JP3728450B2 - 半導体超微粒子分散材料およびその製造方法 - Google Patents

半導体超微粒子分散材料およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学材料、特に、光−光変換素子や光−電子変換素子などに用いられる非線形光電子材料や発光材料、センサー材料などとして利用される通信、情報処理分野、光記録の材料として利用される大容量記録関連分野、光反応性や触媒反応性材料として利用される医薬や農薬分野、触媒関連分野、無機材料原料や塗装・コーティング材料として利用される成形品表面加工関連分野、UV吸収剤などに利用される化粧品分野の材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体は電子部品材料、光電子材料、医用材料、触媒材料、センサー材料などバルク、薄膜あるいは粒子などの形態で、幅広い分野で用いられていることはいうまでもない。半導体をさらに、超微粒子と呼ばれる粒径100ナノメートル以下の粒子とすると、従来のバルクや粒子にはみられない特異的な性質が発現することが注目され、その応用が図られている。小さな結晶空間を形成することによって電子的に特異な性質を示す形態には、薄膜状や、棒状、ディスク状などがあるが、超微粒子の場合にはこれらの形態に比べて性能出現の等方性に優れる点がある。
【0003】
半導体超微粒子の製造方法として、そのナノメートルオーダーの大きさの粒子径を制御する技術が、いくつか提案されている。例えば、液相中での製造における保護コロイドを用いて粒子径分布を狭くする方法や、気相中でのガス中蒸発法での蒸発炎の所定の場所から生成粒子を採取する方法などがある。また、特開平5−184913号公報に記載されているように、溶液中に不飽和結合を有する単量体を共存させ、光照射しながら半導体超微粒子の合成を行う方法が提案されている。
【0004】
半導体超微粒子の性能向上のためには、個々の半導体超微粒子に適した粒子径に大きさを制御し、さらにその粒子径分布幅を制御することが重要となってくる。例をあげて見れば、硫化カドミウム超微粒子において、粒子径並びに粒子径分布幅が制御された材料は、制御されていない材料に比べて非線形光学感受率χ(3)を光学吸収係数αで割った性能指数χ(3)/αが飛躍的に向上するという記載がある(“3rd International Symposium on Organic Materials for Nonlinear Optics OMNO 92'",University of Oxford,1992,197-202)。
【0005】
半導体超微粒子の製造やその取扱については、前記したように粒子径及び粒子径分布幅の制御はもちろん、その安定性、保存性及び操作性を高めることが、超微粒子の特異な機能を発現させるために重要な課題となっている。
【0006】
従来、粒径制御された半導体超微粒子の安定性、保存性及び操作性を高めるためには、媒体中に超微粒子を分散させる方法がとられている。例えば、無機媒体を用いる場合、製造した半導体超微粒子分散液を多孔質ガラスへ含浸させる方法や、またゾル−ゲル法によりガラス媒体を形成し分散させる方法がある。
【0007】
ポリマーなどの有機媒体を用いる場合には、液相中で製造した半導体超微粒子分散液にポリマーを加え、重合反応により硬化させたり、溶媒の除去によって固体媒体を形成する方法をとることができる。また、加えたポリマーと半導体超微粒子との共通の貧溶媒中で両者を析出沈澱させ固体媒体を形成する方法がある(特開平6−263885号公報)。
【0008】
半導体超微粒子分散材料の性能向上のためには、半導体超微粒子自身の粒子径並びに粒子径分布の制御を行うことが重要であることは前記した通りであるが、制御された半導体超微粒子を材料中に高密度に充填分散させることも重要である。しかし、従来技術では、高密度充填させることにより、
1)1次粒子の融合による大粒子の形成が起こり、超微粒子本来の性能が失われてしまう。
【0009】
また、
