JP3738304B2 - ニューレグリンに対する抗体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニューレグリンに対する抗体、より詳細には、分泌型ニューレグリンを特異的に認識する抗体に関する。
【0002】
【従来の技術】
神経系では、ニューロン電気活性が、接続の正確な形成とその状態を制御している。パターン化された神経活性が発現及びリン酸化などの分子挙動を調節することがこれまでに報告されている(Itoh K 他 Science, 270, 1369-1372(1995);Fields RD 他 Trends Neurosci, 19, 449-526(1996);Itoh K 他 J Neurobiol, 33, 735-748(1997);及びBuonanno A 他 Curr Opin Neurobiol, 9, 110-120(1999))。神経筋接合に関する研究から、活性依存型で調節される物質の候補として、転写因子、神経伝達物質受容体、イオンチャンネル、神経栄養因子、及び接着分子などが挙げられている(Buonanno A 他 Curr Opin Neurobiol, 9, 110-120(1999))。
【0003】
ニューレグリン(NRG)は、活性依存型で産生される神経栄養因子の一種である。NRGファミリー(NRG1−4)は、神経伝達物質受容体及びイオンチャンネルのサブユニット発現の調節に関与することが報告されているチロシンキナーゼサブファミリーであるErbB受容体(Peles E 他 BioEssays, 15, 815-824(1993);Fischbach GD 他 Annu Rev Neurosci, 20, 429-458(1997);Burden S 他 Neuron, 18, 847-855(1997).;及びOzaki M 他 The Neuroscientist, 7(2), 146-154(2001))の活性化を介して、多くの組織の分化を調節している。各種NRGの中でも、NRG1の機能が最も詳細に研究されている。NRG1のアイソフォームは、グリア細胞の増殖及び分化(Lemke G. Annu Rev Neurosci, 24, 87-105(2001))、神経移動(Rio C 他 Neuron, 19, 39-50(1997))、並びに変性及び再生の制御(Cannel B 他 Proc Natl Acad Sci USA, 98(5), 2832-2836(2001);及びTokita Y 他 J Neurosci, 21(4), 1257-1264(2001))などを含めて神経の発達において多様な機能を担っている。NRG1は、末梢神経ではアセチルコリン受容体を調節し(Sandrock AWJr 他 Science, 276, 599-603(1997);Yang X 他 Neuron, 20, 255-270(1998);及びWolpowitz D 他 Neuron, 25(1), 79-91(2000))、中枢神経ではNMDA及びGABAA受容体、並びにカリウムチャンネルを調節している(Ozaki M 他 Nature, 390, 691-694(1997);Rieff HI 他 J Neurosci, 19(24), 10757-10766(1999);及びCameron JS 他 Proc Natl Acad Sci USA, 98(5), 2832-2836(2001))。従って、NRG分子の重要な役割として、受容体及びイオンチャンネルの機能の制御がある。
【0004】
NMDA受容体(NR)は、共通するNR1サブユニットと、NR2A−NR2Dとして既知のNR2サブユニットの組み合わせとから成るグルタミン酸で開くイオンチャンネルである。NR2サブユニットにより付与される電気物理的特性、並びに異なる領域と時期におけるそれらの発現によって、NMDA受容体の機能は多様化している。NMDA受容体サブユニットの発達の変動は、小脳顆粒細胞で顕著である(Ozaki M 他 Nature, 390, 691-694(1997))。興奮性ニューロン苔状線維顆粒細胞シナプスは、NMDA受容体のサブユニットをNR2BからNR2Cに切り替えることにより成熟する。若年の動物は大量の電流を流すNR2Bサブユニットを有するNMDA受容体を発現し、老年の動物ではNR2Cサブユニットを有する受容体サブタイプが、より少量の電流を流す(Ozaki M 他 The Neuroscientist, 7(2), 146-154(2001))。出生後2〜3週目に、小胞顆粒細胞は移動を終了し、苔状線維の神経支配によって顆粒細胞は発達する。その後、NMDA受容体の機能は、小脳顆粒細胞における受容体サブユニット発現の神経活動依存的な発達に対応して変化する(Monyer H 他 Neuron, 12, 529-540(1994);Farrant M 他 Nature, 368, 335-339(1994);及びOzaki M 他 Neural Development(K. Uyemura, K. Kawamura, T. Yazaki, eds.), Springer, Tokyo, p425-429(1999))。
【0005】
一方、小脳糸球体構造中には、ゴルジ細胞相互作用に関与するものなどの抑制性回路が存在する。ゴルジ細胞はGABA伝達物質の放出を介して苔状線維興奮性入力の減少と調整に寄与していると考えられる。顆粒細胞では、GABAA受容体複合体の各サブユニット数及びこれらサブユニット間の化学量比は不明であるが、α1、β2及びγ2サブユニットは、受容体の種類の多様性に貢献していると考えられる(Cupello A 他 Receptors and Channels, 7, 151-171(2000))。顆粒細胞におけるグルタメートによるNMDA受容体を介する興奮性シグナル活性化及びGABAによるGABA受容体を介する抑制性シグナルのバランスは、運動の協調、または小脳におけるシナプス入力後のニューロン興奮の正確な調整またはチューニングにとって重要である(Watanabe D 他 Cell, 95(1), 17-27(1998))。
【0006】
小脳では、NRGの主な型はNRGβ1の膜貫通型(mNRG)であり、これは、成熟マウスの橋・小脳路系苔状線維及び小脳顆粒細胞の神経末端に蓄積する(Ozaki M 他 J Neurosci Res, 59(5), 612-623(2000))。苔状線維顆粒細胞シナプスにおけるNR2Cの発現は、小脳スライス培養中においてNRG及びNMDA受容体の活性化によって制御されていることは既に実証されている(Ozaki M 他 Nature, 390, 691-694(1997);及びOzaki M 他 J Neurosci Res, 59(5), 612-623(2000))。また、Rieff HIらは、GABAA受容体β2サブユニットの発現が、小脳顆粒細胞の分散培養系においてsNRGで制御されることを報告している(Rieff HI 他 J Neurosci, 19(24), 10757-10766(1999))。
【0007】
本発明者らは、小脳からクローニングした組み換え全長mNRGを発現するCOS7細胞株を用いることにより、タンパク質分断がプロテインキナーゼC(PKC)活性化を介して生じることを実証している。mNRGから産生した切断されたsNRGは、顆粒細胞においてNR2C及びβ2サブユニットの発現を制御している(Ozaki M 他 J Neurosci Res, 59(5), 612-623(2000))。
【0008】
