第1の発明は、被測定物が放射する赤外線を検出する赤外線検出手段と、前記赤外線検出手段に至る赤外線光路を断続するチョッパと、前記赤外線検出手段の出力となるアナログ値をデジタル値に変換するA/D変換手段と、複数回サンプリングした前記A/D変換手段の出力となるデジタル値を処理するデジタル値処理手段と、前記デジタル値処理手段の出力により被測定物の温度を換算する温度換算手段を備え、前記デジタル値処理手段は、前記チョッパの入光期間と遮光期間のそれぞれで前記A/D変換手段の出力となるデジタル値の回帰2次曲線を算出する回帰2次曲線算出手段と、前記回帰2次曲線算出手段によって求められる回帰2次曲線の極値を演算する極値演算手段と、前記極値演算手段の演算結果を前記温度換算手段に出力する構成とした。
そして赤外線検出器が被測定物の放射する赤外線を検出し、チョッパが赤外線検出器に至る赤外線光路を断続し、A/D変換器が前記赤外線検出器の出力となるアナログ値をデジタル値に変換し、デジタル値処理手段が複数回サンプリングしたデジタル値を処理し、温度換算手段がこのデジタル値処理手段の出力により被測定物の温度を換算する。そして回帰2次曲線算出手段がチョッパの入光期間と遮光期間とそれぞれでA/D変換手段の出力となるデジタル値の回帰2次曲線を算出し、極値演算手段が回帰2次曲線の極値を演算することでノイズの影響を低減し、応答時定数のばらつき、タイミングのずれの影響も受けにくい信頼性の高い温度データを得ることができる。
第2の発明は、被測定物が放射する赤外線を検出する赤外線検出手段と、前記赤外線検出手段に至る赤外線光路を断続するチョッパと、前記赤外線検出手段の出力となるアナログ値をデジタル値に変換するA/D変換手段と、複数回サンプリングした前記A/D変換手段の出力となるデジタル値を処理するデジタル値処理手段と、前記デジタル値処理手段の出力により被測定物の温度を換算する温度換算手段を備え、前記デジタル値処理手段は、前記チョッパの入光期間と遮光期間のそれぞれで前記A/D変換手段の出力となるデジタル値の回帰2次曲線を算出する回帰2次曲線算出手段と、前記回帰2次曲線算出手段によって求められる回帰2次曲線に所定の値を代入し前記回帰2次曲線上の1点の値を出力する代入演算手段と前記代入演算手段の演算結果を前記温度換算手段に出力するものである。
そして、赤外線検出器が被測定物の放射する赤外線を検出し、チョッパが赤外線検出器に至る赤外線光路を断続し、A/D変換器が前記赤外線検出器の出力となるアナログ値をデジタル値に変換し、デジタル値処理手段が複数回サンプリングしたデジタル値を処理し、温度換算手段がこのデジタル値処理手段の出力により被測定物の温度を換算する。そして回帰2次曲線算出手段がチョッパの入光期間と遮光期間のそれぞれでA/D変換手段の出力となるデジタル値の回帰2次曲線を算出し、代入演算手段が求められた回帰2次曲線に所定の値を代入し回帰2次曲線上の1点の値を出力することでノイズの影響を低減し、温度換算手段が代入演算手段の演算結果を基に被測定物の温度を換算するので信頼性の高い温度データが得られる。
第3の発明は、また被測定物が放射する赤外線を検出する赤外線検出手段と、前記赤外線検出手段に至る赤外線光路を断続するチョッパと、前記赤外線検出手段の出力となるアナログ値をデジタル値に変換するA/D変換手段と、複数回サンプリングした前記A/D変換手段の出力となるデジタル値を処理するデジタル値処理手段と、前記デジタル値処理手段の出力により被測定物の温度を換算する温度換算手段を備え、前記デジタル値処理手段は、前記チョッパの入光期間と遮光期間のそれぞれで前記A/D変換手段の出力となるデジタル値の回帰2次曲線を算出する回帰2次曲線算出手段と、前記回帰2次曲線算出手段によって求められる回帰2次曲線の極値を演算する極値演算手段と前記回帰2次曲線に所定の値を代入し前記回帰2次曲線上の1点の値を出力する代入演算手段と、前記極値演算手段の演算結果である極値が入光期間および遮光期間内に存在する場合は極値を出力し、存在しない場合は前記代入演算手段の演算結果を出力する切り替え手段と、前記切り替え手段により前記極値演算手段または前記代入演算手段の一方の演算結果を前記温度換算手段に出力するものである。
そして、赤外線検出器が被測定物の放射する赤外線を検出し、チョッパが赤外線検出器に至る赤外線光路を断続し、A/D変換器が前記赤外線検出器の出力となるアナログ値をデジタル値に変換し、デジタル値処理手段が複数回サンプリングしたデジタル値を処理し、温度換算手段がこのデジタル値処理手段の出力により被測定物の温度を換算する。そして回帰2次曲線算出手段がチョッパの入光期間と遮光期間のそれぞれでA/D変換手段の出力となるデジタル値の回帰2次曲線を算出し、極値演算手段が回帰2次曲線の極値を、代入演算手段が回帰2次曲線上の1点の値を出力する。切り替え手段は極値が入光期間および遮光期間内に存在する場合は極値を出力し、存在しない場合は代入演算手段の演算結果を出力するように切り替え、温度換算手段は切り替え手段の出力を基に被測定物の温度を換算するのでノイズの影響を低減し、信頼性の高い温度データが得られる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
以下、本発明の第1の実施の形態を図1〜図4を参照しながら説明する。図1は本発明の第1の実施の形態として温度検出器を電子レンジに搭載した応用例の構成ブロック図である。また図2は赤外線検出手段の信号処理回路の回路図である。また図3は赤外線検出手段の出力信号の変化を示す特性図である。また図4はデジタル値処理手段、温度換算手段の動作を説明するフローチャートである。
図1において、1は加熱室で、この加熱室1内には温度を測定すべき被測定物として被加熱物である食品2を収納する。3は食品2を載置する皿である。加熱室1の天井面には赤外線透過孔4を設け、この赤外線透過孔4と対応する天井面裏側にはチョッパ5を挟んで赤外線検出手段6を配設している。チョッパ5は円形で扇型に複数のスリットを設けステッピングモータ7に連結し、ステッピングモータ7の回転により食品2から発せられて赤外線検出手段6に照射される赤外線を断続するようにしている。またチョッパ5の近傍にはチョッパ5の温度を検知するための温度センサ8を配設している。温度センサ8はサーミスタによるものである。9はマグネトロンで高周波を発生し加熱室1内にアンテナを突出させて、加熱室1内に電磁波を導き食品2を加熱する。
赤外線検出手段6の出力は増幅回路10で増幅し、増幅回路10で増幅した出力電圧と温度センサ8の出力電圧はA/D変換手段11でデジタル化して制御装置12に送信する。制御装置12は積分期間管理手段13を有する積分演算手段14により構成されたデジタル値処理手段15と温度換算手段16、加熱制御手段17を備えている。積分期間管理手段13はチョッパ5の動作で赤外線検出手段6に食品2からの赤外線が照射される入光期間と、遮断される遮光期間の状態が変化する変化時点からの経過時間により積分演算の開始と終了の信号を発している。積分演算手段14は積分期間管理手段13の信号に基づき、増幅回路10で増幅した赤外線検出手段6の出力のデジタル値を、チョッパ5の入光期間と遮光期間とをそれぞれ別個に積分演算を行う。また積分演算手段14は積分期間管理手段13の信号に基づき、温度センサ8の出力のデジタル値を入光期間と遮光期間をまとめて積分演算を行なう。温度換算手段16は積分演算手段14の演算結果に基づき食品2の温度を換算し、加熱制御手段17は温度換算手段16の温度換算結果により加熱手段であるマグネトロン9を制御する。マグネトロン9の制御は例えば所定温度に到達すれば停止、あるいは断続運転、または断続運転のデューティー(ON・OFF比)を変えるなどである。
図2において、10は増幅回路で、抵抗手段18、19、20とコンデンサ21、22とオペアンプ23で構成している。増幅率は抵抗手段19と20で決まるものであり、そこにコンデンサ21、22を接続したことで不要なノイズ成分を除去することができる。また温度センサであるサーミスタ8には直列に抵抗手段24、並列にコンデンサ25を接続して温度により電圧が変化するようにしている。A/D変換手段11には増幅回路10の出力と温度センサ8の出力が接続されていてアナログ電圧をデジタル値に変換して制御装置であるマイクロコンピュータ12に出力する。A/D変換機能を内蔵したマイクロコンピュータの場合には、マイクロコンピュータ12のA/D変換端子に増幅回路10の出力と温度センサ8の出力を接続しても良い。またマイクロコンピュータ12には抵抗手段26を介してトランジスタ27を接続し、トランジスタ27にはマグネトロン9の通電を切り替えるリレー28を接続している。この構成でマイクロコンピュータ12によりマグネトロン9の通電を制御することができる。
図3、図4により動作を説明する。マグネトロン9により食品2を加熱し始めると、ステッピングモータ7はチョッパ5を回転させ、食品2から赤外線検出手段6に至る赤外線の光路を所定の周期で開閉する。チョッパ5より食品2の温度が高い場合には赤外線検出手段6から増幅回路を介しての出力は図3に示すような波形となる。積分演算手段14はチョッパ5の開状態である入光期間と閉状態である遮光期間のそれぞれでt時間ごとにn回のサンプリングを行なう。
積分期間管理手段13は、管理する積分期間があらかじめ設定されており、入光期間と遮光期間の状態が変化する変化時点からの経過時間がtj=(j−1)tになると積分演算の開始信号を発し、tm=(m−1)tになると積分演算の終了信号を発する。ここで、jは1<j<nの整数、mはj<m<nの整数である。したがって、積分演算手段14は入光期間に赤外線検出手段6、増幅回路10、A/D変換手段11を介して時系列で得られるデジタル値VA1、VA2、VA3、・・・、VAnのうち、積分期間管理手段13が管理する積分期間のデジタル値、VAj、VA(j+1)、・・・、VA(m−1)、VAmを加算しΣVAを算出する。同様に遮光期間のVBj、VB(j+1)、・・・、VB(m−1)、VBmを加算しVBを算出する。
