JP3732453B2 - ガスタービン用吸気フィルタ選定システム - Google Patents

ガスタービン用吸気フィルタ選定システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスタービン用吸気フィルタ選定システムに係り、詳しくは、ガスタービンの吸気系に配設されるフィルタとして最適な条件を満たすものを選定するためのシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、ガスタービンには、空気圧縮機が吸い込む外気中の微細なダストの捕集を目的として、例えば、ガスタービン内に通じる吸気ダクトの上流側端部に吸気フィルタユニットが装備される。詳述すると、図9に示すように、フィルタユニット1を通過した吸気は、矢印aで示すように吸気ダクト2を通じてガスタービン3の空気圧縮機4に導入された後、タービン部5を経て、矢印bで示すように排気ダクト6から煙突または熱回収ボイラ側に向かって排出される。なお、同図に示す符号7は、発電機である。そして、フィルタユニット1は、通例、吸気流の上流側から順に、目の粗い一次フィルタ11と目の細かい二次フィルタ12とを配列してなる二段式として構成される。
【0003】
この場合、ガスタービンの性能低下を防止しつつ、フィルタの取替頻度を抑制してその取替コストを低減させるには、フィルタの捕集効率を高めると同時にその流通抵抗ないし圧力損失を抑えて、いわゆる高性能フィルタとしての機能を発揮させることが有効である。
【0004】
ところで、この種のガスタービン用のフィルタは、ガスタービンの設置地点が相違すれば、その地点における大気塵や埃(以下、ダストという)の濃度・性状が相違することに起因して、その取替頻度も大きく変動する。したがって、個々のガスタービンに応じて、様々な観点からその特性を検討して、現実に使用しているガスタービンに最も適したフィルタを選定する必要がある。
【0005】
しかるに、従来においては、ガスタービン(特に、大型ガスタービン)におけるフィルタの選定は、プラントメーカの推奨に依存したり、或いは、ガスタービン使用者の個人的知識に委ねられているのが通例であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この場合において、フィルタの選定を的確に行うには、ガスタービンの周辺雰囲気におけるダストの濃度や性状のみならず、ガスタービンの大きさや能力等の種々の特質を、プラントメーカや使用者が正確に把握する必要がある。
【0007】
しかしながら、ダストの濃度や性状等は、既述のように個々のガスタービンの設置地点によって相違するものであり、またガスタービンの能力その他の特性も個々に相違するものであるから、これらの全てをプラントメーカや使用者が充分に把握した上でフィルタを選定することは極めて困難なことである。
【0008】
このため、フィルタの選定に多大な手間や労苦を要するにも拘わらず、個々のガスタービンに応じた最適なフィルタを的確に選定できず、これに起因して、フィルタ寿命が不当に短くなり、フィルタ取替コストが高騰すると共に、ガスタービンの運転コストも上昇するという不具合を招いていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ガスタービンの設置地点に応じたダストの濃度や性状に合致すると共に、ガスタービンの能力や特性にも合致し、且つフィルタの長寿命化を図りつつ、フィルタ取替コスト並びにガスタービン運転コストの低廉化を図り得るガスタービン用吸気フィルタ選定システムを提供することを技術的課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明は、ガスタービンの吸気系に設置されてダストの捕集に供されるフィルタを選定すると共に各処理が電子情報処理組織によって実行される選定システムであって、少なくとも、フィルタの処理風量、初期圧損、及び捕集効率をカタログデータ記憶部から採取する処理と、この採取した各データと個々のガスタービンに応じて要求されるそれらの要求性能とに基づいてフィルタの第一適否選別を行う処理とを実行するカタログ選別処理手段と、前記カタログ選別処理手段により適合選