JP3731117B2 - レーザ発振器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、レーザビームの出射位置及び出射方向であるポインティングの安定化を図ったレーザ発振器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、レーザ発振器に関連する先行技術文献としては、例えば、特公昭63−64073号公報及び特公昭64−832号公報にて開示されたものが知られている。
図16は、特公昭63−64073号公報にて開示されたレーザ発振器の構成を示す斜視図である。
図16において、10はレーザ媒質ガスを1/10気圧程度の低真空状態で封入する筐体、4a,4bは一対の放電電極、3はレーザ媒質ガス流路を形成するダクト、8は熱交換器、6はブロワ、32は部分反射鏡、26は全反射鏡、5aは部分反射鏡32を含む一方のレーザビーム反射手段、5bは全反射鏡30を含む他方のレーザビーム反射手段、2はレーザビームである。
また、図17は、特公昭64−832号公報にて開示されたレーザ発振器の構成を示す正面図、図18は図17の上面図、図19は図17の右側面図、図20は図19のC−C線に沿う拡大詳細断面図、図21は図19のA−A線に沿う拡大詳細断面図、図22は図19のB−B線に沿う拡大詳細断面図である。
図17〜図22において、24a,24b,24cは支持棒、20a,20bは基板、7は金属製のベローズ、22は筐体10に配設された固定座、9はナット、12はブラケット、13はハウジング、14は球面軸受、15はフランジ、16,18はボルト、11は転がり軸受、17はカラー、34,36は筐体10に設けた熱交換器8の冷却用の冷却媒質が通る熱交換器用入口ポート及び熱交換器用出口ポート、35,37は熱交換器用入口ポート34及び熱交換器用出口ポート36から熱交換器8に至る配管、40,42は筐体10に設けた一対の放電電極4a,4bの冷却用の冷却媒質が通る放電電極用入口ポート及び放電電極用出口ポート、41,43は放電電極用入口ポート40及び放電電極用出口ポート42から一対の放電電極4a,4bに至る配管、45は一対の放電電極4a,4bをつなぐ配管、22は筐体10を他の構造物に固定する固定座である。
【0003】
次に、その動作について説明する。
筐体10には、放電を発生してレーザ媒質ガスを励起するための一対の放電電極4a,4bと、レーザ媒質ガスを循環させるブロワ6と、レーザ媒質ガスを冷却する熱交換器8が配設されている。レーザ媒質ガスは一対の放電電極4a,4bの間を通過し、レーザ発振可能な状態に励起される。放電によって高温になったレーザ媒質ガスはダクト3を通って熱交換器8内で冷却され、ブロワ6を通って矢印の方向に循環する。筐体10の長手方向に配置されたレーザビーム反射手段5aに含まれる部分反射鏡32及びレーザビーム反射手段5bに含まれる全反射鏡26で構成される共振器ミラーにより作られる光路は、放電によりレーザ媒質ガスが励起状態となった励起領域を通過する。
【0004】
全反射鏡26で反射されたレーザビームは部分反射鏡32に到達する。部分反射鏡32に到達したレーザビームの一部はそのまま外部に出力され、残りは逆のルートを通って全反射鏡26まで戻り、上記のプロセスが繰返される。レーザビームは上記のようにして励起領域を反復通過する間に増幅され、部分反射鏡32から外部に出力される。レーザビーム反射手段5a及びレーザビーム反射手段5bは、3本の支持棒24a,24b,24cにより保持された一対の基板20a及び20bに取付けられている。ベローズ7は筐体10とその左右に位置する基板20b,20aとに外力を伝えないようにそれぞれ接続するものである。
【0005】
レーザ発振器の動作の際には、図示しない冷却装置等から供給される水等の冷却媒質が必要である。筐体10に設けられた入口ポート34から筐体10内に導入された冷却媒質は、配管35を通って熱交換器8に供給され、配管37を通って筐体10に設けられた出口ポート36から再び筐体10外へと排出される。筐体10に設けられた入口ポート40から筐体10内に導入された冷却媒質は配管41を通って下側の放電電極4bに入り、配管45を通って上側の放電電極4aに入った後、配管43を通って筐体10に設けられた出口ポート42から再び筐体10外へと排出される。筐体10はその下部に設けられた4箇所の固定座22を利用して、例えば、基礎工事のなされた床やレーザ発振器へ電力供給する電源盤のフレーム等の比較的強固な構造物に固定される。
【0006】
次に、筐体10と基板20b,20aの支持構成について説明する。基板20aは3本の支持棒24a,24b,24cにて支持されているが、それぞれの支持棒24a,24b,24cの筐体10への関連構造が異なった構成となっている。即ち、図21に示すように、支持棒24aは筐体10に取付けたハウジング13内の球面軸受14により支持され、支持棒24aの軸端部には基板20aがナット9により固着されている。また、図22に示すように、支持棒24bには転がり軸受11を取付け、その転がり軸受11の下面と平面上に線接触するブラケット12は筐体10にボルト18で固定されている。カラー17は、ナット9により支持棒24bを基板20aに締付けるときに転がり軸受11の位置を決定する役目をする。また、図20に示すように、支持棒24cは筐体10とは無関係となるように基板20aに対してナット9により固定されている。3本の支持棒24a,24b,24cは例えば、インバーのような線膨張係数の小さな材質で作られ、温度変化があっても基板20aと基板20bとの平行性が損なわれ難いようになっている。
【0007】
レーザ発振器を動作させるには、まず、準備動作としてブロワ6を運転開始すると共に、一般には室温より低い温度(例えば、10℃)の冷却媒質を熱交換器8と放電電極4a,4bに供給し、放電電極4a,4bの間にはいる入口部においてレーザ媒質ガスの温度と流速を所定の状態とし、レーザ媒質ガスを放電により効率よく励起できる状態にする。この冷却媒質が供給されておればブロワ6が所定の回転数になるとレーザ媒質ガスは高速で循環しているため、レーザ媒質ガスの温度は所定の温度及び流速となる。準備動作に必要な時間はブロワ6の回転数が所定の回転数に立上がる時間に相当する。レーザ発振器が準備完了後、レーザ発振可能な状態となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、熱交換器用及び放電電極用の冷却媒質の入口ポート34,40または出口ポート36,42において冷却媒質が流通する筐体10は冷却媒質により室温状態から徐々に冷却媒質の温度に近くなるように温度変動していく。この温度変動の時定数は筐体10の熱容量により決まり、レーザ発振器の立上げ時間よりも長時間であり、レーザ発振器が準備完了の状態になった後も徐々に変化していく。室温より冷却媒質の温度が低い場合においては、図23に示す筐体10の上面図に示した細かい斜線部の部分が入口ポート34,40または出口ポート36,42からの熱伝導により部分的に冷却される。すると、図23に示すように、線膨張により上側(ダクト3側)の部分だけが収縮し、筐体10に歪が生じる。結果的に、筐体10に支持される基板20a,20bの位置が変化し、レーザ発振した場合におけるレーザビームのポインティングが変動してしまう。この現象は、レーザ発振器の立上げ時と立下げ時に発生する時定数の比較的長いもので、筐体10の歪量は冷却媒質と周囲温度との温度差により決まるものである。以下、この現象を第1のモードの筐体歪と称する。
