JP3732465B2 - 鉄道車両用蓄電池状態監視装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は鉄道車両用蓄電池の状態を監視する鉄道車両用蓄電池状態監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両用蓄電池は架空電車線(以下、架線)電源から補助電源装置と補助整流装置を介してDC電源を供給し、非常灯・無線機器・各種制御機器・集電装置(パンタグラフ)などのDC負荷と並列に接続されている。前記蓄電池は運行時に於いては補助整流装置により蓄電池への充電とDC負荷への給電が行われ、集電装置が架線に接続されていない休車状態から起動時に於いては前記蓄電池からの給電により各種制御装置などの起動並びに架線に接続する集電装置の起動が行われ、運行時に架線電源又はAC負荷、DC負荷の変動により前記補助電源装置からの給電が不足した場合は、前記補助整流装置の給電と前記蓄電池からの付加的給電により前記DC負荷の動作が行われ、停電時には前記蓄電池からの給電によりDC負荷の動作が行われる。この中で起動時と停電時における動作が前記蓄電池の最も重要な役割である。
【0003】
しかるに、従来の鉄道車両には前記蓄電池の状態を監視する手段として電圧を測定し表示する手段程度しかなかった。このため、停電時において前記蓄電池を過放電してしまい、停電復旧後に前記各種制御装置や前記集電装置を起動することができず、輸送障害の発生を招いてしまうことがあった。
【0004】
このような輸送障害の発生を未然に防ぐため、前記蓄電池の残存容量などを監視する蓄電池状態監視装置が求められていた。
【0005】
一般に、蓄電池の容量状態を判定するため、充電電流/放電電流の積算により充電容量/放電容量を計算し蓄電池の残存容量を演算する方法が知られている。
【0006】
しかし、この充放電容量の演算のみでは、電池温度や充放電電流、及び容量状態などに基づく充放電効率による補正を行ったとしても、長時間使用する間に微小な誤差が蓄積することを避けえない。また、放置中の蓄電池の自己放電も残存容量の判定精度に大きく影響する。
【0007】
かかる問題を解決するために例えば、特開2000−115902では蓄電池の充放電電流に基づく電流量別残存容量算出手段と蓄電池の電圧と電流により予め定められた放電特性に基づく電値別残存容量算出手段を併せ持ち、これらを比較する方法が提案されている。
【0008】
この方法によると充放電容量の演算により生じた誤差を電圧特性により補正することが可能であり、鉛電池や一部のリチウムイオン電池のように放電電圧が残存容量に対して比較的相関して変化する電池の場合は有効である。
【0009】
また、例えば特開2000−324702では、定電圧充電において充電電流の変化率(dI/dt)が所定値以下となったこと検出して残存容量を判定する方法が提案されている。
【0010】
また、特開2002−58171では定電圧充電において満充電で充電を停止する方法として温度別に検出電流を選択する方法が提案されている。
【0011】
これらの方法は定電圧充電において充放電容量の演算により生じた誤差を補正する方法として有効である。
【0012】
また自己放電量の演算方法として例えば特開平2−193533では周囲温度に応じて自己放電電流を選択し自己放電量を演算する方法を提案し、特開平5−341023では自己放電量と残存容量及び電池温度との特性を作成しておき、計算により求めた残存容量と計測により求めた電池温度から自己放電量を推測計算する方法を提案している。
【0013】
しかるにこれらの提案はいずれも放置中でも機器が動作しており、電池温度を常時監視することが可能であるが、鉄道車両用の蓄電池システムにおいては停電時を除き、休車時に架線電源をオフするときには、蓄電池と車両DC負荷とは切り離されるため、全ての機器の電源がオフとなり、蓄電池状態監視装置が放置中の電池温度を計測することができない。
【0014】
このような場合に対して、例えば特開平4−368401では蓄電池監視回路の電源が切れたとき、その直前の日付と時刻、温度及び残存容量を記憶し、次に電源が入った直後の時刻と比較し、その間の経過時間と平均温度と温度−自己放電電流特性から放置中の自己放電量を推算し、放置前の残存容量から減算する方法を提案されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、鉄道車両用蓄電池システムにおいては次のような問題点がある。
【0016】
1.鉄道車両用蓄電池システムに多く用いられているニッケルカドミウム電池の場合は、放電電圧と残存容量の相関性が低く、特開2000−115902で提案されているような端子電圧により残存容量を補正する方法は好適であるとは言えない。
【0017】
2.鉄道車両用蓄電池は、DC電源を供給する補助整流装置に蓄電池とDC負荷とが並列に接続され、停車中及び運行中に浮動充電が行われる。この浮動充電電圧は、特に運行中に、DC負荷の変動やAC負荷の変動及び架線電源の変動により常に変化し、これに連動して充電電流も変化するので、特開2000−324702で提案されている電流変化率による残存容量の検出は好適であるとは言えない。また、同様の理由から鉄道車両用蓄電池システムでは、満充電に至る際の微小電流を精度よく検出し得ないため、特開2002−58171で提案されているように満充電の検出電流を温度によって選択する方法も好適であるとは言えない。
【0018】
3.鉄道車両は集電装置が架線に接続されていない休車状態で長期間放置されることもあるため、特開平4−368401号で提案されている放置前後の温度の平均値により自己放電量の演算では正確な自己放電量が演算されない。
