JP3730485B2 - アンテナ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は移動通信システムなどに使用するアンテナ装置に関し、特に移動通信用の基地局に使用されるアンテナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車・携帯電話等の移動通信用の基地局アンテナとしては半波長ダイポールアンテナ素子を垂直方向に多段に配列したアンテナが使用されている。また、使用周波数が2つの離れた周波数帯域である場合、アンテナを複数設置して対応していた。しかし、設置場所等の制約によりアンテナの搭載本数が限られる場合があり、その場合においては前述のダイポールアンテナ素子を2つの周波数帯域において2共振させることにより対応している。この場合、アンテナの本数は半分にすることが可能になるが、2つの周波数帯域においてのアンテナの指向性はほぼ等しく、同一のゾーンをカバーするにすぎなかった。そのため、それぞれ2つの周波数において別の無線ゾーンをカバーするにはアンテナを別に設置する必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年の移動通信、特に自動車・携帯電話の加入者数の増加や、マルチメディア移動通信サービスの提供開始などにより、新たなる周波数において移動通信サービスの提供が予定されており、そのための基地局アンテナの設置が必要になってきている。
しかし、基地局アンテナの設置に適した条件の場所は既存のシステムのアンテナなどに使用されている場合が多く、新規に設置場所を探すよりは既存基地局にアンテナを追加する方法が検討されている。また、既存の設置場所にはアンテナの本数などの制限がある場合が多く、新しいシステム用の周波数におけるアンテナを既存の物と共用させて取り替える方法が有効である。そのためには、既存のシステムのアンテナとシステムパラメータが異なった場合においても共用をする必要があり、そのためのアンテナが必要とされる。
【0004】
なお、従来の自動車・携帯電話のシステムにおいては、半値幅が約120°の指向性を持つアンテナを用いて3セクタ構成を用いていた。新周波数帯域におけるサービスは6セクタ構成を想定しており、半値幅約60°のアンテナが必要になる。
この場合、従来のアンテナでは、1つのアンテナで指向性が異なりビームの向きが異なるアンテナを共用することが出来なかった。
【0005】
そのため、3セクタ構成の周波数帯域においては半値幅が約100〜120°の指向性を持ち、かつ6セクタ構成の周波数帯域においては半値幅が約60°で、指向方向が従来の周波数における指向方向より例えば約30°シフトしたアンテナにしなければならなかった。
上記の問題点の解決法として本出願人は特願平11-107510号「アンテナ装置」を提案しているが、この場合では新周波数帯域に相当するビームは1つしかない。そのため、例えば3セクタ構成のビームは1つしかない。そのため、例えば3セクタ構成のビームの方向に対して6セクタ構成の周波数帯域において左右それぞれ、例えば約30°ビームをシフトしたアンテナを作るためには、上記アンテナ装置の上下に配置された中心線に対し非対称である2素子のアレーアンテナを途中から左右反転させたアンテナ構成とする必要がある。その場合アンテナ長が長くなってしまうという欠点もあった。
【0006】
この発明の目的は、3セクタ構成の周波数帯域においては半値幅が100〜120°の指向性を持ち、かつ6セクタ構成の周波数帯域においては半値幅が約60°で、指向方向が従来の周波数における指向方向より例えば約30°左右にそれぞれシフトした(ビームの向きをシフトした)指向性をもつアンテナを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明では、平板の中央で鋭角に折り曲げられた反射器の前方に左右の中心線上の前方に、一定の距離を離して1つの周波数で使用可能な第1ダイポールアンテナ素子を設置する。また、第2の周波数で使用可能な第2、第3ダイポールアンテナ素子を反射器の中心線に対して対称で、反射器の前方に一定の距離を離しそれぞれ配置する。また、第2、第3ダイポールアンテナ素子はハイブリッド回路を介して給電する。
【0008】
ここで、ハイブリッド回路とは、図3のような端子81に入力した信号は端子83の出力位相をαとすると、端子84には出力位相α+90°にて出力される。また、端子82に入力した信号は端子84の出力位相をβとすると、端子83には出力位相β+90°にて出力される。つまり、お互いに90°の位相差を持って給電することが可能な回路である。
また、この発明では上記アンテナ装置において反射器の左右の中心線上、第1ダイポールアンテナ素子の若干前方に第1の周波数もしくは、第1、第2の周波数ではない周波数にて共振する無給電素子を設置する。