ここで、VA1〜VA(j−1)、VB1〜VB(j−1)までをを積分しないのは、入光と遮光の状態変化直後は出力が急激に変化するため、サンプリングのタイミングがわずかにずれるだけで得られるデジタル値は大きな差となり、食品2の温度との相関を低下させる原因となるからである。したがって、tjは出力が急激な変化を起こす過渡時期より長くtj>τ(τは赤外線検出手段6の応答時定数)として設定している。このように入光と遮光の状態変化直後にサンプリングするデジタル値を積分しない構成としているので、状態変化直前の出力の影響も受けない。したがって、例えば赤外線検出手段6の温度検出位置を移動させる場合等、検出温度が大きく刻々変化する場合でも直前の検出の温度の影響を受けることなく積分値を演算できる。
また、VA(m+1)〜VAn、VB(m+1)〜VBnまでを積分しないのは、チョッパ5の開閉状態を変える前に積分値の演算を終了できるよう演算に要する時間だけ余裕を残すためであり、これにより、より高速に温度検出を行うことができる。
また入光期間に温度センサ8からA/D変換手段11を介して時系列で得られるデジタル値VT1、VT2、VT3、・・・、VTnのうち積分期間管理手段13が管理する積分期間のデジタル値、VTj、VT(j+1)、・・・、VT(m−1)、VTmと、遮光期間のデジタル値、VTj、VT(j+1)、・・・、VT(m−1)、VTmをあわせて加算しΣVTを算出する。
ここでΣVA−ΣVBは食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に相関を持った値である。即ちΣVA−ΣVBは食品2の絶対温度の4乗とチョッパ5の絶対温度の4乗の差に比例するものである。簡易的には限定された範囲では食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に比例するとしても、十分精度の良い近似である。一方、チョッパ5の温度はサーミスタより成る温度センサ8で検出できるもので、温度により抵抗値が変化するので基準電圧との分圧で検出すると、ΣVTも簡易的には限定された範囲でチョッパ5の温度に比例するとして精度の良い近似ができる。温度換算手段16は以上の特性に基づき(1)式で示す関数を予め持っていて食品2の温度Tを算出する。(1)式においてa1、a2、a3は赤外線検出手段6、温度センサ8の特性と増幅回路10の増幅率と積分回数(m−j+1)より予め定めた定数である。
f1(ΣVA−ΣVB、ΣVT)=a1×(ΣVA−ΣVB)+a2×ΣVT+a3 (1)
本発明の第1の実施の形態によれば入光期間に(m−j+1)回、遮光期間に(m−j+1)回サンプリングして積分演算しているので、ノイズ成分はキャンセルされ食品2の温度検出の信頼性は高い。
なお、温度換算手段16は本実施の形態では(1)式で示す関数を持っているものとしたがΣVA、ΣVBの4乗根を演算したり、ΣVTから対数関数を使うなどして温度換算による誤差を低減させても良いし、定数a1、a2、a3を変えた複数の関数を持って、ΣVA、ΣVB、ΣVTにより使い分けても換算誤差を低減できる。また本実施の形態では温度換算手段16は入光期間、遮光期間それぞれの積分演算手段14の演算結果ΣVA、ΣVBの差を演算したが、これはオフセット電圧をキャンセルできる効果がある。しかし、ΣVA、ΣVBのいずれもが食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差と相関があるので一方だけを使っても食品2の温度を検出することは可能である。また本実施の形態では温度センサ8の出力も積分演算したが、温度センサ8の出力は赤外線検出手段6から増幅回路10を介した出力に比べるとノイズの影響ははるかに小さいものであり、1回だけのサンプリングの結果を使い、積分演算を行わなくても食品2の温度検出は可能である。また積分演算手段14はΣVA、ΣVB、ΣVTをサンプリング回数の(m−j+1)または2(m−j+1)で割り算して平均値を演算しても同様の効果を得られる。
(実施の形態2)
次に本発明の第2の実施の形態を図5〜図7を用いて説明する。図5は本発明の第2の実施の形態として温度検出器を電子レンジに搭載した応用例の構成ブロック図である。また図6は赤外線検出手段の出力信号の変化を示す特性図である。また図7はデジタル値処理手段、温度換算手段の動作を説明するフローチャートである。なお、第1の実施の形態と同一機能を有する部分には同一符号を付し説明を省略する。
図5において、赤外線検出手段6の出力は増幅回路10で増幅し、増幅回路10で増幅した出力電圧はA/D変換手段11でデジタル化して制御装置12に送信する。制御装置12は傾き演算有効期間管理手段29を有する傾き演算手段30により構成したデジタル値処理手段15、温度換算手段16、加熱制御手段17を備えている。傾き演算手段30は、A/D変換手段11の出力となるデジタル値より、チョッパ5の動作で赤外線検出手段6に食品2からの赤外線が照射される入光期間のうち、傾き演算有効期間管理手段29が管理する有効期間内における回帰直線の傾きを算出する。温度換算手段16は傾き演算手段30の演算結果である傾きおよびチョッパ5の温度を検出する温度センサ8から得られる出力に基づき食品2の温度を換算する。加熱制御手段17は温度換算手段16の温度換算結果により加熱手段であるマグネトロン9を制御する。マグネトロン9の制御は例えば所定温度に到達すれば停止、あるいは断続運転、または断続運転のデューティーを変えるなどである。
図6、図7により動作を説明する。傾き演算手段30はチョッパ5の開状態である入光期間でt時間ごとにn回のサンプリングを行ない、赤外線検出手段6、増幅回路10、A/D変換手段11を介して時系列で得られるデジタル値VA1、VA2、VA3、・・・、VAnを取り込む。今、傾き演算有効期間管理手段29が、チョッパが遮光期間から入光期間へと変化する変化時点からの経過時間がtm=(m−1)tまでを有効時間として管理しているとすると、傾き演算手段30はデジタル値VA1、VA2、・・・、VA(m−1)、VAmを通る回帰直線の傾きD1VAを最小二乗法により求める。最小二乗法はVA1〜VAmのm個のデジタル値に対し偏差の二乗和が最小となる直線の式を算出する方法であり、図7に示すようにm、1〜mの総和であるΣi、1〜mの二乗和であるΣi2、VA1〜VAmの総和であるΣVA、m個のデジタル値(VA1〜VAm)とそれぞれ対応するサンプリング回数(1〜m)との積の総和(VA1×1+VA2×2+・・・+VAm×m)であるΣiVAを基に直線の傾きを求めることができる。ここでVA1からVAmまでのデジタル値によってのみ傾きを演算するのは、演算に要する時間の余裕を残すためであるが、特に遮光から入光への状態変化直後の出力が直線的に変化する期間のデジタル値に意味があるので、tmは状態変化があってから赤外線検出手段の応答時定数τまでの経過時間を含むtm>τと設定している。
温度換算手段16には傾き演算手段30より傾きD1VAを入力し、また、温度センサ8からはA/D変換手段11を介して入光期間または遮光期間の任意のタイミングにおけるデジタル値VTを入力して食品2の温度換算を行う。
ここで傾きD1VAは食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に相関を持った値である。即ち、傾きD1VAは食品2の絶対温度の4乗とチョッパ5の絶対温度の4乗の差に比例するものである。簡易的には限定された範囲では食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に比例するとしても、十分精度の良い近似である。温度換算手段16は以上の特性に基づき(2)式で示す関数を予め持っていて食品2の温度Tを算出する。(2)式においてb1、b2、b3は赤外線検出手段6、温度センサ8の特性と増幅回路10の増幅率により予め定めた定数である。
f2(D1VA、VT)=b1×D1VA+b2×VT+b3 (2)
本発明の第2の実施の形態によればA/D変換手段11の出力となるデジタル値より、チョッパ5の入光期間における回帰直線の傾きを最小二乗法により演算しているのでノイズ成分はキャンセルされ、信頼性の高い温度データが得られる。
なお、本実施の形態では、チョッパの入光期間における回帰直線の傾きを演算したが、チョッパの遮光期間における回帰直線の傾きを演算しても同様の効果が得られる。
また、温度換算手段16は本実施の形態では(2)式で示す関数を持っているものとしたが定数b1、b2、b3を変えた複数の関数を持って、D1VA、VTにより使い分けても換算誤差を低減できる。
(実施の形態3)
次に本発明の第3の実施の形態を図8〜図10を用いて説明する。図8は本発明の第3の実施の形態として温度検出器を電子レンジに搭載した応用例の構成ブロック図である。また図9は赤外線検出手段の出力信号の変化を示す特性図である。また図10はデジタル値処理手段、温度換算手段の動作を説明するフローチャートである。なお、第1、第2の実施の形態と同一機能を有する部分には同一符号を付し説明を省略する。
図8において、赤外線検出手段6の出力は増幅回路10で増幅し、増幅回路10で増幅した出力電圧はA/D変換手段11でデジタル化して制御装置12に送信する。制御装置12は回帰直線算出有効期間管理手段31を有する回帰直線算出手段32、代入演算手段32により構成したデジタル値処理手段15と、温度換算手段16、加熱制御手段17を備えている。回帰直線算出手段32は、チョッパの入光期間と遮光期間のそれぞれで、回帰直線算出有効期間管理手段31が管理する有効期間内におけるA/D変換手段11の出力デジタル値より、回帰直線を算出する。代入演算手段33は算出された回帰直線に所定の値を代入して演算を行い回帰直線上の1点の値を算出する。温度換算手段16は代入演算手段33の演算結果およびチョッパ5の温度を検出する温度センサ8から得られる出力に基づき食品2の温度を換算する。加熱制御手段17は温度換算手段16の温度換算結果により加熱手段であるマグネトロン9を制御する。マグネトロン9の制御は例えば所定温度に到達すれば停止、あるいは断続運転、または断続運転のデューティーを変えるなどである。
