JP3747332B2 - 静電粉体塗装ガン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、粉体塗料に電荷を与えて吹き付け、静電気を用いて被塗物上に塗装する静電粉体塗装ガンに関する。
【0002】
【従来の技術】
環境保全の見地から、溶剤を使用しない、環境に優しい無公害型の塗装法として静電粉体塗装が注目されている。この静電粉体塗装においては、塗料タンクからインジェクタを介して粉体塗料が塗装ガンへ供給され、塗装ガンの先端部に形成されたノズル開口から搬送エア流と共に被塗物へ向けて噴射される。このとき、塗装ガンの先端部に設けられたピン型電極に高電圧が印加されると共に被塗物が接地されており、塗装ガンの電極から被塗物へ向けてコロナ放電が発生している。このため、ノズル開口から噴射された粉体塗料が電極近傍を通過する際に、粉体塗料がコロナ放電により生ずるイオンと衝突して荷電される。このようにして荷電された粉体塗料は搬送エア流と電気力線に沿った電気力との影響を受けて被塗物の表面上に塗着する。
【0003】
このような静電粉体塗装においては、一般に平均粒径30〜40μmの粉体塗料が用いられていたが、得られた塗膜の平滑性が溶剤塗装に比べて劣るため、粒径25μm以下の微粒子塗料を使用して平滑性の優れた美装塗膜を得ようとする試みが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、微粒子塗料を用いると、静電気力の影響を強く受けて粉体塗料同士で凝集したり、塗装ガンに付着し易くなる。このため、微粒子塗料により所望の平滑性を有する塗膜を安定して形成することが困難であった。
また、コロナ放電により生ずるイオンのうちの多くはフリーイオンとしてそのまま被塗物の表面上に付着するため、被塗物上に粉体粒子が堆積されるにつれて、フリーイオンも被塗物の表面上に蓄積され、被塗物の表面電位が次第に上昇して粉体粒子の塗着効率が低下するという問題もあった。さらに、このようにして粉体粒子層内の電界強度が増加し、空気の絶縁破壊電界強度を越えると、粉体粒子層内で微小な放電が発生する、いわゆる逆電離現象を生じて塗膜の肌荒れを来してしまう。
【0005】
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、微粒子粉体塗料を用いて高い塗着効率で平滑性に優れた塗膜を形成することができる静電粉体塗装ガンを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る静電粉体塗装ガンは、電気的に接地された被塗物の表面上に荷電粉体塗料を静電塗着する静電粉体塗装ガンであって、ガン本体と、ガン本体の先端部に設けられ且つ粉体流路が形成された内筒と、内筒の前端部に配置され且つ粉体流路を円錐面に沿って拡散させて環状のノズル開口を形成するためのディフューザと、ノズル開口の内側で且つノズル開口と同心円上に等間隔に配置された複数のコロナ電極と、内筒の外周部との間に外筒カバークリーニング用エアチャンバが形成されるように内筒を覆うと共に外筒カバークリーニング用エアチャンバ内に供給された加圧エアを外方へ噴出させるために多孔材からなる外筒カバーと、外筒カバーの外周部に配置されると共にコロナ放電により発生したフリーイオンをトラップするために電気的に接地された複数のイオントラップ電極と、ガン本体内に設けられ且つ複数のコロナ電極に高電圧を印加するための高電圧発生装置とを備え、ディフューザを、加圧エア通路が形成されたディフューザ本体と、ディフューザ本体の前端部で且つノズル開口の内側にディフューザクリーニング用エアチャンバを形成すると共にこのディフューザクリーニング用エアチャンバ内に供給された加圧エアを前方へ噴出させるために多孔材からなるディフューザ前部カバーとから形成したものである。
【0007】
さらに、それぞれ対応するイオントラップ電極を支持すると共に加圧エア通路が形成された複数のイオントラップ支持材と、各イオントラップ支持材に取り付けられてイオントラップ電極の根元部にイオントラップクリーニング用エアチャンバを形成すると共にこのイオントラップクリーニング用エアチャンバ内に供給された加圧エアをイオントラップ電極の先端部へ向けて噴出するためのノズル孔が形成されたイオントラップ先端カバーとを備えることもできる。