【0019】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、その目的は、蓄電池の残存容量を正確に補正することができ、さらに本監視装置への電源供給がオフされている放置期間中に自己放電量を算出することができる鉄道車両用蓄電池状態監視装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、蓄電池の充放電電流を検出する電流検出手段と、前記電流検出結果から充電か放電かを判断する状態判定手段と、前記蓄電池の温度を検出する温度検出手段と、前記蓄電池の電圧を検出する電圧検出手段と、前記電流検出手段及び状態判定手段の検出結果に基づいて、前記蓄電池の残存容量を計算する残存容量演算手段と、
この残存容量演算手段で演算された残存容量を記憶する残存容量記憶手段と、少なくとも前記蓄電池の電圧と前記蓄電池の温度により関連付けられた残存容量補正係数を記憶する残存容量補正係数記憶手段と、前記状態判定手段により充電であると検出され、前記電流検出手段により検出された充電電流が所定のしきい値以下であることを判定する充電電流判定手段と、この充電電流判定手段により前記充電電流が所定のしきい値以下であることを判定された場合に前記蓄電池の基準容量と前記残存容量補正係数記憶手段に記憶された残存容量補正係数を用いて新たな残存容量を算出し前記残存容量記憶手段に記憶されている残存容量を書き換えることにより残存容量を補正する残存容量補正手段と、本蓄電池状態監視装置への電源供給がオフされている間の前記蓄電池の自己放電量を計算する自己放電量演算手段を備え、この自己放電量演算手段は、少なくとも蓄電池状態監視装置への電源供給がオフされる直前の放置前時間データと、前記電源供給がオフされる直前の残存容量データと、電源供給がオンされた直後の放置後時間データと、予め記憶された年間気温データと、前記年間気温データと残存容量のレベルに関連付けられた自己放電率データテーブルによって自己放電量を演算することを特徴とする。
【0021】
この請求項1記載の発明によれば、充電電流が所定のしきい値以下であると判定された時、蓄電池の基準容量と、判定された時の蓄電池の温度と蓄電池の電圧に基づいた残存容量補正係数を用いて蓄電池の残存容量を算出し残存容量を書き換えている。つまり、残存容量演算手段で演算された残算容量とは無関係に残存容量が算出される。
【0022】
従って、残存容量演算手段は長時間使用される間に微小な誤差が蓄積されることを避け得ないが、請求項1の発明は、蓄電池の浮動充電特性(電圧−電流−温度−充電レベル)に基づいた残存容量補正係数を用いて蓄電池の残存容量を算出しているので長期間にわたり蓄積した演算の微小な誤差による影響は受けない。また、残存容量補正手段はDC負荷や架線電源の変動があっても、蓄電池の基準容量と、判定された時の蓄電池の温度と蓄電池の充電電圧に基づいた残存容量補正係数を用いて蓄電池の残存容量を算出しているので、車両DC負荷や架線電源の変動による電流と電圧の変化の影響が考慮されており、なお且つ温度の変化による影響も考慮されることから、正確な残存容量を得ることができる。さらに、蓄電池状態監視装置への電源供給がオフされている間、つまり放置中においても蓄電池の電圧、温度のデータを得ることができなくとも蓄電池の自己放電量の算出することができる。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記充電電流判定手段で判定する所定のしきい値は1つ以上あり、前記残存容量補正係数記憶手段に記憶される残存容量補正係数はそのしきい値毎に前記蓄電池の電圧と前記蓄電池の温度とに関連付けられて構成され、前記残存容量補正手段は各充電電流判定手段により所定のしきい値以下であることが判定された場合に、前記蓄電池の基準容量と前記残存容量補正係数記憶手段に記憶された該当するしきい値に対応する残存容量補正係数を用いて新たな残存容量を算出し前記残存容量記憶手段に記憶されている残存容量を書き換えることにより残存容量を補正することを特徴とする。
【0024】
請求項2記載の発明によれば、残存容量補正手段に用いられるしきい値は1つ(例えば、満充電状態)に限られるものでは無い。しきい値を複数設けた場合には、各充電電流判定手段により所定のしきい値以下であることが判定された場合に、しきい値毎に別個に残存容量の補正を行うことができる。従って、きめ細かい残存容量補正をすることができる。
【0025】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の発明に対してさらに、前記残存容量補正手段を動作させて前記残存容量を補正する容量補正モードをセットする残存容量補正モードセット手段とを具備し、前記残存容量補正手段はこの残存容量補正モードセット手段により容量補正モードがセットされた場合に実行されることを特徴とする。
【0026】
請求項3記載の発明によれば、容量補正手段は、容量補正モードがセットされた時に実行される。
【0027】
請求項4記載の発明は請求項3記載の前記残存容量補正モードセット手段は、前記状態判定手段により放電が検出され、この放電により連続して所定値以上の容量の放電が行われるか、あるいは連続して所定値以上の電流でなおかつ所定値以上の時間の放電が行われた場合に容量補正モードがセットされることを特徴とする。
【0028】
請求項4記載の発明によれば、短時間の放電の場合は残存容量補正モードセット手段により容量補正モードはセットされない。従って、短時間の放電の直後にしきい値を超える充電電流が流れ垂下した充電電流がしきい値以下となるような充電が行われて充電電流判定手段の判定が成立しても残存容量補正手段により残存容量の補正は行われない。
【0029】