図9、図10により動作を説明する。回帰直線算出手段32は、チョッパ5の開状態である入光期間と閉状態である遮光期間のそれぞれでt時間ごとにn回のサンプリングを行なう。また、回帰直線算出有効期間管理手段31は、チョッパ5が遮光期間から入光期間へと変化する変化時点からの経過時間がtm=(m−1)tまでを有効時間として管理している。ここでmは1<m<nの整数である。すなわち、回帰直線算出手段32は入光期間に赤外線検出手段6、増幅回路10、A/D変換手段11を介して時系列で得られるデジタル値VA1、VA2、VA3、・・・、VAnのうち、回帰直線算出有効期間管理手段31が管理する期間のデジタル値、VA1、VA2、・・・、VA(m−1)、VAmを通る回帰直線の傾きD1VAと切片D0VAの値を最小二乗法により求め、回帰直線(3)式を算出する。(3)式において、iはサンプリング数、VA(i)はi番目のサンプリングにおける回帰直線上の値を示す。
VA(i)=D1VA×i+D0VA (3)
次に、算出された回帰直線(3)式に、代入演算手段33がi=kを代入して演算を行いVA(k)の値を算出する。ここで、kはあらかじめ定めた定数で,VA(k)は時間tk=k×tにおける回帰直線上の値である。また、遮光期間においても同様に、赤外線検出手段6、増幅回路10、A/D変換手段11を介して時系列で得られるデジタル値VB1、VB2、VB3、・・・、VBnのうち、回帰直線算出有効期間管理手段30が管理する期間のデジタル値、VB1、VB2、・・・、VB(m−1)、VBmを通る回帰直線の傾きD1VBと切片D0VBの値を最小二乗法により求め、回帰直線(4)式を算出し、代入演算手段33がi=kを代入しVB(k)の値を算出する。
VB(i)=D1VB×i+D0VB (4)
ここでVA1からVAm、VB1からVBmまでのデジタル値によってのみ回帰直線の式を算出したのは、前記実施の形態2の説明と同様の理由により、tm>τとして設定している。
温度換算手段16には代入演算手段33よりVA(k)とVB(k)を入力し、また、温度センサ8からはA/D変換手段11を介して入光期間または遮光期間の任意のタイミングにおけるデジタル値VTを入力して食品2の温度換算を行う。
ここでVA(k)−VB(k)は食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に相関を持った値である。即ち、VA(k)−VB(k)は食品2の絶対温度の4乗とチョッパ5の絶対温度の4乗の差に比例するものである。簡易的には限定された範囲では食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に比例するとしても、十分精度の良い近似である。温度換算手段16は以上の特性に基づき(5)式で示す関数を予め持っていて食品2の温度Tを算出する。(5)式においてc1、c2、c3は赤外線検出手段6、温度センサ8の特性と増幅回路10の増幅率により予め定めた定数である。
f3(VA(k)−VB(k)、VT)=c1×(VA(k)−VB(k))+c2×VT+c3 (5)
本発明の第3の実施の形態によればA/D変換手段11の出力となるデジタル値より、チョッパ5の入光期間と遮光期間のそれぞれで回帰直線を最小二乗法により算出し、回帰直線上の1点の値を出力しているので、ノイズ成分はキャンセルされ、信頼性の高い温度データが得られる。
なお、温度換算手段16は本実施の形態では(5)式で示す関数を持っているものとしたがVA(k)、VB(k)の4乗根を演算したり、VTから対数関数を使うなどして温度換算による誤差を低減させても良いし、定数c1、c2、c3を変えた複数の関数を持って、VA(k)、VB(k)、VTにより使い分けても換算誤差を低減できる。また本実施の形態では温度換算手段16は入光期間、遮光期間それぞれの代入演算手段32の演算結果VA(k)、VB(k)の差を演算したが、これはオフセット電圧をキャンセルできる効果がある。しかし、VA(k)、VB(k)のいずれもが食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差と相関があるので一方だけを使っても食品2の温度を検出することは可能である。
(実施の形態4)
次に本発明の第4の実施の形態を図11〜図13を用いて説明する。図11は本発明の第4の実施の形態として温度検出器を電子レンジに搭載した応用例の構成ブロック図である。また図12は赤外線検出手段の出力信号の変化を示す特性図である。また図13はデジタル値処理手段、温度換算手段の動作を説明するフローチャートである。なお、第1〜第3の実施の形態と同一機能を有する部分には同一符号を付し説明を省略する。
図11において、赤外線検出手段6の出力は増幅回路10で増幅し、増幅回路10で増幅した出力電圧はA/D変換手段11でデジタル化して制御装置12に送信する。制御装置12は傾き演算有効期間管理手段29を有する傾き演算手段30と積分演算手段14より構成したデジタル値処理手段15、温度換算手段16、加熱制御手段17を備えている。傾き演算手段30は、チョッパ5の入光期間において、A/D変換手段11の出力デジタル値より、傾き演算有効期間管理手段29が管理する有効期間内における回帰直線の傾きを算出する。ここで、傾き演算有効期間管理手段29は、入光と遮光の状態変化時点から赤外線検出手段6の応答時定数の経過時間を含む期間を有効期間としている。また、積分演算手段14は、チョッパ5の入光期間と遮光期間のそれぞれで、傾き演算有効期間管理手段28が管理する有効期間を除いた期間で、A/D変換手段11の出力となるデジタル値の積分演算を行う。温度換算手段16は傾き演算手段29の演算結果、積分演算手段14の演算結果、チョッパ5の温度を検出する温度センサ8から得られる出力を基に食品2の温度を換算する。加熱制御手段17は温度換算手段16の温度換算結果により加熱手段であるマグネトロン9を制御する。マグネトロン9の制御は例えば所定温度に到達すれば停止、あるいは断続運転、または断続運転のデューティーを変えるなどである。
図12、図13により動作を説明する。傾き演算手段30および積分演算手段14はチョッパ5の開状態である入光期間と閉状態である遮光期間のそれぞれでt時間ごとにn回のサンプリングを行ない、傾き演算有効期間管理手段28はチョッパの入光と遮光の状態変化時点からの経過時間がtm=(m−1)tまでを有効時間として管理している。ここでmは1<m<nの整数である。
入光期間において、傾き演算手段29は傾き演算有効期間管理手段29が管理する期間のデジタル値VA1、VA2、・・・、VA(m−1)、VAmを通る回帰直線の傾きD1VAを最小二乗法により求める。また、積分演算手段14は傾き演算有効期間管理手段29が管理する期間を除いた期間のデジタル値VA(m+1)、VA(m+2)、・・・VA(n−1)、VAnを加算してΣVA算出する。
また、遮光期間において、積分演算手段14は傾き演算有効期間管理手段29が管理する期間を除いた期間のデジタル値VB(m+1)、VB(m+2)、・・・VB(n−1)、VBnを加算してΣVBを算出する。
ここで、傾き演算期間tmは入光と遮光の状態変化があってから赤外線検出手段の応答時定数τまでの経過時間を含むtm>τと設定している。傾き演算期間を少なくとも赤外線検出手段の応答時定数τを含む期間とし、それ以降を積分演算期間としたのは、上記実施の形態1および実施の形態2の説明と同様の理由によるものである。
また、積分演算手段14は温度センサ8からA/D変換手段11を介して時系列で得られるデジタル値のうち、VT(m+1)、VT(m+2)、・・・VT(n−1)、VTnを入光期間と遮光期間をあわせて加算しΣVTを算出する。
温度換算手段16には傾き演算手段30より傾きD1VAを入力し、積分演算手段14よりΣVAとΣVBを入力する。また、温度センサ8からは入光期間または遮光期間の任意のタイミングにおけるデジタル値VTと、ΣVTを入力して食品2の温度換算を行う。具体的には、(6)式に示すように、傾きD1VAとVTから傾きによる換算温度Tkを実施の形態2と同様にして求め、次に、(7)式に示すようにΣVA、ΣVB、ΣVTから積分値による換算温度Tsを実施の形態1と同様にして求める。
Tk=f2(D1VA、VT) (6)
Ts=f1(ΣVA−ΣVB、ΣVT) (7)
次に、(8)式に示すようにそれぞれの換算温度Tk、Tsの平均を演算して食品2の温度Tを算出する。
T=(Tk+Ts)/2 (8)
本発明の第4の実施の形態によればA/D変換手段11の出力となるデジタル値の入光と遮光の状態変化時点から少なくとも赤外線検出手段の応答時定数までの期間を含む回帰直線の傾きを算出し、また、入光と遮光の状態変化時点から少なくとも赤外線検出手段6の応答時定数までの期間を除きA/D変換手段11の出力となるデジタル値の積分演算を行い、傾きと積分値から食品の温度を算出しているので、ノイズ成分はキャンセルされ、信頼性の高い温度データが得られる。
なお、本実施の形態において、積分演算手段14は傾き演算有効期間管理手段29が管理する期間を除いた期間のデジタル値を加算してΣVA算出したが、これは本発明を限定するものではなく、積分演算手段14はチョッパの入光期間と遮光期間のそれぞれでA/D変換手段11の出力となるデジタル値の入光と遮光の状態変化時点から少なくとも赤外線検出手段6の応答時定数までの期間を除き積分演算を行えば良いのであって、積分演算の期間が傾き演算の期間と重なるなどしても良い。
また、(6)式において、温度センサ8から得られる入光期間または遮光期間の任意のタイミングにおけるデジタル値VTにより、傾きによる換算温度Tkを求めたが、温度センサ8の出力を積分演算したΣVTにより換算温度Tkを求めても同様の効果が得られる。
また、(7)式において、温度センサ8の出力を積分演算したΣVTにより、積分値による換算温度Tsを求めたが、温度センサ8から得られる入光期間または遮光期間の任意のタイミングにおけるデジタル値VTにより、換算温度Tsを求めても同様の効果が得られる。
また、(8)式において、傾きによる換算温度Tkと積分値による換算温度Tsを平均して食品の温度を算出したが、TkとTsにそれぞれwkとwsの重み付けをして(9)式により食品の温度を算出しても同様の効果が得られる。
