JP3734404B2 - 車両用受信機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両のキーレスエントリシステムにおいて車室内に設置される受信機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えば自動車においては、ワイヤレス送信機によりドアロック装置の開閉操作を可能としたキーレスエントリシステムが搭載されることが多い。このキーレスエントリシステムはワイヤレス送信機、受信機およびドアロックアクチュエータから成り立っている。車外からワイヤレス送信機を操作して電波信号を発射すると車内に設置された受信機が電波信号を受信してドアロックアクチュエータを作動させる。一般に、この受信機は電波の受信し易さを考慮して窓の近く、即ち車内前部のダッシュボード部や車内後部のリヤトレー部等に搭載されている。一方、自動車にはキーレスエントリシステム以外にも様々な電装品が搭載され、それに必要なワイヤーハーネス(電線)が縦横に配置されている。当然、受信機の近傍にもワイヤーハーネスが配設されている。一般に受信機は、アンテナ部とアンテナで受けた信号を増幅処理する受信回路部とから構成されている。近年、キーレスエントリシステムの動作可能範囲を広げるために、受信感度の高い高性能受信回路が受信機に採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このように受信機の性能を向上したにも拘わらず、受信感度が高くならない、または受信感度が不安定となる、といった現象が発生している。
【0004】
通常、自動車の電装品のワイヤーハーネスはグランド線を含んでいるため車両グランドと結合している。従って、ワイヤーハーネスが車両グランドから離れて設置された場合にはワイヤーハーネスがアンテナとして作用して、受信機のアンテナ部と受信機近傍を通るワイヤーハーネスが高周波的に結合して、ワイヤーハーネスにおける電波放射または電波吸収が増大する。その影響を受けて受信機の受信感度が不安定になってしまう。つまり、受信機近傍におけるワイヤーハーネスの取り回し状態によって受信機の受信感度が変化することがある。
【0005】
ワイヤーハーネスからの電波放射または電波吸収を抑制する方法としては、ワイヤーハーネスにシールド線を使用する、バイパスコンデンサを取付ける、ワイヤーハーネス上に高周波電流により形成される定在波の節に相当する位置の電路に低インピーダンスの分岐路を接続する(特開52―17747)等がある。しかし、いずれの方法もコスト上昇を伴うという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような点に鑑み、受信機近傍のワイヤーハーネスと車両の電気的グランドとの位置関係、およびワイヤ―ハーネスと受信機との位置関係を改善することにより、ワイヤーハーネスからの電波放射または電波吸収を抑制して安定した受信感度を有する車両用受信機を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成する為、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
本発明の請求項1に記載の車両用受信機は、この受信機もしくは受信機に内蔵されるアンテナとの距離が5cm以下に近接配置されたワイヤーハーネスを車両の電気的グランド部材との間隔が1cm以下となるように近接配置している。これにより受信機のアンテナ部と受信機近傍を通るワイヤーハーネスとの高周波結合が弱められ、ワイヤーハーネスによる電波放射、あるいは電波吸収が抑制されるので、受信機の受信感度が安定する。
【0009】
本発明の請求項2に記載の車両用受信機は、この受信機もしくは受信機に内蔵されるアンテナとの距離が5cm以下に近接配置されたワイヤーハーネスを車両の電気的グランド部材との間隔が1cm以下となるように近接配置すると共に、このワイヤーハーネスの、受信機もしくは受信機に内蔵されるアンテナとの距離が5cm以上である部分においては、ワイヤーハーネスと車両の電気的グランドとの間隔を任意に設定している。これにより受信機のアンテナ部と受信機近傍を通るワイヤーハーネスとの高周波結合が弱められ、ワイヤーハーネスによる電波放射、あるいは電波吸収が抑制されるので、受信機の受信感度が安定する。さらに、ワイヤーハーネスの受信機の受信感度に影響を及ぼさないような部分においては、車両への 取付け場所選択の自由度が向上できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態においては本発明を自動車のキーレスエントリシステムに用いられる受信機に適用したものであり、この受信機は車両のリヤトレー部に搭載されている。