例えば、しきい値として比較的大きな値を採用した場合には、満充電状態に至らない部分充電状態において残存容量補正手段により残存容量の補正を行うことになる。
【0030】
鉄道車両用蓄電池は補助整流装置とDC負荷と並列に接続されたいわゆる浮動充電システムを構成しているため、補助整流装置の出力に影響を与える架線電源やAC負荷が急変したり、DC負荷が急変した場合に補助整流装置からの給電に不足が生じると蓄電池から放電が行われる場合がある。このような場合の放電量は少ないが、放電直後の瞬時の間は比較的大きな充電電流が流れ、垂下した充電電流がしきい値以下となって充電電流判定手段の判定が成立してしまうことがあり得る。この結果、満充電状態にもかかわらず、部分充電状態に残存容量を補正してしまうことが発生し得る。
【0031】
しかし請求項4の発明では、このような短時間の放電の場合は残存容量補正モードセット手段により容量補正モードはセットされない。従って、満充電状態であるにもかかわらず部分充電状態に残存容量を補正することを未然に防ぐことができる。
【0032】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の前記残存容量補正モードセット手段によりセットされた容量補正モードは前記残存容量補正手段により残存容量の補正が行なわれた時にリセットされることを特徴とする。
【0033】
請求項5記載の発明によれば、充電電流は補助電源装置の出力やDC負荷の変動によって上下するが、一度容量補正が行われると、容量補正モードがリセットされるので、例えば前述のしきい値の補正が行われた後で、充電電流が変動してしきい値を上回る値に増加した後、この値を下回った場合でも、誤って部分充電状態に補正されることは無い。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態の一実施の形態について説明する。
【0037】
まず、図1を参照して架線電源及び蓄電池を電源とする鉄道車両用補助電源回路について説明する。図において、1は直流電源(例えば、DC1500V)が送電される架線(架空電車線)である。以下、この架線1を介して供給される電源を架線電源と呼称する。この架線電源は集電装置(パンタグラフ)2、架線電源スイッチ3を介して主回路16と補助回路17に供給される。主回路16では主制御装置15で架線電源を交流に変換して鉄道車両の走行用駆動源である主電動機へ電源を供給する。
【0038】
補助電源回路17では補助電源装置4で架線電源を交流に変換して主電動機以外の車両のAC負荷(例えば、エアコン、コンプレッサなどのAC440V系負荷)へ電源を供給する。また、補助電源装置から出力される低圧(例えば、AC100V)交流電源は補助整流装置5で直流(例えば、DC100V)に変換し、ライン5aに接続されたDC負荷6に供給される。
【0039】
補助整流装置とDC負荷6との中間点から取り出されているライン5bは、バッテスイッチ7を介して少なくとも2つ以上の直列接続されたブロック電池から構成された鉄道車両用蓄電池8の正極端子に接続される。各ブロック電池は例えば、ニッケルカドニウム電池で構成され、この実施の形態では12個のブロック電池が用いられている。
【0040】
バッテリスイッチ7と鉄道車両用蓄電池8の正極端子との間には、蓄電池8に充電あるいは放電される電流を検出する電流検出手段としての電流センサ10が設けられている。この電流センサ10で検出された電流は本発明に係る蓄電池状態監視装置11に出力される。なお、蓄電池状態監視装置11には、ライン5bの一部が接続されている。ここで、9は鉄道車両用蓄電池8が収納される蓄電池箱である。
【0041】
また、蓄電池8の両端の電圧、つまり電圧Vsetは電圧検出手段としての電圧センサ12で検出されて蓄電池状態監視装置11に出力される。
【0042】
さらに、蓄電池8の温度Tbを検出する温度検出手段としての温度センサ13から出力される温度信号は蓄電池状態監視装置11に出力される。なお、図示しないが蓄電池8の周囲温度Taを検出する温度センサも蓄電池箱9内に設けられている。
【0043】
蓄電池状態監視装置11から蓄電池8の残量などの情報が車両情報装置18に出力され、運転台モニタ14に表示される。
【0044】
図1において、実線矢印は鉄道車両が運行しているときの電流の流れを示し、破線矢印は鉄道車両が架線電源が供給されていない休車状態から各種制御機器や集電装置などのDC負荷を起動するときや、運行途中で架線電源の停電により停車しているときの電流の流れを示している。
【0045】
次に、図2を参照して蓄電池状態監視装置11について説明する。蓄電池状態監視装置11は電源ユニット21と、アナログ基板22、第1のデジタル基板23、第2のデジタル基板24とから構成される。
【0046】
電源ユニット21はライン5bを介して入力される100Vの直流電圧を5Vの直流電圧5Vdc及び15Vの直流電圧15Vdcに変換している。
【0047】
電源ユニット21から出力される直流電圧15Vdcはアナログ基板22に入力される。このアナログ基板22上には、電流モニタ入力部31、図1の電圧センサ12に相当するバッテリ電圧モニタ入力部32、温度モニタ入力部33、モノブロック電圧モニタ入力部34が設けられている。電流モニタ入力部31は電流センサ10で検出された電流を入力し、切替部35に出力し、バッテリ電圧モニタ入力部32は蓄電池8の充電電圧Vsetを検出し切替部35に出力し、温度モニタ入力部33は温度センサ13で検出された蓄電池8の温度Tbを切替部35に出力し、モノブロック電圧モニタ入力部34は、図では1つしか図示していないが、各ブロック電池の両端の電圧V1〜V12を検出し、切替部35に出力する。
【0048】
