JP4863548B2 - 結合組織増殖因子のモジュレーション、調節および抑制による腎障害の検出、予防および治療方法 - Google Patents
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Description
I. 発明の属する技術分野
本発明は、細胞外マトリックスの産生における結合組織増殖因子(CTGF)の役割に関する。より具体的には、本発明は、細胞外マトリックスの過剰産生に関連する腎線維症および他の病状を、CTGFを標的として検出、予防および治療する方法に関する。
【0002】
II. 発明の背景
腎疾患および障害。腎臓は血液から老廃物を分離し、酸濃度を調節し、そして水分平衡を維持するように機能する。腎臓は、水素、ナトリウム、カリウムおよびケイ素などの血液中の種々の化合物の濃度を制御し、老廃物を尿の形で排出する。腎機能の低下はいかなるものであれ、血液中から代謝産物を十分除去する身体能力を妨げる可能性があり、また身体の電解質平衡を破壊する可能性がある。腎機能の低下または不全は、その最も重篤な形では致死的でありうる。
【0003】
多くの病状が慢性腎不全、すなわち長期にわたる腎機能の低下をもたらしうる。例えば、高血圧、糖尿病、鬱血性心不全、狼瘡および鎌状赤血球貧血、などの病状が腎疾患と関連づけられている。急性疾患プロセスおよび傷害は、腎機能のより即座の低下を引き起こし得る。
【0004】
したがって、糖尿病、高血圧、炎症性および自己免疫疾患、および他の障害を有する個体は、例えば、糸球体濾過の低下、アルブミン尿、蛋白尿および進行性腎機能不全によって特徴付けられる腎機能の変化または進行性喪失の危険があることが良く理解される。腎障害の総数の半分以上が腎線維症を発症する。線維症は線維性組織の形成または生成の変化を伴い、そして細胞外マトリックス成分の過剰産生および沈着の増大をもたらしうる。
【0005】
細胞外マトリックス(ECM)とは、細胞から細胞外空間へ分泌された種々の糖タンパク質、多糖および他の巨大分子からなる複雑な網状構造体である。ECMは支持性の枠を提供して、形、運動性、強度、柔軟性および接着を含む細胞の種々の特性に直接影響を及ぼす。線維症においては、ECM物質の過剰産生および沈着増加は種々の膜性および細胞性成分の濃化(thickening)および奇形(malformation)をもたらす場合があり、その結果、冒された部位において局所的柔軟性および表面積が低下し、また多数の身体プロセスが損なわれる。
【0006】
腎線維症は、種々の形態の腎損傷の進行における共通した経路である。腎線維症は、典型的には、腎臓の以前には損なわれていなかった領域を引き入れることによって拡大する。正常な濾過プロセスが低下するにつれ、生き残った組織および腎臓の種々の領域の機能が全身的に破壊される。腎線維症は、腎臓膜成分の散在性の濃化として、すなわち、濾過表面積の喪失およびそれに対応する身体の電解質組成および酸塩基平衡の破壊をもたらす蓄積および膨張(expansion)として現われうる。
【0007】
腎臓の線維症は、例えば、糖尿病性、自己免疫疾患性および移植片性腎症;高血圧症;およびある形態の糸球体損傷または疾患を含む多数の病状において観察される。真性糖尿病(以下単に糖尿病という)は全世界で数億人に影響を及ぼしている複雑な疾患である。糖尿病は、高血糖すなわち血液中のグルコースレベルの上昇によって特徴付けられる。グルコースは体細胞に入って利用されることができず、そのため血液中に高濃度で残る。血中グルコースレベルが腎細管の再吸収能力を超えると、グルコースは尿中に排出される。糖尿病は、衰弱させ、生命をおびやかす多数の合併症を引き起こす。
【0008】
進行性腎症は、糖尿病の最も頻繁に見られる、かつ深刻な合併症の1つである。例えば、Hans-Henrikら、1988, Diabetic Nephropathy: The Second World Conference on Diabetes Research, New Frontiers, The Juvenile Diabetes Foundation International, 28-33頁参照。糖尿病性腎症および他の形の腎損傷による腎硬化症の特徴は糸球体メサンギウムの初期膨張であり、これは主としてI型およびIV型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等のECMタンパク質の蓄積増加によるものである。例えば、Mauerら、1984, J. Clin. Invest. 74:1143-1155; Brunevalら、1985, Human Pathol. 16:477-484参照。この病理学的沈着は不完全な濾過を引き起こし、腎不全、すなわち移植または生涯にわたる透析を必要とする病状をもたらす。現在の治療法は腎機能の進行性喪失を遅くすることはできるが、それを止めたり逆にしたりすることはできない。今日までに同定されている主要な原因因子もまた高血糖、糸球体性高血圧、および異常なサイトカイン環境を含んでいる。Tuttleら、1991, N. Engl. J. Med. 324:1626-1632; The Diabetes Control Complications Trial Research Group, 1993, N. Engl. J. Med. 329:977-986; Hostetterら、1981, Kidney Int. 19:410-415; Andersonら、1985, J. Clin. Invest. 76:612-619; Borderら、1993, Am. J. Kidney Dis. 22:105-113参照。
【0009】
グルコース濃度の増大はメサンギウム細胞によるECM蓄積を刺激するので、高血糖は多くの部分にダメージを与えうる。例えば、Ayoら、1990, Am. J. Pathol. 136:1339-1348; Hanedaら、1991, Diabetologia 34:190-200; Nahmanら、1992, Kidney Int. 41:396-402; Cortesら、1997, Kidney Int. 51:57-68参照。Daviesら、1992, Kidney Intl. 41:671-678が示すように、メサンギウム細胞はメサンギウムマトリックスのin situ合成に大いに関与している。また、メサンギウム細胞マトリックス生成に及ぼすグルコースの作用は、グルコース輸送および利用の増大と結びついているということが更に確認された。Heligら、1995, J. Clin. Invest. 96:1802-1814。さらに、Ziyadehら、1994, J. Clin. Invest. 93:536-542は、分泌された可溶性媒介物質のメサンギウム細胞マトリックス産生への関与を示した。
【0010】
腎性高血圧(これは糖尿病患者において腎疾患の続発性発現として現われうる)もまた、慢性高血圧を含む他の疾患または障害から生じうる。続発性高血圧は、腎機能における事実上任意の欠陥によって引き起こされうる。高血圧によって誘導されるECM沈着の病原性作用機構について、より多くのことが理解されつつある。例えば、糖尿病においては、正常な血圧ダンピングの初期欠陥が糸球体輸入細動脈で起こり、その結果、糸球体毛細血管を全身性血圧の一刻一刻の大きな変動にさらすことになる。Hayashiら、1992, J. Am. Soc. Nephrol. 2:1578-1586; Bidaniら、1993, Am. J. Physiol. 265:F391-F398参照。糸球体の弾性により、増大した毛細管圧力は糸球体構造の膨張をもたらし、メサンギウム細胞に課される機械的応力の増大をもたらす。Riserら、1992, J. Clin. Invest. 90:1932-1943; Krizら、Kidney Int. 38 (Suppl. 20):S2-S9参照。さらに、培養したメサンギウム細胞を周期的な緊張にかけると、メサンギウム細胞はI型およびIV型コラーゲン、フィブロネクチンおよびラミニンの合成および蓄積を増大させることによって応答する。Riserら、1992、前出。糸球体圧力の増大は糖尿病に共通しているが、それは糖尿病に限定されるものではなく、他の形の進行性腎疾患(例えば、ある形態の糸球体腎炎および肥大を含む)にも存在する。例えば、Cortesら、1997, Kidney Intl. 51:57-68参照。
【0011】
したがって、腎線維症および関連する腎欠陥は、糖尿病および高血圧を含む種々の疾患および障害の進行において存在する。よって腎線維症を治療する方法が大いに望まれている。
【0012】
トランスフォーミング増殖因子β( TGF- β)。腎傷害および疾患(特に糖尿病によるもの)の生理学的関連性(implications)に関して今日までになされた少数の研究は、細胞外マトリックスの過剰生成(合成および蓄積の増大)を標的とするための方法を開発する上でトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)の役割に焦点をあてている。糸球体マトリックス膨張を開始させる、および/または永続させることにおけるサイトカイン不均衡の役割が、TGF-βに関連する実験的腎症研究において検討された。例えば、Sharmaら、Seminars In Nephrology I:116-129参照。糸球体TGF-β活性は、ヒト糖尿病性糸球体硬化症および実験的糖尿病性糸球体硬化症の両方において増大した。例えば、Yamamotoら、1993, Proc. Natl. Acad. Sci. 90:1814-1818; Sharmaら、1994, Am. J. Physiol. 267:F1094-F1101; Shanklandら、1994, Kidney Int. 46:430-442参照。培養したメサンギウム細胞または糸球体をTGF-βに暴露するとECM生成の増大がもたらされる。例えば、Bollineniら、1993, Diabetes 42:1673-1677参照。ラット腎臓を用いてTGF-β遺伝子をトランスフェクションし、過剰発現させた後の、糸球体マトリックス蓄積のin vivo誘導が、例えばIsakaら、J. Clin. Invest. 92:2597-2601によって示されている。
【0013】
さらに、中和研究は、抗TGF-β抗体が実験的糸球体硬化症および糖尿病において起こる糸球体ECM遺伝子発現の増大を軽減することを示した。Brderら、1990, Nature 346:371-374; Sharmaら、1996, Diabetes 45:522-530参照。糖尿病における糸球体TGF-βの持続的過剰発現は、グルコースレベルの増大と高血圧の両方に対するメサンギウム細胞の応答の結果であるかもしれない。培地中でメサンギウム細胞を増大したグルコース濃度に暴露すると、TGF-β1の合成および放出、ならびにTGF-βの特異的受容体との結合の増大を刺激することが報告されている。Ziyadehら、1994, J. Clin. Invest. 93:536-542; Riserら、1998, J. Am. Soc. Nephrol. 9:827-836; Riserら、1999, Kidney Int., 56:428-439参照。機械力はTGF-β1の生成、放出および活性化、ならびにTGF-β受容体の発現増大を選択的に刺激することも報告されている。Riserら、1996, Am. J. Path. 148:1915-1923参照。
【0014】
TGF-βのin vitro中和研究は、グルコースレベルの上昇によってメサンギウム細胞に誘導されたコラーゲン合成の有意な減少を示した。例えば、Sharmaら、1996、前出;Ziyadehら、1994、前出参照。研究はまた、過剰なグルコースの存在下における周期的ストレッチングによってもたらされるコラーゲン蓄積の事実上の消滅を示した。Riserら、1997、前出。TGF-βはin vitroおよびin vivoにおいてメサンギウム細胞の増殖を刺激する。そして、これらの複製する細胞中に種々の腎障害(糸球体腎炎などの増殖性障害を含む)に特徴的なECMの過剰生成および蓄積の増大を誘導するのかもしれない。例えば、Border, W.A.ら、1990, Nature 346:371-374; Habershroh, U.G.ら、1993, Am. J. Physiol. 264:F199-205参照。これらの発見の結果、マトリックス蓄積を軽減する手段としてのTGF-βの利用性および結合を減少させることに多大な努力が払われた。しかし、TGF-βの偏在的な性質および多能性の機能(腫瘍抑制および多重レベルの調節を含む)は、TGF-βを長期間抑制することの実施可能性および安全性の両方に疑問を投げる。例えば、Brattainら、1996, Curr. Opin. Oncol.:49-53; Franklin, 1997, Int. J. Biochem. Cell Biol. 29:79-89参照。
【0015】
したがって、TGF-βの偏在的機能を妨げることなくECMの過剰産生または沈着増大を治療する、または予防する方法が必要とされる。
【0016】
結合組織増殖因子 (CTGF )。CTGFは、TGF-βの下流で作用してマトリックス蓄積を調節する可能性のあるペプチドである。この新規な増殖因子は以前に報告され、記述されている。例えば、米国特許第5,408,040号;Bradhamら、1991, J. Cell Biology 114:1285-1294参照。CTGFは約36から38 kDの分子量を有する単量体として存在するポリペプチドであると特徴付けられている。CTGFはCNNファミリーに属する、7つのシステインに富む分泌タンパク質の1つであることが示された。CNNファミリーはCTGF、cyr-61およびnovを含む。Oemarら、1997, Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology 17(8):1483-1489参照。CTGFは、4個のモジュールおよび1個のシグナルペプチドからなるタンパク質をコードする初期応答遺伝子である。Oemarら、1997、前出。4個のモジュールとは、1)インスリン様増殖因子(IGF)結合ドメイン、2)オリゴマー化に関与している可能性の高いvon Willebrand因子C型リピート、3)ECMとの結合に関与していると思われるトロンボスポンジン1型リピート、および4)受容体結合に関与しているかもしれないC末端モジュールである。最近の報告は、全CTGFタンパク質のある断片がCTGF活性を有することを示唆している。例えば、Brigstockら、1997, J. Bio. Chem. 272 (32):20275-282参照。ヒト、マウスおよびラットのCTGFは90%以上のアミノ酸相同性および約38 kDの分子量を有して高度に保存されている。CTGFのプロモーターは新規なTGF-β応答性エレメントを含有することが最近示された。Grotendorstら, 1996, Cell Growth & Differentiation 7:469-480参照。
【0017】
CTGFは皮膚線維症および心臓アテローム硬化症の両方における重要な前硬化性(prosclerotic)分子であるように思われる。例えば、CTGF mRNAは、線維芽細胞によって全身性硬化、ケロイドおよび局所的強皮症を有する患者の病巣に発現されるが、隣接する正常な皮膚にはその発現は見られない。例えば、Igarashiら、1995, The Journal of Investigative Dermatology 105:280-284; Igarashiら, 1996, The Journal of Investigative Dermatology 106:729-733参照。培養された正常なヒト皮膚線維芽細胞はTGF-βに対してはCTGF mRNAおよびCTGFタンパク質のレベルを上昇させることによって応答するが、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、または塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)には応答しない。Igarashiら,Molecular Biology of the Cell 4:637-645参照。強皮症の病巣に由来する線維芽細胞はTGF-βに対して有糸分裂誘発の増大を示し、そして正常な線維芽細胞を上回るCTGFを産生する。Kikucheら、1995, Journal of Invest. Dermatology 105:128-132。NIHスイスマウスの皮下に注射された組換えヒトCTGFは、TGF-βを用いた処理で生じたものと同一の結合組織細胞およびECMの迅速で劇的な増大を誘導する。他方、PDGFおよびEGFは肉芽形成(granulation)に対して殆ど、または全く影響を及ぼさない。Frazierら、1996, The Journal of Investigative Dermatology 107:404-411。培養された血管平滑筋細胞もまたTGF-βによって刺激されてCTGFを産生する。心臓疾患患者においては、アテローム硬化性斑では正常な動脈中の50から100倍高いレベルでCTGF mRNAが発現されている。Oemarら、1997, Circulation 95(4):831-839参照。
【0018】
皮膚線維症および心臓アテローム硬化症における原因因子としてのCTGFを示す証拠が増えているにもかかわらず、例えば、腎硬化または糖尿病におけるその発現は殆ど知られていない。シュウ酸カルシウム腎石症のin vitroモデルを用いて、サル腎臓上皮細胞がCTGF遺伝子およびマトリックス代謝回転に関与する他の遺伝子をアップレギュレーションすることによってシュウ酸カルシウムに応答することが示された。Hammesら、1995, Kidney International 48:501-509参照。培養された腎上皮細胞においても機械的傷を与えると類似の応答が起こる。例えば、Pawarら、1995, Journal of Cellular Physiology 165:556-565参照。最も最近になって、CTGF mRNAが正常なヒト腎臓から生検において発見された。質的評価は、症例の数は限定されているが、半月体形成性糸球体腎炎、巣状および分節性糸球体硬化症、および(3症例においては)糖尿病性糸球体硬化症の重篤なメサンギウム増殖病巣を有する患者の組織においてCTGF発現が増大したことを示した。Itoら、1998, Kidney International 53:853-861参照。生検で得たデータにのみ依存するこの研究は、量的結果またはCTGFタンパク質レベルの測定を全く含まないものであった。さらに、CTGF mRNAレベルとECMの生成および沈着の関連、およびサンプル中のCTGFレベルの測定を伴う腎障害および疾患(糖尿病を含む)を検出するための定量的方法は何ら記載されておらず、またCTGF発現細胞の同定も行われていなかった。
【0019】
このように腎疾患におけるCTGFの役割は不明であり、また今日に至るまでCTGFがECMの過剰産生および沈着増大に、そして腎臓における線維症に原因的に関連していることを示した研究は存在しない。
【0020】
診断および早期検出。腎不全は血液透析または移植などの極端な治療を必要とする深刻な病気である。正常な腎臓病理学および機能からの逸脱の早期検出および/または予防は、患者がより深刻な病状を発症させる危険を最小限にする。例えば、高血圧は初期段階では患者による検出は不可能であるかもしれないが、同定されず、モニターされず、治療されなければ致命的となりうる。さらに、いくつかの疾患、例えば糖尿病においては、侵襲性および破壊性がより少ない、かつより利用可能な治療手段(食事の改変、等)は早期においてのみ有効である。したがって、腎合併症の早期検出および予防を可能とする効果的で信頼できる診断方法が非常に必要とされている。
