JP3749010B2 - 非水電解液電池の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、リチウム一次電池あるいはリチウム二次電池などのリチウムまたはリチウム合金を負極活物質とし、このリチウムまたはリチウム合金をシート状に形成した帯状負極と帯状正極とをセパレータを介して渦巻状に卷回して渦巻状電極体とし、この渦巻状電極体を非水電解液とともに外装缶に挿入して形成する非水電解液電池の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のリチウムまたはリチウム合金を負極活物質とする非水電解液電池における渦巻状電極体は、一般的に、リチウムまたはリチウム合金をシート状に形成して帯状負極とし、この帯状負極と帯状正極とをセパレータを介してその最外周に負極が位置するように渦巻状に卷回して渦巻状電極体とする方法が採用されている。このため、正極と負極が互いに両面で対向するような構成となるが、最外周の負極は内周側のみが正極と対向する構成となる。
【0003】
ところで、リチウム一次電池のリチウム活物質は放電反応が進行するに伴い、徐々に消耗してやがては消滅することとなるが、このように、最外周に位置する負極が内周側のみで正極に対向する構成にすると、完全放電した後の負極の消耗状態は以下のようになる。即ち、最外周に位置する負極はリチウム活物質の全てが消耗しきらないで一部が残存するとともに、放電反応が必ずしも全ての対向面で一様でないため、最外周以外でも部分的にリチウム活物質の一部が残存する。
【0004】
このように、負極にリチウム活物質の一部が残存すると、放電反応が完全放電に至るに伴い、放電反応がリチウム活物質が多く存在する最外周に集中するようになるため、ときには正極の表面にリチウムが析出して内部短絡が発生するという問題を生じた。
【0005】
この問題を解決するために、例えば、特開平4−62755号公報において、最外周に位置する負極の厚みを内部の負極の厚みの70%程度に調整する方法が提案されている。この特開平4−62755号公報において提案された方法にあっては、帯状のリチウム板を加圧ローラにより圧延するとともに、最外周に位置するリチウム板の押圧力を大きくして、最外周に位置する部分のリチウム板の厚み薄くし、最外周に位置する負極の厚みを内部の負極の厚みの70%程度に調整するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平4−62755号公報において提案された圧延方法では、ローラでの圧延は1回であり、リチウム板の厚みのばらつきが大きくなる。また、1回で規定の厚さまで圧延するため、リチウム板が湾曲したり蛇行しやすくなる。さらに、何回かに分けて圧延する場合、新たな圧延工程を付加する必要があり、生産性が低下するという問題を生じる。
一方、2枚のリチウム板を貼り合わせたリチウム負極を用いることが実開平3−119955号公報において提案されているが、2枚のリチウム板を貼り合わせるためには、リチウム負極の組立工程に新たな工程を付加する必要が生じるため、生産性が低下するという問題を生じる。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
そこで、本発明は、リチウムまたはリチウム合金をシート状に形成した帯状負極と帯状正極とをセパレータを介して渦巻状に卷回して渦巻状電極体とし、この渦巻状電極体を非水電解液とともに外装缶に挿入して形成する非水電解液電池の製造方法であって、放電反応がリチウム負極の全体で均一に進行するリチウム負極を新たな工程を付加することなく製造できるようにすることをその目的とするものである。
【0008】