切替部35は入力される信号を切り替えてA/D変換部36に出力する。このA/D変換部36は入力される信号をアナログ・デジタル変換して第1のデジタル基板23に出力する。つまり、電流センサ10で検出された電流は電流データI(n)として、温度センサ13で検出された蓄電池8の温度Tbは温度データT(n)として第1のデジタル基板23に出力される。
【0049】
第1のデジタル基板23には、電源監視部41、CPU(中央処理装置)42、ROM(リード・オンリ・メモリ)43、カレンダ・タイマ44、バックアップ・メモリ45から構成されている。さらに、図示しないカウンタも備えている。
【0050】
ROM43には、図4〜図9で示したフローチャートの他、充電係数α、放電係数Kb、図3に示す残存容量補正係数、図7のステップS46で参照する補正計数Ksのテーブル、図8のステップS58で参照する補正計数Ksのテーブル、図8のステップS65で参照する補正計数Ksのテーブル、図9のステップS74で参照する自己放電率Krなどのテーブルや各しきい値データ(I1,I2)が記憶されている。
【0051】
カレンダ・タイマ44は時分秒及び年月日(カレンダデータ)を計時するカレンダ機能と時間データt(n)を出力するタイマ機能とを備えている。
【0052】
バックアップ・メモリ45は残存容量記憶手段として蓄電池8の残存容量を記憶する。また、最新の時間データを記憶する。
【0053】
第2のデジタル基板24には、メモリ51、通信制御部52、送受信部53で構成されている。送受信部53は図1の車両情報装置18との間で各種データを送受する。この各種データの一つとして、蓄電池8の残存容量がある。
【0054】
次に、上記のように構成された本発明の第1の実施の形態の動作について説明する。
【0055】
まず、バッテリスイッチ7がオンされると、DC負荷6及び蓄電池状態監視装置11に蓄電池8の電源が供給される。これにより、DC負荷6及び蓄電池状態監視装置11が起動される。これにより、蓄電池8は放電する。次に、架線電源スイッチ3がオンされ、集電装置(パンタグラフ)2が図示の如く上げられる。これにより、架線電源が供給される。これにより、蓄電池8は充電される。
【0056】
このように、蓄電池状態監視装置11が起動されると、図4のフローチャートの処理がCPU42で実行される。まず、カレン・タイマ44で計時されたカレンダデータを受信し(ステップS1)、このカレンダデータ基づいて図9のフローチャートを参照して詳細を後述する自己放電補正処理が行なわれ(ステップS2)、寿命劣化補正処理(ステップS3)が行なわれる。この寿命劣化補正処理は、カレン・タイマ44で計時された時間データにより、蓄電池8が使用開始された時間データと現在の時間データを比較することで、所定の経年劣化係数によって寿命劣化を演算している。
【0057】
次に、各電池ブロック間の電圧V1〜V12及び蓄電池8を流れる電流データI(n)、蓄電池8の温度Tb及び周囲温度Taが測定され(ステップS4)、蓄電池8の温度Tb及び周囲温度Taが異常であるかが判定する処理がなされる(ステップS5)。
【0058】
次に、図5のフローチャートを参照して詳細な説明を後述するように、蓄電池8の残存容量Sc(n)がSOC(State Of Charge)判定処理(残存容量演算手段)(ステップS7)で算出される。なお、このステップS7の処理で、残存容量Sc(n)から放電可能容量Sdも算出されている。ここで、SOCは蓄電池8の残存容量Sc(n)と基準容量Cとの比を百分率で示す。例えば、Sc(n)=Cのとき、SOC=100%となる。
【0059】
そして、容量警報出力処理(ステップS8)において、図6のステップS31に示すように、放電可能容量Sdが下限値SLより小さくなった場合に警報を出力する処理がなされる。
【0060】
次に、本発明の特徴である残存容量Sc(n)を補正する容量補正処理が行なわれる(ステップS9)。この容量補正処理は2つの実施の形態があり、一つは図7のフローチャートを参照して他の一つは図8のフローチャートを参照して後述する。
【0061】
次に、ステップS4で測定された蓄電池8を流れる電流データI(n)が異常であるかを判定する処理がなされる(ステップS10)。このステップS10で電流データI(n)が異常に大きい場合には、警報を出力する処理がなされる。
【0062】
そして、データの送信がなされる(ステップS11)。このデータの送信は、ステップS10までに生成された放電可能容量Sd、電圧データV1〜V12等の各種データである。これらデータは送受信部53を介して車両情報装置18に送信される。
【0063】
次に、図5を参照してSOC判定処理について説明する。このSOC判定処理において、蓄電池8の残存容量Sc(n)と放電可能容量Sdの演算が行なわれる。つまり、CPU5は、図5に示すフローチャートに従い残存容量の演算を行なう。
【0064】
まず、ステップS21において、電流データI(n)の極性により充電か放電か待機の状態判定が行われれる(状態判定手段)。ここでは、電流の極性が正の場合を充電、負の場合を放電とした。このステップS21の判定で、充電であると判定された場合には、ステップS22において温度データT(n)と直前の残存容量Sc(n−1)に基づいて、ROM11に記憶されている温度と残存容量とに関連づけられた充電係数データテーブルから、対応する充電係数αが選択される。一方、ステップS21の判定で、放電及び待機と判定された場合は、α=1とされる(ステップS23)。つまり、放電及び待機と判定された場合は、電流データI(n)に対する補正は行なわれない。
【0065】