【0011】
図1(a)は、リヤトレー部の平面図を、図1(b)は、図1のI−I線断面図を示す。車両のリヤトレー部は、電気的グランド部材として鋼板等の電気導体で形成される電気的グランド4と、その上側に固定されている、樹脂あるいは化学繊維等で成形された化粧板5とから構成されている。電気的グランド4にはプレス成形により化粧板5を支持する支持部4aが形成され、この支持部4aにおいて化粧板5は電気的グランド4にクリップ7により固定されている。また、支持部4aにより電気的グランド4と化粧板5の間には隙間が形成されている。
【0012】
受信機1は、電子回路(図示せず)およびアンテナ3を内蔵している。このアンテナ3は、受信機1のケース8の内壁全周に略沿うような形に成形されているため、受信機1の外壁面と受信機能上実質同レベルとみなしている。受信機1は電気的グランド4と化粧板5の間の隙間にあって電気的グランド4に固定されている。
【0013】
図1(a)の範囲D(斜線部)は、受信機1の外壁面との間隔が5cm以下となるような領域を示している。
【0014】
受信機1の近傍には、図1に示すように、2本のワイヤーハーネス2(受信機1に接続するものおよび室内灯(図示せず)に接続するもの)が配置されている。ワイヤーハーネス2は、銅線2aおよびこの銅線2aの外周を覆うビニル製の被覆部2bから構成されている。これらのワイヤーハーネス2は、図1(a)に示す範囲D内においては、クリップ6により電気的グランド4との間隔が1cm以下で、且つ電気的グランド4にできる限り近接するように固定されている。なお、ワイヤーハーネス2の被覆部2bの厚みは受信感度上無視できる程度に薄いため、この被覆部2b表面と電気的グランド4との間隔を1cm以下としたが、厳密には銅線2a表面と電気的グランド4との間隔を1cm以下とすることを意味する。一方、これらのワイヤーハーネス2は、図1(a)に示す範囲D外においては、受信感度上影響しないため電気的グランド4との間隔に制限は無く、任意の間隔に配置されている。
【0015】
上記構成により、受信機1のアンテナ3と受信機1近傍を通るワイヤーハーネス2が高周波的に結合し、ワイヤーハーネス2による電波放射または電波吸収を抑制することができる。従って、受信感度の安定した受信機1を提供することができる。
【0016】
また、ワイヤーハーネス2を電気的グランド4に近接固定する、という極めて容易な手段を採用したので、コスト上昇無しに受信感度の安定した受信機1を提供することができる。
【0017】
さらに、これらのワイヤーハーネス2は、図1(a)に示す範囲D外(受信機1の受信感度に影響を及ぼさない部分)においては、電気的グランド4との間隔が任意であるように配置することができるので、車両内においてワイヤーハーネスの取付け場所選択の自由度が妨げられることがない。
【0018】
次に、受信機近傍を通るワイヤーハーネスが受信機の受信感度に及ぼす影響について実車において行なった実験結果に基づいて説明する。
【0019】
図2(a)は、リヤトレー部の平面図を、図2(b)は、図2(a)のII−II線断面図を示す。
【0020】
先ず、試験条件について説明する。ワイヤーハーネス2はビニル被覆電線で構成され、室内灯(図示せず)に接続されている。図2に示すように、受信機1は、車両のリヤトレー部の電気的グランド4に設置されており、受信機1のケース8の内壁全周に略沿うような形状のアンテナ3を内蔵している。ワイヤーハーネス2による受信機1の受信感度への影響度合いは厳密には、ワイヤーハーネス2とアンテナ3との間隔により決まるが、図2に示すような受信機1の場合には、受信機1外形をアンテナ3形状と見做すことができる。ここで、受信機1とワイヤーハーネス2との間隔L(受信機1の外表面とワイヤーハーネス2の被覆部2a表面との最小間隔)および、ワイヤーハーネス2と車両の電気的グランド4との間隔H(ワイヤーハーネス2の被覆部2a表面と電気的グランド4との最小間隔)を変えて、車室中央部から10m離れた位置に置かれたダイポールアンテナから発信された電波を受信機1に受信させた時の受信感度を測定した。電波の周波数は300MHzである。