2)1次粒子の凝集による2次粒子形成により1次粒子の形態を保持した状態でこれが多数凝集した粒子、いわゆる2次粒子は、散乱体となり分散材料自体の性能低下が起こる。
【0010】
さらに、従来の分散方法では生成した半導体超微粒子と共に半導体超微粒子生成に関与しなかった未反応の金属化合物が不純物として、材料中に取り込まれることから、
3)材料中に取り込まれた未反応の金属化合物による性能低下、並びに安定性及び保存性の低下という技術的欠点がある。
【0011】
本発明者は、ポリマー中に粒径制御された半導体超微粒子の高密度充填を実施したが、1次粒子の凝集に伴う2次粒子形成並びに不純物である未反応の金属化合物がポリマー中で析出することで透明性が低下し、光が散乱されることから、同じ粒子密度換算で低密度充填材料と性能を比較すると、高密度充填材料の方が性能が劣るという結果を見い出した。加えて、未反応の金属化合物により材料の保存性が悪くなるという知見を低密度及び高密度充填材料で得た。
【0012】
これまで述べてきたように、半導体超微粒子はその特性から、種々の応用が開けているが、高密度化を行うと凝集により性能が低下し、また材料中の未反応の金属化合物の存在は安定性及び保存性が悪くなるという課題を残している。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
半導体超微粒子を高密度充填した分散材料に好都合な性質として、主なものとしては次の点が挙げられる。
1)超微粒子が凝集や粒径分布の変化などを起こさない。
2)安定に保存できる。
3)加工が容易であり、製品形態の選択の幅が広い。
などである。
【0014】
成形前の中間材料である半導体超微粒子が安定化された状態で材料化することが、産業技術としてはとりわけ重要である。前記した各項目に対する従来技術の困難点としては、高密度化に伴う凝集による性能低下、材料中に取り込まれた未反応の金属化合物による性能低下、並びに安定性及び保存性低下が挙げられる。また、所望の製品形態に加工する場合には、中間材料である半導体超微粒子を液相中で合成した場合、液体状態では安定性が悪く凝集しやすいことから、これを保存して使用することはできない。
【0015】
本発明はこの前記問題点を解決するために、超微粒子が高密度に分散性よく安定に存在し、未反応の金属化合物が共存せず、加工が容易で製品形態の選択幅が広く操作性に優れた半導体超微粒子分散材料を製造することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題を解決するために、半導体超微粒子分散液にポリマーまたはポリマー溶液を加え、ポリマーと半導体超微粒子分散液中に含まれる未反応の金属化合物との間の溶解度差を利用することが有効であることを見いだし、本発明を完成した。
【0017】
即ち、本発明は、金属化合物と単量体存在下、光を合成中の半導体超微粒子に照射して製造される半導体超微粒子分散液に、ポリマーまたはポリマー溶液を加えて得られた溶液を、ポリマーに対しては貧溶媒、未反応の金属化合物に対しては良溶媒であるところの溶媒と混合して析出沈澱させ、得られた析出物を濾別し、減圧乾燥することにより製造される半導体超微粒子分散材料およびその製造方法を提供するものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明における金属化合物としては、例えば、金属酢酸塩などの金属有機酸塩類、金属の硝酸塩、過塩素酸塩類、アルコキシド類、アセチルアセトナート類、ハロゲン化物類などが用いられる。好ましくは、金属ハロゲン化物類、金属硝酸塩類、金属過塩素酸塩類、金属酢酸塩類が用いられる。これらは結晶水を含むものであってもよい。
【0019】
前記金属化合物における金属種としては、III−V族化合物半導体を生成するAl、Ga、In、などのIII族元素、II−VI族化合物半導体を生成するZn、Cd、Hg、などのII族元素、I−VI、I−VII族化合物半導体を生成するCuなどのI族元素、IV−VI族化合物半導体を生成するPb、Ti、Sn、などのIV族元素などが例として挙げられる。
【0020】
