JP3732150B2 - 切断ホイール - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート、コンクリート二次製品、セメント系建材、窯業系建材などの切断に用いられる切断ホイールにかかり、詳しくは、ろう付けにより基板に一層配列する砥粒の配列を改良してホイールの切れ味と寿命を向上させた切断ホイールに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート、コンクリート二次製品、セメント系建材、窯業系建材などの切断用として、円盤状の基板の外周面および外周部側面に砥粒をろう付け法により一層配列した切断ホイールが使用されている。このような切断ホイールには、切れ味に優れ、しかもその切れ味が長期にわたって安定的に持続することが要求される。ところが、切断ホイールは切断作業の進行に伴い切れ味と寿命が低下する。
【0003】
その主な原因として、基板への砥粒の固着状態が不安定で砥粒が脱落しやすいこと、チップポケットが小さいこと、砥粒間隔のコントロールが不十分なために切断作業中に切粉によって目詰まりが生じることが挙げられる。とくに砥粒間隔に関しては、基板の表面に砥粒を所定の配列状態に配設するのが難しく、砥粒どうしが近接した状態にある部分においては、切粉が排出されにくく、切れ味の低下につながる。
【0004】
ろう付け法による切断ホイールの製造において、砥粒を均一に分散させるための方策として、特開平9−19867号公報には、金属被覆したダイヤモンド砥粒を基板外周面と金型の間隙に充填し、基板と金型を加熱しながら銀ろうを間隙に溶浸させる切断ホイールの製造方法が開示されている。また特開平10−118937号公報には、1個または集合した複数個の超砥粒の一層によって作用砥粒を形成し、作用砥粒間の外周方向の間隔を作用砥粒の粒径以上とした切断ホイールが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ろう付け法により砥粒を基板外周面に固着した従来の切断ホイールにおいては、基板外周面からの砥粒の突き出し高さが均一となるようにツルーイングなどにより調整されている。突き出し高さを均一にするのは、切断時の負荷を均一に分散させるためと、振動を低減させてチッピングを小さくする、という理由からである。ツルーイングによる調整を行わない場合は、突き出し高さが異なる砥粒が存在することになるが、不規則に散在しているため切れ味が不安定になる。
【0006】
しかし、砥粒の突き出し高さが均一であると、切断ホイールの使用に伴って砥粒の摩耗が進行すると、被切断材への食い込みが悪くなるとともに、チップポケットが狭くなって切粉の排出性が悪くなる。特開平10−118937号公報に記載の切断ホイールのようにスリットを設けるのは切粉の排出性を良くするためであるが、この場合でも砥粒の摩耗による被切断材への食い込みの悪さを防ぐことはできない。
【0007】
本発明が解決すべき課題は、ろう付け法によって砥粒を基板に固着した切断ホイールにおいて、砥粒の突き出し高さを意図的に変化させることによって、砥粒の摩耗による切れ味の低下を抑制することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る切断ホイールは、円盤状の基板の外周面および外周部側面に砥粒を一層配列してろう付けした切断ホイールにおいて、基板外周面の砥粒層形成範囲内に平均粒径の異なる砥粒が基板周方向に規則的に配列されて、基板周方向に砥粒の突き出し高さが一定のパターンで異なるように砥粒が固着された切断ホイールである。
【0009】
砥粒として平均粒径の異なる複数種類の砥粒を使用して、基板周方向に砥粒の突き出し高さが異なるようにしたことにより、ホイールの使用によって先ず突き出し高さが最も高い最大粒径の砥粒が最初に摩耗し、次に二番目に粒径の大きい砥粒が切断に作用し、以下順次粒径の小さい砥粒が切断に作用することによって、使用初期の切断能率を維持しながら、ホイールの寿命を延ばすことができる。この際、砥粒の突き出し高さが基板周方向に一定のパターンで異なるように、平均粒径の異なる砥粒を基板周方向に規則的に配列することにより、ホイールの使用期間を通じて基板周方向の切れ味の変動がほとんどなく、安定した切れ味が得られる。