可溶型NRGは2種の方法で産生される。一方の可溶型は、mRNAから産生され、他方のmNRGはタンパク質分断により産生される(Ozaki M 他 J Neurosci Res, 59(5), 612-623(2000);Loeb JA 他 Mol Cell Neurosci, 11(1-2), 77-91(1998);Han B 他 Phil Trans R Soc Lond B, 354, 411-416(1999);及び Loeb JA 他 Development, 126, 781-791(1999))。シナプス前細胞からのシグナル、又はNRGアイソフォームのサブセットによる逆行性シグナルによりNRGの細胞内ドメインは、NRG−LIMK1(非受容体キナーゼ)プロテインキナーゼC相互作用を介してNRGの可溶型の放出に関与している(Wang JY 他 J Biol Chem, 273(22), 2025-20534(1998);Liu X 他 Proc Natl Acad Sci USA, 95(22), 13024-13029(1998);及びLiu X 他 J Biol Chem, 273(51), 34335-34340(1998))。タンパク質分断がPKCの活性化とKClの脱分極によって制御されるという事実から、タンパク質分断及びsNRGの放出が活動依存的に調節されることが示唆される(Han B 他 Phil Trans R Soc Lond B, 354, 411-416(1999))。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、分泌型ニューレグリンを特異的に認識する抗体を提供することを解決すべき課題とする。本発明はさらに、上記抗体を用いて分泌型ニューレグリンを検出及び/又は分析する方法を提供することを解決すべき課題とした。本発明はさらに、ニューレグリンの分断に関与する電気刺激のパターンを同定することを解決すべき課題とした。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、先ず、分泌型ニューレグリンを特異的に認識する抗体を作製し、この抗体を用いた実験により、苔状線維顆粒細胞シナプス末端においてタンパク質分断によってsNRGがmNRGから産生することを初めて実証した。タンパク質分断の効率はパターン化されたニューロン発火によって調節されていた。
【0011】
さらに、NMDA、NR2C及びGABAA、β2mRNAの発現は、受容体及びイオンチャンネル活性化に関与する特定のパターンの直接的電気刺激によって制御されていた。この結果は、興奮性及び抑制性ニューロンのシナプス前部の活性を含む環境因子が、活性化イオンチャンネルとsNRGとの組み合わせを介してシナプス後細胞に特定のニューロン発火パターンを付与していることを示す。
【0012】
顆粒細胞であるシナプス後部のニューロンを刺激した場合にのみ、特定の電気刺激によって直接的に特定の遺伝子発現が制御された。この結果は、シナプス後部ニューロンの直接刺激が、シナプス前部の作用またはシナプス後部ニューロンの受容体活性化を経路として使用することなく、顆粒細胞の内部環境を調節し得ることを示唆する。
本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0013】
即ち、本発明によれば、分泌型ニューレグリンを特異的に認識する抗体又はその断片が提供される。
本発明の抗体は好ましくは、膜貫通型ニューレグリンを認識せず、また好ましくは、Glu-Leu-Tyr-Gln及び/又はGlu-Leu-Tyr-Gln-Lysのアミノ酸配列を認識する。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。
【0014】
本発明の別の側面によれば、上記した本発明の抗体又はその断片を用いて分泌型ニューレグリンを検出及び/又は分析する方法が提供される。
好ましくは、培養神経細胞に電気刺激を与え、培地中に放出される分泌型ニューレグリンを上記した本発明の抗体又はその断片を用いて検出及び/又は分析する方法が提供される。好ましくは、異なる周波数の電気刺激を使用する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施態様及び実施方法について詳細に説明する。
ニューレグリン分子は、末梢神経および中枢神経系の形成に必須であると報告されている多機能性増殖因子である。末梢神経系では、神経筋接合部を形成し、筋肉の特性を制御したり、ミエリン形成を制御するなど、筋無力症、ミエリン欠損症、神経筋変性疾患原因遺伝子である。また、ニューレグリンは、中枢神経系では、神経細胞の移動、軸索伸長、神経−グリア細胞間の相互作用、シナプス形成に関与しており、シナプスでは、伝達物質受容体やイオンチャンネルの機能を制御しており、中枢神経変性疾患やイオンチャンネル病の原因遺伝子に関わる有力候補遺伝子の一つである。
【0016】
本発明の抗体又はその断片は、ニューレグリン分子のなかでも分泌型ニューレグリンを特異的に認識する。
本明細書で言う分泌型ニューレグリンとは、膜貫通型ニューレグリンからタンパク質分断により産出され、細胞外へ分泌される可溶性タンパク質のことを言う。
好ましい態様によれば、本発明の抗体は、Glu-Leu-Tyr-Gln及び/又はGlu-Leu-Tyr-Gln-Lysのアミノ酸配列を認識する。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。
【0017】
本発明の抗体の作製方法について先ず説明する。
本発明のニューレグリンを認識するポリクローナル抗体は、ニューレグリンまたはその断片から成るペプチドを抗原として哺乳動物を免疫感作し、該哺乳動物から血液を採取し、採取した血液から抗体を分離・精製することにより得ることができる。例えば、マウス、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ラット、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ等の哺乳動物を免疫することができる。免疫感作の方法としては、例えばJ.ASSOC.OFF.ANAL.CHEM 70(6) 1025-1027 (1987)等に記載されるW.H.Newsome 等の通常の免疫感作の方法を用いて、例えば抗原を1回以上投与することにより行うことができる。
【0018】
抗原としては、分泌型ニューレグリンのC末端を含む短いペプチド(5merあるいは6mer)、または該ペプチドにシステイン残基を付加したペプチドを用いることが好ましい。例えば、Cys-Glu-Leu-Tyr-Gln及びCys-Glu-Leu-Tyr-Gln-Lysなどのペプチドが挙げられる。なお、抗原ペプチドの長さは5merと6merのどちらでも同様の結果が得られており、標的タンパク質の1次構造の動物種差がある場合や、類似した切断配列が存在する場合などに適当な方を選べばよい。
【0019】
抗原投与は、例えば、7から30日、特に12から16日間隔で2または3回投与することが好ましい。投与量は1回につき、例えば抗原約0.05から2mg程度を目安とすることができる。投与経路も特に限定されず、皮下投与、皮内投与、腹膜腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与等を適宜選択することができるが、静脈内、腹膜腔内もしくは皮下に注射することにより投与することが好ましい。また、抗原は適当な緩衝液、例えば完全フロイントアジュバント、RAS〔MPL(Monophosphoryl Lipid A)+TDM(Synthetic Trehalose Dicorynomycolate)+CWS(Cell Wall Skeleton) アジュバントシステム〕 、水酸化アルミニウム等の通常用いられるアジュバントを含有する適当な緩衝液に溶解して用いることができるが、投与経路や条件等によっては、上記したアジュバントは使用しない場合もある。ここでアジュバントとは抗原とともに投与したとき、非特異的にその抗原に対する免疫反応を増強する物質を意味する。