【0009】
また、レーザ発振器を動作させると一対の放電電極4a,4bを通過した高温のレーザ媒質ガスがダクト3内を流れるために、ダクト3が高温となり、高温となったダクト3からの熱輻射によりダクト3に近接した筐体10が入熱を受け、ダクト3に面した筐体10の温度が徐々に上昇して線膨張により膨張する。このため、図24の筐体10の上面図に示すように筐体10に歪が生じる。結果的には、筐体10に支持される基板20a,20bの位置が徐々に変化し、レーザ発振した場合におけるレーザビームのポインティングが変動してしまう。この現象は、レーザ発振器の動作のON・OFFにより発生する時定数の比較的長いもので、筐体10の歪量は放電入力の大きさにより決まるものである。以下、この現象を第2のモードの筐体歪と称する。
【0010】
従来装置では、3本の支持棒の支持方法が両側の基板20a,20b共に同じであり、従来の支持方法では筐体10と3本の支持棒24a,24b,24cに固定された2枚の基板20a,20bとの相対位置関係を機械的に決める要素がなかった。即ち、支持棒24aは、図21に示すように、球面軸受14の内面をスライド可能であり、支持棒24bは、図22に示すように、カラー17により機械的に位置の定められた転がり軸受11とブラケット12の間でスライド可能であるからである。したがって、輸送時等に大きな加速度が加わると上記スライド部がスライドしてしまい、支持棒24aの段付部とハウジング13や支持棒24bの段付部とブラケット12が接触する状態が生じ、接触前は互いに無関係であった筐体10と基板20aが上述の接触により筐体10からの歪力を直接受けるようになる。このため、基板20a,20bは、筐体10の大きな変化の影響をまともに受けるようになり、レーザビームのポインティングの再現性の欠如の要因となっていた。
【0011】
また、前述のような第1のモードの筐体歪または第2のモードの筐体歪が発生すると、支持棒24aを支持する筐体10に固定された2つの球面軸受14間の距離が筐体10の温度変化による線膨張(または収縮)により相対的に変化するため、2つの球面軸受14a,14bのどちらかの接触面で支持棒24aが滑りを生じる必要がある。ここで、基板20a側が滑るか基板20b側が滑るかはその時の摩擦係数の少ない方が滑るので不確である。しかも、筐体歪が元に戻ったときに筐体歪の発生時に滑った側が同じだけ滑りを生じる保証がなく、レーザ発振器の立上げや立下げ、レーザ動作のON・OFFを繰返すことによる筐体10と基板20a,20bとの相対位置の再現性がないため、いつかは支持棒24aの段付部とハウジング13や支持棒24bの段付部とブラケット12が接触してしまう可能性があり、接触によるレーザビームのポインティングの再現性の欠如の要因となっていた。
【0012】
また、従来、共振器ミラー同士の平行性が保たれれば、レーザ動作時のレーザビームの特性は変わらないと考えられていたが、相対する共振器ミラー、即ち、2枚の基板20a,20bと筐体10との相対位置関係がずれていくとレーザビームのビームモードや集光性能といった特性が若干ながら変化することが分かった。輸送等による振動や、第1のモードの筐体歪または第2のモードの筐体歪の発生・除去の繰返しにより、通常、鉄等の金属で構成された筐体10と低線膨張材質で構成された支持棒24a,24b,24cとの長さの変化がその都度生じるが、元の状態に戻った時に必ずしも基板20a,20bと筐体10との相対位置が元通りになるとは限らず、経時的に徐々に相対位置のずれが大きくなってしまうという事態が生じる場合がある。このため、レーザビーム特性の経時変化が生じることがあり、例えば、レーザ発振器を高精度なレーザ加工に使用する場合等に徐々に加工結果が変化してしまう不具合が発生していた。
【0013】
従来のレーザ発振器は、上述したような構成からなり、レーザ発振器の立上げ時や運転時において、筐体10の熱歪によりレーザビームのポインティング安定性が低下するという不具合があった。
【0014】
そこで、この発明は、かかる不具合を解決するためになされたもので、筐体の熱歪の影響を低減し、レーザビームのポインティングの安定したレーザ発振器の提供を課題としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1にかかるレーザ発振器は、レーザ媒質ガスを封入する筐体と、段差部を有する複数の支持棒と、前記筐体に支持され前記支持棒が貫通する一対の軸受を有した支持部材と、前記支持棒の端部に固着された一対の対向する基板と、前記基板に取り付けられた複数のレーザ反射ミラーを配設するレーザビーム反射手段とを備えたレーザ発振器において、前記一対の軸受のうち一方の軸受と前記基板との間に挿入され、前記軸受を前記支持棒の段差部に常時当接するように付勢することにより前記軸受と前記支持棒との相対位置関係を機械的に決定し、前記軸受の温度変化による長さの変化を吸収する弾性部材を具備するものである。
【0016】
請求項2にかかるレーザ発振器は、レーザ媒質ガスを封入する筐体と、前記筐体に位置決めされ前記支持棒が貫通する一対の球面軸受を有した支持部材と、前記支持棒の端部に固着された一対の対向する基板と、前記基板に取り付けられた複数のレーザ反射ミラーを配設するレーザビーム反射手段とを備えたレーザ発振器において、前記一対の球面軸受のうち一方の球面軸受と前記基板との間に挿入され、前記球面軸受を前記支持棒の段差部に常時当接するように付勢することにより前記球面軸受と前記支持棒との相対位置関係を機械的に決定し、前記球面軸受の温度変化による長さの変化を吸収する弾性部材とを具備するものである。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
参考実施例1.