本発明における単量体とは、重合反応を起こすものであれば特に制限はないが、例えば、スチレンやメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、ビニルピロリドン、ジビニルベンゼンなど、あるいはこれらの混合物などの不飽和結合を有する化合物を好ましく用いることができる。また、チオフェン、セレフェノン、テルロフェンやチオフェンビニレンなどの複素環化合物や、アズレン、インドール、ピレン、カルバゾール、またベンゼン、ベンゼンスルフィド、アントラセン、アニリンなどの芳香族化合物であってもよい。
【0021】
本発明における半導体とは、シリコン、ゲルマニウムなどのIV族元素、あるいはTiO2やZnOなどの酸化物半導体や、GaAsやInP、InSbなどのIII−V族化合物半導体、またはCdS、CdSe、ZnSeやCdTeなどのII−VI族化合物半導体、さらにはCuCl、CuBrなどのI−VII族化合物半導体などをいう。
【0022】
本発明の超微粒子とは、100ナノメートル以下、好ましくは20ナノメートル以下、より好ましくは10ナノメートル以下の平均直径の粒子をいう。
【0023】
本発明の半導体超微粒子分散液とは、前記金属化合物と前記単量体存在下、光を合成中の半導体超微粒子に照射することにより製造される。
【0024】
具体的には以下のように製造される。
【0025】
まず、溶媒中に半導体原料を溶解させる。
【0026】
使用される溶媒は、水あるいは非水溶媒、好ましくは比較的極性の大きな非水溶媒、具体的には、例えば、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、メタノール、エタノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンなど、或はこれらを含有する混合溶媒が用いられる。半導体原料としては、このような液相中での半導体超微粒子合成においては、用いる溶媒に可溶な金属化合物を用いる。これらの金属化合物は、好ましくは1モル/リットル以下、より好ましくは10-6〜10-1モル/リットルの濃度の溶液にすることが望ましい。
【0027】
反応液中の単量体濃度としては、好ましくは、使用する金属化合物の0.1から100倍のモル濃度が望ましく、より好ましくは1から50倍のモル濃度で用いられる。
【0028】
次に、光を金属化合物と単量体を溶解した溶液に照射する。照射する光の光源としては、半導体超微粒子を励起できるものであればよいが、粒径制御された超微粒子を得るためには、好ましくは、半導体超微粒子が有する吸収波長端付近の単色光、もしくは前記の特定波長より短波長の光を照射することが望ましい。このような光源としては、キセノン灯、水銀灯、タングステン灯およびこれに波長カットフィルターをかけたもの、またはアルゴンイオンレーザーや窒素レーザー、エキシマレーザーなどのガスレーザー類やYAGレーザーやYLFレーザーやチタンサファイアレーザーなどの固体レーザー類、半導体レーザー類、色素レーザー類、化学レーザー類などがあげられる。
【0029】
照射する光の強度は、より強い方が好ましいが、あまりにも光強度が強いと、光劣化等を引き起こすことがあるので、好ましくは0.002W/cm2〜10kW/cm2であることが望ましい。また、照射する光の波長は対象とする半導体の種類、制御しようとする粒子径によって、任意に設定することができる。しかし、当然のことながら選択される光の波長は、半導体のバルクの吸収波長よりも短くなければならない。好ましくは半導体のバルクの吸収端より200nm以内の単波長の光を照射する。
【0030】
照射する光は、反応液全体に照射されることが望ましい。また、反応が進んで、生成された半導体超微粒子の濃度が大きすぎると、光が光路中で吸収され、溶液に光が均一に照射されなくなることがあるので、最終生成溶液の光学濃度が吸光度で3以下にするように、あらかじめ原料濃度を調整したり、反応器の光学距離を調整しておくと好適に反応を行うことができる。
【0031】
