JP3734066B2 - 磁気共鳴撮像装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気共鳴撮像方法および装置に関し、特に、エコープラナー(echo planar) 法による磁気共鳴撮像方法およびエコープラナー法を実行する磁気共鳴撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エコープラナー法による磁気共鳴撮像すなわちエコープラナー・イメージング(echo planar imaging:EPI) は、例えば図11に示すようなパルスシーケンス(pulse sequece) により、同図の(a)に示すように90°パルス(pulse) で被検体内のスピン(spin)を励起し180°パルスでスピンを反転した後、同図の(b),(c)に示すように、読み出し勾配磁場(リードアウト勾配)を高速に交流的に変化させるとともに位相エンコード勾配磁場(フェーズエンコード勾配)を印加して、同図の(a)に示すようなエコー(echo)信号を多数回繰返し発生させるようになっている。
【0003】
エコー信号はディジタルデータ(digital data)としてメモリ(memory)に収集され、それらエコーデータの2次元逆フーリエ(Fourie)変換によって画像が再構成される。
【0004】
被検体の脂肪部分から発生するエコー信号(脂肪信号)は、ケミカルシフト(chemical shift)により、水部分から発生するエコー信号よりも周波数が低いものとなり、再構成画像上では脂肪部分の像が位置ずれ(ケミカルシフト・アーチファクト(chemical shift artifact) )となって表れるので、脂肪信号の抑制が行われる。
【0005】
脂肪信号の抑制は、予め脂肪信号の周波数に一致するRF(radio frequency) 信号で励起して脂肪信号を飽和させることによって行うか、あるいは、水信号に一致するRF信号で選択的に励起することによって行う。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような脂肪信号ないし水信号の選択的な励起は、主磁場の不均一やRF励起系の能力等により、必ずしも適正な選択励起が行われるとは限らない。そのため、往々にして、水信号まで消えてしまったりあるいは脂肪信号の抑制が不十分になりがちであった。
【0007】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、ケミカルシフト・アーチファクトを効果的に抑制するエコープラナー法による磁気共鳴撮像方法および装置を実現することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)上記の課題を解決する第1の発明は、エコープラナー法により磁気共鳴撮像を行うに当たり、エコーにおける脂肪信号の位相が180°変化する時間間隔で複数のエコーを発生させる、ことを特徴とする。
【0009】
(2)上記の課題を解決する第2の発明は、エコープラナー法により磁気共鳴撮像を行うに当たり、エコーにおける脂肪信号の位相が360°変化する時間以内に複数のエコーを発生させる、ことを特徴とする。
【0010】
(3)上記の課題を解決する第3の発明は、被検体を収容する空間に静磁場を形成する静磁場形成手段と、前記空間に勾配磁場を形成する勾配磁場形成手段と、前記空間に高周波磁場を形成する高周波磁場形成手段と、前記空間から磁気共鳴信号を測定する測定手段と、前記測定手段が測定した前記磁気共鳴信号に基づいて画像を生成する画像生成手段と、エコープラナー法を実行するに当たり、前記勾配磁場形成手段および前記高周波磁場形成手段を制御することによりエコーにおける脂肪信号の位相が180°変化する時間間隔で複数のエコーを発生させる撮像制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0011】
(4)上記の課題を解決する第4の発明は、被検体を収容する空間に静磁場を形成する静磁場形成手段と、前記空間に勾配磁場を形成する勾配磁場形成手段と、前記空間に高周波磁場を形成する高周波磁場形成手段と、前記空間から磁気共鳴信号を測定する測定手段と、前記測定手段が測定した前記磁気共鳴信号に基づいて画像を生成する画像生成手段と、エコープラナー法を実行するに当たり、前記勾配磁場形成手段および前記高周波磁場形成手段を制御することによりエコーにおける脂肪信号の位相が360°変化する時間以内に複数のエコーを発生させる撮像制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0012】
(作用)