【0021】
例えば、進行性糸球体硬化症による腎不全はI型糖尿病または若年性真性糖尿病患者における罹病率および死亡率の主要原因である。例えば、Dorman, J.S.ら、1984, Diabetes 33:271-276; Anderson, A.R.ら、1983, Diabetologia 25:496-501参照。アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(えり抜きの薬剤クラスである)を用いる現在の治療法は糖尿病の進行を効果的に遅らせる。例えば、Lewis, E.J.ら、1993, N. Eng. J. Med., 329:1456-1462参照。しかし、この治療は新たに診断された糖尿病患者の全てに正当であるとは認められない。なぜなら、これらの患者のうち約30-35%しか進行性腎疾患を発症しないからであり、またこれらの薬剤の長期副作用は不明だからである。例えば、Parving, H.-H.およびE. Hommel, 1989, Brit. Med. J. 299:230-233参照。さらに、ACE阻害剤は現在、非糖尿病性腎症によるものをも含めて高血圧性腎不全患者を治療するためにも用いられている。しかし、腎臓保護の作用機構、および上記のようにこの治療の長期副作用は十分理解されているわけではない。さらに、ACE阻害剤は非ステロイド性抗炎症薬とマイナスに相互作用することが示された。例えば、Whelton, A., 1999, Am. J. Med. 106(SB):13S-24S参照。
【0022】
現在の診断方法では、糖尿病患者のミクロアルブミン尿がモニターされる。持続的なミクロアルブミン尿は広汎な血管損傷のマーカーであり、I型およびII型糖尿病における初期腎症の存在を示す。例えば、Stehouwer, C.D.ら、1992, Lancet 340:319-323; Bojestig, M.ら,1996, Diabetes Care 19: 313-317; Mogensen, C.E.ら,1995, Lancet 346:1080-1084参照。しかし、ミクロアルブミン尿の実際のレベルは、特に糖尿病を長期間患っている患者においては必ずしも明白な腎症の発症を予測するものではない。Bojestigら、前出。さらに、ミクロアルブミン尿が検出される時までに構造性腎病巣がすでに存在するため、進行を遅らせるための治療効果は実質的に減少するであろう。Bangstad, H.-J.ら, 1993, Diabetologia 36:523-529; Ruggenenti, P.ら,1998, J. Am. Soc. Nephrol. 9:2157-2169; Fioretto, P.ら,1995, Kidney Int. 48:1929-1935参照。I型糖尿病患者のうちどの患者が腎症を発症すると予測できること、および一般に重大な疾患の発症に先立つものであるかもしれない腎臓の変化を検出する方法を開発すること、が必要とされている。
【0023】
要約すると、種々の疾患および障害において、特に糖尿病および高血圧症において、腎機能の欠陥および低下に関連する線維症を診断、治療および予防する効果的な方法が当技術分野で必要とされている。今日までの研究で、腎線維症を予防する、または治療する手段としてのCTGF発現または活性のモジュレーションに焦点をあてたものはない。
【0024】
III. 発明の概略
本発明は、線維症に関連する腎障害および腎疾患を検出、治療および予防する方法を提供することによって当技術分野における必要を満たすものである。特に、本発明は細胞外マトリックスの過剰産生または沈着増加によって特徴付けられる腎障害および病状に関連する病状および合併症を検出、予防および治療する方法を提供する。
【0025】
治療および予防方法。本発明は、線維症をもたらす細胞外マトリックスの過剰産生をモジュレートすることに関する種々のアプローチを提供する。具体的には、本発明は、種々の腎疾患および障害において見いだされる腎線維症に関連する細胞外マトリックスの蓄積増大を調節する方法を提供する。これらの腎疾患および障害には、限定するものではないが、以下のものが含まれる。すなわち、糸球体腎炎、糸球体硬化症、および糸球体損傷に由来する病状を含むあらゆる種類の腎症;糖尿病性腎症および他の合併症;腎炎;間質性疾患;急性および慢性移植片拒絶反応;糖尿病に関連するものを含む腎性抗血圧;および他の線維症の原因が含まれる。より具体的には、本発明はCTGFの発現および活性を調節、モジュレートおよび/または抑制することによる、上記の腎疾患および障害に関連する合併症を予防および治療する方法を提供する。特定の実施形態においては、本発明は糖尿病または高血圧と関連する腎疾患および障害の診断、予防および治療に関する。
【0026】
本発明の方法は、CTGFのECM産生活性を調節、モジュレートおよび/または抑制する治療上有効量の剤の投与を提供する。特に、本発明の方法は哺乳動物、最も好ましくはヒトにおける腎障害の治療および予防に有用である。
【0027】
1つの態様において、本発明は、CTGFポリペプチドまたはその断片と反応性の治療上有効量の抗体、またはCTGFポリペプチドまたはその断片と反応性の抗体の抗原結合性フラグメントを投与することによる、細胞外マトリックスの過剰産生または過剰蓄積によって特徴付けられる糖尿病に関連する合併症を治療する方法を提供する。
【0028】
別の態様において、本発明は腎障害、特に糖尿病および高血圧に関連する合併症を治療および予防する方法を提供する。この方法においては、CTGF mRNAに特異的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチドがCTGFタンパク質産物の発現を妨げるために用いられる。該アンチセンスオリゴヌクレオチドは、CTGFまたはその断片をコードする任意のポリヌクレオチド配列に特異的に結合することができる配列を有する。
【0029】
本発明のさらに別の実施形態においては、CTGFまたはその活性断片の活性を抑制するために小分子を用いて、CTGFとその受容体との結合をブロックし、CTGF活性を抑制し、そしてそれによって糖尿病および高血圧を含む腎障害の発症および/または進行と関連する細胞外マトリックスの過剰産生を減少させる方法が提供される。
【0030】
本発明はさらに、CTGFのシグナル伝達経路に関与する酵素の結合相互作用をブロックする化合物を投与することによる、腎障害を治療および予防する方法を提供する。
【0031】
本発明はまた、インスリンと、CTGFの活性をモジュレートおよび/または抑制する剤を投与することによる、糖尿病を治療および予防する方法を提供する。より具体的には、本発明は、本発明の方法によりインスリンと、CTGF活性をモジュレートおよび/または抑制する剤を投与することによる、糖尿病を治療および予防する方法を提供する。
【0032】
線維症に関連する疾患および障害のための治療コースを受けている患者に由来するサンプル中のCTGFレベルを測定することによる、抗線維症療法(ACE阻害剤の使用を含む)の有効性を評価する方法もまた提供される。
【0033】
診断方法。本発明はまた、腎障害に関連する疾患および障害を有するどの患者が後に進行性腎疾患を発症させるかを予測する方法に関する。1つの実施形態においては、本発明は特定の疾患または障害における腎臓の関与を検出する、および/または病期分類する(staging)(疾患レベル、部位および広がりを分類する)方法を提供する。1つの実施形態においては、ある糖尿病患者が進行性腎疾患を発症することになるかどうかを予測する方法、ならびに糖尿病をもたない被験者と対比して糖尿病患者の現在の腎臓関与のレベルを検出する方法を提供する。
【0034】
本発明はまた、細胞外マトリックス成分の過剰な蓄積によって特徴付けられる組織の病状の存在を検出する方法に関する。1つの実施形態においては、上記方法は例えば組織生検により、または尿サンプルの採取などの非侵入性の方法により、CTGFレベルを測定することを含む。特定の実施形態においては、上記方法は、例えば糖尿病性糸球体硬化症などの糖尿病性腎症を有する患者に由来する例えば尿または他の体液からなるサンプル中のCTGFレベルの測定を含む。上記方法は、尿または他の体液中のCTGFレベルを測定することによる、糖尿病を伴う、または伴わない進行性硬化症を有するヒトにおけるCTGFレベルの測定をも含むことができる。
【0035】
より具体的には、本発明は腎疾患および障害の存在、またはそのような疾患・障害に対する疾病素質を診断する手段を含む。そこには、これらの疾患および障害を検出しモニターするための手段、またはこれらの疾患または障害の病因に対するマーカーの存在を検出およびモニターする手段が含まれる。より具体的には、本発明は患者のサンプル、好ましくは患者由来の尿サンプル中のCTGFレベルを測定することによる腎障害の診断方法を提供する。
【0036】
本発明の1つの実施形態においては、既知の腎障害を有さない患者、または腎障害を有することが疑われる患者由来のサンプル中のCTGFレベルを測定する方法が提供される。腎疾患または障害を有することが知られている患者、または腎疾患または障害を全く有さないことが知られている患者由来のサンプル中のCTGFレベルを、既知の腎障害を有さない患者、または腎障害を有することが疑われる患者由来の尿サンプル中のCTGFレベルと比較することは、腎疾患または障害の存在を示すことができる。特に、上記方法は腎障害を何ら有さない患者由来のサンプル中よりも、腎障害を有する患者由来のサンプル中に高レベルのCTGFが存在することを示す。したがって高レベルのCTGFは、腎線維症に関連する疾患または障害の存在を示している。
【0037】
別の実施形態においては、サンプル中のCTGF mRNAまたはタンパク質を検出することによってCTGFレベルを測定することができる。さらに別の実施形態においては、サンプルは組織サンプルであり、CTGFの存在は該組織中のこのタンパク質を染色することによって、またはCTGF mRNAレベルを測定することによって検出される。
【0038】
本発明の好ましい方法は、CTGFまたはその活性断片に特異的に結合することができる抗体、好ましくはモノクローナル抗体を使用する。CTGFレベルを測定するために抗体を用いる方法は、腎疾患の病状の非侵襲性診断を可能とする。本発明の好ましい実施形態においては、上記抗体はヒト抗体であるか、またはヒト化抗体である。好ましい抗体は、例えば、標準的ラジオイムノアッセイまたは酵素結合イムノソルベントアッセイまたはサンプル中のCTGFレベルの測定のために抗体を用いる他のアッセイに用いることができる。特定の実施形態においては、本発明の抗体は尿サンプル中に存在するCTGFレベルを検出し、測定するために用いられる。
【0039】
診断キット。本発明はさらに、被験者における腎障害または腎障害に対する疾病素質を検出するためにサンプル中のCTGFレベルを検出し測定するための診断キットに関する。1つの実施形態においては、このキットはCTGFに特異的な抗体およびサンプル中のCTGFを検出し測定するための試薬を含有する。サンプルは尿などの体液であることもできるし、または例えば組織サンプルであることもできる。本発明の1つの実施形態においては、上記キットはCTGFを特異的に認識する固定化抗体、およびCTGFに特異的な抗体であって上記固定化抗体とは異なる抗原成分に結合可能な抗体を含む。CTGF抗体は酵素標識、放射性標識、またはフルオレセイン標識することができる。上記キットはまた、抗体の検出に必要な試薬を含むことができ、そして所望により例えば溶解剤、洗浄剤、および反応停止剤などの他の試薬をも含むことができる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態においては、上記キットはキットに必要なエレメントを収納する例えば、箱または容器中にパッケージされており、そしてキットの使用説明書をも含んでいる。
【0041】
V.発明の詳細な説明
本発明は本明細書に記載の特定の方法、プロトコル、細胞系および試薬、等に限定されないことが理解されよう。それらは変りうるからである。また、本明細書に用いた用語は特定の実施形態を説明するという目的のためにのみ使用されており、本発明の範囲を限定することを意図していないことも理解されなければならない。本明細書および請求の範囲において、「1つの」および「その」(”a”, “an”,“the”)という単数形は、前後関係で明白にそうでないと分かる場合を除いて、複数形をも含んでいる。したがって、例えば、「1つの抗体」という言及は、1以上の抗体および当業者に公知のその任意の等価物をさす。
【0042】
別途規定しない限り、本明細書に用いる全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているものと同一の意味を有する。
【0043】
本発明の実施または試験においては任意の類似した、または等価の方法を用いることができるが、好ましい方法、装置および材料が本明細書に記述されている。本明細書に引用する全ての特許、刊行物および他の参考文献は参照によりその全体を本明細書に組み入れる。
【0044】
定義
本明細書に用いる「細胞外マトリックス」という用語は、典型的にはタンパク質、糖タンパク質、複雑な炭水化物、および他の巨大分子から構成される非細胞性マトリックスを広く意味する。細胞外マトリックス成分は、例えば、I型およびIV型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンおよびトロンボスポンジンを含む。
【0045】
「線維症」という用語は、線維組織の異常な切断(processing)、または線維性もしくは線維質変性(degeneration)をさす。線維症は種々の損傷または疾患から生じうる。そしてしばしば種々の臓器移植に関連する慢性移植片拒絶反応から生じうる。線維症は典型的には、例えばコラーゲンおよびフィブロネクチンの過剰産生および沈着増加を含む、細胞外マトリックス成分の異常な産生、蓄積または沈着を伴う。
【0046】
本明細書に用いる「腎臓線維症」または「腎線維症」または「腎臓の線維症」という用語は、腎機能の低下または欠陥をもたらす、細胞外マトリックス成分(特にコラーゲン)の過剰産生または異常な沈着に関連する疾患または障害をさす。「障害」および「疾患」という用語は包括的に用いられており、正常から逸脱している任意の病状をさす。「疾患」および「障害」は、限定するものではないが、急性および慢性の同種移植片および移植片拒絶反応、および任意の移植腎症;急性および慢性腎不全;自己免疫性腎症;糖尿病性腎症;糸球体腎炎、糸球体硬化症、および他の形態の糸球体異常または損傷;高血圧;肥大;間質性疾患;腎炎;硬化症、疾患または損傷による炎症、等を含む原因によって生じる組織および/または血管の硬変、硬結または硬化;腎臓関連増殖性障害;および他の原発性または続発性腎形成性病態を含む。腎不全およびカテーテル配置後の透析に関連する線維症、例えば、腹膜および血管アクセス線維症なども含まれる。
【0047】
腎線維症は本発明を説明するためのモデルであるが、線維症の作用機構は普遍的である。したがって、本明細書に記述する本発明の方法、キット、および他の態様は、他の形態の線維症、ならびに線維症および増殖に関連する疾患および障害の診断、予防および治療に向けることができる。これらの線維症、疾患および障害には、限定するものではないが心臓線維症、肺線維症、糖尿病性網膜症、皮膚線維症、強皮症、アテローム硬化症、動脈硬化症、過形成瘢痕、ケロイド形成、関節炎、肝線維症、炎症、腫瘍増殖転移、細胞増殖および遊走に関連する他の病状(例えば、血管新生および新生血管形成などの血管内皮細胞に関連する病状を含む)が含まれる。
【0048】
本明細書において「サンプル」という用語は最も広い意味に用いられている。サンプルは任意の供給源に由来するものであってよい。これらの供給源は、例えば、唾液、血液、尿、および器官組織(例:生検にかけた組織)を含むがこれらだけに限定されない体液、分泌物、または組織;染色体、オルガネラ、または細胞から単離された他の膜;ゲノムDNA、cDNA、RNA、mRNA、等;および清浄化(cleared)細胞または組織、またはそのような細胞または組織由来のブロットまたはインプリント、に由来するものであってよい。サンプルは溶液であることも、または支持体に固定または結合されたものであることもできる。サンプルはCTGFの存在を試験するのに適切な、またはCTGFもしくはその断片に結合する分子のスクリーニングに適切な任意の物質をさすことができる。そのようなサンプルを得る方法は、当技術分野におけるレベルの範囲内である。
【0049】
「アンチセンス」配列とは、標的配列と特異的にハイブリダイズすることができる任意の配列である。アンチセンス配列は、DNA、RNAまたは任意の核酸模倣物または類似体でありうる。「アンチセンス技術」という用語は、アンチセンス配列と標的配列との特異的ハイブリダイゼーションに依存する任意の技術をさす。
【0050】
CTGF発現または活性に関連して用いられる「モジュレーション(modulation)」および「調節」という用語は、正常なまたは未変化のCTGF発現または活性と比較される、CTGF発現または活性の指示あるいはCTGF発現または活性に対する作用を指す。
【0051】
A. CTGF ならびにその線維症および腎障害における役割
本発明は、CTGFが線維症の症状、特に糖尿病および糸球体高血圧症などの腎障害に関連する線維症の症状における細胞外蓄積の重要なメディエーターであるという発見に基づいている。より具体的には、本発明は、糸球体細胞(特にメサンギウム細胞)によるCTGFの産生が潜在的に腎臓の疾患および障害の病因に重要な因子であるという発見に基づいている。誘発されたCTGFレベルの上昇によって、メサンギウム細胞におけるECMの産生および沈着が増大することが見出された。さらに、尿サンプル分析において、健常被験者の尿中にはCTGFが存在しないか、または正確に最小限のレベルであるのに対し、糖尿病患者または他の腎障害を患う患者の尿中にはCTGFレベルの上昇が認められたことが見出された。
【0052】
CTGFが腎臓における細胞外マトリックス沈着の重要な決定因子であることを証明するために、糖尿病および非糖尿病条件下においてメサンギウム細胞、糸球体、および腎臓全体におけるCTGF発現を調べた。正常レベルのグルコースを含有する培地中で培養したメサンギウム細胞はCTGF mRNAを低レベルで発現し、そして検出可能な量の全長CTGFタンパク質をわずかに分泌した。しかしながらメサンギウム細胞を上昇させたレベルのグルコースに暴露した血糖上昇環境下では、CTGF発現のアップレギュレーションおよびタンパク質産生の増大が検出された。さらに、例えば糸球体硬化症、糸球体高血圧症、および糸球体肥大症を示す機械的メサンギウム細胞株により、メサンギウム細胞におけるCTGFの発現およびタンパク質産生のアップレギュレーションが示された。従って本発明は、上昇させたグルコース濃度、機械的作用またはTGF-βなどの条件への暴露によりCTGFの発現およびタンパク質産生のアップレギュレーションがもたらされることを証明し、CTGFの存在と腎障害(特に糖尿病および高血圧症)との関係を確立するものである。高血圧症ではない場合でも、例えば、しばしば腎損傷の結果起こり得る糸球体肥大症を引き起こす条件は、毛細管の直径の増大を誘導し得る。ラプラースの法則によると、管壁の張力はそれに対応して増大し、そしてメサンギウム細胞の伸長力はおそらく増大する。Cortesら、1997、前掲を参照のこと。
