JP3743333B2 - 電気加熱式触媒装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属箔を積層して構成した電気加熱式触媒装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の排気通路に排気浄化触媒を設け、排気中のHC、CO、NOx等の有害成分を浄化する技術が知られている。しかし、排気浄化触媒は活性化温度より低い温度では排気浄化能力が著しく低下するため、機関始動後排気温度が上昇して触媒が活性化温度に到達するまでは、機関から排出された上記有害成分、特にHC、CO成分は触媒により浄化されずそのまま大気に放出される問題が生じる。
【0003】
この問題を解決するために、触媒担体に金属を使用し、機関始動時にこの金属担体に電流を流すことにより金属担体自体を発熱させて、機関始動後短期間で触媒温度を上記活性化温度まで上昇させるようにした電気加熱式触媒装置が考案されている。
この種の電気加熱式触媒装置の例としては、例えば特開平5−179939号公報に記載されたものがある。
【0004】
同公報の電気加熱式触媒装置は、表面にそれぞれ絶縁層を形成した金属製の波箔と平箔とを重ねて中心電極回りに巻回して構成した円筒状の金属箔積層体の形状とされ、この円筒状の金属箔積層体の外周部を電極に接続することにより、金属箔に通電を行う。また、上記積層体の中心電極近傍部分と外周部近傍の金属箔各層では上記波箔の山と谷は平箔にロウ付等により相互に通電可能に接合されており、中間部分の各層では波箔と平箔は接合されておらず前記金属箔絶縁層により相互に電気的に絶縁された状態になっている。すなわち上記触媒装置では、中心電極近傍と外周近傍とに形成された金属箔相互が導通可能に接合された部分(導通接合部分)の中間には相互に絶縁された波箔と平箔とが渦巻き円筒状に積層された部分(非接合部分)が形成された構造となっている。
【0005】
上記中心電極と外周電極との間に電圧を印加すると、中心電極近傍と外周近傍の導通接合部分では金属箔の各層は導通可能に接続せれているため、この部分では半径方向に電流が流れ電流路の断面積が大きくなることから、抵抗が極めて小さくなり通電しても発熱は生じない。一方、これらの導通接合部分の中間の非接合部分では金属箔は相互に絶縁されているため、電流はそれぞれ波箔と金属箔中を通って流れ、渦巻き状の電流路が形成される。このため、この非接合部分では電流路断面積が小さく、かつ電流路長さが長くなることから、電気抵抗が大きくなり通電により発熱を生じて金属箔全体の温度が上昇する。
【0006】
すなわち上記装置では、電極間に電圧が印加されると渦巻き円筒状に形成された上記金属箔非接合部分全体が発熱し、この部分に担持された触媒が活性化温度(例えば300から400度C)に到達する。また、活性化温度に到達した部分の触媒により一旦排気中のHC、CO等の成分の酸化反応が開始されると、酸化反応による発熱で金属箔積層体全体が加熱されるため触媒全体が速やかに活性化温度に到達することになる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、上記特開平5−179939号公報の触媒装置においては、通電時には非接合部分の金属箔全体に電流が流れ、渦巻き円筒状に形成された金属箔非接合部分の全体が加熱、昇温される。ところが、上記装置では、非接合部分の金属箔全体を通電により加熱するようにしているため、触媒の温度上昇に時間を要し、触媒の活性化の遅れや電力消費量の増加などの問題が生じる。
【0008】
すなわち、上記のように金属箔全体に通電するようにした結果、電流は金属箔の断面全体に均一に分散して流れ、非接合部分の渦巻き円筒状金属箔全体が均一に加熱されることになる。従って、上記装置では非接合部分の渦巻き円筒状金属箔の全体の温度が均一に上昇し、この部分全体の温度が触媒の活性化温度に到達したときに始めて触媒による酸化反応が開始されることになる。
【0009】
しかし、この非接合部分全体の金属箔の体積は比較的大きく、熱容量もそれに応じて大きくなっているため、この部分の金属箔全体を通電により触媒活性化温度まで昇温させるためには比較的長時間を要する。
このため、上記装置では通電開始から触媒活性化までの時間が比較的長くなり、機関始動時の排気浄化が不十分になるのみならず、通電時間の増加により電力消費量が増大する問題が生じてしまう。
【0010】
また、上記装置においても通電する電流値を大きくすれば急速に昇温を行うことは可能であるが、上記非接合部分全体を急速に昇温するためには極めて大きな電流を流す必要がありバッテリの負担が増大し、機関始動不良やバッテリの寿命低下等が生じてしまうため、昇温時間を大幅に短縮することは困難である。
一方、触媒で酸化反応が開始されると反応熱が発生するため、一部の触媒が活性化温度に到達して酸化反応が開始されるとこの反応熱により周囲の触媒が加熱され、この部分の触媒も速やかに昇温して活性化温度に到達するようになる。すると、この部分でも酸化反応が開始されるようになり、反応熱によりさらに周囲の触媒も加熱される。従って、一部の触媒で一旦酸化反応が開始されれば、この反応熱により次々に周囲の触媒でも連鎖的に酸化反応が開始されるようになり、全体の触媒温度は速やかに上昇して活性化温度に到達する。
【0011】
このため、上述の装置のように金属箔全体を均一に触媒活性化温度まで昇温させなくとも、金属箔の一部のみの温度を触媒活性化温度まで上昇させれば、この部分の触媒で酸化反応が開始され、この反応熱により他の部分の触媒でも連鎖的に酸化反応が開始されるようになるため、速やかに全部の触媒が活性化温度に到達するようになる。
【0012】
従って、上述の装置のように金属箔全体に通電するのではなく、金属箔の一部に局所的に電流を流しこの部分のみを急速に触媒活性化温度まで昇温させるようにすれば、短時間で全部の触媒を活性化させることが可能になる。
本発明は上記に鑑み、金属箔の一部のみに局所的な電流通路を形成して、この電流通路に集中して電流を流すことにより、この部分の触媒を短時間で昇温して上記触媒の酸化反応を連鎖的に開始させることが可能な電気加熱式触媒装置を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、金属製平箔と波箔とを、該平箔と波箔との少なくとも一方の金属箔表面に形成した第1の金属酸化物からなる絶縁層を介して重ね、中心電極回りに巻回して外周部に電極を接続して構成した電気加熱式触媒装置において、前記平箔と波箔とを前記第1の金属より還元性の大きい第2の金属を含むロウ材で該第2の金属より還元性の大きい第3の金属を含む所定幅のロウ材の幅方向両側を挟んで形成したロウ材を介してロウ付接合することにより形成された、前記第3の金属を含むロウ材の幅の導通部を前記金属箔の絶縁層に備えた電気加熱式触媒装置が提供される。
【0014】
すなわち、請求項1に記載の発明では、所定幅の第3の金属を含むロウ材の幅方向両側を第2の金属を含むロウ材で挟むようにして形成したロウ材を用いて、表面に第1の金属の酸化物からなる電気的絶縁層を有する金属箔をロウ付け接合した金属箔積層体が形成される。
第2の金属は、第1の金属より還元性が大きく、第1の金属の酸化物からなる絶縁層相互をその絶縁性を破壊することなく良好に接合する。また、第3の金属は第2の金属よりさらに還元性が高く、ロウ付により絶縁層の第1の金属の酸化物を還元して第1の金属を析出させるため、接合部では絶縁層の絶縁性は失われる。従って、金属箔各層間には、導電性を有する所定幅の第3の金属を含むロウ材による接合部(導通部接合部)と、この導通接合部の両側に絶縁性を有する比較的大きな第2の金属を含むロウ材による接合部(絶縁接合部)が形成される。このため、電流は導電性を有する第3の金属ロウ材接合部(導通接合部)のみに集中して流れ、加熱部分の熱容量が低減され速やかな温度上昇が得られる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、金属製平箔と波箔とを、該平箔と波箔との少なくとも一方の金属箔表面に形成した第1の金属酸化物からなる絶縁層を介して重ね、中心電極回りに巻回して外周部に電極を接続して構成した電気加熱式触媒装置において、前記平箔と波箔とを、前記第1の金属より還元性の大きい第3の金属を含む円柱状または球状のロウ材を前記金属箔絶縁層表面に圧着して形成した所定の径のロウ材と、前記第3の金属より還元性が小さく前記第1の金属より還元性の大きい第2の金属を含むとともに前記圧着された第3の金属を含むロウ材の部位に対応する部位に前記第3の金属を含むロウ材を挿通する開口を有する箔状ロウ材とを介してロウ付接合することにより形成された、前記第3の金属を含むロウ材の径の導通部を前記金属箔の絶縁層に備えた電気加熱式触媒装置が提供される。