【0020】
免疫感作した哺乳動物を0.5から4ケ月間飼育した後、該哺乳動物の血清を耳静脈等から少量サンプリングし、抗体価を測定する。抗体価が上昇してきたら、状況に応じて抗原の投与を適当回数実施する。例えば100μg〜1000μgの抗原を用いて追加免疫を行なう。最後の投与から1〜2ケ月後に免疫感作した哺乳動物から通常の方法により血液を採取して、該血液を、例えば遠心分離、硫酸アンモニウムまたはポリエチレングリコールを用いた沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー等の通常の方法によって分離・精製することにより、ポリクローナル抗血清として、本発明のニューレグリンを認識するポリクローナル抗体を得ることができる。なお血清は、たとえば、56℃で30分間処理することによって補体系を不活性化してもよい。
【0021】
また、本発明のニューレグリンを認識する抗体のグロブリンタイプは特に限定されず、例えばIgG、IgM、IgA、IgE、IgD等が挙げられる。
【0022】
ニューレグリンを認識する本発明のモノクローナル抗体を得るためには、モノクローナル抗体を産生する細胞株を取得することが好ましい。本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞株は特に制限されないが、例えば、抗体産生細胞とミエローマ細胞株との細胞融合によりハイブリドーマとして得ることができる。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、以下のような細胞融合法によって得ることができる。
【0023】
抗体産生細胞としては、免疫された動物からの脾細胞、リンパ節細胞、Bリンパ球等を使用する。抗原としては、ポリクローナル抗体の作製に関して上述した場合と同様に、ニューレグリン又はその部分ペプチドを使用する。
免疫される動物としてはマウス、ラット等が使用され、これらの動物への抗原の投与は常法に従って行う。例えば完全フロインドアジュバント、不完全フロインドアジュバントなどのアジュバントと抗原との懸濁液もしくは乳化液を調製し、これを動物の静脈、皮下、皮内、腹腔内等に数回投与することによって動物を免疫化する。免疫化した動物から抗体産生細胞として例えば脾細胞を取得し、これとミエローマ細胞とをそれ自体公知の方法(G.Kohler et al .,Nature,256 495(1975))により融合することにより、ハイブリドーマを作製することができる。
【0024】
細胞融合に使用するミエローマ細胞株としては、例えばマウスではP3X63Ag8、P3U1株、Sp2/0株などが挙げられる。細胞融合を行なうに際しては、ポリエチレングリコール、センダイウイルスなどの融合促進剤を用い、細胞融合後のハイブリドーマの選抜にはヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)培地を常法に従って使用することができる。
【0025】
細胞融合により得られたハイブリドーマは限界希釈法等によりクローニングする。更に、ニューレグリンを用いた酵素免疫測定法によりスクリーニングを行なうことにより、本発明のニューレグリンを特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する細胞株を得ることができる。
【0026】
このようにして得られたハイブリドーマから目的とするモノクローナル抗体を製造するには、通常の細胞培養法や腹水形成法により該ハイブリドーマを培養し、培養上清あるいは腹水から該モノクローナル抗体を精製すればよい。培養上清もしくは腹水からのモノクローナル抗体の精製は、常法により行なうことができる。例えば、硫安分画、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて使用できる。
【0027】
また、上記したような各種抗体の断片も本発明の範囲内である。抗体の断片としては、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント等が挙げられる。
【0028】
本発明のニューレグリンを認識する抗体は、標識抗体として使用することもできる。即ち、上記のようにして作製した本発明の抗体はさらに標識して使用することもできる。標識抗体を作製することにより、ニューレグリンの定量を行うことができる。
抗体の標識の種類及び標識方法は当業者に知られているものから適宜選択することができる。
【0029】
標識として酵素を使用する場合には、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、炭酸アンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、マレートデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ等を標識として使用することができる。これらの酵素を本発明の抗体又はその断片(F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント等)に標識する方法としては、酵素の糖鎖を過ヨウ素酸で酸化し、生成したアルデヒド基に該抗体などのアミノ酸を結合させる方法や、酵素にマレイミド基あるいはピリジルスルフィド基等を導入し、該抗体のFab’フラグメントに存在するチオール基と結合させる方法等を挙げることができる。
【0030】
標識として酵素を使用する場合、試験試料と標識抗体とをインキュベートした後、遊離した標識抗体を洗浄して除去してから、上記の標識酵素の基質を作用させて発色等で反応を測定することによって標識抗体を検出することができる。例えば、ペルオキシダーゼで標識される場合には、基質として過酸化水素、発色試薬としてジアミノベンジジンまたはO−フェニレンジアミンと組み合わさって褐色または黄色を生じる。グルコースオキシダーゼで標識される場合には、基質として、たとえば2,2’ −アシド−ジ−(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)等を用いる。
【0031】
標識として蛍光色素を使用する場合には、例えば、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)又はTRITC(テトラメチルローダミンBイソチオシアネート)等の蛍光色素で本発明の抗体又はその断片を標識することができる。 本発明の抗体又はその断片と蛍光色素との結合は常法によって行うことができる。
【0032】
標識として呈色標識物質を使用する場合には、例えば、コロイド金属および着色ラテックスなどを標識として使用できる。コロイド金属の代表例としては、金ゾル、銀ゾル、セレンゾル、テルルゾルおよび白金ゾルなどのそれぞれの分散粒子である金属コロイド粒子を挙げることができる。コロイド金属の粒子の大きさは、通常は、直径3〜60nm程度とされる。また、着色ラテックスの代表例としては、赤色および青色などのそれぞれの顔料で着色されたポリスチレンラッテクスなどの合成ラテックスを挙げることができる。ラテックスとして天然ゴムラテックスのような天然ラッテクスを使用することができる。着色ラテックスの大きさは、直径数十nm〜数百nm程度から選択することができる。これらの呈色標識物質は市販品をそのまま使用することができるが、場合によりさらに加工し、または、それ自体公知の方法で製造することもできる。