【0053】
B. CTGF 活性をモジュレートおよび阻害する方法
結合組織増殖因子(CTGF)は、腎線維症症状の細胞外マトリックス沈着の重要な決定因子である。本発明は、好ましくはCTGFの発現または活性を調節、モジュレートおよび/または阻害することによる、腎線維症に付随する合併症の診断、予防および治療のための方法を提供する。より具体的には、本発明の方法は、CTGF活性を生じる細胞外マトリックスを調節、モジュレートおよび/または阻害する剤の治療上有効な量を投与することを提供する。
【0054】
抗体
本発明の一実施形態において、腎障害および腎疾患の診断、予防および治療方法には、CTGFポリペプチドまたはその断片と特異的に反応する抗体の治療上有効な量を投与することが含まれる。
【0055】
CTGF抗体は、当技術分野に公知の方法を用いて作製し得る。かかる抗体には、限定するものではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ならびにF(ab')2およびFvフラグメントなどのFabフラグメントが含まれ得る。フラグメントは、例えば、Fab発現ライブラリーにより作製し得る。中和抗体、すなわち二量体形成を阻害する抗体は、治療用途に特に好ましい。
【0056】
CTGFまたはCTGFの活性および/もしくは発現をモジュレートする剤などの標的ポリペプチドを、免疫原性が高い領域を決定するために評価できる。分析方法およびエピトープ選択方法は当技術分野で公知である。例えば、Ausubelら編、1988, Current Protocols in Molecular Biologyを参照のこと。分析および選択は、例えば、LASERGENE NAVIGATORソフトウエア(DNASTAR; Madison WI)などの種々のソフトウエアパッケージにより達成し得る。抗体を誘導するために使用するペプチドまたは断片は、抗原性であるべきだが、必ずしも生物学的に活性である必要はない。好ましくは、抗原性断片またはペプチドは少なくとも5アミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも10アミノ酸長であり、最も好ましくは少なくとも15アミノ酸長である。抗体を誘導する断片またはペプチドは、標的ポリペプチド、例えばCTGFのアミノ酸配列の少なくとも一部分と同一であることが好ましい。また、天然に存在する標的ポリペプチドの配列の少なくとも一部分を模倣するペプチドまたは断片は、他のタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と融合させ、そして抗体をそのキメラ分子に対して作製してもよい。
【0057】
抗体の作製方法は当技術分野で公知である。例えば、種々の宿主(ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒトなど)を、標的ポリペプチドまたは任意のその免疫原性断片もしくはペプチドの注射により免疫化し得る。宿主の種に応じて種々のアジュバントを使用し、免疫応答を高めることができる。かかるアジュバントには、限定するものではないが、フロイントアジュバント、無機ゲル(水酸化アルミニウムなど)、ならびに界面活性物質(リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、KLHおよびジニトロフェノールなど)が含まれる。ヒトに使用するアジュバントの中では、BCG(カルメット−ゲラン杆菌(bacilli Calmette-Guerin))およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。
【0058】
モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体は、培養物中の連続細胞系により抗体分子を産生させる任意の技術を用いて調製し得る。in vivoおよびin vitro産生の技術は当技術分野で公知である。例えば、Pound, J.D., 1998, Immunochemical Protocols, Humana Press, Totowa NJ;Harlow, E.およびD. Lane, 1988, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkを参照のこと。一本鎖抗体の産生と同様に、キメラ抗体の産生も公知であり、例えば、Morrison, S.L.ら, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. 81: 6851-6855;Neuberger, M.S.ら, 1984, Nature 312: 604-608;Takeda, S.ら, 1985 Nature 314: 452-454を参照のこと。関連する特異性を有する一方でイディオタイプ構成が異なる抗体は、例えば、ランダムコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーからのチェーンシャフリング法により作製し得る。例えば、Burton D.R., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. 88: 11120-11123を参照のこと。
【0059】
また抗体は、リンパ球集団においてin vivo産生を誘導したり、または免疫グロブリンライブラリーもしくは高度に特異的な結合試薬のパネルをスクリーニングすることにより産生させてもよい。例えば、Orlandi, R.ら、1989, Proc. Natl. Acad. Sci. 86: 3833-3837;Winter, G.およびC. Milstein, 1991, Nature 349: 293-299を参照のこと。標的ポリペプチドに特異的な結合部位を含有する抗体フラグメントも作製し得る。かかる抗体フラグメントには、限定するものではないが、抗体分子のペプシン消化により生成され得るF(ab')2フラグメント、およびF(ab')2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成され得るFabフラグメントが含まれる。あるいはFab発現ライブラリーを、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定が可能となるように構築してもよい。例えば、Huse, W.D.ら, 1989 Science 254: 1275-1281を参照のこと。
【0060】
抗体は、当技術分野に公知の種々の方法を用いて抗標的ポリペプチド活性について試験し得る。スクリーニングのために種々の技法を使用して、所望の特異性を有する抗体を同定し得る。該技法には、種々のイムノアッセイ、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(直接およびリガンド捕捉ELISAなど)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、イムノブロッティング、および蛍光活性化セルソーティング(FACS)が含まれる。確立された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いた競合結合アッセイまたはイムノラジオメトリックアッセイのための多数のプロトコルが当技術分野で公知である。例えば、HarlowおよびLaneを参照のこと。かかるイムノアッセイには、標的ポリペプチドと特異的抗体との複合体形成の測定が典型的には含まれる。標的ポリペプチド上の2種の非干渉エピトープに対して反応性を有するモノクローナル抗体を利用するモノクローナル抗体に基づく2部位イムノアッセイ(two-site, monoclonal-based immunoassay)が好ましいが、競合結合アッセイなどの他のアッセイもまた使用し得る。例えば、Maddox, D.E.ら、1983, J Exp Med 158: 1211を参照のこと。
【0061】
上述の抗体を使用して、組織、例えば腎生検由来の組織中のCTGFまたはその断片を同定することも可能である。存在するCTGFの量は、例えば、定量的画像化分析法により決定し得る。またCTGF mRNAレベルも、例えば、生検を行った組織(糸球体など)の一部を用いた逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により決定し得る。特にこの方法においては、組織サンプル由来のmRNA全体、またはCTGFもしくはその断片に特異的なmRNAをDNAに転写し、続いてCTGF特異的プライマー配列を用いたPCRにより増幅し得る。CTGFもしくはその断片のmRNAの定量は、例えば、一連の減少してゆく既知の濃度の、例えば模倣もしくは突然変異cDNA断片などに対して実行する、等量の患者サンプルを用いた競合反応により測定し得る。
【0062】
本発明は、CTGFの生物学的活性を中和する、CTGFポリペプチドまたはその断片と特異的に反応する抗体の使用を包含する。本発明の方法において投与される抗体は、無傷の抗体、またはエピトープ決定基と結合する能力のある、Fab、F(ab')2およびFvフラグメントなどの抗原結合フラグメントでありうる。該方法において使用する抗体はポリクローナル抗体であるか、またはより好ましくはモノクローナル抗体でありうる。異なるエピトープ特異性を有するモノクローナル抗体は、当技術分野で公知の方法により、タンパク質の断片を含有する抗原から作製する。例えば、Kohlerら、Nature 256: 494;Ausubelら、前掲を参照のこと。
【0063】
本発明において、治療用途には、CTGFまたはその断片に対する「ヒト」または「ヒト化」抗体の使用が含まれる。ヒト化抗体とは、親抗体(すなわち、典型的にはマウス起源)と同じ結合特異性を有し、かつヒト特性が高められた抗体または抗体フラグメントである。ヒト化抗体は、例えば、チェーンシャフリング法により、またはファージディスプレイ技術を用いて得ることができる。例えば、CTGFに特異的な非ヒト抗体の重鎖もしくは軽鎖可変ドメインを含むポリペプチドを、ヒト補体(軽もしくは重)鎖可変ドメインのレパートリーと結合させる。目的の抗原に特異的なハイブリッド対合を選択する。続いて選択した対合からのヒトの鎖を、ヒト補体可変ドメイン(重もしくは軽)のレパートリーと結合させ、そしてヒト化抗体ポリペプチド二量体を、抗原に対する結合特異性について選択し得る。本発明の方法に使用し得るヒト化抗体の作製について記載された技法は、例えば、米国特許第5,565,332号、第5,585,089号、第5,694,761号、および第5,693,762号に開示されている。さらに、トランスジェニックマウスにおけるヒト抗体の産生について記載された技法は、例えば、米国特許第5,545,806号および第5,569,825号に記載されている。
【0064】
本発明の他の実施形態においては、本発明の方法には、CTGF応答性レセプターに対し反応性の抗体、より具体的には、細胞性レセプターへのCTGFの結合をブロックする抗体の治療上有効な量の投与が含まれる。本発明の方法は、CTGFと反応する抗体が、CTGFの影響を受けないレセプターの不活性化によるCTGFとそのレセプターとの相互作用の操作および制御を介して、CTGFの生物学的活性をモジュレートおよび/または阻害することを提供する。
【0065】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
本発明は、CTGF発現を直接妨害する治療アプローチを提供する。具体的には、CTGF mRNAのタンパク質への翻訳を直接遮断する治療アプローチを用いて、CTGF mRNAへ結合させるか、またはCTGF発現を妨害し得る。アンチセンス技術は、標的タンパク質をコードするまたはまたはその発現を指令する標的配列に対するアンチセンス配列の特異的結合による、標的タンパク質の発現のモジュレーションに依存する。例えば、Agrawal, S.編, 1996, Antisense Therapeutics, Humana Press Inc., Totawa NJ;Alama, A.ら, 1997, Pharmacol. Res. 36(3): 171-178;Crooke, S.T., 1997, Adv. Pharmacol. 40: 1-49;ならびにLavrosky, Y.ら, 1997, Biochem. Mol. Med. 62(1): 11-22を参照のこと。アンチセンス配列は、標的配列の少なくとも一部分に特異的にハイブリダイズすることができる核酸配列である。アンチセンス配列は、細胞mRNAまたはゲノムDNAに結合して翻訳または転写をブロックし、それゆえ標的化タンパク質産物の発現を妨害し得るものである。アンチセンス配列はあらゆる核酸物質であってよく、DNA、RNA、または任意の核酸模倣物もしくは類似体が含まれる。例えば、Rossi, J.J.ら、1991, Antisense Res. Dev. 1(3): 285-288;Pardridge, W.M.ら、1995, Proc. Nat. Acad. Sci. 92(12): 5592-5596;Nielsen, P.E.およびG. Haaima, 1997, Chem. Soc. Rev. 96: 73-78;ならびにLee, R.ら、1998, Biochemistry 37(3): 900-1010を参照のこと。アンチセンス配列の送達は、発現ベクターを用いた細胞内送達などの種々の方法で達成し得る。以下に記載の説明を参照のこと。最初に細胞を培養物中にトランスフェクトし、続いて安定なトランスフェクタントを標的部位に送達する技術などの外因性遺伝子の部位特異的送達法もまた包含される。例えば、Kitamura, M.ら、1994, Kidney Int. 43: S55-S58を参照のこと。
【0066】
約15〜25個の核酸塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドが典型的に好ましく、そのようなオリゴヌクレオチドとして容易に合成され、かつ所望の阻害作用を生じさせることができる。この目的のためにアンチセンスオリゴヌクレオチドの分子類似体も使用することができ、それは付加された利点(医薬製品中における有利な安定性、分布、または限定された毒性など)を有し得る。さらに、化学的に反応性である基、例えば鉄結合エチレンジアミン四酢酸(EDTA-Fe)をアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合させて、ハイブリダイゼーション部位におけるRNAの切断をもたらし得る。遺伝子のin vitro翻訳を阻害するアンチセンス法のこれらの使用および他の使用は当技術分野で公知である。例えば、Marcus-Sakura, 1988, Anal. Biochem 172: 289を参照のこと。
【0067】
アンチセンス治療薬の送達などは、転写の際に標的タンパク質をコードする細胞性配列の少なくとも一部分に対して相補的な配列を生成する、キメラウイルスもしくはコロイド分散系などの組換え発現ベクターを用いて細胞内で達成し得る。例えば、Slater, J.E.ら, 1998, J. Allergy Cli. Immunol. 102(3): 469-475を参照のこと。またアンチセンス配列の送達は、レトロウイルスベクターおよびアデノ関連ウイルスベクターを含む種々のウイルスベクターにより達成し得る。例えば、Miller, A.D., 1990, Blood 76: 271;ならびにUckert, W.およびW.Walther, 1994, Pharacol. Ther. 63(3): 323-347を参照のこと。本明細書で教示するアンチセンス遺伝子治療に使用し得るベクターには、限定するものではないが、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアまたは好ましくは、レトロウイルスなどのRNAウイルスが含まれる。レトロウイルスベクターは、マウスまたはトリのレトロウイルスの誘導体であるのが好ましい。レトロウイルスベクターは、例えば、該ウイルスベクターの表面上に所望のリガンドを発現させるように、タンパク質(1種もしくは複数)をコードするポリヌクレオチドを挿入して標的特異的とし得る。かかるリガンドは、天然の糖脂質炭水化物またはタンパク質であり得る。また好ましいターゲティングは、抗体を用いてレトロウイルスベクターをターゲティングすることにより達成し得る。当業者であれば、レトロウイルスゲノム中に挿入可能で該アンチセンスポリヌクレオチドを含有するレトロウイルスベクターの特異的送達をターゲティングすることを可能とする特定のポリヌクレオチド配列を理解しているか、または過度の実験を行うことなく容易に確かめることができる。
【0068】
組換えレトロウイルスは典型的には複製欠陥を有し、感染性ベクター粒子を産生するためには補助が必要であり得る。この補助は、例えば、LTR内の調節配列の制御下でレトロウイルスの構造遺伝子をすべてコードするプラスミドを含有するヘルパー細胞系を使用することにより提供され得る。これらのプラスミドは、パッケージング機構がキャプシド化のためのRNA転写産物を認識できるようにするヌクレオチド配列を欠失している。パッケージングシグナルが欠失しているヘルパー細胞系を使用してもよい。これらの細胞系は、ゲノムがパッケージングされないので空(empty)のビリオンを産生する。パッケージングシグナルは損なわれていないが構造遺伝子が目的の他の遺伝子により置換されているような細胞にレトロウイルスベクターを導入する場合には、該ベクターはパッケージングされ、ベクタービリオンが産生される。
【0069】
標的細胞にアンチセンス配列を送達するために使用し得る他の遺伝子送達機構には、コロイド分散系およびリポソーム誘導系、人工ウイルスエンベロープ、ならびに当業者が利用可能な他の系が含まれる。例えば、Rossi, J.J., 1995, Br. Med. Bull. 51(1): 217-225;Morris, M.C.ら,1997, Nucl. Acids Res. 25(14): 2730-2736;ならびにBoado, R.J.ら, 1998, J. Pharm. Sci. 87(11): 1308-1315を参照のこと。例えば、送達系は巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに脂質に基づく系(水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む)を利用し得る。
【0070】
一実施形態においては、本発明の方法は、CTGFをコードするmRNA分子のいずれかの配列と特異的に結合することができる配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの治療上有効な量を投与し、CTGF mRNAの翻訳を妨害するものである。
【0071】
本発明の他の実施形態においては、CTGF mRNAのいずれかの配列と特異的に結合することができる配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの治療上有効な量を投与し、該mRNAの翻訳を妨害する方法が提供される。
【0072】
小分子インヒビター
