JP3737613B2 - センサ機構付きカテーテル及びそのセンサ部本体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、センサ機構付きカテーテル及びそのセンサ部本体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、体内挿入式の医療器具の一種としてカテーテルが知られている。カテーテルを構成する直径数mm以下のカテーテルチューブは、人体内にある各種の管、例えば血管等の中に挿入される。カテーテルチューブの先端は体内の所望の部位まで誘導され、その部位において計測行為(例えば血圧の測定等)や治療行為(例えば血管の拡張等)を行う。このため、カテーテルのオペレータは、カテーテルチューブの先端を外部操作によって所望の部位まで確実に誘導する必要がある。
【0003】
ところで、体内にある管は必ずしも直線状ではなく、部分的に屈曲していたり分岐している場合が多い。しかも、管の径は必ずしも一定ではなく、管自体が細くなっていたり、内部にある障害物(例えば血栓)によって管が細くなっていることがある。よって、カテーテルチューブの進行方向前方の状況を検知する手段を持たない従来のカテーテルでは、オペレータはチューブの操作を自分の勘のみに頼らざるを得なかった。そのため、チューブの先端を所望の部位まで誘導するのに熟練を要する等の不都合が生じていた。
【0004】
そして、最近では前記不都合を解消すべくセンサ機構付きのカテーテル41が提案されている。その一例を図5に示す。このカテーテル41を構成するカテーテルチューブ42の先端側には、センサ部としてのセンサアセンブリ43が取り付けられている。センサアセンブリ43は、センサ部本体としてのアウターチューブ44内にインナーチューブ45を挿通させた構造を備えている。インナーチューブ45の内部には、台座46が設けられている。その台座46には半導体式圧力センサチップ47が載置されている。センサチップ47のダイアフラム部47aには、歪みゲージ47bが形成されている。ダイアフラム部47aの外周にある肉厚部分には、ワイヤボンディング用の図示しないパッドが複数形成されている。アウターチューブ44内にある媒体収容空間53には、シリコーンゲル等の圧力伝達媒体48が充填されている。そして、アウターチューブ44の先端側開口にはピストン49が移動可能に設けられている。
【0005】
このセンサ機構付きカテーテル41は、例えばシース管と呼ばれる補助部材を用いて血管内に挿入される。このようなシース管の内部には、血液の逆流を防止するための逆流防止弁が設けられている。血管内にセンサアセンブリ43が挿入された状態で、受圧部であるピストン49の外側面に作用する圧力が変動すると、その変動の影響は圧力伝達媒体48を介してダイアフラム部47aに波及する。すると、歪みゲージ47bによって圧力変動が電気信号に変換されるとともに、その電気信号がボンディングワイヤ50、中継タブ51及びフラットケーブル52を介して外部に出力される。その結果、カテーテルチューブ42の進行方向前方における障害物等の有無が検知されるようになっている。
【0006】
図5のようなカテーテル41のセンサアセンブリ43は、例えば以下のような手順で製造される。まず、アウターチューブ44、インナーチューブ45、ピストン49等をあらかじめ別々に作製しておく。次いで、ワイヤボンディング済のセンサチップ47及び台座46をインナーチューブ45内に固定した後、同インナーチューブ45をアウターチューブ44に挿通させる。さらに、媒体収容空間53内に圧力伝達媒体48を充填した後、アウターチューブ44の先端側開口をピストン49で封止する。そして、最後にアウターチューブ44の基端側をカテーテルチューブ42の先端に取り付けることで、カテーテル41が完成する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のセンサ機構付きカテーテル41の場合、上述したようにセンサアセンブリ43の組み付けに多くの工数を要していたため、より簡単に組み付けられる構造が望まれていた。
【0008】
また、従来構成であるとピストン49の取付時に圧力伝達媒体48中に気泡が混入しやすく、それが原因となってセンサ特性の悪化をもたらすことが問題となっていた。
【0009】
さらに、ピストン49とアウターチューブ44とが別体である従来構成では、カテーテルチューブ42をシース管から引き抜くときに、逆流防止弁に引っ掛かってピストン49が脱落する可能性があった。従って、あらかじめ脱落防止対策を講じておく必要があった。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、組み付けが簡単であってしかも受圧部が脱落する心配のないセンサ機構付きカテーテルを提供することにある。