光を照射した状態において、半導体に金属化合物を用いた場合には、例えば、CdS、CdSe、ZnSeやCdTeなどのII−VI族化合物半導体超微粒子を製造する場合を例に挙げると、硫化水素ガスやセレン化水素ガスなどの水素化物やビストリメチルシリルイオウなどの有機カルコゲン化物などの適当なカルコゲン化剤を光照射した原料溶液に加えることによって、半導体粒子を生成、成長させ、目的の半導体超微粒子を得ることができる。これらの試薬はヘリウムや窒素などの不活性ガスや溶媒によって希釈し、半導体粒子の生成反応を制御することができる。反応ガス濃度としては、体積で100%以下が好ましく、より好ましくは体積で1%以下が望ましい。この希釈した反応ガスの流量としては反応を定常的に進ませるに十分な量であればよい。反応溶液が100ml以下の場合は、通常1ml/分から500ml/分の流量で好ましく、半導体超微粒子の製造反応を行うことができる。
【0032】
本発明におけるポリマーとは、半導体超微粒子分散液製造で使用した溶媒に可溶なポリマーであればよく、用途に応じて選択すればよいことから特に制限はないが、具体的な好ましい例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチル)メタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合ポリマー、アクリロニトリルとスチレンの共重合ポリマー、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0033】
本発明におけるポリマー溶液とは、半導体超微粒子分散液製造で選択使用した溶媒には溶解しないポリマーを使用した場合に用いられる。ポリマー溶液に使用される溶媒としては、前記選択溶媒に溶解しないポリマーを溶解でき、半導体超微粒子分散液製造に使用した溶媒と相溶性が良ければ、特に制限はない。
【0034】
製造された半導体超微粒子分散液にポリマーまたはポリマー溶液を加える。
【0035】
本発明においてポリマーを加える場合、加えるポリマーの重量は半導体超微粒子分散液製造で使用した溶媒の室温での溶解度以下の重量であればよく特に制限はない。
【0036】
本発明においてポリマー溶液を加える場合、ポリマー溶液中に含まれるポリマーの重量は、使用したポリマーを溶解するために使用する溶媒の室温での溶解度以下の重量であればよく特に制限はない。
【0037】
本発明においてポリマー溶液を加える場合、半導体超微粒子分散液製造で使用した溶媒は、ポリマー溶液製造に使用したポリマーに対しては貧溶媒のため、ポリマー溶液製造に使用した溶媒と、半導体超微粒子分散液製造に使用した溶媒との間の体積比により、ポリマーのみが析出沈澱する場合がある。このことから、ポリマー溶液製造に使用した溶媒と、半導体超微粒子分散液製造に使用した溶媒との間の体積比は、半導体超微粒子分散液にポリマー溶液を加えたとき、室温での溶解度以下の重量が溶解したポリマー溶液中のポリマーのみが、析出沈澱しない体積比ならよく、特に制限はない。
【0038】
次に、この半導体超微粒子分散液にポリマーまたはポリマー溶液を加え得られた溶液を、ポリマーに対しては貧溶媒であり、未反応の金属化合物に対しては良溶媒である溶媒と混合し、析出沈澱させることにより半導体超微粒子とポリマーとの析出物を得る。
【0039】
本発明において、ポリマーに対しては貧溶媒であり、未反応の金属化合物に対しては良溶媒である溶媒は、ポリマーの種類と金属化合物の種類に応じて選択すればよく特に制限はない。
【0040】
本発明において、析出沈澱させる場合、ポリマーに対しては貧溶媒であり、未反応の金属化合物に対しては良溶媒である溶媒の体積は、未反応の残留金属化合物が可溶しかつ所望の析出物が形成される体積以上の体積であればよく特に制限はない。
【0041】
このようにしてできた析出物を濾別し、減圧乾燥することで、分散性並びに安定性に優れた半導体超微粒子分散材料が得られる。
【0042】
析出沈澱した析出物を濾別するには、濾紙を用いる方法や、ガラスフィルターを用いる吸引濾過など、従来公知の方法が適宜採用されることは言うまでもない。
【0043】
濾別された析出物を、減圧乾燥することで析出物に残留している溶媒を除去する。減圧乾燥の方法は、従来公知の方法が適宜採用されることは言うまでもない。