T=(wk×Tk+ws×Ts)/(wk+ws) (9)
ここで、wkとwsの値は、食品の温度と相関が得られるように、あらかじめ求めておけば良い。
また、本実施の形態では回帰直線の傾きによって温度換算を行ったが、傾きのかわりに実施の形態3で説明した様に回帰直線上の1点の値によって温度換算を行っても同様の効果が得られる。
(実施の形態5)
次に本発明の第5の実施の形態を図14〜図16を用いて説明する。図14は本発明の第5の実施の形態として温度検出器を電子レンジに搭載した応用例の構成ブロック図である。また図15は赤外線検出手段の出力信号の変化を示す特性図である。また図16は回帰2次曲線算出手段、極値演算手段、温度換算手段の動作を説明するフローチャートである。なお、第1〜第4の実施の形態と同一機能を有する部分には同一符号を付し説明を省略する。
図14において、赤外線検出手段6の出力は増幅回路10で増幅し、増幅回路10で増幅した出力電圧はA/D変換手段11でデジタル化して制御装置12に送信する。制御装置12は回帰2次曲線算出手段34、極値演算手段35により構成したデジタル値処理手段15、温度換算手段16、加熱制御手段17を備えている。回帰2次曲線算出手段34は、チョッパ5の入光期間と遮光期間のそれぞれで、A/D変換手段11の出力デジタル値より、回帰2次曲線を算出する。極値演算手段35は、算出された回帰2次曲線の極値を演算する。温度換算手段16は極値演算手段35の演算結果およびチョッパ5の温度を検出する温度センサ8から得られる出力に基づき食品2の温度を換算する。加熱制御手段17は温度換算手段16の温度換算結果により加熱手段であるマグネトロン9を制御する。マグネトロン9の制御は例えば所定温度に到達すれば停止、あるいは断続運転、または断続運転のデューティーを変えるなどである。
図15、図16により動作を説明する。回帰2次曲線算出手段34は、チョッパ5の開状態である入光期間と閉状態である遮光期間のそれぞれでt時間ごとにn回のサンプリングを行なう。また、回帰2次曲線算出手段34は、入光期間に赤外線検出手段6、増幅回路10、A/D変換手段11を介して時系列で得られるデジタル値VA1、VA2、VA3、・・・、VAnを通る回帰2次曲線の、2次の係数D2VA、1次の係数D1VA、0次の係数D0VAの値を最小二乗法により求め、回帰2次曲線(10)式を算出する。具体的には図16に示す様に、n、1〜nの総和であるΣi、1〜nの二乗和であるΣi2、1〜nの3乗和であるΣi3、1〜nの4乗和であるΣi4、VA1〜VAnの総和であるΣVA、n個のデジタル値(VA1〜VAn)とそれぞれ対応するサンプリング回数(1〜n)との積の総和(VA1×1+VA2×2+・・・+VAn×n)であるΣiVA、n個のデジタル値(VA1〜VAn)とそれぞれ対応するサンプリング回数の二乗(12〜n2)との積の総和(VA1×12+VA2×22+・・・+VAn×n2)であるΣi2VAを基に3元連立方程式を解くことにより2次曲線を算出でき、算出された2次曲線はn個のデジタル値に対し偏差の二乗和が最小となる式である。(10)式においてiはサンプリング数、VA(i)はi番目のサンプリングにおける回帰2次曲線上の値を示す。
VA(i)=D2VA×i×i+D1VA×i+D0VA (10)
次に、極値演算手段35が回帰2次曲線(10)式の極値KVAを演算する。
一方、遮光期間においても同様に、回帰2次曲線算出手段34は、赤外線検出手段6、増幅回路10、A/D変換手段11を介して時系列で得られるデジタル値VB1、VB2、VB3、・・・、VBnを通る回帰2次曲線の、2次の係数D2VB、1次の係数D1VB、0次の係数D0VBの値を最小二乗法により求め、回帰2次曲線(11)式を算出し、極値演算手段35が回帰2次曲線(11)式の極値KVBを演算する。
VA(i)=D2VB×i×i+D1VB×i+D0VB (11)
温度換算手段16には極値演算手段35よりKVAとKVBを入力し、また、温度センサ8からはA/D変換手段11を介して入光期間または遮光期間の任意のタイミングにおけるデジタル値VTを入力して食品2の温度換算を行う。
ここでKVA−KVBは食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に相関を持った値である。即ち、KVA−KVBは食品2の絶対温度の4乗とチョッパ5の絶対温度の4乗の差に比例するものである。簡易的には限定された範囲では食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に比例するとしても、十分精度の良い近似である。温度換算手段16は以上の特性に基づき(12)式で示す関数を予め持っていて食品2の温度Tを算出する。(12)式においてe1、e2、e3は赤外線検出手段6、温度センサ8の特性と増幅回路10の増幅率により予め定めた定数である。
f5(KVA−KVB、VT)=e1×(KVA−KVB)+e2×VT+e3 (12)
本発明の第5の実施の形態によればA/D変換手段11の出力となるデジタル値より、チョッパ5の入光期間と遮光期間のそれぞれで回帰2次曲線を最小二乗法により算出し、回帰2次曲線の極値を演算しているのでノイズ成分はキャンセルされ、信頼性の高い温度データが得られる。
なお、温度換算手段16は本実施の形態では(12)式で示す関数を持っているものとしたがKVA、KVBの4乗根を演算したり、VTから対数関数を使うなどして温度換算による誤差を低減させても良いし、定数e1、e2、e3を変えた複数の関数を持って、KVA、KVB、VTにより使い分けても換算誤差を低減できる。また本実施の形態では温度換算手段16は入光期間、遮光期間それぞれの回帰2次曲線の極値KVA、KVBの差を演算したが、これはオフセット電圧をキャンセルできる効果がある。しかし、KVA、KVBのいずれもが食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差と相関があるので一方だけを使っても食品2の温度を検出することは可能である。
(実施の形態6)
次に本発明の第6の実施の形態を図17〜図19を用いて説明する。図17は本発明の第6の実施の形態として温度検出器を電子レンジに搭載した応用例の構成ブロック図である。また図18は赤外線検出手段の出力信号の変化を示す特性図であり、チョッパ5と食品2の温度差が小さい場合を示す。また図19はデジタル値処理手段、温度換算手段の動作を説明するフローチャートである。なお、第1〜第5の実施の形態と同一機能を有する部分には同一符号を付し説明を省略する。
図17において、赤外線検出手段6の出力は増幅回路10で増幅し、増幅回路10で増幅した出力電圧はA/D変換手段11でデジタル化して制御装置12に送信する。制御装置12は回帰2次曲線算出手段34、代入演算手段33により構成したデジタル値処理手段15、温度換算手段16、加熱制御手段17を備えている。回帰2次曲線算出手段34は、チョッパ5の入光期間と遮光期間のそれぞれで、A/D変換手段11の出力デジタル値より、回帰2次曲線を算出する。代入演算手段33は算出された回帰2次曲線に所定の値を代入して演算を行い回帰2次曲線上の1点の値を算出する。温度換算手段16は代入演算手段33の演算結果およびチョッパ5の温度を検出する温度センサ8から得られる出力に基づき食品2の温度を換算する。加熱制御手段17は温度換算手段16の温度換算結果により加熱手段であるマグネトロン9を制御する。マグネトロン9の制御は例えば所定温度に到達すれば停止、あるいは断続運転、または断続運転のデューティーを変えるなどである。
図18、図19により動作を説明する。回帰2次曲線算出手段34は、上記実施の形態5の説明と同様にして、チョッパ5の開状態である入光期間と閉状態である遮光期間のそれぞれでt時間ごとにn回のサンプリングを行ない、入光期間に回帰2次曲線(10)式を、遮光期間に回帰2次曲線(11)式を最小二乗法により算出する。代入演算手段33は算出された回帰2次曲線(10)式、(11)式にi=kをそれぞれ代入して演算を行い、VA(k)、VB(k)の値を算出する。ここで、サンプリング回数kは、赤外線検出手段6および増幅回路10の特性により設計上出力がピーク値となる時間により、あらかじめ定めた定数で、VA(k)、VB(k)は時間tk=k×tにおける回帰2次曲線上の値である。温度換算手段16には代入演算手段33よりVA(k)とVB(k)を入力し、また、温度センサ8からはA/D変換手段11を介して入光期間または遮光期間の任意のタイミングにおけるデジタル値VTを入力して食品2の温度換算を行う。
ここでVA(k)−VB(k)は食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に相関を持った値である。即ち、VA(k)−VB(k)は食品2の絶対温度の4乗とチョッパ5の絶対温度の4乗の差に比例するものである。簡易的には限定された範囲では食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に比例するとしても、十分精度の良い近似である。温度換算手段16は以上の特性に基づき(13)式で示す関数を予め持っていて食品2の温度Tを算出する。(13)式においてg1、g2、g3は赤外線検出手段6、温度センサ8の特性と増幅回路10の増幅率により予め定めた定数である。
f6(VA(k)−VB(k)、VT)=g1×(VA(k)−VB(k))+g2×VT+g3 (13)
ところで、チョッパ5と食品2の温度差が小さい場合には、図18に示すように、A/D変換手段11の出力となるデジタル値の変化が小さくなり、入光期間と遮光期間のそれぞれの回帰2次曲線(波線で示す)は、極値を入光期間と遮光期間の外にそれぞれ持つ事がある。このような場合、実施の形態5のように極値により温度換算を行うと、食品2の温度との相関が悪くなる事があったが、本実施の形態では回帰2次曲線上の1点の値により温度換算しているので、チョッパ5と食品2の温度差が小さい場合の相関が良くなるという効果がある。