このため、本発明の非水電解液電池の製造方法は、長辺状の第1のリチウム負極とこの第1のリチウム負極より長さが短い短辺状の第2のリチウム負極とを形成し、第1のリチウム負極の第2のリチウム負極より長さが長い部分を渦巻状電極体に形成された際に同渦巻状電極体の最外周になる部分とし、このような第1及び第2のリチウム負極を貼着したセパレータをリチウム負極同士が重なり合うようにして折り曲げ、このセパレータ上に帯状正極を重ね合わせた後、同帯状正極が内側になるようにして渦巻状に卷回して渦巻状電極体を形成する方法を採用している。
【0009】
シート状のリチウムあるいはリチウム合金は柔らかいため、渦巻状電極体を形成する際の卷回時の加圧力により、第1のリチウム負極と第2のリチウム負極とが互いに圧着されるようになる。このため、新たな工程を設けることなく、2枚のリチウム負極を貼り合わせることが可能となり、この種のリチウム負極を用いた非水電解液電池の生産性が向上する。
【0010】
また、長さの長い第1のリチウム負極の長さの短い第2のリチウム負極より長さが長い部分を、渦巻状電極体に形成された際に同渦巻状電極体の最外周部となる部分としているため、渦巻状電極体の最外周部に位置するリチウム負極の厚みは第1のリチウム負極のみの厚みとなる。このため、渦巻状電極体の内周部と外周部とでほぼ均一に放電反応が進行するようになり、完全放電に至るまで放電反応が進行しも、最外周部にリチウム活物質が残存することが防止できるようになる。
【0011】
そして、セパレータの中央部から等距離の位置に、第1と第2のリチウム負極のそれぞれの一方の端部がそれぞれ位置するようにセパレータ上に配置するとともに、集電タブが接続された第2のリチウム負極の集電タブ側が他方の端部になるように配置すると、渦巻状電極体に形成された際に、負極集電タブが渦巻状電極体の外周部に位置するようになるので、リチウム負極の放電反応を均一に進行させることができるようになる。
【0012】
この種の非水電解液電池において、放電反応が不均一性に進行して不均一にリチウム活物質が消耗し、負極集電タブとの接続が切断される状態となった場合、負極集電タブとの接続が切断された部分のリチウム活物質は放電反応に寄与しないこととなる。そして、放電反応に寄与しないリチウム活物質の面積が減少すると、急激に電池電圧が低下するようになる。このため、本発明においては、セパレータ折曲工程において、第1と第2のリチウム負極の間に負極集電体を配置してリチウム負極同士が重なり合うようにして折り曲げるようにしている。
【0013】
このように、第1と第2のリチウム負極の間に負極集電体を配置するようにすると、放電反応が不均一性に進行して不均一にリチウム活物質が消耗されて、負極集電タブとの接続が切断されるようになっても、この負極集電体により負極全体の電気的な接続状態が維持されるようになるので、急激に電池電圧が低下することが防止できるようになり、放電電圧が向上して、長寿命の非水電解液電池が得られるようになる。
【0014】
さらに、渦巻状電極体に形成された際にこの渦巻状電極体の最外周部に第1のリチウム負極のみ存在させるようにした場合、渦巻状電極体の内周部と最外周部とで均一に放電反応が進行できるようにするためには、第1のリチウム負極の厚みを第1と第2のリチウム負極の合計の厚みの30〜60%になるようにすることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。なお、図1は二酸化マンガン正極を示す図である。また、図2は実施例1のセパレータ付リチウム負極を示す図であり、図3は実施例2のセパレータ付リチウム負極を示す図であり、図4は比較例1のリチウム負極を示す図であり、図5は比較例2のリチウム負極を示す図であり、図6は比較例3のリチウム負極を示す図である。
【0016】
また、図7は実施例1および実施例2のセパレータ付負極と二酸化マンガン正極とを渦巻状に卷回して渦巻状電極体した場合の断面図であり、図8は比較例1のリチウム負極と二酸化マンガン正極とを渦巻状に卷回して渦巻状電極体した場合の断面図であり、図9は比較例2および比較例3のリチウム負極と二酸化マンガン正極とを渦巻状に卷回して渦巻状電極体した場合の断面図である。さらに、図10は実施例1および実施例2の渦巻状電極体を外装缶に収納して構成した非水電解液電池の断面を示す図である。
