JP3740805B2 - 反射型液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面が凹凸面あるいは粗面に形成された反射層を有する、反射型液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
外部からの入射光を反射させて表示を行う反射型液晶表示素子は、バックライトが不要であり、また消費電力が少なく、薄型、軽量であるため、ラップトップコンピューター等の携帯用OA機器や携帯情報機器の表示装置に好適であり、近年ではこれらの用途に広く用いられている。ところが、反射型液晶表示素子は外光を利用するものであることから、外光利用効率が低くなると視認性が悪くなり、実用上問題となってしまう。
【0003】
反射率を上げるための手法の一つとして、従来、反射層の表面を凹凸面とし、あるいは粗面とすることにより、その散乱の度合いを高めるといったことがなされている。このように反射層の表面を凹凸面あるいは粗面とした反射型液晶表示素子では、通常、液晶層の配向を均一に制御するため、またスイッチング素子や配線を形成するため、反射層上に平坦化膜を設け、この上に液晶層を配置するようにしている。
この平坦化膜としては、従来、透明性が高く屈折率が1.5以上の樹脂、例えばアクリル系の樹脂が用いられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような反射型液晶表示素子では、例えば図5で模式的に示すように空気1中(屈折率n=1)から該液晶表示素子に入射した光が反射層2上で反射した際、反射層2の表面形状によって当然入射角に対応する正反射角より広がって反射する光成分が生じる。
また、平坦化膜3に入射し反射層2で反射した反射光(散乱光)が再度平坦化膜3を透過し、空気1中に出射する際、平坦化膜3と空気1との界面で一部の光が全反射を起こす。この全反射が起こる際の全反射臨界角θc は、例えば平坦化膜3の屈折率が1.54である場合スネルの法則から約40°となる。したがって、反射層2で反射・散乱した光のうち、平坦化膜3表面に対する法線とのなす角が約40°を超えた成分の反射光(散乱光)は、全反射を起こして再び反射層2に戻り、多重反射を起こすのである。
【0005】
しかして、このような多重反射を起こすと、平坦化膜3や反射膜2でも当然吸収が起こることから戻り光は結果として有効に利用されず、これにより反射型液晶表示素子の反射率低下の一因となってしまっている。
また、平坦化膜として屈折率が高い透明媒体を用いた反射型液晶表示素子では、該平坦化膜と反射層の反射面との屈折率差が小さくなるため、平坦化膜と反射面との界面での反射率が小さくなり、反射型液晶表示素子全体の反射率低下を招いてしまう。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、反射率の向上を図り、これにより良好な視認性を確保した反射型液晶表示素子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の反射型液晶表示素子では、透明電極を有した透明基板と、入射光を反射させる反射層を形成した対向基板と、これら透明基板と対向基板との間隙に形成されて前記透明電極によってその挙動が制御される液晶層とを備えてなり、前記反射層はその表面が凹凸面あるいは粗面に形成され、該反射層上に屈折率が1.5未満の平坦化膜が形成され、前記平坦化膜は、可視光波長領域で吸収があるカラーフィルタ媒体層からなることを前記課題の解決手段とした。
【0008】
この反射型液晶表示素子によれば、反射層で反射した反射光(散乱光)が再度平坦化膜を透過し、空気中に出射する際、平坦化膜と空気との間の界面で一部の光が全反射を起こすが、平坦化膜の屈折率を1.5未満としたことによって該平坦化膜と空気との間の屈折率差が小さくなっているため、前記の全反射が起こる際の全反射臨界角θc が従来の屈折率が1.5以上の平坦化膜の場合に比べ大きくなる。
また、平坦化膜の屈折率を1.5未満としたことから、該平坦化膜と反射層の反射面との間で大きな屈折率差が確保され、これにより平坦化膜と反射面との界面での反射率が大きくなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の反射型液晶表示素子を詳しく説明する。
図1は本発明の反射型液晶表示素子の一実施形態例を示す図であり、図1において符号10はゲストホストモードの反射型液晶表示素子である。この反射型液晶表示素子10は、アクティブマトリックス方式を採用しカラーフィルターを内蔵したフルカラー表示のものであって、透明基板11と対向基板12とが所定の間隙を介して互いに対向した状態に配置され、構成されたものである。
【0010】
透明基板11は、ガラス等の透明基材からなり、光の入射側に配置されるもので、その内面(対向基板12側の面)側にはカラーフィルタ13、ITO等の透明導電性膜からなる透明電極14、ポリイミド等からなる配向膜15がこの順に形成配置されている。ここで、カラーフィルタ13は、各画素毎に分割化され異なる色に着色されて形成されている。なお、このカラーフィルタ13については、透明基板11に形成することなく、対向基板12に形成するようにしてもよい。
【0011】