図1は第一参考実施例にかかるレーザ発振器の構成を示す正面図、図2は図1の上面図である。なお、レーザ発振器の全体構成は図16に示す従来装置と同様であり、その説明を省略する。また、図1及び図2では、前述の図17及び図18に示す従来装置と同様の構成または相当部分からなるものについては同一符号及び同一記号を付してその詳細な説明を省略し、以下にその相違点について述べる。
【0018】
図1及び図2において、筐体10に設けられた熱交換器用入口ポート34から筐体10内に導入された冷却媒質は配管35を通って熱交換器8に供給され、配管37を通って上面側からみて熱交換器用入口ポート34と放電電極4a,4bに平行な筐体10の中心線に対してほぼ線対称の位置に設けられた熱交換器用出口ポート36から再び筐体10外へと排出される。
【0019】
次に、その動作について説明する。
レーザ発振器の準備動作において、熱交換器用入口ポート34及び熱交換器用出口ポート36を介して冷却媒質が流通する筐体10は、従来装置と同様に、冷却媒質により室温状態から徐々に冷却媒質の温度に近くなるように温度変動していく。室温より冷却媒質の温度が低い場合において、図3の上面図に斜線で示す部分が熱交換器用入口ポート34及び熱交換器用出口ポート36からの熱伝導により部分的に冷却されるが、冷却媒質の流量は大きいので出入口温度はほとんど同一温度であり、図3の上側(支持棒24a,24b側)部分と下側(支持棒24c側)部分で同じように線膨張による収縮が発生し、筐体10に曲げを生じさせるような歪が発生しない。つまり、第1のモードの筐体歪の発生がなく、結果的に、筐体10に支持される基板20a,20bの位置が変化し難くなり、レーザ発振した場合におけるレーザビームのポインティングが安定する。
【0020】
このように、第一参考実施例のレーザ発振器は、レーザ媒質ガスを封入する筐体10と、筐体10内で対向して配設され、前記レーザ媒質ガスを用いてレーザビームを発振させる一対の放電電極4a,4bと、前記レーザ媒質ガスを筐体10内で循環するブロワ6にて達成される循環手段と、筐体10内に配設され、放電電極4a,4bで発生する放電にて高温となった前記レーザ媒質ガスを冷却する熱交換器8と、筐体10に配設され、熱交換器8に冷却媒質を供給・排出する熱交換器用入口ポート34及び熱交換器用出口ポート36とを具備し、熱交換器用入口ポート34と熱交換器用出口ポート36との互いの位置関係を筐体10への取付面に対する垂直方向からみて放電電極4a,4bに平行な筐体10の中心線に対してほぼ線対称とする実施例とすることができる。
【0021】
したがって、筐体10には熱交換器用入口ポート34及び熱交換器用出口ポート36が互いの位置関係を筐体10への取付面に対する垂直方向からみて放電電極4a,4bに平行な筐体10の中心線に対してほぼ線対称となるように配設されており、筐体10はレーザビーム方向に左右同条件で冷却されることとなる。
故に、熱交換器用入口ポート34と熱交換器用出口ポート36とにより冷却される筐体10は熱歪による曲がりを生じ難く、第1のモードの筐体歪の量を低減できる。
【0022】
また、第一参考実施例のレーザ発振器は、熱交換器用入口ポート34と熱交換器用出口ポート36との互いの位置関係は、筐体10への取付面に対する垂直方向からみて放電電極4a,4bに平行な筐体10の中心線に対してほぼ線対称でコーナ部とする実施例とすることができる。
【0023】
したがって、筐体10には熱交換器用入口ポート34及び熱交換器用出口ポート36が互いの位置関係を筐体10への取付面に対する垂直方向からみて放電電極4a,4bに平行な筐体10の中心線に対してほぼ線対称でコーナ部となるように配設されており、筐体10はレーザビーム方向に左右同条件で冷却されることとなる。
故に、熱交換器用入口ポート34と熱交換器用出口ポート36とにより冷却される筐体10は熱歪による曲がりを生じ難く、第1のモードの筐体歪の量を低減できる。また、筐体10内部における熱交換器8等の配置の自由度が向上する。
【0024】
参考実施例2.
図4は第二参考実施例にかかるレーザ発振器の構成を示す正面図、図5は図4の上面図である。なお、レーザ発振器の全体構成は図16に示す従来装置と同様であり、その説明を省略する。また、図4及び図5では、前述の図17及び図18に示す従来装置と同様の構成または相当部分からなるものについては同一符号及び同一記号を付してその詳細な説明を省略し、以下にその相違点について述べる。
【0025】
図4及び図5において、筐体10内には上側からみて筐体10の中心に対してほぼ点対称の位置に2個の熱交換器8a,8bと、それら2個の熱交換器8a,8bに取付けられたダクト3a,3bが設けられている。各熱交換器8a,8bに対して設けられた熱交換器用入口ポート34a,34bから筐体10内に導入された冷却媒質はそれぞれの配管35a,35bを通って熱交換器8a,8bに供給され、それぞれの配管37a,37bを通ってそれぞれの熱交換器8a,8bに対して設けられた熱交換器用出口ポート36a,36bから再び筐体10外へと排出される。
【0026】
次に、その動作について説明する。
レーザ発振器を動作させると一対の放電電極4a,4bを通過した高温のレーザ媒質ガスがダクト3a,3b内を流れるために、従来装置と同様に、ダクト3a,3bが高温となり、高温となったダクトからの熱輻射によりダクト3a,3bに近接した筐体10が入熱を受け、ダクト3a,3bに面した筐体10の温度が徐々に上昇して線膨張により膨張する。また、上側からみて筐体10の中心に対してほぼ点対称の位置に設けられた2個の熱交換器8a,8bに取付けられたダクト3a,3bも上側からみて筐体10の中心に対してほぼ点対称の位置に設けられている。このため、図6の上面図に波線で示す筐体10部分がダクト3a,3bからの熱輻射により熱されるが、上側部分と下側部分で同じように線膨張による膨張が発生し、筐体10に曲げを生じさせるような歪の発生が減少する。つまり、第2のモードの筐体歪の低減が図れ、結果的に、筐体10に支持される基板20a,20bの位置が変化し難くなり、レーザ発振した場合におけるレーザビームのポインティングが安定する。