【0017】
1.正極板の作製
正極活物質としての二酸化マンガン、導電剤としての炭素系導電剤、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および水を所定の割合に混合・混練して、適度の粘性を有する正極合剤11を作製する。この正極合剤11をステンレス製のエキスパンドメタル10に塗布し、ローラで圧延して正極圧延板を作製する。この正極圧延板を所定の大きさに切断した後、乾燥処理した後、正極合剤層の一部を剥離して、エキスパンドメタル10を露出させ、この露出部分にステンレス薄板からなる正極集電タブ12をスポット溶接する。この後、図1に示すように、正極集電タブ12の先端部近傍付近を除いて、その上面を覆うようにして合成樹脂製の粘着テープ13を貼り付けて、二酸化マンガン正極10aを作製する。
【0018】
2.リチウム負極板の作製
(a)実施例1
図2に示すように、所定の長さに切断したリチウム合金板21の端部の一部に、ニッケル薄板からなる負極集電タブ22を圧着して接続する。この負極集電タブ22の先端部近傍付近を除いて、その上面を覆うようにして合成樹脂製の粘着テープ23を貼り付けて、第2のリチウム負極を作製する。一方、リチウム合金板21と同様の厚みのリチウム合金板24を、後述する渦巻状電極体(図7参照)とした場合に、その最外周となる部分だけ長くなるように切断して、第1のリチウム負極を作製する。
【0019】
ついで、ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータ20を用意し、このセパレータ20上の中心線A−Aからそれぞれ等距離の位置に、リチウム合金板21とリチウム合金板24のそれぞれの端部が位置するように、かつセパレータ20の長さ方向に1列に整列するように配置する。この場合、第2のリチウム負極の負極集電タブ22側が中心線A−Aの反対側になるように配置する。ついで、これらのリチウム合金板21とリチウム合金板24のそれぞれの両端部に合成樹脂製の粘着テープ25を貼着して、これらをセパレータ20上に固着して、実施例1のセパレータ付リチウム負極20aを作製する。
【0020】
(b)実施例2
図3に示すように、実施例1と同様にして、リチウム合金板21からなる第2のリチウム負極とリチウム合金板24からなる第1のリチウム負極を作製した後、これらのリチウム合金板21とリチウム合金板24を実施例1と同様にしてセパレータ20上に配置する。ついで、リチウム合金板24の上面に銅箔板(負極集電体)26を圧着した後、実施例1と同様にして、これらのリチウム合金板21とリチウム合金板24のそれぞれの両端部に合成樹脂製の粘着テープ25を貼着して、これらをセパレータ20上に固着して、実施例2のセパレータ付リチウム負極20bを作製する。
【0021】
(c)比較例1
図4に示すように、上述した実施例1のリチウム合金板21とリチウム合金板24の2枚の合計の厚みと等しくしたリチウム合金板30をリチウム合金板24と同じ形状に切断し、実施例1の負極集電タブ22と同じ位置になるように負極集電タブ31を圧着して接続する。ついで、この負極集電タブ31の先端部近傍付近を除いて、その上面を覆うようにして合成樹脂製の粘着テープ32を貼り付けて、比較例1のリチウム負極30aを作製する。
【0022】
(d)比較例2
図5に示すように、上述した実施例1のリチウム合金板21とリチウム合金板24の2枚の合計の厚みと等しくにしたリチウム合金板40をリチウム合金板24と同じ形状に切断し、後述する渦巻状電極体(図8参照)とした場合に、その最外周となる部分41だけがほぼ半分の厚みになるように圧延する。ついで、実施例1の負極集電タブ22と同じ位置になるように負極集電タブ42を圧着して接続した後、この負極集電タブ42の先端部近傍付近を除いて、その上面を覆うようにして合成樹脂製の粘着テープ43を貼り付けて、比較例2のリチウム負極40aを作製する。