【0033】
本発明の抗体又はその断片と呈色標識物質との結合は常法によって行うことができる。例えば、呈色標識物質が金ゾルの分散粒子である金コロイド粒子の場合には、通常は、抗体と金ゾルとを室温下で混合することによって両者を物理的に結合することが可能である。
【0034】
なお、標識としては、上記以外にもアフィニティー標識(例えば、ビオチン等)、又は、同位体標識(例えば、125I等)等を使用することもできる。
【0035】
上記した本発明のニューレグリンを認識する抗体又はその断片の標識抗体又はその断片は本発明の範囲内であり、更に、上記した標識抗体又はその断片をPBS(リン酸緩衝液)等の緩衝液中に含有する反応試薬も本発明の範囲内である。該試薬には、当業者に周知のゼラチン等の添加剤が含まれていてもよい。さらに、本発明の反応試薬を構成要素として含み、目的とする検出方法に応じて、その他の抗体及び/又は各種測定用器具、緩衝液及び試薬等から成る各種検出(測定)用キットも本発明の範囲内である。
【0036】
本発明の抗体を用いるニューレグリンの免疫測定方法としては、例えば酵素免疫測定法、ラジオイムノアッセイ、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法等を例示することができる。酵素免疫測定法においては、本発明の抗体を不溶性担体に結合させて抗体結合不溶性担体を調製し、この抗体結合不溶性担体を用いた、いわゆるサンドイッチ酵素免疫測定法を行なうこともできる。
【0037】
本発明の標識抗体を用いた酵素抗体法、免疫組織染色法、免疫ブロット法、直接蛍光抗体法又は間接蛍光抗体法等の分析は当業者に周知の方法で行なうことができ、その実験条件も当業者ならば適宜選択することができる。
【0038】
本発明の一態様では、培養神経細胞に電気刺激を与え、培地中に放出される分泌型ニューレグリンを、上記した本発明の抗体又はその断片を用いて検出及び/又は分析する方法が提供される。好ましくは、電気刺激として、異なる周波数の電気刺激を使用する。
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0039】
【実施例】
実施例1:分泌型ニューレグリンを特異的に認識する抗体の作製
(1)抗原ハプテンペプチドの設計
タンパク質の限定分解反応を補足する抗ペプチド抗体を調製するためには、標的とする基質タンパク質の切断部位に関する情報が必要である。本実施例では分泌型ニューレグリンのC末端を含む短いペプチド(5merあるいは6mer)にシステイン残基を付加したペプチドを合成し、ハプテンとして用いた。具体的には、Cys-Glu-Leu-Tyr-Gln及びCys-Glu-Leu-Tyr-Gln-Lysの混合ペプチドを抗原として用いた。
【0040】
(2)用いた試薬
・合成ハプテンペプチド
・KLH(keyhole limpet hemocyanin) in 50%グリセロール(約80%mg/ml) 〔Calibiochem社〕
・DMFA (ジメチルホルムアルデヒド)
・MBS (m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)〔Pierce社〕
・ゲル濾過カラム(ファルマシアPD-10)
・50mMリン酸ナトリウムバッファー (pH7.5)
・100mMリン酸ナトリウムバッファー (pH7.2)
【0041】
免疫
・フロイント完全アジュバント(FCA)
・フロイント不完全アジュバント(FIA)
・シリンジ・注射針など
【0042】
抗体のアフィニティー精製
・100mM HEPESバッファー (pH7.5)
・Affigel 10または15〔バイオラッド社〕
・30%酢酸
・20%エタノール
・PBS
・50mMクエン酸バッファー(pH3.0)
・2Mトリスバッファー(pH9.5)
・20%グリセロール含Na-PBS
【0043】
(3)抗原(ハプテン/キャリア複合体)の調製
▲1▼ MBS/活性化KLHを調製する。KLH約40mg(0.5ml)を50mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)1.5mlに加え、スターラーを用いて撹拌する。次に、9.3mgのMBSを0.38mlのDMFAに溶解したものを(用時調製)、これに加える。MBS添加後、室温で30分撹拌する。その後、2,000rpmで2分程度遠心し、上清を以下で用いた。
【0044】
▲2▼ MBS/活性化KLHをフリーのMBSから分離する。ファルマシアPD-10カラムをを50mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)40〜50mlで洗浄し、平衡化しておく。これに▲1▼の遠心上清2mlを添加し、ゲルに浸潤した後に0.5mlのバッファーを加える。浸潤し終わった時点で溶出液の回収を始め(最初の2.5mlをprevoidとして捨てる)、2mlの溶出液(MBS/活性化KLH)を回収する。これで4回分のカップリングに使用することのできる標品が得られる。
【0045】
▲3▼ 合成ハプテンペプチドを活性化KLHにカップリングする。合成ペプチド5mg程度を4.5mlの100mMリン酸Naバッファー(pH7.2)に溶解し、撹拌する。この際、pH試験紙を用いて溶液のpHが下がっていないことを確認する。これに、0.5mlのMBS/活性化KLHを加え、4℃で一昼夜撹拌する。その後、透析する必要はない。これを免疫原として使用する。保存は−20℃または−80℃で行う。
【0046】
(4)免疫
▲1▼ ウサギを用いてポリクローナル抗体を調製した。まず、体重約3kgのウサギに対して1次免疫を行う。抗原溶液0.3mlに対して0.6mlのFCAを加え、撹拌後、超音波処理〔Branson Sonifier 185 (bath type)、power7〜10、3分程度〕によってエマルジョンを調製する。これを、左右の背筋上に位置する皮下部分に10ヶ所程度に分けて注射する。注射針は18Gあるいは21Gを用いる。
▲2▼ 約1ヵ月後に2次免疫を行う。この場合は、0.3mlの抗原溶液に対して0.6mlのFLAを用いて、同様にエマルジョンを調製する。左右の大腿筋に注射する。
▲3▼ 2次免疫の2週間後と4週間後に、3次免疫及び4次免疫を行う。この場合は、0.15mlの抗原溶液を0.45mlのPBSで希釈し、▲1▼と同様に背中に皮下注射を行う。用いる注射針は26Gでよい。
▲4▼ 4次免疫の約1週間後に、部分採血を行う。40〜50ml程度採血し抗体の生成状態をチェックした後、アフィニティー精製を行う。良好であれば、約1ヶ月休ませて、2回ほど追加免疫を行って、全採血を行う。
【0047】
(5)抗体のアフィニティー精製
▲1▼ アフィニティーゲルを調製する。アフィニティー担体としてはAffigel 10または15を用いる。まず、ハプテンペプチド1〜5mgを4mlの100mM HEPESバッファー(pH7.5)に溶解する。次に、1〜2mlのAffigelをグラスフィルター上で吸引洗浄し(氷冷蒸留水10ml×2回)、直ちにペプチド溶液に加える。一昼夜4℃で回転撹拌した後、フリーのペプチドを除くために、再度グラスフィルター上で吸引洗浄する。この場合は、十分量の蒸留水以外に30%酢酸や20%エタノールを用いて完全に洗浄し、最後にPBSで平衡化しておく。保存は冷蔵で行う。
【0048】