【0016】
すなわち、請求項2に記載の発明では、金属箔に所定の径の導電性を有する第3の金属を含むロウ材による接合部(導通接合部)と、その周囲に絶縁性を有する比較的大きな第2の金属を含むロウ材による接合部(絶縁接合部)が形成されるため、電流は導通接合部のみに集中して流れ、加熱部分の熱容量が低減され、速やかな温度上昇が得られる。
【0017】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、金属製平箔と波箔とを、該平箔と波箔との少なくとも一方の金属箔表面に形成した第1の金属酸化物からなる絶縁層を介して重ね、中心電極回りに巻回して外周部に電極を接続して構成した電気加熱式触媒装置において、前記平箔と波箔とを、所定幅に配列された前記第1の金属より還元性の大きい第3の金属を含む線状のロウ材と、該第3の金属を含む線状ロウ材の所定幅の配列の両側に金属箔表面に沿って配列された、前記第3の金属より還元性が小さく前記第1の金属より還元性の大きい第2の金属を含む線状ロウ材とを介してロウ付接合することにより形成された、前記第3金属を含む線状ロウ材の配列幅の導通部を前記金属箔の絶縁層に備えた電気加熱式触媒装置が提供される。
【0018】
すなわち、請求項3に記載の発明では、金属箔に第3の金属を含む線状ロウ材により接合された導電性を有する所定幅の接合部(導通接合部)と、その両側に第2の金属を含む線状ロウ材により接合された絶縁性を有する比較的大きな接合部(絶縁接合部)が形成されるため、電流は導通接合部のみに集中して流れ加熱部分の熱容量が低減され、速やかな温度上昇が得られる。
【0019】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、金属製平箔と波箔とを、該平箔と波箔との少なくとも一方の金属箔表面に形成した第1の金属酸化物からなる絶縁層を介して重ね、中心電極回りに巻回して外周部に電極を接続して構成した電気加熱式触媒装置において、表面に前記絶縁層を有する金属箔に局所的に前記絶縁層を除去した部分を設け、前記平箔と波箔とを、該絶縁層除去部分に配置され金属箔相互を導通可能に接合するロウ材と、該ロウ材に隣接して配置された前記第1の金属より還元性の大きい第2の金属を含むロウ材とを介してロウ付接合することにより形成された、前記絶縁層除去部分面積に等しい面積の導通接合部を前記金属箔に備えた電気加熱式触媒装置が提供される。
【0020】
すなわち、請求項4に記載の発明では、金属箔各層間は局所的に絶縁層を除去された導通部を介して導通可能に接合された部分(導通接合部)と、この導通接合部に隣接して第2の金属を含むロウ材により接合された絶縁性を有する接合部(絶縁接合部)とが形成されるため、電流は導通接合部のみに集中して流れ加熱部分の熱容量が低減され、速やかな温度上昇が得られる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明によれば、金属製平箔と波箔とを、該平箔と波箔との少なくとも一方の金属箔表面に形成した第1の金属酸化物からなる絶縁層を介して重ね、中心電極回りに巻回して外周部に電極を接続して構成した電気加熱式触媒装置において、表面に前記絶縁層を有する金属箔は局所的に形成された凹部を備え、前記平箔と波箔とを、該凹部に嵌挿された金属箔相互を導通可能に接合するロウ材と、該ロウ材の周囲に配置された前記第1の金属より還元性の大きい第2の金属を含むロウ材とを介してロウ付接合することにより形成された、前記凹部面積に等しい面積の導通接合部を前記金属箔に備えた電気加熱式触媒装置が提供される。
【0022】
すなわち、請求項5に記載の発明では、金属箔には各金属箔を導通可能に接合するロウ材による、金属箔表面の凹部の径に等しい接合部(導通接合部)と、その周囲に第2金属を含むロウ材箔による絶縁性を有する接合部(絶縁接合部)が形成される。これにより、電流は導通接合部のみに集中して流れ、加熱部分の熱容量の低減により速やかな温度上昇が得られる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は全て、金属製の平箔と波箔とを重ねて中心電極回りに巻回して外周部に他の電極を接続した円筒状の金属箔積層体構造の電気加熱式触媒装置に本発明を適用した場合を例にとって説明している。そこで、それぞれの実施形態の説明に入る前に、図1から図3を用いてこれら全実施形態に共通する円筒状積層体構造の電気加熱式触媒装置について先ず説明する。なお、以下に説明する全実施形態において、共通する構成要素には同一の参照符号を付して説明する。
【0024】
図1は円筒状金属箔積層体構造の電気加熱式触媒装置の軸線に沿った断面図を示す、図1において1は電気加熱式触媒装置の全体、2は後述する円筒状金属箔積層体からなる触媒担体、10、20はそれぞれ円筒状金属箔積層体2を構成する帯状の平箔と波箔とを示している。また、3は円筒状金属箔積層体の中心に設けられ、平箔と波箔とに通電可能に接続された棒状の中心電極(プラス極)、5は金属箔積層体2を収容する円筒状のケーシングであり、ケーシング5は積層体2の外周と通電可能に接続され、外部電極(マイナス極)としての機能を果たしている。従って、中心電極3とケーシング(外部電極)5との間に電圧を印加することにより円筒状金属箔積層体の平箔10と波箔20とに通電することが可能となっている。
【0025】
図2、図3は、図1の円筒状金属箔積層体2の構造を説明する図である。図2に示すように、円筒状金属箔積層体2は平箔10と波箔20とを重ねてそれぞれの長手方向端部を中心電極3に接合した後、平箔10と波箔20とを重ねた状態のまま中心電極3の周りに巻回した構成とされる。
図3は上記により構成された円筒状金属箔積層体2の、図1のIII-III 線に沿った断面を示す。上記のように平箔10と波箔20とを重ねて中心電極周りに巻回した結果、円筒状積層体2は、図3に示すように平箔10と波箔20との間の空隙により形成された軸線方向の通路6が中心電極3の周りに渦巻き状に配列した構成となっている。また、後述のように、平箔10、波箔20の表面には排気浄化触媒が担持されており、触媒装置1のケーシング5を内燃機関の排気系に接続して排気を上記軸線方向通路6を通して流すことにより、排気中の有害成分が触媒によって浄化される。
【0026】
平箔10、波箔20は、本実施形態ではともにアルミニウムを含有する鉄系合金等(例えば、20%Cr−5%Al)の金属を用いて、厚さ50ミクロン程度の箔材から構成される。また、以下に説明する実施形態では、これら平箔10、波箔20のいずれか一方、又は両方の表面には必要に応じて予め、例えばアルミナ(Al23)等の金属酸化物からなる厚さ1ミクロン程度の電気的絶縁層が形成されている。このアルミナ層は、電気的絶縁層として機能する他、触媒を担持する担持層としての機能を有するため、上記アルミナ絶縁層を有していない金属箔(以下「生箔」という)を使用して積層体を形成した場合には、積層体形成後に全体を焼成することにより生箔表面に絶縁層を形成する。このアルミナ層には、含浸等により白金Pt、ロジウムRh、パラジウムPd等の触媒成分が担持せしめられる。
【0027】
本発明の電気加熱式触媒装置は、機関始動時に中心電極3と外部電極5との間に電圧を印加して触媒を担持する平箔10と波箔20とに電流を流し、箔10、20の発熱により短時間で触媒を活性化温度(例えば300度Cから400度C程度)まで昇温することを目的としている。しかし、前述の従来技術のように金属箔の巻回し方向に沿って金属箔断面全体に均一に電流を流し、渦巻き円筒状に形成された平箔10と波箔20の全体を均一に加熱するようにしたのでは加熱される部分の熱容量が大きいため温度上昇に時間を要したり、急速加熱のために大電流が必要となる問題がある。