本発明の第6の実施の形態によればA/D変換手段11の出力となるデジタル値より、チョッパ5の入光期間と遮光期間のそれぞれで回帰2次曲線を最小二乗法により算出し、回帰2次曲線上の1点の値を出力しているので、ノイズ成分はキャンセルされ、特にチョッパ5と食品2の温度差が小さい場合に、食品の温度との相関が良くなり、信頼性の高い温度データが得られる。
なお、温度換算手段16は本実施の形態では(13)式で示す関数を持っているものとしたがVA(k)、VB(k)の4乗根を演算したり、VTから対数関数を使うなどして温度換算による誤差を低減させても良いし、定数g1、g2、g3を変えた複数の関数を持って、VA(k)、VB(k)、VTにより使い分けても換算誤差を低減できる。また本実施の形態では温度換算手段16は入光期間、遮光期間それぞれの回帰2次曲線の極値の差VA(k)−VB(k)を演算したが、これはオフセット電圧をキャンセルできる効果がある。しかし、VA(k)、VB(k)のいずれもが食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差と相関があるので一方だけを使っても食品2の温度を検出することは可能である。
(実施の形態7)
次に本発明の第7の実施の形態を図20〜図21を用いて説明する。図20は本発明の第7の実施の形態として温度検出器を電子レンジに搭載した応用例の構成ブロック図である。また図21はデジタル値処理手段、温度換算手段の動作を説明するフローチャートである。なお、第1〜第6の実施の形態と同一機能を有する部分には同一符号を付し説明を省略する。
図20において、赤外線検出手段6の出力は増幅回路10で増幅し、増幅回路10で増幅した出力電圧はA/D変換手段11でデジタル化して制御装置12に送信する。制御装置12は回帰2次曲線算出手段34、極値演算手段35、代入演算手段33、切り替え手段36により構成したデジタル値処理手段15、温度換算手段16、加熱制御手段17を備えている。回帰2次曲線算出手段34は、チョッパ5の入光期間と遮光期間のそれぞれで、A/D変換手段11の出力デジタル値より、回帰2次曲線を算出する。極値演算手段35は、算出された回帰2次曲線の極値を演算し、また、代入演算手段33は算出された回帰2次曲線に所定の値を代入して演算を行い回帰2次曲線上の1点の値を算出する。切り替え手段36は温度換算手段16への出力を切り替えており、極値演算手段35の演算結果である極値が入光期間および遮光期間内に存在する場合は極値演算手段35の演算結果を出力し、存在しない場合は代入演算手段33の演算結果を出力する。温度換算手段16は切り替え手段36の出力およびチョッパ5の温度を検出する温度センサ8から得られる出力に基づき食品2の温度を換算する。加熱制御手段17は温度換算手段16の温度換算結果により加熱手段であるマグネトロン9を制御する。マグネトロン9の制御は例えば所定温度に到達すれば停止、あるいは断続運転、または断続運転のデューティーを変えるなどである。
図21により動作を説明する。回帰2次曲線算出手段34は、上記実施の形態5の説明と同様にして、チョッパ5の開状態である入光期間と閉状態である遮光期間のそれぞれでt時間ごとにn回のサンプリングを行ない、入光期間に回帰2次曲線(10)式を、遮光期間に回帰2次曲線(11)式を最小二乗法により算出する。
入光期間において、極値演算手段35は回帰2次曲線(10)式の極値KVAを演算し、また、代入演算手段33は回帰2次曲線(10)式にi=kを代入して演算を行いVA(k)の値を算出する。ここで、kは、あらかじめ定めた定数で、赤外線検出手段6および増幅回路10の特性により設計上出力がピーク値となる時間のサンプリング回数である。切り替え手段36は極値演算手段35の演算結果である極値が入光期間内に存在する場合(1≦D1VA/(2×D2VA)≦n)は極値演算手段35の演算結果KVAを出力し、存在しない場合は代入演算手段33の演算結果VA(k)を出力する。
また、遮光期間においても同様に、極値演算手段35は回帰2次曲線(11)式の極値KVBを演算し、また、代入演算手段33は回帰2次曲線(11)式にi=kを代入して演算を行いVB(k)の値を算出する。切り替え手段36は極値演算手段35の演算結果である極値が遮光期間内に存在する場合(1≦D1VB/(2×D2VB)≦n)は極値演算手段35の演算結果KVBを出力し、存在しない場合は代入演算手段33の演算結果VB(k)を出力する。
切り替え手段36の出力結果を入光期間と遮光期間でそれぞれSVA、SVBとすると、温度換算手段16にはSVA、SVBを入力し、また、温度センサ8からはA/D変換手段11を介して入光期間または遮光期間の任意のタイミングにおけるデジタル値VTを入力して食品2の温度換算を行う。
ここでSVA−SVBは食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に相関を持った値である。即ち、SVA−SVBは食品2の絶対温度の4乗とチョッパ5の絶対温度の4乗の差に比例するものである。簡易的には限定された範囲では食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に比例するとしても、十分精度の良い近似である。温度換算手段16は以上の特性に基づき(14)式で示す関数を予め持っていて食品2の温度Tを算出する。(14)式においてh1、h2、h3は赤外線検出手段6、温度センサ8の特性と増幅回路10の増幅率により予め定めた定数である。
f7(SVA−SVB、VT)=h1×(SVA−SVB)+h2×VT+h3 (14)
本発明の第7の実施の形態によればA/D変換手段11の出力となるデジタル値より、チョッパ5の入光期間と遮光期間のそれぞれで回帰2次曲線を算出し、回帰2次曲線の極値が入光期間および遮光期間内に存在する場合は極値を、存在しない場合は回帰2次曲線上の1点の値を出力しているので、ノイズ成分はキャンセルされる。また、チョッパ5と食品2の温度差に関わらず食品2の温度との相関を向上させることができ、例えば赤外線検出手段6の温度検出位置を移動させる場合等、検出温度が刻々と大きく変化する場合でも信頼性の高い温度データが得られる。
なお、温度換算手段16は本実施の形態では(14)式で示す関数を持っているものとしたがSVA、SVBの4乗根を演算したり、VTから対数関数を使うなどして温度換算による誤差を低減させても良いし、定数h1、h2、h3を変えた複数の関数を持って、SVA、SVB、VTにより使い分けても換算誤差を低減できる。また本実施の形態では温度換算手段16は入光期間、遮光期間それぞれの切り替え手段36の出力の差SVA−SVBを演算したが、これはオフセット電圧をキャンセルできる効果がある。しかし、SVA、SVBのいずれもが食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差と相関があるので一方だけを使っても食品2の温度を検出することは可能である。
(実施の形態8)
次に本発明の第8の実施の形態を図22〜図24を用いて説明する。図22は本発明の第8の実施の形態として温度検出器を電子レンジに搭載した応用例の構成ブロック図である。また図23は赤外線検出手段の出力信号の変化を示す特性図である。図24はデジタル値処理手段、温度換算手段の動作を説明するフローチャートである。なお、第1〜第7の実施の形態と同一機能を有する部分には同一符号を付し説明を省略する。
図22において、赤外線検出手段6の出力は増幅回路10で増幅し、増幅回路10で増幅した出力電圧はA/D変換手段11でデジタル化して制御装置12に送信する。制御装置12は積分期間管理手段13を有する偏差積分演算手段37により構成したデジタル値処理手段15、温度換算手段16、加熱制御手段17を備えている。偏差積分演算手段37は、チョッパ5の入光期間においてA/D変換手段11の出力デジタル値より、積分期間管理手段37で管理する期間の最初にサンプリングしたデジタル値と、2回目以降にサンプリングしたデジタル値との偏差を積分する。温度換算手段16は偏差積分演算手段37の演算結果およびチョッパ5の温度を検出する温度センサ8から得られる出力に基づき食品2の温度を換算する。加熱制御手段17は温度換算手段16の温度換算結果により加熱手段であるマグネトロン9を制御する。マグネトロン9の制御は例えば所定温度に到達すれば停止、あるいは断続運転、または断続運転のデューティーを変えるなどである。
図23、図24により動作を説明する。積分期間管理手段13は、管理する偏差積分期間があらかじめ設定されており、入光期間と遮光期間の状態が変化する変化時点からの経過時間がtj=(j−1)tになると偏差積分演算の開始信号を発する。この時に偏差積分演算手段37はA/D変換手段11を介して得られるデジタル値VAjを最初の値として記憶し、以降A/D変換手段11を介して得られるデジタル値と最初のVAjとの差VA(j+1)−VAj、・・・、VA(m−1)−VAj、VAm−VAjを加算しΣ(VA−VAj)を算出する。ここで積分期間を限定しているのは赤外線検出手段の出力信号が直線的に変化する部分で、初期値との偏差を積分するので赤外線検出手段の出力信号のタイミングのずれの影響が少ない。即ち図23において出力信号が実線を標準として遅れる場合を破線として、その偏差積分演算の結果は略三角形の面積となるがほとんど変わらない。この特性を生かすために積分期間管理手段13で管理するデータ採用期間t(m−j)は、変化が直線的で大きい期間である赤外線検出手段の応答時定数の時間τより短くしている。偏差を演算する基準となるVAjがノイズの影響を受けるとΣ(VA−VAj)はノイズの影響が加算されてしまうので、1回目のVAjはその前後複数回の赤外線検出手段の出力信号の平均値を採用することでノイズの影響を回避する。
また入光期間に温度センサ8からA/D変換手段11を介して時系列で得られるデジタル値VT1、VT2、VT3、・・・、VTnのうち積分期間管理手段13が管理する積分期間のデジタル値、VTj、VT(j+1)、・・・、VT(m−1)、VTmを加算しΣVTを算出する。