▲2▼ 特異的抗体をアフィニティーカラムに吸着させる。アフィニティーゲルをカラムに(内径5〜10mm程度)に詰め、PBSで洗浄する。非働化血清10mlを同量のPBSで希釈し、フィルター(0.22または0.45μm)を通し、カラムに添加する。透過液を回収し、3〜4回再添加を繰り返す(流速は1ml/分程度)。さらに、約50mlのPBSでカラムを洗浄する。
【0049】
▲3▼ 抗体を回収する。あらかじめ0.5mlの2Mトリスバッファー(pH9.5)を入れておいたチューブに、アフィニティーゲルから抗体を溶出させる。溶出は、5mlの50mMクエン酸バッファー(pH3.0)を1ml/分程度の速度で添加して行う。次に、溶出液を透析チューブに移し、20%グリセロール含Na-PBSに対して透析を行う(4℃、一昼夜)。抗体の定量は、280nmの吸収を計測して行う(1mg IgG/ml、A280=1.4)。通常、1〜10mgの特異的IgGが回収される。保存は、分注後−80℃で行う。
【0050】
実施例2:ニューレグリンの病態作用機序
(方法)
(1)細胞の調製
脳橋核の神経細胞および小脳顆粒細胞を各々E18BALB/CおよびP7マウスから標準法によって調製した。7 DIV(days in vitro)培養物を、両方の細胞種におけるPMA及び電気刺激のために使用した。顆粒細胞は、受容体サブユニット発現の定量のために、10mMのKCl条件下インビトロで1〜21日間培養した。脳橋核ニューロンは、10%馬血清を含むDMEM(Gibco BRL)で1又は2日間培養し、その後、B-27(Gibco BRL)を補充したNeurobasal培地(Gibco BRL)で維持した。培養物には、B-27(Gibco BRL)を補充したNeurobasal培地(Gibco BRL)から成る培地を供給した。GFPタグ及びベクターを含む全長のNRGプラスミド(pEGFP、Clontech)をLipofectamine(登録商標)2000(Gibco BRL)により各々トランスフェクションした(脳橋核のトランスフェクション効率;1〜3%、顆粒細胞;5〜10%)。トランスフェクションの24〜36時間後にニューロンを1μMのPMA(Tocris)で60分間刺激した。
【0051】
(2)切断型のNRGの検出
60分間のPMA刺激及び30分間の電気刺激(1mA、30〜60V細胞外)の後に、5×106〜5×107細胞から得た条件培地を回収し、セントリコン10及び100(Millipore)を用いて濃縮し、大分子量(>100kD)及び小分子量(<10kD)のタンパク質を除去した。7DIVの顆粒細胞は、脳橋核ニューロン及び顆粒細胞から得た濃縮条件培地で処理した。ErbBリン酸化において、ポリクローナル抗−ErbB4抗体(Santa Cruz)による免疫沈降後に、マウスモノクローナル抗ホスホチロシン抗体(4G10)を用いて標準法によりウエスタンブロット分析を行った(Rieff HI 他 J Neurosci, 19(24), 10757-10766(1999))。免疫沈降試験のために、ライセートを免疫沈降抗体の適当な稀釈物と一緒に4℃で1時間インキュベートした後、プロテインA−Sepharoseと一緒に4℃で1時間インキュベートした。次いで、ライセートを15000rpmで3分間遠心し、上清を廃棄した。ペレットを溶解緩衝液で2回洗浄し、ゲルローディング緩衝液に再懸濁した。試料を3分間煮沸し、タンパク質を電気泳動で分離した。
【0052】
CREBリン酸化を検出するために、7DIVの培養顆粒細胞を、条件培地で10〜15分間刺激した後、4%パラホルムアルデヒドで10分間固定化し、ポリクローナル抗−NRGβ1抗体、ポリクローナル抗−PCREB抗体(BioLabs)で染色した。染色した顆粒細胞をレーザー共焦点顕微鏡(Carl Zeiss)で観察した。Alexa(登録商標)染料(Molecular probe)を二次抗体として使用した。
【0053】
(3)NMDA及びGABAA受容体サブユニットのリアルタイム定量分析
電気刺激後、リアルタイム定量分析(ABI prism 7700, Perkin Elmer)を行った。Primer Express(PE Biosystems)を用いてプライマー及びTaqManプローブを設計した。各プライマーにより増幅したPCR産物はアガロースゲル上でシングルバンドであった。産物を直接配列によって確認した。使用した全プライマーは他の遺伝子と交差しなかった。薬理実験では、TTX(1μM、Tocris)、D−AP5(50μM、Tocris)、MK801(25μM、Tocris)、CNQX(10μM、Tocris)、Cd(100μM、Wako Inc.)及びEGTA(1mM、Sigma)を使用した。
【0054】
(結果)
(1)脳橋核ニューロン及び小脳顆粒細胞におけるNRGの膜貫通型のタンパク質分断
図1Aの実験で使用した小脳顆粒細胞及び脳橋核ニューロンの分散初代培養物の状態を調べた。脳橋核ニューロン(PN)は、18日目の胚(E18)から調製し、小脳顆粒細胞(GC)は出生後7日目(P7)から調製した。該ニューロンは脳橋核培養物(苔状線維の細胞体を含む)及び顆粒細胞である。培養ニューロンでのmNRGのタンパク質分断の有無を調べるために、抗ErbB及び抗ホスホチロシン抗体による免疫沈降、及び抗PCREB抗体を用いた免疫細胞化学分析を、GFP−tagを含む組み換え全長NRGβ1をトランスフェクションした場合としない場合について、PKC活性化因子であるホルボール−12−ミリステート−13−アセテート(PMA)で60分間刺激した脳橋核ニューロン及び顆粒細胞を用いて行った。
【0055】
苔状線維と顆粒細胞の間のシナプスにおけるNRG受容体に関連して、ErbB2及びErbB4が小脳系に関与していることは既報である(Ozaki M 他 Nature, 390, 691-694(1997);及びOzaki M 他 Neurosci Res, 30 (4), 351-354(1998))。ErbB4の発現は、小脳顆粒細胞ではインビトロ及びインビボでErbB2の発現よりも強かった。サイクリックAMP応答部位結合タンパク質(CREB)のリン酸化が、ErbB4シグナル伝達経路のさらに下流に関与していた(Taberbero A 他 Mol Cell Neurosci, 10, 309-322(1998))。PMAで処理後の脳橋核ニューロン及び顆粒細胞の培養物の条件培地を回収し、濃縮し、顆粒細胞に5〜10分間適用した。抗ErbB4抗体による免疫沈降後に、顆粒細胞からのライセートをSDS-PAGEで解析し、ブロットを抗−ホスホチロシン抗体(抗−TYK)で検出した。トランスフェクションしない脳橋核ニューロン(None)、ベクターをトランスフェクションした脳橋核(vPN)、NRGをトランスフェクションした脳橋核ニューロン(tPN)、ベクターをトランスフェクションした顆粒細胞(vGC)、及びmNRGをトランスフェクションした顆粒細胞(tGC)から、条件培地を回収した。mNRGをトランスフェクションした脳橋核ニューロン及び顆粒細胞は共に、トランスフェクションしないニューロン及びベクターのみをトランスフェクションした細胞と比較して、強いリン酸化活性を示した(図1B、図1C)。上昇したsNRG量は、顆粒細胞を用いてErbBリン酸化によって確認した。mNRGをトランスフェクションしたニューロンから得られた条件培地による180kDのチロシン−リン酸化バンドは、PMA刺激を用いた場合に顕著であった(図1B)。トランスフェクションした脳橋核ニューロン及び顆粒細胞をPKC阻害剤であるH7で処理した場合の条件培地では、リン酸化活性は抑制された。内在性NRGはErbBリン酸化の顕著な活性を示さなかった。しかし、リコンビナント(組み換え)mNRGを培養ニューロンにトランスフェクトした場合、ErbB4リン酸化は顕著であった。これらの結果は、PKC活性化後にsNRGが組み換えmNRGから産生したことを示す。図1Cにおいて、リン酸化の比率は、ErbB4抗体による免疫沈降後にブロットしたErbB4シグナルに対して標準化した。