次に、ステップS24において、カレンダ・タイマ44から出力された時間データt(n)と直前の時間データt(n−1)、及び電流データI(n)とt(n−1)に対応する電流データI(n−1)から、経過した時間区間[t(n)−t(n−1)]における区間積算容量を求め、これを直前の残存容量Sc(n−1)に加えて現在の残存容量Sc(n)を求める演算が行なわれる。ここで、ステップS24のボックス内に記載した数式に示すように充電の場合にのみ充電係数αが掛けられている。
【0066】
ここで、放電の場合は電流の極性は負となるため、残存容量Sc(n)は減算され、充電の場合は電流の極性は正となるため残存容量Sc(n)は加算される。
【0067】
減算の結果、残存容量Sc(n)がゼロ以下となった場合、残存容量Sc(n)はO[Ah]に留められる。一方、加算の結果、残存容量Sc(n)が基準容量Cを超えた場合は残存容量Sc(n)はCに留められる。この実施の形態では、基準容量Cは蓄電池8の定格容量である80[Ah]に設定してある。なお、基準容量は特に蓄電池8の定格容量と等しくする必要はない。
【0068】
電流が充電である場合は、放電可能容量Sd=残存容量Sc(n)とされる(ステップS25)。さらに、充電時に於いては放電可能時間tdは、放電可能容量Sdを停電時の代表的な負荷電流の下限値、例えばこの例では40Aで割り算することにより求めている(ステップS26)。
【0069】
ところで、蓄電池8が実際に放電できる放電可能容量Sdは、必ずしも演算により求めた残存容量Sc(n)に一致しない。これは蓄電池8の放電反応が負荷電流や温度の影響を受けるためである。例えば、鉄道車両用に多く用いられているニッケルカドミウム電池を含め一般的な電池は、負荷電流の増大と共に放電可能容量Sdは減少し、また最適温度から低温側又は高温側にシフトすると放電可能容量Sdは減少する。
【0070】
そこで、電流が放電(I<0)である場合は、電池温度Tbと電流データI(n)に基づいて、ROM11に記憶されている温度と電流に関連づけられた放電係数データテーブルから放電係数Kdが選択される(ステップS27)。そして、下式によって放電可能容量Sdが求められる(ステップS28)。
【0071】
Sd = Sc(n)− (C − C×Kd)
Kdは基準となる最適の電池温度と電流条件においてKd=1であり、基準容量はこの基準となる条件において満充電状態から得られる放電容量と設定したものである。従って、この実施の形態では基準容量が最大の放電容量であるので、Kdは1以下の数値となる。
【0072】
電池温度と電流条件から、例えば電池温度が低温側あるいは電流が大電流側にシフトすると、放電反応抵抗の増大が起こり、反応すべき活物質の一部が所定の最低電圧以上では反応できなくなる。ここで、一般的に活物質には反応しやすい部分と反応しにくい部分が存在し、反応しやすい部分から順次反応すると考えられる。そして、放電時の電池温度が低いかあるいは放電電流が大きい場合、放電反応抵抗が増大し、この反応しにくい部分がより反応しにくくなり所定の最低電圧以上で放電できなくなると考えられる。同一種類で同一形式の電池の場合、放電条件の違いによって反応しにくくなる活物質の量は基準容量に対する割合から求められるべきである。つまり例えば基準容量80Ahの電池の場合、0℃において80Ahで放電した時にKd=0.8とすると、C−C×Kd=16Ahが利用できない活物質の容量に相当する。従って、放電可能容量Sdは演算で求めた残存容量Sc(n)から放電条件によって利用できなくなった容量 (C − C×Kd)を減算することで求められる。
【0073】
そして、ステップS29で、この放電可能容量Sdと電流I(n)とから放電可能時間tdを求めている。
【0074】
ただし、放電可能時間tdは、主に停電時における蓄電池によるDC負荷6のバックアップ時間を報知するために用いられるので、停電時における代表的な負荷電流の下限値40(A)よりも低い電流で演算してもあまり意味を持たない。そこで、電流I(n)が停電時における代表的な負荷電流の下限値40(A)よりも小さいときは、放電可能容量Sdをこの電流下限値40で除した値を放電可能時間tdとする。電流が停電時における代表的な負荷電流の下限値40(A)よりも小さいときは、ステップS29の上側の式で放電可能時間tdが算出される。
【0075】
一方、電流I(n)が停電時における代表的な負荷電流の下限値40(A)よりも大きいときは、放電可能容量Sdを電流I(n)の絶対値で除した値を放電可能時間tdとしている。つまり、ステップS29の下側の式で放電可能時間tdが算出される。
【0076】
ところで、電流I(n)=0では、補正係数Kdは1にセットされる(ステップS30)。その後、ステップS28の処理に進むが、補正係数Kdは1であるので、放電可能容量Sdは残存容量Sc(n)に等しい。つまり、電流I(n)=0のときは、充電時と同じように、放電可能時間tdが算出される。
【0077】
次に、本発明の特徴となる容量補正処理(ステップS9)について詳細に説明する。なお、図7のフローチャートはこの容量補正処理(ステップS9)の第1の実施の形態を示し、図8のフローチャートはこの容量補正処理(ステップS9)の第2の実施の形態を示している。
【0078】
図7において、電流データI(n)が放電電流のしきい値(例えば−10A)を所定時間t1(例えば30分間)を経過したかが判定される(ステップS41)。このステップS41で「YES」と判定された場合に容量補正チェックコードR(容量補正モード)が「1」にセットされる(ステップS42)。容量補正チェックコードRはバックアップ・メモリ44に記憶される。ここで、ステップS41及びS42により残存容量補正モードセット手段が構成されている。
【0079】