【0009】
また、この発明では上記のアンテナ装置において第2、第3のダイポールアンテナ素子の若干前方に第2、第3の無給電素子を設置する。
また、この発明では上記アンテナ装置において、第2,第3のダイポールアンテナ素子及び第2、第3の無給電素子の組を設け、これらを第1のダイポールアンテナ素子に対し、上方部、下方部とに配置する。
【0010】
また、この発明は上記アンテナ装置において反射器の両端を前方に折り曲げた側面反射器を設置するか、もしくはある一定の長さを持った無給電素子の組を配置する。
また、この発明は上記各種アンテナ装置それぞれについて、垂直方向に複数段設置する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、図面に基づきこの発明の良好な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
(第1実施例)
この発明の第1実施例を図1、図2に示す。
この実施例は、900MHz帯域のアンテナに、次期移動通信システム用として利用が検討されている2GHz帯域のアンテナを共用した場合のアンテナ装置を示す。
【0012】
ここで、900MHzでの放射波長をλ1、2GHzの放射波長をλ2とする。
平板を中心線に対して対称に折り曲げた左右の反射板11、12を垂直に配置した反射器10の前方に反射器10の中心線を2等分する位置の前方約1/4λ1離して鉛直に900MHz帯域用のダイポールアンテナ素子21を設置する。
また、2GHz帯域用のダイポールアンテナ素子31,32,33,34は、反射器10を左右に2等分する平面に対して垂直な平面で反射器10の中心線を通る平面からの距離が約λ1の1/4の平面上に、ダイポールアンテナ素子31,32はその中心がダイポールアンテナ素子21の中心より、上方約λ2の約1/3に、ダイポールアンテナ素子33,34はその中心が下方約λ2の約1/3に位置し、またダイポールアンテナ素子31,33はダイポールアンテナ素子21より前方、向かって右側にλ2の約1/4の位置に、ダイポールアンテナ素子32,34はダイポールアンテナ素子21より前方、向かって左側にλ2の約1/4の位置にそれぞれ配列する。
【0013】
2GHz帯域用のダイポールアンテナ素子31〜34はそれぞれ同じ高さにある素子31と32、33と34はそれぞれハイブリッド回路80を介して接続されている。
この実施例を使用した場合における各周波数でのアンテナの指向性を図4、5に示す。
図4によると900MHzにおけるアンテナの指向性は正面方向に半値幅(ビームの指向性の最大のところから3dB放射レベルが下がった点がなす角)が約120°の指向性をなすことがわかる。また、図5によると、2GHzにおいては反射板11から向かって正面方向から右側約30°程度の方向に半値幅が約60°指向性をもつことがわかる。
【0014】
ただし、図5の場合はハイブリッド回路80の入力端子81に信号を入力した場合の指向性を示す。端子82に同時に別の信号を入力した場合図5の指向性とは対称な指向性(左側約30°程度の方向に半値幅が約60°指向性)があわせて得られる。
(第2実施例)
この発明の第2実施例を図6に示す。
【0015】
この実施例は、前記第1実施例のアンテナ装置におけるダイポールアンテナ素子21の前方に無給電素子41を取り付けた場合の実施例である。
この第2実施例のアンテナ装置を使用した場合の各周波数におけるアンテナの指向性を図7〜9に示す。
図7によると、800MHzにおけるアンテナの指向性は正面方向に半値幅が約110°の指向性をなすことがわかる。また、図8によるとダイポールアンテナ21の前方に設置された無給電素子41の効果により1.5GHzにおいて半値幅が約90°の指向性を持つ。また、図9によると2.0GHzにおいては反射板11から向かって正面方向から右側約30°程度の方向に半値幅が約60°の指向性を持つことがわかる。
【0016】
ただし、図9の場合はハイブリッド回路80の入力端子81に信号を入力した場合の指向性を示す。端子82に同時に別の信号を入力した場合図9の指向性とは対称な指向性があわせて得られる。
(第3実施例)
この発明の第3実施例を図10に示す。
この実施例は、前記第2実施例のアンテナ装置におけるダイポールアンテナ素子31〜34の前方に無給電素子51~54を取り付けた場合の実施例である。
【0017】
この第3実施例のアンテナ装置を使用した場合の各周波数におけるアンテナの指向性を図11〜13に示す。