また、粉体流路に旋回流を形成する旋回流形成手段を内筒に含ませることもできる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1にこの発明の一実施形態に係る静電粉体塗装ガンの構成を示す。静電粉体塗装ガンは、円筒形状のガン本体1を有しており、ガン本体1の先端に内筒2が設けられている。図2の拡大図に明確に示されるように、内筒2は、ガン本体1の先端に連結された内筒部材3と、さらに内筒部材3の先端部に連結された内筒部材4と、これら内筒部材3及び4の外周部を覆う内筒カバー部材5とからなっている。内筒部材3にはその中心軸上にパイプ形状の開口部6が形成されると共にこの開口部6に連通するように粉体流路7が形成されている。一方、内筒部材4には、内筒部材3の開口部6に連通し且つ前方に向かって拡径される円錐形状の開口部8が形成されている。
【0009】
内筒部材3及び4の開口部6及び8内にディフューザ9が挿入されている。ディフューザ9は、円柱部分10とこの円柱部分10に連結され且つ円柱部分10から離れるに従って拡径される円錐部分11とからなるディフューザ本体12を有している。ディフューザ本体12の円柱部分10は内筒部材3の開口部6の径よりわずかに小さい径を有しており、円柱部分10の外周面と内筒部材3の開口部6との間に粉体流路7に連通する円筒形状の流路13が形成されている。一方、ディフューザ本体12の円錐部分11は内筒部材4の円錐状の開口部8よりわずかに小さく形成されており、円錐部分11の外周面と内筒部材4の開口部8との間に流路13に連通する円錐面形状の流路14が形成されると共に、内筒カバー部材5の先端部との間に流路14に連通する環状のノズル開口15が形成されている。また、ディフューザ本体12には中心軸上に加圧エア通路16が形成され、円錐部分11の前端面に開口している。
【0010】
ディフューザ9は、さらにディフューザ本体12の前端部に取り付けられた、多孔材からなるディフューザ前部カバー17を有している。このディフューザ前部カバー17によりディフューザ本体12の前端面との間で且つノズル開口15の内側に加圧エア通路16に連通するディフューザクリーニング用エアチャンバ18が形成されている。
【0011】
ディフューザ本体12の前端部には、ノズル開口15の内側にピン型のコロナ電極19が設けられ、コロナ電極19の先端部がディフューザ前部カバー17を貫通してディフューザ9の前方に突出している。コロナ電極19は、図3に示されるように、ノズル開口15と同心円上に等間隔に8本配置されている。各コロナ電極19は、互いに電気的に接続され、ディフューザ本体12の加圧エア通路16内を通ってガン本体1内の保護抵抗20を介し、高電圧発生装置21に接続されている。
【0012】
内筒2の外周部には多孔材からなる外筒カバー22が設けられており、内筒カバー部材5の外周面と外筒カバー22との間に外筒カバークリーニング用エアチャンバ23が形成されている。
【0013】
また、ガン本体1の先端部の外周にはリング部材24が設けられ、このリング部材24にガンの前方に向かって突出すると共にその中心軸上に加圧エア通路25が形成されたロッド状のイオントラップ支持材26が取り付けられている。各イオントラップ支持材26の先端部にはピン型のイオントラップ電極27が固定されている。また、各イオントラップ支持材26の先端部には、イオントラップ電極27の根元部に加圧エア通路25に連通するイオントラップクリーニング用エアチャンバ28を形成すると共にこのエアチャンバ28内の加圧エアをイオントラップ電極の先端部へ向けて噴出するためのノズル孔28aが形成されたイオントラップ先端カバー29が設けられている。このようなイオントラップ支持材26及びイオントラップ電極27は、図3に示されるように、ノズル開口15と同心円上に等間隔に8本配置されている。各イオントラップ電極27は、リング状の導電部材30により互いに電気的に接続され、図1に示されるように、ガン本体1内のリード線31を介してガン本体1の背部に設けられた接地端子32に電気的に接続されている。
【0014】
