JP3743124B2 - 燃料噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料噴射装置、特に、ディーゼルエンジンに用いられる蓄圧式燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、蓄圧式(コモンレール式)燃料噴射装置は、蓄圧室から供給される高圧燃料を燃料噴射弁の内部に設けた制御室に導入して、燃料制御弁のニードル弁を下降させ、このニードル弁を常閉状態に保ち、さらに、制御室内の燃料を燃料排出路にリークさせ、制御室内を減圧することで、ニードル弁を上昇させ、このニードル弁を開いて燃料噴射孔より燃料噴射をする構成である。
【0003】
このような、従来の燃料噴射装置において、燃料噴射率は、ニードル弁先端の弁開度及び弁孔の大きさに左右される。
すなわち、ニードル弁が上昇して、燃料噴射孔への流路を開く課程において、その流路面積が燃料噴射孔より小さい間は、その流路面積により燃料噴射率が規定され、燃料噴射孔への流路面積が、燃料噴射孔の断面積より大きくなった後は、燃料噴射孔の断面積により燃料噴射率が規定される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
コモンレール式では、高圧状態で燃料が供給されるため、噴射初期から必要以上の量の燃料が噴射される。エンジン性能を向上させるため、本来は、進角させ、燃料噴射タイミングを早めたいが、燃料噴射初期の燃料噴射量が多すぎると、燃焼初期に急激な燃焼による過度の燃焼騒音を伴うこととなる。そこで、燃料噴射制御の初期には噴射率を下げ噴射量を抑えることで進角させ、初期の燃焼を抑え燃焼騒音を低減する必要がある。一方、短期間で噴射を完了しなければならないので、噴射中期以降は、燃料噴射率を上げる必要がある。
【0005】
このような要求に対し、前記従来例では、燃料噴射孔への流路の断面積と、燃料噴射孔の断面積とで燃料噴射率パターンを決定しているため、燃料噴射率の変更に自由度がなく対応できない。
【0006】
そこで、燃料噴射の初期には低噴射率とし、噴射後期には高噴射率となるよう制御する燃料噴射装置が、特開平5−71438号公報に提案されている。
この装置は、燃料噴射弁の燃料噴射孔を開閉するノズルニードルに作用する背圧を保持する制御室の圧力を切替弁によって燃料の供給経路側である高圧室と前記燃料の戻し経路(燃料排出路)側である低圧室とに切替え制御して、前記燃料噴射孔より燃料を噴射する燃料噴射装置において、前記切替弁の前記低圧側と直列に配設され、該低圧側の燃料の流れを遮断する第1の状態と、前記前記低圧側の燃料の一部を逃がす第2の状態と、前記低圧側の燃料を完全に逃がす第3の状態との少なくとも3つの状態を取る制御弁と、無噴射時には前記切替弁を高圧側とするとともに前記制御弁を第1の状態とし、噴射初期では前記切替弁を低圧側に切り替えると同時に前記制御弁を第2の状態とし、噴射後期では前記切替弁を低圧側に切り替えたままで前記制御弁を第3の状態とする制御装置とを備えた構成である。
【0007】
ここで、当該公報に記載された前記制御弁は、ピエゾ素子への電圧の印加により駆動されるスプール弁である。そして、この燃料圧力(燃料供給圧力)に応じて定められた燃料噴射時間と噴射量との関係が、予めマップの形で記憶されており、燃料蓄圧室内の燃料圧力の検出信号が制御装置に入力されることで、制御装置が燃料圧力に応じて切替弁及びスプール弁を制御し、噴射初期では前記切替弁を低圧側に切り替えると同時に前記制御弁を第2の状態として、燃料排出路の排出流量を本来より少な目とし、これにより制御室の圧力を少し抜き、ノズルニードルを少々上昇させることで燃料噴射孔からの燃料噴射率を低めにする。その後、前記第3の状態とすることで、制御室の圧力を完全に抜いて、ノズルニードルを完全に上昇させ、高噴射率を達成する。
【0008】
しかし、このような装置では、ピエゾ素子等の駆動源(電源)や、これを制御するためのマップ等が必要であり、その分コスト高となる。