これは、例えば蓄電池8は、その特性から満充電状態において短時間の放電があった場合でも、放電直後に瞬時に複電(充電)する際、しきい値を超える大きな充電電流が流れ、直ちに垂下し充電電流がしきい値以下となることがある。このような場合、誤った容量補正を行う可能性があるため、所定時間t1より短い時間の放電に対しては容量補正チェックコードRをセットしないようにして、誤って容量補正を行わないようにしている。
【0080】
次いで、容量補正チェックコードRが「1」であるかが判定される(ステップS43)。このステップS43の判定で「YES」と判定されても、直ぐには、ステップS46及びS47の容量補正は実行されない。ステップS44及びS45の判定条件が成立すると、容量補正が行なわれる。これは、ある程度の量の放電が行われた後なので、その後の複電時に大きな充電電流が流れ、やがて電流が垂下し、ステップS44で電流データが容量補正のしきい値I1(例えば+4A)を下回ったかどうかを判定する(充電電流判定手段)。この時、充電電流は架線電源などの変動に伴って変動しているので、しきい値I1(+4A)を連続して数回(例えば、5回)以上下回った時点を検出している(ステップS45)。
【0081】
ステップS45の判定で「YES」と判定されると、その時の蓄電池8の温度Tbと電圧Vsetに基づいて、ROM11に記憶されている温度Tbと電圧Vsetとに関連づけられた残存容量補正係数のデータテーブル(図3)から対応する残存容量補正係数Ksが選択され(ステップS46)、基準容量Cに残存容量補正係数Ksが乗ぜられた値が残存容量Sc(n)とされる。この残存容量Sc(n)はバックアップ・メモリ45にすでに記憶されている残存容量に上書きされる。つまり、バックアップ・メモリ45には図5のフローチャートのステップS24により蓄電池8への充放電時に残存容量Sc(n)が更新されている。ステップS46の処理はバックアップ・メモリ45には記憶されている残存容量Sc(n)に関係なく、基準容量Cに残存容量補正係数Ksを乗じた値を残存容量Sc(n)とし、バックアップ・メモリ45に記憶されていた残存容量Sc(n)を書き換えるようにして補正している。
【0082】
このように、充電電流が所定のしきい値以下であると判定された時、蓄電池8の基準容量Cに判定された時の蓄電池8の温度Tbと蓄電池の電圧Vsetに基づいた残存容量補正係数Ksを乗じることにより蓄電池8の残存容量が新たに演算され、すでに記憶されている残存容量がこの新たに演算された値に書き換えられる。従って、DC負荷6や架線電源の変動による電流と電圧の変化の影響が考慮され、なお且つ温度の変化による影響も考慮されることから、蓄電池8の残存容量Sc(n)を正確に得ることができる。
【0083】
例えば、検出前の残存容量を70Ah、電池温度が12℃、電池電圧が103Vである時、図3の残存容量補正係数Ksのデータテーブルから次のように求められる。まず、手順1として電圧データから、電圧範囲102V〜104VのB列が選択される。そして、手順2として電池温度データから、予め定めた10℃と15℃における残存容量補正係数Ks2.4(例えば0.88)とKs2.3(例えば0.90)が選択される。さらに、手順3として補間法により電池温度データ(12℃)における残存容量補正係数(0.89)が求められる。さらに、手順4として定格容量(80Ah)に残存容量補正係数(0.89)が乗ぜられた値(71.2Ah)が、検出前の残存容量70[Ah]に代わり、新しい残存容量として書き換えられる。
【0084】
尚、残存容量が補正された場合、容量補正チェックコードRはリセットされる(ステップS48)。そして、ステップS45の回数を計数するカウンタがリセットされる(ステップS49)。
【0085】
つまり、ステップS46及び47の容量補正処理は、容量補正チェックコードRがセットされているときに1回だけ行われる。
【0086】
充電電流は架線電源と車両DC負荷の変動によって上下するが、一度容量補正が行われると、容量補正モードがリセットされるので、例えば前述のしきい値の補正が行われた後で、充電電流が変動してしきい値を上回る値に増加した後、この値を下回った場合でも、誤って部分充電状態に補正されることは無い。
【0087】
次に、図8のフローチャートを参照して図4の容量補正処理(ステップS9)の第2例について説明する。図8は、容量補正処理を2段階の残存容量レベルに分けて行っている。これは部分充電状態(たとえばSOC80%)と満充電状態(SOC100%)の2段階で容量補正を行うものである。
【0088】
図7のフローチャートを参照して説明した第1例ではしきい値はI1だけであったが、この図8のフローチャートに示した第2例では、しきい値が部分充電状態に対応するしきい値I1と、満充電状態かそれに近い状態に対応するしきい値I2とに複数設けている。
【0089】
また、この第2例では、電流データI(n)が放電電流のしきい値(例えば−10A)を比較的長時間である所定時間t1(>t2)(例えば30分間)を経過したかが判定される(ステップS51)。このステップS51で「YES」と判定された場合に容量補正チェックコードR1が「1」にセットされる(ステップS52)。また、電流データI(n)が放電電流のしきい値(例えば−10A)を比較的短時間である所定時間t2(例えば3分間)を経過したかが判定される(ステップS53)。このステップS53で「YES」と判定された場合に容量補正チェックコードR2が「1」にセットされる(ステップS54)。つまり、蓄電池8からの放電電流がしきい値を超えた時間に応じて2段階に容量補正チェックコードR1,R2を切り分けてセットするようにしている。ステップS51〜54により残存容量補正モードセット手段が構成される。
【0090】
t1>t2となるように設定されているので、容量補正チェックコードR2が先にセットされ、その後容量補正チェックコードR1がセットされる。
【0091】