ガン本体1内には加圧エア供給管33が設けられており、この加圧エア供給管33の前端部にディフューザ本体12の加圧エア通路16、外筒カバークリーニング用エアチャンバ23及び各イオントラップ支持材26の加圧エア通路25がそれぞれ連通している。加圧エア供給管33の後端部は、ガン本体1の背部に設けられた加圧エア供給口34に接続されている。
【0015】
また、図2に示されるように、内筒2の内筒部材3の先端部には、内筒部材3との間に環状の旋回エアチャンバ35を形成すべくリング状の旋回流形成部材36が設けられている。図4に示されるように、旋回流形成部材36の中心部には内筒部材3の開口部6に連続的に接続される開口部37が形成されており、この開口部37の回りに開口部37と接線方向に複数の旋回エア導入口38が形成されている。これらの旋回エア導入口38により旋回エアチャンバ35と流路13とが連通している。旋回エアチャンバ35は、内筒部材3に形成された旋回エア通路39と連通し、さらにガン本体1内に設けられた図示しない旋回エア供給管を介してガン本体1の背部に設けられた旋回エア供給口40に接続されている。
【0016】
ガン本体1の背部には、さらに、粉体流路7に連通する粉体塗料供給口41が設けられると共に、高電圧発生装置21に電源を供給するための電源端子42が設けられている。
【0017】
なお、ディフューザ前部カバー17及び外筒カバー22は、それぞれ加圧エアが通過できるように、仮焼結ポリエチレンあるいはテフロン系、その他の多孔質樹脂等の多孔材から形成されている。その他の内筒部材3及び4、内筒カバー部材5、ディフューザ本体12、イオントラップ支持材26、旋回流形成部材36等は、粉体塗料が付着しにくいようにテフロン系、高密度ポリエチレン等の樹脂から形成されている。
【0018】
次に、この実施形態の動作について説明する。まず、電源端子42に電源を接続して高電圧発生装置21により高電圧を発生し、コロナ電極19に高電圧を印加すると、コロナ電極19から図示しない被塗物に向けてコロナ放電が発生する。このとき、コロナ電極19の後方に接地レベルにあるイオントラップ電極27が配置されているので、電気力線はイオントラップ電極27に集中し、コロナ電極19の付近で発生したフリーイオンの多くは電気力線に沿って移動してイオントラップ電極27にトラップされる。
【0019】
この状態で、粉体塗料が搬送エアと共に粉体塗料供給口41から供給されると共に旋回エア供給口40に加圧エアが供給される。粉体塗料が、粉体流路7を通って円筒状の流路13に至ると、旋回エア通路39から旋回エアチャンバ35に供給されたエアが旋回エア導入口38を介して流路13内に接線方向に噴出しているので、流路13内の搬送エアは流路13の中心軸の回りの旋回流となり、粉体塗料は旋回しながらディフューザ本体12の円錐部分11に衝突する。これにより凝集した微粒子塗料は解砕、分散され、流路14を通って環状のノズル開口15から噴出される。微粒子塗料は、コロナ放電により生ずるイオンによって荷電された後、図示しない被塗物に向かってスプレイされ、均一な塗膜が得られる。
【0020】
このような微粒子塗料を用いて塗装を行うと、ノズル開口15から噴出された微粒子塗料の一部がディフューザ前部カバー17、外筒カバー22及びイオントラップ電極27の付近に付着し易くなる。そこで、ガン本体1の背部の加圧エア供給口34から加圧エア供給管33を介して加圧エアを供給すると、加圧エアの一部はディフューザ本体12の加圧エア通路16を通ってディフューザクリーニング用エアチャンバ18内に入り、多孔材からなるディフューザ前部カバー17を通過して前方へ噴出される。また、加圧エアの一部は外筒カバークリーニング用エアチャンバ23内に供給され、多孔材からなる外筒カバー22を通過して外方へ噴出される。さらに、加圧エアの一部は各イオントラップ支持材26の加圧エア通路25を通ってイオントラップクリーニング用エアチャンバ28内に入り、ノズル孔28aからイオントラップ電極27の先端部に向かって噴出される。これらの加圧エアの噴出により微粒子塗料が吹き飛ばされ、ディフューザ前部カバー17、外筒カバー22及びイオントラップ電極27への微粒子塗料の付着が防止される。
【0021】