【0056】
CREB−リン酸化の結果を図1のDに示す。PMA刺激(60分間)により放出される可溶型をスピンカラムを用いて濃縮し、培養顆粒細胞に添加した。刺激した顆粒細胞を固定後、抗ホスホCREB抗体で染色した。脳橋核ニューロンからの条件培地を刺激(a、b及びc)のために使用し、顆粒細胞培養物からの条件培地を刺激(d、e及びf)のために使用した。パネルDは、コントロール(a、d)、ベクター(b、e)及び全長NRG(c、f)を示す。条件培地(c及びf)は、切断された内在性及び組み換えのNRGを有するはずである。cからbの引き算及びfからeの引き算は、組み換えmNRG由来のsNRGにより誘発されるCREBリン酸化を示す。条件培地による5分以上の処理後に、異なるCREBリン酸化が観察された。生培養顆粒細胞を使用した場合には、KCl刺激によるNRGの放出は明白には観察されなかった。
【0057】
全長mNRGをトランスフェクションした脳橋核ニューロン及び顆粒細胞からの条件培地は、ErbB−及びCREB−リン酸化の異なる活性を示した。ErbB−及びCREB−リン酸化活性の測定から、タンパク質分断に必要なアミノ酸配列を同定した。図1E及び1Fに示す通り、ELYQKRVLT領域内の欠失変異体は、タンパク質分断を明白には示さなかった。この領域内のKからGへの点変異は表、図1Fに示す通り切断の減少を生じた。NRGはメタロプロテアーゼ(ADAMs)ファミリープロテアーゼの基質として報告されている(Shirakabe K 他 J Biol Chem, 276(12), 9352-9358(2000))。メタロプロテアーゼによるNRG切断は、主としてゴルジ体で起こると報告されている。mNRGのある種のタンパク質分断は細胞表面で起こることが報告されている(Loeb JA 他 Mol Cell Neurosci, 11(1-2), 77-91(1998))。NRGのタンパク質分断は、細胞の種類、NRG及びプロテアーゼのタンパク質局在、及び時期に依存して複数のプロテアーゼによって調節されている可能性がある。
【0058】
(2)パターン化電気刺激によるNRGのタンパク質分断
CREB−リン酸化活性を、抗−PCREB抗体を用いた免疫細胞化学分析により測定し、電気刺激による小脳顆粒細胞のCREBリン酸化の最適条件を調べた。顆粒細胞を異なる周波数で5分間電気的に直接刺激した(図2のA及びB)。1Hzから100Hzの周波数でリン酸化活性が検出され、50Hzが最適であった。50HzでのCREB−リン酸化活性は、ナトリウムチャンネルブロッカーTTXで36.6±5.45%ブロックされた。図Bにおいて、PCREB−陽性細胞を計測し、全細胞数に対して標準化した。これらの実験は、異なる周波数によりニューロン細胞内に異なる状況が生じることを示唆する。NRGのタンパク質分断に最適な周波数は50Hzであった。
【0059】
NRGのタンパク質分断が異なるパターンの電気刺激で生じるかどうかを確かめるために、異なる周波数での電気刺激後に、ErbBリン酸化を抗−TYK及び抗−ErbB4抗体を用いた免疫沈降により検出した。抗−ErbB4抗体で落とした切断型NRGは、抗TYK抗体を用いた免疫ブロットにより検出した。抗TYKを使用して、リン酸化したErbB受容体を認識した。リン酸化の効率は、ErbB4シグナルに対して正常化することにより測定した。リン酸化シグナルは、他の周波数の場合と比較して50Hzの刺激で有意に強かった(図3A及び図3B)。条件培地のCREB−リン酸化活性も50Hzの刺激が最適であった。図2B及び図3Dのグラフは同様のパターンを示す。
【0060】
上記方法を使用後、図3E及び3Fに記載した方法を使用して切断型のNRGを検出した。実施例1で作製した切断型ニューレグリンのC末端のみを認識する抗体(抗sNRG抗体)を使用した。電気刺激後、約1×106個のトランスフェクションした顆粒細胞を使用して条件培地を回収した。100kD以上及び10kD未満のタンパク質をセントリコン10及び100遠心濾過を用いて除去し、セントリコン10によりさらに濃縮した。その後、抗sNRG抗体を用いて免疫沈降を行い、NRGのβ1アイソフォームのみを認識できる抗−NRGβ1抗体を用いてイムノブロットした。ブロットを図3Gに示す。切断したNRGのシグナルは約30kDの位置に検出された。H7で50Hzの刺激の場合、切断型のNRGのシグナルは明白には検出されなかった。以上の結果から、sNRGは、特定のパターンの電気刺激により開始かつ制御されたタンパク質分断によりmNRGから産生することが判明した。
【0061】
(3)電気刺激により制御されたNMDA及びGABAA受容体サブユニットの発現
NMDA及びGABAA受容体サブユニット発現を制御できる電気活性のパターンを調べた。リアルタイム定量化ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて、NMDA及びGABAA受容体サブユニットのmRNAの発現を、インビトロで1〜21日目の培養中で定量した。先ず、培養顆粒細胞中のNMDA及びGABAA受容体の各サブユニットのmRNA発現レベルを調べた(図4A)。ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)を対照として用いた。P7マウスから調製した7DIV(days in vitro)培養ニューロンの性質は、成熟期でインビボでP14マウスのものと理論的に同一である。インビボのP14で、NR2B発現は小脳顆粒細胞でシャットダウンする一方、NR2C発現は全顆粒細胞で見られる。NMDA受容体のサブユニットの切り替えはマウスではP14でほぼ終了した。一方、GABAAのα1、β2及びγ2サブユニットはインビボのP14で大量発現していた。インビトロの状況をインビボに適合するように調整するために、インビトロで7日間培養した顆粒細胞を選択して電気刺激した。
【0062】
培養顆粒細胞を異なる周波数(0〜100Hz)で1mAで30分間刺激した(図4B、4C)。刺激後の細胞の生物学的活性は化学染色及び抗NRG抗体染色によって確認したが、生細胞数の有意な差異は何れの場合も見られなかった。NMDA受容体NR2B及びGABAAα2、γ1の場合、電気刺激の効果は何れの周波数でも明白には検出されなかった。NMDA受容体NR2Cサブユニットの発現は、1Hz及び100Hzの周波数での直接刺激によって促進され、100Hzなどの高周波数での刺激で検出された増加はTTXによりブロックされた。1Hzの刺激によるNR2Cの増加は、TTXにより強くはブロックされなかった。GABAA受容体β2サブユニットの場合、mRNA発現は、0.1から10Hzの低周波数の刺激で増加した。低周波数の刺激による増加はTTXにより部分的にブロックされたが、100Hzによるβ2の増加はTTXによりブロックされなかった。
【0063】