別されたフィルタを対象として、少なくとも、大気塵濃度、ガスタービン運転時間、及びガスタービン圧縮機吸気量をフィルタ使用環境データ記憶部から採取する処理と、この採取した各データと前記カタログデータ記憶部から採取した捕集効率とに基づいてフィルタ寿命を算出する処理と、この算出結果に基づいてフィルタの第二適否選別を行う処理とを実行する寿命選別処理手段と、前記寿命選別処理手段により適合選別されたフィルタを対象として、現状のガスタービン運転関連情報及び現状のフィルタ取替関連情報を現状プラントデータ記憶部から採取する処理と、この採取したデータと前記カタログデータ記憶部から採取したフィルタ単価と前記フィルタ寿命とに基づいてフィルタ使用に関連する現状コストと推定コストとをそれぞれ算出する処理と、この二種のコスト比較して、推定コストが要求コストを満たす程度に低減されているか否かの第三適否選別を行う処理とを実行するコスト選別処理手段とを有することを特徴とするものである。
【0011】
すなわち、このガスタービン用吸気フィルタ選定システムは、要約すると、製品としての複数のフィルタの各種情報が格納されてなるカタログデータ記憶部(カタログデータベース)から取り出した所要のデータを勘案してフィルタの第一適否選別を行うカタログ選別処理手段と、ここで適合選別されたフィルタに対して、フィルタの使用環境を示す各種データの記憶部から取り出した所要のデータを勘案してフィルタ寿命についての第二適否選別を行う寿命選別処理手段と、ここで適合選別されたフィルタに対して、現状の各種プラントデータの記憶部から取り出した所要のデータを勘案してフィルタ使用に関連するコストについての第三適否選別を行うコスト選別手段とを有する。
【0012】
この選定システムによれば、フィルタの処理風量、初期圧損、及び捕集効率が、その使用者の所有するガスタービンのフィルタに対する要求性能と合致しているか否かを、先ずカタログ選別処理手段により選別した後、フィルタ使用環境データとしての大気塵濃度、ガスタービン運転時間、及びガスタービン圧縮吸気量と、上述のフィルタ捕集効率とに基づいて算出されたフィルタ寿命が要求寿命を満たしているものを、寿命選別処理手段により選別することになるので、フィルタとして、そのガスタービンの本来的機能を阻害しないものであって、且つ充分な寿命特性を備えたものが、コンピュータ等を含む電子情報処理組織により選別される。
【0013】
更にこの後、現状プラントデータとしての現状ガスタービンの運転に関連する情報及び現状フィルタの取替に関連する情報と、カタログデータベースから採取したフィルタ単価と、上述のフィルタ寿命とに基づいて、フィルタ使用に関連する現状コストと推定コストとを算出すると共に、この両コストを比較し、且つ推定コストが要求レベルを満たしているものを、コスト選別処理手段により選別することになるので、ガスタービンの運転コスト及びフィルタ取替に要するコストを好適に低減できるフィルタが、上記電子情報処理組織により選別される。
【0014】
したがって、プラントメーカの推奨や使用者の個人的知識によることなく、個々のガスタービンの設置地点におけるダストの濃度や性状に合致し、且つそのガスタービンの能力や特性にも合致したフィルタであって、しかも長寿命化及びコストの低廉化を図り得るフィルタが最終的に選別される。
【0015】
この場合、前記カタログデータ記憶部は、フィルタの寸法、捕集量、及び塵粒径別捕集効率を更に保有していることが好ましく、また、前記フィルタ使用環境データ記憶部は、大気塵粒径別分布及びフィルタ設置枚数を更に保有していることが好ましく、しかも、前記現状プラントデータ記憶部は、現状の発電電力量、ガスタービン運転時間、燃料単価、熱効率、燃料発熱量、フィルタ取替頻度、フィルタ処理費、及びフィルタ設置枚数を保有していることが好ましい。
【0016】
また、前記現状コストは、前記現状プラントデータ記憶部から採取したフィルタ取替頻度、フィルタ処理費、フィルタ設置枚数、並びに前記カタログデータ記憶部から採取したフィルタ単価に基づいて算出される現状フィルタ取替コストと、前記現状プラントデータ記憶部から採取した発電電力量、燃料単価、熱効率、燃料発熱量に基づいて算出される現状プラント運転コストとを加算して得られるコストであることが好ましい。
