JP3730051B2 - 外面防食金属管の防食補修方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は外面防食金属管の防食補修方法に関し、特に既設外面防食金属管の防食層損傷箇所の補修に有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼管の外面を防食層、例えばアスファルト、コ−ルタ−ルエナメル、ポリエチレン、エポキシ樹脂、またはウレタン樹脂コ−ティング等で被覆した外面防食鋼管は、都市ガス、水道水、石油、地域暖房の蒸気等の輸送用パイプラインとして有用である。
この外面防食被覆鋼管においては、施工時に生じた外面防食層の傷や施工後に土圧により生じた外面防食層の傷等を起点として鋼管腐食が進行し、遂には漏洩事故にまで至る危険性があるので、施工直後や施工後定期的に防食層の傷の有無を適宜の検出方法、例えば絶縁抵抗値測定法等により検出し、傷が検出された場合は適宜の標定方法、例えばパルス反射法等によりその傷位置を測定し、当該傷を補修する必要がある。
【0003】
従来、この外面防食層の傷箇所の補修には、防食層の傷箇所に補修用シ−トを加熱加圧により貼着する方法を使用している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、防食層損傷箇所が管外周の下半周部に在る場合、補修用シ−トを加熱加圧することが作業スペ−ス上難しく、特に防食層損傷箇所が管外周の6時の位置に在る場合、プロパンガスバ−ナまたは熱風加熱器とロ−ラとで加熱・加圧を行うことは実際上不可である。
【0005】
従来、外面防食被覆鋼管の溶接接合部の防食等、管全周にまたがって防食層を設ける場合、その被防食部分に防食材を巻回し、その巻回防食材を熱収縮性チュ−ブと面状ヒ−タとで包囲し、面状ヒ−タの通電加熱によって熱収縮性チュ−ブを収縮させると共に巻回防食材を加熱軟化させ、熱収縮性チュ−ブの収縮力で熱軟化巻回防食材を加圧して被防食部分に融着させることが知られているが、かかる管全周にわたる防食被覆層を上記の部分的な防食層損傷箇所の補修に使用することは、資材面、作業面、コスト面等において無駄が大きく、不適切である。
【0006】
本発明の目的は、外面防食金属管の防食層の傷をその傷の存在位置に左右されること無く容易に、かつ優れた信頼性で補修できる方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る外面防食金属管の防食補修方法は、外面防食金属管の防食層損傷箇所に補修用シ−トを加熱加圧により貼着して防食層を補修する方法であり、防食層損傷箇所に補修用シ−トを当接し、該補修用シ−トに当該補修用シ−トを加熱する面状ヒ−タと同補修用シ−トを覆う気密性シ−トとを重ね状態で配設し、該気密性シ−トの周囲を外面防食金属管の表面に封止し、気密性シ−ト内を減圧すると共に面状ヒ−タを発熱させ、当該減圧により防食層損傷箇所に押し付けられ当該発熱により熱軟化された補修用シ−トを防食層損傷箇所とその周囲の防食層部分に融着させることを特徴とし、通常、補修用シ−ト上に面状ヒ−タを配設し、面状ヒ−タ上に気密性シ−トを配設するが、補修用シ−ト上に気密性シ−トを配設し、気密性シ−ト上に面状ヒ−タを配設することもできる。また、補修用シ−トと気密性シ−トとの間に面板材を配設することもできる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一例を示す図面である。
図1において、1は外面防食被覆金属管である。sは防食層11の損傷箇所を示し、管底側すなわち管外周の6時の方向に存在している。
この防食層の損傷箇所を本発明により補修するには、まず損傷箇所周囲の防食層を切削し、露出金属面の錆や汚れをワイヤ−ブラシ等で除去し、更に露出金属面周囲の防食層表面の汚れを布で拭きとる等、常法に従い前処理を行う。
而るのち、防食層損傷箇所sに充填材を取り付けて補修用シ−ト2を配設し、この補修用シ−ト2を覆うようにして通電式の面状ヒ−タ3を配設し、更に面状ヒ−タ3を覆うようにして気密性シ−ト4を配設し、この気密性シ−ト4の周囲を外面防食金属管の防食層11に、例えば粘着テ−プ41によって封止する。