薬理学的実験によれば、NMDA及びAMPA受容体活性、並びにカルシウムチャンネルがNR2C及びβ2発現の保持に関与していることが示された。1Hzで刺激したNR2Cでは、mRNAの発現はNMDA、AMPA受容体アンタゴニストにより強く阻害された。刺激周波数100Hzでは、特にMK801(非競合NMDA受容体アンタゴニスト)がNR2C増加を強くブロックした。また、カルシウムチャンネルは、AMPA受容体よりもNR2C発現に寄与していた。1Hzで刺激したβ2では、刺激周波数1HzのNR2Cの場合と同様の結果であった。100Hzで刺激したβ2のmRNAの増加は、NMDA、AMPA受容体アンタゴニスト及びカルシウムチャンネルブロッカー(非特異的ブロッカー;Cd&EGTA)により阻害された。NR2C及びβ2の両方の場合で、カルシウムチャンネルブロッカーは高周波数でサブユニットの発現を強く阻害したが、低周波数では阻害しなかった。異なる周波数は、関与する顆粒細胞受容体の組み合わせと活性の度合いを制御していることがわかる。また、特定の電気刺激は、アンタゴニスト及びブロッカーの存在下でも正常な活性を部分的に回復することができた。1Hzの刺激でカルシウムチャンネルブロッカーを用いた場合の例を示す(図4C、β2の場合)。
【0064】
(C)考察
図5に示す通り、小脳顆粒細胞は、NMDA及びGABAA受容体を介して苔状線維及びゴルジ細胞からの興奮性及び抑制性シグナルの入力のバランスを取っていると考えられる。顆粒細胞のニューロン発火のパターンは、各種受容体の関与によってシナプス発達中に変化する。顆粒細胞における最終的神経活動のパターンは、伝達物質、神経ペプチド、及び神経栄養因子、並びに、シナプス前部ニューロンを含む環境刺激からの他のものなどの分子の組み合わせによって決まる可能性が高い。分子の異なる組み合わせは、分子の挙動と電気活性のパターンの関係において、異なるパターンのニューロン発火をもたらすはずである。幾つかの遺伝子発現がパターン化された電気活性によって調節されていることは既報である(Buonanno A 他 Curr Opin Neurobiol, 9, 110-120(1999))。パターン化された電気活性によって分子のリン酸化活性が制御されていることは確かである(Buonanno A 他 Curr Opin Neurobiol, 9, 110-120(1999))。
【0065】
実施例2では、タンパク質分断などのタンパク質プロセシングが、パターン化された電気活性によって制御されることを実証した。NRGのタンパク質分断は低周波数から高周波数で検出されたが、シナプス前細胞である苔状線維とシナプス後細胞である顆粒細胞からのNRGのタンパク質分断に最適な刺激周波数は共に50Hzであった。この現象は、分子的観点から、シナプス前後細胞間で神経活動のパターンが同調する機構を裏付けている。シナプス前部シグナルは先ずシナプス後部ニューロンを活性化し、次に、シナプス前部及びシナプス後部ニューロンを同調させる。シナプス後部細胞がシナプス前部細胞と同調する際に、シナプス後部ニューロンはオートクライン機構で自己活性化し、第III期に入る可能性がある。シナプス形成過程において、シナプス前部ニューロンからのシグナルや逆行性シグナル伝達を介した分子情報の交換の後に、mNRGは刺激依存型のタンパク質分断を受ける可能性もある。何れの場合も、50Hzの刺激はシナプス前部及びシナプス後部のニューロンの間の伝達における中間段階と考えられる(図5のII)。
【0066】
さらに、sNRGにより調節されるNR2C及びβ2発現の分子機構が明らかになった。低周波数の刺激では(1Hz)、β2RNAはグルタミン酸受容体及びErbB受容体の活性化を介して、NR2C RNAよりも多量に転写された。NR2CmRNAは、高周波数(100Hz)ではβ2よりも強く誘導され、グルタミン酸受容体(特に、NMDA受容体)の活性化を伴なった。NRGのタンパク質分断の最適周波数である50Hzでは、NR2C及びβ2サブユニット発現は観察できなかった。NR2C発現にはニューロン活動が必要であり、可溶型のNRGの産生効率は電気活動によって制御されている可能性は既に提唱されている(Ozaki M 他 The Neuroscientist, 7(2), 146-154(2001))。本実施例では、NRGのタンパク質分断が周波数に依存した形で電気活動のパターンによって制御されていることを初めて実証した。NRGはNR2C及びβ2サブユニット発現を誘導するのに必要であるけれども、発現段階(図1のI及びIII)及び中間段階(図5のII)の間で周波数の最適値に不一致が生じた。この不一致を説明するために、薬理学的実験を行った。この薬理学的実験の結果から、ErbB受容体を含む複数の受容体がNR2C及びβ2サブユニット発現の制御に関与していることが判明した。
【0067】
直接的電気刺激実験から、以下の2つの事項が示唆される。(1)遺伝子発現を誘導するために必要な受容体の活性化には、細胞自身のもつ神経活動が必要な場合があり、(2)直接的電気刺激は、受容体及びイオンチャンネルブロッカーの効果を部分的に補うことができる(図4、C)。シナプス成熟の過程において、特定のパターンのニューロン活性と受容体活性化の間にカスケードが存在する可能性がある(図6)。受容体Aが活性化される場合、ニューロンはパターンAの神経活動を有する。次に、受容体BがパターンAによって活性化され、パターンBが産生する。その結果、ニューロンはパターンAとBをあわせた活動パターンを有する。カスケードにおける各パターンの活動が分子挙動を制御する可能性がある。特定のパターンが分子挙動を制御し、ニューロン発火のパターンが、個々の受容体又はチャンネルの活性化の組み合わせによって構成されていると考えられる。構成された各パターン内に遺伝子発現リン酸化タンパク質のプロセッシングなどの分子の挙動を制御する一定の過程が存在するはずである。従って、活性化した受容体及びイオンチャンネルの組み合わせ及びそれらの活性化の順序が、上記した不一致を解くための鍵を握っている可能性がある。
【0068】
さらに、アンタゴニスト及びブロッカーによりブッロク可能な受容体の幾つかの作用は、特定の電気刺激によって補うことができた。これは、シナプス前部ニューロン、受容体及びチャンネル活性の役割がある特定パターンの電気活性によって模倣できることを意味する。従って、ニューロン形成を人工的に制御する電気活性のパターンの役割を調べることは重要である。
【0069】
【発明の効果】
本発明により、分泌型ニューレグリンを特異的に認識する抗体を提供することが可能になった。本発明の抗体を用いることにより、分泌型ニューレグリンを特異的に検出及び/又は分析することが可能になる。本発明の抗体は、特に神経細胞における分子挙動の解析に有用である。
【0070】
【配列表】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、PMA刺激によるニューレグリンのタンパク質分断を示す。
脳橋核ニューロン及び小脳顆粒細胞を7DIV(days in vitro)で抗NRGβ1抗体で染色した。両ニューロンで、細胞体及びニューロン性プロセスはNRG陽性であった(図A)。スケールバー;60μm
図Bでは、脳橋核ニューロン及び顆粒細胞を、膜貫通型のNRGをトランスフェクションしたものとしないものについて調製し、PMAで60分間刺激し、条件培地を回収した。条件培地のチロシンリン酸化活性を小脳顆粒細胞を用いて調べた。顆粒細胞培養物を、回収・濃縮した条件培地で5〜10分間刺激した。顆粒細胞からのライセートをSDS−PAGEで分解し、ブロットを抗−ErbB4抗体で免疫沈降した後、抗ホスホチロシン抗体(4G10)で検出した。180kDのチロシンリン酸化したバンドを刺激により検出した(図B)。条件培地をPN(トランスフェクションしない脳橋核ニューロン)、tPN(トランスフェクションした脳橋核ニューロン)、GC(トランスフェクションしない顆粒細胞)、及びtGC(トランスフェクションした顆粒細胞)から回収した。結果を図Cに要約する。実験は独立に3又は4回繰り返した。