第1の発明または第3の発明では、エコープラナー法により逐次得られる複数のエコーは、位相が180°ずつ変化する脂肪信号を含むものとなる。これによって、再構成画像上ではケミカルシフト・アーチファクトがFOV(field of view) の両端に移動する。
【0013】
また、第2の発明または第4の発明では、エコープラナー法により逐次得られる複数のエコーは、全エコーにわたって脂肪信号の位相が360°変化するものとなる。これによって、再構成画像上では脂肪像の位置ずれが1ピクセル(pixel) 以内に収まる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
図1に磁気共鳴撮像装置のブロック図を示す。本装置は本発明の実施の形態の一例である。本装置の構成によって本発明の装置に関する実施の形態の一例が示される。本装置の動作によって本発明の方法に関する実施の形態の一例が示される。
【0016】
(構成)
本装置の構成を説明する。図1に示すように、本装置においては概ね円筒形を成す静磁場発生部2がその内部空間に均一な静磁場(主磁場)を形成するようになっている。静磁場発生部2は、本発明における静磁場形成手段の実施の形態の一例である。
【0017】
静磁場発生部2の内部には、概ね円筒形を成す勾配コイル(coil)部4とボデイコイル(body coil) 部6が中心軸を共有して配置されている。ボデイコイル部6の内部に形成される概ね円柱状の空間に、被検体8が図示しない搬入手段によって搬入されている。
【0018】
勾配コイル部4には勾配駆動部10が接続されている。勾配コイル部4および勾配駆動部10は、本発明における勾配磁場形成手段の実施の形態の一例である。勾配駆動部10は勾配コイル部4に駆動信号を与えて勾配磁場を発生させるようになっている。発生する勾配磁場は、スライス(slice) 勾配磁場、読み出し(リードアウト(read out))勾配磁場および位相エンコード(フェーズエンコード(phase encode))勾配磁場の3種である。
【0019】
ボデイコイル部6には送信部12が接続されている。ボデイコイル部6および送信部12は、本発明における高周波磁場形成手段の実施の形態の一例である。送信部12はボデイコイル部6に駆動信号(RF信号)を与えてRF磁場を発生させ、それによって、被検体8の体内のスピンを励起するようになっている。
【0020】
励起されたスピンが発生する磁気共鳴信号がボデイコイル部6によって検出されるようになっている。ボデイコイル部6には受信部14が接続されている。受信部14はボデイコイル部6が検出した信号を受信するようになっている。
【0021】
受信部14にはアナログ・ディジタル(analog-to-digital) 変換部16が接続されている。ボデイコイル部6、受信部14およびアナログ・ディジタル変換部16は、本発明における測定手段の実施の形態の一例である。アナログ・ディジタル変換部16は、受信部14の出力信号をディジタル信号に変換するようになっている。
【0022】
コンピュータ18はアナログ・ディジタル変換部16からディジタル信号を入力し、図示しないメモリ(memory)に記憶するようになっている。メモリ内にはデータ空間が形成される。このデータ空間は2次元フーリエ空間を構成する。コンピュータ18は、この2次元フーリエ空間のデータを2次元逆フーリエ変換して被検体8の画像を再構成する。コンピュータ18は、本発明における画像生成手段の実施の形態の一例である。
【0023】
コンピュータ18には制御部20が接続されている。コンピュータ18および制御部20は、本発明における撮像制御手段の実施の形態の一例である。制御部20には勾配駆動部10、送信部12、受信部14およびアナログ・ディジタル変換部16が接続されている。制御部20は、コンピュータ18から与えられる指令に基づいて勾配駆動部10、送信部12、受信部14およびアナログ・ディジタル変換部16をそれぞれ制御するようになっている。
【0024】
コンピュータ18には表示部22と操作部24が接続されている。表示部22はコンピュータ18から出力される再構成画像を含む各種の情報を表示するようになっている。操作部24は操作者によって操作され、各種の指令や情報等をコンピュータ18に入力するようになっている。
【0025】
(動作)
本装置の動作を説明する。先ずEPIについて説明し、次にケミカルシフト・アーチファクトの除去について説明する。図2にエコープラナー法によるパルスシーケンスの一例を示す。このパルスシーケンスはスピンエコー(spin echo) を収集するためのものである。
【0026】
同図において、横軸は時間、縦軸は信号強度を示す。(a)はRFパルスとエコー信号、(b)はリードアウト勾配磁場(リードアウト勾配)とディフェーズ(dephase) 勾配磁場(ディフェーズ勾配)、(c)はフェーズエンコード勾配磁場(フェーズエンコード勾配)を示す。なお、スライス勾配磁場については図示を省略する。また、エコー信号はRFパルスに比べてはるかに信号強度が弱いが便宜的に同等の振幅で示す。後述する他のパルスシーケンスにおいても同様である。