【0023】
(e)比較例3
図6に示すように、上述した実施例1のリチウム合金板21と同じ厚みで、所定の長さに切断したリチウム合金板51の端部の一部に、ニッケル薄板からなる負極集電タブ52をスポット溶接する。この負極集電タブ52の先端部近傍付近を除いて、その上面を覆うようにして合成樹脂製の粘着テープ53を貼り付けて、第2のリチウム負極を作製する。また、リチウム合金板51と同様の厚みのリチウム合金板54を、後述する渦巻状電極体(図8参照)とした場合に、その最外周となる部分だけ長くなるように切断して、第1のリチウム負極を作製する。
【0024】
これらのリチウム合金板51とリチウム合金板54との間に銅箔板(負極集電体)55を挟み込んで、これらのリチウム合金板51とリチウム合金板54とをローラで圧着して、比較例3のリチウム負極50aを作製する。
【0025】
3.渦巻状電極体の作製
(a)実施例1
上述したように作製した実施例1のセパレータ付リチウム負極20aをセパレータ20の中心線A−Aより折り曲げ、リチウム合金板21とリチウム合金板24のそれぞれの中心線A−A側の端部を一致させて、リチウム合金板21とリチウム合金板24とを互いに重なり合わせる。ついで、このようにして折り曲げたセパレータ20上に二酸化マンガン正極10aを配置した後、二酸化マンガン正極10aが内側になるように卷回して、図7に示すような渦巻状電極体aを作製する。
【0026】
これにより、リチウム合金は柔らかいため、渦巻状電極体aを形成する際の卷回時の加圧力により、リチウム合金板21とリチウム合金板24とが互いに圧着されて一体化することとなる。この結果、新たな工程を設けることなく、2枚のリチウム負極を貼り合わせることが可能となり、生産性が向上する。また、リチウム合金板24のリチウム合金板21より長く形成された部分は、図7に示すように、渦巻状電極体aの最外周に配置されるようになる。なお、セパレータ20上に二酸化マンガン正極10aを配置する際には、負極集電タブ23と正極集電タブ12とが互いに反対方向(一方が上向きで、他方が下向き)を向くようにして配置する。
【0027】
(b)実施例2
上述したように作製した実施例2のセパレータ付リチウム負極20bを実施例1と同様にして折り曲げて、銅箔板(負極集電体)26を間に挟むようにしてリチウム合金板21とリチウム合金板24とを互いに重なり合わせ、セパレータ20上に二酸化マンガン正極10aを配置した後、卷回して、図7(なお、図7には銅箔板26は示していない)に示すような渦巻状電極体bを作製する。
【0028】
これにより、リチウム合金は柔らかいため、渦巻状電極体bを形成する際の卷回時の加圧力により、リチウム合金板21と銅箔板(負極集電体)26とリチウム合金板24とが互いに圧着されて一体化することとなる。この結果、新たな工程を設けることなく、2枚のリチウム負極を貼り合わせることが可能となり、生産性が向上する。また、リチウム合金板24のリチウム合金板21より長く形成された部分は、図7に示すように、渦巻状電極体bの最外周に配置されるようになる。
【0029】
(c)比較例1
上述したように作製した比較例1のリチウム負極30aの両面にセパレータ35を配置し、このセパレータ35上に二酸化マンガン正極10aを配置した後、渦巻状に卷回して、図8に示すような渦巻状電極体cを作製する。
【0030】
(d)比較例2
上述したように作製した比較例2のリチウム負極40aの両面にセパレータ45を配置し、このセパレータ45上に二酸化マンガン正極10aを配置した後、渦巻状に卷回して、図9に示すような渦巻状電極体dを作製する。
【0031】
(e)比較例3
上述したように作製した比較例3のリチウム負極50aの両面にセパレータ56を配置し、このセパレータ56上に二酸化マンガン正極10aを配置した後、渦巻状に卷回して、図9に示すような渦巻状電極体eを作製する。
【0032】
4.非水電解液電池の作製