【0017】
更に、前記推定コストは、前記フィルタ寿命、前記現状プラントデータ記憶部から採取したフィルタ設置枚数、フィルタ処理費、ガスタービン運転時間、並びに前記カタログデータ記憶部から採取したフィルタ単価に基づいて算出される推定フィルタ取替コストと、前記現状プラントデータ記憶部から採取した発電電力量、燃料単価、熱効率、燃料発熱量に基づいて算出される推定プラント運転コストとを加算して得られるコストであることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係るガスタービン用吸気フィルタ選定システム(以下、単に選定システムという)を示す概略構成図(ブロック線図)、図2〜図4は、その選定システムの動作を示すフローチャートである。
【0019】
この実施形態に係る選定システム20は、既述の図9に示すガスタービン3の吸気ダクト2に連設されたフィルタユニット1内のフィルタ11,12を選定するためのシステムであって、コンピュータを含む電子情報処理組織によって各処理が実行されるものである。
【0020】
この選定システム20は、図1に示すように、カタログデータベース21から採取した所要データと初期要求性能データ記憶部22から採取した所要データとを比較してフィルタの第一適否選別を行うカタログ選別処理手段23と、該カタログ選別処理手段23により適合選別された複数のフィルタの中から、フィルタ使用環境データ記憶部24から採取した所要データとカタログデータベース21から採取した所要データとに基づいてフィルタ寿命を算出することによりフィルタの第二適否選別を行う寿命選別処理手段25と、該寿命選別処理手段25により適合選別されたフィルタの中から、現状プラントデータ記憶部26から採取した所要データとカタログデータベース21から採取した所要データとに基づいて現状コスト及び推定コストを算出することによりフィルタの第三適否選別を行うコスト選別処理手段27とを有する。更に、この選定システム20は、前記コスト選別処理手段27により適合選別されたフィルタの中から、実要求性能データ記憶部28から採取した所要データを参照してフィールド試験装置を用いたフィルタの第四適否選別を行うフィールド試験選別処理手段29を有する。
【0021】
詳述すると、前記カタログデータベース21には、複数(多数)のフィルタの各種性能データ、例えば図5(a)に示すように、フィルタの種類、型式、寸法、処理風量、初期圧損(初期圧力損失)、捕集効率、塵粒径捕集効率、捕集量、及び価格(フィルタ単価)等が格納されている。また、前記初期要求性能データ記憶部22には、ガスタービンがフィルタとの関連において要求する各種性能データ、例えばガスタービンの使用風量、現状のフィルタの圧損、要求捕集効率、現状のフィルタ用固定枠に応じて決まるフィルタの寸法等が記憶されている。そして、カタログ選別処理手段23は、カタログデータベース21から、フィルタの処理風量、初期圧損、捕集効率、及び寸法を採取すると共に、初期要求性能データ記憶部22から、上記列挙した各データを採取し、また寿命選別処理手段25は、カタログデータベース21から、フィルタの捕集効率(塵粒径別捕集効率)を採取し、更にコスト選別処理手段27は、カタログデータベース21から、フィルタ単価(価格)を採取するようになっている。
【0022】
更に、前記フィルタ使用環境データ記憶部24には、フィルタが使用される際の環境を示す各種データ、例えば図6(b)に示すように、大気塵濃度、大気塵粒径別分布、ガスタービン運転時間、ガスタービン圧縮機吸気量、及びフィルタ設置枚数等が記憶されている。そして、この使用環境データ記憶部24に記憶されている各データは、寿命選別処理手段25により採取されるようになっている。また、前記現状プラントデータ記憶部26には、現状のプラントに関する各種データ、例えば図7(b)に示すように、発電電力量、運転時間、燃料単価、熱効率、燃料発熱量、フィルタ取替頻度、フィルタ処理費、及びフィルタ設置枚数等が記憶されている。そして、この現状プラントデータ記憶部26に記憶されている各データは、コスト選別処理手段27により採取されるようになっている。更に、前記実要求性能データ記憶部28には、フィールド試験に際して要求されるフィルタの各種性能データ、例えばフィルタ寿命、圧損、捕集効率等が記憶されている。そして、この実要求性能データ記憶部28に記憶されている各データは、フィールド試験選別処理手段29により採取されるようになっている。