【0027】
RFパルスのシーケンスは送信部12の動作を示す。リードアウト勾配とフェーズエンコード勾配のシーケンスは勾配駆動部10の動作を示す。後述する他のパルスシーケンスにおいても同様である。
【0028】
図3にスピンの挙動を概念的に示す。同図において、x’,y’,z’は、回転座標系における互いに垂直な3つの座標軸を示す。以下、図2および図3を用いて動作を説明する。
【0029】
図2に示すように、時刻t1において90°パルスによりスピンの励起が行われる。これによって、図3の(a)に示すように、z’方向を向いていたスピンが90°倒れてy’方向を向く。
【0030】
次に、時刻t2においてディフェーズ勾配とフェーズエンコード勾配が所定時間印加される。これによって、図3の(b)に示すようにスピンの位相が分散(ディフェーズ)する。
【0031】
次に、時刻t3において180°パルスによりスピンの反転が行われる。これによって、図3の(c)に示すように、スピンのy’方向の向きが反転する。
次に、時刻t4においてリードアウト勾配が印加される。リードアウト勾配は時刻t6でその極性が反転するまで一定値を保つ。このリードアウト勾配の印加期間中にスピンの位相変化が継続し、図3の(d)に示すように、分散していた位相が収束する。
【0032】
途中の時刻t5において、リードアウト勾配の積分値が時刻t2で印加したディフェーズ勾配の積分値に等しくなり、図3の(e)に示すように、スピンの位相が揃う。この時点で最初の磁気共鳴信号(スピンエコー信号)のピーク(peak)が生じる。
【0033】
時刻t5を過ぎると、図3の(f)に示すように、スピンの位相変化の継続により位相が分散してエコー信号は減衰する。
時刻t4からt6までのリードアウト勾配印加期間中にエコー信号の読み出しが行われる。エコー信号の読み出しは、ボデイコイル部6−受信部14−アナログ・ディジタル変換部16−コンピュータ18の系統によって行われる。以下同様である。
【0034】
この期間のエコー信号を、時間軸を拡大して示せば図4のようになる。ただし、エコー信号は正確な波形図ではなく概念図で示す。同図に示すように、エコー信号は時刻t4からt5にかけて次第に振幅が増加してピークに達し、時刻t5から時刻t6にかけて振幅が減衰する。
【0035】
図2に戻って、時刻t6でのリードアウト勾配の極性反転に合わせて、フェーズエンコード勾配が短時間印加され、これによってフェーズエンコードが1ステップ(step)進められ、次のビュー(view)のためのフェーズエンコードが行われる。このフェーズエンコード勾配はブリップパルス(blip pulse)と呼ばれる。
【0036】
時刻t6からt8までの負極性のリードアウト勾配によって2番目のビューのエコー信号の発生および読み出しが行われる。負極性のリードアウト勾配の振幅の絶対値は、正極性の振幅と同一になっている。また、時刻t6からt8までの時間は時刻t4からt6までの時間に等しくなっている。
【0037】
このリードアウト勾配によって、図3の(f)に示したように分散したスピンの位相の引き戻しが行われる。これによって、図3の(f)における矢印とは逆方向に位相が変化して、同図の(e)の状態となり、さらにそこを過ぎて(d)の状態になる。ただし、スピンの位相変化の方向は矢印とは逆である。
【0038】
このため、エコー信号は時刻t7でピークに達し、そこから時刻t8にかけて減衰する。時刻t6からt7までのリードアウト勾配の積分値は、時刻t5からt6までのリードアウト勾配の積分値と相殺する関係になる。これによって、図4に示したものと同様なエコー信号が読み出される。
【0039】
以下同様にして、リードアウト勾配の極性反転とブリップパルスの印加を繰返し、図3の(d)→(e)→(f)→(e)→(f)→(d)…の繰返しにより、複数のビューのエコー信号を順次発生させかつその読み出しを行う。エコーピークは、時間軸に沿って一定の時間間隔(エコースペース)で並ぶ。エコーピークは、また、フェーズエンコード量に応じて、例えば破線で示すような包絡線envに沿って変化する。
【0040】
このようなエコー信号の読み出しに伴って、2次元フーリエ空間では所定の軌跡(トラジェクトリ(trajectory))に沿ってエコーデータの収集が進行する。その様子を図5に示す。図5において、kは2次元フーリエ空間である。これはkスペース(k-space) とも呼ばれる。kx,kyは2次元フーリエ空間における互いに直交する2つの座標軸であり、kxが周波数軸(リードアウト軸)、kyが位相軸(フェーズエンコード軸)である。
【0041】
