JP3736275B2 - 導電性組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性組成物及びその製造方法に関し、特に共役二重結合を有する導電性高分子を含む導電性組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、ポリピロールやポリチオフェンに代表される共役二重結合導電性高分子は、化学重合及び電解重合で作製することができる。
【0003】
電解重合を利用した場合には、導電性高分子が電極上にフィルム状に形成されるため大量に製造することに困難が伴うのに対し、化学重合を利用した場合には、そのような制約がなく、原理的に重合性モノマーと適当な酸化剤の反応によって大量の導電性高分子を比較的容易に得ることができる。
【0004】
化学重合では、用いる重合反応を起こさせる酸化剤によってもたらされるアニオンがドーパントとして取り込まれて導電性が発現することが知られている。
【0005】
また、化学重合において重合媒体にイオン解離する添加剤を共存させておき、そのアニオンを酸化剤アニオンと競争反応的に取り込ませる試みがなされている。
【0006】
水媒体中で陰イオン界面活性剤を共存させておき、第二鉄塩を酸化剤として用いることにより、分子嵩の大きい界面活性剤アニオンを高選択率で取り込ませることが可能であることが、特開平9−268258号公報および特開平10−308327号公報に開示されている。
【0007】
さらに、得られる導電性高分子の電気伝導度、耐熱・耐湿性等の諸性質は、取り込まれたドーパント種によって大きく変化するため、応用を考える場合その選択が極めて重要であり、種々のアニオンがドーパントとして検討されている。
【0008】
酸化剤として、例えば三価の鉄塩または二価の銅塩に代表される遷移金属塩、過酸化水素、過硫酸塩等が使用できることが知られている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
酸化剤に遷移金属を用いれば、ドーパントとなるアニオン種を広範囲に変えることが可能であり、したがって得られる導電性高分子の性質を比較的容易に制御することができる。
【0010】
ただ、遷移金属イオンで重合させた場合、化学量論的に大量の遷移金属塩を含む重合残渣が生成し、洗浄によって除去しきれず、しばしば重合体中に取り残されるという課題があった。
【0011】
これは、例えば入り組んだ細孔を有する構造体中に導電性高分子層を形成して複合体を形成するような時、洗浄液が入りにくいため、特に大きな課題になっていた。
【0012】
さらにその残渣が他に悪影響を及ぼすことも多く、残渣の少ない重合方式を確立することが、導電性高分子の実用化を進める上で重要な課題であった。
【0013】
遷移金属塩に替えて過硫酸塩をならびに過酸化水素を用いる化学重合法が多く検討されてきた。
【0014】
この方式では、金属塩を含む残渣がないという利点がある。
【0015】
しかしながら、過硫酸塩ならびに過酸化水素を重合酸化剤として用いた場合には、従来技術では、有用なアニオンを選択的に取り込むことは困難であった。
【0016】
過硫酸アンモニウムの場合、酸化反応の結果硫酸イオンが生じるため、これがドーパントとして取り込まれる。
【0017】
硫酸イオンは分子サイズおよび嵩が小さいため脱ドープを起こしやすく、耐熱・耐湿性の優れた導電性高分子を得ることは困難であった。
【0018】
例えば塩素イオン、硝酸イオンなどでも同様に、その分子サイズが小さいため、それらがドープされたポリピロールは、室温でも脱ドープが起こりやすく電気伝導度の低下が観察される。
【0019】
他のイオン解離性添加剤を共存させた場合でも、両者の濃度比に依存して両者がドープされてしまうために、その濃度を重合に必要な酸化剤を越えて過剰にしない限り、添加剤アニオンが実質的にドープされ、望ましい特性を持つ導電性高分子を得ることは困難であった。
【0020】
第二鉄塩で代表される遷移金属塩を酸化剤として用いた場合には、陰イオン界面活性剤を用いた場合に限り、界面活性剤アニオンが高選択率で取り込まれる現象が起こったが、過酸化水素および過硫酸アンモニウムの場合そうならないのは、次のような理由による。
【0021】
すなわち、第二鉄塩と陰イオン界面活性剤と重合性モノマーが共存する水媒体中では、疎水性の高い重合性モノマーは陰イオン界面活性剤アニオンが形成するミセル中に可溶化して存在している。
【0022】
さらに、酸化剤から解離した第二鉄イオンは界面活性剤アニオンと結合して疎水性が増すために、これもまたミセル中に取り込まれて可溶化が起こると見られる。