図11によると885MHzにおけるアンテナの指向性は正面方向に半値幅が約100°の指向性をなすことがわかる。また、図12によるとダイポールアンテナ21の前方に設置された無給電素子41の効果により1501MHzにおいて半値幅が約70°程度の指向性を持つ。また、図13によると、2045MHzにおいては反射板11から向かって正面方向から左側約30°程度の方向に半値幅が約50°の指向性を持つことがわかる。
【0018】
ただし、図13の場合はハイブリッド回路80の入力端子82に信号を入力した場合の指向性を示す。端子81に同時に別の信号を入力した場合図12の指向性とは対称な指向性があわせて得られる。
(第4実施例)
この発明の第4実施例を図14に示す。
この実施例は、前記第3実施例のアンテナ装置において、反射器10を左右に2等分する平面と平行に、反射器10を構成する反射板11及び12の両端に側面反射板13と14を設置した場合の実施例である。
【0019】
この第4実施例を使用した場合の各周波数におけるアンテナの指向性を図15〜17に示す。
図15によると885MHzにおけるアンテナの指向性は正面方向に半値幅が約100°の指向性をなすことがわかる。また、図16によるとダイポールアンテナ21の前方に設置された無給電素子41の効果により150MHzにおいて半値幅が約70°程度の指向性をもつ。また、図17によると、2GHzにおいては反射板11から向かって正面方向から左側約30°程度の方向に半値幅が約60°の指向性をもつことがわかる。
【0020】
ただし、図17の場合はハイブリッド回路80の入力端子82に信号を入力した場合の指向性を示す。端子81に同時に別の信号を入力した場合図12の指向性とは対称な指向性があわせて得られる。
(第5実施例)
この発明の第5実施例の斜視図を図18に3面図を図19に示す。
この実施例は、前記第3実施例のアンテナ装置において、反射器10を左右に2等分する平面に垂直に交わり、反射器10の中心線からλ1の約1/6の距離の平面上に中心が位置し、上下方向の中心をダイポールアンテナ素子31、32と一致させた無給電素子61および62、上下方向の中心をダイポールアンテナ素子33、34と一致させた無給電素子63および64を設置する。
【0021】
この第5実施例のアンテナ装置を使用した場合の各周波数におけるアンテナの指向性を図20〜22に示す。
図20によると885MHzにおけるアンテナの指向性は正面方向に半値幅が約120°の指向性をなすことがわかる。また、図21によるとダイポールアンテナ21の前方に設置された無給電素子41の効果により、1501MHzにおいて半値幅が約70°程度の指向性をもつ。また、図22によると、2GHzにおいては反射板11から向かって正面方向から左側約30°程度の方向に半値幅が約60°の指向性をもつことがわかる。
【0022】
ただし、図22の場合はハイブリッド回路80の入力端子82に信号を入力した場合の指向性を示す。端子81に同時に別の信号を入力した場合図12の指向性とは対称な指向性があわせて得られる。
なお、上記実施例にて800MHz帯において正面方向に半値幅約100〜120°、1500MHz帯域において正面方向に半値幅約70°、2.0GHz帯域において正面から±30°の方向に半値幅約60°の指向性をもつことを示した。しかし、各周波数帯域の半値幅は各ダイポールアンテナと反射器との距離を変えることにより調整が可能であり、必要な半値幅に応じることが可能である。
【0023】
以上、この発明を前記実施例に基づき説明したが、この発明は前記実施例の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で実施可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によるアンテナ装置を実施することにより、ある周波数帯域において、正面方向に半値幅が約100〜120°の指向性をもつアンテナと、前記周波数と異なる周波数においてハイブリッド回路の2つの入力端子の入力信号に応じて、最大放射方向がたとえば左右それぞれ30°シフトされた、半値幅が約60°の指向性を持つアンテナを1個のアンテナ装置とすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のアンテナ装置の第1実施例を示す斜視図。
【図2】この発明のアンテナ装置の第1実施例を示す三面図。
【図3】ハイブリッド回路を説明する図。
【図4】この発明の第1実施例のアンテナ装置の900MHzにおける計算値による指向性特性図。
【図5】この発明の第1実施例のアンテナ装置の2.0GHzにおける計算値による指向性特性図。
【図6】この発明のアンテナ装置の第2実施例を示す斜視図。
【図7】この発明の第2実施例のアンテナ装置の800MHzにおける計算値による指向性特性図。
【図8】この発明の第2実施例のアンテナ装置の1.5GHzにおける計算値による指向性特性図。