本発明は、小分子を使用して、応答性サイトカインのCTGF応答性レセプターへの結合をブロックすることによりCTGFの活性を阻害する方法をさらに提供する。例えば、本発明は、CTGF活性をモジュレート、調節および阻害する小分子を使用して腎線維症を治療および予防する方法を提供する。
【0073】
CTGFの活性および発現をモジュレートすることによる腎障害の治療または予防のための、本発明の方法において有用な小分子および他の剤を同定するために、CTGFおよびその生物学的に活性な断片を、種々のスクリーニング技法のうち任意のものにおいて治療化合物をスクリーニングするために使用し得る。かかるスクリーニング試験で使用する断片は、溶液中で遊離しても、固体支持体に付着させても、細胞表面上に支持しても、または細胞内に位置していてもよい。CTGFと試験する剤との結合複合体の生物学的活性または該複合体の形成のブロックまたは低減は、当技術分野で利用可能な方法により測定し得る。
【0074】
CTGFに対して、あるいはCTGFの発現および/もしくは活性をモジュレート、調節または阻害するために有用な他の標的ポリペプチドに対して適切な結合アフィニティーを有する化合物の高効率スクリーニングを提供する薬物スクリーニングの他の技法は当技術分野で公知である。例えば、試験化合物を担持するマイクロアレイを当技術分野で利用可能な方法を用いて調製し、使用し、分析し得る。例えば、Shalon, D.ら、1995年、PCT出願番号WO95/35505号;Baldeschweilerら、1995年、PCT出願番号WO95/251116号;Brennan, T.M.ら、1995年、米国特許第5,474,796号;Heller, M.J.ら、1997年、米国特許第5,605,662号を参照のこと。
【0075】
CTGF活性をモジュレートする小分子の同定は、他の種々のスクリーニング技法により実施し得る。該スクリーニング技法はまた、CTGFと相互作用する抗体および他の化合物の同定に適しており、本発明の方法において薬物および治療薬として使用することもできる。例えば、Enna, S.J.ら編、1998, Current Protocols in Pharmacology, John Wiley and Sonsを参照のこと。アッセイは典型的には、化合物のタンパク質または細胞標的への結合に関連した検出可能なシグナルを提供する。結合は、例えば蛍光団、酵素コンジュゲート、および当技術分野で公知の他の検出可能な標識により検出し得る。例えば、Ennaらを参照のこと。その結果は定性的または定量的であり得る。
【0076】
特異的な結合について化合物をスクリーニングするために、例えば、細胞に結合したヒトまたは霊長類抗体を検出するための種々のイムノアッセイを使用し得る。したがって、標識抗hIg、例えば抗hIgM、hIgGまたはそれらの組み合わせを使用して、特異的に結合したガラクトシルエピトープのヒト抗体を検出し得る。放射性同位体、酵素、蛍光剤、化学ルミネッセンス剤、粒子などの種々の標識を使用し得る。標識抗hIgを提供する数多くの市販のキットがあり、製造業者のプロトコールに従って使用し得る。
【0077】
細胞毒性作用について化合物をスクリーニングするために、多種多様なプロトコルを使用して化合物が所望の活性を有することを確認し得る。通常は天然に存在するかまたは改変された細胞系などであり得る細胞を使用する。該細胞は原核性であっても真核性であってもよい。例えば、ある病原体を目的とし、化合物コンジュゲートがどのエピトープに結合するかは重要ではない場合には、細胞毒性系に応じて抗体の存在下で病原体細胞をそれぞれの化合物と結合させて細胞毒性作用を判定し得る。化合物が投与される宿主の細胞に及ぼす種々の候補化合物の作用を判定する前またはその後にこのアッセイを実施し得る。このようにして、投与形態に基づいて、病原体標的に対するアフィニティーと、遭遇し得る宿主細胞に対するアフィニティーとの間の示差的分析が得られるだろう。
【0078】
いくつかの状況においては、自己免疫疾患、移植などにおいてT細胞と共に存在し得るような活性化状態などの特定の細胞状態が関心の対象となる。この状況においては、最初に化合物をスクリーニングして静止細胞に結合する化合物を決定し、そして静止細胞に結合しない化合物に関しては、残りの候補化合物を活性化細胞に対する細胞毒性についてスクリーニングする。続いて、化合物と遭遇する可能性のある宿主に存在する他の細胞についてスクリーニングして、その細胞毒性作用を決定し得る。あるいは、癌細胞および正常細胞を使用して、化合物のいずれかが、正常細胞と比較した場合に癌細胞に対してより高いアフィニティーを有するかどうかを決定し得る。再度、正常細胞に対する結合について化合物ライブラリーをスクリーニングし、その作用を決定してもよい。次に、正常細胞に対し細胞毒性をもたない化合物を、その癌細胞に対する細胞毒性作用についてスクリーニングし得る。正常細胞に対しある程度の細胞毒性が存在する場合であっても、癌細胞において細胞毒性活性の十分な差異がある場合であれば、該化合物が癌細胞に有効であると示される場合に正常細胞に対する低い細胞毒性は進んで許容され得る。
【0079】
天然で入手した細胞を使用する代わりに、組換え技術により改変されている細胞を使用してもよい。したがって、特定の遺伝子をアップレギュレートまたはダウンレギュレートすることにより改変させ得る、培養物中で増殖させ得る細胞を使用してもよい。このように、表面上で単一のタンパク質に関して異なる細胞を入手し得る。続いて、特定のタンパク質が存在または不在である細胞に対するライブラリーメンバーの作用に関してライブラリーを示差的にアッセイし得る。このように、該化合物が、表面膜上に存在するいずれのタンパク質とも異なる特定の表面膜タンパク質に対して特異的アフィニティーを有しているかどうか決定し得る。
【0080】
抗体が補体依存性細胞毒性作用を引き起こさない場合には、例えば、種々の種、イソタイプまたはそれらの組み合わせを用いて、特定の表面膜タンパク質に結合する抗体を使用して細胞間を識別し得る。細胞の1部分に抗体を添加し、抗血清またはモノクローナル抗体をブロックすることにより、これらの細胞はライブラリーメンバーに対する結合について利用可能な標的タンパク質をもたなくなる。このようにして、単一のタンパク質の1群における利用不可能性に基づいて応答が異なる競合細胞を作製する。抗体は通常使用するのに最も便利な試薬であるが、同じ機能を提供する他の特異的結合の存在も使用できる。
【0081】
結合を測定するためのアッセイで使用するために、抗体依存性細胞毒性系を使用し得る。細胞毒性作用に必要な成分のみが存在する場合には、成分の合成混合物を使用してもよい。これは、血液または血漿の成分がアッセイの結果に不利に影響を及ぼし得る場合に望ましい。
【0082】
また、多数の候補物質をスクリーニングするためには細胞性ローン(lawn)が極めて都合がよいが、他の技法も有効であり得る。これらの技法には、マルチウエルプレートの使用、ならびにコンビナトリアルライブラリーの調製に使用される種々のデバイス(ピン、ティーバッグなど)の使用が含まれる。種々のデバイスの性質に関連して細胞を別々に増殖させることができ、その後にデバイスを細胞と接触させるか、またはデバイス上で細胞を増殖させ得る。デバイスを細胞を接種した適切な培養物中に浸漬させるか、または細胞と候補化合物とを接触させるために提供する。細胞毒性剤を添加した後、次に種々の方法で溶解について分析し得る。例えば、FACSを生存細胞と死滅細胞との区別に使用することができ、sup 51 Crの放出を使用するか、または上清中の細胞内化合物の検出を用いて活性化合物を検出し得る。
【0083】
さらに、化合物がアゴニストまたはアンタゴニスト活性を有するかどうかを知りたい場合もあり得る。本発明のアッセイ技法は、ライブラリーに存在する、標的タンパク質に結合する化合物を決定するための迅速な方法を提供する。候補化合物の数を実質的に絞り込んだ場合には、化合物自体の活性を検出するためにより高性能なアッセイを使用し得る。このように、迅速なスクリーニングを実施して結合アフィニティーおよび特異性を測定し、続いてより集中的なスクリーニングを実施して活性を測定する。活性を測定するための種々の方法が存在し、そこでは、検出可能なシグナルを示すために供されるマーカー遺伝子が活性化されるように細胞を改変する。好適にはシグナルは、色素の生成、表面膜タンパク質の産生(標識抗体を用いて検出し得る)、またはタンパク質の分泌(種々の方法のいずれかにより上清中で検出し得る)と関連するものであり得る。例えば、発現される遺伝子は、リーダー配列を有するように改変されたルシフェラーゼであり得る。その場合、該ルシフェラーゼが分泌され、そのため次に適切な基質を用いて上清を光発生形成についてスクリーニングすることができる。
【0084】
ライブラリーをスクリーニングするために種々のプロトコルを使用し得る。これは、ある程度までは化合物の調製物の性質に依存し得る。例えば、化合物を個々の粒子、ピン、膜などに結合させ、それぞれの化合物を分離可能なものとする。さらに、利用可能な化合物の量は、ライブラリーを作製するために使用する方法に依存して変更する。さらにまた、化合物の支持体への結合の性質に応じて、化合物のアリコートを放出させることができ、一連のアッセイを実施し得る。さらに、化合物をアッセイする方法は、活性を有すると示される化合物を同定する能力により影響を受ける。
【0085】
化合物がグリッド状に個々に表面上に存在し、グリッドのそれぞれの部位にある化合物が何であるかが分かっている場合には、グリッドとして同様に構成され、固体表面に結合させた化合物についての記録通りに配置された細胞ローンを提供し得る。該ローンおよび固体基質が記録されている場合には、化合物を結合させた方法に従って表面から化合物を放出させ得る。該化合物が細胞表面上のタンパク質と結合するのに十分な時間をおいた後、細胞ローンを洗浄して非特異的に結合した化合物を除去し得る。1回以上の洗浄を行い得るが、洗浄は所望のアフィニティーの程度に応じてストリンジェンシーの度合を変更するために提供し得る。洗浄が完了した後、次に哺乳動物血液または血漿を添加し、細胞毒性に十分な時間インキュベートし得る。該血漿または血液を除去し、プラークを観察し得るが、化合物の性質をグリッドの位置により決定し得る。該血漿または血液は、ローンの細胞を天然に殺傷し得るあらゆる成分を含有させないようにし得る。
【0086】
調製工程は反復して行い得るので、同じ化合物を比較可能な部位に調製して多数の固体基質を調整することができ、同じかまたは異なる細胞を用いてスクリーニングを反復して行い、個々の化合物の活性を決定し得る。いくつかの例においては、化合物の本質を、核酸タグの増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応を用いて、該タグにより決定し得る。例えば、PCT出願番号WO93/20242号を参照のこと。この例においては、活性な化合物は、溶解物を入手し、該溶解物を核酸タグに特異的なプライマーを含有するポリメラーゼ連鎖反応用媒質に導入することにより決定し得る。拡大する際には、核酸タグを配列決定するか、またはその配列をほかの方法で決定し、それにより手法の選択が導かれ、化合物を調製するために使用し得る。
【0087】
あるいは、粒子から放出させうるタグで粒子を標識し、そして粒子に結合した化合物についての合成手法を示すバイナリーコードを提供し得る。例えば、Ohlmeyerら、1993, PNAS 90: 10922を参照のこと。これらのタグは、好適にはアルキレン化合物の同一系列であることができ、ガスクロマトグラフィー電子捕捉により検出することができる。特定の化合物を同定する前に粒子を2〜3回使用できるようにするために、連結する基の性質に応じて粒子から部分的に放出させることもできる。
【0088】
大部分のライブラリーに関して説明されているが、CTGFエピトープが化合物それぞれに結合することができる限り、化合物の大きなグループはいずれも同様にスクリーニングすることができる。従って、種々の供与源由来の化合物は、天然および合成の両方の、マクロリライド、オリゴペプチド、リボ核酸、デンドリマー(dendrimer)などを含み、これもまた同様の方法でスクリーニングし得る。
【0089】
アッセイにおけるプラークの形成は、ライブラリーメンバーの細胞(通常は表面タンパク質)への結合を示すものであり、それは抗体に結合するCTGFエピトープを妨害しない。また該プラーク形成は、免疫複合体が補体カスケードを開始するのに十分に安定であり、該メンバーが標的に対し高いアフィニティーを有していることを示す。
【0090】
本発明の方法は、細胞標的、特に低いCTGFエピトープを有するか全く有しない細胞標的を殺傷すべきいずれの状況においても使用し得る。従って細胞標的は、病原性の原核生物であり得る。種々の生物には、例えば、ミクロバクテリウム、エルシニア(Yersinia)、シュードモナス(Pseudomonas)、ボルデテラ ペルツシス(Bordetella pertussis)、梅毒トレポネーラ(Treponema pallidum)、淋菌(Neisseria gonorrhoea)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、インフルエンザ菌(Hemophilus influenza)が含まれる。他の病原体には、真核生物、特に、真菌類(カンジダ(Candida)、ヒストプラスマ(Histoplasma)など)および原生動物(ジアルジア(Giardia)など)が含まれる。さらに、感染細胞の表面膜タンパク質を提供するウイルスもまた、本発明の化合物の標的とすることができ、スクリーニングされる細胞は致命的に感染させてある。
【0091】
宿主細胞もまた標的として使用することができ、かかる細胞は、宿主または宿主の処置に対し異常であるか、または不利に作用するものである。例えば、正常組織と区別し得る癌組織は、本発明の化合物の標的として使用し得る。自己免疫疾患に関連するT細胞もしくはB細胞、またはGVHDもしくは移植拒絶に関連するT細胞もしくはB細胞もまた標的として使用し得る。異常細胞は、その性質に関わらず、正常細胞と区別し得るものであれば標的として使用し得る。したがって、乾癬病巣、リンパ腫細胞、細菌細胞、真菌細胞、寄生生物細胞、ウイルス感染細胞を本発明の生成物の標的とし得る。また、細胞すべてを除去することなく、識別マーカーを発現する細胞、例えば、T細胞サブセット、活性化血小板、内皮細胞、ホルモンまたはサイトカイン受容体を発現する細胞などの、細胞の一部の除去を所望の場合にも、本発明の化合物の用途を見出し得る。
【0092】
CTGFの活性をモジュレートする小分子を得るための他のスクリーニング法は、例えば、PCT出願番号WO9813353号に記載されている。
【0093】
化合物/分子
本発明は、CTGF活性をモジュレート、調節、または阻害することにより、腎線維症に関連する障害を治療および予防する方法を提供する。これらの方法には、結合相互作用をブロックするか、またはCTGFのシグナル伝達経路に関与する酵素をブロックする化合物の治療上有効な量を投与することが含まれ得る。より具体的には、本発明は、CTGFの誘導をブロックする化合物の投与によりCTGFの活性を阻害する方法を提供する。
【0094】
本発明の方法におけるCTGF遺伝子発現および/またはCTGF活性をモジュレートする化合物には、細胞中で環状ヌクレオチドの上昇を引き起こす剤が含まれる。本発明の方法に従ってCTGFの誘導をブロックし得る他の化合物は、上述のスクリーニング法を使用して同定し得る。
【0095】
さらなる本発明の実施形態においては、全長CTGFの翻訳後修飾を遮断するか、またはCTGFの不活性前駆体の活性化をブロックする分子を投与する方法を提供する。本明細書に記載のように、TGF-βへのメサンギウム細胞の暴露によって、28〜30kDaにおける追加のバンドが顕著に現われる。このバンドは、CTGF分子のカルボキシ側半分およびアミノ側半分に大きさが対応している。上述のように、TGF-β処置により、プロテアーゼまたは全長分子を切断することのできる他の因子が産生され得る。CTGF活性を阻害する分子は、本明細書に示したスクリーニング法を用いて同定し得る。
【0096】
本発明の方法はさらに、同種異系移植片拒絶反応に関連する腎臓における線維症を予防または治療するために使用し得る。該方法には、上述の剤のうちの任意の1つを治療上有効な量投与することが含まれる。
【0097】
本発明はさらに、治療上有効な量のインスリンおよび治療上有効な量の剤(上述のようにCTGF活性を調節、モジュレート、または阻害するもの)を投与することによる、糖尿病の治療または予防のための方法を提供する。
【0098】
C. 医薬品剤形および投与経路
投与経路
本明細書に記載の抗体、小分子、およびその他の化合物はヒトの患者にそれ自体を投与することができ、または、それが適切であると考えられるならば、適当な担体または賦形剤を含む医薬組成物中に含有させて投与することができる。本発明は、CTGFまたはその断片の発現または活性をモジュレートまたは調節する薬剤を必要とする患者に、CTGFに伴うECMの過剰産生の治療または予防のために適切な量で該薬剤を投与する治療方法を意図している。本発明の治療および予防方法は、被験動物、それは好ましくは哺乳動物で、最も好ましくはヒトであるが、その被験動物に有効量の該薬剤を投与することを含む。好ましい1実施形態においては、被験哺乳動物および投与される薬剤は同種の起源のものである。最も好ましくは、被験動物と投与される薬剤はヒト起源のものである。
【0099】
有効量は通常の実験で容易に定めることができ、同様に最も有効で便利な投与経路および最も適切な剤形も容易に定めることができる。当業界では種々の剤形とドラッグデリバリーシステムが利用可能である。例えば、Gennaro, A. R.編, 1990, Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Co., Easton PAを参照のこと。適切な投与経路としては例えば、経口、直腸、経粘膜、または腸内投与、ならびに筋肉内、皮下、脊髄内注射、ならびに髄腔内、心室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射を含む非経口送達が挙げられる。その組成物は全身的投与よりもむしろ局所へ投与することができる。例えば、CTGFの活性をモジュレート、調節、または阻害する薬剤を含む組成物は、注射により、または標的を定めたドラッグデリバリーシステムを用いて循環CTGFが過剰に存在するか、またはECMが過剰に産生されている領域へ、あるいはCTGF活性の阻害が望ましいと考えられる場所へ、しばしばデポ製剤または徐放性剤形で送達させることができる。
【0100】
本発明の医薬組成物は、従来から用いられている混合、溶解、顆粒化、糖衣錠化、磨砕(levigating)、乳化、カプセル封入、包み込み(entrapping)、または凍結乾燥プロセスなどの当業界では良く知られているいかなる方法を用いても製造することができる。上述のとおり、本発明の組成物は、活性分子が医薬品製剤中に含まれるように加工することが容易となるような賦形剤および佐剤などの1種以上の生理学的に許容しうる担体を含むことができる。適切な剤形は選んだ投与経路の如何による。
【0101】