【0023】
その結果、重合性モノマーと酸化剤が高濃度で存在するミセル中で重合反応が進み、さらに生成したポリマー近傍に存在する界面活性剤アニオンが支配的にドーパントとして取り込まれるためである。
【0024】
このことは、陰イオン界面活性剤を共存させた場合の方が、重合速度が明らかに大きくなっていることからも確かである。
【0025】
同様の現象は他の遷移金属塩を用いた場合にも見られる。
【0026】
一方、過硫酸アンモニウムに代表される過硫酸塩を酸化剤として用いた場合には、その親水性が高いため、陰イオン界面活性剤を共存させても、重合性モノマーのみが界面活性剤アニオンが形成するミセル中に取り込まれる。
【0027】
したがって、陰イオン界面活性剤添加による重合反応促進効果は観察されず、逆に重合反応の大幅な抑制が観察される。
【0028】
その結果、所定条件下で得られる重合体の収量が少なく、通常の減圧濾過では、しばしば濾過すら困難なほど微小な粒子径の重合体が得られる。
【0029】
また、このようにして得られた重合体は有機溶媒にも可溶であることが認められており、重合度が低くしたがって、耐熱耐湿性も所望のレベルに達しない、極めて低いものであった。
【0030】
また、重合時間を長くすることにより、収量を増加させようとする試みがなされたが、その場合生成した重合体が強酸性の雰囲気中に長時間暴露されることになり、それによる劣化も無視できなくなって、結局所望の特性を持つ重合体を得ることは困難であった。
【0031】
過酸化水素を酸化剤に用いた場合も、過硫酸塩の場合と同様の現象が見られるが、これも上と同じように説明ができる。
【0032】
すなわち、過酸化水素の酸化力は系が酸性条件下で発揮されるため、重合酸化剤として用いようとする場合には酸の添加が必要となる。
【0033】
そして添加された酸のアニオンがドーパントとして取り込まれる。
【0034】
ここで、他の解離性添加剤を併用した場合には、酸に起因するアニオンと添加剤に起因するアニオンの濃度比に依存して両者がドーパントとして取り込まれる。
【0035】
また、例えば解離して界面活性作用を有するアニオンを含む酸で系を酸性にした場合には、過硫酸アンモニウムと同様の理由で重合反応が阻害され、得られた導電性高分子に望ましい特性を付与することは困難であった。
【0036】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するもので、共役二重結合導電性高分子を含む高導電性であって、かつ高熱安定性の導電性組成物、及びそれを短時間に高収率で得るための効率的な製造方法を提供することを目的としたものである。
【0037】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するものであり、重合性モノマー、過硫酸塩、過硫酸塩と比較して1桁以上低モル濃度の遷移金属塩及び陰イオン界面活性剤を含む媒体中で実現される、高導電性であって、かつ耐熱・耐湿性の優れた導電性高分子組成物を合成する製造方法を基本とする。
【0038】
また本発明は、重合性モノマー、過酸化水素、過酸化水素と比較して1桁以上低モル濃度の遷移金属塩、陰イオン界面活性剤及び酸を含む媒体中で実現される、高導電性であって、かつ耐熱・耐湿性の優れた導電性高分子組成物を合成する製造方法を基本とする。
【0039】
なおここでは、酸化剤は重合性モノマーを重合させるために必要な化学量論量に近い量を用いられることが前提である。
【0040】
さらに本発明は、これらの構成により実現される高導電性であって、かつ高熱安定性の導電性組成物を含む。
【0041】
そして、この導電性組成物は、化学的酸化重合による製造方法により得ることができ、短時間で高収率で得るための効率的な製造方法が提供された。
【0042】
本発明によれば、重合性モノマーが界面活性剤アニオンが形成するミセル中に取り込まれて存在し、さらに遷移金属イオンも界面活性剤アニオンと結合して疎水化してミセル中に凝集されるため、重合反応が容易に進行し、さらにミセルを形成している嵩高な分子構造の界面活性剤アニオンが優先的にドーパントとして取り込まれる。
【0043】
このため、短時間で高電気伝導度、かつ耐熱・耐湿性の優れた導電性高分子を得ることができる。
【0044】
本発明ではまた、上記の陰イオン界面活性剤と酸を併用することに替えて界面活性作用を持つアニオンを含む酸を用いることもできる。
【0045】