ここでΣ(VA−VAj)は食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に相関を持った値である。即ちΣ(VA−VAj)は食品2の絶対温度の4乗とチョッパ5の絶対温度の4乗の差に比例するものである。簡易的には限定された範囲では食品2の温度とチョッパ5の温度の温度差に比例するとしても、十分精度の良い近似である。一方、チョッパ5の温度はサーミスタより成る温度センサ8で検出できるもので、温度により抵抗値が変化するので基準電圧との分圧で検出すると、ΣVTも簡易的には限定された範囲でチョッパ5の温度に比例するとして精度の良い近似ができる。温度換算手段16は以上の特性に基づき(15)式で示す関数を予め持っていて食品2の温度Tを算出する。(15)式においてk1、k2、k3は赤外線検出手段6、温度センサ8の特性と増幅回路10の増幅率と積分回数(m−j+1)より予め定めた定数である。
f8(Σ(VA−VAj)、ΣVT)=k1×(ΣVA−ΣVAj)+k2×ΣVT+k3 (15)
本発明の第8の実施の形態によれば赤外線検出手段の出力信号が直線的に変化する部分でのみ初期値との偏差を積分演算するので、タイミングのずれに対して影響を受けず温度検出の信頼性は高い。
なお、温度換算手段16は本実施の形態では(15)式で示す関数を持っているものとしたがΣ(VA−VAj)の4乗根を演算したり、ΣVTから対数関数を使うなどして温度換算による誤差を低減させても良いし、定数k1、k2、k3を変えた複数の関数を持って、Σ(VA−VAj)、ΣVTにより使い分けても換算誤差を低減できる。また本実施の形態では温度換算手段16は入光期間のみで偏差積分演算手段37がΣ(VA−VAj)を演算したが、遮光期間で演算を行っても同様の効果が選られるし、入光期間と遮光期間の両方で演算を行いその差を演算しても同様の効果が得られ、この場合には扱うデータ数が増えるのでノイズの影響はキャンセルされやすく更に信頼性を高める効果がある。また本実施の形態では温度センサ8の出力も積分演算したが、温度センサ8の出力は赤外線検出手段6から増幅回路10を介した出力に比べるとノイズの影響ははるかに小さいものであり、1回だけのサンプリングの結果を使い、積分演算を行わなくても食品2の温度検出は可能である。また偏差積分演算手段37はΣ(VA−VAj)、ΣVTをサンプリング回数の(m−j+1)で割り算して平均値を演算しても同様の効果を得られる。
以上の実施の形態1〜8の説明において本発明の温度検出器を電子レンジに搭載した応用例について説明したが、これは本発明を拘束するものでなく、非接触で検出した温度を基に制御する調理器や空調器等、また非接触で検出した温度を単に表示する放射温度計にも応用可能である。
(実施の形態9)
次に本発明の第9の実施の形態を図25〜図27を用いて説明する。図25は本発明の第9の実施の形態として温度検出器を体温計に搭載した応用例の構成ブロック図である。また図26は赤外線検出手段の出力信号の変化を示す特性図である。また図27はデジタル値処理手段、温度換算手段の動作を説明するフローチャートである。なお、第1〜8の実施の形態と同一機能を有する部品には同一番号を付し説明を省略する。
一般に表面温度を計測する体温計としては、鼓膜や口腔、肛門など外気に接触しにくい部分の温度を計測することでほぼ体温を計測できる。図25において5はチョッパで赤外線検出手段6に至る赤外線を断続する。チョッパ5はスリットの回転や圧電素子の揺動によるものである。赤外線検出手段6の出力は増幅回路10で増幅し、増幅回路10で増幅した出力電圧はA/D変換手段11でデジタル化しデジタル値処理手段15に送信する。デジタル値処理手段15は記憶手段38、平均値演算手段39、偏差算出手段40、偏差総和算出手段41を備えている。平均値演算手段39はA/D変換手段11が出力する所定時間内のデジタル値を順次加算し、最後にサンプリング数で除算して平均値を算出する。一方、記憶手段38はA/D変換手段11が出力する所定時間内のデジタル値を全て記憶する。偏差算出手段40は所定時間経過後に記憶手段38に蓄えられた全ての記憶値と平均値演算手段39の演算結果である平均値との差の絶対値を算出し、偏差総和演算手段41が偏差算出手段40で算出される全ての絶対値の総和を演算する。温度換算手段16は偏差総和演算手段41の演算結果とチョッパ5の温度を検出する温度センサ8から得られる出力に基づき被測定物の温度即ち体温を換算する。表示手段42は温度換算手段16で換算できた温度を表示する。
図26、図27により動作を説明する。記憶手段38は赤外線検出手段6からA/D変換手段11を介してt時間ごとに出力されるデジタル値を所定回数n回取り込み、そのデジタル値をV1、V2、・・・Vnとして記憶する。また平均値算出手段39は同時にA/D変換手段11からt時間ごとに出力されるデジタル値を所定回数n回取り込み順次累積加算しΣVを算出した後、サンプリング回数nで除算して平均値EVを算出する。その後偏差算出手段40が記憶手段38に記憶されているn個のデジタル値V1、V2、・・・Vnと平均値算出手段39で算出した平均値EVとの偏差の絶対値dVを順次算出し、偏差総和演算手段41がこの絶対値の総和ΣdVを演算する。
所定のサンプリング回数n回はチョッパ5の断続周期の整数倍の期間を一定時間間隔tごとにサンプリングできるよう決めているもので、ΣdVは図26の斜線部分の面積に比例した値となる。また所定のサンプリング回数n回は商用電源の周期の整数倍として設定しておくことで電源によるノイズの影響を除去できる。国内と主要諸外国では商用電源は50Hzか60Hzであり、その両方の電源の周期の整数倍は0.1秒である。即ち0.1秒の整数倍で且つチョッパ断続周期の整数倍の期間を一定間隔tでn回サンプリングしΣdVを算出すれば良い。またデジタル値処理手段15は温度センサ8からA/D変換手段11を介して得られるn回のデジタル値VTの総和ΣVTを演算する。
温度換算手段16にはデジタル値処理手段15からΣdVとΣVTを入力し、被測定物の温度即ち体温を換算する。ここでΣdVは体温とチョッパ5の温度の温度差に相関を持った値である。即ちΣdVは体温の絶対温度の4乗とチョッパ5の絶対温度の4乗の差に比例するものである。簡易的には限定された範囲では体温とチョッパ5の温度差に比例するとしても、十分精度の良い近似である。温度換算手段16は以上の特性に基づき(16)式で示す関数を予め持っていて体温Tを算出する。(16)式においてl1、l2、l3は赤外線検出手段6、温度センサ8の特性と増幅回路10の増幅率により予め定めた定数である。
f9(ΣdV、ΣVT)=l1×ΣdV+l2×ΣVT+l3 (16)
ここではチョッパ5より体温の方が温度が高いものとして説明したが、体温の方が温度が低い場合には(16)式においてl1、l2、l3を変えて温度換算すれば良い。体温の方が温度が低い場合には赤外線検出手段の出力波形の山谷が逆になるので、入光期間と遮光期間の所定のタイミングの赤外線検出手段の出力の大小関係から判断可能である。
本発明の第9の実施の形態によればチョッパの断続周期の整数倍の期間の赤外線検出手段の出力信号を全て記憶すると同時に出力信号の平均値を算出し、記憶値と平均値の偏差の絶対値の総和を演算するので、ノイズの影響を低減できると同時に、チョッパの駆動タイミングのずれや増幅回路の位相のずれの影響も受けず温度検出の信頼性は高い。また商用電源周期の整数倍の期間の赤外線検出手段の信号を処理するので、電源ノイズの影響も除去でき温度検出の信頼性は高い。
なお、平均値算出手段39や偏差総和演算手段41はn個のデジタル値V1、V2、・・・、Vnから最大値と最小値を除外して平均値EVや総和ΣdVを演算しても良く、ノイズによる異常値がある場合にはそれを除外できるのでノイズの影響を低減できる効果がある。また、温度換算手段16は本実施の形態では(16)式で示す関数を持っているものとしたがΣdVの4乗根を演算したり、ΣVTから対数関数を使うなどして温度換算による誤差を低減させても良いし、定数l1、l2、l3を変えた複数の関数を持って、ΣdV、ΣVTにより使い分けても換算誤差を低減できる。また本実施の形態では温度センサ8の出力も積分演算したが、温度センサ8の出力は赤外線検出手段6から増幅回路10を介した出力に比べるとノイズの影響ははるかに小さいものであり、1回だけのサンプリングの結果を使い、積分演算を行わなくても体温の検出は可能である。
(実施の形態10)
次に本発明の第10の実施の形態を図28〜図30を用いて説明する。図28は本発明の第10の実施の形態として温度検出器を体温計に搭載した応用例の構成ブロック図である。また図29は赤外線検出手段の出力信号の変化を示す特性図である。また図30はデジタル値処理手段、温度換算手段の動作を説明するフローチャートである。なお、第1〜9の実施の形態と同一機能を有する部品には同一番号を付し説明を省略する。
図28において赤外線検出手段6の出力は増幅回路10で増幅し、増幅回路10で増幅した出力電圧はA/D変換手段11でデジタル化しデジタル値処理手段15に送信する。デジタル値処理手段15は平均値演算手段39、偏差算出手段40、偏差総和算出手段41を備えている。43はチョッパ制御手段でチョッパ5の停止と断続駆動を制御する。44は切り替え器でチョッパ制御手段43の信号によりA/D変換手段11の出力方向を、チョッパ5の停止時には平均値算出手段39に、チョッパ5の断続駆動時には偏差算出手段40に切り替える。
平均値算出手段39はチョッパ5の停止時にA/D変換手段11が出力する所定時間内のデジタル値を順次加算し、最後にサンプリング数で除算して平均値を算出する。その後チョッパ5が断続駆動を開始すると、偏差算出手段40はA/D変換手段11の出力値と平均値演算手段39の演算結果である平均値との差の絶対値を算出し、偏差総和演算手段41が所定時間内に偏差算出手段40で算出される全ての絶対値の総和を演算する。温度換算手段16は偏差総和演算手段41の演算結果とチョッパ5の温度を検出する温度センサ8から得られる出力に基づき被測定物の温度即ち体温を換算する。表示手段42は温度換算手段16で換算できた温度を表示する。