【0028】
本発明は上記の問題を解決するために、金属箔の断面全体に電流を流すのではなく、金属箔中に極めて狭い断面積の電流路を局所的に形成し、この電流路に集中して電流が流すことを可能とする電気加熱式触媒装置を提案するものである。上記のように、局所的に狭い断面積の電流路を設けることにより、電流路部分(すなわち加熱部分)の体積が低減されるため発熱部の熱容量が低くなり、通電により発熱部の急速な温度上昇を得ることができる。また、電流路の断面積を狭く設定することにより、通電時の合計電流量を低く抑えたままで電流路を流れる電流密度を高く設定して電流路単位体積当たりの発熱量を増加させることができるため、加熱部分の熱容量低減と合わせて極めて短時間で加熱部の温度を触媒活性化温度まで上昇させることが可能となる。なお、前述のように局所的な加熱部で触媒が活性化温度に到達して触媒による酸化反応が開始されると、多量の反応熱が発生し加熱部近傍の触媒も活性化温度に到達して酸化反応が開始されるため、上記加熱部で触媒による酸化反応が開始されると、加熱部を中心として連鎖的に触媒の酸化反応が生じるようになり、直ちに金属箔積層体全体が活性化温度まで昇温される。
【0029】
次に、本発明の実施形態を説明する前に参考例として本発明に関連する電気加熱式触媒装置の構造を図4から図8を用いて説明する。
本参考例では、表面に絶縁層が形成された金属箔からなる波箔20と、表面に絶縁層が形成されていない金属箔(生箔)からなる平箔10とを中心電極3周りに巻回して図1に示したような円筒状金属箔積層体を形成しており、局所的に波箔20の絶縁層の絶縁性を破壊して平箔10と接合することにより中心電極3と外部電極4とを接続する半径方向の電流路を形成している。
【0030】
図4は本参考例の円筒状金属箔積層体2の排気入口側端面2aを示す図である。図4において、黒く塗りつぶした部分は波箔20の絶縁層の絶縁性を破壊して、平箔(生箔)10と波箔(絶縁箔)20とが導通可能に接合されている部分(導通接合部分)を示す。図4に示すように、本参考例では、中心電極3の周囲の平箔10と波箔20との数層分は全周にわたって導通接合されている(図4、A)。また、積層体の外周部にも同様に数層の導通接合部(図4、B)が設けられており、これらの導通接合部A、Bの間には中心から放射状に延びる複数の(図4では4つの)導通接合部Cが設けられ、導通接合部AとBとを接続する電流路を形成している。
【0031】
また、図5は図4のV-V 線に沿った断面を示しているが、図5から判るようにこれら導通接合部A、B、Cでは、平箔10と波箔20との接合部は箔の幅方向(すなわち円筒状金属箔積層体2の軸線方向)全体にわたっては設けられてはおらず、端面2aから所定の深さ(例えば3ミリメータ程度)までの範囲のみで平箔10と波箔20とが導通接合されている。
【0032】
図6は平箔10と波箔20との導通接合部の接合方法を示す図である。本参考例では、平箔10と波箔20とを重ねて中心電極3周りに巻回す際に、導通接合部を形成する部分の平箔10と波箔20との間に、波箔20の絶縁層を形成する金属酸化物(本参考例ではAl23)より還元性の大きい金属(例えばジルコニウムZr)を含む所定の幅(本参考例では3ミリメータ)のロウ材箔61を挟んで平箔10と波箔20とを巻回し、円筒状積層体形成している。このように積層体を形成した後、積層体全体を加熱することにより、これらの部分に絶縁層の絶縁性を破壊した接合部が形成される。すなわち、平箔10と波箔20との間に介挿されるロウ材箔には絶縁層を形成する金属(アルミニウム)より還元性が高い金属(ジルコニウムZr)が含まれるため、加熱によりロウ材が溶融すると、ロウ材中のジルコニウムは絶縁層のアルミナから酸素を奪い酸化ジルコニウムを形成する。これにより、絶縁層の接合部ではアルミナが還元されてアルミニウムが析出するため導通可能な接合部が形成される。
【0033】
図7は上記により形成した導通接合部AとCとの境界部分の拡大図である。図7において、黒丸で示した点は図6に示したように、平箔10と波箔20とが導通可能に接合されている部分を示している。前述のように、導通接合部Aでは波箔20の山と谷の部分は全て平箔10と導通接合されているためこの部分の半径方向の電気抵抗は極めて低く、通電時には導通接合部A全体が中心電極3と略同一の電位になっている。また、図示していないが外周側の導通部B(図4参照)も同様にその全体が外部電極4と略同一の電位となっている。一方、導通接合部以外の部分(図7、Dの部分)では平箔10と波箔20とは絶縁層を介して接触しているため、この部分では導通は生じず、導通接合部C以外では半径方向には電流は流れない。このため、電流は導通接合部により形成された4つの半径方向電流路Cのみに集中して流れるようになり、導通接合部は短時間で加熱され触媒活性化温度に到達する。
【0034】
ところが、図4のように導通接合部を設けることにより並列に複数の電流路Cを形成した場合には、各電流路間は周方向に各層の平箔10と波箔20とにより接続されていることになる。従って同じ金属箔層部分で各電流路の電位に差があると、各層の平箔10と波箔20とを通って各電流路間に電流が流れてしまうため、特定の電流路に電流が偏って流れるようになり各電流路に流れる電流がばらつく場合がある。一方、図4のようにロウ材を用いて平箔10と波箔20とを接合していると箔相互の接合部の抵抗を完全に同一にすることは困難である。また、渦巻き状に積層された金属箔に上記のように半径方向の電流路を形成すると各電流路の長さを完全に同一にすることはできないため各電流路の抵抗にも多少のばらつきが生じる。このため、各金属箔層部分で各電流路の電位を同一に保持するのは実際上困難であり、上記のように各電流路を流れる電流にばらつきを生じる場合がある。このような電流のばらつきが生じると各電流路部分で発熱量が異なってくるため、各電流路の昇温速度が同一にならずこれらの部分の触媒が同時に活性化温度に到達しない問題が生じる。
【0035】
そこで、本参考例では図7に示すように、導通接合部Cを連通する各金属箔層に切れ目Eを設けて各層の平箔10と波箔20とを介して導通接合部C相互が連通することを防止している。これにより、各電流路は相互に絶縁され、特定の電流路に偏って電流が流れることがないため、各電流路の発熱量が均一化され、触媒が活性化温度に到達する時間が略同一になる。
次に、図8(A) に別の参考例を示す。上記図7に示した参考例では、各電流路を相互に絶縁するために各層の金属箔それぞれに切れ目Eを設けているが、各層の金属箔に切れ目を設けたのでは金属箔積層体の強度が低下する恐れがある。また、各電流路間の金属箔の長さは外周部になるほど長くなり、それにつれて抵抗も増大するため外周部になるほど各電流路間の抵抗は大きくなり電流が流れにくくなるので外周部の金属箔には必ずしも絶縁部を設ける必要はない。一方、中心部に向かうほど各層における電流路の導通接合部電位は高くなり、逆に電流路間の距離が小さくなるため各電流路間の抵抗も小さくなることから、中心部に近い所では特に金属箔を通って周方向に電流が流れやすくなる。
【0036】
従って、図8(A) の参考例では導通接合部Cと中心側導通接合部Aとの境界をなす平箔105、すなわち高電位電極側に最も近接した金属箔のみに上記切れ目Eを設けた構成としている。このように、各電流路間で最も周方向に電流が流れやすい部分に絶縁部を設けたことにより、金属箔積層体の強度の低下を防止しながら効果的に各電流路を流れる電流を均一にすることが可能となる。
【0037】
図8(B) は上記図8(A) の絶縁部(切れ目)Eを形成する方法の一例を示す図である。図8(B) に示すように、平箔10には中心電極3に巻回した時に中心側導通接合部Aの最外周部になる部分に、波箔の山ピッチPの1/2以下の間隔で適宜な幅のスリットE′を設けてある。この平箔を波箔と重ねて中心電極周りに巻回して箔相互を接合したあと、スリットEの両側部分Lを切除することにより図8(A) に示す切れ目Eを形成することができる。なお、スリットE′の間隔を波箔の山ピッチPの1/2以下としたのは、中心側接合部Aの波箔と平箔との接合部分の間に必ず切れ目が配置されるようにして絶縁を完全にするためである。また、スリットEの両側部分Lの幅を平箔10の幅に対して小さい幅に設定しておけば、スリットEの両側の連通部分の抵抗が比較的大きくなるため、波箔との接合後に必ずしもこの部分を切除しなくてもよい。