また、噴射初期及び噴射後期によって、燃料噴射率を変えるという要求の他、内燃機関が高回転のときあるいは低回転のときといったような運転状況に応じて、燃料噴射率を最適なように調整したいという要求もある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑み、燃料噴射率を燃料排出路に設けた弁で制御して運転状況に応じて燃料噴射率を可変とする技術を安価に提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
すなわち、本発明の燃料噴射装置は、燃料を蓄圧する燃料蓄圧室と、この燃料蓄圧室に蓄圧した高圧燃料を制御室に導入し、この制御室内に導入された高圧燃料の圧力で弁体を押して燃料噴射孔を閉じ、制御室内の高圧燃料を燃料排出路から排出して弁体の押圧力を下げることで燃料噴射孔を開く燃料噴射弁と、
を備えた燃料噴射装置において、
前記燃料排出路に設けられるとともに、前記燃料蓄圧室に蓄圧された高圧燃料によって駆動され、駆動に応じて燃料排出路の通路断面積を可変とする燃料流出量可変制御手段(可変バルブ)を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記燃料流出量可変制御手段(可変バルブ)は、例えば、燃料蓄圧室内の燃料圧が低いとき、前記通路断面積を大きくし、燃料蓄圧室内の燃料圧が高いとき、前記通路面積を小さくする。
【0012】
前記燃料噴射弁としては、燃料噴射孔と、この燃料噴射孔を閉じる弁体と、この弁体を常閉方向に付勢する付勢手段と、燃料供給源から所定圧力で供給されてくる高圧燃料を前記燃料噴射孔へ導く第1の燃料供給路と、この第1の燃料供給路から供給される燃料を受けるとともに前記弁体に開弁方向に燃料圧を加える燃料溜まりと、燃料供給源から所定圧力で供給されてくる高圧燃料を受け入れて前記弁体を常閉方向に押圧する制御室と、制御室内の高圧燃料を排出して制御室内の液圧を下げる燃料排出路と、制御室からの燃料排出路に介在し、閉時には制御室に高圧燃料を封じ込め、開時には制御室から燃料排出路へと燃料を逃がす背圧制御弁と、を有することが一般的である。
【0013】
このような燃料噴射弁では、背圧制御弁が閉じているとき制御室に印加される燃料圧が上昇するが、そのときに弁体が制御室内の燃料圧から受ける押圧力をFm、弁体が燃料溜まり内の燃料圧から受ける押圧力をFs、前記付勢手段の付勢力をFcとすると、Fm+Fc>Fs、Fc<Fsとされ、燃料噴射孔は弁体により閉ざされる。これに対し、背圧制御弁が開いて制御室から燃料排出路へと燃料を逃がすと、制御室内の燃料圧が下降するので、Fm+Fc<Fsとなった時点で、付勢手段の付勢力に抗して弁体がリフトし、燃料噴射孔が開き、燃料噴射が開始される。
【0014】
ところで、燃料流出量可変制御手段が燃料蓄圧室に蓄圧された高圧燃料によって駆動されるということは、前記した従来例のピエゾ素子によるスプール弁に必要な駆動用電源は不要となり、また、制御用のマップ等も不要になることを意味する。
【0015】
また、一般に、低負荷時のように、蓄圧室内の燃料圧が低いとき、燃料噴射弁の制御室内の燃料圧も低いので、制御室から燃料排出路を経て流出する燃料の流出速度が遅くなる。
【0016】
このような場合に、燃料蓄圧室の燃料圧(低圧)に応じて、燃料排出路の通路断面積が大きくなるように燃料圧で燃料流出量可変制御手段を駆動すれば、制御室内からの燃料流出量が多くなるので、燃料噴射弁の弁体のリフト速度が過度に遅くなり、燃料噴射時間が長くなることが抑制される。
【0017】
一方、高負荷時のように蓄圧室内の燃料圧が高い状態においては、燃料噴射弁の制御室内の燃料圧も高いので、制御室から燃料排出路を経て流出する燃料の流出速度が速くなる。
【0018】
このような場合に、燃料蓄圧室の燃料圧(高圧)に応じて、燃料排出路の通路断面積が小さくなるように燃料圧で燃料流出量可変制御手段を駆動すれば、制御室内からの燃料流出量が少なくなるので、燃料噴射弁の弁体のリフト速度が過度に速くなり、燃料噴射率が高くなりすぎることが防止される。