【0023】
次に、この選定システムの動作(例えば上述の電子情報処理手段の制御部の動作)を、図2〜図4に示すフローチャートに従って説明する。
【0024】
先ず、カタログ選別処理手段23は、図2に示すフローチャートのステップS1で、カタログデータベース21から、フィルタの処理風量、初期圧損、捕集効率、及び寸法を採取すると共に、ステップS2で、初期要求性能データ記憶部22から、ガスタービンの使用風量、現状のフィルタの圧損、要求捕集効率、現状のフィルタ用固定枠に応じて決まるフィルタの寸法を採取し、ステップS3で、これらの採取した相互に対応するデータを比較する。そして、ステップS4で、図5(b)に示すように、フィルタの処理風量がガスタービンの使用風量の要求範囲内にあるか否か、フィルタの初期圧損が現状のフィルタ並か否か、フィルタの捕集効率がガスタービンの要求捕集効率の範囲内にあるか否か、及びフィルタの寸法が現状のフィルタ固定枠に応じて決まる寸法の範囲内にあるか否かを判定して、カタログデータに基づく第一適否選別を行う。
【0025】
そして、この第一適否選別の結果、適合しているとの判定がなされた複数のフィルタ(図5(c)に示す採用フィルタ)については、寿命選別処理手段25が、フローチャートのステップS5で、カタログデータベース21から図6(a)に示す塵粒径別捕集効率▲1▼を採取し、ステップS6で、合計捕集量▲2▼を算出する。更に、ステップS7で、フィルタ使用環境データ記憶部24(図6(b)参照)から、大気塵濃度▲3▼、大気塵粒径別分布▲4▼、ガスタービン運転時間▲5▼、ガスタービン圧縮機吸気量▲6▼、及びフィルタ設置枚数▲7▼を採取し、ステップS8で、所定の算出式(図6(c)に示す算出式)に基づいて粒径別の年間大気塵量▲8▼を算出し、この算出結果を保存する(図6(d)参照)。この場合、個々の粒径の年間大気塵量▲8▼(Aμ,Bμ…)は、図6(c)にも示しているが、例えば塵粒径Aμのものついては、下記の(1)式で算出される。
【0026】
Aμ年間大気塵量▲8▼(kg)=大気塵濃度▲3▼(kg/m3)×ガスタービン運転時間▲5▼(h/年)×ガスタービン圧縮機吸気量▲6▼(m3/h)×Aμ大気塵粒径別分布▲4▼(%)/100…(1)
【0027】
この後、フローチャートのステップS9で、所定の算出式(図6(e)に示す算出式)に基づいてフィルタの寿命を算出する。この場合、フィルタが二段式または三段式となっている際における前段のフィルタ寿命(h)は、図6(e)にも示すように、下記の(2)式で算出される。なお、下記の(2)式中、フィルタ設置枚数▲7▼とは、フィルタの各段ごとの設置枚数を意味する。
【0028】
前段のフィルタ寿命(h)=一枚のフィルタの合計捕集量▲2▼(kg)×フィルタ設置枚数▲7▼/{(Aμ年間大気塵量▲8▼(kg)×aμ塵粒径別捕集効率▲1▼(%)+Bμ年間大気塵量▲8▼(kg)×bμ塵粒径別捕集効率▲1▼(%)+…)/100}×ガスタービン運転時間▲5▼(h/年)…(2)
【0029】
また、前段のフィルタの粒径別の塵通過量(kg)は、図6(e)にも示すように、下記の(2)'式、及び(2)"式…で算出される。
【0030】
aμ塵粒径別フィルタ通過量▲9▼(kg)=Aμ年間大気塵量▲8▼(kg)−{Aμ年間大気塵量▲8▼(kg)×aμ塵粒径別捕集効率▲1▼(%)/100}…(2)'
【0031】
bμ塵粒径別フィルタ通過量▲9▼(kg)=Bμ年間大気塵量▲8▼(kg)−{Bμ年間大気塵量▲8▼(kg)×bμ塵粒径別捕集効率▲1▼(%)/100}…(2)"
【0032】
更に、後段のフィルタ寿命(h)は、図6(e)にも示すように、下記の(3)式で算出される。
【0033】
後段のフィルタ寿命(h)=一枚のフィルタの合計捕集量▲2▼(kg)×フィルタ設置枚数▲7▼/{(前段のaμ塵粒径別フィルタ通過量▲9▼(kg)×後段のxμ塵粒径別捕集効率▲1▼(%)+前段のbμ塵粒径別フィルタ通過量▲9▼(kg)×後段のyμ塵粒径別捕集効率▲1▼(%)…)/100}×ガスタービン運転時間▲5▼(h/年)…(3)