【0038】
なお、本参考例では最も高電位側の電極に近接した平箔のみに切れ目Eを設けているが、積層体強度が低下しない範囲で数層の金属箔に同様な切れ目を設けるようにしてもよい。
次に、図9から図10を用いて請求項1の発明に対応する実施形態を説明する。上記実施形態では、図4に示すように導通接合部Cにより、中心電極3側から半径方向に延びる複数の電流路が形成されており、導通接合部C(電流路)は端面2aから3ミリメータ程度の深さにわたって設けられていた。しかし、前述のように電流路の断面積を小さくすれば、それに応じて加熱部の熱容量を低減でき、同時に電流密度を増大することができるため、電流路の断面積はできるだけ小さいことが望ましく、この為には導通接合部Cの端面2aからの深さをできるだけ小さくすることが好ましい。
【0039】
ところが、図6のようにロウ材箔61を挟んで平箔と波箔とを積層する方法では、導通接合部Cの端面からの深さを小さくするためにはロウ材箔61の幅を低減するしか方法がない。一方、接合部の強度を一定以上に維持するためにはある程度の接合面積が必要となり、ロウ材箔61の幅は最低でも3ミリメータ程度以上とする必要があり、図6の方法では電流路の断面積をこれ以上低減することは困難である。
【0040】
そこで、本実施形態では図9に示すような複合ロウ材箔を用いて平箔10と波箔20とを接合することにより、十分な接合強度を維持しながら電流路の断面積を低減している。
図9は本実施形態に使用する複合ロウ材箔90の構造を示す図である。図9に示した複合ロウ材90は所定幅(例えば0.5ミリメータ程度)のジルコニウムZrを含むロウ材箔91の幅方向両側にチタンTiを含むロウ材箔92を配置して、ジルコニウムロウ材箔91をチタンロウ材箔92で挟むようにして接合した構造とされ、本実施形態では例えば8ミリ×3ミリ程度の大きさで厚さ25ミクロン程度に形成されている。この複合ロウ材箔90は、例えば厚さ0.5ミリメータ、幅8ミリメータの適宜な長さのジルコニウムロウ材板の厚さ方向両側を、それぞれ厚さ1.3ミリメータ程度、幅8ミリメータの適宜な長さのチタンロウ材板で挟んで圧接すること等によりジルコニウムロウ材とチタンロウ材の、断面8ミリメータ×3ミリメータの複合棒材を製作し、さらにこの棒材を厚さ25ミクロンに切断することにより形成することができる。
【0041】
ところで、ジルコニウムは前述のように波箔表面の絶縁層を形成するアルミニウムより還元性が大きく、ジルコニウムロウ材を使用することにより波箔表面の絶縁層の絶縁性を破壊して金属箔相互を導通可能に接合することができる。一方、チタンはアルミニウムより還元性が大きいが、ジルコニウムより還元性は小さく、生箔及び箔表面に形成された絶縁層とは良好な接合性を示すものの、絶縁層のアルミナを十分に還元することはできない。このため、チタンロウ材を使用することにより、波箔表面の絶縁層の絶縁性を保持しつつ波箔と平箔(本実施形態では表面に絶縁層を有さない生箔)とを良好に接合することができる。なお、本実施形態において、絶縁層を形成するアルミニウムは請求項1の第1の金属に、チタン、ジルコニウムはそれぞれ第2と第3の金属に相当する。
【0042】
図10(A) (B) は、上記複合ロウ材箔90を用いた波箔20と平箔10との接合部を示す図である。図10(A) に示すように本実施形態では、複合ロウ材90をジルコニウムロウ材91の長手方向(図9で8ミリメータの辺)が金属箔の長手方向と一致するように平箔と波箔との間に介挿して平箔と波箔とを重ねて中心電極周りに巻回す。本実施形態では、波箔の山ピッチは約2.5ミリメータとされているため、このように複合ロウ材箔90を配置することにより、ジルコニウムロウ材箔91は幅0.5ミリメータの接触幅で3つの波箔の山部と接触することになる。
【0043】
また、本実施形態では、図10(A) に示すように複合ロウ材箔90と同一の寸法のニッケルNiを含むロウ材箔93を複合ロウ材箔と平箔(生箔)との間に重ねている。ニッケルロウ材93を使用するのは、ニッケルロウ材はジルコニウムロウ材とチタンロウ材及び生箔と極めて良好な接合性を示すため、生箔とチタンロウ材との接合強度を更に高めることができるためである。なお、ニッケルロウ材を使用せずに直接複合ロウ材90と平箔を接合するようにしてもよい。上記のように複合ロウ材箔90とニッケルロウ材箔93とを平箔10と波箔20との間に配置して積層体を形成した後、全体を加熱することにより平箔10と波箔20とが接合される。
【0044】
図10(B) は上記により形成された、平箔10と波箔20との接合部の詳細を示す図10(A) のB−B線に沿った断面図である。図10(B) に示すように、平箔10と波箔20との間には全体として図5に示したと同様に、端面2aから3ミリメータの深さにわたる接合部が形成され、図5と同程度の接合面積が確保される。しかし、この接合部のうち導通可能な接合部分はジルコニウムロウ材箔91により形成された接合部分(本実施形態では幅0.5ミリメータ)のみであり、その両側のチタンロウ材箔92により形成された接合部分は絶縁性を有している。このため、電流はジルコニウムロウ材箔による接合部分のみに集中して流れ、電流路の断面積がさらに低減される。
【0045】
すなわち、本実施形態によれば平箔10と波箔20との間の接合面積を十分に大きくとって接合強度を確保しながら電流路の断面積のみを更に低減することが可能となる。また、上述のように所定幅のジルコニウムロウ材箔の幅方向両側をチタンロウ材箔で挟むようにして形成した複合ロウ材箔を用いて接合を行うため、ジルコニウムロウ材箔の幅を正確に管理することができ、所望の面積の導通接合部を精度良く形成することが可能となる。
【0046】
次に、図11から図12を用いて、請求項2の発明に対応する実施形態を説明する。
上述の実施形態では、図9に示した複合ロウ材箔を用いて平箔と波箔とを接合することにより接合部面積を確保しつつ導通接合部のみの面積を低減しているが、本実施形態では図9のような複合ロウ材箔を使用せずに導通接合部の面積を低減している。
【0047】
本実施形態では、予めジルコニウムを含むロウ材を適宜な径(例えば0.1ミリメータ程度)の円柱または球状に形成しておき、このジルコニウムロウ材の円柱または球(図11、110)を、図11に示すように導通接合部を形成しようとする位置の波箔20絶縁層表面に圧着することにより、絶縁層表面に所定の径(例えば0.5ミリメータ程度)のジルコニウムロウ材の円板(図12、110a)を付着させておく。また、所定幅(例えば、3ミリメータ程度)のチタンロウ材箔111には、上記圧着されたジルコニウムロウ材の径と同じ径の開口112を設けておき、平箔10と波箔20とを重ねて巻回す際に、上記圧着されたジルコニウムロウ材円板110aを上記チタンロウ材箔の開口112に挿入するようにチタンロウ材箔を配置して平箔10と波箔20との間に介挿する(図12参照)。このとき、平箔10(生箔)とチタンロウ材箔111との接合強度を増すために、図12に示すように平箔10とチタンロウ材箔111との間に更にニッケルロウ材箔113を介挿するようにしてもよい。
【0048】
この状態で、平箔10と波箔20とを中心電極周りに巻回して金属箔積層体を形成した後、積層体全体を加熱することにより接合部には、ジルコニウムロウ材円板110aにより接合された円板110aの径に等しい径の導通接合部と、その周囲にチタンロウ材箔111により接合された絶縁性を有する接合部分とが形成される。従って、本実施形態によれば、図9の複合ロウ材箔を使用した場合と同様に、平箔と波箔との接合面積を減少させることなく導通接合部(電流路)のみの面積を低減させることができる。また、本実施形態では、ジルコニウムロウ材の円柱または球(図11、110)を波箔20の絶縁層表面に圧着して形成したジルコニウムロウ材円板(図12、110a)の径により導通接合部の面積が決まるため、ジルコニウムロウ材円柱または球を圧着する際の押圧力を管理することにより円板の径(すなわち導通接合部の面積)を正確に管理することが可能となる。なお、本実施形態においても、絶縁層を形成するアルミニウムは請求項2の第1の金属に、チタン、ジルコニウムはそれぞれ第2と第3の金属に相当する。