対向基板12は、ITO等の透明導電性膜からなる複数の画素電極16…、およびこれら画素電極16…を駆動する薄膜トランジスタ(TFT)等からなるスイッチング素子(図示略)を備えたものである。また、この対向基板12上には、スイッチング素子とは別に反射層17が形成されている。この反射層17は、樹脂等からなり、その表面が凸凹形状とされた凸凹層17aの上に反射膜17bが形成されてなるものである。反射層17bは、AlやAg、あるいはこれらの酸化物や合金等の反射率の高い材料がスパッタ法あるいは蒸着法等により成膜され形成されたものである。
【0012】
この反射層17の上には、該反射層17を覆って平坦化膜18が形成されている。この平坦化膜18は、屈折率が1.5未満の透光性樹脂から形成されたもので、本例では可視光領域で透過率が高いフッ素系樹脂(サイトップ〔商品名;旭硝子社製〕、屈折率n=1.34)が数百nm〜数μmの膜厚に成膜されて形成されている。
【0013】
この平坦化膜18の上にはポリイミド等からなる下地配向膜19が形成され、さらにこの下地配向膜19の上にはλ/4層20が設けられている。
このλ/4層20は、高分子液晶からなるもので、前記下地配向膜19によって一軸配向させられたものである。
このλ/4層20の上には前記画素電極16…が形成されており、この画素電極16…の上には、これを覆ってポリイミド等からなる配向膜21が形成されている。
【0014】
前記透明基板11と対向基板12との間隙にはゲストホスト液晶層22が設けられている。このゲストホスト液晶層22は、例えば負の誘電異方性を有するネマチック液晶22aを主体とし、複合型の二色性色素22bを所定の割合で含有して構成されたものである。ここで、このゲストホスト液晶層22は、透明基板11の配向膜15、対向基板12の配向膜21の間に配置され、これら配向膜15、22により、本例においては電圧無印加状態で垂直配向させられ、電圧印加状態で水平配向に移行するようになっている。
【0015】
このような構成からなる反射型液晶表示素子10にあっては、該液晶表示素子10の外、すなわち空気中から透明基板14、ゲストホスト液晶層22を通って平坦化膜18に入射し、さらに反射層17で反射・散乱した光が、再度平坦化膜18を透過しゲストホスト液晶層22、透明基板14を通って空気中に出射する際、平坦化膜18と空気との間の界面で一部の光が全反射を起こす。このとき、平坦化膜18から透明基板14に至る過程でいくつもの層を通過するが、いずれの層間における界面も平行であり、また各層の屈折率が1.5〜1.6程度、もしくはこれ以上である。
【0016】
したがって、平坦化膜18に屈折率が1.34と低い値のフッ素系樹脂を用いた本実施形態例では、いずれの界面においても全反射条件を満たすことがなく、平坦化膜18の屈折率の値より小さい値をもつ空気中(屈折率n=1)に出射する際にのみ一部の成分が全反射を起こす。
この全反射の条件としては、図2で模式的に示すように、スネルの法則から導かれる下式より、(ただし、n1 は平坦化膜18の屈折率〔1.34〕、n2 は空気中の屈折率〔1.0〕である)
θc =sin-1(n2 /n1 )
全反射臨界角θc =約48°となる。
【0017】
したがって、この反射型液晶表示素子10にあっては、図5に示した平坦化膜の屈折率が1.54の場合に全反射臨界角θc =約40°と、平坦化膜18の表面(平坦化膜18と空気との界面)に約40°と鋭角的に入る光をも全反射してしまう従来のものに対し、約48°以上の大きい角度で入る光のみを全反射するものとなり、これにより従来のものに比べ全反射による反射率の低下を抑えて高い反射率を確保することができる。
【0018】
また、平坦化膜18の屈折率を1.5未満と低くしているため、反射層17の金属等からなる反射面と該平坦化膜18との屈折率差が大きくなり、これにより下式によって表される反射率Rが大きくなる。
R={(n1 −n2 )2 +k2 2 }/{(n1 +n2 )2 +k2 2 }
ここで、媒質1は屈折率n1 の透明な誘電体、媒質2は複素屈折率n2 =n2 −ik2 を持つ金属とし、媒質1と媒質2との界面に対して光が垂直に入射した場合の反射率をRとした。
平坦化膜18は媒質1となり、したがってその屈折率は前記式においてn1 となるので、このn1 が小さくなることにより反射率Rの値が大きくなる。
【0019】
よって、この反射型液晶表示素子10にあっては、平坦化膜18と反射層17の反射面との間で大きな屈折率差を確保することにより、該平坦化膜18と反射面との界面での反射率を大きくすることができる。
したがって、このように全反射を抑え、かつ反射層17の反射面での反射率を大きくしたことから、本実施形態例の反射型液晶表示素子10は反射率を向上して高い視認性を確保することができる。
【0020】
図3は、凹凸の反射層上にアクリル系樹脂(屈折率1.54)を塗布して平坦化膜を形成したもの、フッ素系樹脂(屈折率1.34)を塗布して平坦化膜を形成したもの、および平坦化膜を形成しなかったものの三種の試料を作製し、散乱光の視覚特性を調べた結果を示す図である。測定については、−20°方向からの平行な白色光源を入射し、その反射強度を調べた。
【0021】
