガスの超臨界温度以上、で実施されることを特徴とするガスの高密度化方法。 - 中心細孔直径が1.5〜50nmであり、円柱状または多角柱状の細孔を有する多孔材料に、高圧でガスを吸着させ、該多孔材料の細孔内部における前記ガスの密度を、細孔外部における前記ガスの密度より増大させるガスの高密度化方法であって、
前記中心細孔直径をdp、前記ガスの分子径をdmとしたときに、dp/dmが3〜10であり、
前記吸着が、1×10 3 〜2×10 4 kPaの圧力、及び前記ガスの超臨界温度以上、で実施されることを特徴とするガスの高密度化方法。 - 前記吸着が、1×10 4 〜2×10 4 kPaの圧力で実施されることを特徴とする請求項1または2記載のガスの高密度化方法。
- 前記多孔材料において、中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積を細孔の全容積で除した値が0.6〜1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスの高密度化方法。
- 前記ガスがメタンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスの高密度化方法。
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