JP3736008B2 - 強制循環式蒸発缶 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低沸点揮発物を分離する蒸発装置に関し、特に強制循環式により揮発物を連続して蒸発するのに好適な装置構造に関し、さらに、エステル化反応に用いて好適な強制循環式蒸発缶に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、強制循環式あるいは自然循環式により揮発物を連続して蒸発させる装置として、特開昭54ー19928号公報に示されるように、外部に熱交換器を設けた循環ループをもつ立形混合槽式の蒸発缶が公知となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術は装置の小形化や熱交換器部分での被処理液の流速分布の均一性、すなわち均一な蒸発特性、均一な反応特性及び被処理液がスラリーの場合の固体粒子の沈殿に対する配慮が十分でなかった。
【0004】
本発明の目的は、被処理液を強制循環させながら低沸点成分を連続的に効率よく蒸発させる強制循環式蒸発缶、または、このような強制循環によりスラリーをエステル化反応させて製造するポリエチレンテレフタレートの製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、内部に供給された被処理液がこの内部で循環する円筒容器と、この円筒容器の下部に配置された前記被処理液の入口と、前記被処理液内に配置されこの被処理液がその内側を通り上昇する多管式熱交換器と、この多管式熱交換器の上方に配置され該多管式熱交換器の上方の前記被処理液を撹拌する撹拌翼と、前記円筒容器の上方に配置され前記被処理液からの蒸気を排出するためのベーパー管とを備え、前記被処理液を前記撹拌翼の回転により前記多管式熱交換器と前記円筒容器との間を流下してこの多管式熱交換器の下部に流入して循環させてエステル化する強制循環式蒸発缶により達成される。また、テレフタル酸を主とするジカルボン酸とエチレングリコールを主とするグリコールとからなるスラリーを連続的にエステル化反応させ重合度の低いビス−β−ヒドリキシエチルテレフタレートを製造し、その後に重縮合させポリエチレンテレフタレートを製造するポリエチレンテレフタレートの製造方法であって、内部に供給された前記スラリーがこの内部で循環する円筒容器と、この円筒容器の下部に配置された前記スラリーの入口と、前記スラリー内に配置されこのスラリーがその内側を通り上昇する多管式熱交換器と、この多管式熱交換器の上方に配置され該多管式熱交換器の上方の前記スラリーを撹拌する撹拌翼と、前記円筒容器の上方に配置され前記スラリーからの蒸気を排出するためのベーパー管とを備え、前記スラリーを前記撹拌翼の回転により前記多管式熱交換器と前記円筒容器との間を流下してこの多管式熱交換器の下部に流入して循環させてエステル化反応させることにより達成される。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の一実施例を示す。被処理液2は立形の蒸発缶1内の下部に設けた入口3より流入し、多管式熱交換器4の複数の伝熱管内(図示していない)側を流れ加熱され、多管式熱交換器4の上部に設けられた撹拌翼11により強制的に上昇させられる。ここで被処理液2の低沸点成分の一部は蒸発しベーパー管5より装置外に放出される。残りの被処理液2は蒸発缶1の内壁と多管式熱交換器4のシェルの外壁との間を流下し、多管式熱交換器4に設けられた複数の伝熱管に流入し、各被処理液は再び均一に加熱され強制対流による循環を繰り返す。この過程で徐々に低沸点成分は蒸発し、適当な滞留時間を経た後に濃縮された被処理液9は出口10を通って系外へ導き出される。このように撹拌翼11の回転数を適当に設定することによって、被処理液は多管式熱交換器4の伝熱管内で効果的に加熱、循環され短い滞留時間で蒸発あるいは反応を行うことができる。なお、7は熱媒の入口、8は熱媒の出口を示し、蒸発缶1のまわりは断熱材あるいはジャケットにより囲まれている(図示していない)。従って、本発明の蒸発缶では滞留時間が短いので装置の小形化が可能となり、熱交換器の軸方向に沿って効果的に被処理液は加熱されるので、均一な蒸発あるいは反応を行うことができ、より良好な製品品質を短い滞留時間で得ることができる効果がある。
【0007】