【0021】
図3は、H=1.5cm一定としてLを変えた場合における受信感度の測定結果を示す。これから、Lが5cm以下になると受信感度が低下する(ワイヤーハーネス2の影響が大きくなる)ことが分かる。
【0022】
図4は、L=0、即ちワイヤーハーネス2を受信機1に当接させた状態でHを変えた場合における受信感度の測定結果を示す。これから、Hが1cm以上になると受信感度が低下する(ワイヤーハーネス2の影響が大きくなる)ことが分かる。
【0023】
以上の実験結果をまとめると、受信機1周囲の範囲D(図2の斜線部)内に配設されるワイヤーハーネス2を、車両の電気的グランドとの間隔が1cm以下となるように近接固定することにより、ワイヤーハーネス2による受信感度への影響を抑制して受信感度を安定させることができる。
【0024】
一方、図5に示すように、直線状のアンテナ3を内蔵する受信機1の場合、ワイヤーハーネス2による受信感度への影響を考慮すべき範囲、即ちアンテナ3とワイヤーハーネス2との間隔が5cm以下となるような領域は、図5に示す範囲Eとなる。範囲Eにおいて、ワイヤーハーネス2を車両の電気的グランドとの間隔が1cm以下となるように近接固定することにより、ワイヤーハーネス2による受信感度への影響を抑制して受信感度を安定させることができる。なお、図2に示す範囲Dにおいてワイヤーハーネス2を車両の電気的グランドとの間隔が1cm以下となるように近接固定しても、範囲Eの場合と同様に受信感度を安定させることができる。つまり、ワイヤーハーネス2による受信感度に対する影響の抑制に関して、図2に示す範囲Dは十分条件、図5に示す範囲Eは必要条件となる。
【0025】
なお、本実施例では、ワイヤーハーネス3の固定にクリップ6を用いているが、この方式に限らず、ワイヤーハーネス3を車両グランド2との間隔を1cm以下となるように近接固定できる手段であれば、どのような手段でもよい。
【0026】
また、本実施例では、受信機1近傍のワイヤーハーネス2は2本示しているが、何本あってもよい。
【0027】
また、本実施例においては、受信機1を車両グランド2と化粧板5の間に設置しているが、化粧板5の上面または車両グランド2の下面でもよい。
【0028】
また、本実施例においては、ワイヤーハーネス3が車両グランド2の上面側に配設されているが、車両グランド2の下面であってもよい。
【0029】
さらに、本実施例においては、受信機1を車両のリヤトレー4に設置しているが、車両の他の場所、例えばCピラーでもよい。その場合でも受信機1とワイヤーハーネス2の位置関係を本実施例と同じに設定することにより、コスト上昇無しに受信感度の安定した受信機1を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による受信機1の搭載配置図である。(a)は平面図、(b)は(a)のI−I線断面図を示す。
【図2】本発明の一実施形態による受信機1の受信感度に対するワイヤーハーネス2の影響を調査した実験における搭載配置図である。(a)は平面図、(b)は(a)のIII−III線断面図である。
【図3】受信機1の受信感度と、受信機1とワイヤーハーネス2の距離Lとの関係の実測データを示す。
【図4】受信機1の受信感度と、ワイヤーハーネス2と電気的グランド4の距離Hとの関係の実測データを示す。
【図5】本発明の一実施形態による受信機1の変形例を示す。
【符号の説明】
1 受信機
2 ワイヤーハーネス
3 アンテナ
4 電気的グランド(電気的グランド部材)
6 クリップ
D 範囲
E 範囲
Claims (2)
- 車両内部に設置される受信機もしくは前記受信機に内蔵されるアンテナとの距離が5cm以下に近接配置されたワイヤーハーネスが、車両の電気的グランド部材に対して間隔が1cm以下となるように近接配置されることを特徴とする車両用受信機。
- 前記ワイヤーハーネスは、前記受信機もしくは前記受信機に内蔵される前記アンテナとの距離が5cm以上である部分において、車両の電気的グランド部材との間隔は任意であることを特徴とする請求項1に記載の車両用受信機。
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