例えば注射用には、該組成物は水溶液、好ましくはハンクス溶液、リンゲル液、または生理食塩液加バッファーなどの生理学的に適合しうるバッファー中に製剤化することができる。経粘膜投与には、貫通すべきバリアーに対して適切な浸透剤が製剤中に用いられる。そのような浸透剤は当業界では良く知られている。経口投与には、該化合物は活性化合物を当業界では良く知られている製剤学的に許容しうる担体と組み合わせることによって容易に製剤化することができる。そのような担体によって、被験動物が経口摂取するために本発明の化合物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などに製剤化することが可能となる。該化合物はまた、例えばカカオ脂またはその他のグリセリドなどの従来から用いられている座剤の基剤を含有させることにより座剤または浣腸剤などの直腸用組成物に製剤化することもできる。
【0102】
経口用医薬製剤は、固形の賦形剤と混合し、任意で混合物を破砕し、所望により適切な佐剤を添加した後に、その顆粒状混合物を加工して錠剤または糖衣錠のコアを得ることができる。適切な賦形剤としては、特に、乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム(gum tragacanth)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製品などの増量剤が挙げられる。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸の塩などの崩壊剤を添加してもよい。
【0103】
糖衣錠のコアは、適切なコーティングを施して提供される。この目的には、濃縮糖溶液を用いることができ、それには任意でアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポル(carbopol) ゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物が含まれていてもよい。識別または活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴づけるために、染料または顔料を錠剤または糖衣錠のコーティングに添加することができる。
【0104】
経口投与用の医薬製剤には、ゼラチンで作られた押込み合せ(push-fit)カプセル剤、ならびにゼラチン、およびグリコールもしくはソルビトールなどの可塑剤で作られた、軟質密閉カプセル剤が含まれる。押込み合せカプセル剤は、乳糖などの増量剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに任意で安定化剤と混合された形の有効成分を含有することができる。軟質カプセル剤では、活性化合物は脂肪油、液状パラフィン、もしくは液状ポリエチレングリコールなどの適切の液体中に溶解もしくは懸濁することができる。さらに安定化剤を添加することが出来る。経口投与用の製剤は全て経口投与に適した用量のものとすべきである。
【0105】
吸入による投与には、本発明で用いられる化合物は、加圧パックまたはネブライザーから、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、またはその他の適切な気体などの適切な噴射剤を用いてエアロゾルスプレーの形で便利に送達させることができる。加圧エアロゾルの場合には、定められた量を送達するためのバルブを備えることによって適切な投与単位を決定することができる。吸入剤または通気器に用いるための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジを製剤化することができる。これらは典型的には該化合物と乳糖もしくはデンプンなどの適切な粉末ベースとを混合した粉末を含有する。
【0106】
例えばボーラス注射または持続注入などの注射による非経口投与用に製剤化された組成物は、アンプルまたは複数回投与用容器中に保存剤を添加して単位投与量剤形とすることができる。その組成物は、油性もしくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、もしくは乳液の形態をとることができ、また、懸濁化剤、安定化剤、および/もしくは分散剤などの製剤補助剤(formulatory agent)を含有することができる。非経口投与のための製剤としては、水溶性の形態でCTGFもしくはその断片の活性に影響を及ぼす作用剤の水溶液が挙げられる。
【0107】
活性化合物の懸濁液は適切な油性注射用懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしてはゴマ油、およびオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポゾームが挙げられる。水性注射用懸濁液はカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘性を増加させる物質を含有することができる。任意で、高度濃縮溶液が調製できるように、その懸濁液には適切な安定化剤または化合物の溶解性を増大させる薬剤を含有させることもできる。あるいはまた、有効成分を適切なビヒクル、例えば発熱性物質を含まない滅菌水などで使用前に再構成するための粉末剤形とすることができる。
【0108】
本発明の組成物はデポ製剤に製剤化することもできる。そのような持続性製剤は埋め込み(例えば、皮下もしくは筋肉内に)によって、または筋肉内注射によって投与することができる。例えば、該化合物は適切なポリマー性もしくは疎水性物質(例えば許容しうる油中の乳剤として)またはイオン交換樹脂を用いて製剤化することができ、またはわずかに溶解性の誘導体、例えばわずかに溶解性の塩とすることができる。
【0109】
本発明の疎水性分子の医薬用担体としては、例えば、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、および水相を含む共溶剤系が挙げられる。共溶剤系はVPD 共溶剤系とすることができる。VPDは3% w/v ベンジルアルコール、8% w/v 非極性界面活性剤ポリソルベート80、および65% w/v ポリエチレングリコール300を無水エタノール中に含有させて作製された溶液である。VPD 共溶剤系(VPD:5W)はVPDを1:1で5%ブドウ糖水溶液で希釈したものからなる。この共溶剤系は疎水性化合物を溶解するために有効で全身投与を行っても毒性は低い。普通は、共溶剤系の比率はその溶解性と毒性の特性を壊すことなくかなりの程度変えることができる。さらに、共溶剤の構成成分のアイデンティティを変えることができる。例えば他の低毒性の非極性界面活性剤をポリソルベート80の替わりに用いることができ、ポリエチレングリコールの画分のサイズを変えることができ、その他の生物適合性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンをポリエチレングリコールと置換することができ、デキストロースの替わりとしてその他の糖類または多糖類を用いることができる。
【0110】
あるいはまた、他の疎水性分子のための送達系も用いることができる。リポゾームおよび乳剤は疎水性薬剤の送達ビヒクルもしくは担体の良く知られた例である。ジメチルスルホキシドなどのある種の有機溶剤も、通常は毒性がより高くなるという犠牲を払わねばならないが、用いることができる。さらに、該化合物は、投与しようとする組成物の有効量を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスなどの持続放出系を用いて送達させることができる。種々の徐放性材料が確立されており、当業者であれば利用することができる。徐放性カプセルは、その化学的性質によって、該化合物を2、3週間から100日間以上に至るまで放出する。該治療用薬剤の化学的性質および生物学的安定性の如何によっては、タンパク質安定化のための追加的方策を行うことができる。
【0111】
有効投与量
本治療方法で用いられるいかなる組成物においても、治療上有効な投与量を当業界で良く知られた種々の技法を用いてまず推測することができる。例えば、細胞培養アッセイにおいては、細胞培養で決定されるIC50を含む循環濃度の範囲を達成するために動物モデルで投与量を定めることができる。CTGF活性の阻害が望ましい場合には、例えば、CTGF活性の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度を決定することができる。ヒトの被験者に対して適切な投与量の範囲は細胞培養アッセイおよびその他動物での研究で得られたデータを用いて決定することができる。
【0112】
治療上有効な投与量とは、被験者において症状の改善または生存の延長をもたらすその分子の量を意味する。そのような分子の毒性および治療効力は細胞培養または実験動物を用いた標準的な医薬手法、例えばLD50(その集団の50%を致死させる投与量)およびED50(その集団の50%に治療上有効な投与量)の決定によって定めることができる。毒性を示す投与量と治療上有効な投与量との比が治療インデックスであり、それはLD50/ED50の比で表される。高い治療インデックスを示す分子が好ましい。
【0113】
投与量は好ましくは、ED50の値を含み毒性をほとんどもしくは全く示さない循環濃度の範囲内である。投与量はこの範囲内で、用いる投与剤形および用いる投与経路の如何によって変動させることができる。的確な剤形、投与経路、および投与量は被験者の状態の特質を考慮して選択される。
【0114】
所望のCTGF活性のモジュレートまたは調節に十分な活性部分の血漿中レベル、すなわち最小有効濃度(MEC)を提供するために、投与量および投与間隔は個々に調整することができる。MECは各化合物によって異なるが、in vitroのデータ、例えば、本明細書に記載のアッセイ方法を用いて骨の増殖を誘導するCTGFの50%〜90%の活性を達成するために必要な濃度などから推測することができる。
【0115】
MECを達成するために必要な投与量は個々の患者の特質と投与経路の如何による。組成物は、治療期間の約10%〜90%の期間、好ましくは治療期間の約30%〜90%の期間、最も好ましくは50%〜90%の期間で、MECより高い血漿レベルを維持するレジメンを用いて投与すべきである。局所投与または選択的吸収をさせる場合には、その薬剤の有効局所濃度は血漿中濃度と相関しない可能性がある。
【0116】
投与される組成物の量はもちろん多数の因子に依存している、そのような因子としては、限定はされないが、特定の被験者の体重、苦痛の重篤度、投与様式、担当医師の判断が挙げられる。
【0117】
包装形態
該組成物は、所望により、有効成分を含有する1以上の単位投与剤形を含んでいるパックまたはディスペンサーデバイスで提示することができる。そのパックは、例えば、ブリスターパックなどの金属製またはプラスチック製フォイルからなるものとすることができる。そのパックまたはディスペンサーデバイスには投与の説明書を添付することができる。適合させうる医薬担体中に製剤化された本発明の化合物を含む組成物も調製し、適切な容器中に入れ、適応症の治療用としての表示をすることができる。ラベル上に表示される適切な症状としては、軟骨または骨の刺激感応、創傷治癒、神経防護または同種のものが所望されるような障害または疾患の治療を含む。
【0118】
レセプター−リガンド複合体
上述のスクリーニング技法ならびに本発明の説明で適用しうる他の既知のスクリーニング技法の結果として、CTGF−リガンド複合体を形成することができる。このような複合体としては、リガンドがCTGFアンタゴニスト、CTGFアゴニスト、もしくはCTGFの発現および活性をモジュレートすることのできる何らかの分子である複合体が挙げられる。CTGFレセプターの部分的アゴニストまたはアンタゴニストは治療用および診断用に有用であろう。CTGF−薬剤複合体はそれ自体の特質から治療剤として、またはサンプル中のCTGFレベルの検出および定量法において有用である。CTGFの測定と定量は例えば、CTGF−リガンド複合体を検出することによって、当業界で利用可能な方法で行うことができる。例えば、Ennaらを参照のこと。
【0119】
D. 診断薬
本発明はさらに、細胞外マトリックス構成成分、とりわけ腎障害に伴うものの過剰な蓄積によって特徴づけられる組織の病変の存在を発見または診断する方法に関する。1つの方法は、糖尿病性神経障害および糖尿病性糸球体硬化症を含む糖尿病の発見または診断を含むものである。好ましい方法においては、発見または診断は患者からの尿サンプル中のCTGFレベルの測定によって行う。1実施形態においては、その方法は初回尿サンプル中のCTGFのレベルを測定し、このレベルを正常尿サンプル、すなわち腎障害のない被験体からのサンプル中に存在するCTGFのレベルと比較することを含む。初回サンプル中のCTGFレベルの上昇は対象の病的症状、例えば糖尿病または高血圧を示すものである。特に、腎障害のない被験体においてはCTGFの正常レベルはほぼ0である。糖尿病患者または感染もしくはその他の外傷を有する患者ではCTGFのレベルは顕著に上昇している。従って腎線維症の存在はサンプル中のCTGFのレベルの増加を検出することによって同定しうる。好ましい方法においては、該サンプルは尿サンプルなどの非侵入的サンプルである。尿サンプル中のCTGFレベルの評価は、例えば、CTGF特異的抗体を用いたELISAによって行うことができる。CTGFレベルの検出は、腎臓の合併症の発症前に糖尿病性高血圧またはその他の腎障害の進行または悪化を示すことができ、早期発見および診断の方法を提供する。さらに、CTGFレベルは、例えばどの糖尿病患者が腎疾患および障害を発症する素因を有するかどうかの予測因子として用いることができる。
【0120】
より一般的には、CTGFの特異的な形態またはCTGFの断片のレベルを含むCTGFのレベルの検出は、イムノアッセイ法、例えばELISA、RIA、またはタンパク質マーカーの存在を検出するための抗体を用いるその他の何らかのアッセイ法によって得ることができる。ELISAおよびRIA法が好ましく、例えば本発明のモノクローナル抗体をCTGFレベルの検出のためにそれらの方法に用いることができる。本発明の好ましい方法では、まず腎疾患または障害を患う疑いのあるもしくは患っていることが既知の患者から尿サンプルを得る。この第1サンプル中のCTGFのレベルを、例えばイムノアッセイを用いて測定し、腎疾患の存在または進行があるかを決定するために第2のサンプル中のCTGFレベルと比較するが、この第2サンプルは腎障害を有することが既知の患者から、または腎障害を全く有していないことが既知の患者から得たものである。同じ方法を腎疾患の進行をモニターするために用いることができる。
【0121】
より一般的には、標的ポリペプチドに対して特異的な抗体、例えばCTGFに対して特異的な抗体は、本発明においてCTGFの異常な発現に関連する腎障害および疾患の診断に有用である。CTGFについての診断的アッセイとしては、腎障害もしくは疾患を患っている疑いのある患者からのサンプル中のCTGFを検出するための抗体および標識を用いる方法が挙げられる。そのサンプルは、例えば、体液、細胞、組織、もしくは組織の抽出物、それは例えば、生検材料から顕微解剖した糸球体を含むが、それらのものが挙げられる。所望の特異性を有する抗体のスクリーニングおよび同定のために用いられるプロトコールは、サンプル中のCTGFまたは標的ポリペプチドの検出用にも用いることができる。
【0122】
好ましくは、本発明の診断法では、CTGF発現の正常または標準値は、腎疾患もしくは障害の存在、または腎疾患もしくは障害に対する素因を診断するための基準を提供するために確立される。本発明の方法のうちの1つにおいては、このことは正常な被験体から採取した体液もしくは細胞抽出物をCTGFに対する抗体と複合体形成に適した条件下で混合することによって行われる。そのような条件は当業界では良く知られている。標準の複合体形成量は、正常サンプル中の抗体−標的複合体のレベルを、既知の濃度の精製CTGFと混合した既知量の抗体が入っている陽性対照の希釈系列と比較して定量することができる。正常なサンプルから得られた標準値を、例えば、特定の実施形態においては、腎疾患もしくは障害を患う疑いのある被験体または腎線維症に関連する腎疾患もしくは障害に対する素因を有する被験体から得たサンプルでの値と比較することができる。標準値と被験体の値との間の偏差によって疾患状態の存在または素因が立証される。本発明の診断方法はまた、腎障害に対する素因もしくは罹患しやすさの発見に関する。このことは、例えば、特定の障害、例えば糖尿病を発症する素因もしくは罹患しやすさを示すマーカーを検出することによって行うことができる。そのマーカーは例えば遺伝的多型性を含むことができる。
【0123】
モノクローナル抗体は、例えば前掲に記載の方法によって検出することができる。CTGFに対するモノクローナル抗体は西洋ワサビペルオキシダーゼ、タンパク質フェリチン、酵素アルカリホスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼなどの適切な酵素とコンジュゲートさせることができる。これらの酵素と連結させた抗体調製物は、間接ELISA法で、例えば、未知の量のCTGFを含む尿サンプルと混合することができる。直接もしくはサンドイッチELISA法もこの同じ抗体を用いて行うことができるであろう。
【0124】
RIA技法も、例えば尿中のCTGFのレベルを測定するために用いることができる。例えば、CTGFは放射性標識を付して、CTGFに特異的なモノクローナル抗体および未知量の非標識CTGFを含んでいる血清サンプルと混合することができる。モノクローナル抗体との結合における標識CTGFと非標識のCTGFとの間の競合が生ずる。反応混液の放射活性量を測定することによって、サンプル中に存在するCTGFの量を定量的に測定することができる。例えば米国特許第4,438,209号および第4,591,573号を参照のこと。非競合的RIAも行うことができる。
【0125】
CTGFをコードするポリヌクレオチド配列をCTGF発現のレベルの増大に関連する症状もしくは疾患の診断用に用いることができる。例えば、CTGFをコードするポリヌクレオチド配列は、CTGF発現を検出するために、生検で得た体液もしくは組織のハイブリダイゼーションアッセイまたはPCRアッセイにおいて用いることができる。そのような定性もしくは定量法の形態としては、サザンもしくはノーザン分析、ドットブロット、またはその他のメンブレンをベースとする技法;PCR技法;ディップスティック、ピン、チップ、およびELISA技法が挙げられる。これらの技法の全ては当業界で良く知られており、市販の多数の診断キットの基礎となっている。
【0126】
本発明はさらに、線維症に伴う疾患および障害の治療のコースを受けている被験体から得たサンプル中のCTGFのレベルを測定することにより、ACE阻害剤の使用を含む抗線維症療法の有効性を評価するための方法を提供する。治療コースの前、途中、および後の種々の時点で被験者から採取した尿サンプルなどのサンプル中のCTGFレベルを測定することができる。治療の有効性は治療コースの異なる段階で採取されたサンプル中に存在するCTGFレベルの変動を調べて評価することができる。
【0127】
キット
本発明はサンプル、とりわけ液体サンプル中のCTGFを検出するためのキットを提供する。好ましい実施形態においては、本発明の診断キットは尿サンプル中のCTGFレベルを測定するための試薬を含んでいる。特定の実施形態においては、このキットは支持体に結合させたCTGFに特異的なモノクローナル抗体、および異なるCTGFエピトープに特異的でありかつ酵素で標識した第2のモノクローナル抗体を含む。そのキットはさらに酵素標識モノクローナル抗体を検出するための試薬を含む。その試薬キットは尿サンプル中のCTGFの測定に免疫学的な方法を用い、それによって腎臓の障害および疾患の発見およびモニターが可能となる。特定の実施形態においては、そのキットは、例えば糖尿病および高血圧によって引き起こされる線維症および硬化症障害の発見およびモニターが可能である。別の実施形態においてはそのキットは放射性標識または蛍光標識抗体を酵素標識抗体の替わりに含む。