【0027】
このように、第二参考実施例のレーザ発振器は、レーザ媒質ガスを封入する筐体10と、筐体10内で対向して配設され、前記レーザ媒質ガスを用いてレーザビームを発振させる一対の放電電極4a,4bと、前記レーザ媒質ガスを筐体10内で循環するブロワ6a,6bにて達成される循環手段と、筐体10内に配設され、放電電極4a,4bで発生する放電にて高温となった前記レーザ媒質ガスを冷却する複数の熱交換器8a,8bとを具備し、複数の熱交換器8a,8bの互いの位置関係を筐体10への取付面に対する垂直方向からみて筐体10の中心に対してほぼ点対称とする実施例とすることができる。
【0028】
したがって、筐体10には複数の熱交換器8a,8bが互いの位置関係を筐体10への取付面に対する垂直方向からみて筐体10の中心に対してほぼ点対称となるように配設されており、筐体10はレーザビーム方向に左右同条件で冷却されることとなる。
故に、複数の熱交換器8a,8bにより輻射熱を受ける筐体10は熱歪による曲がりを生じ難く、第2のモードの筐体歪の量を低減できる。
【0029】
また、第二参考実施例のレーザ発振器は、複数の熱交換器8a,8bの互いの位置関係は、筐体10への取付面に対する垂直方向からみて筐体10の中心に対してほぼ点対称で筐体10内の前記レーザ媒質ガスの循環を妨げない位置とする実施例とすることができる。
【0030】
したがって、筐体10には複数の熱交換器8a,8bが互いの位置関係を筐体10への取付面に対する垂直方向からみて筐体10の中心に対してほぼ点対称で筐体10内のレーザ媒質ガスの循環を妨げない位置となるように配設されており、筐体10はレーザビーム方向に左右同条件で冷却されることとなる。
故に、複数の熱交換器8a,8bにより輻射熱を受ける筐体10は熱歪による曲がりを生じ難く、第2のモードの筐体歪の量を低減できる。また、筐体10内を循環されるレーザ媒質ガスが熱交換器8a,8bで効率良く冷却できる。
【0031】
参考実施例3.
図1は第三参考実施例にかかるレーザ発振器の構成を示す正面図、図2は図1の上面図である。なお、レーザ発振器の全体構成は図16に示す従来装置と同様であり、その説明を省略する。また、図1及び図2では、前述の図17及び図18に示す従来装置と同様の構成または相当部分からなるものについては同一符号及び同一記号を付してその詳細な説明を省略し、以下にその相違点について述べる。
【0032】
図1及び図2において、筐体10に設けられた放電電極用入口ポート40から筐体10内に導入された冷却媒質は配管41を通って上側の放電電極4aに入り、配管45を通って下側の放電電極4bに入ったのち、配管43を通って上面側からみて放電電極用入口ポート40と放電電極4a,4bに平行な筐体10の中心線に対してほぼ線対称の位置に設けられた放電電極用出口ポート42から再び筐体10外へと排出される。
【0033】
次に、その動作について説明する。
レーザ発振器の準備動作において、放電電極用入口ポート40及び放電電極用出口ポート42を介して冷却媒質が流通する筐体10は、従来装置と同様に、冷却媒質により室温状態から徐々に冷却媒質の温度に近くなるように温度変動していく。室温より冷却媒質の温度が低い場合において、図3の上面図に斜線で示す部分が放電電極用入口ポート40及び放電電極用出口ポート42からの熱伝導により部分的に冷却されるが、冷却媒質の流量は大きいので出入口温度はほとんど同一温度であり、図3の上側(ダクト3側)部分と下側(ブロワ6側)部分で同じように線膨張による収縮が発生し、筐体10に曲げを生じさせるような歪が発生しない。つまり、第1のモードの筐体歪の発生がなく、結果的に、筐体10に支持される基板20a,20bの位置が変化し難くなり、レーザ発振した場合におけるレーザビームのポインティングが安定する。
【0034】
このように、第三参考実施例のレーザ発振器は、レーザ媒質ガスを封入する筐体10と、筐体10内で対向して配設され、前記レーザ媒質ガスを用いてレーザビームを発振させる一対の放電電極4a,4bと、前記レーザ媒質ガスを筐体10内で循環するブロワ6にて達成される循環手段と、筐体10内に配設され、放電電極4a,4bで発生する放電にて高温となった放電電極4a,4bを冷却する冷却媒質を供給・排出する放電電極用入口ポート40及び放電電極用出口ポート42とを具備し、放電電極用入口ポート40と放電電極用出口ポート42との互いの位置関係を筐体10への取付面に対する垂直方向からみて放電電極4a,4bに平行な筐体10の中心線に対してほぼ線対称とする実施例とすることができる。
【0035】
したがって、筐体10には放電電極用入口ポート40及び放電電極用出口ポート42が互いの位置関係を筐体10への取付面に対する垂直方向からみて放電電極4a,4bに平行な筐体10の中心線に対してほぼ線対称となるように配設されており、筐体10はレーザビーム方向に左右同条件で冷却されることとなる。
故に、放電電極用入口ポート40と放電電極用出口ポート42とにより冷却される筐体10は熱歪による曲がりを生じ難く、第1のモードの筐体歪の量を低減できる。
【0036】
また、第三参考実施例のレーザ発振器は、放電電極用入口ポート40と放電電極用出口ポート42との互いの位置関係は、筐体10への取付面に対する垂直方向からみて放電電極4a,4bに平行な筐体10の中心線に対してほぼ線対称でコーナ部とする実施例とするとこができる。
【0037】
したがって、筐体10には放電電極用入口ポート40及び放電電極用出口ポート42が互いの位置関係を筐体10への取付面に対する垂直方向からみて放電電極4a,4bに平行な筐体10の中心線に対してほぼ線対称でコーナ部となるように配設されており、筐体10はレーザビーム方向に左右同条件で冷却されることとなる。
故に、放電電極用入口ポート40と放電電極用出口ポート42とにより冷却される筐体10は熱歪による曲がりを生じ難く、第1のモードの筐体歪の量を低減できる。また、筐体10内部における熱交換器8等の配置の自由度が向上する。
【0038】
参考実施例4.