図Dでは、小脳顆粒細胞を用いて、条件培地刺激後のCREB−リン酸化を確かめた。血清飢餓小脳顆粒細胞を、脳橋核ニューロン及び顆粒細胞培養物から回収した条件培地で処理した(5〜10分間)。脳橋核ニューロンからの条件培地をa、b及びcにおいて刺激のために使用した。d、e及びfでは、条件培地を顆粒細胞培養物から調製した。
a、d:対照
b、e:ベクター(pEGFP−N3)
c、f:pNRG−GFP
刺激した顆粒細胞は、固定化後、ホスホ−CREB抗体で染色した。PMA刺激(60分間)により放出された可溶型を濃縮し、培養顆粒細胞に加えた。条件培地は、パネルc及びfにおいて内在性NRG及び組み換えNRGを含むはずである。b及びeからの差し引きは、組み換えmNRGから切断されたNRGの作用を示した。ErbB及びCREBリン酸化アッセイ系を使用して、E及びFにおいてタンパク質分解に必要なアミノ酸配列を同定した。ELYQKRVLT配列は膜貫通ドメインのすぐN末側の細胞外領域上に位置していた。配列を欠失またはリジンからグリシンに変異させた場合、タンパク質分解の効率はFに示す通り阻害された。リジン残基はプロテアーゼによる認識に必須のアミノ酸であった。
【図2】図2は、電気刺激によるCREB−リン酸化活性を示す。
脳橋核ニューロン及び小脳顆粒細胞を18日齢の胎児マウス及び生後7日のマウスからそれぞれ調製した。ニューロンを7日間培養し、異なるパターンの電気刺激で刺激した。電気刺激後、CREB−リン酸化を顆粒細胞を用いて調べた(図A及びB)。抗PCREB抗体に陽性の細胞を計数し、全細胞数に対して標準化した。各皿からランダムな5箇所の顕微鏡視野(20倍)を細胞計数のために撮影した。独立した実験から、3〜5枚の皿を計数した。CREBリン酸化の効率は50Hz刺激で最高であった。リン酸化はTTXにより部分的にブロックされた。
【図3】図3は、電気刺激によるNRGのタンパク質分断を示す。
電気刺激後、ErbB4のチロシンリン酸化活性をPMA刺激により同一の方法で測定した。パネルAは、脳橋核ニューロン及び顆粒細胞においては、ErbB4に対する条件培地のチロシン−リン酸化活性の効率が50Hzの刺激で最高あることを示す。チロシンリン酸化はPKC阻害剤であるH7によりブロックされた。結果をグラフに要約する(図B)。図C及びDでは、小脳顆粒細胞を用いて条件培地刺激による刺激後に、CREBリン酸化を確認した。血清飢餓小脳顆粒細胞を、電気刺激後の顆粒細胞培養物から回収した条件培地で試験した(15分間)。50Hzの刺激では77.4±2.08%の顆粒細胞がPCREB陽性であり、100Hzの刺激では62.5±4.17%がPCREB陽性であった。PCREBの反応ピークは50Hzで検出された(n=15,*P<0.015)。
最後に、免疫沈降後のイムノブロットにより切断されたNRGを直接検出した結果をGに示す。検出の手法を図E及びFに要約する。mNRGを電気刺激後にトランスフェクションした(トランスフェクション効率;〜5%)5×106〜5×107個の顆粒細胞から、条件培地を回収した。培地をセントリコンを用いて濃縮し、抗−sNRG抗体で免疫沈降した。抗体としては、切断型NRGのc末端のみを認識する抗sNRGポリクローナル抗体(実施例1で作成した抗体)を使用した。免疫沈降後に、NRGβ1のみを認識する抗NRGβ1抗体を用いてウエスタンブロット分析を行った。図Gに示す通り、50Hzの刺激で切断型NRGのシグナルが検出できた。このシグナルはPKC阻害剤であるH7により消失した。これらの結果から、培地中に放出されたNRG量は周波数の刺激に応じて異なることが分かる。
【図4】図4は、リアルタイム定量化PCR法により定量したNMDA及びGABAA受容体サブユニット発現を示す。
図Aでは、インビトロで1〜21日間10mMのKClを用いて培養した顆粒細胞を用いて、NMDA及びGABAA受容体サブユニット発現を調べた。電気刺激実験のために7DIV(days in vitro)を選択した。7DIVでは、顆粒細胞は未だ生きているが、NMDA受容体、NR2C、2B及びGABAA受容体β2サブユニットmRNAは減少している。GABAA受容体α1及びγ2mRNAは7DIVでは保持されていた。異なるパターンの電気刺激後にRT−PCRのリアルタイム定量分析を行った。NR2C及びβ2サブユニットの転写を異なる周波数で制御した。NR2C転写は、1.0及び100Hzの刺激で促進され(図B)、100Hzで検出された増加はTTX処理でブロックされた。しかし、1.0Hzでの増加はTTXでは強くはブロックされなかった。一方、β2転写は、0.1〜10Hzの刺激でNR2Cよりも強く促進され、増加はTTX処理でブロックされた。100Hzでの増加はTTXで部分的にブロックされた。0.1Hz;n=6、1Hz;n=18、10Hz;n=10、50Hz;n=12、100Hz;n=26、TTXで非刺激;n=3、1Hz及びTTX;n=6、100Hz&TTX;n=6、*p<0.001、**p<0.00001
図Cでは薬理実験を電気刺激の下で行った。NR2Cの場合、1及び100Hzで増加した転写は全てのアンタゴニスト及びブロッカーにより部分的にブロックされた。しかしながら、MK801はNR2CmRNA発現を強くブロックした。β2の場合、MK801に加えてCNQXは1.0及び100Hzの刺激で転写をブロックした。100HzでのmRNAの増加は非特異的カルシウムブロッカーにより強く阻害されたが、1.0Hzでの増加は明らかにはブロックされなかった。何れの場合も、直接的電気刺激は、少なくとも基底レベルまで受容体の活性化を部分的に模倣できた。AP5;競合NMDA受容体アンタゴニスト、MK801;非競合NMDA受容体アンタゴニスト、CNQX;AMPA受容体アンタゴニスト、Cd&EGTA;非特異的カルシウムチャンネルブロッカー。各実験は独立に3〜8回繰り返した。
【図5】図5は、周波数依存形式で制御されたNMDA及びGABAA受容体サブユニット発現の模式図を示す。
小脳顆粒細胞は、苔状線維から興奮シグナルを、そしてゴルジ細胞からGABAA受容体を介して抑制性シグナルを受ける。これらのシグナルの組み合わせが、神経活動のパターンを決定する。苔状線維によって刺激されない顆粒細胞でも自発発火を有する。比較的低い周波数において、NR2C及びβ2サブユニット発現は共に検出されたが、β2発現はNR2Cよりも促進された(I)。一方、NR2C発現は、100Hzのような高周波数でより強く誘導された。NR2Cの発現は苔状線維刺激顆粒細胞で誘導される可能性があり、相当量の受容体活性化が関与している(III)。
【図6】図6は、受容体活性化のモデル及びニューロン活性のパターンを示す。
Claims (6)
- 分泌型ニューレグリンを特異的に認識し、膜貫通型ニューレグリンを認識せず、Glu-Leu-Tyr-Gln 及び/又は Glu-Leu-Tyr-Gln-Lys のアミノ酸配列を認識する、抗体。
- 抗体がポリクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
- 抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
- 請求項1から3の何れかに記載の抗体を用いて分泌型ニューレグリンを検出及び/又は分析する方法。
- 培養神経細胞に電気刺激を与え、培地中に放出される分泌型ニューレグリンを請求項1から3の何れかに記載の抗体を用いて検出及び/又は分析する方法。
- 電気刺激が異なる周波数の電気刺激である、請求項5に記載の方法。
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