なお、重合反応に使用されて還元した遷移金属イオンは、価数減少に伴い親水性が増すためにミセルから水相に移り、そこで過酸化水素で酸化されて再度疎水化してミセルに移行して重合反応に預かり、これを重合性モノマーもしくは過酸化水素が消費されるまで繰り返すことになる。
【0046】
遷移金属塩は、それ自体でも重合酸化剤として作用するため、高濃度にした場合にももちろん重合は進むが、その場合得られた重合体中に大量に残渣として取り残され、しばしば耐熱性を低下させたり、接触する他の物質を腐食させる等の悪影響を及ぼす。
【0047】
したがって、本発明の趣旨から遷移金属の濃度は過酸化水素の1/10以下のモル濃度であることが望ましい。
【0048】
また、得られる重合体の収量および電気伝導度は、水素イオン濃度に大きく依存するため、pH3以下の条件で重合させることが望ましい。
【0049】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1記載の発明は、ピロールもしくはその誘導体又はチオフェンもしくはその誘導体である重合性モノマー、陰イオン界面活性剤、過硫酸塩及び前記過硫酸塩より低モル濃度の遷移金属塩を含む媒体中で重合する導電性組成物の製造方法であって、過硫酸塩に対する遷移金属イオンのモル濃度比が0.1以下となる如く遷移金属塩を含む導電性組成物の製造方法であり、この製造方法により高導電性でかつ耐熱・耐湿性の優れた導電性組成物を得ることができる。
【0051】
また、請求項2記載のように、過硫酸塩として過硫酸アンモニウムが好適に使用できる。また、陰イオン界面活性剤として、請求項3記載のように、スルホン酸系界面活性剤が好適に用いられる。
【0052】
また、請求項4記載のように、遷移金属塩として三価の鉄塩または二価の銅塩を用いることができる。
【0053】
本発明の請求項5記載の発明は、ピロールもしくはその誘導体又はチオフェンもしくはその誘導体である重合性モノマー、陰イオン界面活性剤、酸、過酸化水素及び前記過酸化水素より低モル濃度の遷移金属塩を含む媒体中で重合する導電性組成物の製造方法であって、過酸化水素に対する遷移金属イオンのモル濃度が0.1以下となる如く遷移金属塩を含む導電性組成物の製造方法であり、この製造方法により高導電性でかつ耐熱・耐湿性の優れた導電性組成物を得ることができる。
【0055】
また、請求項6記載のように、陰イオン界面活性剤としてスルホン酸系界面活性剤が好適に用いられる。
【0057】
請求項7記載のように、遷移金属塩として、三価の鉄塩または二価の銅塩が好適に用いられる。
【0058】
さらにまた、請求項8記載のように、重合は水素イオン濃度がpH3以下に調節された系で行うことができる。
本発明の請求項9記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか記載の導電性組成物の製造方法で得られる導電性組成物であり、この製造方法により高導電性でかつ耐熱・耐湿性の優れた導電性組成物を得ることができる。
【0059】
以下、本発明の各実施の形態について詳細に説明をする。
【0060】
(実施の形態1)
最初に、本発明第1の実施の形態について説明する。
【0061】
まず、本実施の形態では、過硫酸アンモニウム4.56g(0.02モル)と硫酸第二鉄n水和物1.07g(硫酸第二鉄として0.002モルを含む)を100gの水に溶解させて、酸化剤溶液を作製した。ここで、nは自然数である。
【0062】
ついで、この溶液にピロールモノマー5g(0.075モル)と界面活性剤ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.22g(0.0035モル)を100gの水に溶解させた溶液を添加して、25℃大気圧下で1時間間撹拌しながら重合させた。
【0063】
ついで、得られた沈殿を濾別し、水で濾液が中性を呈するまで洗浄し、さらにエタノールで洗浄後、約50℃で数時間減圧下で乾燥して、共役二重結合を有する導電性高分子であるポリピロールを含む導電性組成物を得た。
【0064】
そして、この導電性組成物の収量を計量後、その一部を乳鉢で粉砕し、約30MPの圧力で直径13mmのディスク状ペレットを作製して、電気伝導度の測定に供した。
【0065】
また、耐熱・耐湿性は、ペレット試料をを125℃の強制循環式恒温器ならびに85℃85%RH恒湿器中に500時間保存後の大気中に取り出し、電気伝導度を測定して評価した。
【0066】
なお、電気伝導度の測定にはダイアインスツルメント(株)製抵抗率測定器ロレスタSPを用いた。
【0067】