図7は第四参考実施例にかかるレーザ発振器の筐体に配設される熱交換器用入口ポートの構成を示す拡大詳細断面図である。なお、レーザ発振器の全体構成は図16に示す従来装置と同様であり、その説明を省略する。また、図7では、上述の第一参考実施例〜第三参考実施例と同様の構成または相当部分からなるものについては同一符号及び同一記号を付してその詳細な説明を省略する。
【0039】
図7において、34は筐体10に設けられた熱交換器用入口ポート、35は熱交換器8に冷却媒質を供給する配管、50は冷却媒質が流通する流路形成部材である配管部品、51は熱絶縁性部材であるOリング、52,53は同じく熱絶縁性部材である絶縁ワッシャ、54はネジ、55は配管部品50に冷却媒質を筐体10外から導入する配管である。なお、筐体10における熱交換器用出口ポート36も同様の構成である。この構成において、Oリング51と配管部品50は真空状態である筐体10内のレーザ媒質ガスに接することとなり材質の選定には注意を要する。通常、Oリング材質として使用されるニトリルゴムまた、構造材として使用されるナイロン及びポリカーボネート等のプラスチック材料では真空に曝される部分が劣化しひび割れが発生したりする。このため、本実施例で用いるOリング51はフッ素ゴム系の材質により構成され、配管部品50は金属またはPVdF等のフッ素系樹脂やセラミックスで構成されている。絶縁ワッシャ52,53は真空に曝されないので例えば、ポリカーボネート等のプラスチック材料で構成すればよい。
【0040】
次に、その動作について説明する。
本実施例の構成では、冷却媒質と筐体10の熱交換器用入口ポート34はOリング51と絶縁ワッシャ52,53とにより熱絶縁されているため、冷却媒質の温度が変化しても筐体10に熱が伝わり難い構造となっている。また、配管部品50を熱伝導性の低いフッ素系樹脂やセラミックスで構成すれば、金属で構成するよりも効果があり、また、絶縁ワッシャ52,53を省略することができる。筐体10における熱交換器用出口ポート36も同様の構成であり、冷却媒質の温度変化の影響を筐体10が受けない構造のため、レーザ発振した場合におけるレーザビームのポインティングが安定する。
【0041】
本実施例においては、筐体10に配設される熱交換器用入口ポート34及び熱交換器用出口ポート36の熱絶縁構造として、配管部品50はその円筒面部にOリング51を挿入する場合について示したが、この他、図8に示すように、フランジ固定式にしてもよい。このとき、ネジ56に熱絶縁材質であるポリカーボネート等のプラスチック材料を使用したり、配管部品50を熱伝導性の低いフッ素系樹脂やセラミックスで構成すれば絶縁ワッシャ52を省略してもよい。
【0042】
このように、第四参考実施例のレーザ発振器は、レーザ媒質ガスを封入する筐体10と、筐体10内で対向して配設され、前記レーザ媒質ガスを用いてレーザビームを発振させる一対の放電電極4a,4bと、前記レーザ媒質ガスを前記筐体10内で循環するブロワ6にて達成される循環手段と、筐体10内に配設され、放電電極4a,4bで発生する放電にて高温となった前記レーザ媒質ガスを冷却する熱交換器8と、筐体10に配設され、熱交換器8に冷却媒質を供給・排出する熱交換器用入口ポート34及び熱交換器用出口ポート36と、熱交換器用入口ポート34及び熱交換器用出口ポート36にOリング51及び絶縁ワッシャ52,53からなる熱絶縁性部材を介して固定され、前記冷却媒質を流通する配管部品50からなる流路形成部材とを具備する実施例とすることができる。
【0043】
したがって、熱交換器用入口ポート34と熱交換器用出口ポート36とはOリング51及び絶縁ワッシャ52,53からなる熱絶縁性部材を介し、冷却媒質を流通する配管部品50からなる流路形成部材にて筐体10に固定されることとなる。
故に、熱交換器用入口ポート34及び熱交換器用出口ポート36が配設されていても筐体10は温度的に安定し、第1のモードの筐体歪の量を低減できる。
【0044】
ところで、上述の第四参考実施例では、筐体10に配設される熱交換器用入口ポート34及び熱交換器用出口ポート36に熱絶縁構造を適用したが、変形例として、同様の熱絶縁構造を筐体10に配設される放電電極用入口ポート40及び放電電極用出口ポート42に対しても適用することができる。
【0045】
このように、第四参考実施例の変形例のレーザ発振器は、レーザ媒質ガスを封入する筐体10と、筐体10内で対向して配設され、前記レーザ媒質ガスを用いてレーザビームを発振させる一対の放電電極4a,4bと、前記レーザ媒質ガスを前記筐体10内で循環するブロワ6にて達成される循環手段と、筐体10に配設され、放電電極4a,4bで発生する放電にて高温となった放電電極4a,4bを冷却する冷却媒質を供給・排出する放電電極用入口ポート40及び放電電極用出口ポート42と、放電電極用入口ポート40及び放電電極用出口ポート42にOリング51及び絶縁ワッシャ52,53からなる熱絶縁性部材を介して固定され、前記冷却媒質を流通する配管部品50からなる流路形成部材とを具備する実施例とすることができる。
【0046】
したがって、放電電極用入口ポート40と放電電極用出口ポート42とはOリング51及び絶縁ワッシャ52,53からなる熱絶縁性部材を介し、冷却媒質を流通する配管部品50からなる流路形成部材にて筐体10に固定されることとなる。
故に、放電電極用入口ポート40及び放電電極用出口ポート42が配設されていても筐体10は温度的に安定し、第1のモードの筐体歪の量を低減できる。
【0047】
また、本実施例のレーザ発振器は、冷却媒質を流通する配管部品50からなる流路形成部材が、少なくとも筐体10に封入された前記レーザ媒質ガスに曝される部分を前記レーザ媒質ガスに侵されない材料で形成する実施例とすることができる。
【0048】
したがって、冷却媒質を流通する配管部品50はレーザ媒質ガスに侵されて劣化またはひび割れすることがない。
故に、配管部品50から筐体10内のレーザ媒質ガスが外部に洩れることはない。
【0049】
更に、本実施例のレーザ発振器は、冷却媒質を流通する配管部品50からなる流路形成部材の形成材料が、金属、フッ素系樹脂またはセラミックスとする実施例とすることができる。このものにおいても、上述と同様の作用・効果が期待できる。
【0050】
参考実施例5.