【0011】
また、本発明の別の目的は、上記の優れたカテーテルを実現するうえで好適なセンサ部本体を簡単にかつ確実に得ることができる製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、カテーテルチューブの先端にセンサ部本体が装着され、前記センサ部本体の内部に感圧体及びそれに圧力の変動を伝達する圧力伝達媒体が収容されているセンサ機構付きカテーテルにおいて、前記センサ部本体は先端受圧部の基端側にベローズ構造を備える金属製管状部材であることを特徴とするセンサ機構付きカテーテルをその要旨とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記センサ部本体の先端受圧部には前記圧力伝達媒体を充填するための充填口が設けられていることとした。
この場合、前記センサ部本体の基端部外周面に凹凸が設けられてもよく、また、前記センサ部本体の外表面が生体適合性材料からなるものとしてもよい。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記センサ部本体はニッケルめっき層とその外表面側に形成された金めっき層とからなる二層構造であることとした。
【0015】
請求項4に記載の発明は、ベローズ構造を備える金属製管状部材であり、感圧体及びそれに圧力の変動を伝達する圧力伝達媒体をその内部に収容した状態でカテーテルチューブの先端に装着されるセンサ部本体を製造する方法であって、前記センサ部本体の外部形状に対応する成形空間を有する樹脂成形型内にめっきを施すことにより硬質材料からなる第1のめっき層を形成する工程と、前記樹脂成形型を溶解除去する工程と、前記第1のめっき層の外表面側にめっきを施すことにより生体適合性材料からなる第2のめっき層を形成する工程とを含むことを特徴とするセンサ機構付きカテーテル用のセンサ部本体の製造方法をその要旨とする。
【0016】
以下、本発明の「作用」を説明する。
請求項1〜3に記載の発明によると、先端受圧部の外側面に作用する圧力が変動した場合、それに伴ってベローズ構造が伸長または収縮した状態になる。すると、圧力伝達媒体の圧力に変動が生じ、その影響が感圧体にも波及する。つまり、圧力伝達媒体を介して感圧体に圧力の変動が伝達される。
【0017】
また、本発明では先端受圧部がセンサ部本体と一体的に設けられているため、そもそも受圧部が脱落するという心配がなく、よって特別に脱落防止対策を講じる必要もない。また、本発明の構成であると、別体として作製した受圧部をセンサ部本体に取り付ける工程が不要になるため、少なくともその分だけ組み付けに要する工数が減少する。従って、組み付けが簡単なカテーテルとすることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によると、センサ部本体をカテーテルチューブに装着した状態であっても、充填口を介してセンサ部本体の内部に圧力伝達媒体を充填することが可能である。そのため、従来とは異なり圧力伝達媒体中に気泡が混入しにくい。また、たとえ圧力伝達媒体中に気泡が混入したとしても、充填口が先端受圧部に位置していることから比較的簡単に脱泡を行うことができる。
【0019】
また、センサ部本体の基端部外周面に凹凸を設けた構成とすれば、センサ部本体とカテーテルチューブとの間の摩擦抵抗が増し、センサ部本体がカテーテルチューブから抜けにくくなる。さらに、前記センサ部本体の外表面を生体適合性材料からなる構成とすれば、生体内物質と接触する箇所が生体適合性材料からなるものとなり、生体内での使用に適したセンサ部本体とすることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によると、ニッケルは硬質であるため、センサ部本体に充分な強度が確保され、耐久性に優れたセンサ部本体となる。また、金は生体内物質との反応性が極めて低いため、生体内での使用に適したセンサ部本体となる。
【0021】
請求項4に記載の発明によると、請求項3に記載の発明のような二層構造からなるセンサ部本体を簡単にかつ確実に得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を障害物検知用のセンサ機構付きカテーテルに具体化した一実施形態を図1〜図3に基づき詳細に説明する。
【0023】