なお、イオントラップ先端カバー29に設けられたノズル孔28aからクリーニング用エアを噴出せずに、多孔材からなるイオントラップ先端カバーでイオントラップ電極27の根元部を覆い、イオントラップ先端カバーを通過させてエアを噴出するようにしてもよい。
【0022】
この発明の静電粉体塗装ガンにおいては、微粒子粉体塗料を用いながらも、凝集した微粒子塗料を解砕、分散して平滑性に優れた塗膜を得ることができる。また、イオントラップ電極により多くのフリーイオンがトラップされるので、被塗物に向かうフリーイオンが著しく減じられ、フリーイオンに起因する逆電離現象の発生を防止して塗着効率の優れた粉体塗装を行うことが可能となる。さらに、クリーニング用加圧エアを噴出させることにより、外筒カバー、ディフューザ前部カバー及びイオントラップ電極への粉体塗料の付着が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態に係る静電粉体塗装ガンの構成を示す断面図である。
【図2】 図1の要部拡大図である。
【図3】 実施形態に係る静電粉体塗装ガンを示す正面図である。
【図4】 実施形態に係る静電粉体塗装ガンに用いられた旋回流形成部材を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ガン本体
2 内筒
3,4 内筒部材
5 内筒カバー部材
7 粉体流路
9 ディフューザ
12 ディフューザ本体
13,14 流路
15 ノズル開口
16,25 加圧エア通路
17 ディフューザ前部カバー
18 ディフューザクリーニング用エアチャンバ
19 コロナ電極
21 高電圧発生装置
22 外筒カバー
23 外筒カバークリーニング用エアチャンバ
26 イオントラップ支持材
27 イオントラップ電極
28 イオントラップクリーニング用エアチャンバ
28a ノズル孔
29 イオントラップ先端カバー
32 接地端子
33 加圧エア供給管
34 加圧エア供給口
35 旋回エアチャンバ
36 旋回流形成部材
38 旋回エア導入口
39 旋回エア通路
40 旋回エア供給口
41 粉体塗料供給口
42 電源端子
Claims (3)
- 電気的に接地された被塗物の表面上に荷電粉体塗料を静電塗着する静電粉体塗装ガンであって、
ガン本体と、
前記ガン本体の先端部に設けられ且つ粉体流路が形成された内筒と、
前記内筒の前端部に配置され且つ粉体流路を円錐面に沿って拡散させて環状のノズル開口を形成するためのディフューザと、
ノズル開口の内側で且つノズル開口と同心円上に等間隔に配置された複数のコロナ電極と、
前記内筒の外周部との間に外筒カバークリーニング用エアチャンバが形成されるように前記内筒を覆うと共に外筒カバークリーニング用エアチャンバ内に供給された加圧エアを外方へ噴出させるために多孔材からなる外筒カバーと、
前記外筒カバーの外周部に配置されると共にコロナ放電により発生したフリーイオンをトラップするために電気的に接地された複数のイオントラップ電極と、 前記ガン本体内に設けられ且つ前記複数のコロナ電極に高電圧を印加するための高電圧発生装置と
を備え、
前記ディフューザは、加圧エア通路が形成されたディフューザ本体と、前記ディフューザ本体の前端部で且つノズル開口の内側にディフューザクリーニング用エアチャンバを形成すると共にこのディフューザクリーニング用エアチャンバ内に供給された加圧エアを前方へ噴出させるために多孔材からなるディフューザ前部カバーとを有することを特徴とする静電粉体塗装ガン。 - さらに、それぞれ対応するイオントラップ電極を支持すると共に加圧エア通路が形成された複数のイオントラップ支持材と、各イオントラップ支持材に取り付けられてイオントラップ電極の根元部にイオントラップクリーニング用エアチャンバを形成すると共にこのイオントラップクリーニング用エアチャンバ内に供給された加圧エアをイオントラップ電極の先端部へ向けて噴出するためのノズル孔が形成されたイオントラップ先端カバーとを有することを特徴とする請求項1に記載の静電粉体塗装ガン。
- 前記内筒は粉体流路に旋回流を形成する旋回流形成手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の静電粉体塗装ガン。
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