【0019】
本件において、より好ましくは、制御室への燃料供給路において、制御室内への燃料供給量を決定するインレットオリフィスが設けられ、一方、燃料排出路には、制御室内からの燃料排出量を決定するアウトレットオリフィスが設けられており、インレットオリフィス(33a)の通路断面積より、アウトレットオリフィス(34a、34b)の通路断面積の方が大きく設定され、前記燃料流出量可変制御手段は、駆動源として受ける蓄圧室内の燃料圧が高圧のとき、アウトレットオリフィス(34b)の通路断面積をインレットオリフィスの通路断面積と同等とし、蓄圧室内の燃料圧が低圧となったとき、アウトレットオリフィスの通路断面積をインレットオリフィスの通路断面積より大きくするようにすることが好ましい。
【0020】
より思想的に表現すれば、制御室内へ燃料供給路における通路断面積より、制御室からの燃料排出路の通路断面積を大きく設定し、前記燃料流出量可変制御手段は、駆動源として受ける蓄圧室内の燃料圧が高圧のとき、燃料排出路の通路断面積を燃料供給路の通路断面積と同等とし、蓄圧室内の燃料圧が低圧となったとき、燃料排出路の通路断面積を燃料供給路の通路断面積より大きくするようにするのである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適実施形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
<装置の全体構成>
図1に、燃料噴射装置の全体構成を示す。この装置は、燃料供給源である燃料タンク1から燃料を汲み上げて、所定圧力で送出する燃料ポンプ2(ロータリーサプライポンプ)と、この燃料ポンプ2から送出されて来る燃料を受け、所定の供給圧力に蓄圧する燃料蓄圧室3を備えている。
【0023】
この燃料蓄圧室3には、複数の燃料供給路4が接続され、各燃料供給路4には、内燃機関に取り付けられた複数の燃料噴射弁5が接続されている。内燃機関がたとえば6気筒で、各気筒にそれぞれ1つの燃料噴射弁5を設けた場合、燃料供給路4、及び、燃料噴射弁5はそれぞれ6つとなる。
【0024】
前記燃料蓄圧室3には、燃料圧センサ6が設けられ、燃料蓄圧室3内の燃料圧を検出するようになっている。さらに、この燃料圧センサ6は、コンピュータからなる制御装置7に接続されている。
【0025】
この制御装置7には、アクセルペダルが踏み込まれた状態か否かを検出するアクセルセンサS1、内燃機関への吸気圧力を検出する吸気圧センサS2、内燃機関の冷却水の温度を検出する水温センサS3、内燃機関の回転数を検出する機関回転数センサ(NEセンサ)S4、内燃機関への空気吸入量を検出するエアロフローメータS5、車両に加わる慣性力を検出するGセンサS6他、車両制御に必要な各種センサが接続されている。
【0026】
また、制御装置7には、燃料ポンプ駆動制御部8、燃料噴射弁駆動制御部9が設けられ、これらは、前記各種センサからの情報を基に決定される運転条件に従って、燃料ポンプ2や燃料噴射弁5を駆動制御するようになっている。
【0027】
制御装置7では、予め設定された定常運転用の目標圧力となるよう、燃料蓄圧室3内の燃料圧をフィードバック制御する。すなわち、前記燃料圧センサ6からの検出圧力が、前記目標圧力になるまで、前記燃料ポンプ2に駆動信号を送り、燃料の供給を継続し、目標圧力になったところで、前記燃料ポンプ2の駆動を停止する制御を繰り返す。
【0028】
また、前記燃料蓄圧室3には、前記燃料蓄圧室3内の圧力が、前記目標圧力を越えた、所定の設定圧力となったとき、燃料蓄圧室3内の圧力を解放して逃がすリリーフ弁11が設けられている。このリリーフ弁11は、燃料供給源側すなわち燃料タンク1へと接続された燃料解放路12に介在する形で設置される。
【0029】
<燃料噴射弁>