【0034】
また、後段のフィルタの粒径別の塵通過量(kg)は、図6(e)にも示すように、下記の(3)'式、(3)"式…で算出される。
【0035】
後段のxμ塵粒径別フィルタ通過量(kg)=前段のaμ塵粒径別フィルタ通過量▲9▼(kg)−{前段のaμ塵粒径別フィルタ通過量▲9▼(kg)×後段のxμ塵粒径別捕集効率▲1▼(%)/100}…(3)'
【0036】
後段のyμ塵粒径別フィルタ通過量(kg)=前段のbμ塵粒径別フィルタ通過量▲9▼(kg)−{前段のbμ塵粒径別フィルタ通過量▲9▼(kg)×後段のyμ塵粒径別捕集効率▲1▼(%)/100}…(3)"
【0037】
この後、フローチャートのステップS10で、上記算出したフィルタ寿命(h)が要求寿命以上であるか否かの寿命適否判定を行い、適合しているとの判定がなされた図6(f)に示す長寿命フィルタについては、コスト選別処理手段27が、先ず図3に示すフローチャートのステップS11で、カタログデータベース21からフィルタ単価bを採取する。このフィルタ単価bの採取は、上記適合選別がなされた各長寿命フィルタに対応して行い、長寿命フィルタの各寿命a(h)とそれらのフィルタ単価b(円)とを図7(a)に示す長寿命フィルタデータとして得る。
【0038】
次に、フローチャートのステップS12で、現状プラントデータ記憶部26(図7(b)参照)から、発電電力量c、運転時間d、燃料単価e、熱効率f、燃料発熱量g、フィルタ取替頻度h、フィルタ処理費i、及びフィルタ設置枚数jを採取する。そして、ステップS13で、長寿命フィルタ使用時の推定熱効率kを算出すると共に、ステップS14で、長寿命フィルタ使用時の推定発電電力量mを算出する。前記推定熱効率kは、図7(c)に示すように、長寿命フィルタを使用した場合には運転時間が経過してもその熱効率が変化しないものと仮定し、上述の採取した現状の熱効率fを指標として換算することにより得られる。また、前記推定発電電力量mも、同図に示すように、長寿命フィルタを使用した場合には運転時間が経過してもその発電電力量が変化しないものと仮定し、上述の採取した現状の発電電力量cを指標として換算することにより得られる。
【0039】
この後、フローチャートのステップS15で、長寿命フィルタ取替の推定取替コストn、すなわち長寿命フィルタの取替に要する推定コストを算出すると共に、ステップS16で、長寿命フィルタ使用時の推定運転コストo、すなわち長寿命フィルタ使用時のガスタービン(プラント)の運転コストを算出する。この場合、前記推定取替コストn及び推定運転コストoは、図7(d)にも示すように、下記の(4)'式、及び(4)"式で算出される。
【0040】
推定取替コストn(円/年)={フィルタ単価b(円)×フィルタ設置枚数j(枚)×運転時間d(h/年)/フィルタ寿命a(h)}+{フィルタ処理費i(円/回)×運転時間d(h/年)/フィルタ寿命a(h)}…(4)'
【0041】
推定運転コストo(円/年)={推定発電電力量m(MWh/年)×3600}/{推定熱効率k(%)×燃料発熱量g(KJ/kg)}×100×燃料単価e(円/KJ)…(4)"
【0042】
更にこの後、フローチャートのステップS17で、現状フィルタ取替の現状取替コストp、すなわち現状のフィルタの取替に要する現状コストを算出すると共に、ステップS18で、現状フィルタ使用時の現状運転コストq、すなわち現状フィルタ使用時のガスタービン(プラント)の運転コストを算出する。この場合、前記現状取替コストp及び現状運転コストqは、図7(e)にも示すように、下記の(5)'式、及び(5)"式で算出される。
【0043】
現状取替コストp(円/年)={現状フィルタ単価b(円)×フィルタ設置枚数j(枚)×フィルタ取替頻度h(回/年)}+{フィルタ処理費i(円/回)×フィルタ取替頻度h(回/年)}…(5)'
【0044】
現状運転コストq(円/年)={現状発電電力量c(MWh/年)×3600}/{現状熱効率f(%)×燃料発熱量g(KJ/kg)}×100×燃料単価e(円/KJ)…(5)"
【0045】