【0010】
ここで、前記砥粒の突き出し高さの差が、最小の平均粒径の20〜100%の範囲内とするのが望ましい。平均粒径が最小の砥粒と最大の砥粒の粒径差が2倍を超えると、最大の粒径の砥粒を保持していたろう材が、最小の粒径の砥粒が作用する前に被切断材に接触して切れ味低下となるので好ましくない。一方、ホイールの寿命延長のためには、少なくとも最小の平均粒径の20%以上の突き出し高さの変化があるのが好ましい。突き出し高さの変化が最小の平均粒径の20%より小さいと従来の均一な突き出し高さのものと大差がないものとなる。
【0011】
さらに詳しくは、基板外周面の砥粒の配列が周方向に一列の場合は、周方向に粒径の大きい順に砥粒を配列する。砥粒の配列が周方向に二列以上の場合は、列内では周方向に粒径の大きい順に砥粒を配列し、隣り合う列とは配列順を揃えるか、または、配列順を砥粒1個分づつずらした配列とする。このような配列とすることにより、粒径の大きい砥粒から順次粒径の小さい砥粒が切断に作用することによって、使用初期の切断能率を維持しながら、ホイールの寿命を延ばすことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1および図2は本発明の第1の実施形態の切断ホイールを説明する図であり、図1の(a)は切断ホイールの正面図、(b)は(a)のA−A線断面図であり、図2は基板周方向にみた一部の拡大図である。図中、砥粒および砥粒の配置は模式的に示している。
【0013】
本実施形態の切断ホイール10は、コンクリートやセメント系建材などの切断用のホイールである。基板1は外径100mm、厚さ1.2mmのスチール製基板である。砥粒2はダイヤモンド砥粒で、それぞれ平均粒径が異なる大砥粒2a、中砥粒2b、小砥粒2cからなる。ろう材3はAg−Cu−Ti系の活性金属入りろうである。
【0014】
基板1の外周部には切粉排出のためのスリット11が形成され、各スリット11の間に砥粒2が配設されている。基板1の外周面には、図3に示すように、砥粒2が1〜3列に基板周方向に間隔をおいて配設され、外周部側面には砥粒2が2列に配設され、ろう材3により基板1に固着されている。
【0015】
つぎに外周面の砥粒2の配列について説明する。本実施形態の切断ホイール10においては、図2の部分拡大図に示すように、ホイール回転方向(図中、矢印で示す)の前部から後部に向けて粒径の大きい順に大砥粒2a、中砥粒2b、小砥粒2cが順次繰り返して配列され、全体として粒径の異なる砥粒2が基板周方向に規則的に配列されて、基板周方向に砥粒2の突き出し高さが一定のパターンで異なるように大砥粒2a、中砥粒2b、小砥粒2cが配列されている。これにより、ホイールの使用によって先ず突き出し高さが最も高い大砥粒2aが最初に摩耗し、次に二番目の高さの中砥粒2bが切断に作用し、次いで三番目の高さの小砥粒2cが切断に作用することによって、所定の切断能率を維持しながら、ホイールの寿命を延ばすことができる。
【0016】
図3は基板周方向の砥粒の配列例を示す部分拡大図である。図中、砥粒および砥粒の配置は模式的に示している。
【0017】
図3の(a)は、基板厚さの薄い切断ホイールの例で、砥粒2は基板周方向に一列のみ配設している。その配列形態は、ホイール回転方向の前部から後部に向けて粒径の大きい順に大砥粒2a、中砥粒2b、小砥粒2cを繰り返し配列している。
【0018】
図3の(b)は、砥粒2を基板周方向に二列配設した例で、その配列形態は、列内では周方向に粒径の大きい順に大砥粒2a、中砥粒2b、小砥粒2cを配列し、隣り合う列とは配列順を砥粒1個分ずつずらした配列としている。
【0019】
図3の(c)は、図3(b)の二列配設にさらに砥粒1個分ずつずらした三列目を配設した例で、図3の(d)は、三列目の配列を一列目と同じとして配設した例である。
【0020】
図3の(a)〜(d)のいずれの場合も、ホイール回転方向の前部から後部に向けて粒径の大きい順に大砥粒2a、中砥粒2b、小砥粒2cが繰り返し配列され、全体として粒径の異なる砥粒2が基板周方向に規則的に配列されて、基板周方向に砥粒の突き出し高さが順に低くなるように大砥粒2a、中砥粒2b、小砥粒2cが配列されている。これにより、ホイールの使用によって突き出し高さの高い順に摩耗し、順次突き出し高さの低い砥粒が切断に作用することによって、所定の切断能率を維持しながら、ホイールの寿命を延ばすことができる。