図2に示したように、前記燃料噴射弁5は、先端に燃料噴射孔21を有する筒状本体22と、この筒状本体22の内部に進退移動自在に設けられ、進出時に前記燃料噴射孔21を閉じ、後退時に前記燃料噴射孔21を開く針状のニードル弁23(弁体)と、このニードル弁23を閉方向に付勢する付勢手段としてのコイルスプリング24とを備えている。
【0030】
さらに、燃料噴射弁5は、燃料供給源である蓄圧室3から所定圧力で供給されてくる高圧燃料を前記燃料噴射孔21へ導く第1の燃料供給路31と、高圧燃料を受け入れて前記ニードル弁23を閉方向に押圧する制御室32と、前記第1の燃料供給路31から分岐し、燃料供給源である蓄圧室から所定圧力で供給されてくる高圧燃料を前記制御室32へと導く第2の燃料供給路33と、制御室32内の高圧燃料を排出して制御室32内の液圧を下げる燃料排出路34とを備えている。
【0031】
そして、第2の燃料供給路33には、制御室32への燃料流入量を決定するインレットオリフィス33aが設けられる一方、燃料排出路34には燃料排出量を決定するアウトレットオリフィス34aが設けられている。これらインレットオリフィス33aとアウトレットオリフィス34aの通路断面積の比は、例えば、2:3といったように、アウトレットオリフィス34aをインレットオリフィス33aより大きく設定している。
【0032】
また、前記ニードル弁23は、前記制御室32に臨み、制御室32内の燃料圧力を受けてニードル弁23を下降させるメイン・ピストン23aを有し、このメイン・ピストン23aに対し、ニードル弁23の燃料噴射孔21側に、サブ・ピストン23cが設けられている。このサブ・ピストン23cに臨むように、前記燃料噴射孔21へと続く第1の燃料供給路31の途中に燃料溜まり31aが設けられている。このため、燃料溜まり31a内の燃料圧がサブ・ピストン23cに加わり、ニードル弁23を開く方向(図の上方)に押している。このサブ・ピストン23cが燃料溜まり31a内の燃料圧を受ける受圧面積Ssは、前記メイン・ピストン23aが制御室32内の燃料圧を受ける受圧面積Smより小さく設定されている。さらに、サブ・ピストン23cのメインピストン23a側に、ニードル弁23を閉弁方向に付勢する前記コイルスプリング24が配設されている。
【0033】
前記メイン・ピストン23aが制御室32内の燃料圧から受ける押圧力をFm、前記サブ・ピストン23cが燃料溜まり31a内の燃料圧から受ける押圧力をFs、前記コイルスプリング24の付勢力をFcとしたとき、定常時は、Fm+Fc>Fs、Fc<Fsである。
【0034】
さらに、制御室32からの燃料排出路34に介在し、閉時には制御室32に高圧燃料を封じ込め、開時には制御室32から燃料排出路34へと燃料を逃がす、常閉の背圧制御弁35が設けられている。この背圧制御弁35は、電磁弁で形成され、筒状本体22内に設けられている。そして、この背圧制御弁35が閉じているときは、制御室32に印加される燃料圧が上昇し、その圧力により、メイン・ピストン23aが押され、これにスプリング24の付勢力も加わってニードル弁23が下降する。
【0035】
その際、第1の燃料供給路31から燃料溜まり31aにも制御室32内に印加されたと同圧の燃料が導入され、サブ・ピストン23cを押すが、その押圧力Fsは、Fm+Fcに抗しきれないので、ニードル弁23は燃料噴射孔21を閉じた状態に保持される。
【0036】
その後、背圧制御弁35が開かれると、燃料排出路34から制御室32内の燃料が排出するが、このとき、アウトレットオリフィス34aをインレットオリフィス33aより大きく設定してあるため、制御室32内への燃料流入量より制御室内からの燃料流出量が多くなり、その結果、制御室32内の燃料圧が下降する。
【0037】
そして、Fm+Fc<Fsとなった時点で、スプリング24の付勢力に抗してニードル弁23がリフトし、燃料噴射孔21が開き、燃料噴射が開始される。