【0049】
次に、図13から図14を用いて請求項3の発明に対応する実施形態を説明する。
本実施形態では、図9に示した複合ロウ材箔90の代わりに、ニッケルロウ材箔上にジルコニウムロウ材の線材とチタンロウ材の線材とを配列して構成した複合ロウ材箔を使用して、接合部を形成する。
【0050】
図13は、本実施形態に使用する複合ロウ材箔130の構成を示している。図13の複合ロウ材箔130は、例えば、ニッケルロウ材箔131上にジルコニウムロウ材の線材132を所定の幅(例えば0.5ミリメータ幅)に配列し、その両側にチタンロウ材の線材133を配列し、圧接により上記それぞれの線材132、133をニッケルロウ材箔131上に接合している。本実施形態では、ジルコニウムロウ材の線材の本数により、ジルコニウムロウ材の線材132の配列幅を管理している。本実施形態では、各線材132、133の直径は25ミクロンとされ、0.5ミリメータの配列幅を得るために20本のジルコニウムロウ材の線材132が配列されている。また、図13に示すように、全体の複合箔の大きさは長さ8ミリメータ、幅3ミリメータ程度とされる。
【0051】
図14は上記の複合ロウ材130を用いた平箔10と波箔20との接合部を示す図である。本実施形態では、複合ロウ材130をジルコニウムロウ材の線材132の長手方向(図13で8ミリメータの辺)が金属箔の長手方向と一致するように平箔と波箔との間に介挿して平箔と波箔とを重ねて中心電極周りに巻回し、全体を加熱することにより接合部が形成される。本実施形態では、波箔の山ピッチは約2.5ミリメータとされているため、一つの複合ロウ材130を用いて3つの波箔の山と平箔とが接合される。また、図9の複合ロウ材箔90を用いて接合した場合と同様に、各接合部にはジルコニウムロウ材の線材132による幅0.5ミリメータの導通接合部と、その両側にチタンロウ材の線材133による絶縁性を保持した接合部とが形成されるため、図9の複合ロウ材90を用いた場合と同様に、全体として平箔と波箔との接合面積を減少させることなく導通接合部のみの面積を低減することが可能となる。
【0052】
さらに、本実施形態では、ジルコニウムロウ材とチタンロウ材とを線材として形成しているため、それぞれの配列幅を配列する線材の本数で管理でき、導通接合部の面積を容易かつ正確に管理することが可能となる。
なお、本実施形態においても、絶縁層を形成するアルミニウムは請求項3の第1の金属に、チタン、ジルコニウムはそれぞれ第2と第3の金属に相当する。
【0053】
次に、図15(A) から(C) を用いて請求項4の発明に対応する実施形態について説明する。
前述の各実施形態では金属箔の絶縁層を接合する際に導通接合部を形成するために、ジルコニウム等の還元性の大きい金属を含むロウ材を使用して絶縁層の金属酸化物を還元しながら接合を行っており、いわば化学的反応を用いて絶縁層を除去していた。しかし、このような化学的反応は温度条件やロウ材の厚さのばらつきなどに影響をうけるため、上記のような方法で導通接合部を形成すると導通接合部の抵抗値等にばらつきを生じ、電流路の抵抗値を均一に管理することが困難な場合がある。
【0054】
そこで、本実施形態ではジルコニウムロウ材等の化学的方法を用いずに導通接合部を形成し、接合部の抵抗値のばらつきを低減するようにしている。
図15(A) は、本実施形態で使用する波箔20を示す。本実施形態では、絶縁層を形成した波箔20の、導通接合部を形成しようとする位置に、予め機械加工などにより絶縁層(例えば厚さ1から3ミクロン程度)を完全に除去しうる深さの、所定幅(例えば、0.5ミリメータ程度)の溝部150を形成しておく。また、この波箔20と平箔10との接合部を形成するために使用するロウ材は、ニッケルロウ材箔とチタンロウ材箔との複合ロウ材箔とし、ジルコニウムロウ材箔は使用しない。
【0055】
図15(B) は本実施形態で使用する複合ロウ材箔151を示す。複合ロウ材箔151は、全体の長さが8ミリメータ、幅が3ミリメータ程度の大きさであり、中央部に長手方向(図15(B) で8ミリメータの辺の方向)に延設された凸部153を有するニッケルロウ材箔152上を使用し、この凸部153の両側にチタンロウ材箔154を圧接等により接合した構成とされる。上記凸部153の幅は前記波箔の溝部150の幅(本実施形態では0.5ミリメータ)と略等しくなるように設定されている。また、図15(B) に示すようにニッケルロウ材箔152とチタンロウ材箔154の厚さはそれぞれ25ミクロン程度であり、凸部153の高さはニッケルロウ材箔152とチタンロウ材箔154とを接合後、凸部153の先端が、前記波箔の溝部150の深さに相当する高さだけチタンロウ材箔154から突出するように設定されている。
【0056】
図15(C) は、上記の複合ロウ材箔151を用いた平箔10と波箔20との接合部を示す断面図である。本実施形態では、波箔20に形成した溝部150に上記複合ロウ材箔151の凸部153を嵌挿するように複合ロウ材151を平箔10(生箔)と波箔20との間に配置してロウ付け接合を行う。本実施形態でも波箔20の山ピッチは2.5ミリメータとされており、ニッケルロウ材箔152の凸部153が波箔20の3つの山の溝部150に嵌挿された状態でロウ付けが行われる。これにより、平箔と波箔とは絶縁層を介さずにニッケルロウ材箔151の凸部153によって直接接合され、導通接合部が形成される。また、この場合も導通接合部の両側にはチタンロウ材箔154による絶縁性を保持した接合部が形成されるため、全体の接合面積を低下させることなく、導通接合部のみの面積を低減することができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように機械的に波箔の絶縁層を除去しているため、絶縁層除去部分の面積が容易かつ正確に管理できるとともに、絶縁層除去部を直接導通可能に接合することにより導通接合部の抵抗を正確に管理することが可能となる。
なお、本実施形態において、絶縁層を形成するアルミニウムは請求項4の第1の金属に、ニッケルロウ材は金属箔相互を導通可能に接合するロウ材、チタンは第2の金属にそれぞれ相当する。
【0058】
次に、図16を用いて請求項5の発明に対応する実施形態について説明する。本実施形態においても、図15の実施形態と同様、化学的方法によらず絶縁層を除去して導通接合部が形成される。
本実施形態においては、図16(A) に示すように、導通接合部を形成する波箔20の山部には、予めレーザー加工或いはドリル加工等の機械的手段により所定の径(例えば0.4ミリメータ程度)の凹部(図16では貫通孔)161が形成される。また、本実施形態においても、平箔(生箔)と波箔との接合には上述の各実施形態と同様にチタンロウ材箔165とニッケルロウ材箔166とを積層した箔163が使用されるが、この積層ロウ材箔にも、予め導通接合部に相当する位置に凹部161と同じ径の孔162が機械加工により形成される。
【0059】
次いで、上記積層ロウ材箔163は波箔20上に凹部161と孔部162とが整合する位置に、チタンロウ材箔165側が波箔と接するように配置され、この状態で凹部161と孔部162とに、所定の径の球状に形成したニッケルロウ材164が圧入される(図16(B) )。ここで、ニッケルロウ材球164の径は、凹部161及び孔部162の径よりやや大きく設定され、本実施形態では例えば0.5ミリメータ程度とされる。また、本実施形態においても、上記ニッケルロウ材とチタンロウ材との積層ロウ材箔163は長さ8ミリメータ、幅3ミリメータの大きさに形成されており、長辺を波箔長手方向に沿って配置することにより1つの積層ロウ材箔163が波箔20の3つの山部に接するようになっている。このため、図16(C) に示すように、ニッケルロウ材球164の圧入により積層ロウ材箔163は波箔20上に固定された状態になる。この状態で、平箔10(生箔)と波箔20とを重ねて中心電極周りに巻回して積層体を形成した後、積層体の全体を加熱することにより、平箔と波箔との間に接合部が形成される。
【0060】