【図9】この発明の第2実施例のアンテナ装置の2.0GHzにおける計算値による指向性特性図。
【図10】この発明のアンテナ装置の第3実施例を示す斜視図。
【図11】この発明の第3実施例のアンテナ装置の885MHzにおける計算値による指向性特性図。
【図12】この発明の第3実施例のアンテナ装置の1501MHzにおける計算値による指向性特性図。
【図13】この発明の第3実施例のアンテナ装置の2045MHzにおける計算値による指向性特性図。
【図14】この発明のアンテナ装置の第4実施例を示す斜視図。
【図15】この発明の第4実施例のアンテナ装置の885MHzにおける測定値による指向性特性図。
【図16】この発明の第4実施例のアンテナ装置の150MHzにおける測定値による指向性特性図。
【図17】この発明の第3実施例のアンテナ装置の2.0GHzにおける測定値による指向性特性図。
【図18】この発明のアンテナ装置の第5実施例を示す斜視図。
【図19】この発明のアンテナ装置の第5実施例を示す三面図。
【図20】この発明の第5実施例のアンテナ装置の885MHzにおける測定値による指向性特性図。
【図21】この発明の第5実施例のアンテナ装置の1501MHzにおける測定値による指向性特性図。
【図22】この発明の第5実施例のアンテナ装置の2.0GHzにおける測定値による指向性特性図。
【符号の説明】
10 反射器
11,12 反射器10を構成する反射板
13,14 側面反射板
21 第1の周波数で使用する半波長ダイポールアンテナ
31,32,33,34 第2の周波数で使用する半波長ダイポールアンテナ
41 第1の周波数の波長の約1/2より短い無給電素子
51,52,53,54 第2の周波数の波長の約1/2よりも短い無給電素子
61,62,63,64 無給電素子
80 ハイブリッド回路
81,82,83,84 ハイブリッド回路における接続端子
Claims (6)
- 平板を中心線で折り曲げた左右の反射板を鉛直方向に配置した反射器と、
前記反射器の前方かつ前記中心線のほぼ2等分する位置で前記反射器のなす角を2等分する面上において、前記中心線より第1の周波数における波長の4分の1離れた個所に、垂直に設置された第1の周波数で使用される第1のダイポールアンテナと、
前記2等分する面に対して垂直でかつ前記第1のダイポールアンテナより第2の周波数における波長の4分の1だけ前方に離れた平面上において、前記2等分する面より第1の周波数の4分の1の距離だけ左右に離れた鉛直な直線上にそれぞれ設けられ、第1ダイポールアンテナの中心高さより上方及び下方に、第2の周波数における波長の3分の1の点をそれぞれ中心として鉛直方向に延長された第2のダイポールアンテナと第3のダイポールアンテナ及び第4のダイポールアンテナと第5のダイポールアンテナと、
第2のダイポールアンテナと第3のダイポールアンテナと及び第4のダイポールアンテナと第5のダイポールアンテナにそれぞれ90°の移相差を与えて給電するハイブリッド回路とを有することを特徴とするアンテナ装置。 - 請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記反射器がなす角を2等分する平面上に、第1のダイポールアンテナから若干距離を離し第1のダイポールアンテナと平行に設置されたある長さをもって、第1の周波数を広帯域化するために第1の無給電素子、もしくは第1と第2の周波数以外の周波数に適する長さを有する第2の無給電素子を備えること
を特徴とするアンテナ装置。 - 請求項1又は2に記載のアンテナ装置において、
前記第2〜第5の各ダイポールアンテナの前方に各ダイポールアンテナと平行に該ダイポールアンテナよりも若干短い長さを持つ第3の無給電素子を備えたこと
を特徴とするアンテナ装置。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記反射器の両端を反射器のなす角を2等分する面と平行になるように配置された、ある長さを持った側面反射器を備えたこと
を特徴とするアンテナ装置。 - 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記反射器を2等分するそれぞれの平面に垂直に交わり、かつ反射器の中心線から第1の周波数の1/6離れた平面上に位置し、上下方向の中心を前記第2〜第5ダイポールアンテナと中心とそれぞれ一致させた4つの第4の無給電素子を備えたこと
を特徴とするアンテナ装置。 - 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアンテナ装置を鉛直方向に複数段積み重ねたこと
を特徴とする多段構成アンテナ装置。
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