まず、エチレンカーボネート(EC)とブチレンカーボネート(BC)と1,2−ジメトキシエタン(DME)とを体積比で15:15:70となる割合で混合した有機溶媒に、溶質(電解質)としてのトリフルオロメタンスルフォン酸リチウム(LiCF3SO3)を0.5モル/リットルとなる割合で溶解させて非水電解液を作製する。
【0033】
実施例1
ついで、図10に示すように、鉄にニッケルメッキを施した電池ケース60を用意する。この電池ケース60内に、中心部に孔を有する底側絶縁板64と、上述した実施例1の渦巻状電極体aと、中心部に孔を有する開口側絶縁板65を挿入する。この後、電池ケース60の開口部近傍に嵌合用溝61を形成し、この嵌合用溝61の上にポリプロピレン製の封口ガスケット62を載置する。ついで、渦巻状電極体aのリチウム負極20aのリチウム板21に圧着して接続された負極集電タブ22の先端部を電池ケース60の底内面にスポット溶接する。
【0034】
一方、渦巻状電極体aの二酸化マンガン正極10aに溶接された正極集電タブ12の先端部をステンレス製の封口板63の底面にスポット溶接した後、電池ケース60内に上述のように作製した非水電解液を注入する。この後、正極集電タブ12の先端部がその底面に溶接された封口板63を封口ガスケット62に載置し、電池ケース60の開口部先端部を封口板63にかしめ付けて、実施例1の非水電解液電池Aを作製する。
【0035】
実施例2
同様に、電池ケース60内に、底側絶縁板64と、上述した実施例2の渦巻状電極体bと、開口側絶縁板65を挿入した後、電池ケース60の開口部近傍に嵌合用溝61を形成し、この嵌合用溝61の上にポリプロピレン製の封口ガスケット62を載置する。ついで、渦巻状電極体bのリチウム負極20aのリチウム板21に圧着して接続された負極集電タブ22の先端部を電池ケース60の底内面にスポット溶接するとともに、二酸化マンガン正極10aに溶接された正極集電タブ12の先端部をステンレス製の封口板63の底面にスポット溶接した後、非水電解液を注入し、電池ケース60の開口部先端部を封口板63にかしめ付けて、実施例2の非水電解液電池Bを作製する。なお、図10には銅箔板(負極集電体)26は示していない。
【0036】
比較例1
同様に、比較例1の渦巻状電極体cを用いて、負極集電タブ31の先端部を電池ケース60の底内面にスポット溶接するとともに、二酸化マンガン正極10aに溶接された正極集電タブ12の先端部を封口板63の底面にスポット溶接し、非水電解液を注入して電池ケース60の開口部先端部を封口板63にかしめ付けて、比較例1の非水電解液電池Cを作製する。
【0037】
比較例2
同様に、比較例2の渦巻状電極体dを用いて、負極集電タブ42の先端部を電池ケース60の底内面にスポット溶接するとともに、二酸化マンガン正極10aに溶接された正極集電タブ12の先端部を封口板63の底面にスポット溶接し、非水電解液を注入して電池ケース60の開口部先端部を封口板63にかしめ付けて、比較例2の非水電解液電池Dを作製する。
【0038】
比較例3
同様に、比較例3の渦巻状電極体eを用いて、負極集電タブ52の先端部を電池ケース60の底内面にスポット溶接するとともに、二酸化マンガン正極10aに溶接された正極集電タブ12の先端部を封口板63の底面にスポット溶接し、非水電解液を注入して電池ケース60の開口部先端部を封口板63にかしめ付けて、比較例3の非水電解液電池Eを作製する。
【0039】
5.実験結果
上述のように作製した5種類の各非水電解液電池A〜Eを用いて、こらの各非水電解液電池A〜Eに200Ωの定抵抗を接続して放電試験を行うと、図11に示すような結果となった。なお、図11において、曲線Aは実施例1の非水電解液電池Aの放電特性を示し、曲線Bは実施例2の非水電解液電池Bの放電特性を示し、曲線Cは比較例1の非水電解液電池Cの放電特性を示し、曲線Dは比較例2の非水電解液電池Dの放電特性を示し、曲線Eは比較例3の非水電解液電池Eの放電特性を示している。