得られた導電性組成物の初期電気伝導度および耐熱・耐湿試験後の電気伝導度を、以下の(表1)に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
(比較例1)
比較例1として、硫酸第二鉄を添加しない以外、実施の形態1と同様の操作でポリピロールを主体とする導電性組成物を作製した。
【0070】
ここでは系の色が黒変し、重合体が生成したことが確認されたが、桐山式ロートによる濾別が極めて困難で、さらにエタノール洗浄を繰り返し行っても着色が消えず、生成物が一部溶解していることが観察された。
【0071】
得られた導電性組成物を実施の形態と同様にして初期電気伝導度および耐熱・耐湿試験後の電気伝導度の評価を行った。
【0072】
この結果を(表1)に示す。
【0073】
この(表1)における比較例1と実施の形態1との比較から明らかなように、実施の形態1による導電性組成物は、初期電気伝導度が高いことに加えて耐熱・耐湿性が高いという点で優れた効果が得られたことが判明した。
【0074】
これは取りも直さず、遷移金属塩を添加することにより、重合反応が上で述べたようなメカニズム基づき促進され、さらに嵩高な分子構造の陰イオンがドーパントとして取り込まれたことに起因したものと判断される。
【0075】
(実施の形態2)
ついで、本発明第2の実施の形態について説明する。
【0076】
本実施例では、実施の形態1で用いたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに替えて、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム30%水溶液を4.2g(0.0035モル)を添加した以外、実施の形態1と同様にして導電性組成物を作製した。
【0077】
得られた導電性組成物の初期電気伝導度および耐熱・耐湿試験後の電気伝導度を実施の形態1と同様に評価し、それらの結果を以下の(表1)に示す。
【0078】
この(表1)から明らかなように、実施の形態2による導電性組成物は、初期電気伝導度が高いことに加えて耐熱・耐湿性が高いという点で優れた効果が得られたことが判明した。
【0079】
(実施の形態3)
ついで、本発明第3の実施の形態について説明する。
【0080】
本実施例では、実施の形態2で用いたピロールに替えて、3、4−エチレンジオキシチオフェン2.84g(0.02モル)を用いた以外、実施の形態2と同様にして導電性組成物を作製した。
【0081】
得られた導電性組成物の初期電気伝導度および耐熱・耐湿試験後の電気伝導度を実施の形態1と同様に評価し、それらの結果を以下の(表1)に示す。
【0082】
(比較例2)
比較例2として、硫酸第二鉄を添加しない以外、実施の形態3と同様の操作で導電性組成物の作製を試みた。
【0083】
ここでは系の色が黒変したのみで、濾別可能な重合体が得られなかった。
【0084】
この比較例2と実施の形態3との比較から明らかなように、実施の形態3によれば、重合反応が促進されることが明らかである。
【0085】
さらに(表1)の結果から、得られた導電性組成物は初期電気伝導度が高いことに加えて耐熱・耐湿性が高いという点で優れた効果が得られたことが判明した。
【0086】
これは取りも直さず、遷移金属塩を添加することにより、重合反応が上で述べたようなメカニズム基づき促進され、さらに嵩高な分子構造の陰イオンがドーパントとして取り込まれたことに起因したものと判断される。
【0087】
(実施の形態4)
ついで、本発明第4の実施の形態について説明する。
【0088】
本実施例では、実施の形態1で用いた硫酸第二鉄に替えて同モルの硫酸第二銅を用いた以外、実施の形態1と同様にして導電性組成物を作製した。
【0089】
得られた導電性組成物の初期電気伝導度および耐熱・耐湿試験後の電気伝導度を実施の形態1と同様に評価し、それらの結果を以下の(表1)に示す。
【0090】
この(表1)から明らかなように、実施の形態4による導電性組成物は、初期電気伝導度が高いことに加えて耐熱・耐湿性が高いという点で優れた効果が得られたことが判明した。
【0091】
(実施の形態5)
ついで、本発明第5の実施の形態について説明する。
【0092】
まず、本実施の形態では、30%過酸化水溶液2.27g(過酸化水素0.02モルを含有)と硫酸1.96g(0.02モル)と硫酸第二鉄n水和物1.07g(硫酸第二鉄として0.002モルを含む)を100gの水に溶解させて、酸化剤溶液を作製した。ここで、nは自然数である。
【0093】