上記から判るように、本実施形態においても、平箔10と波箔20とは絶縁層を介さずにニッケルロウ材164によって直接接合され、導通可能な接合部が形成される。また、導通接合部の周囲にはチタンロウ材箔165による絶縁性を保持した接合部が形成されるため、全体の接合面積を低下させることなく、導通接合部のみの面積を低減することができる。
【0061】
また、本実施形態においては、凹部(または貫通部)を機械的に形成することにより金属箔の絶縁層を除去しているため、絶縁層除去部分の面積を容易かつ正確に管理できるとともに、絶縁層除去部を直接導通可能に接合することにより導通接合部の抵抗を正確に管理することが可能となる。さらに、本実施形態では接合用の積層ロウ材箔はニッケルロウ材の圧入により波箔上に固定されるため、接合部の位置を正確に管理できる利点がある。
【0062】
なお、本実施形態においても、絶縁層を形成するアルミニウムは請求項5の第1の金属に、ニッケルロウ材は金属箔相互を導通可能に接合するロウ材、チタンは第2の金属にそれぞれ相当する。
次に、図17から図21を用いて本発明に関連する電気加熱式触媒装置の別の参考例を示す。
【0063】
上述の実施形態はいずれも、平箔には表面に絶縁層を有さない生箔が使用され、波箔には表面に絶縁層を有する絶縁箔が使用されていたが、本参考例では箔長手方向に中心電極3からの距離に応じて絶縁箔を使用する部分と生箔を使用する部分とが使い分けられている。図17(A) から(D) は本参考例における絶縁箔と生箔との箔長手方向の位置関係を示しており、図中斜線で示した部分は絶縁箔が使用される部分を、その他の部分は生箔が使用される部分を示している。図17(A) から(D) に示すように、中心電極3側から、平箔、波箔ともに生箔の部分(図17(A) )、平箔、波箔ともに絶縁箔の部分(図17(B) )、平箔、波箔ともに、絶縁箔と生箔のままの部分とが箔長手方向に交互に接続された複合箔の部分(図17(C) )、及び平箔、波箔ともに生箔のままの部分(図17(D) )、とが箔長手方向に接続された構成となっている。(図17(A) から(D) )は平箔のみについて示すが、この平箔と組み合わされる波箔についても同様な構成とされている)。
【0064】
図18(A) は、図17(A) から(D) の生箔と絶縁箔とのそれぞれの接合部分の構成を示す図である。本参考例では平箔、波箔ともに、生箔と絶縁箔との長手方向接続部分は絶縁性を保持するように接合されている。この接合部分では、図18(A) に示すように生箔181と絶縁箔182とは箔の幅方向全体に渡って生箔181側からニッケルロウ材箔183とチタンロウ材箔184とを配してロウ付接合されており、チタンロウ材箔184により接合部では絶縁箔182の絶縁層の絶縁性が保持されたまま接合が行われる。
【0065】
また、生箔181と絶縁箔182との絶縁を更に完全にするために、図18(B) に示すように生箔181と絶縁箔182との間に、生箔181側からニッケルロウ材箔183、第1のチタンロウ材箔184、第1の予備絶縁箔185、アルミナガラス系接着剤186、第2の予備絶縁箔187、第2のチタンロウ材箔188を配置してロウ付接合を行っても良い。なお、上記予備絶縁箔185、186は通常の絶縁箔と同じ材質を用いて絶縁層の厚さのみを通常より厚くして絶縁性を高めたものであり、アルミナガラス系接着剤186は絶縁性を有する接着剤である。
【0066】
図19は上記のように構成された平箔と波箔とを中心電極3周りに巻回して形成した円筒状金属箔積層体の端面2aを示す部分である。図19において黒く塗りつぶした部分は絶縁箔が位置する部分を、それ以外の部分は生箔が位置する部分を示している。すなわち、本参考例では図17において、生箔が使用される部分と絶縁箔が使用される部分の中心電極からの距離は、箔を巻回した時に絶縁箔が図19に示した位置に来るように設定されている。図19から判るように、本参考例の円筒状金属箔積層体では、中心電極から所定の数の層まで(図19に191で示す部分)は生箔のみにより構成され、この層の外側1層(図19に192で示す)は全周にわたり絶縁箔が位置し、この絶縁箔層192の外側の所定の数の層までは、図19に193で示した部分のみが絶縁箔、その他の部分(図19に194で示す)は生箔となるようにされている。また、この部分の外側の層(図19に195で示す部分)は全て生箔で構成される。すなわち、図19において191、192で示す部分は、それぞれ図17(A) 、17(B) の部分に相当し、193と194の部分は図17(C) に、また195の部分は図17(D) の部分に相当する。
【0067】
図20は、図19にAで示した部分の拡大図である。図20においても図19と同様黒く塗った箔は絶縁箔を示し、他の部分は生箔を示している。本参考例では、生箔層191では生箔は相互に導通可能に接続され、通電時には中心電極と略同一の電位になる。また、絶縁箔部分193及び絶縁箔部分193と絶縁箔層192との間では絶縁箔相互はそれぞれ導通可能に接合され、電流路(加熱部分)を構成している。また、生箔部194と絶縁箔層192とは絶縁箔の絶縁層の絶縁性を保持したまま接合されており、生箔部194と191(すなわち中心電極)とは導通していない。また、外周側の生箔層195では、生箔は相互に導通可能に接合されており、通電時には外部電極と略同一の電位になる。
【0068】
図21(A) から(B) は、図20の各金属箔間の接合部の構成を示す図である。図21(A) は図20に符号21Aで示す絶縁箔相互間の接合部分である。この部分では、平箔10と波箔20(ともに絶縁箔)は幅0.3ミリメータ、厚さ25ミクロン程度のジルコニウムを含むロウ材箔211を介して相互に導通可能にロウ付接合されている。また、図21(B) は図20に符号21Bで示す生箔相互間の接合部分の構成を示している。図21(B) に示すように、この部分では、平箔10と波箔20(ともに生箔)は、幅3ミリメータ、厚さ25ミクロン程度のニッケルを含むロウ材箔212を介して導通可能にロウ付接合されている。
【0069】
また、図21には示していないが、図20の符号21C部分、すなわち絶縁層192の絶縁箔と生箔との接合部分では、図18(A) に示したと同様にチタンロウ材箔とニッケルロウ材箔とを介してロウ付接合が行われており、箔相互の絶縁性が保持されている。なお、この部分も図18(B) に示したように、予備絶縁箔とアルミナガラス接着剤を用いた接合を行って絶縁性をさらに高めるようにしても良い。なお、上記接合部分21Aから21Cの各接合部分は、平箔と波箔との間にそれぞれの接合部に応じたロウ材箔を挟んで巻回し、円筒状金属箔積層体を形成した後に積層体全体を加熱することによりロウ付接合を行う。
【0070】
次に、上記のように構成した円筒状金属箔積層体に通電した場合について説明する。図19において中心電極3と外部電極5との間に電圧を印加すると金属箔中に電流が流れるが、この時、生箔部分191は箔が相互に導通可能に接合されているため電気抵抗は極めて低く、この部分は略中心電極3と同一の電位になる。また、生箔部分194と195においても生箔は相互に導通可能に接合されているため、通電時には同様に外部電極5と略同一の電位になる。
【0071】
一方、生箔部分194と191との間は絶縁箔層192が設けられ、絶縁されているため生箔191から194には電流は流れない。また、絶縁箔部分193と生箔部分194との間も絶縁を保持して接合されているため、電流は流れない。従って、本参考例によれば電流は生箔部分191から絶縁箔部分193(電流路部分)のみに集中してながれるようになる。一方、この部分では絶縁箔相互は、積層体端面2aから極めて浅い範囲(本参考例では0.3ミリメータ程度)でしか接合されておらず、電流路の断面積は小さいため、加熱部分の熱容量低下と電流密度の増大により速やかな加熱が得られる。また、本参考例では、加熱部分の導通接合部の面積は小さくなるが、絶縁箔部分以外の生箔相互間はニッケルロウ材箔により強固に接合されているため、積層体全体としての接合強度は十分に大きく保たれ、全体としての接合強度を維持しながら導通接合部の面積のみを低減することが可能となる。
【0072】
次に、図22から図24を用いて本発明に関連する電気加熱式触媒装置の別の参考例を説明する。