このカテーテル1は、血管に挿入されるカテーテルチューブ(本実施形態ではポリ塩化ビニル製,直径1.6mm)2や、それを体外において操作するためにチューブ2の基端部に設けられる操作手段などを備えている。操作手段は、例えばチューブ2内に挿入された複数本のワイヤと、それらを操作するワイヤ操作部とによって構成される。チューブ2の基端部には、チューブ2の先端側に薬液や造影剤等の液体を圧送するための注射器が接続されるとともに、障害物の有無に関する情報を可視化するディスプレイ装置が接続されている。
【0024】
図2に示されるように、本実施形態のカテーテル1では、カテーテルチューブ2と別体に形成されたセンサアセンブリ3がチューブ2の先端側に取り付けられている。
【0025】
センサ部としてのセンサアセンブリ3は、センサ部本体としてのセンサボディ4、インナーチューブ5、台座6、半導体式圧力センサチップ7、フラットケーブル8、シリコーンゲル9、圧力隔壁10等からなる。
【0026】
図1,図2に示されるように、筒状の部材であるインナーチューブ5は、センサボディ4内に摺動不能に嵌入されている。インナーチューブ5の一方側の端部には、切り欠き部11が形成されている。この切り欠き部11の内壁面には、台座6が接着剤A1 により接合されている。台座6は縦長の矩形状をしたシリコン製部材であって、その上面側中央部にチップ搭載凹部12を備えている。そのチップ搭載凹部12の部分には、感圧手段としての半導体式圧力センサチップ7が載置されている。前記接着剤A1 は、a)絶縁材料からなること、b)硬質であること、c)生体適合性材料であること、という3つの要件を満たすものであることが望ましい。本実施形態では、上記条件を満たす接着剤A1 としてエポキシ樹脂等のような熱硬化性樹脂を選択している。
【0027】
図2に示されるように、前記接着剤A1 は、台座6の下面及び側面とインナーチューブ5の切り欠き部11の内壁面との隙間を封止している。その結果、台座6がインナーチューブ5に固定されている。これに加えて、台座6及びセンサチップ7の基端部寄り領域において前記接着剤A1 は上方にも回り込み、インナーチューブ5の貫通孔を非貫通状態に封止している。従って、インナーチューブ5の内部において切り欠き部11よりもやや基端寄りの位置には、圧力障壁10が形成されている。そして、この圧力障壁10によりセンサボディ4内に媒体収容空間13が区画されている。媒体収容空間13の中には、圧力伝達媒体としてのシリコーンゲル9が充填されている。なお、圧力障壁10はシリコーンゲル9のチューブ2の基端側への流動を阻止する役割を果たしている。
【0028】
図1に示されるように、本実施形態において使用される半導体式圧力センサチップ7は、台座6と同様に縦長の矩形状を呈している。同センサチップ7の基体であるシリコン基板には、肉薄部分であるダイヤフラム部14がエッチングによって形成されている。シリコン基板の表面(即ちエッチされていない面)側において前記ダイヤフラム部14には、拡散歪みゲージ15が4つ形成されている。短辺がある側をシリコン基板の端部であると定義すると、端部のうちの一方には複数のパッド( 図示略) が形成されている。前記パッドは矩形状であって、例えばアルミニウム等の金属材料をスパッタすること等により形成されている。各パッドと拡散歪みゲージ15とは、図示しない配線パターンを介して接続されている。そして、前記各パッドはフラットケーブル8の先端部に設けられた端子に対して直接接続されている。
【0029】
シリコン基板及び台座6の短辺の大きさはインナーチューブ5の内径よりも小さく、長辺の大きさはインナーチューブ5の内径よりも少なくとも大きくなっている。従って、シリコン基板を搭載した状態の台座6は、細長いインナーチューブ5内に挿入可能となっている。その際、シリコン基板においてパッドが形成されている側の端部はチューブ2の基端側に配置され、そうでない側の端部はチューブ2の先端側に配置される。つまり、センサチップ7の長手方向とチューブ軸線方向とは並行な関係になる。よって、センサチップ7の表面はチューブ軸線方向と直交する方向、即ちチューブ外周方向を向く。
【0030】
次に、センサボディ4の構造及びその製造手順について述べる。