エコーデータ収集のトラジェクトリtrjは例えばkx=−100,ky=100の点から始まる。なお、座標の単位は%である。kx=−100は図4に示したエコー信号の左端に相当する。ky=100は図4に示したエコー信号のフェーズエンコード量である。これは時刻t2におけるフェーズエンコード勾配によって決定される。
【0042】
時刻t4からt6までのリードアウト期間中の最初のビューのエコー信号の読み出し(エコーデータの収集)に伴って、トラジェクトリtrjは矢印に沿ってkx=100まで到達する。途中のkx=0の点が時刻t5の時点に相当し、ここでピーク値が収集される。
【0043】
時刻t6におけるフェーズエンコードによってトラジェクトリが1ステップ下がり、次に、時刻t6からt8までの2番目のビューのリードアウト期間中に、次のエコーについてのデータ収集が行われ、トラジェクトリtrjは矢印に沿ってkx=−100まで到達する。途中のkx=0の点が時刻t7の時点に相当し、ここでピーク値が収集される。
【0044】
以下同様に、フェーズエンコードの度に順次ky軸に沿って下方に遷移しながら、kx軸に沿って2次元フーリエ空間kへのデータ収集が行われる。これによって、2次元フーリエ空間k全体についてのエコーデータが収集される。全ビュー数は例えば256である。
【0045】
このようなエコーデータに基づいて、コンピュータ18により画像の再構成が行われる。画像再構成は2次元逆フーリエ変換によって行われる。
以上は、スピンエコーを利用するEPIの例であるが、グラディエントエコー(gradient echo) を利用するEPIを行うこともできる。
【0046】
図6に、グラディエントエコーによるEPIのパルスシーケンスを示す。同図に示すように、時刻t1においてα°(例えば90°)パルスによりスピンが励起され、時刻t2においてフェーズエンコード勾配が所定時間印加され、時刻t3において負極性のディフェーズ勾配が印加される。時刻t4でリードアウト勾配が印加される。
【0047】
リードアウト勾配は時刻t6で極性が反転するまで一定値を保つ。途中の時刻t5において、リードアウト勾配の積分値が時刻t3からt4までのディフェーズ勾配の積分値と相殺し、この時点で最初のエコー信号(グラディエントエコー信号)のピークが生じる。エコー信号は時刻t5を過ぎると減衰する。
【0048】
時刻t4からt6までの期間中にエコー信号の読み出しが行われる。この期間のエコー信号を、時間軸を拡大して示せば図4で示したものと同様になる。すなわち、同図に示したように、エコー信号は時刻t4からt5にかけて次第に振幅が増加してピークに達し、時刻t5から時刻t6にかけて振幅が減衰する。
【0049】
図6に戻って、時刻t6でのリードアウト勾配の極性反転に合わせて、ブリップパルスが印加され、フェーズエンコードが1ステップ進められる。
時刻t6からt8までの負極性のリードアウト勾配によって2番目のビューのエコー信号の読み出しが行われる。リードアウト勾配の振幅の絶対値は正極性の振幅と同一になっている。時刻t6からt8までの時間は時刻t4からt6までの時間に等しくなっている。エコー信号は時刻t7でピークに達し、そこから時刻t8にかけて減衰する。時刻t6からt7までのリードアウト勾配の積分値は、時刻t5からt6までのリードアウト勾配の積分値と相殺する。これによって、図4に示したものと同様なエコー信号が読み出される。
【0050】
以下同様にして、リードアウト勾配の極性反転とブリップパルスの印加が繰返され、複数のビューのエコー信号が順次読み出される。これによって、図2の場合と同様なエコー信号列が読み出される。したがって、2次元フーリエ空間におけるデータ収集も図5に示したものと同様に行われ、それを2次元逆フーリエ変換することによって画像が再構成される。
【0051】
次に、ケミカルシフト・アーチファクトの除去について説明する。被検体8の脂肪部分から生じるエコー信号(脂肪信号)は、ケミカルシフトにより、水部分から生じるエコー信号(水信号)とは周波数が異なるので、水信号を基準にすると、脂肪信号の位相が時間の経過とともに変化して行く。
【0052】
水信号から見て脂肪信号の位相が180°(πラジアン)変化する時間は、次式によって与えられる。
【0053】
【数1】
【0054】
ここで、
γ:磁気回転比
δ:脂肪のケミカルシフト
T:静磁場強度
例えば、静磁場強度が1.5Tの場合は、tδは2.3mSとなる。このような関係に着目して、本装置においては、制御部20による制御の下で、エコースペースをtδに一致させたパルスシーケンスで撮像を行う。そのようなパルスシーケンスは、図2または図6に示すパルスシーケンスにおいて、ディフェーズ勾配およびリードアウト勾配を適切に調整することによって形成される。
【0055】