図17から図21に示した参考例では、箔長手方向に絶縁箔と生箔とを交互に接合した複合箔を使用したが、本参考例では箔幅方向に絶縁箔と生箔とを交互に接合した複合箔が使用される。
【0073】
図22は、本参考例で使用する複合箔の構成を示している。図22において、複合箔220は、幅bの絶縁箔221の幅方向両側にそれぞれ幅a及び幅cの生箔222、223とを接合した長尺の帯材として形成される。また、絶縁箔221とその両側の生箔222、223とは図22に示すようにチタンロウ材箔224とニッケルロウ材箔225とを介して接合され、絶縁箔221と生箔222、223との間は絶縁が保たれている。また、図22は平箔の場合を示しているが、波箔についても同じ構成とされる。なお、絶縁箔221と生箔222、223の幅a、b、cは任意に設定することができるが、本参考例では、後述のように形成される加熱部の位置をできるだけ、排気入口側に近づけるため、上流側に位置する生箔222の幅aは下流側の生箔223の幅cより小さく設定されており、例えば、a=5ミリメータ、b=5ミリメータ、c=7ミリメータ程度とされている。
【0074】
更に、本参考例では、図22に示すように生箔222と223とを導通可能に接続して加熱部を構成する複数の導電体226が所定間隔で設けられている。本参考例では導電体226として直径50ミクロン程度のニッケル合金の線材が用いられており、線材226と生箔222、223とは厚さ20ミクロン程度のニッケルロウ材箔227を介して導通可能に接合されており、線材226と絶縁箔221とは厚さ20ミクロン程度のチタンロウ材箔228を介して絶縁性を保持したまま接合されている。これにより、後述のように生箔222が中心電極に接続され、生箔223が外部電極に接続されると、電流は生箔222から線材226のみを通って生箔223に流れることになり、線材226が発熱することになる。
【0075】
なお、本参考例では図22に示した平箔のみに線材226を設けているが、波箔のみ、または平箔と波箔との両方に線材226を設けることも可能である。
上記のように構成した加熱部226を有する複合箔220は、次に、図23に示すように同じく複合箔として構成された波箔230と重ねて巻回され、円筒状積層体が形成される。この時、図24(A) に示すように、中心電極3は排気入口側の生箔222のみに接続され、外部電極5は排気出口側の生箔223のみに接続される。また、生箔部分の平箔と波箔とは間にニッケルロウ材箔を挟んで、絶縁箔部分の平箔と波箔とは間にチタンロウ材箔を挟んでそれぞれ巻回し、積層体形成後に全体を加熱することにより、それぞれの生箔部分の平箔と波箔とは導通可能に、また、絶縁箔部分の平箔と波箔とは絶縁を保持しながら平箔と波箔との接合が行われる。
【0076】
図24(A) (B) は、上記により形成された円筒状金属箔積層体2中の線材(加熱部)226の配置を示す。図24(B) は積層体226の軸線に直角な断面での加熱部226の配置を示している。図24(B) に示すように、本参考例では加熱部226は、箔を巻回して積層した場合に、各層に8点ずつ3層にわたり計24個所に配置され、中心から放射状に加熱部が配列するように平箔状の線材226配置が決められている。
【0077】
また、図24(A) は円筒状金属箔積層体2の軸線方向断面を示す。上述のように、積層体2の排気入口2a側は互いに導通可能に接続された平箔と波箔の生箔部分222が形成され、この部分に中心電極3が接続される。また、積層体2の排気出口側部分は同様に互いに導通可能に接続された平箔と波箔の生箔部分223が形成され、この部分には外部電極としてのケーシング5が接続される。また、生箔部分222と223との間には絶縁箔部分221が形成され、生箔222と223との絶縁が保持される。一方、加熱部(線材)226は絶縁箔部分221との絶縁を保持しながら生箔部分222と223とを導通可能に接続している。このため、中心電極3と外部電極5との間に電圧が印加されると、電流は中心電極3に接続された生箔部分222から、外部電極5に接続された生箔部分223に向けて、計24個所に配置された加熱部(線材)226のみを通って流れることになる。すなわち、前述の各例では、加熱部(電流路)は積層体2の排気入口側端面2aに形成され、電流は積層体2の半径方向に流れていたが、本参考例では加熱部226は積層体の端面から所定の距離の積層体中に形成され、電流は積層体2の軸線方向に流れる点が相違している。
【0078】
本参考例によれば、加熱部226、すなわち電流路の断面積は線材の径により決定されるため、電流路の断面積を極めて容易に低減することが可能となるとともに、積層体全体の接合強度を各生箔相互及び各絶縁箔相互の接合面積を増すことにより容易に増大させることができる。このため、積層体の機械的強度を増大させながら同時に電流路の断面積のみを低減することが可能となり、加熱部の熱容量低減と電流密度の増大により加熱部の昇温時間を短縮することができる。
【0079】
また、本参考例によれば、金属箔の巻回しの前に予め加熱部を金属箔上に形成することができるため、加熱部形成の際の自由度が大幅に向上するとともに加熱部形成の際の作業が容易かつ正確に行えるという利点がある。
次に、図25から図26を用いて本発明に関連する電気加熱式触媒装置の他の参考例を説明する。
【0080】
上述の図4から図21の例ではいずれも、円筒状金属箔積層体を形成する際に平箔と波箔との間の所定の位置にロウ材箔を介挿して積層を行い、積層体形成後に全体を加熱することにより導通接合部を形成していたが、本参考例では円筒状積層体を形成した後に、積層体端面を放電加工することにより所定の位置に導通接合部を形成するようにした点が相違している。
【0081】
図25(A) は、本参考例により円筒状積層体2の排気入口側端面2aに形成される導通接合部(電流路)250の形状の一例を示している。また、図25(B) 、(C) はそれぞれ図25(A) のB−B線、C−C線に沿った断面を示す。図25(B) 、(C) から判るように、本参考例では、端面2aから導通接合部250のみが所定高さの凸状に形成された構造とされる。
【0082】
図26は上記導通接合部250の形成方法を示す図である。本参考例では、上述の各例とは異なり、平箔、波箔ともに予め絶縁層が表面に形成された絶縁箔を使用する。また、これらの平箔と波箔とを重ねて中心電極3周りに巻回す際にはロウ材箔を使用せずにそのまま巻回して円筒状金属箔積層体2を形成する(図26(A) )。
次いで、上記により形成された積層体2は排気入口側端面2aから所定の深さまで、ロウ材スラリー261に浸漬される(図26(B) )。ここで使用するロウ材スラリーは、絶縁箔の絶縁層の絶縁を破壊して絶縁箔相互を導通可能に接合できるように、絶縁層の金属酸化物を還元可能な還元性の大きい金属を含むロウ材が使用され、本参考例ではジルコニウムZrを含むロウ材スラリーが使用される。
【0083】
また、ロウ材への浸漬深さは、最終的に形成する電流路の形状や積層体のサイズなどに応じて設定するが、概略1ミリメータから10ミリメータの範囲とされる。
上記ロウ材スラリーに浸漬後、積層体は、図26(C) に示すように吸引装置263に装着され、図に矢印で示した方向に吸引することにより、スラリー浸漬部262から付着した余剰のスラリーを空気流により除去する。
【0084】
また、上記により余剰のスラリーを除去した後、積層体2を加熱炉内で所定温度条件で加熱することにより、浸漬部262のロウ付接合を行う。これにより、浸漬部262では絶縁箔の絶縁層が破壊されて、各平箔と波箔とは積層体の端面2aからロウ材スラリーの浸漬深さに等しい範囲まで導通接合される。
上記により端面2aに導通接合部を形成した積層体2は、次に放電加工機の油槽264内に設置され、後述する放電加工用電極265を用いて放電加工を行い、図25に示した形状の導通接合部250のみを残して他の導通接合部を積層体端面から除去する(図26(D) )。これにより、放電加工後の積層体端面2aには図25の形状の導通接合部250が形成されることになる。
【0085】