【0128】
1実施形態においては、本発明の診断キットは、免疫組織化学的技法を用いた組織サンプル中のCTGFの検出において有用なエレメントを含む。そのキットは、例えば画像分析またはその他の同様な技法による組織サンプル中のCTGFレベルの定量的測定が可能となるようなソフトウェアプラグラムと組み合わせて用いられる。例えば、Riserら, 1996, Am. J. Path. 前掲の文献を参照のこと。別の実施形態は組織サンプル中のCTGF mRNAのレベルを検出し測定するための診断キットを提供する。1実施形態においては、キットはCTGF mRNAをDNAへ逆転写するために用いられる試薬を含む。そのキットは、CTGF特異的DNAを増幅するために必要な、CTGFまたはその断片をコードするポリヌクレオチドに相補的なプライマーを含む試薬をさらに含むことができる。そのキットはまた、サンプル中に存在するCTGF mRNAレベルの定量に用いるための競合的疑似体または変異体cDNAを含むことができる。
【0129】
好ましい実施形態においては、本発明の診断キットは、例えば、そのキットに必要なエレメントおよびその診断キットの使用に関する使用表示および説明書を備えた箱もしくは容器中に包装および表示される。
【0130】
下記の実施例は本発明をさらに詳細に説明するものである。下記の調製品および実施例は当業者がより明確に理解し本発明を実施することができるように示したものである。しかし、本発明は例示した実施形態、それらは本発明の単一の態様を説明することのみを意図したものであるが、それらの実施形態にその範囲を限定されるものではなく、機能的に等価な方法は本発明の範囲内に含まれる。事実、本明細書に記載したものに加えて本発明に種々の変更を加えうることは当業者であれば前述の説明および添付の図面から明白なものとなろう。そのような変更は添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図している。
【0131】
VI. 実施例
特に記載しない限り、本発明の実施例では以下の材料および方法を使用した。
【0132】
細胞および組織培養
メサンギウム細胞は、フィッシャーラット糸球体の派生物に由来するクローニング系であり、連続継代したところ、これらのメサンギウム細胞はキーマーカーを発現し続ける(例えばRiserら, 1998, J. Am. Soc. Nephrol. 9:827-836を参照されたい)。使用した培地は、ペニシリンおよびストレプトマイシンと、および特に記載しない限りは5mMグルコースとを加えたRPMI1640であった。増殖培地は20% Nu-血清(Collaborative Research, Bedford, MA)を含むものであった。特に記載しない限り、メサンギウム細胞は、約4日間増殖培地中で培養し、集密的状態に達したときに、無血清培地で2回洗浄し、0.5% FCS(ウシ胎児血清)の血清枯渇条件下で24〜48時間インキュベートした。次にこの培養物の実験処理したものおよび実験処理していないものを、新しい維持培地(0.5FCS)中で所定期間インキュベートした。これらの実験で使用したFCS濃度で、高感度ミンク肺バイオアッセイにより測定したところ、この新しい培地中において活性なTGF-β1、TGF-β2またはTGF-β3は検出されなかった(例えばRiserら, 1996, Am. J. Pathology(前掲)を参照されたい)。ノーザン分析で使用した腎線維芽細胞は、マウス尿細管間質性線維芽細胞(TFB)であった(例えばAlverezら, 1998, Kidney Int. 41: 14-23を参照されたい)。
【0133】
動物および検体の収集
糖尿病雄db/dbマウスおよびこれらの非糖尿病db/m同腹子を、Jackson Laboratories (Bar Harbor, ME)から入手した。db/dbマウスは、主な体重調節ホルモンであるレプチン(leptin)の欠陥受容体遺伝子を保持している(例えばHummelら, 1966, Science 153: 1127-1128を参照されたい)。これらのマウスは3〜4週齢で肥満となり、高血糖症を発症する。関連する腎症には、蛋白尿、および5〜7ヶ月までに発症するメサンギウム基質が増大したメサンギウム拡張が含まれる(例えばCohenら, 1995, J. Clin. Invest. 95: 2338-2345を参照されたい)。この実験において、マウスを5ヶ月齢で犠牲にした。試験中および犠牲時に、キット(Glucose Procedure No. 510キット、Sigma Diagnostic, St. Louis, MO)で供給されているグルコースオキシダーゼ-ペルオキシダーゼ反応に基づく比色分析法を用いて血中グルコースレベルを測定した。代謝ケージに24時間馴化させた後、2つの連続24時間の尿サンプルを回収した。回収期間の最後に、回収漏斗を含むケージの下方部分を蒸留水で濯ぎ、最終的なサンプル体積を記録した。タンパク質-染料結合を利用したタンパク質の量をμg単位で定量するための方法に従って、この尿中のタンパク質濃度を測定した(例えばBradford, 1976, Anal. Biochem. 72:248-254を参照されたい)。
【0134】
酸素/エーテル混合物による麻酔後、腹腔を開き、23ゲージ針を大動脈に挿入して、10mMバナジル(vanadyl)リボヌクレオシド複合体(VRC)、RNアーゼインヒビター(Gibco/BRL, Grand Island, NY)を含む(4%BSAを含むRPMI)の氷冷灌流用緩衝液4mlで腎臓を灌流した。この灌流中に急冷した0.9%食塩水を腎臓の上に注いだ。次に腎臓を取りだし、右腎臓を液体窒素の中で冷凍し、次にRNA抽出およびノーザン分析にかけた。左腎臓の薄い球欠切片を速やかに得た。1区画を3.8%パラホルムアルデヒド中で固定し、パラフィルム中に包埋し、過ヨウ素酸シッフ(PAS)で染色して光学顕微鏡で評価した。残った切片は、糸球体顕微解剖、および単離した糸球体の逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)で使用した。使用した方法は、糸球体mRNAレベルを測定するための既知の方法を改変したものであった(例えばPetenら, 1003, Kidney Int 39: S55-S58を参照されたい)。10mM VRCを含むHBSSの緩衝液の中に組織切片を入れた後、50分に未たないうちに各腎臓から50個の糸球体を切り出した。次に糸球体を、30μlのリンス緩衝液(5mM DTTおよび50ユニット/mlのヒト胎盤リボヌクレアーゼインヒビター(Boeringer Mannheim, Indianapolis, IN)を含むHBSS)が入ったPCR試験管に移した。遠心分離にかけた後、上清を除去し、糸球体が存在するか否かを顕微鏡で観察した。溶解用液(2% Triton X-100を含むリンス緩衝液)7μlを加え、処理するまでサンプルを-70℃で保存した。これらの手順は全て4℃で行った。
【0135】
対照マウスおよび糖尿病マウスから得た実験サンプルを氷上で解凍した後、冷凍/解凍サイクルにさらに2回かけて、糸球体を溶解した。次にオリゴ(dT)をプライマーとして使用し、cDNA合成キット(Boehringer Mannheim)を用いてRT反応を行った。逆転写酵素を加えていない糸球体を含む反応、または逆転写酵素を加えたが糸球体を含まない反応を、陰性対照とした。反応混合物を42℃で60分間インキュベートしたあと、4℃で10分間冷やした。次にサンプルを蒸留水で1:10の比で希釈し、PCRが完了するまで-70℃で冷凍した。
【0136】
光学顕微鏡による腎組織の評価
腎臓1つ当り5〜6個の非連続的6μm切片をPAS染色して検査した。メサンギウム硬化をゼロから4(0〜4)の段階で評点した。ここで(0)は損傷が無いことを表し、(1)は最少のメサンギウム拡張を表し、(2)はメサンギウム拡張および/または基底膜肥厚を表し、(3)は顕著なメサンギウム肥厚、ある程度の管腔の崩壊、および時折見られる完全に硬化した小葉を表し、そして(4)は散在性の毛細管腔の崩壊およびふさ状分岐の75%以上を含む硬化を表す。腎臓1つあたり全部で100〜150個の糸球体を、その検体の起源を知らない観察者が評点した。明白に評価できたメサンギウム領域を示す糸球体プロフィールのみを評点した。
【0137】
競合 PCR およびノーザンブロット
GeneAmp DNA増幅キット(Perkin-Elmer Cetus, Norwalk, CT)および9600サーマルサイクラー(Perkin Elmer)を用いて全てのPCRを行った。定量のために、cDNA模倣体を用いて競合PCR反応を行った。複製サイクルを38回行った。各サンプルにつき5つのPCR試験管を用意した。一連の各試験管には、一定量の野生型cDNAと、濃度を順に低くしたcDNA模倣体とを含ませた。産物をアガロースゲル電気泳動により分離し、エチジウムブロミド染色法により可視化した。走査デンシトメトリー(Howtek, Scanmaster 3+ Densitometer, Hudson, NH)によりバンドをデジタル化し、画像分析(Twilight Clone BBS, Silver Springs, MDより入手したNIH Image, v. 1.59)により定量化した。(野生型/模倣体)対(投入突然変異体濃度の逆数)の比のプロットを構築し、得られた一次再帰から糸球体cDNAの量を決定した。先に記載したようにノーザン分析を行った後、液体窒素で冷却したステンレススチールモルタルの中でサンプルを砕き、RNA Stat-60試薬(Tel-Test Inc., Friendswood, TX)1.0mlの中で均質化した。個々のmRNAおよび対応するcDNA用のプローブを、Sigma Prime-1キット(Sigma Chemical)を用いたランダム六量体プライマー法により32Pで標識した。オートラジオグラムを走査デンシトメトリーによりデジタル化し、上記のように定量した。
【0138】
プライマー、プローブ、および cDNA 模倣体
ヒトおよびマウスCTGF(fisp 12)遺伝子間の保存配列に基づいて、CTGFのプライマーを設計および合成した。プライマー(プライマーRおよびプライマーF)は、以下の通りであった:プライマーF:5’-GAG TGG GTG TGT GAC GAG CCC AA G G-3’およびプライマーR:5’ ATG TCT CCG TAC ATC TTC CTG TAG T-3’。増幅産物のサイズは558bpであった。この配列は、PCRスクリプト(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)中にクローニングして確認した。2つのクローンを配列決定したところ、同一であった。PCR模倣体構築キット(K1700-1, Clontech)を用いて競合cDNA模倣体を生成した。各模倣体毎に、まずCTGF標的遺伝子配列を含む2つの複合プライマー(3’および5’)と、該キットで提供される異種DNA断片の反対側の鎖にハイブリダイズするよう設計された20ヌクレオチドストレッチと、を作製した。次にこれらの所望のプライマー配列をPCR増幅中にこの断片の中に組み込んだ。次に該遺伝子特異的プライマーのみを用いて、1回目のPCR反応の希釈物を増幅した。これにより、全ての模倣体分子が完全な遺伝子特異的配列を有していたことが確認された。次に該模倣体をCHROMA SPIN TE-100カラム(Clontech)に通過させて精製した。この方法により、サイズ(200〜650bp)は、一般的なDNA断片の中の該複合プライマーに適した配列を選択することにより、調節することができた。得られたcDNAは同じ反応において同じプライマーに対して同等の基準で競合する。CTGF模倣体のアンプリマー(amplimer)のサイズは496bpであった。
【0139】
ラットフィブロネクチンcDNAのプライマー(プライマーFおよびプライマーR)は、プライマーF:5’ TGC CAC TGT TCT CCT ACG TG 3’およびプライマーR:5’-ATG CTT TGA CCC TTA CAC GG 3’であった。フィブロネクチンの競合模倣体を上記のように構築した。増幅産物は約312bp(サンプル)および474bp(模倣体)であった。GAPDHのプライマー(Clontech Laboratories, Palo Alto, CA)は985bpの増幅断片を生成した。GAPDH競合模倣体を上記のように構築したところ、604bpの断片を生成した。ノーザン分析のためのcDNAプローブは、ラットおよびマウスと共有しているヒトCTGFの配列に由来するものであった。
【0140】
組換え CTGF および抗 CTGF 抗体の産生
バキュロウイルス発現系を用いて組換えヒトCTGFタンパク質(rhCTGF)を作製した。ATG開始コドンおよびTGA停止コドンのすぐ両端に隣接するBamHI部位で遺伝子操作したプライマー(順方向プライマー5’-GCT CCG CCC GCA GTG GGA TCC ATG ACC GCC GCC-3’;逆方向プライマー5’-GGA TCC GGA TCC TCA TGC CAT GTC TCC GTA-3’)を用いて1047bpのヒトCTGFオープンリーディングフレームを増幅した。2075bpの全CTGF cDNAを含むClone DB60R32と呼ばれるクローンを鋳型として用いた。増幅産物をGibco/BRLより入手したpFastBac IのBamHI部位中にサブクローニングし、挿入配向を分析し、両方のDNA鎖を配列決定することにより証明した。CTGF cDNAを含む組換えバキュロウイルスの作製は、Gibco/BRL(pFastBac発現系)により概説されたように行った。組換えバキュロウイルス株を単離し、高ウイルス力価にまで増殖させ、High Five昆虫細胞を感染させてCTGFを発現させるのに使用した。組換えCTGFをヘパリンセファロースアフィニティークロマトグラフィーにより上記のように精製した。rhCTGFを含むピーク画分を、イムノブロットおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-ポリアクリルアミドゲルのクーマシー染色法により測定した。
【0141】
2つの抗CTGF抗体を使用した。まず、CTGFのカルボキシ末端に特異的なアミノ酸329〜343(CPG DND IFE SLY YRK)に対応するキーホールリンペットヘモシアニン結合合成ペプチドでウサギを免疫することにより、抗CTGFポリクローナル(pAb839と呼ぶ)を調製した。BSAにコンジュゲートさせプラスチックに吸着させたペプチドを用いてELISAにより抗体の産生をモニターした。標準的なプロトコール(例えば1988, A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor, New Yorkを参照されたい)を用いて、抗CTGF抗体をCPG DND IFE SLY YRK-セファロースペプチドカラムに通過させてアフィニティー精製した。ペプチド遮断試験により、ウェスタンイムノブロットアッセイにおけるCTGFに対するpAb839の単特異性が確認された。またウェスタンイムノブロット分析により、pAb839が変形されたコンホメーション(reduced conformation)においてのみCTGFを認識したことも分かった。精製したバキュロウイルス由来全長rhCTGFタンパク質で免疫することによりニワトリ中で第2の抗体pIgY3ポリクローナルを生じさせ、次にそれをrhCTGF-セファロースカラムを通してアフィニティー精製した(例えばKothapalliら, 1997, Cell Growth & Differentiation 8: 61-68を参照されたい)。
【0142】
ELISA:当分野で記載された手法(例えばRiserら, 1992, J. Clin. Invest. 90: 1932-1943を参照されたい)を用いて、培養基中に分泌された特定の細胞外マトリックス成分の量をELISAにより定量した。メサンギウム細胞培養において、0.5〜1% FCSを含む培地がフィブロネクチンおよびコラーゲンの回収には最適であることが既に分かっている(例えばRiserら, 1992, J. Clin. Invest(前掲)を参照されたい)。培養基の実験サンプルを3回試験した。精製したマトリックス成分(同培地で希釈)を標準物として試験を行った(0.5〜500ng/ウェル)。全ての抗血清を、細胞外マトリックス標準物を用いて、ブロッキングを行ったものおよびブロッキングを行わないものに対して、使用前にイムノブロットによりそれらの特異性について試験した。色の強度をTitertek Multiscan MCC/340 (Flow Laboratories, McLean, VA)で測定し、その結果をカーブフィッターコンピュータプログラム(Interactive Microware Inc., State College, PA)を用いて分析した。
【0143】
間接的ELISAを用いて馴化培地中におけるCTGFレベルを定量した。96ウェルプレートのマイクロタイターウェルを培地サンプルまたはrhCTGF標準物で(50μl/ウェル)室温にて2時間コーティングした。これらのウェルをダルベッコのリン酸緩衝食塩水(D-PBS)で4回洗浄した後、D-PBS中に1% BSA, 0.05% Tween 20を含むブロッキングバッファー中pIgY3抗体(1.25μg/ml)(50μl/ウェル)と共に60分間インキュベートした。D-PBSで洗浄した後、全てのウェルに、ブロッキングバッファー中に1:6400に希釈したHRPコンジュゲート化ウサギ抗ニワトリIgG(Zymed Laboratories Inc., South San Francisco, CA)を加えて、30分間おいた。基質TMB-ELISA(GibcoBRL)を室温で15分間加えた。1M硫酸を用いて反応を停止し、発色した色をELISAマルチスキャン分光光度計(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で450nmにて測定した。rhCTGF標準抗原の3pg〜3ng/ウェルの連続希釈を用いた対数標準曲線を用いて、サンプル中に存在するCTGFタンパク質の量を測定した。
【0144】
ヘパリンセファロース沈降およびイムノブロット:CTGFタンパク質発現を分析するために、馴化培地を回収し、ヘパリン結合タンパク質を、ヘパリンセファロースCL-6Bビーズ(Pharmacia, Pisctaway, NJ)と上下倒立混合により4℃にて4時間混合することによって沈降させた。該ビーズを、150mM NaCl、50mM Tris-HCL、pH7.5、 1% Triton X-100、1% デオキシコレート、0.1% SDSおよび2mM EDTAを含む氷冷RIPA細胞溶解緩衝液で3回洗浄した。次に結合したタンパク質を、62mM Tris-HCl、pH6.8、2.3% SDS、10%グリセロールおよびブロモフェノールブルーを含むSDSサンプル緩衝液中で5分間、非還元条件下または5%メルカプトエタノールを含む還元条件下にて煮沸することにより溶出した。溶出したヘパリン結合タンパク質を4〜20% SDS-ポリアクリルアミドゲル中で分離し、ニトロセルロースフィルタ(Schleicher and Schuell, Keene, NH)に140mAにて2時間かけて電気泳動により転写した。該フィルタを、TTBS(150mM NaCl、50mM Tris、0.2% Tween-20、5% BSA、pH7.4)を含むブロッキングバッファーで室温にて2時間かけてブロックした後、該ブロッキングバッファー中抗CTGF抗体(0.5μg/ml)と共に40分間インキュベートすることにより、CTGFについてプローブした。37℃にて大量の液で洗浄した後、該フィルタを、ブロッキングバッファーに1:12,000希釈したHRPコンジュゲートロバ抗ウサギIgG(Amersham, Arlington Heights, IL)またはHRPコンジュゲートウサギ抗ニワトリIgG(Zymed, South San Francisco, CA)と共にインキュベートした。SuperSignal化学発光基質(Pierce, Rockford, IL)を用いて免疫反応性を検出した。