以上の算出を終えた後は、フローチャートのステップS19で、推定取替コストnと推定運転コストoとの加算値を、現状取替コストpと現状運転コストqとの加算値と比較する。この比較に際しては、図7(f)に示すように、例えばフィルタ室改造費等も加味される。
【0046】
そして、フローチャートのステップS20で、推定取替コストnと推定運転コストoとの加算値が、現状取替コストpと現状運転コストqとの加算値に比して、要求コストを満たす程度に低減されているか否かのコスト適否判定を行い、適合しているとの判定がなされたフィルタ、つまり図8(a)に示す低コストフィルタについては、フィールド試験選別処理手段29が、以下のような処理を行う。
【0047】
すなわち、フィールド試験選別処理手段29は、フローチャートのステップS21で、上述の低コストフィルタを例えば図8(b)に示すように三段に組み込んでなるフィールド試験装置についての試験データとして、図8(c)に示すように、フィルタ寿命、捕集効率、及び圧損を採取すると共に、ステップS22で、試験に際して要求されるフィルタの性能データとして、フィルタ寿命、捕集効率、及び圧損を採取する。そして、ステップS23で、上述の試験データ(実性能データ)と要求性能データとをそれぞれ対比させて比較し、ステップS24で、試験による実性能の適否判定を行う。詳述すると、図8(d)に示すように、試験データのフィルタ寿命が要求寿命を満たしているか否か、試験データの圧損が要求値に合致しているか否か、及び試験データの捕集効率が要求効率をみたしているか否かを判定する。
【0048】
そして、適合しているとの判定がなされたフィルタ、つまり図8(e)に示す適合フィルタについては、フローチャートのステップS25で、フィールド試験において費やしたフィルタの取替コスト及び運転コストと、要求されるフィルタの取替コスト及び運転コストとを、既述のステップS15〜ステップS19の処理と同様の手法で計算及び比較した後、ステップS26で、フィールド試験によるコストの適否判定を行う。この結果、適合しているとの判定がなされたフィルタについては、ステップS27で、例えば図8(f)に示す最適フィルタとして最終的に表示される。
【0049】
【発明の効果】
以上のように本発明に係るガスタービン用吸気フィルタ選定システムによれば、カタログデータ記憶部から採取した各データに基づいてフィルタの第一適否選別を行うカタログ選別処理手段と、フィルタ使用環境データ記憶部から採取した各データに基づいてフィルタ寿命を算出し、この算出結果に基づいてフィルタの第二適否選別を行う寿命選別処理手段と、現状プラントデータ記憶部から採取した各データに基づいてフィルタ使用に関連する現状コストと推定コストとをそれぞれ算出し、この二種のコストの比較結果に基づいてフィルタの第三適否選別を行うコスト選別処理手段とを有するものであるから、プラントメーカの推奨や使用者の個人的知識に依存することなく、個々のガスタービンの設置地点におけるダストの濃度や性状に合致し、且つそのガスタービンの能力や特性にも合致したフィルタであって、しかも長寿命化及びコストの低廉化を図り得るフィルタを選別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るガスタービン用吸気フィルタ選定システムの概略を示す概略構成図である。
【図2】前記ガスタービン用吸気フィルタ選定システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】前記ガスタービン用吸気フィルタ選定システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】前記ガスタービン用吸気フィルタ選定システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】図5(a),(b),(c)はそれぞれ、前記ガスタービン用吸気フィルタ選定システムの動作を説明するための表である。
【図6】図6(a),(b),(c),(d),(e),(f)はそれぞれ、前記ガスタービン用吸気フィルタ選定システムの動作を説明するための表である。
【図7】図7(a),(b),(c),(d),(e),(f)はそれぞれ、前記ガスタービン用吸気フィルタ選定システムの動作を説明するための表である。