図1,図2に示されるように、センサボディ4は金属製かつ管状の部材であって、その断面は円形状である。センサボディ4の基端側は開口している反面、先端側は閉口している。同センサボディ4における先端側の端面(即ち先端受圧部21)は、曲面状であって外側に向かって凸になっている。先端受圧部21の最大径はカテーテルチューブ2の外径にほぼ等しい。先端受圧部21のすぐ基端側には、ベローズ構造22が設けられている。本実施形態で採用したベローズ構造22は、複数の襞部22aからなる蛇腹状のものである。各襞部22aは、センサボディ4の周方向全体にわたって環状に形成されている。ベローズ構造22がある箇所よりも基端側となる部分は、カテーテルチューブ2よりも小径である。従って、当該部分はカテーテルチューブ2の先端側開口に嵌着可能である。先端受圧部21の中心部には、シリコーンゲル9を充填するための充填口23が透設されている。その充填口23は、シリコーンゲル9が充填された状態で封止栓24により封止されている。
【0031】
センサボディ4の外表面は生体適合性材料からなることが好ましい。そのため、本実施形態のセンサボディ4では二層構造を採用し、ベースであるニッケルめっき層L1 の外表面側に金めっき層L2 を形成することとしている。第1のめっき層であるニッケルめっき層L1 は硬質である反面、生体に適合したものとは必ずしもいえないからである。その点、第2のめっき層である金めっき層L2 は、生体内物質(ここでは主として血液)との反応性が極めて低く、生体に適合したものといえるからである。
【0032】
封止栓24もセンサボディ4と同様に生体内物質と接触するものであることから、その材料として例えばシリコーンゴム等のような生体適合性材料が使用されることがよい。なお、センサアセンブリ3を構成する各部品のうち外部に露出していないものについても、同じく生体適合性材料によって形成されていることが望ましい。
【0033】
センサボディ4は下記のような手順を経て製造されることができる。
図3(a)に示されるように、まず、センサボディ4の外部形状に対応する成形空間26を有する樹脂成形型25を用意する。なお、樹脂成形型25は後述する溶解除去工程の作業性を悪化させない程度の厚さであることがよい。
【0034】
次に、樹脂成形型25の内壁面に対してめっきを施すことにより、硬質材料からなるニッケルめっき層L1 を形成する(図3(b) 参照)。具体的には、無電解ニッケルめっき浴を用いた無電解めっきが行われる。ニッケルめっき層L1 の厚さは50μm 〜300μm 、好ましくは100μm 〜200μm であることがよい。ニッケルめっき層L1 が薄すぎると、センサボディ4に充分な強度が確保されないおそれがある。従って、伸縮部分であるベローズ構造22に破壊が起こりやすくなる。逆にニッケルめっき層L1 が厚すぎると、充分な強度が確保される反面、ベローズ構造22に伸縮が起こりにくくなるおそれがある。
【0035】
第1のめっき工程の終了後、専用の溶解液を処理することにより樹脂成形型25を溶解除去する(図3(c) 参照)。その結果、ニッケルめっき層L1 を露出させる。この場合に使用される溶解液としては、樹脂成形型25のみを溶解しかつニッケルめっき層L1 を溶解しないものであることが好ましい。例えば、樹脂成形型25の材料がアクリル系樹脂である場合には、アセトンを溶解液として選択すればよい。
【0036】
溶解除去工程の終了後、ニッケルめっき層L1 の外表面側にめっきを施すことにより、生体適合性材料からなる金めっき層L2 を形成する(図3(d) 参照)。具体的には、無電解金めっき浴を用いた無電解めっきや、電解金めっき浴を用いた電解めっきが行われる。金めっき層L2 の厚さは1μm 〜10μm 、好ましくは3μm 〜5μm であることがよい。金めっき層L2 が薄すぎると、その下層にあるニッケルめっき層L1 が外表面に露出してしまうおそれがある。逆に金めっき層L2 が厚すぎると、ニッケルめっき層L1 の露出のおそれはなくなる反面、高コスト化を招くおそれがある。
【0037】
第2のめっき工程の終了後、先端受圧部21の中心部をドリル加工すること等により充填口23を透設する。
二層構造からなるセンサボディ4は、上記のようにめっきという比較的安価かつ簡便な技術を用いて簡単にかつ確実に得ることができる。また、かかるめっき法は、ベローズ構造22のように入り組んだ構造でも微細かつ肉薄に形成できるという点において有利である。
【0038】
続いて、センサアセンブリ3の組み付け手順を説明する。
まず、センサアセンブリ3を構成する各部品をあらかじめ用意する。センサチップ7は、フラットケーブル8と接続した状態で台座6に載置しておく。次に、台座6及びセンサチップ7を、圧力障壁10形成用の接着剤A1 を用いてインナーチューブ5内に固定する。次に、前記インナーチューブ5をセンサボディ4の内部に挿入しかつ接着剤を用いて固定する。台座6及びセンサチップ7の位置はベローズ構造22よりも基端側であることがよい。このような位置であれば、センサボディ4の伸縮時にそれらが襞部22aの邪魔にならないからである。