【0145】
更なる試薬:標準物として使用した精製細胞外成分は、ラットコラーゲンI(Upstate Biotechnology Inc., Lake Placid, NY)およびラットフィブロネクチン(Chemicon International Inc., Temecula, CA)であった。これらに対する抗体としてポリクローナル抗ラットコラーゲンIおよび抗ラットフィブロネクチンをELISAで使用した。予備実験において、該ポリクローナル抗ラットコラーゲンI抗体はフィブロネクチンやラミニンと交差反応しなかったし、また抗ラットフィブロネクチン抗体はコラーゲンIやラミニンと交差反応しなかった。刺激実験で使用したTGF-βは、ヒトTGF-β2(Celtrix Corporation, Santa Clara, CA)であった。この組換えサイトカインをチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で産生し、次に既に報告されている技術(例えば1991, Ogawaら, 1991, Methods in Enzymology 198: 317-327を参照されたい)によって精製した。1.D 11.1と呼ばれるモノクローナル抗体は、TGF-β1、TGF-β2およびTGF-β3(Genzyme Corporation, Cambridge, MA)を中和する。
【0146】
統計的分析:データは、平均値+SEM(標準誤差平均)で表した。組織培養データでは、特に記載しない限り、2つのグループ間の差はペア・スチューデントt検定を用いて評価した。ペア検定を用いたのは、検査するメサンギウム細胞がクローン化状態(cloned nature)であるためである。結果が対照値に対応するように標準化された場合は、データは、試験グループを対照と比較するために100%の仮説平均で1-サンプルt検定により分析した。ペア・2-サンプルt検定は、3つの試験グループ間の差を調べるために用いた。どちらの場合においても、複数比較を行えるようにするために、この後でHolmのテストを適用した(例えばHolm, 1979, Scan J. Statist. 6: 65-70を参照されたい)。組織学的データでは、各腎臓の糸球体における平均硬化スコアを計算し、糖尿病グループと対照グループとの統計的相違度を非ペアt検定で決定した。
【0147】
A. CTGF は、糖尿病を含む腎臓疾患の病因における重要な因子である
本発明で提供される実施例は、糸球体細胞によるCTGFタンパク質の産生および糖尿病性糸球体硬化症の病因における潜在的に重要な因子としてのその役割を示す初めての証拠を提供する。高血糖症および糸球体高血圧症は、糖尿病性糸球体硬化症の2つの主なよくある周知の原因である。本発明以前に、糸球体硬化症の発症におけるCTGFの役割は研究されていなかった。以下の実施例は、CTGFが培養メサンギウム細胞を刺激して、細胞外マトリックス成分を産生、沈積および蓄積することを示す。またこれらの実施例は、内因性CTGFの誘導が、グルコース濃度の上昇、外因性TGF-βおよび物理的歪みにより引き起こされることも示す。
【0148】
実施例2に示されるように、CTGF mRNAは、通常の動物の腎臓全体において発現され、そのレベルは、心臓および脳に比べて高い。このことは、内因性産生CTGFが腎臓の細胞外マトリックスの通常の代謝回転に関与していることを示唆している。しかし、培養メサンギウム細胞において示された構成的CTGF mRNAの発現レベルの低さは、この細胞型が、腎臓組織の塊を形成する細胞(すなわち管状上皮細胞)におけるものとは異なるCTGF生成の制御メカニズムを有し得ることを示唆している。非刺激条件下においてメサンギウム細胞で観察されるCTGF mRNAの発現の低さは、培養培地中へのCTGFタンパク質の見かけ放出量が少ないことと関連している(実施例3を参照されたい)。CTGFタンパク質は、36および38kD分子種として存在していた。大きい方のタンパク質のサイズは、遺伝子解析より推定される全長CTGF分子のサイズと同じであったが、小さい方のペプチドは、CTGFのN末端側半分において異なるN-グリコシル化を示し得る。昆虫細胞および哺乳動物細胞の両方において、ツニカマイシンでの前処理(糖タンパク質のN-グリコシル化を阻害する)により、大きい方のCTGFバンドの移動が減って、小さい方の分子と同じ所に位置することが分かった。メサンギウム細胞で観察されたこれらの分子種のサイズは、血管内皮細胞および線維芽細胞により分泌されるものと同程度である(例えばBradhamら, 1991(前掲);Kothapalliら, 1997(前掲);およびSteffenら, 1998, Growth Factors 15: 199-213を参照されたい)。メサンギウム培養の馴化培地で検出されるCTGFの量が少ないのは、その合成が低レベルであるからではなく、むしろ該タンパク質の培地中への放出が制限されていることによるものであった。これは、ナトリウム-ヘパリンが培地中で測定されるCTGFタンパク質のレベルを大幅に増大させることができることにより示された(実施例3を参照されたい)。これらの結果は、メサンギウム細胞により合成されたCTGFのうちの80%もの量が、細胞または基質に結合したまま残ることを示唆している。定量アッセイにおいて、ヘパリンの存在下において、メサンギウム細胞は各24時間周期のうちに細胞106個あたり約7ngのCTGFを分泌することが示されている(実施例3を参照されたい)。
【0149】
CTGFが細胞外マトリックスの蓄積を刺激すると仮定して、糖尿病性糸球体症の発症に関与する既知の因子がCTGF mRNA発現を変化させるか否かを調べた。高濃度の細胞外グルコースは、CTGF mRNAのレベルおよびメサンギウム細胞中のCTGFタンパク質の産生を著しく増大させた(実施例4を参照されたい)。同様に、TGF-βも、CTGF mRNAおよびタンパク質の発現をアップレギュレートする。TGF-βに応答して起こる強力なアップレギュレーションにより、低分子量CTGF種(約18kDのサイズに相当し、これは全長CTGF分子のおよそ半分である)の著しい誘導があった(実施例2および図6を参照されたい)。ヘパリン-セファロースカラムから回収したこの低分子量CTGF種のサイズおよび特性は、これがトロンボスポンジン1およびCTGFのC末端モジュールの両方を含むことを示した。刺激後にメサンギウム細胞に見られる該低分子量種は、該全長分子に比べて異なる生物学的活性を有し得る。メサンギウム細胞中のTGF-βの分泌は周囲のグルコース濃度の増大により刺激されるので、高グルコースによるCTGFのこの観察された誘導は、TGF-βの作用により間接的に媒介されて生じ得る。実施例5に記載される中和実験は、TGF-β抗体とのインキュベーションによりCTGF刺激が完全にブロックされたので、該プロセスにおけるサイトカインの直接的な役割を示した(実施例8を参照されたい)。
【0150】
周期的物理的歪みについても、CTGF発現における可能な調節エレメントとして調べた。結果は、引っ張りが、CTGF mRNAレベルのアップレギュレートを刺激する可能性があることを示した(実施例7および図10を参照されたい)。引っ張った後のCTGF mRNAの急激な誘導は、TGF-βの産生および/または活性が、物理的歪みの初期的影響を媒介するのに必要はないことを示唆している。周期的歪みは、TGF-β1の合成および活性化を誘導するが、この効果は、物理的刺激の48〜72時間後にならないと明らかにならない(例えばRiserら, 1992, Am. J. Path.(前掲)を参照されたい)。またこれらの研究は、TGF-βおよびCTGFがメサンギウム細胞中におけるそれ自身の発現を自己誘導することができることも示した(実施例3および図3を参照されたい)。このCTGFの自己誘導作用は、このような作用がCTGFについて観察されたのが最初の例である。さらに、この作用は、外因性CTGFがTGF-β転写産物レベルに対して影響を及ぼさないことから、選択的であると思われる(図3を参照されたい)。これらの発見は、いったんTGF-βにより刺激されると、メサンギウム細胞中のCTGF mRNAレベルは更なるTGF-β活性が無くても上昇したまま維持することができ、これにより細胞外マトリックス合成および沈積が引き続き増強され得ることを示唆した。このことは、TGF-β中和によってメサンギウム細胞およびメサンギウムにおける細胞外マトリックス産生を全体としてブロックすることが普通は不可能であることを説明するものである(例えばBorderら, 1990(前掲);Sharmaら, 1996(前掲);およびZiyadehら, 1994(前掲)を参照されたい)。
【0151】
db/dbマウスにおけるCTGF mRNAの定量的糸球体発現(実施例10を参照されたい)は、CTGFの作用が、糖尿病における糸球体細胞外マトリックス沈積の開始における要因であることを示した。CTGF mRNAは正常な糸球体において発現されるが、そのレベルは、短期の糖尿病の後から顕性糸球体疾患の発症前までに急激に28倍アップレギュレートされる(実施例10を参照されたい)。これらの実施例で示されるように、糸球体フィブロネクチンmRNAレベルが増大したときにCTGF mRNAのアップレギュレーションが起こった。しかし、糸球体メサンギウム拡張は最小限であり、蛋白尿症は微々たるものであった。実施例10で示されるように腎臓全体で観察されたCTGFのアップレギュレーションが糸球体に比べてかなり低いことは、CTGFが少なくとも腎症の初期の段階においては、糸球体変化の誘導に本質的に関与していることを示す。しかし、糖尿病性腎症のさらに進行した段階では、CTGFは尿細管間質性疾患の重要な誘導物質となり得る。
【0152】
まとめると、以下の実施例は主に、糸球体TGF-β発現の増強に加え、CTGFアップレギュレーションが、メサンギウム細胞による細胞外マトリックスの過剰な沈積における重要な要因であることを示す。このCTGFアップレギュレーションは、高いグルコース濃度と細胞の物理的歪みとの組合せにより、TGF-β刺激に依存する経路および依存しない経路の両方を介して駆動される。
【0153】
B. CTGF の存在と、糖尿病を含む腎障害の発症および進行との関連を実証する実験データ
実施例1:メサンギウム細胞の細胞外マトリックス生成において CTGF で誘導される変化 細胞外マトリックスのメサンギウム細胞生成に対する外因性CTGFの影響を確認するために、血清欠乏細胞を、20 ng/mlのrhCTGFを含有する培地に48時間曝露した。比較のために、外因性CTGFを含有せず、2ng/mlのTGF-βまたは20 mMグルコースのいずれかを含有する培地中で別の培養物をインキュベートした。予想した通り、外因性TGF-βおよび高グルコース濃度により、分泌フィブロネクチンの量は、図1Aに示すように対照と比べてそれぞれ23および30%増加した。培地中の外因性CTGFの存在も、フィブロネクチン分泌を効率的に45%促進した。フィブロネクチンと同様に、分泌コラーゲンI型の量も、図1Bに示すように、CTGFで64%、TGF-βで50%、および高グルコースで22%増加した。
【0154】
実施例2:腎臓およびメサンギウム細胞 CTGF 発現: TGF- βによる調節 CTGF mRNAが培養ラットメサンギウム細胞により発現したのか否かを確認し、その結果を全腎臓から得た結果と比較した。図2に示すように、ノーザン分析から、メサンギウム細胞および全腎臓中に単一の2.4 kb CTGF転写物が示されたが、対照的に、培養腎臓線維芽細胞における検出可能なメッセージは明らかでなかった。他の組織と比較した場合、最も高い発現は腎臓内で生じており、脳における場合より約20倍高かった。
【0155】
TGF-βがCTGFメッセージのメサンギウム細胞発現における調節因子であるか否かを確認するために、細胞を血清欠乏させ、2 ng/mlのTGF-βに24時間曝露し、次いでmRNAをプローブした。TGF-β転写物レベルの変化もモニターした。外因性TGF-β曝露により、図3Aおよび図3Bに示すように、CTGF mRNAの発現が4倍以上増加し、その一方でTGF-β mRNAが80%増加した(図3Aおよび3Cを参照のこと)。CTGFがそれ自身の発現またはTGF-βの発現を調節することができるかどうかを確認するために、メサンギウム細胞を20 ng/mlのrhCTGFにも曝露した。図3Aおよび図3Cに示すように、この処理によりTGF-β mRNAのレベルは変化しなかったが、対照的に、図3Aおよび図3Bに示すようにCTGFメッセージを強く自己誘導した。
【0156】
非刺激型メサンギウム細胞における低いCTGF mRNA発現が、対応するタンパク質の検出可能な生成を伴うかどうかを明らかにするために、かつTGF-βの作用を確認するために、細胞を血清欠乏させ、新しい維持培地中でさらに24時間、2 ng/ml外因性TGF-βの存在下または不在下で培養した。その後馴化培地をヘパリン-硫酸沈降させ、2つの異なる抗CTGF抗体を使用したイムノブロッティングにより分析した。完全長rhCTGFに対して行ったpIgY3抗体を用いたイムノブロッティングは、基礎となる非刺激条件下で、メサンギウム細胞が非常に少量のCTGFを分泌することを実証した(図4Aを参照のこと)。しかし、TGF-βに曝露すると、CTGFタンパク質の分泌は顕著に促進された。これらの培養液中で検出された優勢生成物は、標準組換え体と同じ位置まで移動した。CTGFにユニークな15個のアミノ酸配列に対して産生させたpAb839抗体を使用した、同じサンプルのイムノブロッティングにより、検出されたタンパク質の正体を確認した(図4Bを参照のこと)。
【0157】
実施例3:メサンギウム細胞中の CTGF の検出 上記メサンギウム細胞培養物中に検出したCTGFタンパク質は、培地に存在する遊離分子である。CTGF内のヘパリン結合ドメインの存在は、合成および放出されるタンパク質の実質的な部分が、細胞表面上または細胞外マトリックス中に存在するプロテオグリカンまたはフィブロネクチンに結合して存在することを示唆する。これが事実であるかどうかを確認し、かつ非刺激条件下で細胞外環境にCTGFが現れる時間経過を測定するために、メサンギウム細胞培養物を血清欠乏させ、50μg/mlのヘパリンナトリウムを含有する新しい維持培地を添加した。所定のインキュベーション時間後に、馴化培地を回収し、大部分のサンプルをプールし、ヘパリン-硫酸沈降させた。4時間目のサンプルをイムノブロッティングすると、約36および39 kDにおいて不鮮明なCTGFバンドが形成された(図5Aを参照のこと)。これらのバンドの強度は24時間毎に急激に増大し、72時間のインキュベーション時間を通じて増大し続けた。完全長CTGFバンドの強度が強い48および72時間目には、電気泳動移動度が約20 kDの別の不鮮明なバンドも検出されうる。先に実証したように、ヘパリンナトリウムの不在下では、培地中に存在するCTGFはほとんど検出されず、生成されたCTGFタンパク質の大部分が細胞および/または基質に結合したことを示唆している。イムノブロッティングは主に定性的アッセイであるため、個々の上清を、それらをプールおよび沈降させる前にELISAにより評価した。その結果を細胞ごとに基づいて表した。この高度に定量的なアッセイは、時間に伴うCTGFの増加を明らかにし、図5Bに示すように24時間の間に約7 ng/106細胞が分泌された。合計72時間の間に培地に分泌されたCTGFの量は、ヘパリンの不在下では20%まで減少した。
【0158】
後続する実験においては、TGF-βによる分泌CTGFの調節を、ヘパリンの存在下で再度試験した。つまり、メサンギウム細胞を血清欠乏させ、50μg/mlのヘパリンナトリウムおよび2 ng/ml TGF-βを含有する維持培地中で48時間インキュベートした。プールし沈降された培地サンプルのイムノブロッティングから、TGF-βが、図6Aに示すように完全長(36〜39 kDa)CTGFの分泌を顕著に増加させたことが示された。しかし、さらにはっきりしていたのは、18〜20 kDaの位置に現れた分子の誘導である。この小さい方の成分は、完全長CTGF分子の半分の大きさに対応する。イムノブロッティングのためのプールおよび沈降の前に行う、ELISAによる個々のサンプルの定量分析は、TGF-β処理に応答して合計分泌CTGF量が2.5倍に増強されたことを実証した(図6Bを参照のこと)。
【0159】
実施例4: CTGF のメサンギウム細胞発現:グルコース濃度による調節 CTGF発現が周囲グルコース濃度によっても変化しうることを確認するために、5 mMグルコース中で継続的に増殖させたギサンギウム細胞培養物を、35 mMグルコースを含有する増殖培地中で14日間インキュベートした。この時間は、先の研究からECMタンパク質産生の完全な誘導のためにはこの時間が必要であることが明らかにされていることから選択した(例えば、1997, J. Am. Soc. Nephrology、前掲を参照のこと)。図7に示すように、5 mMグルコース濃度を含む培地中で増殖させたメサンギウム細胞は、最小限レベルのCTGFメッセージを示した。しかし、増加したグルコース濃度に対する長期間の曝露の後には、CTGFのメサンギウム細胞転写物は顕著にアップレギュレートされ、図7に示す定量的画像分析により確認された際に、対照と比べて7倍のレベルに達した。
【0160】
CTGFタンパク質の分泌に対する高グルコース曝露の影響を調べるため、曝露時間を48時間に短縮し、培地中にヘパリンナトリウムを含む血清欠乏培養物を使用した。このプロトコールにより、TGF-βの影響に対する比較ができた。プールおよび沈降された培地サンプルのイムノブロッティングから、図6Aに示すように、20 mMのグルコースに対する曝露が、分泌されるCTGFの量を増加させることが示された。しかし、興味深いことに、この促進は、完全長分子にのみに限定されると思われた。プールおよび沈降に先立つELISAによる分泌CTGFタンパク質の定量から、図6Bに示すように高細胞外グルコースレベルによる2倍の誘導が明らかになり、これは、選択された実験条件下でのTGF-βによる増加に類似している。CTGFの観察された増加がオスモル濃度の影響によるものであるのかを確認するため、マンニトールを使用して実験を繰り返した。これらの条件下では、ELISAにより測定した際に放出CTGFの誘導は無く(5 mMグルコース、2.39±0.28 ng/106細胞;5 mMグルコースおよび15 mMマンニトール、1.94±0.32)、イムノブロッティングにより確認した際に分泌されたCTGFの形態の分布に変化はなかった。
【0161】