図9は第五参考実施例にかかるレーザ発振器を示す正面図、図10は図9の上面図である。なお、レーザ発振器の全体構成は図16に示す従来装置と同様であり、その説明を省略する。また、図9及び図10では、固定座22の位置が異なること以外は前述の図17及び図18に示す従来装置と同一であり、同様の構成または相当部分からなるものについては同一符号及び同一記号を付してその詳細な説明を省略し、以下にその相違点について述べる。
【0051】
本実施例では、固定座22は支持棒24a,24bが筐体10に支持されている箇所のほぼ真下の位置に設けられている。従来装置で述べたように、筐体10が熱歪により収縮・膨張し筐体10に曲げを生じるような応力がかかっても、固定座22は堅固な構造物に固定されているため位置が変化し難い。したがって、この構成によれば、例えば、図11のようにレーザ発振時においてダクト3側の温度が高くなっても支持棒24a,24b,24cに支持される位置の変化量を小さくでき、第2のモードの筐体歪が発生してもレーザ発振した場合におけるレーザビームのポインティングが安定する。また、第1のモードの筐体歪に対しても同様の効果がある。
【0052】
ここで、本実施例における固定座22の優位性を先行技術文献との比較により述べる。
例えば、特開昭57−97689号公報、特開昭61−188987号公報及び特開平2−168683号公報には、本実施例と類似の構造が開示されている。ここで、本実施例と大きく異なるところは、上記先行技術文献のいずれもが本実施例の図9及び図10に示す基板20a,20bまたは支持棒24a,24b,24cを直接レーザ発振器を固定する台座等の堅固な構造物に固定またはスライドさせる構造になっているところである。即ち、これらの先行技術文献では、レーザビームが取出される側の基板(図10の基板20a)を固定し、基板20bに相当する部分をスライドさせたり、特開平2−168683に示されるラダーを使ったりして、構造物の動きを吸収しようとしており、本実施例における筐体10に相当する円筒形状励起部(特開昭61−188987)またはレーザ管(特開平2−168683)またはレーザ発振器(特開昭57−97689)の動きを吸収するような概念はなく目的が異なっている。また、本実施例の基本的構成である球面軸受と転がり軸受とを用いて基板を支持し、筐体のねじれ変形を球面軸受で吸収する概念がない。更に、本実施例では構造物に固定するのは筐体10であり、支持棒24a,24b,24cは筐体10のねじれに対しても自由に動くことができるため、基板20a,20bへの影響がない。これに対して、上記先行技術文献ではレーザビームが取出される基板全体が構造物に固定され、即ち、支持棒の長手方向に垂直な方向にその位置が固定されているため、図10の紙面に平行な面に対して構造物が捩じれて歪む場合には、支持棒がその動きと共に曲がりを生じ、基板の取付角度が変わり、ひいてはレーザビームの出力光軸が動く。更に、類似の先行技術文献として、実開平3−45673号公報があるが、この先行技術文献においても筐体の歪を吸収することについての記述はなく、また、連結棒長手方向(レーザビーム光軸方向)の動きについては考慮されているが、長手方向と垂直方向(図10の紙面方向面内)へのケーシングの保持板の歪に対する考慮はなく基本概念が異なるものである。
【0053】
このように、第五参考実施例のレーザ発振器は、レーザ媒質ガスを封入する筐体10と、複数の支持棒24a,24bに挿嵌される転がり軸受11、ブラケット12、ハウジング13、球面軸受14及びフランジ15からなる支持部材を介して筐体10に支持される一対の対向する基板20a,20bに複数のレーザ反射ミラー32,26を配設するレーザビーム反射手段5a,5bと、前記支持部材のほぼ真下に位置して筐体10に配設され、筐体10を他の構造物に固定する固定座22とを具備する実施例とすることができる。
【0054】
したがって、筐体10の固定座22は、複数のレーザ反射ミラー32,26が配設されるレーザビーム反射手段5a,5bの転がり軸受11、ブラケット12、ハウジング13、球面軸受14及びフランジ15からなる支持部材の真下とされ、この支持部材と固定座22とはほぼ同一垂直平面上に配置されることとなる。
故に、レーザビーム反射手段5a,5bの支持部材のほぼ真下に位置するように設けられた筐体10の固定座22は、第1のモードの筐体歪及び第2のモードの筐体歪が発生したときの支持部材の位置の移動を減少させる。
【0055】
また、本実施例のレーザ発振器は、固定座22を、筐体10の長手方向のほぼ端部に位置して配設する実施例とすることができる。このものにおいても、上述と同様の作用・効果が期待できる。
【0056】
実施例1.