【0039】
感圧体収容工程の後、センサボディ4の基端側をカテーテルチューブ2の先端側開口に差し込むようにして装着する。このとき、装着の確実化を図るために接着剤を用いることが好ましい。
【0040】
センサ部本体装着工程の後、先端受圧部21にある充填口23を介して、センサボディ4の内部にある媒体収容空間13にシリコーンゲル9を充填する。そのとき、先端受圧部21を上に向けることにより、シリコーンゲル9中への気泡の混入をある程度防止することができる。気泡混入防止をより完全なものとするために真空脱泡を行ってもよい。
【0041】
媒体充填工程の後、シリコーンゴム製の封止栓24で充填口23を封止する。以上のようにしてセンサアセンブリ3の組み付けが完了する。
次に、このカテーテル1によるセンシングについて説明する。
【0042】
このカテーテル1のカテーテルチューブ2は、シース管と呼ばれる補助部材を用いて血管内に挿入される。シース管はその内部に血液の逆流を防止するための逆流防止弁を備えており、カテーテルチューブ2の挿入に先立って血管内に挿入される。
【0043】
カテーテルチューブ2の先端の進行方向前方の状況が変わった場合、チューブ2の挿入抵抗が変化し、それに伴って先端受圧部21の外側面に作用する圧力も変動する。例えば、チューブ2が挿入されている血管の内部に障害物(血栓や腫瘍など)や狭窄部位がある場合には、先端受圧部21の外側面が同部位に押し付けられることにより、挿入抵抗が増加する。従って、先端受圧部21に作用する圧力もそれに伴って増加する。すると、ベローズ構造22に収縮が生じて、図2(a)のような通常状態から図2(b)のような変形状態になる。このような変形が起きた場合、媒体収容空間13内に充填されているシリコーンゲル9の圧力が増加し、その結果としてセンサチップ7のダイアフラム部14に加わる圧力も増加する。つまり、センサアセンブリ3の外部で起こった圧力変動は、シリコーンゲル9を介してセンサチップ7に間接的に伝達される。すると、センサチップ7のダイアフラム部14の歪みが大きくなり、その上にある歪みゲージ15の抵抗値が変化する。即ち、歪みゲージ15によって圧力変動が電気信号に変換される。このような電気信号は、フラットケーブル8を経て外部に出力される。フラットケーブル8はチューブ2の基端部にあるディスプレイ装置に接続されていて、前記電気信号はそこで処理されかつ可視化される。よって、オペレータは、その可視化されたデータを判断材料として、進行方向前方の状況、即ち障害物や狭窄の有無等を確実に検知することができる。つまり、オペレータは、上記の場合にワイヤを操作することによって、圧力が減少するような方向にセンサアセンブリ3の頭部を向ければよいことになる。
【0044】
さて、以下に本実施形態において特徴的な作用効果を列挙する。
(イ)本実施形態のカテーテル1では、先端受圧部21がセンサボディ4と一体的に設けられているため、従来のものとは異なりそもそも引き抜き時に受圧部が脱落するという心配がない。よって、特別に脱落防止対策を講じる必要もなく、それによる構造の複雑化や組み付けの困難化を回避することができる。また、このカテーテル1の構成であると、別体として作製した受圧部をセンサ部本体に取り付ける工程が不要になるため、少なくともその分だけ組み付けに要する工数が減少する。従って、組み付けが簡単なカテーテル1とすることができる。また、組み付けが簡単になることによって製造コストの低減を図ることができる。
【0045】
(ロ)本実施形態のカテーテル1では、先端受圧部21にシリコーンゲル9を充填するための充填口23を設けている。従って、センサボディ4をカテーテルチューブ2に装着した状態であっても、充填口23を介して媒体収容空間13内にシリコーンゲル9を充填することが可能である。そのため、充填後にピストンによる封止を行う従来とは異なり、シリコーンゲル9中に気泡が混入しにくいという利点がある。また、たとえシリコーンゲル9中に気泡が混入したとしても、充填口23が先端受圧部21に位置していることから比較的簡単に脱泡を行うことができる。即ち、センサボディ4自体を取り外すまでもなく、先端受圧部21を上に向けるだけで気泡を充填口23からある程度抜け出させることができるからである。ゆえに、気泡混入に起因するセンサ特性の悪化を未然に防止することができる。
【0046】
(ハ)本実施形態のカテーテル1では、センサボディ4がニッケルめっき層L1 とその外表面側に形成された金めっき層L2 とからなる二層構造になっている。従って、耐久性及び生体適合性に優れたセンサボディ4とすることができる。