ここで、本参考例に使用する放電電極265の形状を図27に示す。本参考例で使用する放電電極265は、積層体端面の径と同一の径の円板状の形状をしており、電極265の放電面には、形成する電流路250(図25)の凸形状に対して相補的形状をなす凹部266が設けられている。
本参考例では、絶縁箔を用いて積層体2を形成した後、上記のように積層体2の端面2aに形成された導通接合部を放電加工により除去して所望の形状の電流路250のみを残すようにしているため、電流は電流路250のみに集中して流れるようになり、加熱部の熱容量が低減されるとともに、電流密度が増大して加熱部の速やかな温度上昇を得ることができる。
【0086】
また、本参考例によれば、予め導通接合部を形成する位置にロウ材箔を配置して箔の巻回しを行う必要がないため、電流路(導通接合部)の形成を極めて容易に精度良く行うことができる。
さらに、本参考例では放電加工により電流路の形成をおこなうため、放電電極の形状を変えることにより電流路の形状を自由に設定できる。図28(A) 〜(C) は上記以外の電流路(250)の形状と、この電流路の形成に使用する電極形状の例を示す。また、本参考例によれば、電流路の形状は放電電極の形状を変えることにより、図25、図28以外にも自由に設定できるため、電流路(導通接合部)の形状設定の際の自由度が大きくなるとともに、所望の形状の電流路を容易かつ正確に形成できる利点がある。
【0087】
なお、本参考例では、積層体端面全体の導通接合部を形成する際に、ロウ材スラリーに浸漬してロウ付を行っているが、上記各参考例と同様に平箔と波箔とを巻回す際にスラリーの浸漬深さに相当する幅のジルコニウムロウ材箔を介挿して積層体形成後に加熱を行うようにして積層体端面全体に導通接合部を形成し、その後放電加工を行うようにしてもよい。また、円筒状金属箔積層体形成後、ケーシング5内に積層体を装着してからロウ付け、放電加工等を行うようにすることも可能である。
【0088】
【発明の効果】
各請求項に記載した発明によれば、電気加熱式触媒の通電時に電流を所定の電流路のみに集中して流すことができるため、加熱部(電流路)の熱容量が低減されるとともに電流密度を増大させることができ、これにより加熱部の速やかな昇温が得られ、機関始動時に触媒全体が活性化するまでの時間を大幅に短縮できるという効果に加えて更に、箔接合部の全体の接合面積を大きくとって積層体の接合強度を確保しながら、同時に電流路(導通接合部)のみの断面積を極めて小さく設定することが可能となるため、さらに熱容量の低減と電流密度の増大とを図ることができ、急速な昇温が可能となる効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電気加熱式触媒装置の構造を示す図である。
【図2】円筒状金属箔積層体の構造を説明する図である。
【図3】図2のIII-III 線に沿った断面図である。
【図4】電気加熱式触媒装置の参考例の電流路形状を説明する図である。
【図5】図4のV-V 線に沿った断面図である。
【図6】図4の金属箔接合部の構成を示す図である。
【図7】図4の導通接合部分の拡大図である。
【図8】電気加熱式触媒装置の別の参考例を説明する図である。
【図9】請求項1の発明に対応する実施形態に使用する複合ロウ材の構造を示す図である。
【図10】図9の複合ロウ材による接合部を示す図である。
【図11】請求項2の発明に対応する実施形態を説明する図である。
【図12】図11の実施形態の接合部の構成を説明する図である。
【図13】請求項3の発明に対応する実施形態を説明する図である。
【図14】図13の実施形態による接合部の拡大図である。
【図15】請求項4の発明に対応する実施形態を説明する図である。
【図16】請求項5の発明に対応する実施形態を説明する図である。
【図17】電気加熱式触媒装置の別の参考例を説明する図である。
【図18】図17の複合箔の接合部構成を示す図である。
【図19】図17の参考例の円筒状金属箔積層体の排気入口側端面を示す図である。
【図20】図19のA部拡大図である。
【図21】図19の各金属箔の接合部構成を示す図である。
【図22】電気加熱式触媒装置の別の参考例を説明する図である。
【図23】図22の参考例の金属箔積層状態を説明する図である。
【図24】図22の参考例の加熱部配置を示す図である。
【図25】電気加熱式触媒装置の別の参考例を説明する図である。
【図26】図26の参考例の電流路形成方法を説明する図である。
【図27】図26で使用する放電電極の形状を示す図である。
【図28】図25とは異なる電流路の形状と、それに対応する放電電極形状を示す図である。
【符号の説明】
1…電気加熱式触媒装置全体
2…円筒状金属箔積層体全体
2a…積層体排気入口側端面
3…中心電極
5…ケーシング(外部電極)
10…平箔
20…波箔
61…ロウ材箔

Claims (5)

  1. 金属製平箔と波箔とを、該平箔と波箔との少なくとも一方の金属箔表面に形成した第1の金属酸化物からなる絶縁層を介して重ね、中心電極回りに巻回して外周部に電極を接続して構成した電気加熱式触媒装置において、前記平箔と波箔とを前記第1の金属より還元性の大きい第2の金属を含むロウ材で該第2の金属より還元性の大きい第3の金属を含む所定幅のロウ材の幅方向両側を挟んで形成したロウ材を介してロウ付接合することにより形成された、前記第3の金属を含むロウ材の幅の導通部を前記金属箔の絶縁層に備えた電気加熱式触媒装置。
  2. 金属製平箔と波箔とを、該平箔と波箔との少なくとも一方の金属箔表面に形成した第1の金属酸化物からなる絶縁層を介して重ね、中心電極回りに巻回して外周部に電極を接続して構成した電気加熱式触媒装置において、前記平箔と波箔とを、前記第1の金属より還元性の大きい第3の金属を含む円柱状または球状のロウ材を前記金属箔絶縁層表面に圧着して形成した所定の径のロウ材と、前記第3の金属より還元性が小さく前記第1の金属より還元性の大きい第2の金属を含むとともに前記圧着された第3の金属を含むロウ材の部位に対応する部位に前記第3の金属を含むロウ材を挿通する開口を有する箔状ロウ材とを介してロウ付接合することにより形成された、前記第3の金属を含むロウ材の径の導通部を前記金属箔の絶縁層に備えた電気加熱式触媒装置。
  3. 金属製平箔と波箔とを、該平箔と波箔との少なくとも一方の金属箔表面に形成した第1の金属酸化物からなる絶縁層を介して重ね、中心電極回りに巻回して外周部に電極を接続して構成した電気加熱式触媒装置において、前記平箔と波箔とを、所定幅に配列された前記第1の金属より還元性の大きい第3の金属を含む線状のロウ材と、該第3の金属を含む線状ロウ材の所定幅の配列の両側に金属箔表面に沿って配列された、前記第3の金属より還元性が小さく前記第1の金属より還元性の大きい第2の金属を含む線状ロウ材とを介してロウ付接合することにより形成された、前記第3金属を含む線状ロウ材の配列幅の導通部を前記金属箔の絶縁層に備えた電気加熱式触媒装置。
  4. 金属製平箔と波箔とを、該平箔と波箔との少なくとも一方の金属箔表面に形成した第1の金属酸化物からなる絶縁層を介して重ね、中心電極回りに巻回して外周部に電極を接続して構成した電気加熱式触媒装置において、表面に前記絶縁層を有する金属箔に局所的に前記絶縁層を除去した部分を設け、前記平箔と波箔とを、該絶縁層除去部分に配置され金属箔相互を導通可能に接合するロウ材と、該ロウ材に隣接して配置された前記第1の金属より還元性の大きい第2の金属を含むロウ材とを介してロウ付接合することにより形成された、前記絶縁層除去部分面積に等しい面積の導通接合部を前記金属箔に備えた電気加熱式触媒装置。
  5. 金属製平箔と波箔とを、該平箔と波箔との少なくとも一方の金属箔表面に形成した第1の金属酸化物からなる絶縁層を介して重ね、中心電極回りに巻回して外周部に電極を接続して構成した電気加熱式触媒装置において、表面に前記絶縁層を有する金属箔は局所的に形成された凹部を備え、前記平箔と波箔とを、該凹部に嵌挿された金属箔相互を導通可能に接合するロウ材と、該ロウ材の周囲に配置された前記第1の金属より還元性の大きい第2の金属を含むロウ材とを介してロウ付接合することにより形成された、前記凹部面積に等しい面積の導通接合部を前記金属箔に備えた電気加熱式触媒装置。
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