【0044】
この安定化された半導体超微粒子分散材料は、超微粒子が凝集することなく分散性に優れ、また、他の溶媒への再溶解も容易に行え、種々の用途の中間原料として操作性良く用いることができる。超微粒子の分散性やその安定性を測る手段としては、一般的に知られている方法、例えば透過型電子顕微鏡による観察や解析、紫外可視吸収スペクトル測定法を用いることができる。
【0045】
【実施例】
実施例1
過塩素酸カドミウム六水和物(Cd(ClO42・6H2O)とスチレン(C65CHCH2)をそれぞれ2.0×10-3mol/l、4.0×10-2mol/lの濃度で溶解したアセトニトリル溶液45mlをガス導入管をつけたパイレックスガラス製角セルにいれ、溶液を攪拌しながらアルゴンイオンレーザーの457.9nmの発振線を照射した。この溶液に照射される光強度をパワーメーターで測定し、0.02W/cm2となるようにした。このようにレーザー光を照射しながら硫化水素ガスを0.02体積%になるように、ヘリウムガスで希釈した混合ガスを270ml/minの流量で攪拌している溶液中に導入し、1時間反応させ硫化カドミウム超微粒子分散液を得た。
【0046】
この分散液の紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、430nmに吸収の肩があり、540nm付近から吸収が立ち上がるスペクトル形状を示した。一般に知られているバルクの硫化カドミウムの紫外可視吸収スペクトルと比較すると光吸収は短波長側へ移動しており、閉じ込め効果が出現していることがわかる。すなわち、超微粒子として生成していることが示されている。
【0047】
次に、0.6gのポリメチルメタクリレートを上記の分散液に加え、溶解させ均一な黄色透明の溶液とした。次に、この溶液をピペットに採り、900mlのメタノールに滴下し、硫化カドミウム超微粒子を含有するポリマーの析出物を得た。
【0048】
次にこの析出物を含むメタノール溶液を濾斗で濾過することで、メタノールを取り除いた。溶媒を完全に除去するために、この析出物を真空デシケーターにいれ、2mmHgの減圧下で24時間放置することで粉体状の硫化カドミウム超微粒子分散材料を得た。
【0049】
このようにして得られた分散材料0.6gをアセトニトリル6mlに再溶解した後、シャーレに滴下し、真空デシケーター中で減圧乾燥することにより溶媒を除去し、黄色透明の硫化カドミウム超微粒子分散フィルムとした。
【0050】
硫化カドミウム超微粒子分散液と硫化カドミウム超微粒子分散フィルムの紫外可視吸収スペクトルを比較したところスペクトル形状に違いが見られないことから、分散材料中では高密度化に伴う硫化カドミウム超微粒子の凝集は生じていないことが示され、分散性にすぐれていることがわかった。
【0051】
また、得られたフィルムを室温、室内灯のもと30日間大気中で放置した後、紫外可視吸収スペクトルを測定したところスペクトル形状に変化はなく、硫化カドミウム超微粒子が安定に存在していることがわかった。
【0052】
実施例2
本実施例における硫化カドミウム超微粒子分散液は、実施例1と同様の操作で製造した。
【0053】
次に、得られた分散液を減圧乾燥により約5mlに濃縮した後、3gのアクリロニトリル−スチレン共重合ポリマーを15mlのジメチルホルムアミドに溶解したポリマー溶液を3ml採り、濃縮した分散液に加え、攪拌し均一な黄色透明の溶液とした。
【0054】
次に、この溶液をピペットに採り、200mlのメタノールに滴下し、硫化カドミウム超微粒子を含有するポリマーの析出物を得た。
【0055】
次にこの析出物を含むメタノール溶液を濾斗で濾過することで、メタノールを取り除いた。溶媒を完全に除去するために、この析出物を真空デシケーターにいれ、2mmHgの減圧下で24時間放置し粉体分散材料を得た。
【0056】
このようにして得られた分散材料0.6gをアセトニトリル3mlとジメチルホルムアミド3ml、計6mlの混合溶媒に再溶解した後、シャーレに滴下し、真空デシケーター中で減圧乾燥することにより溶媒を除去し、黄色透明の硫化カドミウム超微粒子分散フィルムとした。