そして、容量補正チェックコードR1がセットされたときは、ステップS56〜S61の処理が行なわれ、容量補正チェックコードR2がセットされたときは、ステップS63〜S68の処理が行なわれる。
【0092】
そして、ステップS56で電流データが容量補正のしきい値I1(例えば+4A)を下回ったかどうかを判定する。この時、充電電流は架線電源などの変動に伴って変動しているので、しきい値I1(+4A)を連続して数回(例えば、5回)以上下回った時点を検出している(ステップS57)。このステップS57で「YES」と判定された場合には、図7のステップS46〜49で説明した処理と同様な容量補正処理が行なわれる。ただし、図7のフローチャートで示した第1の実施の形態ではしきい値はI1の一つだけであったが、図8のフローチャート46で示した第2の実施の形態ではしきい値はI1とI2の2つである。従って、ステップS58で参照される補正係数Ksは蓄電池8の温度Tbと充電電圧Vsetとしきい値I1に関連付けられており、ステップS65で参照される補正係数Ksは蓄電池8の温度Tbと電圧Vsetとしきい値I2に関連付けられている。
【0093】
また、ステップS63で電流データが容量補正のしきい値I2(<I1)(例えば+1A)を下回ったかどうかを判定する。しきい値I2(+1A)を連続して数回(例えば、5回)以上下回った時点を検出している(ステップS63)。このステップS63で「YES」と判定された場合には、図7のステップS46〜49で説明した処理と同様な容量補正処理が行なわれる。
【0094】
このように、しきい値が部分充電状態に対応するしきい値I1と、満充電状態かそれに近い状態に対応するしきい値I2とに複数設けられ、比較的長時間(t1:t1>t2)の放電に対してはしきい値I1としきい値I2の両方の容量補正を選択し、比較的短時間(t2)の放電に対してはしきい値I1の容量補正は行わず、しきい値I2(満充電状態)の容量補正のみを選択するようにしたので、部分充電状態に補正されるのは相当な量の放電が行われた時に限定され、既に満充電状態かそれに近い状態にある時に、浅い放電をした場合、部分充電状態に容量補正され誤った表示をすることを防ぐことができる。
【0095】
なお、図7及び図8において、容量補正モードをセットする放電の基準は時間の他、放電電気量であってもよい。また、2つ以上の複数の段階で容量補正する時に、放電容量の大きさで各段階の補正の可否を選別する場合は、容量補正モードをセットする放電の基準は補正する容量レベルに対して適正な放電量(電流、時間)を選択するようにしても良い。
【0096】
次に、図9のフローチャートを参照して図4の自己放電補正処理について説明する。鉄道車両に搭載されている機器は、実施例による蓄電池状態監視装置11も含め、蓄電池8が架線電源から遮断され放置されたとき、バッテリスイッチ7がオフとなることが一般的である。この放置中には蓄電池状態監視装置11は蓄電池8の電圧を受けることはできない。
【0097】
仮に、蓄電池状態監視装置11が常に蓄電池8に接続されると、常識的な一般の構成部品で蓄電池状態監視装置が構成され、これも常識的な容量の蓄電池が用いられたとすると、架線電源から遮断されて放置した時、2〜3週間から1ケ月で蓄電池の容量はなくなる。放置中にもし、蓄電池の容量が無くなると車両が起動できなくなるため、このような構成とすることは鉄道車両においては好ましく無い。従って、放置中には蓄電池状態監視装置11は連続して又は定期的に蓄電池8の電圧データや温度データを検出して自己放電量を演算することができない。
【0098】
そこで、図9のフローチャートに示す処理により、バッテリスイッチ7がオフされる放置期間中の自己放電量を推算する。
【0099】
まず蓄電池状態監視装置11は、蓄電池8が架線電源スイッチ3がオフされると、バッテリスイッチ7もオフされる。バッテリスイッチ7がオフされたときの、日付と時刻、残存容量Sc(1)としてバックアップ・メモリ45に記憶している。
【0100】
次に、起動により、蓄電池状態監視装置11に電源が供給されると、起動時であることが判定され、図4のフローチャートのステップS2の自己放電補正処理に進む。
【0101】
まず、カレン・タイマ44からCPU42に現在の日付DT2を取り込む(ステップS71)。そして、バックアップ・メモリ45に記憶されている前回記憶した日付DT1と残存容量Sc(1)を取り込む(ステップS72)。
【0102】
そして、「DT1<DT2」であるかを判定する(ステップS73)。もし、DT1とDT2が同じ日付であれば、「NO」と判定されメインルーチンに戻る。つまり、この場合には自己放電量を演算する必要がないためである。
【0103】
ステップS73で「YES」と判定された場合には、蓄電池状態監視装置11が放置されていたと判定され、ステップS74以降の自己放電量を演算する処理がなされる。まず、放置前の残存容量Sc(1)と日付DT1に基づいて、年間気温変動データと残存容量と自己放電率とが関連付けられたデータテーブルから放電開始日の1日当たりの自己放電率Krを選択する(ステップS74)。そして、放置前の残存容量Sc(1)から1日当たりの自己放電量を減算する(ステップS75)。つまり、Sc(1)=Sc(1)−(C×Kr)とされる。
【0104】
そして、日付を1日進める。つまり、DT1=DT1+1とする(ステップS76)。
【0105】
そして、DT1=DT2(現在の日付)となったか判定される(ステップS77)。このステップS77において「NO」と判定されている間はステップS74〜76の処理が繰り返し行なわれる。
【0106】
そして、ステップS77で「YES」と判定されると、放置されている間の自己放電量がすべて考慮されて残存容量が決定される。
【0107】