【図8】図8(a),(b),(c),(d),(e),(f)はそれぞれ、前記ガスタービン用吸気フィルタ選定システムの動作を説明するための表である。
【図9】フィルタを通過する吸気の流れを示すガスタービン(プラント)の概略図である。
【符号の説明】
1 フィルタユニット
2 吸気ダクト
3 ガスタービン
20 選定システム
21 カタログデータベース
23 カタログ選別処理手段
24 フィルタ使用環境データ記憶部
25 寿命選別処理手段
26 現状プラントデータ記憶部
27 コスト選別処理手段
29 フィールド試験選別処理手段

Claims (5)

  1. ガスタービンの吸気系に設置されてダストの捕集に供されるフィルタを選定すると共に各処理が電子情報処理組織によって実行される選定システムであって、
    少なくとも、フィルタの処理風量、初期圧損、及び捕集効率をカタログデータ記憶部から採取する処理と、この採取した各データと個々のガスタービンに応じて要求されるそれらの要求性能とに基づいてフィルタの第一適否選別を行う処理とを実行するカタログ選別処理手段と、
    前記カタログ選別処理手段により適合選別されたフィルタを対象として、少なくとも、大気塵濃度、ガスタービン運転時間、及びガスタービン圧縮機吸気量をフィルタ使用環境データ記憶部から採取する処理と、この採取した各データと前記カタログデータ記憶部から採取した捕集効率とに基づいてフィルタ寿命を算出する処理と、この算出結果に基づいてフィルタの第二適否選別を行う処理とを実行する寿命選別処理手段と、
    前記寿命選別処理手段により適合選別されたフィルタを対象として、現状のガスタービン運転関連情報及び現状のフィルタ取替関連情報を現状プラントデータ記憶部から採取する処理と、この採取したデータと前記カタログデータ記憶部から採取したフィルタ単価と前記フィルタ寿命とに基づいてフィルタ使用に関連する現状コストと推定コストとをそれぞれ算出する処理と、この二種のコスト比較して、推定コストが要求コストを満たす程度に低減されているか否かの第三適否選別を行う処理とを実行するコスト選別処理手段と
    を有することを特徴とするガスタービン用吸気フィルタ選定システム。
  2. 前記カタログデータ記憶部は、フィルタの寸法、捕集量、及び塵粒径別捕集効率を、更に保有していることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン用吸気フィルタ選定システム。
  3. 前記フィルタ使用環境データ記憶部は、大気塵粒径別分布及びフィルタ設置枚数を、更に保有していることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン用吸気フィルタ選定システム。
  4. 前記現状プラントデータ記憶部は、現状の発電電力量、ガスタービン運転時間、燃料単価、熱効率、燃料発熱量、フィルタ取替頻度、フィルタ処理費、及びフィルタ設置枚数を保有していることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン用吸気フィルタ選定システム。
  5. 前記現状コストは、前記現状プラントデータ記憶部から採取したフィルタ取替頻度、フィルタ処理費、フィルタ設置枚数、並びに前記カタログデータ記憶部から採取したフィルタ単価に基づいて算出される現状フィルタ取替コストと、前記現状プラントデータ記憶部から採取した発電電力量、燃料単価、熱効率、燃料発熱量に基づいて算出される現状プラント運転コストとを加算して得られるコストであると共に、
    前記推定コストは、前記フィルタ寿命、前記現状プラントデータ記憶部から採取したフィルタ設置枚数、フィルタ処理費、ガスタービン運転時間、並びに前記カタログデータ記憶部から採取したフィルタ単価に基づいて算出される推定フィルタ取替コストと、前記現状プラントデータ記憶部から採取した発電電力量、燃料単価、熱効率、燃料発熱量に基づいて算出される推定プラント運転コストとを加算して得られるコストであることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン用吸気フィルタ選定システム。
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