ついで、この溶液にピロールモノマー5g(0.075モル)と界面活性剤トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム30%水溶液4.2g(0.0035モル)を100gの水に溶解させた溶液を添加して、25℃大気圧下で1時間間撹拌しながら重合させた。
【0094】
ついで、得られた沈殿を濾別し、水で濾液が中性を呈するまで洗浄し、さらにエタノールで洗浄後、約50℃で数時間減圧下で乾燥して、共役二重結合を有する導電性高分子であるポリピロールを含む導電性組成物を得た。
【0095】
なお、濾液のpHは1.10であった。
【0096】
得られた導電性組成物の初期電気伝導度および耐熱・耐湿試験後の電気伝導度を実施の形態1と同様に評価し、それらの結果を以下の(表1)に示す。
【0097】
(比較例3)
比較例3として、硫酸第二鉄を添加しない以外、実施の形態5と同様の操作で導電性組成物の作製を試みた。
【0098】
ここでは系の色が黒変し、重合体が生成したことが確認されたが、桐山式ロートによる濾別が極めて困難で、さらにエタノール洗浄を繰り返し行っても着色が消えず、生成物が一部溶解していることが観察された。
【0099】
得られた導電性組成物を実施の形態と同様ににして初期電気伝導度および耐熱・耐湿試験後の電気伝導度の評価を行った。
【0100】
この結果を(表1)に示す。
【0101】
この(表1)における比較例3と実施の形態5との比較から明らかなように、実施の形態5による導電性組成物は、初期電気伝導度が高いことに加えて耐熱・耐湿性が高いという点で優れた効果が得られたことが判明した。
【0102】
これは取りも直さず、遷移金属塩を添加することにより、重合反応が上で述べたようなメカニズム基づき促進され、さらに嵩高な分子構造の陰イオンがドーパントとして取り込まれたことに起因したものと判断される。
【0103】
(実施の形態6)
ついで、本発明第6の実施の形態について説明する。
【0104】
本実施例では、実施の形態2で用いたピロールに替えて、3、4−エチレンジオキシチオフェン2.84g(0.02モル)を用いた以外、実施の形態5と同様にして導電性組成物を作製した。
【0105】
得られた導電性組成物の初期電気伝導度および耐熱・耐湿試験後の電気伝導度を実施の形態1と同様に評価し、それらの結果を以下の(表1)に示す。
【0106】
(比較例4)
比較例4として、硫酸第二鉄を添加しない以外、実施の形態3と同様の操作で導電性組成物の作製を試みた。
【0107】
ここでは系の色が黒変したのみで、濾別可能な重合体が得られなかった。
【0108】
この比較例4と実施の形態6との比較から明らかなように、実施の形態6によれば、重合反応が促進されることが明らかである。
【0109】
また、(表1)の結果から得られた導電性組成物は初期電気伝導度が高いことに加えて耐熱・耐湿性が高いという点で優れた効果が得られたことが判明した。
【0110】
これは取りも直さず、遷移金属塩を添加することにより、重合反応が上で述べたようなメカニズム基づき促進され、さらに嵩高な分子構造の陰イオンがドーパントとして取り込まれたことに起因したものと判断される。
【0111】
(実施の形態7)
ついで、本発明第7の実施の形態について説明する。
【0112】
本実施の形態では、硫酸に替えて(A)硝酸2.25g(0.04モル)及び(B)36%塩酸4.1g(約0.04モル)をそれぞれ用いた以外、実施の形態1と同様にして導電性組成物を得た。
【0113】
得られた導電性組成物の初期電気伝導度および耐熱・耐湿試験後の電気伝導度を実施の形態1と同様に評価し、それらの結果を以下の(表1)に示す。
【0114】
この(表1)から明らかなように、実施の形態7による導電性組成物は、初期電気伝導度が高いことに加えて耐熱・耐湿性が高いという点で優れた効果が得られたことが判明した。
【0115】
(実施の形態8)
ついで、本発明第8の実施の形態について説明する。
【0116】
本実施例では、実施の形態3で用いた硫酸第二鉄に替えて、0.04モルの硫酸第二銅を用いた以外、実施の形態1と同様にして、導電性組成物を得た。
【0117】
得られた導電性組成物の初期電気伝導度および耐熱・耐湿試験後の電気伝導度を実施の形態1と同様に評価し、それらの結果を以下の(表1)に示す。
【0118】
この(表1)から明らかなように、実施の形態5による導電性組成物は、初期電気伝導度が高いことに加えて耐熱・耐湿性が高いという点で優れた効果が得られることが判明した。
【0119】
(実施の形態9)
ついで、本発明第9の実施の形態について説明する。
【0120】