【0047】
なお、本発明は上記の実施形態のみに限定されることはなく、例えば次のように変更することが可能である。
◎ 図4(a)に示されるカテーテル31のように、その基端部外周面に凹凸としての複数本の抜け止め溝33を備えるセンサボディ32としてもよい。この構成であると、センサボディ32とカテーテルチューブ2との間の摩擦抵抗が増すため、センサボディ4がカテーテルチューブ2から抜けにくくなる。よって、組み付け強度がよりいっそう向上する。凹凸は抜け止め溝33に限定されることはなく、例えば突起等であってもよい。また、凹凸を設けるとともに両者2,32の接合に接着剤を用いれば、より確実な抜け止めを図ることができる。
【0048】
◎ 図4(b)に示されるカテーテル36のように、インナーチューブ5を省略して、センサボディ4の内壁面に直かに台座6を設置してもよい。このようにすると、構造の簡略化及び部品点数の低減を図ることができる。
【0049】
◎ 台座6の上面とセンサチップ7の下面との間に背圧室を形成してもよい。また、かかる背圧室は、台座6に形成される背圧孔を介して相対圧領域に連通されていてもよい。
【0050】
◎ 圧力伝達媒体としてのシリコーンゲル9に代えて、シリコーン以外のゲル状物質を選択してもよく、さらにはシリコーンオイル等のような流動性のある物質を使用してもよい。なお、いわゆる媒体に「おどり」現象が起こりにくいということを鑑みると、シリコーンゲル9のようなゲル状物質を選択することがより好ましい。
【0051】
◎ ニッケルめっき層L1 の外表面に形成される生体適合性材料からなる第2のめっき層は、金めっき層L2 のみに限定されることはなく、例えば白金めっき層、イリジウムめっき層等であってもよい。また、これらの層をめっき法により形成するのではなく、例えばスパッタやCVD等の手法によって形成することも可能である。
【0052】
◎ 硬質材料からなる第1のめっき層はニッケルめっき層L1 のみに限定されることはなく、例えばブロンズめっき層、鉄めっき層等であってもよい。
◎ 充填口23は先端受圧部21以外の箇所に、例えばベローズ構造22がある箇所など設けられることも可能である。ただし、脱泡の容易さや封止栓24の設置のしやすさのことを考慮すると、充填口23は実施形態のごとく先端受圧部21の箇所に設けられていることが望ましい。
【0053】
ここで、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想をその効果とともに以下に列挙する。
(1) 請求項1乃至3のいずれか1項において、前記圧力伝達媒体はシリコーンゲルであることを特徴とするセンサ機構付きカテーテル。この構成であると、いわゆるおどり現象が起こらなくなる。
【0054】
(2) 請求項1乃至3、技術的思想1のいずれか1項において、前記先端受圧部は曲面状であって外側に向かって凸になっていることを特徴とするセンサ機構付きカテーテル。この構成であると、センサ部本体の引っ掛かりがなくなることで挿入抵抗が低減されるため、カテーテルチューブをスムーズに進行させることができる。
【0055】
(3) 請求項1乃至3、技術的思想1,2のいずれか1項において、前記先端受圧部の最大径は前記カテーテルチューブの外径にほぼ等しいことを特徴とするセンサ機構付きカテーテル。この構成であると、シース管からチューブを引き抜く際に逆流防止弁に先端受圧部が引っ掛からなくなる。
【0056】
(4) 請求項1乃至3、技術的思想1乃至3のいずれか1項において、前記感圧体は半導体式圧力センサチップであり、同センサチップは台座に載置された状態で前記ベローズ構造よりも基端側位置に固定されていることを特徴とするセンサ機構付きカテーテル。この構成であると、センサ部本体の伸縮時にセンサチップ等が邪魔にならなくなる。
【0057】
(5) 請求項2,3、技術的思想1乃至4のいずれか1項において、前記充填口はシリコーンゴム製の封止栓により封止されていることを特徴とするセンサ機構付きカテーテル。この構成であると、より生体適合性に優れたセンサ部本体とすることができる。
【0058】
(6) 請求項2,3に記載のセンサ機構付きカテーテルを製造する方法であって、金属製管状部材からなり先端受圧部の基端側にベローズ構造を備えかつ前記先端受圧部に前記圧力伝達媒体を充填するための充填口を備えるセンサ部本体の内部に前記感圧体を収容する工程と、前記センサ部本体を前記カテーテルチューブの先端に接着剤を用いて装着する工程と、前記先端受圧部にある前記充填口を介して前記センサ部本体の内部に前記圧力伝達媒体を真空脱泡しながら充填する工程と、前記充填口を封止する工程とを含むことを特徴とするセンサ機構付きカテーテルの製造方法。この方法によると、本発明のカテーテルを確実にかつ簡単に、しかも圧力伝達媒体中に気泡を混入させることなく製造することができる。