具体的には、図2では、時刻t2に印加するディフェーズ勾配によるディフェーズ量と時刻t4以降に印加するリードアウト勾配を調節することにより、リードアウト勾配の印加時点(例えば時刻t4)からエコーのピークが生じる時点(例えば時刻t5)までの時間がtδ/2となるようにする。
【0056】
同様に、図6では、時刻t3に印加するディフェーズ勾配と時刻t4以降に印加するリードアウト勾配を調節することにより、リードアウト勾配の印加時点(例えば時刻t4)からエコーのピークが生じる時点(例えば時刻t5)までの時間がtδ/2となるようにする。
【0057】
エコースペースをtδとしたスピンエコー信号を順次に収集した場合、各エコーに含まれる脂肪信号は、順次πずつ位相が変化するものとなる。これによって、図5に脂肪位相(1)として示すように、kスペースでは、隣合うトラジェクトリ間での脂肪信号の位相変化がπとなり、脂肪信号は位相軸方向においてナイキスト(Nyquist) 周波数を持つことになる。
【0058】
kスペースに収集した全データのビュー数をNとしたとき、位相軸kyに沿ってn周期変化するデータは、実空間では、次式で与えられる距離だけ離れた位置にゴースト(ghost) を生じることが知られている。
【0059】
【数2】
【0060】
ここで、FOVはフィールド・オブ・ビューすなわち再構成画像が与える実空間の大きさである。
脂肪信号がナイキスト周波数を持つことにより、(2)式においてn=N/2となる。したがって、脂肪信号によるゴーストはd=(FOV)/2の位置に生じる。
【0061】
これを図示すれば、例えば図7の(a)に示すように水部分とそれを取り巻く脂肪部分からなる被検体をFOVの中央において撮像したとき、再構成画像では同図の(b)に示すように、脂肪像がFOVの両端に追いやられる。そこで、FOVを画像表示範囲の2倍程度に設定することにより、脂肪像を画面に出さないようにすることができる。すなわち、ケミカルシフト・アーチファクトを含まない画像を得ることができる。
【0062】
tδの値は、静磁場が例えば0.2T程度の低磁場である場合は、17.3mS程度となる。エコースペースをこのような時間に設定するのは信号の減衰が大きくなるので現実的でない。そこで、静磁場強度が低い場合は次のようなパルスシーケンスにより撮像を行う。
【0063】
図8および図9に、低磁場に適するパルスシーケンスをそれぞれ示す。図8はスピンエコー用のパルスシーケンス、図9はグラディエントエコー用のパルスシーケンスである。
【0064】
両図に示すように、全エコーを収集する時間が2tδ以内となるようにパルスシーケンスを構成する。静磁場強度が例えば0.2Tの場合、2tδは34.6mSである。
【0065】
1回のRF励起で収集するエコー数をEttとしたとき、エコースペースは2tδ/Ettとなる。図8および図9では、そのようなエコースペースを実現するように、ディフェーズ勾配およびリードアウト勾配を設定している。
【0066】
このようにしてエコーデータを収集した場合、kスペースでの脂肪信号の位相は、図5に脂肪位相(2)として示すように、位相軸kyに沿って360°(2πラジアン)以内の変化となる。
【0067】
すなわち、全ビューを通じて脂肪信号の位相変化は1周期以内となる。これは、(2)式においてn=1以下となる場合であり、これによって、ゴーストの発生位置は(FOV)/Nすなわち1ピクセル以内となる。
【0068】
Nの値が例えば256のときの1ピクセル以内の位置ずれは、表示画面上ではほとんど目立たない。したがって、再構成画像では、図7の(c)に示すように、脂肪像は実質的に位置ずれなしに表示され、事実上、ケミカスシフト・アーチファクトは生じない。
【0069】
2tδの時間内に例えば256ビューのエコーを全部収集するのが困難な場合は、2tδの時間内に収集可能なエコー数ずつ複数回にわけて収集する手法が用いられる。これはマルチショット(multi-shot)EPIと呼ばれる。
【0070】
図10に、マルチショットEPIの概念図を示す。同図に示すように、第1回目のRF励起(ショット)により、実線のトラジェクトリで示すように、位相軸方向にフェーズエンコードの複数ステップおきにエコーデータを収集する。
【0071】
このようなデータ収集は、図8または図9に示したパルスシーケンスにおいて、ディフェーズ量およびフェーズエンコード量を適宜に調節することによって行うことができる。
【0072】
次に、第2回目のショットにより、一点鎖線で示すように、位相軸方向にフェーズエンコードの1ステップだけ平行移動させたトラジェクトリに沿ってエコーデータを収集する。このようなデータ収集も、図8または図9に示したパルスシーケンスにおいて、ディフェーズ量およびフェーズエンコード量を調節することによって行うことができる。
【0073】