図2に本発明の他の実施例を示す。本実施例で図1と同一符号のものの説明は省略する。被処理液2は蒸発缶1の内壁と多管式熱交換器4の外壁との間を強制対流により流下し、多管式熱交換器4の下部に設けられた円筒状の助走区間6に流入する。ここで処理液は乱れの少ない整流されたものになり、さらに多管式熱交換器4の管内の平均流速は強制対流で流下する平均流速よりも増速されているのでより均一な速度分布で複数の伝熱管に流入し、各被処理液は均一に加熱され強制対流による循環を繰り返す。ここで、円滑な増速流を発生させるためには、伝熱管の総流路面積よりも蒸発缶1の内壁と多管式熱交換器4の外壁との間に形成される二重管部分の流路面積を大きくすることにより達成される。従って、本発明の蒸発缶では熱交換器の軸方向に沿って速度分布が均一なため被処理液はより均一にかつ効果的に加熱されるので、より均一な蒸発あるいは反応を行うことができ、より良好な製品品質を短い滞留時間で得ることができる。
【0008】
図3に本発明の参考例を示す。本参考例で図1と同一符号のものの説明は省略する。蒸発缶1の基本構造は図1の実施例と同様であるが、被処理液2を強制的に循環する撹拌翼11’は蒸発缶1の内壁と多管式熱交換器4の外壁との間に設けられている。図4に撹拌翼11’の側面図を示す。撹拌翼11’は図に示した方向に適当に回転することにより、被処理液を下方に流下させることができる。また翼形状は本実施例に限定されるものではなく、被処理液を軸方向に流下させる作用を持った適当なもので良い。
【0009】
図5に本発明の他の参考例を示す。図3と同一符号のものの説明は省略する。被処理液2は蒸発缶1の内壁と多管式熱交換器4の外壁との間を強制対流により流下し、多管式熱交換器4の下部に設けられた円筒状の助走区間6に流入する。ここで処理液は乱れの少ない整流されたものになり、さらに多管式熱交換器4の管内の平均流速は強制対流にて流下する平均流速よりも増速されているのでより均一な速度分布で複数の伝熱管に流入し、各被処理液は均一に加熱され強制対流による循環を繰り返す。ここで、円滑な増速流を発生させるためには、図2で説明したように伝熱管の総流路面積よりも蒸発缶1の内壁と多管式熱交換器4の外壁との間に形成される二重管部分の流路面積を大きくすることにより達成される。従って、本参考例では熱交換器の軸方向に沿って速度分布が均一なため被処理液はより均一にかつ効果的に加熱されるので、より均一な蒸発あるいは反応を行うことができ、より良好な製品品質を短い滞留時間で得ることができる。
【0010】
図6に本発明の他の実施例を示す。本実施例で図2と同一符号のものの説明は省略する。被処理液2が固体粒子と液体の混合物(以下スラリーと記述する)の場合も、図2と同様に強制循環するスラリーは多管式熱交換器4のシェル下部に設けられた円筒状の助走空間6に流入するが、円錐状の部材12に沿ってより円滑に上昇するために、固体粒子が底部に沈殿することがない。被処理液がスラリーの場合は蒸発缶の底部に内部循環する被処理液を上昇させるための円錐状の部材を設けることにより、スラリーに含まれる固体粒子の沈殿を防ぐことができる。ここで、円錐状の部材はある曲率を持っていても良い。従って、本発明の蒸発缶ではスラリーの強制循環により好適な蒸発缶を提供できる効果があり、信頼性のある良好な品質の製品を得ることができる。
【0011】
図7に本発明の他の実施例を示す。本実施例で図6と同一符号のものの説明は省略する。立形の蒸発缶1には例えば差圧式の液面計13が設けられ、液面計の指示により被処理液9の出口10の下流に設けられた自動弁14の開度調整が行われる。本構造の蒸発缶では被処理液の液面を制御することにより被処理液の滞留時間を調整できるので、最適な蒸発時間あるいは最適な反応時間を容易に設定できる。従って、本実施例によれば被処理液は蒸発缶内で最適な滞留時間で加熱処理されるので、より良好な製品品質を短い滞留時間で得ることができる。
【0012】
図8に本発明の実施例に係る蒸発缶をポリエチレンテレフタレート製造法に用いた場合の一構成例を示す。原料のテレフタル酸とエチレングリコールを混合して得られたスラリー20は内部に多管式熱交換器4を内蔵した強制循環式蒸発缶1に連続的に供給される。適当な滞留時間で反応して生成された重合度の低いビスーβーヒドロキシエチルテレフタレートは次に例えば撹拌式の初期重合槽21にポンプ(図示していない)を介して送られ重合度を高められる。さらに、重合物は例えば横型の最終重合槽22に送られ真空下で加熱、撹拌され重合度100程度のポリエチレンテレフタレート23が製造される。従って、本発明によればエステル化工程で品質の良いエステル化反応物を短い滞留時間で製造できるので、装置の小型化が可能でより良好な品質のポリエチレンテレフタレートを製造できる効果がある。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、被処理液を効果的に均一に加熱できるのでより短い滞留時間で低沸点成分を蒸発させることができ、より良好な製品品質を得ることができる。さらに、被処理液が反応を伴って蒸発する場合でも同様な効果がある。また、被処理液がスラリーの場合でもスラリーに含まれる固体粒子の沈殿を防ぐことができ、より信頼性のある良好な品質の製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による蒸発缶の一実施例を示す便宜的な断面図である。