実施例5:高グルコースにより誘導される CTGF 産生の TGF- βブロック TGF-βが、高グルコースの存在下でのメサンギウム細胞によるCTGF産生に関与するかどうかを確認するために、メサンギウム細胞を5 mMグルコースまたは20 mMグルコースのいずれかの存在下で14日間培養し、同じグルコース条件下で播種し、さらに8日間増殖させた。4日目、培養物を血清欠乏させ、その半分に、TGF-β1、2および3活性を中和する抗体を20μg/ml加えた。新しい抗体を毎日添加し、回収の24時間前に培地を交換した。ELISAによるCTGF分泌の測定は、図8に示すように高グルコースの促進効果を実証した。しかし、これらの培養物におけるTGF-β活性の中和は、高グルコースによるCTGFの誘導をブロックした。通常濃度のグルコースの存在下におけるCTGFの構成的分泌もTGF-β抗体の存在によりいくらか減少したように思われたが、この変化は統計的に有意ではなかった(p=0.09)。通常のグルコースおよび高グルコースで処理された細胞における、TGF-βを中和した際のCTGFレベルの差も有意でなかった(p=0.075)(図8を参照のこと)。
【0162】
実施例6:グルコース輸送体発現および CTGF 産生 MCGT1と称される系統を生ずる、ヒトグルコース輸送体1(GLUT1)遺伝子を形質導入されたメサンギウム細胞は、細菌性βガラクトシダーゼ遺伝子を形質導入されたMCLacZと称される対照メサンギウム細胞系統と比較した場合に、GLUT1タンパク質の増加が10倍、グルコース摂取の増加が5倍、ならびにコラーゲンI型およびIV型、フィブロネクチンおよびラミニンの合成の増加が2〜3倍であることを示した。これらの細胞系統を使用して、単に細胞外グルコース濃度自体ではなく、細胞内グルコースの増加が、培養液中のメサンギウム細胞による過剰な細胞外マトリックス形成の主要な決定因子であることを実証した(例えば、Heligら, 1995、前掲を参照のこと)。CTGFもこのin vitro糖尿病モデルにおいて増加されるかどうかを決定するために、MCCT1およびMCLacZ細胞を播種し、20% NuSerum、8 mMグルコースを有するRPMI中で48時間増殖させた。次いで、細胞を非血清含有培地で2回洗浄し、1%FCSを含有する新しいRPMIを添加した。馴化培地を24時間後に回収し、CTGFタンパク質レベルをELISAにより確認した。図9に示すように、対照MCLacZ培養物の培地中では約80 ng/106細胞のCTGFを検出し、MCGT1培養物中ではこのレベルはほぼ2倍(147 ng/106細胞)であった。
【0163】
実施例7: CTGF のメサンギウム細胞発現:周期的物理的歪みによる調節 周期的物理的歪みも、CTGFのメサンギウム細胞発現を変化させ得る要因であるか否かを確認するため、細胞をコラーゲンで被覆された柔軟性の底を有するプレートに播種し、一晩インキュベートした後、静止条件下で引き伸ばしまたは維持させた。引き伸ばしは、Riserら, 1992, J. Clin. Invest. 90:1932-1943およびRiserら, 1996, Am.J.Path.148:1915-1923に既に記載されているコンピュータ制御システムを使用して、毎分3サイクルおよび最大19%伸長に設定した。この引き伸ばしの程度は、メサンギウム細胞がin vivoで受ける物理力に類似するように選択した(例えば、1997, Cartesら、前掲を参照のこと)。
【0164】
所定の時間で、細胞を溶解し、全RNAを抽出し、CTGF転写物についてプローブした。環状伸長は、図9に示すようにCTGFメッセージの急速および顕著な増加を誘導した。ノーザンブロットの定量画像分析は、CTGF mRNAのレベルが4時間で2倍以上上昇し、8時間の伸長を通してこのレベルが上昇し続けたことを示した。追加の実験により、CTGF転写物が48時間の伸長の後にも有意に増加したことを実証した。
【0165】
実施例8:抗 CTGF 抗体による刺激されたコラーゲン生成のブロッキング メサンギウム細胞を、20%NuSerを有するRPMI培地中で4日間増殖させ、培地を、1% FCS(血清欠乏条件)、および0または5ng/mlのTGF-β2を含む培地と交換した。培養液の半分に抗CTGF抗体(ヤギ親和精製pGAP)を加え、残りの半分に非免疫ヤギIgGを加えた。新しい抗体を毎日添加し、回収する24時間前に培地を交換した。個々のウェルからの培地をELISAにより検査した。図11に示すように、抗CTGF抗体での処理は、基底レベルのコラーゲンの生成を変化させなかったが、TGF-βによる生成の増加を完全にブロックした。非刺激型培養液中で生成されるコラーゲンの量は、抗CTGF抗体による処理ではなくTGF-βで刺激された培養液での量と比較して、有意な差はなかった。
【0166】
実施例9:抗 CTGF 抗体による刺激されたメサンギウム細胞増殖のブロッキング
メサンギウム細胞を、20% NuSerを有するRPMI培地中で4日間増殖させ、培地を、1% FCS(血清欠乏条件)、および0または5ng/mlのTGF-β2を含む培地と交換した。培養液の半分に抗CTGF抗体(ヤギ親和精製pGAP)を加え、残りの半分に非免疫ヤギIgGを加えた。新しい抗体を毎日添加し、回収する24時間前に培地を交換した。個々のウェルからの培地をELISAにより検査した。図12に示すように、TGF-βでの処理は、メサンギウム細胞増殖を有意に誘導した(87%)。抗CTGF抗体での処理は、細胞増殖の誘導を有意に減少させた(約50%)。同じ抗体処理は、基底(すなわち、非刺激条件下)の増殖には影響を及ぼさなかった。
【0167】
実施例 10 :実験的糖尿病腎症における CTGF 発現 初期糖尿病腎症においてCTGFがアップレギュレートされているかを確認するために、糖尿病db/dbマウスに対して研究を行い、その結果を、年齢が一致する非糖尿病db/m同腹子から得た結果と比較した。糖尿病の発症から約3.5月後の5月齢において、血中グルコースレベル、全体重、蛋白尿およびメサンギウム拡散について動物を評価した。屠殺の際の平均血中グルコースレベルおよび体重は、以下の表1に示すようにdb/db動物において有意に高かった。
【0168】
【表1】
図13に示すように、光学顕微鏡による腎臓組織の検査は、糖尿病動物が、初期糖尿病性糸球体硬化症(すなわち、明確な尿細管間質性疾患を伴わない中度のメサンギウムマトリックス拡散)に一貫する、顕著だが最小限の糸球体変化を示すことを実証した。さらに、表1は、蛋白尿のレベルが対照と比べて有意に高くなかったことを示す。糸球体変化の半定量分析は、糖尿病動物において観察したメサンギウム拡散が確かに一貫するが、中度の程度のものであることを実証した。ゼロ(0)の値は病変無しを表し、一(1)の値は基底膜が厚みを増さない、糸球体の大部分における最小限のメサンギウム拡散を表す。
【0169】
全腎臓RNAのノーザン分析から、図14Aに示すように、5匹の糖尿病マウスのうちの4匹においてCTGFメッセージレベルが顕著に上昇したことが示された。これらの変化は、フィブロネクチン転写物レベルにおける平行的変化に反映されていた。結果の定量から、図14Bおよび図14Cに示すように、CTGF発現の増加は平均103%で、フィブロネクチンレベルは対照と比べて80%高かった。さらに、図15Aおよび図15Bに示すように対照GAPDHサンプルと比較して、糖尿病マウス糸球体由来の単一サンプルのCTGF mRNAに対する競合RT-PCRにおいて転写物レベルを検出した。顕微解剖された糸球体の分析は複数の動物(5つの糖尿病グループおよび5つの対象グループ)を同定し、競合および定量RT-PCR法(上述)により、対照動物の糸球体において低いが測定可能なCTGF転写物レベルを同定した(図16を参照のこと)。糖尿病を患うマウスにおいて、CTGFのレベルは、劇的に27倍増加した(図16を参照のこと)。糸球体CTGF mRNAのアップレギュレーションは、フィブロネクチンmRNAの量の5倍近い増加をもたらした。対照と比べて、糖尿病動物においてGAPDHメッセージレベルが有意に増加しなかったことから(対照、1.39±0.524×10-1アトモル/糸球体;糖尿病2.59±0.307;p>0.05)、これらの大きな差は、糖尿病性肥大から生じる異なる糸球体の大きさによるものではなかった。従って、CTGF発現の劇的な増加は、腎臓における変化が最小限である時点で示された。
【0170】
C.腎性糖尿病関連障害の指標としての、サンプル中の CTGF の検出
実施例 11 :尿 CTGF の存在および安定性 CTGFタンパク質が尿中に分泌されたか否かを検査し、尿に分泌された後のCTGF分子の安定性を検査するために、健康なドナーから尿のサンプルを回収し、5つの25mlアリコートに分けた。25〜750ngにわたる様々な量のrhCTGFを、5つのアリコートのうちの4つに添加した(「添加サンプル」)。5つ目のアリコートは、CTGFを添加せずに対照として使用した(「無添加サンプル」)。全てのサンプルを冷凍し、−70℃にて保存し、その後解凍し、遠心分離により清澄化した。サンプルをヘパリンセファロース定量抽出した後、図17に示すようにCTGF特異的抗体を使用してイムノブロッティングを行った。結果は、無添加サンプルの尿中にほとんど検出できないレベルのCTGF分泌の存在を識別した。さらに、尿中のCTGFタンパク質の安定性が、添加サンプルで回収されたCTGFの持続的な増加により実証された。サンプルレーンと、新しく添加したrhCTGF(35 ng)を含むものとの比較は、CTGFが全体でなくとも大部分が保存されていることを示した。
【0171】
実施例 12 :腎患者の尿中の CTGF 確立した腎症(糖尿病に併発するものも含む)を患う患者において変化しうる尿中に存在するCTGFの量および/または分子形態を調査した。様々な腎臓疾患を治療中の8人の外来患者から得た尿サンプル(そのうち3人は糖尿病の病歴をもつ)を、通常の来院の間に回収し、冷凍した(Nephrology and Hypertension Clinic, Henry Ford Hospital)。同様に、腎臓疾患の病歴のない3人の正常で健康な有志からもサンプルを得た。全てのサンプルをその後バッチ解凍し、上述したように処理した。図18に示すように、3人の正常有志のうちの1人について、および全ての患者サンプルでCTGFを検出した。免疫反応性CTGFは、3つの異なる分子形態で現れた。CTGFバンド(2本)は、1つの対照サンプル、および8つの患者サンプルのうちの4つに存在した。興味深いことに、約200kDAの大きい分子量バンドが、全ての患者サンプル中に存在し、1つの対照サンプルにおいては非常に不明瞭なバンドとしてしか現れていない。この大きなバンドは、第2の未知の尿タンパク質と複合体を構成するCTGFを表している可能性が高い。さらに興味をひいたのは、約9〜12kDaのユニークな小さいCTGF断片である。この小さな成分は、CTGFのヘパリン結合C末端四分の一断片に相当すると思われ、3人の糖尿病患者全員の尿に存在したが、非糖尿病患者または健康な対照者においては不在であった。興味深いことに、この産物は、高グルコース濃度のTGF-βにより促進された場合に培養物中のメサンギウム細胞により生成されるCTGF断片に相当するかもしれない。
【0172】
異なる実験において、ヒト尿サンプル中のCTGFを、ELISAにより測定し、以下の表2に示した。
【0173】
【表2】
表2は、健康な有志と、腎臓疾患を患う(場合によっては糖尿病を伴う)患者または腎臓疾患は患っていないが5〜10年間糖尿病を患っている患者との間で、検出されたCTGFの量を比較している。各グループは、異なる個体から得た4〜7のサンプルを有していた。CTGF量/mlを、まずELISAにより測定し、サンプル値を、既知量のrhCTGFの連続希釈液を用いた標準曲線と比較した。結果を標準化するために(すなわち、尿生成のばらつきを考慮するために)、CTGFの量(CTGF/ml)を、同じ患者の同じ尿から測定した尿クレアチニンで割った。
【0174】
結果から、健康な個体は、一貫して低レベルの尿CTGFを示すことが明らかになった。しかし、腎臓疾患を患う人の平均CTGFレベルは4倍増加した。糖尿病を患うが腎臓疾患とはまだ診断されていない患者において、同様の4.4倍の増加が見とめられた。糖尿病を患っている人の約40%のみが腎症を発症することから、同様の割合の患者がCTGFレベルの増加を示すであろうと予想されていた。興味深いことに、検査した6人の糖尿病患者のうち3人、すなわち50%が明らかに増加したCTGFレベルを示した。残りの患者は、健康な有志と同様の値を有していると思われた。
【0175】
本発明の記載した方法およびシステムの様々な改変および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明らかである。本発明は、特定の好適な実施形態に関連させて記載してきたが、本願発明は、これらの特定の実施形態に不当に限定されないことが理解されるべきである。実際、分子生物学または関連分野の当業者には明らかである記載した本発明を実施するための形態の様々な改変は、請求の範囲に含まれることを意図する。本明細書に引用した全ての特許、文献およびその他の参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1Aおよび図1Bは、細胞外マトリックスのメサンギウム細胞分泌に対する外因性CTGFの作用を示す。図1Aは、インキュベーションの終了時点での、ELISAにより測定した、培地中に含まれるフィブロネクチンの量を示す。図1Bは、インキュベーションの終了時点での、ELISAにより測定した、培地中に含まれるコラーゲンI型の量を示す。
【図2】 図2は、ラット組織および培養腎臓細胞中のCTGF遺伝子の発現を示す。ラットの器官全体から、および培養したラットメサンギウム細胞および腎臓線維芽細胞から総RNAをノーザン分析のために抽出した。MCとはメサンギウム細胞を示す;BTは脳組織を示す;HTは心臓組織を示す;KTは腎臓組織を示す;そしてKFCは腎臓線維芽細胞を示す。
【図3】 図3A、図3B、図3Cは、外因性TGF-βおよびCTGFによるCTGFおよびTGF-β mRNAレベルの調節を示す。図3Aは代表的な実験の結果を示す。図3BはCTGFのmRNAバンドの定量を示す。図3CはTGF-βのmRNAバンドの定量を示す。
【図4】 図4Aおよび図4Bは、外因性TGF-βの存在下での培養メサンギウム細胞によるのCTGFタンパク質の発現を示す。図4Aは、全長CTGFに対する抗体を用いたイムノブロッティングを示す。図4Bは、CTGFに特異的な15アミノ酸の配列に対する抗体を用いたイムノブロッティングを示す。
【図5】 図5Aおよび図5Bは、メサンギウム細胞培養培地中へのCTGFタンパク質の分泌、およびヘパリンの作用を示す。図5Aは、イムノブロッティングのためにプールしヘパリン-セファロース処理した培地に関するデータを示す。図5Bは、プールする前に、ELISAによりCTGF含有量について個別に試験した培地に関するデータを示す。
【図6】 図6Aおよび図6Bは、メサンギウム細胞によるCTGFタンパク質の誘導を示す。図6Aは、イムノブロッティングのためにプールしヘパリン-セファロース処理した培地に関するデータを示す。図6Bは、プールする前に、ELISAによりCTGF含有量について個別に試験した培地に関するデータを示す。
【図7】 図7は、CTGF mRNAのメサンギウム細胞の発現に対する高グルコース濃度の影響を示す。図7は、代表的な実験における、6つの異なる100mm培養皿からのプールしたRNAのサンプルを示す。
【図8】 図8は、抗-TGF-β抗体を使用した、高グルコース-誘導CTGF産生のTGF-β妨害を示す。
【図9】 図9Aおよび図9Bは、異なるレベルのGLUT1を過剰発現するメサンギウム細胞におけるCTGF濃度を示す。GLUT1遺伝子で形質導入した細胞を二回培養して得た細胞の上清は、MCGT1、または形質導入対照であるLaZ遺伝子(MCLaZ)を表す。
【図10】 図10は、CTGF転写物のメサンギウム細胞発現に対する周期的ストレッチング(cyclic stretching)の影響を示す。指示した時間において、RNAを抽出してCTGFメッセージについてプローブした。各レーンは、24の異なる培養ウェルからプールしたサンプルの結果を示す。
【図11】 図11は、抗-CTGF抗体よる、刺激されたコラーゲンI型産生の妨害を示す。
【図12】 図12は、抗-CTGF抗体よる、刺激されたメサンギウム細胞増殖の妨害を示す。
【図13】 図13Aおよび図13Bは、db/dbマウスにおける糖尿病に関連した糸球体疾患を示す。図13Aは、5月齢の対照db/mマウスに由来する腎臓皮質切片を示す。図13Bは、5月齢の糖尿病db/dbマウスに由来する腎臓皮質切片を示す。図13Aおよび図13Bからの切片は、光学顕微鏡による試験のためにPASで染色したものであり、糖尿病群において観察された最もひどいメサンギウム膨張(expansion)を示した糸球体の例である。
【図14】 図14A、図14Bおよび図14Cは、5月齢の糖尿病db/dbマウスの腎臓全体におけるCTGFおよびフィブロネクチン転写物の誘導を示す。図14A、および図14Bは、腎臓全体から抽出され、CTGF mRNAおよびフィブロネクチンmRNAについてそれぞれノーザン分析によりプローブされた総RNAを示す。文字「C」は、非糖尿病マウスを示し、一方、文字「D」は糖尿病マウスを示す。図14Cはノーザン分析の結果のデンシトメトリー分析による定量を示す。
【図15】 図15Aおよび図15Bは、糖尿病マウス糸球体由来の単一のサンプル中でのGAPDHおよびCTGF mRNAについての競合的RT-PCRを示す。PCR増幅の後に、ゲルをエチジウムブロミドで染色した。図15Aおよび図15Bのレーンには、一定量の試験用cDNA、および既知量からの1/2ずつ減少する濃度の特定の模倣物を含む。図15AはGAPDHについての競合的逆転写酵素PCR(RT-PCR)を示す。図15Bは、CTGFについての競合的RT-PCRを示す。
【図16】 図16は、競合的RT-PCRにより検出された、db/dbマウスにおける、CTGFおよびフィブロネクチン転写物レベルの糸球体発現に対する糖尿病の影響を示す。
【図17】 図17は、正常尿中のCTGFおよびその回収を示す。4つのアリコートに異なる量のCTGFを添加し、5番目は対照とした。CTGF特異抗体を使用してイムノブロッティングを行った。
【図18】 図18は、罹患した患者または健康なボランティアの尿中のCTGFタンパク質の分析を示す。腎臓疾患を有する8名の患者、および3名の正常ボランティアからの尿サンプルを、CTGFに関してイムノブロッティングによりアッセイした。
Claims (3)
- 被験者に由来するサンプルにおける細胞外マトリックスの過剰産生によって特徴づけられる腎障害を検出する方法、または細胞外マトリックスの過剰産生によって特徴づけられる腎障害に対する疾病素質もしくは罹りやすさを同定する方法であって、(a) 該サンプル中のCTGFレベルを検出し、および(b) 該サンプル中のCTGFレベルをCTGFの標準レベルと比較する、ことを含み、該被験者由来のサンプルが尿サンプルである、上記方法。
- 前記腎疾患が糖尿病である、請求項1に記載の方法。
- 細胞外マトリックスの過剰産生によって特徴づけられる腎障害を診断するための、または細胞外マトリックスの過剰生成によって特徴づけられる腎障害に対する疾病素質もしくは罹りやすさを同定するための診断キットであって、(a) サンプル中のCTGFレベルを検出する手段;および(b) 該サンプル中のCTGFレベルを測定する手段を含み、該サンプルが尿サンプルである、上記キット。
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