【0040】
図1から明らかなように、実施例1の非水電解液電池Aは、比較例1の非水電解液電池Cおよび比較例2の非水電解液電池Dとほぼ同等の放電特性が得られた。また、2枚の負極の間に負極集電体(銅箔板26,55)を設けた実施例2の非水電解液電池Bおよび比較例3の非水電解液電池Eは、負極集電体を設けない、実施例1の非水電解液電池A、比較例1の非水電解液電池Cおよび比較例2の非水電解液電池Dより放電特性が優れていることが分かる。
【0041】
また、完全放電後に、こらの非水電解液電池A〜Eを分解すると、最外周のリチウム負極の厚みが中央部のリチウム負極の厚みの半分である実施例1の非水電解液電池A、実施例2の非水電解液電池B、比較例2の非水電解液電池D、比較例3の非水電解液電池Eは二酸化マンガン正極板10aの表面にリチウムの析出が観察されなかったが、最外周のリチウム負極の厚みが中央部のリチウム負極の厚みと等しい比較例1の非水電解液電池Cにあっては、二酸化マンガン正極板10aの表面にリチウムの析出が観察された。
【0042】
なお、こらの非水電解液電池A〜Eをそれぞれ10000個ずつ製造した場合の工程数と不良率を測定すると、以下の表1に示すような結果となった。なお、下記の表1における工程数は比較例1の非水電解液電池Cを製造する場合の工程数を100とした場合の指数で示している。
【0043】
【表1】
【0044】
これらの図1および表1から言えることは、本発明の非水電解液電池A,Bは比較例1の非水電解液電池Cと比較して、工程数および不良率がそれほど増加することなく放電特性が向上した非水電解液電池が得られる。また、本発明の非水電解液電池A,Bは比較例の非水電解液電池D,Eに比較して、工程数および不良率が減少するにもかかわらず、ほぼ同等の放電特性が得られるようになる。
【0045】
上述したように、本発明の非水電解液電池(実施例1の非水電解液電池Aおよび実施例2の非水電解液電池B)は、リチウム負極に予め加工を施すことなく、渦巻状電極体a,bの形成時に渦巻状電極体a,bの最外周に位置するリチウム負極の厚みを中央部に位置するリチウム負極の厚みの半分にすることができるようになる。換言すると、本発明の非水電解液電池の製造方法を採用することにより、工程数および不良率がそれほど増加することなく放電特性が向上した非水電解液電池が得られるようになる。
【0046】
また、第2のリチウム負極(リチウム合金板21)と第1のリチウム負極(リチウム合金板24)との間に負極集電体(銅箔板26)を挟み込むだけで、渦巻状電極体bの形成時に負極集電体(銅箔板26)を配設することができるようになるため、負極集電体を備えたリチウム負極を効率よく製造することができるようになる。
【0047】
なお、上述した実施形態においては、厚みを等しくした2枚のリチウム合金板を用いる例について説明したが、厚みを異ならせた2枚のリチウム合金板を用いてもよい。この場合、最外周に位置する負極の厚みを2枚のリチウム合金板の合計の厚みの30〜60%の範囲に規定すれば、ほぼ同様な結果が得られた。また、リチウム合金板を用いることに代えて、リチウム金属板を用いてもほぼ同等の結果が得られた。また、両負極の間に負極集電体を配置する構成としたものは二次電池に用いることができる。
【0048】
さらに、上述した実施形態においては、非水電解液電池として円筒型電池を作製する例について説明したが、本発明の非水電解液電池は円筒型電池に限らず、角形等の他の形状の非水電解液電池にも適用できることは明らかである。この場合、封口部はかしめ封口に代えて、レーザー溶接による封口方法を採用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 二酸化マンガン正極を示す図である。
【図2】 実施例1のセパレータ付リチウム負極を示す図である。
【図3】 実施例2のセパレータ付リチウム負極を示す図である。
【図4】 比較例1のリチウム負極を示す図である。