図29、図30により動作を説明する。まずチョッパ制御手段43はチョッパ5を停止する。この時のチョッパ5の開閉状態はいずれでも良いが、この実施の形態では閉状態で停止するものとする。この時切り替え器44によりA/D変換手段11の信号経路を平均値算出手段39に入力するように設定する。平均値算出手段39は赤外線検出手段6からA/D変換手段11を介してt時間ごとに出力されるデジタル値を所定回数n1回取り込み、そのデジタル値をV1、V2、・・・Vn1を順次累積加算しΣVを算出した後、サンプリング回数n1で除算して平均値EVを算出する。
その後チョッパ制御手段43がチョッパ5を駆動開始する。チョッパ5は被測定物から赤外線検出手段6に至る経路を開閉する。また切り替え器44はA/D変換手段11の信号経路を偏差算出手段40に入力するよう切り替えるが、チョッパ5の駆動開始初期は赤外線検出手段6の出力は不安定なのでt時間ごとn2回分のデータは取り込まない。
その後、偏差算出手段40は赤外線検出手段6からA/D変換手段11を介してt時間ごとに出力されるデジタル値を所定回数n3回取り込み、平均値算出手段39で算出した平均値EVとの偏差の絶対値dVを順次算出し、偏差総和演算手段41がこの絶対値の総和ΣdVを演算する。またデジタル値処理手段15は温度センサ8からA/D変換手段11を介して得られるn3回のデジタル値VTの総和ΣVTを演算する。
所定のサンプリング回数n3回はチョッパ5の断続周期の整数倍の期間を一定時間間隔tごとにサンプリングできるよう決めているもので、ΣdVは図29の斜線部分の面積に比例した値となる。また所定のサンプリング回数n1回、n3回は商用電源の周期の整数倍として設定しておくことで電源によるノイズの影響を除去できる。温度換算手段16にはデジタル値処理手段15からΣdVとΣVTを入力し、被測定物の温度即ち体温を換算する。温度換算は前記実施の形態9で説明した(16)式で行う。
ここではチョッパ5より体温の方が温度が高いものとして説明したが、体温の方が温度が低い場合には(16)式においてl1、l2、l3を変えて温度換算すれば良い。体温の方が温度が低い場合には赤外線検出手段の出力波形の山谷が逆になるので、入光期間と遮光期間の所定のタイミングの赤外線検出手段の出力の大小関係から判断可能である。
本発明の第10の実施の形態によればチョッパの停止時に赤外線検出手段の出力信号の平均値を算出し、チョッパの駆動時に断続周期の整数倍の期間の赤外線検出手段の出力信号と平均値の偏差の絶対値の総和を演算するので、記憶手段を必要とせず簡易な構成で温度検出できる。またノイズの影響を低減できると同時に、チョッパの駆動タイミングのずれや増幅回路の位相のずれの影響も受けず温度検出の信頼性は高い。また商用電源周期の整数倍の期間の赤外線検出手段の信号を処理するので、電源ノイズの影響も除去でき温度検出の信頼性は高い。
なお、平均値算出手段39や偏差総和演算手段41はn1個のデジタル値あるいはn3個のデジタル値から最大値と最小値を除外して平均値EVや総和ΣdVを演算しても良く、ノイズによる異常値がある場合にはそれを除外できるのでノイズの影響を低減できる効果がある。また、温度換算手段16は本実施の形態では(16)式で示す関数を持っているものとしたがΣdVの4乗根を演算したり、ΣVTから対数関数を使うなどして温度換算による誤差を低減させても良いし、定数l1、l2、l3を変えた複数の関数を持って、ΣdV、ΣVTにより使い分けても換算誤差を低減できる。また本実施の形態ではチョッパ5の駆動期間に温度センサ8の出力も積分演算したが、チョッパ5の停止期間に積分演算しても良いし、温度センサ8の出力は赤外線検出手段6から増幅回路10を介した出力に比べるとノイズの影響ははるかに小さいものであり、1回だけのサンプリングの結果を使い、積分演算を行わなくても体温の検出は可能である。
(実施の形態11)
次に本発明の第11の実施の形態を図31、図32を用いて説明する。図31は本発明の第11の実施の形態として温度検出器を体温計に搭載した応用例の構成ブロック図である。また図32はデジタル値処理手段、温度換算手段の動作を説明するフローチャートである。なお、第1〜10の実施の形態と同一機能を有する部品には同一番号を付し説明を省略する。
図31において赤外線検出手段6の出力は増幅回路10で増幅し、増幅回路10で増幅した出力電圧はA/D変換手段11でデジタル化しデジタル値処理手段15に送信する。デジタル値処理手段15は平均値演算手段39、偏差算出手段40、偏差総和算出手段41、切り替え器44、周期管理手段45を備えている。周期管理手段はチョッパ5の断続周期の整数倍で平均値算出周期と偏差算出周期に分けて切り替え器44を制御し、切り替え器44は周期管理手段45の信号によりA/D変換手段11の出力方向を、平均値算出周期には平均値算出手段39に、偏差算出周期には偏差算出手段40に切り替える。
平均値算出手段39は平均値算出周期にA/D変換手段11が出力する所定時間内のデジタル値を順次加算し、最後にサンプリング数で除算して平均値を算出する。その後周期管理手段45の信号により切り替え器44がA/D変換手段11の出力方向を偏差算出手段40に切り替えると、偏差算出手段40はA/D変換手段11の出力値と平均値演算手段39の演算結果である平均値との差の絶対値を算出し、偏差総和演算手段41が所定時間内に偏差算出手段40で算出される全ての絶対値の総和を演算する。温度換算手段16は偏差総和演算手段41の演算結果とチョッパ5の温度を検出する温度センサ8から得られる出力に基づき被測定物の温度即ち体温を換算する。表示手段42は温度換算手段16で換算できた温度を表示する。
図32により動作を説明する。チョッパ5の駆動状態で周期管理手段45の信号により切り替え器44はA/D変換手段11の信号経路を平均値算出手段39に入力するように設定する。平均値算出手段39は赤外線検出手段6からA/D変換手段11を介してt時間ごとに出力されるデジタル値を所定回数n1回取り込み、そのデジタル値をV1、V2、・・・Vn1を順次累積加算しΣVを算出した後、サンプリング回数n1で除算して平均値EVを算出する。
その後、周期管理手段45の信号により切り替え器44はA/D変換手段11の信号経路を偏差算出手段40に切り替える。偏差算出手段40は赤外線検出手段6からA/D変換手段11を介してt時間ごとに出力されるデジタル値を所定回数n2回取り込み、平均値算出手段39で算出した平均値EVとの偏差の絶対値dVを順次算出し、偏差総和演算手段41がこの絶対値の総和ΣdVを演算する。またデジタル値処理手段15は温度センサ8からA/D変換手段11を介して得られるn2回のデジタル値VTの総和ΣVTを演算する。
所定のサンプリング回数n1回、n2回はチョッパ5の断続周期の整数倍の期間を一定時間間隔tごとにサンプリングできるよう決めている。また所定のサンプリング回数n1回、n2回は商用電源の周期の整数倍として設定しておくことで電源によるノイズの影響を除去できる。温度換算手段16にはデジタル値処理手段15からΣdVとΣVTを入力し、被測定物の温度即ち体温を換算する。温度換算は前記実施の形態9で説明した(16)式で行う。
ここではチョッパ5より体温の方が温度が高いものとして説明したが、体温の方が温度が低い場合には(16)式においてl1、l2、l3を変えて温度換算すれば良い。体温の方が温度が低い場合には赤外線検出手段の出力波形の山谷が逆になるので、入光期間と遮光期間の所定のタイミングの赤外線検出手段の出力の大小関係から判断可能である。
本発明の第11の実施の形態によればチョッパの断続周期を平均値算出周期と偏差算出周期に分け、平均値算出周期にチョッパの断続周期の整数倍の期間の赤外線検出手段の出力信号の平均値を算出し、偏差算出周期にチョッパの断続周期の整数倍の期間の赤外線検出手段の出力信号と平均値の偏差の絶対値の総和を演算するので、記憶手段を必要とせず簡易な構成で温度検出できる。またノイズの影響を低減できると同時に、チョッパの駆動タイミングのずれや増幅回路の位相のずれの影響も受けず温度検出の信頼性は高い。また商用電源周期の整数倍の期間の赤外線検出手段の信号を処理するので、電源ノイズの影響も除去でき温度検出の信頼性は高い。
なお、平均値算出手段39や偏差総和演算手段41はn1個のデジタル値あるいはn3個のデジタル値から最大値と最小値を除外して平均値EVや総和ΣdVを演算しても良く、ノイズによる異常値がある場合にはそれを除外できるのでノイズの影響を低減できる効果がある。また、温度換算手段16は本実施の形態では(16)式で示す関数を持っているものとしたがΣdVの4乗根を演算したり、ΣVTから対数関数を使うなどして温度換算による誤差を低減させても良いし、定数l1、l2、l3を変えた複数の関数を持って、ΣdV、ΣVTにより使い分けても換算誤差を低減できる。また本実施の形態では偏差算出周期に温度センサ8の出力も積分演算したが、平均値算出周期に積分演算しても良いし、温度センサ8の出力は赤外線検出手段6から増幅回路10を介した出力に比べるとノイズの影響ははるかに小さいものであり、1回だけのサンプリングの結果を使い、積分演算を行わなくても体温の検出は可能である。
(実施の形態12)
次に本発明の第12の実施の形態を図33、図34を用いて説明する。図33は本発明の第12の実施の形態として温度検出器を体温計に搭載した応用例の構成ブロック図である。また図34はデジタル値処理手段、温度換算手段の動作を説明するフローチャートである。なお、第1〜11の実施の形態と同一機能を有する部品には同一番号を付し説明を省略する。
図33において赤外線検出手段6の出力は増幅回路10で増幅し、増幅回路10で増幅した出力電圧はA/D変換手段11でデジタル化しデジタル値処理手段15に送信する。デジタル値処理手段15は分散算出手段46を備え、分散算出手段46は累積演算手段47と2乗累積演算手段48を備えている。
累積演算手段47は赤外線検出手段6からA/D変換手段11を介して出力する所定時間内のデジタル値を順次加算し、2乗累積演算手段48は同じ出力の2乗を演算しそれを順次加算する。所定時間経過後には分散算出手段46が累積演算手段47の演算結果と、2乗累積演算手段48の演算結果と、サンプリング回数より、所定時間内のA/D変換手段11の全ての出力の標準偏差σを算出する。温度換算手段16は分散算出手段46の演算結果とチョッパ5の温度を検出する温度センサ8から得られる出力に基づき被測定物の温度即ち体温を換算する。表示手段42は温度換算手段16で換算できた温度を表示する。