以下、同様に、第3回目および第4回目のショットにより、間を埋めるトラジェクトリに沿ったデータ収集を行う。各ショットにおけるデータ収集は、2tδ以内の同一の時間内にそれぞれ行う。これによって、エコーデータに含まれる脂肪信号の位相変化は、全ビューを通じて2π以内となり、再構成画像におけるケミカルシフト・アーチファクトが事実上生じなくなる。
【0074】
以上、kスペース全体にわたってエコーデータを収集するEPIの例について説明したが、例えば位相軸方向においてkスペースの半分だけにエコーデータを収集し、フラクショナル・フーリエ(fractional Fourie) 法により画像を再構成するようにしても良い。これはTEを短縮する点で好ましい。
【0075】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明では、1つの観点では、エコープラナー法により磁気共鳴撮像を行うに当たり、エコーにおける脂肪信号の位相が180°変化する時間間隔でエコーを発生させるようにしたので、ケミカルシフト・アーチファクトを効果的に抑制するエコープラナー法による磁気共鳴撮像方法および装置を実現することができる。
【0076】
また、他の観点では、複数のエコーの収集をエコーにおける脂肪信号の位相が360°変化する時間以内に行うようにしたので、ケミカルシフト・アーチファクトを効果的に抑制するエコープラナー法による磁気共鳴撮像方法および装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の一例の装置のブロック図である。
【図2】 本発明の実施の形態の一例の装置が実行するパルスシーケンスを示す図である。
【図3】 スピンエコー法を実行したときのスピンの挙動の概念図である。
【図4】 本発明の実施の形態の一例の装置によって読み出されるエコー信号の概念図である。
【図5】 本発明の実施の形態の一例の装置による2次元フーリエ空間におけるデータ収集の概念図である。
【図6】 本発明の実施の形態の一例の装置が実行するパルスシーケンスを示す図である。
【図7】 本発明の実施の形態の一例の装置におけるケミカルシフト・アーチファクト除去を示す概念図である。
【図8】 本発明の実施の形態の一例の装置が実行するパルスシーケンスを示す図である。
【図9】 本発明の実施の形態の一例の装置が実行するパルスシーケンスを示す図である。
【図10】 本発明の実施の形態の一例の装置による2次元フーリエ空間におけるデータ収集の概念図である。
【図11】 EPIのパルスシーケンスを示す図である。
【符号の説明】
2 静磁場発生部
4 勾配コイル部
6 ボデイコイル部
8 被検体
10 勾配駆動部
12 送信部
14 受信部
16 アナログ・ディジタル変換部
18 コンピュータ
20 制御部
22 表示部
24 操作部
Claims (4)
- 被検体を収容する空間に静磁場を形成する静磁場形成手段と、
前記空間に勾配磁場を形成する勾配磁場形成手段と、
前記空間に高周波磁場を形成する高周波磁場形成手段と、
前記空間から磁気共鳴信号を測定する測定手段と、
前記測定手段が測定した前記磁気共鳴信号に基づいて画像を生成する画像生成手段と、
エコープラナー法を実行するに当たり、前記勾配磁場形成手段および前記高周波磁場形成手段を制御することによりエコーにおける脂肪信号の位相が360°変化する時間以内に複数のエコーを発生させる撮像制御手段とを具備することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。 - 請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置において、
前記エコープラナー法は、全ビューのエコーを複数回に分けて収集するマルチショット・エコープラナー法であり、
前記複数回に分けたうちの1回分で収集するエコーを、前記エコーにおける脂肪信号の位相が360°変化する時間以内に収まる数としたことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の磁気共鳴撮像装置において、
前記エコープラナー法において、位相軸方向にkスペースの半分に相当するエコーを収集し、
フラクショナル・フーリエ法により画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。 - 請求項1から請求項3までのいずれかに記載の磁気共鳴撮像装置において、
前記エコープラナー法を実行して、前記磁気共鳴信号としてスピンエコー又はグラディエントエコーを測定することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
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