【図5】 比較例2のリチウム負極を示す図である。
【図6】 比較例3のリチウム負極を示す図である。
【図7】 実施例1および実施例2のセパレータ付負極と二酸化マンガン正極とを渦巻状に卷回して渦巻状電極体した場合の断面図である。
【図8】 比較例1のリチウム負極と二酸化マンガン正極とを渦巻状に卷回して渦巻状電極体した場合の断面図である。
【図9】 比較例2および比較例3のリチウム負極と二酸化マンガン正極とを渦巻状に卷回して渦巻状電極体した場合の断面図である。
【図10】 実施例1および実施例2の渦巻状電極体を外装缶に収納して構成した非水電解液電池の断面を示す図である。
【図11】 各非水電解液電池の放電特性を示す図である。
【符号の説明】
10a…二酸化マンガン正極、10…エキスパンドメタル、11…正極合剤、12…正極集電タブ、13…粘着テープ、20…セパレータ、20a,20b…セパレータ付リチウム負極、21…リチウム合金板(第2のリチウム負極)、22…負極集電タブ、23…粘着テープ、24…リチウム合金板(第1のリチウム負極)、25…粘着テープ、26…銅箔板(負極集電体)、30a,40a…リチウム負極、30,40…リチウム合金板、31,42…負極集電タブ、32,43…粘着テープ、50a…リチウム負極、51,54…リチウム合金板、52…負極集電タブ、53…粘着テープ、35,45,56…セパレータ、60…電池ケース、61…嵌合用溝、62…封口ガスケット、63…封口板、64…底側絶縁板、65…開口側絶縁板
Claims (4)
- リチウムまたはリチウム合金をシート状に形成した帯状リチウム負極と帯状正極とをセパレータを介して渦巻状に卷回して渦巻状電極体とし、この渦巻状電極体を非水電解液とともに外装缶に挿入して形成する非水電解液電池の製造方法であって、
長辺状の第1のリチウム負極を形成する工程と、この第1のリチウム負極より長さが短い短辺状の第2のリチウム負極を形成する工程からなる負極形成工程と、
前記第1のリチウム負極と前記第2のリチウム負極とをセパレータ上にその長さ方向に1列になるように貼着する負極貼着工程と、
前記第1と第2のリチウム負極のそれぞれの一方の端部同士が互いに重なり合うようにして前記セパレータを折り曲げるセパレータ折曲工程と、
前記セパレータ折曲工程により折り曲げられたセパレータ上に前記帯状正極を重ね合わせた後、同帯状正極が内側になるようにして渦巻状に卷回して渦巻状電極体を形成する渦巻状電極体形成工程とを備え、
前記第1のリチウム負極の前記第2のリチウム負極より長さが長い部分が前記渦巻状電極体に形成された際に同渦巻状電極体の最外周部になるようにしたことを特徴とする非水電解液電池の製造方法。 - 前記負極形成工程により形成された前記第2のリチウム負極の端部に集電タブを接続する集電タブ接続工程を備え、
前記負極貼着工程において、前記セパレータの中央部から等距離の位置に前記第1と第2のリチウム負極のそれぞれの一方の端部がそれぞれ位置するように前記セパレータ上に配置するとともに、
前記集電タブが接続された前記第2のリチウム負極の同集電タブ側が他方の端部になるように配置してセパレータ上に貼着するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の非水電解液電池の製造方法。 - 前記セパレータ折曲工程において、前記第1と第2のリチウム負極の間に負極集電体を配置して同負極同士が重なり合うようにして折り曲げるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非水電解液電池の製造方法。
- 前記第1のリチウム負極の厚みを前記第1と第2のリチウム負極の合計の厚みの30〜60%になるようにしたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の非水電解液電池の製造方法。
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