この気密性シ−ト4の封止の際、封止界面から面状ヒ−タ3のリ−ド線31の気密引出しを行う。この場合、リ−ド線引出し箇所の気密性の確保のためにパテ材を使用することが好ましい。
【0009】
5は周囲を封止した気密性シ−ト4内を減圧するための真空引きポンプであり、真空引きチュ−ブ51と気密性シ−ト4との連結は現場で行うことも可能であるが、真空引きチュ−ブ51に気密性シ−ト4を予め接着剤、ヒ−トシ−ル等により一体化しておくことが好ましい。
【0010】
上記のように部材や器材の配置・組立てを行ったのち、真空引きポンプ5の駆動により気密性シ−ト4内を減圧すると共に面状ヒ−タ3の通電発熱により補修用シ−ト2を加熱軟化させる。
【0011】
この気密性シ−ト4内の減圧(−p)により気密性シ−ト4の外面にその減圧分の正圧(+p)が作用し、その正圧で補修用シ−ト2が防食層損傷箇所sに押し付けられる。従って、加熱軟化された補修用シ−ト2をその熱軟化と押し付けとにより防食層損傷箇所pの露出金属管面と周囲の防食層部分とに強固に融着できる。
【0012】
上記の実施例では気密性シ−ト4の内側に面状ヒ−タ3を配設しているが、図2に示すように気密性シ−ト4の外面に面状ヒ−タ3を支持バンド32等で固定し、補修用シ−ト2を熱的に気密性シ−ト4を経て加熱することも可能である。この場合、面状ヒ−タ3による補修用シ−ト2の加熱に対し気密性シ−ト4が熱抵抗として作用するが、気密性シ−ト4の内側からの面状ヒ−タ3のリ−ド線の引出しが不要である有利性がある。
【0013】
上記何れの実施例においても、気密性シ−トと補修用シ−トとの間に面板を介在させ、前記気密性シ−トの外面に作用する正圧で面板を加圧し、この面板によって補修用シ−トを加圧することもできる。
この面板には、前記補修用シ−トの加熱軟化時中、平面平坦性を維持させ得る耐熱性を付与してあり、補修用シ−トと外面防食被覆金属管外面との境界の段差等の非平坦面を平坦化でき、補修面を平滑面にできる利点がある。
【0014】
図3の(イ)〜(ハ)は面板の異なる配置例を示し、6は面板、2は補修用シ−ト、4は気密性シ−ト、3は面状ヒ−タであり、(ロ)及び(ハ)に示す例では、面状ヒ−タ3から補修用シ−ト2への良好な熱伝達性を保証するために、熱良導伝性の面板6例えば金属板、特に鋼板を使用することが好ましい。
【0015】
本発明において、補修用シ−ト2には外面防食被覆金属管の防食層及び露出金属管素地との接着性に優れたものが使用され、通常、防食層との熱融着性に優れた合成樹脂シ−トと露出金属管素地に良く馴染みかつ良好な接着性を呈する接着剤とからなるものが使用される。この場合、合成樹脂シ−トとしては、例えばポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパ−フロオロアルキルビニルエ−テル共重合体)等が使用され、接着剤としては、例えば感圧性接着剤、熱溶融接着剤、熱硬化性接着剤、マスチック型接着剤等が使用される。
【0016】
この補修用シ−トを外面防食被覆金属管の防食層損傷箇所に当接するには、接着剤を露出金属管素地の寸法に合わせて切断のうえ当接し、この接着剤よりも大きい寸法に切断した合成樹脂シ−トを当接接着剤を覆って防食層表面に当接することができる。
【0017】
上記補修用シ−ト2には、融着性に優れた熱可塑性樹脂シ−ト、例えば、ポリエチレンシ−ト、変性ポリエチレンシ−ト、エチレン酢酸ビニル共重合体シ−トを単体で用いることも可能である。
上記補修用シ−ト2には、補強シ−ト、例えばエキスパンドメタルシ−ト、ガラスクロス等を内在させることもできる。
【0018】
本発明において、気密性シ−ト4には面状ヒ−タの加熱に耐え得る耐熱性を有し、力学的に低い差圧でも薄膜として変形し得るものであれば適宜のものを使用でき、例えば厚み500μm以下好ましくは200μm以下のフッソ樹脂含浸ガラスクロス、ポリテトラフルオロエチレンシ−ト、ポリイミドシ−ト、シリコ−ンゴムシ−ト等を使用できる。
【0019】
本発明において、面状ヒ−タ3には絶縁被覆材が補修用シ−トや気密性シ−トに融着しない高融点・難接着性のものが使用され、例えば、シリコ−ンラバ−ヒ−タを使用できる。