図12は本発明の第一実施例にかかるレーザ発振器の筐体において一対の対向する基板を支持する支持棒と支持部材との構成を示し、図19の従来装置のB−B線に沿う断面図に対応する拡大詳細断面図である。なお、レーザ発振器の全体構成は図16に示す従来装置と同様であり、その説明を省略する。また、図12では、上述の第一参考実施例〜第五参考実施例と同様の構成または相当部分からなるものについては同一符号及び同一記号を付してその詳細な説明を省略する。
図12において、61はバネであり、バネ61は転がり軸受11を支持棒24bの段差部に常時、当接させている。
【0057】
前述したように、図22に示す従来装置におけるカラー17及び転がり軸受11は、低線膨張率のインバー等の材質で作るのであるが、加工性が非常に悪く困難であるため、鉄などの加工容易な一般的な金属材料で作られている。これらの部分が温度変化するとカラー17と転がり軸受11の長さに応じた線膨張が生じ、温度が高くなると支持棒24bよりもカラー17及び転がり軸受11の方が大きく延びる。このために、従来装置では、支持棒24bが転がり軸受11と接している段差部と基板20aとの距離が長くなる方向に変化し、支持棒24bに支持された部分の基板間距離が大きくなり、基板同士の平行性が狂ってしまっていた。
【0058】
これに対して、図12の本実施例装置によれば、カラー17の替わりにバネ61が挿入されており、転がり軸受11はバネ61の付勢力により支持棒24bの段付部に押付けられている。この構造は単なるプリロードではなく、線膨張による長さの変化を吸収するものである。この動作は、温度変化による転がり軸受11の厚み方向の膨張が生じてもそれに見合うだけバネ61の付勢力が大きくなるだけであり、支持棒24bが転がり軸受11と接している段差部と基板20aとの距離は支持棒24bの長さで決まる。支持棒24bは前述したように低線膨張係数の材質で形成されており、基板同士の平行性が精度良く保たれる。したがって、レーザ発振した場合におけるレーザビームのポインティングが安定する。
【0059】
このように、本発明の第一実施例のレーザ発振器は、レーザ媒質ガスを封入する筐体10と、複数の支持棒24a,24bに挿嵌される転がり軸受11、ブラケット12、ハウジング13、球面軸受14及びフランジ15からなる支持部材を介して筐体10に支持される一対の対向する基板20a,20bに複数のレーザ反射ミラーを配設するレーザビーム反射手段5a,5bとを具備し、前記支持部材は一対の転がり軸受11に支持棒24bが貫通されると共に、一対の転がり軸受11のうち一方の転がり軸受11と支持棒24bとの相対位置関係を機械的に決定する実施例とすることができる。
【0060】
したがって、一対の対向する基板20a,20bに複数のレーザ反射ミラーが配設されるレーザビーム反射手段5a,5bを筐体10に支持する複数の支持棒24a,24bに支持部材が挿嵌されている。この支持部材である一対の転がり軸受11のうち筐体10側に位置決めされる一方の転がり軸受11と基板20aに一体的な支持棒24bとの相対位置関係が機械的に決定される。これにより、転がり軸受11と支持棒24bとの相対位置関係を保持させることができる。
故に、支持棒24bと筐体10との干渉がなくなり、筐体10に対する基板20a,20bの位置の再現性が向上し、筐体10の熱歪の影響を基板20a,20bに伝わり難くできる。
【0061】
また、本実施例のレーザ発振器は、転がり軸受11と支持棒24bとの相対位置関係は、転がり軸受11に弾性部材を介して支持棒24bの段差部に押付け機械的に決定する実施例とすることができる。このものにおいても、上述と同様の作用・効果が期待できる。
【0062】
実施例2.
図15は本発明の第二実施例にかかるレーザ発振器の筐体において一対の対向する基板を支持する支持棒と支持部材との構成を示す拡大詳細断面図である。なお、レーザ発振器の全体構成は図16に示す従来装置と同様であり、その説明を省略する。また、図13はレーザ発振器の右側面図、図14はレーザ発振器の左側面図であり、図13のA1−A1線に沿う断面図である図15の基板の支持構造が異なる以外は前述の従来装置と同一である。図15では、上述の第一参考実施例〜第五参考実施例、第二実施例と同様の構成または相当部分からなるものについては同一符号及び同一記号を付してその詳細な説明を省略する。ここで、図14のA2−A2線に沿う断面図は図21に示す従来構造と同一であり、図13及び図14のB−B線に沿う断面図及びC−C線に沿う断面図は図20及び図22に示す従来構造とそれぞれ同一である。以下にその相違点について述べる。
図15において、62はバネであり、バネ62は球面軸受14を支持棒24aの段差部に常時、当接させている。
【0063】
従来装置では、3本の支持棒24a,24b,24cにおけるそれぞれの支持方法が基板20a側と20b側とにおいて同一であったが、本実施例においては支持棒24aの支持方法が基板20a側と20b側とで異なっている。
従来の支持方法では筐体10と3本の支持棒24a,24b,24cを介した一対の基板20a,20bとの相対位置関係を機械的に決定する要素がなかった。即ち、支持棒24aは球面軸受14の内面をスライド可能であり、支持棒24bはカラー17により機械的に位置の定められた転がり軸受11とブラケット12の間でスライド可能であるからである。したがって、輸送時等大きな加速度が加わると上記スライド部がスライドしてしまい、支持棒24aの段付部とハウジング13や支持棒24bの段付部とブラケット12が接触し、接触する前は無関係であったものが接触した部分が筐体10と同じ動きになり、接触する箇所は一定しないので基板20a,20bの動きに再現性が乏しくレーザビームのポインティングの再現性の欠如の要因となっていた。また、従来、共振器ミラー同士の平行性が保たれれば、レーザ動作時のレーザビームの特性は変わらないと考えられていたが、相対する共振器ミラー即ち、一対の基板20a,20bと筐体10の相対位置関係がずれていくとレーザビームのビームモードや集光性能といった特性が変化することが分かった。レーザ動作のON・OFFの繰返しや環境温度の変化により、通常、鉄等の金属で構成された筐体10と低線膨張材質で構成された支持棒24a,24b,24cの長さの変化がその都度生じるが、元の状態に戻った時に必ずしも一対の基板20a,20bと筐体10との相対位置関係が元通りになるとは限らず、経時的に徐々に相対位置ずれが大きくなるという事態を生じて、レーザビームの特性の経時変化が生じることがあった。
【0064】
これに対して、本実施例によれば、ハウジング13及びフランジ15を介して筐体10の左右に挿嵌された球面軸受14のうち基板20a側の球面軸受14のみを基板20aとの相対位置関係を機械的に決定するように構成したので輸送時等の大きな加速度が加わっても一対の基板20a,20bと筐体10との相対位置関係は変化せずレーザビームのポインティングの再現性のよい発振器が得られる。また、レーザ動作のON・OFFの繰返しや環境温度の変化により、通常、鉄等の金属で構成された筐体10と低線膨張材質で構成された支持棒24a,24b,24cの長さの変化がその都度生じても、球面軸受14と一対の基板20a,20bの相対位置関係を機械的に決定するように構成したので元の状態に戻った時に必ず一対の基板20a,20bと筐体10との相対位置関係が元通りになり、経時的なレーザビームの特性の変化が生じない。また、本実施例は第一実施例の支持構造と同様に、温度変化による球面軸受14の厚み方向の膨張が生じてもそれに見合うだけバネ62の付勢力が大きくなるだけであり、支持棒24aが球面軸受14と接している段差部と基板20aとの距離は支持棒24aの長さで決まる。支持棒24aは前述したように低線膨張係数の材質で構成されており、基板同士の平行性が精度良く保たれる。したがって、第一実施例と同様に、レーザ発振した場合におけるレーザビームのポインティングが安定する効果も有している。