本実施の形態では、硫酸の添加量を変化させて、pHを2、3、4に調節した重合液をそれぞれ作製して用いた以外実施の形態5と同様にして、ポリピロールを主体とする導電性組成物を試みた。
【0121】
pH2および3に調整した重合液からは濾別可能な導電性組成物が得られたが、pH4の重合液からはそれが得られないことが明らかになった。
【0122】
したがって、本発明においては、重合液のpHは3以下でなければならない。
【0123】
なお、以上の実施の形態では、重合性モノマーとしてピロールと3、4―エチレンジオキシチオフェンを用いた場合についてのみのべたが、2、5位以外に置換基を有する他の誘導体を用いてもよく、また後者にあっては置換基のないチオフェンを同様に用いることもでき、さらに共役二重結合が連なった構造の導電性高分子を形成するものであれば、例えばアニリンのような他の重合性モノマーを用いても良い。
【0124】
なお、以上の実施の形態では、界面活性剤としてナトリウム塩の場合についてのみ述べたが、他のアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩も同様に使用でき、カチオンの種類に本発明は限定されない。
【0125】
なお、以上の実施の形態では、酸として硫酸、硝酸および塩酸を用いた場合についてのみ述べたが、これは系を重合反応が進む程度の酸性に保つことができるものであればよく、他の酸を用いてもよく、本発明の趣旨からその種類に限定されないことは明らかである。
【0126】
なお、以上の実施の形態では、界面活性作用を有する陰イオンとして芳香属スルホン酸イオンを用いた場合についてのみ述べたが、これは特に耐熱。耐湿性の高い導電性組成物を得ることを第一の主眼に置いたもので、界面活性作用を有するものであれば他のスルホン酸イオンを用いることもでき、また、上記以外のの陰イオン界面活性剤を用いることも可能である。
【0127】
なお、以上の実施の形態では、過酸化水素と遷移金属塩の濃度比をモル比で1/10に固定した場合についてのみ述べたが、これは限定的ではなく後者の添加比を小さくすることもでき、その場合重合残渣の洗浄除去が容易になり、それを嫌う用途においては好適である。
【0128】
なお、遷移金属塩の濃度が小さくなればなるほど溶解しにくい重合残渣は減少するが、一方陰イオン界面活性剤ミセルに取り込まれる遷移委金属イオン濃度が減少するため、重合反応がスムーズに進みにくなり、両者の兼ね合いから、用途に応じて過酸化水素と遷移金属塩のモル濃度比を0.1以下のところで適宜選んで使用することができる。
【0129】
【発明の効果】
本発明の構成により、過硫酸塩または過酸化水素を酸化剤として用いて重合性モノマーを酸化重合し、嵩高な分子構造の陰イオン界面活性剤アニオンが支配的に取り込まれた、高導電性でかつ耐熱・耐湿性の優れた導電性組成物を得ることができる。加えて本発明によれば、重合速度を大きくすることもできるために利用上の価値が高い。
Claims (9)
- ピロールもしくはその誘導体又はチオフェンもしくはその誘導体である重合性モノマー、陰イオン界面活性剤、過硫酸塩及び前記過硫酸塩より低モル濃度の遷移金属塩を含む媒体中で重合する導電性組成物の製造方法であって、過硫酸塩に対する遷移金属イオンのモル濃度比が0.1以下となる如く遷移金属塩を含む導電性組成物の製造方法。
- 過硫酸塩が過硫酸アンモニウムである請求項1記載の導電性組成物の製造方法。
- 陰イオン界面活性剤がスルホン酸系界面活性剤である請求項1又は2記載の導電性組成物の製造方法。
- 遷移金属塩が三価の鉄塩又は二価の銅塩である請求項1ないし3のいずれか記載の導電性組成物の製造方法。
- ピロールもしくはその誘導体又はチオフェンもしくはその誘導体である重合性モノマー、陰イオン界面活性剤、酸、過酸化水素及び前記過酸化水素より低モル濃度の遷移金属塩を含む媒体中で重合する導電性組成物の製造方法であって、過酸化水素に対する遷移金属イオンのモル濃度が0.1以下となる如く遷移金属塩を含む導電性組成物の製造方法。
- 陰イオン界面活性剤がスルホン酸系界面活性剤である請求項5記載の導電性組成物の製造方法。
- 遷移金属塩が三価の鉄塩又は二価の銅塩である請求項5又は6記載の導電性組成物の製造方法。
- 媒体の水素イオン濃度がpH3以下である請求項5ないし7のいずれか記載の導電性組成物の製造方法。
- 請求項1ないし8のいずれか記載の導電性組成物の製造方法で得られる導電性組成物。
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