図3に示したように、屈折率が小さくなるにしたがって正反射(+20°)方向近傍の散乱強度が増加することが確認された。なお、測定結果から最も優れているのはn=1.0、すなわち平坦化膜を形成せず反射層上に空気層を設けた試料であるが、液晶表示素子内に反射層を作り込む場合反射層上に空気層(n=1.0)を設けることは困難であるため、現実にはこのような構造を採用することができない。
したがって、平坦化膜の屈折率をより低くして1.0に近づけるのが、反射率を向上するうえで有利となるのである。
【0022】
また、図1に示した高集積型ゲストホストモード液晶表示素子10の構成において、平坦化膜としてアクリル系樹脂(商品名;JSS6699G、屈折率n=1.54)を用いた従来構造のものと、フッ素系樹脂(商品名;サイトップ、屈折率n=1.34)を用いた本発明のものとをそれぞれ作製し、その明るさをY値で求めた。
得られた実測値より、フッ素系樹脂を用いた本発明品は、アクリル系樹脂を用いた従来品に比べ、明るさが約10%向上しているのが確認された。
【0023】
図4は本発明の反射型液晶表示素子の他の実施形態例を示す図であり、図4において符号30はゲストホストモードの反射型液晶表示素子である。この反射型液晶表示素子30が図1に示した反射型液晶表示素子10と異なるところは、反射層17上の平坦化膜31として、屈折率が1.5未満であり、可視光波長領域で吸収があるカラーフィルタ媒体層を用いた点である。
すなわち、この反射型液晶表示素子30では、このカラーフィルタ媒体層からなる平坦化膜31を染色法等によってカラーフィルタ層とし、図1に示した液晶表示素子10において透明基板11に設けていたカラーフィルタ13を設けないようにしている。
【0024】
したがって、このような構成の反射型液晶表示素子30にあっても、全反射による反射率の低下を抑えて高い反射率を確保することができ、また平坦化膜31と反射層17の反射面との間で大きな屈折率差を確保することにより、該平坦化膜31と反射面との界面での反射率を大きくすることができ、これにより反射率を向上して高い視認性を確保することができる。
【0025】
なお、前記実施形態例では、本発明を高集積型ゲストホストモードの反射型液晶表示素子に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、偏光板を2枚用いた構造、もしくは偏光板1枚と位相補償板とを組み合わせた構造をもち、また液晶層としてもTN液晶やGH(ゲストホスト)液晶などを用いたあらゆるタイプの反射型液晶表示素子に適用することができる。ただし、その場合にも、反射層としてその表面が凹凸面あるいは粗面に形成されている必要があるのはもちろんである。
また、前記実施形態例では反射層17をその表面が凹凸面となるようにしたが、比較的凹凸の小さい粗面としてもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の反射型液晶表示素子は、反射層上の平坦化膜の屈折率を1.5未満としたことにより、全反射による反射率の低下を抑えて高い反射率を確保し、また平坦化膜と反射層の反射面との間で大きな屈折率差を確保することによって該平坦化膜31と反射面との界面での反射率を大きくしたものであるから、従来の平坦化膜の屈折率が1.5以上のものに比べ反射率を向上することができ、これにより高い視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射型液晶表示素子の一実施形態例の概略構成を示す要部側断面図である。
【図2】本発明の反射型液晶表示素子の作用を説明するための模式図である。
【図3】散乱光の視覚特性を調べた結果を示すグラフ図である。
【図4】本発明の反射型液晶表示素子の他の実施形態例の概略構成を示す要部側断面図である。
【図5】従来の反射型液晶表示素子の作用を説明するための模式図である。
【符号の説明】
10,30…反射型液晶表示素子、11…透明基板、12…対向基板、14…透明電極、17…反射層、18,31…平坦化膜、22…ゲストホスト液晶層
Claims (1)
- 透明電極を有した透明基板と、入射光を反射させる反射層を形成した対向基板と、これら透明基板と対向基板との間隙に形成されて前記透明電極によってその挙動が制御される液晶層とを備えてなり、
前記反射層はその表面が凹凸面あるいは粗面に形成され、
該反射層上に屈折率が1.5未満の平坦化膜が形成され、
前記平坦化膜は、可視光波長領域で吸収があるカラーフィルタ媒体層からなる
ことを特徴とする反射型液晶表示素子。
Priority Applications (1)
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JP28003497A JP3740805B2 (ja) | 1997-10-14 | 1997-10-14 | 反射型液晶表示素子 |
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JPH11119214A JPH11119214A (ja) | 1999-04-30 |
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- 1997-10-14 JP JP28003497A patent/JP3740805B2/ja not_active Expired - Fee Related
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