【0065】
このように、本発明の第二実施例のレーザ発振器は、レーザ媒質ガスを封入する筐体10と、複数の支持棒24a,24bに挿嵌される転がり軸受11、ブラケット12、ハウジング13、球面軸受14及びフランジ15からなる支持部材を介して筐体10に支持される一対の対向する基板20a,20bに複数のレーザ反射ミラーを配設するレーザビーム反射手段5a,5bとを具備し、前記支持部材は一対の球面軸受14に支持棒24aが貫通されると共に、一対の球面軸受14のうち一方の球面軸受14の片側を支持棒24aの段差部、反対側をバネ62からなる弾性部材にて押さえることで球面軸受14と支持棒24aとの相対位置関係を機械的に決定する実施例とすることができる。
【0066】
したがって、一対の対向する基板20a,20bに複数のレーザ反射ミラーが配設されるレーザビーム反射手段5a,5bを筐体10に支持する複数の支持棒24a,24bに支持部材が挿嵌されている。この支持部材である一対の球面軸受14のうち一方の球面軸受14の片側を支持棒24aの段差部、反対側をバネ62にて押さえることで、筐体10側に位置決めされる球面軸受14と基板20aに一体的な支持棒24aとの相対位置関係が機械的に決定される。これにより、球面軸受14と支持棒24aとの相対位置関係を保持させることができる。
故に、支持棒24aと筐体10との干渉がなくなり、筐体10に対する基板20a,20bの位置の再現性が向上し、筐体10の熱歪の影響を基板20a,20bに伝わり難くできる。
【0067】
また、本実施例のレーザ発振器は、転がり軸受11または球面軸受14と支持棒24aとの相対位置関係は、転がり軸受11または球面軸受14にバネを介して前記支持棒の段差部に押付け機械的に決定する実施例とすることができる。このものにおいても、上述と同様の作用・効果が期待できる。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のレーザ発振器によれば、軸受と支持棒との相対位置関係が保持され、筐体の熱歪の影響が低減され、レーザビームのポインティングが安定するという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は第一参考実施例及び第三参考実施例にかかるレーザ発振器の構成を示す正面図である。
【図2】 図2は図1の第一参考実施例及び第三参考実施例にかかるレーザ発振器の上面図である。
【図3】 図3は第一参考実施例及び第三参考実施例にかかるレーザ発振器における筐体の熱歪の発生を示す概略上面図である。
【図4】 図4は第二参考実施例にかかるレーザ発振器の構成を示す正面図である。
【図5】 図5は図4の第二参考実施例にかかるレーザ発振器の上面図である。
【図6】 図6は第二参考実施例にかかるレーザ発振器における筐体の熱歪の発生を示す概略上面図である。
【図7】 図7は第三参考実施例にかかるレーザ発振器の筐体に設けられる熱交換器用入口ポートを示す拡大詳細断面図である。
【図8】 図8は第三参考実施例にかかるレーザ発振器の筐体に設けられる他の熱交換器用入口ポートを示す拡大詳細断面図である。
【図9】 図9は第四参考実施例にかかるレーザ発振器の構成を示す正面図である。
【図10】 図10は図9の第五参考実施例にかかるレーザ発振器の上面図である。
【図11】 図11は第五参考実施例にかかるレーザ発振器における筐体の熱歪の発生を示す概略上面図である。
【図12】 図12は本発明の第一実施例にかかるレーザ発振器の支持棒24bの支持部を示す拡大部分断面図である。
【図13】 図13は本発明の第二実施例にかかるレーザ発振器の構成を示す右側面図である。
【図14】 図14は本発明の第二実施例にかかるレーザ発振器の構成を示す左側面図である。
【図15】 図15は本発明の第二実施例にかかるレーザ発振器の支持棒24aの支持部を示す拡大部分断面図である。
【図16】 図16は従来のレーザ発振器の概略構成を示す斜視図である。
【図17】 図17は従来のレーザ発振器の構成を示す正面図である。
【図18】 図18は図17の従来のレーザ発振器の上面図である。
【図19】 図19は従来のレーザ発振器の構成を示す右側面図である。
【図20】 図20は図19のC−C線に沿う支持棒24cの支持部を示す拡大部分断面図である。
【図21】 図21は図19のA−A線に沿う支持棒24aの支持部を示す拡大部分断面図である。
【図22】 図22は図19のB−B線に沿う支持棒24bの支持部を示す拡大部分断面図である。
【図23】 図23は従来のレーザ発振器における筐体の熱歪の発生を示す概略上面図である。
【図24】 図24は従来のレーザ発振器における筐体の熱歪の発生を示す概略上面図である。
【符号の説明】
2 レーザビーム、3 ダクト、4a,4b 放電電極、5a,5b レーザ反射手段、6 ブロワ、8 熱交換器、10 筐体、11 転がり軸受、14 球面軸受、20a,20b 基板、22 固定座、24a,24b,24c 支持棒、34 熱交換器用入口ポート、36 熱交換器用出口ポート、40 放電電極用入口ポート、42 放電電極用出口ポート、50 配管部品、51 Oリング、52 絶縁ワッシャ、61 バネ。
Claims (2)
- レーザ媒質ガスを封入する筐体と、
段差部を有する複数の支持棒と、
前記筐体に支持され前記支持棒が貫通する一対の軸受を有した支持部材と、
前記支持棒の端部に固着された一対の対向する基板と、
前記基板に取り付けられた複数のレーザ反射ミラーを配設するレーザビーム反射手段とを備えたレーザ発振器において、
前記一対の軸受のうち一方の軸受と前記基板との間に挿入され、前記軸受を前記支持棒の段差部に常時当接するように付勢することにより前記軸受と前記支持棒との相対位置関係を機械的に決定し、前記軸受の温度変化による長さの変化を吸収する弾性部材を備えることを特徴とするレーザ発振器。 - レーザ媒質ガスを封入する筐体と、
段差部を有する複数の支持棒と、
前記筐体に位置決めされ前記支持棒が貫通する一対の球面軸受を有した支持部材と、
前記支持棒の端部に固着された一対の対向する基板と、
前記基板に取り付けられた複数のレーザ反射ミラーを配設するレーザビーム反射手段とを備えたレーザ発振器において、
前記一対の球面軸受のうち一方の球面軸受と前記基板との間に挿入され、前記球面軸受を前記支持棒の段差部に常時当接するように付勢することにより前記球面軸受と前記支持棒との相対位置関係を機械的に決定し、前記球面軸受の温度変化による長さの変化を吸収する弾性部材とを備えることを特徴とするレーザ発振器。
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