このように、蓄電池状態監視装置11が計測した電池温度データが無くとも自己放電量の演算が可能となる。
【0108】
なお、自己放電率の計算にROM43に記憶された年間気温変動データと残存容量と自己放電率とが関連付けられたデータテーブルを用いているが、蓄電池状態監視装置11のバッテリスイッチ7のオンされた後、外部入力手段によって別途計測した放置期間中の温度データを入力し、温度と残存容量及び自己放電量の特性データによって、放置中の自己放電量を演算しても良い。
【0109】
なお、図8のフローチャートではしきい値を2つ(I1,I2)設けたが、3つ以上設けても良い。
【0110】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、充電電流が所定のしきい値以下であると、蓄電池の温度Tbと電圧Vsetにより残存容量補正係数Ksを選択し、蓄電池の基準容量と残存容量補正係数Ksから残存容量を算出し、蓄電池の残存容量を書き換えるように補正したので、正確な残存容量把握することができる。
【0111】
さらに、放置期間中の気温変動データ等によって自己放電が計算されるようにしたので、蓄電池状態監視装置が作動していない間の自己放電量を推測することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る架線電源及び蓄電池を電源とする鉄道車両用補助電源システムの概略構成図。
【図2】同実施の形態に係る蓄電池状態監視装置を詳細なブロック図。
【図3】所定の電流しきい値において温度と電圧に関連付けられた残存容量のデータテーブルの一例。
【図4】同実施の形態に係るメインフローチャート。
【図5】残存容量演算のフローチャートの一例。
【図6】容量警報のフローチャートの一例。
【図7】容量補正のフローチャートの一例。
【図8】容量補正のフローチャートの一例。
【図9】自己放電量補正処理を示すフローチャートの一例。
【符号の説明】
8…蓄電池、
10…電流センサ、
11…蓄電池状態監視装置、
13…温度センサ、
42…CPU、
43…ROM、
45…バックアップ・メモリ。

Claims (5)

  1. 蓄電池の充放電電流を検出する電流検出手段と、
    前記電流検出結果から充電か放電かを判断する状態判定手段と、
    前記蓄電池の温度を検出する温度検出手段と、
    前記蓄電池の電圧を検出する電圧検出手段と、
    前記電流検出手段及び状態判定手段の検出結果に基づいて、前記蓄電池の残存容量を計算する残存容量演算手段と、
    この残存容量演算手段で演算された残存容量を記憶する残存容量記憶手段と、
    少なくとも前記蓄電池の電圧と前記蓄電池の温度により関連付けられた残存容量補正係数を記憶する残存容量補正係数記憶手段と、
    前記状態判定手段により充電であると検出され、前記電流検出手段により検出された充電電流が所定のしきい値以下であることを判定する充電電流判定手段と、
    この充電電流判定手段により前記充電電流が所定のしきい値以下であることを判定された場合に前記蓄電池の基準容量と前記残存容量補正係数記憶手段に記憶された残存容量補正係数を用いて新たな残存容量を算出し前記残存容量記憶手段に記憶されている残存容量を書き換えることにより残存容量を補正する残存容量補正手段と、
    本蓄電池状態監視装置への電源供給がオフされている間の前記蓄電池の自己放電量を計算する自己放電量演算手段を備え、
    この自己放電量演算手段は、少なくとも蓄電池状態監視装置への電源供給がオフされる直前の放置前時間データと、前記電源供給がオフされる直前の残存容量データと、電源供給がオンされた直後の放置後時間データと、予め記憶された年間気温データと、前記年間気温データと残存容量のレベルに関連付けられた自己放電率データテーブルによって自己放電量を演算することを特徴とする鉄道車両用蓄電池状態監視装置。
  2. 前記充電電流判定手段で判定する所定のしきい値は1つ以上あり、前記残存容量補正係数記憶手段に記憶される残存容量補正係数はそのしきい値毎に前記蓄電池の電圧と前記蓄電池の温度とに関連付けられて構成され、
    前記残存容量補正手段は各充電電流判定手段により所定のしきい値以下であることが判定された場合に、前記蓄電池の基準容量と前記残存容量補正係数記憶手段に記憶された該当するしきい値に対応する残存容量補正係数を用いて新たな残存容量を算出し前記残存容量記憶手段に記憶されている残存容量を書き換えることにより残存容量を補正することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用蓄電池状態監視装置。
  3. さらに、前記残存容量補正手段を動作させて前記残存容量を補正する容量補正モードをセットする残存容量補正モードセット手段とを具備し、
    前記残存容量補正手段はこの残存容量補正モードセット手段により容量補正モードがセットされた場合に実行されることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用蓄電池状態監視装置。
  4. 前記残存容量補正モードセット手段は、前記状態判定手段により放電が検出され、この放電により連続して所定値以上の容量の放電が行われるか、あるいは連続して所定値以上の電流でなおかつ所定値以上の時間の放電が行われた場合に容量補正モードをセットすることを特徴とする請求項3記載の鉄道車両用蓄電池状態監視装置。
  5. 前記残存容量補正モードセット手段によりセットされた容量補正モードは前記残存容量補正手段により残存容量の補正が行なわれた時にリセットされることを特徴とする請求項4記載の鉄道車両用蓄電池状態監視装置。
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