図34により動作を説明する。チョッパ5の駆動状態で累積演算手段47は赤外線検出手段6からA/D変換手段11を介してt時間ごとに出力されるデジタル値を所定回数n回取り込み、そのデジタル値をV1、V2、・・・Vnを順次累積加算しΣVを演算する。2乗累積演算手段48は同様に得られるデジタル値を2乗しV12、V22、・・・Vn2を順次累積加算しΣV2を演算する。またデジタル値処理手段15は温度センサ8からA/D変換手段11を介して得られるn回のデジタル値VTの総和ΣVTを演算する。
所定回数n回のサンプリングを終えると分散算出手段46は(17)式で分散値σ2を算出する。(17)式は一般周知の分散値算出式である。
σ2=ΣV2−ΣV×ΣV/n (17)
分散算出手段46は更に分散値の平方根である標準偏差σを算出する。ここで標準偏差σは実施の形態9〜11で説明した偏差総和ΣdVに比例するもので、例えば赤外線検出手段6の出力波形が正弦波であるとするとΣdVにπ/2√2を乗じた値となる。
従って標準偏差σは体温とチョッパ5の温度差に相関を持った値であり、体温の絶対温度の4乗とチョッパ5の絶対温度の4乗の差に比例するものである。簡易的には限定された範囲では体温とチョッパ5の温度差に比例するとしても、十分精度の良い近似である。温度換算手段16にはデジタル値処理手段15から標準偏差σとΣVTを入力し、以上の特性に基づき(18)式で示す関数を予め持っていて体温T換算する。(18)式においてp1、p2、p3は赤外線検出手段6、温度センサ8の特性と増幅回路10の増幅率により予め定めた定数である。
f10(σ、ΣVT)=p1×σ+p2×ΣVT+p3 (18)
ここで所定のサンプリング回数n回はチョッパ5の断続周期の整数倍の期間を一定時間間隔tごとにサンプリングできるよう決めている。また所定のサンプリング回数n回は商用電源の周期の整数倍として設定しておくことで電源によるノイズの影響を除去できる。
ここではチョッパ5より体温の方が温度が高いものとして説明したが、体温の方が温度が低い場合には(17)式においてp1、p2、p3を変えて温度換算すれば良い。体温の方が温度が低い場合には赤外線検出手段の出力波形の山谷が逆になるので、入光期間と遮光期間の所定のタイミングの赤外線検出手段の出力の大小関係から判断可能である。
本発明の第12の実施の形態によればチョッパの断続周期の整数倍の期間の赤外線検出手段の出力信号を累積演算手段と2乗累積演算手段で逐次加算し、最後に標準偏差を算出し、その標準偏差を基に温度換算するので、記憶手段を必要とせず簡易な構成で温度検出できる。またノイズの影響を低減できると同時に、チョッパの駆動タイミングのずれや増幅回路の位相のずれの影響も受けず温度検出の信頼性は高い。また商用電源周期の整数倍の期間の赤外線検出手段の信号を処理するので、電源ノイズの影響も除去でき温度検出の信頼性は高い。
なお、分散算出手段46はn個のデジタル値から最大値と最小値を除外して標準偏差δを算出しても良く、ノイズによる異常値がある場合にはそれを除外できるノイズの影響を低減できる効果がある。また、温度換算手段16は本実施の形態では(18)式で示す関数を持っているものとしたがσの4乗根を演算したり、ΣVTから対数関数を使うなどして温度換算による誤差を低減させても良いし、定数p1、p2、p3を変えた複数の関数を持って、σ、ΣVTにより使い分けても換算誤差を低減できる。また本実施の形態では分散算出手段36は標準偏差σを算出したが、分散値σ2を算出しても良い。この場合でも限られた範囲では(18)式の定数を変えるだけで精度の良い近似ができる。
また分散算出手段46は累積演算手段47と2乗累積演算手段48を備え逐次累積加算する方法で行ったが、全てのデジタル値から平均値を算出し、次にデジタル値と平均値との差の2乗和を演算して分散値を算出、その平方根を演算して標準偏差を算出しても同様の効果が得られる。
また温度センサ8の出力も積分演算したが、温度センサ8の出力は赤外線検出手段6から増幅回路10を介した出力に比べるとノイズの影響ははるかに小さいものであり、1回だけのサンプリングの結果を使い、積分演算を行わなくても体温の検出は可能である。
(実施の形態13)
次に本発明の第13の実施の形態を図35〜37を用いて説明する。図35は本発明の第13の実施の形態として温度検出器を体温計に搭載した応用例の構成ブロック図である。また図36は赤外線検出手段の出力信号の変化を示す特性図である。また図37はデジタル値処理手段、温度換算手段の動作を説明するフローチャートである。なお、第1〜12の実施の形態と同一機能を有する部品には同一番号を付し説明を省略する。
図35において、赤外線検出器6の出力は増幅回路10で増幅し、増幅回路10で増幅した出力電圧はA/D変換手段11でデジタル化してデジタル値処理手段15に送信する。デジタル値処理手段15は移動平均演算手段49、ピーク値抽出手段50、減算手段51を備えている。移動平均演算手段49は増幅回路10で増幅した赤外線検出手段6の出力のデジタル値を、所定のサンプリング回数を保ちながらサンプリング期間をずらせつつ平均値を演算する。ピーク値抽出手段50は時系列に得られる移動平均演算手段49の演算結果より入光期間、遮光期間のそれぞれでピーク値を抽出する。減算手段51はピーク値抽出手段50より得られる入光期間のピーク値と遮光期間のピーク値の差を演算する。温度換算器16は減算手段51の演算結果およびチョッパ5の温度を検出する温度センサ8から得られる出力に基づき被測定物の温度即ち体温を換算する。表示手段42は温度換算手段が換算した体温を表示する。
図36、図37により動作を説明する。移動平均演算手段49は入光期間と遮光期間それぞれでt時間ごとにn回のサンプリングを行なう。また入光期間に赤外線検出手段6、増幅回路10、A/D変換手段11を介して時系列で得られるデジタル値VA1、VA2、VA3、・・・、VAnを、例えば4回ずつ、しかも1回ずつずらせながら平均値を演算する。即ちVA4のデータを得た時点でVA1〜VA4の平均値EVA4を演算し、次はVA5のデータを得た時点でVA2〜VA5の平均値EVA5を演算し、次はVA6のデータを得た時点でVA3〜VA6の平均値EVA6を演算し、これをVAnのデータを得た時点でVAn−3〜VAnの平均値EVAnを演算するまで繰り返すのである。ピーク値抽出手段50はこれら平均値EVA4〜EVAnの中から最大値EVApを抽出する。同様に遮光期間では移動平均演算手段49はVB1〜VB4の平均値EVB4、VB2〜VB5の平均値EVB5、VB3〜VB6の平均値EVB6、・・・、VBn−3〜VBnの平均値EVBnを演算し、ピーク値抽出手段50はこれら平均値EVB4〜EVBnの中から最小値EVBpを抽出する。
減算手段51にはピーク値抽出手段50よりEVApとEVBpを入力し、その差EVAp−EVBpを演算し温度換算手段16に出力する。温度換算手段16はまた温度センサ8からはA/D変換手段11を介して入光期間または遮光期間の任意のタイミングにおけるデジタル値VTを入力して、減算手段51の演算結果と合わせ体温の温度換算を行なう。ここでEVAp−EVBpは体温とチョッパ5の温度の温度差に相関を持った値である。即ちEVAp−EVBpは体温の絶対温度の4乗とチョッパ5の絶対温度の4乗の差に比例するものである。簡易的には限定された範囲では体温とチョッパ5の温度の温度差に比例するとしても、十分精度の良い近似である。温度換算手段16は以上の特性に基づき(19)式で示す関数を予め持っていて体温Tを換算する。(19)式においてq1、q2、q3は赤外線検出手段6、温度センサ8の特性と増幅回路10の増幅率により予め定めた定数である。
f11(EVAp−EVBp、VT)=q1×(EVAp−EVBp)+q2×VT+q3 (19)
ここではチョッパ5より体温の方が温度が高いものとして入光期間には移動平均演算手段49の演算結果の中から最大値を、遮光期間には最小値をピーク値として抽出したが、体温の方が温度が低い場合には赤外線検出手段の出力波形の山谷が逆になるので、逆に入光期間の最小値、遮光期間の最大値をピーク値として抽出することになる。チョッパ5と体温のどちらが温度が高いのかわからない場合には入光期間、遮光期間それぞれで最大値、最小値の両方を抽出し、入光期間の最大値と遮光期間の最小値の差、入光期間の最小値と遮光期間の最大値の差を比較し、絶対値の大きい方の組み合わせを選択すれば良い。
本発明の第13の実施の形態によれば4回のサンプリングの平均値を演算しているので、ノイズ成分は概ねキャンセルされ、しかもピーク値を抽出しているので赤外線検出器の応答特性のばらつきの影響を受けず温度検出の信頼性は高い。
なお、移動平均演算手段49は4回のサンプリングの平均値を演算したが、これは2のn乗回数にすることによって割り算操作をビットシフトだけでできる効果があるが、本発明を限定するものでなく、回数は多いほどノイズ成分はキャンセルできる効果がある。また温度換算手段16は本実施の形態では式(19)で示す関数を持っているものとしたがEVAp、EVBpの4乗根を演算したり、VTから対数関数を使うなどして温度換算による誤差を低減させても良いし、定数q1、q2、q3を変えた複数の関数を持って、EVAp、EVBp、VTにより使い分けても換算誤差を低減できる。また本実施の形態では温度換算手段16は入光期間、遮光期間それぞれのピーク値抽出手段50の抽出結果EVAp、EVBpの差を演算したが、これはオフセット電圧をキャンセルできる効果がある。しかし、EVAp、EVBpのいずれもが体温とチョッパ5の温度の温度差と相関があるので一方だけを使っても温度を検出することは可能である。また移動平均演算手段49は複数回のサンプリングの平均値を演算したのでピーク値抽出手段50が扱う数値を大きくしない効果があるが、割り算せずにΣVA、ΣVBを出力値としても同様の効果を得られる。またサンプリングは入光期間、遮光期間の全般にわたって行わなくとも、特に期間の終わりにはあまり出力が変化しないので除外しても同様の効果を得られる。