【0059】
(7) 請求項1,2において、前記センサ部本体の基端部外周面には凹凸が設けられていることを特徴とするセンサ機構付きカテーテル。この構成であると、センサ部本体がカテーテルチューブから抜けにくくなるため、組み付け強度の向上が図られる。
【0060】
(8) 請求項1乃至3のいずれか1項において、前記センサ部本体の外表面は生体適合性材料からなることを特徴とするセンサ機構付きカテーテル。この構成であると、生体内での使用に適したセンサ部本体とすることができる。
【0061】
なお、本明細書中において使用した技術用語を次のように定義する。
「生体適合性材料:血液、体液、リンパ液、その他の生体内物質との反応性が低い材料をいい、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル等の樹脂、ステンレスや金等の金属、アルミナやジルコニア等のセラミックスなどがある。」
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜3に記載の発明によれば、組み付けが簡単であってしかも受圧部が脱落する心配のないセンサ機構付きカテーテルを提供することができる。
【0063】
請求項2に記載の発明によれば、圧力伝達媒体中に気泡が混入しにくくなるため、センサ特性の悪化を未然に防止することができる。
請求項3に記載の発明によれば、耐久性及び生体適合性に優れたセンサ部本体とすることができる。
【0064】
請求項4に記載の発明によれば、二層構造からなるセンサ部本体を簡単にかつ確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した一実施形態のセンサ機構付きカテーテルのセンサアセンブリを示す分解斜視図。
【図2】(a)は同カテーテル(ベローズ構造が収縮していない通常状態)を示す部分概略断面図、(b)は同カテーテル(ベローズ構造が収縮している変形状態)を示す部分概略断面図。
【図3】(a)〜(d)はセンサボディの製造手順を説明するための概略図。
【図4】(a),(b)はともに別例のセンサ機構付きカテーテルを示す部分概略断面図。
【図5】従来のセンサ機構付きカテーテルを示す部分概略断面図。
【符号の説明】
1,31,36…センサ機構付きカテーテル、2…カテーテルチューブ、4,32…センサ部本体としてのセンサボディ、7…感圧体としての半導体式圧力センサチップ、9…圧力伝達媒体としてのシリコーンゲル、21…先端受圧部、22…ベローズ構造、23…充填口、25…樹脂成形型、33…凹凸としての抜け止め溝、L1 …第1のめっき層としてのニッケルめっき層、L2 …第2のめっき層としての金めっき層。
Claims (4)
- カテーテルチューブの先端にセンサ部本体が装着され、前記センサ部本体の内部に感圧体及びそれに圧力の変動を伝達する圧力伝達媒体が収容されているセンサ機構付きカテーテルにおいて、
前記センサ部本体は先端受圧部の基端側にベローズ構造を備える金属製管状部材であることを特徴とするセンサ機構付きカテーテル。 - 前記センサ部本体の先端受圧部には前記圧力伝達媒体を充填するための充填口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ機構付きカテーテル。
- 前記センサ部本体はニッケルめっき層とその外表面側に形成された金めっき層とからなる二層構造であることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ機構付きカテーテル。
- ベローズ構造を備える金属製管状部材であり、感圧体及びそれに圧力の変動を伝達する圧力伝達媒体をその内部に収容した状態でカテーテルチューブの先端に装着されるセンサ部本体を製造する方法であって、
前記センサ部本体の外部形状に対応する成形空間を有する樹脂成形型内にめっきを施すことにより硬質材料からなる第1のめっき層を形成する工程と、前記樹脂成形型を溶解除去する工程と、前記第1のめっき層の外表面側にめっきを施すことにより生体適合性材料からなる第2のめっき層を形成する工程とを含むことを特徴とするセンサ機構付きカテーテル用のセンサ部本体の製造方法。
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