【0021】
本実施形態の切断ホイール10の製造手順はつぎの通りである。
・基板1として外径100mm、厚さ1.2mmのスチール製基板を準備する。・大砥粒2aとして平均粒径約600μmのダイヤモンド砥粒を、中砥粒2bとして平均粒径約450μmのダイヤモンド砥粒を、小砥粒2cとして平均粒径約350μmのダイヤモンド砥粒をそれぞれ準備する。
・基板外周面の大砥粒2a、中砥粒2b、小砥粒2cの配列に応じた大きさの孔を所定のかたちに配列したスクリーンを用いて、基板1の外周面に有機接着剤を塗布する。
・この有機接着剤の上に大砥粒2a、中砥粒2b、小砥粒2cを配置する。この状態で大砥粒2a、中砥粒2b、小砥粒2cは基板外周面に図3の(a)〜(d)のいずれかに示すかたちに配列される。
・基板外周部側面についても同様な手順により砥粒2を配列する。
・これを乾燥炉中で120℃、1時間乾燥させ、砥粒2を仮固定する。
・三次元移動が可能なアプリケータ(吐出機)を用いて、接着部とろう材とバインダーの混合物を砥粒粒径の約1/2の高さに塗布する。
・これを非酸化性雰囲気中で1000℃、1時間加熱し、砥粒2を基板1に本固定する。
【0022】
〔試験例〕
図3の(c)に示した砥粒配列の切断ホイール(発明品1)と図3の(d)に示した砥粒配列の切断ホイール(発明品2)、および、発明品1,2の基板と同じ形状で同じ数の均一な粒径の砥粒を配列した切断ホイール(比較品)を製造して切断加工試験を行った。
【0023】
〔試験条件〕
切断機械 :日立製丸のこ C4YA1
機械回転数:13000min−1
被切断材 :押し出し成形セメント板
切り込み量:15mm/pass
切断方式 :乾式切断
送り速度 :負荷電流8Aになるよう調節
【0024】
表1に試験結果を示す。
【表1】
Figure 0003732150
【0025】
発明品1,2の切断速度およびホイール寿命は、比較品の切断速度およびホイール寿命を100としたときの指数で示す。同表からわかるように、均一な粒径の砥粒2を配列した比較品の切断ホイールに比べて、発明品1、2の切断ホイールは、切断速度、ホイール寿命とも1.3〜1.5倍程度向上している。
【0026】
【発明の効果】
基板外周面に配設する砥粒として平均粒径の異なる複数種類の砥粒を使用して、基板周方向に砥粒の突き出し高さが異なるようにしたことにより、粒径の大きい砥粒から順次粒径の小さい砥粒が切断に作用することによって、使用初期の切断能率を維持しながら、ホイールの寿命を延ばすことができる。とくに、砥粒の突き出し高さが基板周方向に一定のパターンで異なるように、平均粒径の異なる砥粒を基板周方向に規則的に配列することにより、ホイールの使用期間を通じて基板周方向の切れ味の変動がほとんどなく、安定した切れ味が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1の(a)は切断ホイールの正面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】 図1の切断ホイールの基板周方向にみた一部の拡大図である。
【図3】 基板周方向の砥粒の配列例を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
1 基板
2 砥粒
2a 大砥粒
2b 中砥粒
2c 小砥粒
3 ろう材
10 切断ホイール
11 スリット

Claims (2)

  1. 円盤状の基板の外周面および外周部側面に砥粒を一層配列してろう付けした切断ホイールにおいて、基板外周面の砥粒層形成範囲内に、ホイール回転方向の前部から後部に向けて粒径の大きい順に大砥粒、中砥粒、小砥粒が順次繰り返して配列され、砥粒を基板周方向に複数列配設したときには、隣り合う列とは配列順を砥粒1個分ずつずらした配列とし、基板周方向に砥粒の突き出し高さが一定のパターンで異なるように砥粒が固着された切断ホイール。
  2. 前記砥粒の突き出し高さの差が、最小の平均粒径の20〜100%の範囲内である請求項1記載の切断ホイール。
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