次に、前記燃料噴射孔21と、ニードル弁23との関係を図3の詳細図で示す。弁座を形成する燃料噴射孔21の内側壁はテーパー状に形成され、これに対応し、ニードル弁23の先端もテーパー状の円錐形になっている。このような形状のため、ニードル弁23がリフトし、弁座である内壁面から離れたときに形成される通路面積Spが燃料噴射孔21の断面積Sfより小さいときは、その通路面積により燃料噴射率が決定され、ニードル弁23がさらにリフトして、通路面積Spが燃料噴射孔21の断面積より大きくなった後は、燃料噴射孔21の断面積により燃料噴射率が決定する。
【0038】
<燃料流出量可変制御手段>
前記構成に加え、制御室32から流出する流出燃料の量を可変とする可変バルブ43(燃料流出量可変制御手段)を設けると、ニードル弁23のリフト速度制御が可能となる。
【0039】
この可変バルブ43は、燃料排出路34に介在したバルブ室51と、このバルブ室51内に進退自在に設けられたピストン52とを有している。そして、バルブ室51に臨む燃料排出路34の出口が、前記したアウトレットオリフィス34aとなっており、その通路面積すなわち燃料排出路34の出口面積が前記ピストン52の進退によって可変とされるように形成されている。そして、前記ピストン52を付勢し、通常は燃料排出路の出口面積が大となる方向にピストン52を位置せしめるスプリング53がバルブ室51内に設けられている。そして、ピストン52を間にして前記スプリング53とは反対側のバルブ室51と、燃料蓄圧室3または燃料蓄圧室3から制御室32までの間の燃料供給路とを連結する制御用燃圧路54が設けられ、燃料蓄圧室3内の燃料圧がバルブ室51に印加されるように形成されている。
【0040】
<燃料噴射弁駆動制御>
燃料噴射弁駆動制御は、燃料噴射弁駆動制御部9により行われる。
ディーゼル機関において、燃料噴射は、圧縮行程から膨張行程において、機関の所定クランク角、例えば、上死点前10°CA(crank angle)〜上死点後5°CAで所定量行う。噴射開始時期を上死点前10°CAとした場合、これに燃料噴射時間を加算して噴射終了時期とする。
【0041】
燃料噴射前は、燃料噴射弁駆動制御部9により背圧制御弁35が閉ざされているので、制御室32内は、蓄圧室3から第2の燃料供給路33を介して導入された高圧燃料で満たされ、その圧力でニードル弁23が下降し、燃料噴出孔21が閉ざされている。
【0042】
前記燃料噴射タイミングが来ると、燃料噴射弁駆動制御部9からの指令により、背圧制御弁35が開き、制御室32内の高圧燃料が燃料排出路34から排出される。これにより、制御室32内の燃料圧が下降し、サブ・ピストン23cで受ける燃料溜まり31a内の燃料圧により、ニードル弁23がリフトし、燃料噴射孔21が開く。当初、燃料噴射孔21が完全に開くまでの間、燃料噴射率は燃料噴射孔21周りの通路断面積Spにより決まる。燃料噴射孔21周りの通路断面積Spが、燃料噴射孔21の断面積より大きくなったときは、燃料噴射孔21が全開状態となる。
【0043】
その後、所定の燃料噴射時間が経過すると、燃料噴射弁駆動制御部9により、背圧制御弁35が閉ざされる。すると、制御室32に高圧燃料が流入して封入されるので、制御室32内の圧力が上昇し、この圧力を受けてニードル弁23が下降し、燃料噴射孔21が閉じる。
【0044】
この間における制御室圧力、制御室32への燃料供給量、制御室32からの燃料排出量、ニードル弁のリフト量、燃料噴射率の関係を、図4のタイミングチャートに従って説明する。
【0045】
このタイミングチャートにおいて、実線は、蓄圧室3内の燃料圧が高圧である場合の特性を示し(本件及び従来の場合の双方)、破線は、従来の装置において蓄圧室3内の燃料圧が低圧である場合の特性を示し、一点鎖線は、本例において、蓄圧室3内の燃料圧が低圧である場合の特性を示す。
【0046】
燃料蓄圧室3内の燃料圧力は、燃料噴射に必要な圧力に保持されるが、図5に示したように、内燃機関が低回転のときは、40Mp(メガパスカル)、高回転、高負荷のときは、120Mp程度になるのが通常である。
【0047】