【図2】本発明による蒸発缶の他の実施例を示す便宜的な断面図である。
【図3】本発明による蒸発缶の他の実施例を示す便宜的な断面図である。
【図4】本発明の実施例に用いられる撹拌翼の一例を示す便宜的な側面図である。
【図5】本発明による蒸発缶の他の実施例を示す便宜的な断面図である。
【図6】本発明による蒸発缶の他の実施例を示す便宜的な断面図である。
【図7】本発明による蒸発缶の他の実施例を示す便宜的な断面図である。
【図8】本発明によるポリエチレンテレフタレート製造装置の一実施例を示す流れ図である。
【符号の説明】
1…蒸発缶、2…被処理液、4…多管式熱交換器、6…助走空間、11…撹拌翼、11’…撹拌翼12…円錐状部材、13…液面計、14…自動弁、20…スラリー、21…初期重合槽、22…最終重合槽、23…ポリエチレンテレフタレート。
Claims (4)
- 内部に供給された被処理液がこの内部で循環する円筒容器と、この円筒容器の下部に配置された前記被処理液の入口と、前記被処理液内に配置されこの被処理液がその内側を通り上昇する多管式熱交換器と、この多管式熱交換器の上方に配置され該多管式熱交換器の上方の前記被処理液を撹拌する撹拌翼と、前記円筒容器の上方に配置され前記被処理液からの蒸気を排出するためのベーパー管とを備え、前記被処理液を前記撹拌翼の回転により前記多管式熱交換器と前記円筒容器との間を流下してこの多管式熱交換器の下部に流入して循環させてエステル化する強制循環式蒸発缶。
- 請求項1に記載の強制循環式蒸発缶であって、前記円筒容器内において前記多管式熱交換器の下部に配置された円筒状の助走空間を備えた強制循環式蒸発缶。
- 請求項1または2に記載の強制循環式蒸発缶であって、前記円筒容器内の下部であって前記多管式熱交換器の下方に配置された円錐状の部材を備えた強制循環式蒸発缶。
- テレフタル酸を主とするジカルボン酸とエチレングリコールを主とするグリコールとからなるスラリーを連続的にエステル化反応させ重合度の低いビス−β−ヒドリキシエチルテレフタレートを製造し、その後に重縮合させポリエチレンテレフタレートを製造するポリエチレンテレフタレートの製造方法であって、
内部に供給された前記スラリーがこの内部で循環する円筒容器と、この円筒容器の下部に配置された前記スラリーの入口と、前記スラリー内に配置されこのスラリーがその内側を通り上昇する多管式熱交換器と、この多管式熱交換器の上方に配置され該多管式熱交換器の上方の前記スラリーを撹拌する撹拌翼と、前記円筒容器の上方に配置され前記スラリーからの蒸気を排出するためのベーパー管とを備え、前記スラリーを前記撹拌翼の回転により前記多管式熱交換器と前記円筒容器との間を流下してこの多管式熱交換器の下部に流入して循環させてエステル化反応させるポリエチレンテレフタレートの製造方法。
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JPH10259241A JPH10259241A (ja) | 1998-09-29 |
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Family
ID=13305826
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JP06609097A Expired - Lifetime JP3736008B2 (ja) | 1997-03-19 | 1997-03-19 | 強制循環式蒸発缶 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3736008B2 (ja) |
-
1997
- 1997-03-19 JP JP06609097A patent/JP3736008B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH10259241A (ja) | 1998-09-29 |
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