上記面状ヒ−タと補修用シ−トとを一体化し、ヒ−タ付き補修用シ−トを補修用シ−トとして使用することもできる。
【0020】
【実施例】
〔実施例〕
外面防食層がポリエチレン防食層である直径600mmの防食被覆鋼管の防食層に6時の位置を損傷箇所として、厚さ3mm,直径150mmのポリエチレンシ−ト(補修用シ−ト)を当接し、その上に直径200mmのシリコ−ンラバ−ヒ−タ(面状ヒ−タ)を配設し、このヒ−タ上に厚み500μm,直径300mmのポリテトラフルオロエチレンシ−ト(気密性シ−ト)を配設し、その周囲をポリエチレン防食層に粘着テ−プで封止すると共にシリコ−ンラバ−ヒ−タのリ−ド線を気密に引出した。
ポリテトラフルオロエチレンシ−トは真空引きポンプの真空引きチュ−ブの先端に予め気密に連結してあり、80HP(60Torr)まで減圧し、シリコ−ンラバ−ヒ−タを設定温度230℃にて15分間通電発熱させて前記ポリエチレンシ−ト補修用シ−トをポリエチレン防食層に熱融着させた。
この実施例の補修用シ−トの180°ピ−ル接着力を測定したところ(試料数10個の平均値)12kg/cmであり、何れの試料も10kg/cm以上であった。
【0021】
〔比較例〕
図4に示すように、実施例のポリエチレンシ−ト2及びシリコ−ンラバ−ヒ−タ3を覆って管全周にポリテトラフルオロエチレンシ−ト4’を巻き、このシ−ト4’をスプリング40’で締め、管全周を覆って真空チャンバ−7’を気密に取付け、真空チャンバ−7’を実施例と同様に80HP(60Torr)まで減圧し、シリコ−ンラバ−ヒ−タ3を設定温度230℃にて15分間通電発熱させた。
この実施例の補修用シ−トの180°ピ−ル接着力を測定したところ(試料数10個の平均値)8kg/cmであり、何れの試料も10kg/cm以下であった。
【0022】
この実施例と比較例との対比からも明らかなように、本発明において、防食金属管の防食層損傷箇所を覆う気密性シ−トの周囲を防食層表面に封止しその気密性シ−トの内側を減圧することが、補修用シ−トの接着強度の向上、均一性に有効に寄与し、優れた信頼性を保証している。
【0023】
【発明の効果】
本発明に係る外面防食金属管の防食補修方法によれば、防食層を高い信頼性のもとで補修でき、しかも、防食層損傷箇所に補修用シ−ト、面状ヒ−タ及び気密性シ−トを重ね状態で配設しその気密性シ−トの周囲を防食層表面に封止し、気密性シ−ト内に連通した真空引きポンプの駆動と気密性シ−トから引出したリ−ド線を介しての面状ヒ−タの通電発熱で補修を行い得るから、防食層損傷箇所が管外周の下半部に存在しても容易に補修でき、作業性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す図面である。
【図2】本発明の別実施例を示す図面である。
【図3】本発明の上記とは別の互いに異なる実施例の要部を示す図面である。
【図4】本発明に対する比較例を示す図面である。
【符号の説明】
1 外面防食金属管
11 防食層
s 防食層損傷箇所
2 補修用シ−ト
3 面状ヒ−タ
4 気密性シ−ト
5 真空引きポンプ
6 面板
Claims (4)
- 外面防食金属管の防食層損傷箇所に補修用シ−トを加熱加圧により貼着して防食層を補修する方法であり、防食層損傷箇所に補修用シ−トを当接し、該補修用シ−トに当該補修用シ−トを加熱する面状ヒ−タと同補修用シ−トを覆う気密性シ−トとを重ね状態で配設し、該気密性シ−トの周囲を外面防食金属管の表面に封止し、気密性シ−ト内を減圧すると共に面状ヒ−タを発熱させ、当該減圧により防食層損傷箇所に押し付けられ当該発熱により熱軟化された補修用シ−トを防食層損傷箇所とその周囲の防食層部分に融着させることを特徴とする外面防食金属管の防食補修方法。
- 補修用シ−ト上に面状ヒ−タが配設され、面状ヒ−タ上に気密性シ−トが配設されている請求項1記載の外面防食金属管の防食補修方法。
- 補修用シ−ト上に気密性シ−トが配設され、気密性シ−ト上に面状ヒ−タが配設されている請求項1記載の外面防食金属管の防食補修方法。
- 補修用シ−トと気密性シ−トとの間に面板が配設されている請求項1〜3何れか記載の外面防食金属管の防食補修方法。
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