この圧力が直接バルブ室51に加わり、ピストン52のリフト量が変化する。内燃機関が、高回転、高負荷のときは、バルブ室51に高燃料圧が加わり、スプリング53に抗したピストンリフト量が大きく、燃料排出路34の出口面積が小さくなる。このときのインレットオリフィス33aの通路断面積と、アウトレットオリフィス34aの通路断面積とがほぼ同一になっており、制御室圧力、制御室32への燃料供給量、制御室32からの燃料排出量、ニードル弁23のリフト量、燃料噴射率の関係は、図4の実線で示したようになる。高燃料圧が、制御室32に加わるとき、制御室32から流出する燃料の速度も大きくなるので、燃料噴射率の変化はより矩形に近くなるのである。
【0048】
これに対し、内燃機関が、低回転、低負荷の場合は、低燃料圧が、制御室32に加わるので、制御室32に流入する燃料の速度、制御室32から流出する燃料の速度は共に小さくなるので、図4の破線で示したように燃料噴射率の変化はよりなだらかになってしまう。このとき、本例では、バルブ室51に低燃料圧が加わり、スプリング53に抗したピストンリフト量が小さく、燃料排出路34の出口面積が大きくなる。よって、インレットオリフィス33aの通路断面積より、アウトレットオリフィス34aの通路断面積の方が大きくなり、制御室32内の燃料の流出が速くなり、ニードル弁23のリフト速度も速くなり、かつ、リフト量も大きくなって、燃料噴射率が低噴射率となる。このため、燃料噴射率特性は、図4に示したように、通常の場合(破線)に比較し、立ち上がりがよく、低圧であっても従来より高噴射率を確保できる。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、内燃機関の運転状況に応じ、燃料蓄圧室内の燃料圧制御室が低圧から高圧に変化するにつれ、好ましい燃料噴射率を得ることができる。
【0050】
また、蓄圧室内の燃料圧で駆動される燃料流出量可変制御手段で制御するようにしたので、安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本件発明にかかる装置の全体構成図
【図2】実施形態の燃料噴射弁を示した図
【図3】燃料噴射孔周りを示した詳細図
【図4】実施形態の燃料噴射特性を示したタイミングチャート図
【図5】内燃機関の運転状況と燃料圧との関係を示すグラフ図
【符号の説明】
1・・燃料供給源である燃料タンク
2・・燃料ポンプ
3・・燃料蓄圧室
4・・燃料供給路
5・・燃料噴射弁
6・・燃料圧センサ
7・・制御装置
8・・燃料ポンプ駆動制御部
9・・燃料噴射弁駆動制御部
11・・リリーフ弁
12・・燃料解放路
21・・燃料噴射孔
22・・筒状本体
23・・ニードル弁
24・・コイルスプリング
31・・第1の燃料供給路
32・・制御室
33・・第2の燃料供給路
33a・・インレットオリフィス
34・・燃料排出路
34a・・アウトレットオリフィス
35・・背圧制御弁
43・・燃料流出量可変制御手段としての可変バルブ
51・・バルブ室
52・・ピストン
53・・スプリング
54・・制御用燃圧路
S1・・アクセルセンサ
S2・・吸気圧センサ
S3・・水温センサ
S4・・機関回転数センサ
S5・・エアロフローメータ
S6・・Gセンサ
Claims (1)
- 燃料を蓄圧する燃料蓄圧室と、
この燃料蓄圧室に蓄圧した高圧燃料を制御室に導入し、この制御室内に導入された高圧燃料の圧力で弁体を押して燃料噴射孔を閉じ、制御室内の高圧燃料を燃料排出路から排出して弁体の押圧力を下げることで燃料噴射孔を開く燃料噴射弁と、
を備えた燃料噴射装置において、
前記燃料排出路に設けられるとともに、前記燃料蓄圧室に蓄圧された高圧燃料によって駆動され、駆動に応じて燃料排出路の通路断面積を可変とする燃料流出量可変制御手段を備え、この燃料流出量可変制御手段は、燃料蓄圧室内の燃料圧が低いときに前記通路断面積を大きくし、燃料蓄圧室内の燃料圧が高いときに前記通路断面積を小さくすることを特徴とする燃料噴射装置。
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