【0057】
硫化カドミウム超微粒子分散液と硫化カドミウム超微粒子分散フィルムの紫外可視吸収スペクトルを比較したところスペクトル形状に違いが見られないことから、分散材料中では高密度化に伴う硫化カドミウム超微粒子の凝集は生じていないことが示され、分散性にすぐれていることがわかった。
【0058】
また、得られたフィルムを室温、室内灯のもと30日間大気中で放置した後、紫外可視吸収スペクトルを測定したところスペクトル形状に変化はなく、硫化カドミウム超微粒子が安定に存在していることがわかった。
【0059】
比較例1
硫化カドミウム超微粒子分散液及びアクリロニトリル−スチレン共重合ポリマー溶液を加えた溶液は実施例2と同様な操作で製造した。
【0060】
次に、硫化カドミウム超微粒子分散液にアクリロニトリル−スチレン共重合ポリマー溶液を加えた溶液を、そのままシャーレに滴下し、真空デシケーター中で減圧乾燥することにより溶媒を除去することで、硫化カドミウム超微粒子分散フィルムを得た。
【0061】
得られたフィルムの紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、吸収の立ち上がりがブロードになっているのが見られた。これは、粒子が高密度化に伴い凝集し2次粒子を形成していることを示唆している。さらに、190nm〜900nmの測定波長全域で0.021の吸光度の増加が見られ、フィルムは黄色を呈しているが、不透明で白っぽく濁っている。これは、半導体超微粒子分散液中に含まれている未反応の残留金属化合物がフィルム中に析出することで、これ自身が散乱体となって光を散乱することによる見かけの吸収であり、透明性が低下していることがわかる。
【0062】
また、得られたフィルムを室温、室内灯のもと30日間大気中で放置しておいたところ、フィルムは無色となり、紫外可視吸収スペクトルを測定すると、硫化カドミウム超微粒子が完全に消失していることがわかった。このことから、未反応の残留金属化合物が硫化カドミウムの分解を促進していることがわかる。
【0063】
したがって、実施例2と比較例1との比較から、分散材料にすることで、半導体超微粒子の分散性が良く、しかも不純物であるところの残留金属化合物が除去された安定した材料が得られることがわかる。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、従来技術で達成されなかった未反応の金属化合物の除去、及び半導体超微粒子の分散性の向上及び安定性の向上が達成される。
【0065】
即ち、本発明の範囲外である比較例1は、未反応の金属化合物の除去が不十分であり、更に分散性の向上及び安定性の向上が達成されていない。これに対し、半導体超微粒子分散液に、ポリマーまたはポリマー溶液を加え得られた溶液を、ポリマーに対しては貧溶媒、未反応の金属化合物に対しては良溶媒であるところの溶媒と混合して析出沈澱させる本発明の範囲内である実施例1及び実施例2は、未反応の金属化合物が十分に除去されたことから、分散性及び安定性が優れている。
【0066】
従って、本発明の半導体超微粒子分散材料は、粉体の形であることから、他の組成成分や超微粒子との混合が容易であり、製品形態の選択の幅も広く、量産性に優れた中間材料として、光学材料、非線形光学材料、電子材料、センサー材料、医薬、農薬、触媒材料、無機材料、塗料・コーティング材料、化粧品材料への利用に好適である。

Claims (2)

  1. 金属化合物と単量体存在下、光を合成中の半導体超微粒子に照射して製造される半導体超微粒子分散液に、ポリマーまたはポリマー溶液を加えて得られた溶液を、ポリマーに対しては貧溶媒、未反応の金属化合物に対しては良溶媒であるところの溶媒と混合して析出沈澱させ、得られた析出物を濾別し、減圧乾燥することにより製造される半導体超微粒子分散材料。
  2. 金属化合物と単量体存在下、光を合成中の半導体超微粒子に照射して製造される半導体超微粒子分散液に、ポリマーまたはポリマー溶液を加えて得られた溶液を、ポリマーに対しては貧溶媒、未反応の金属化合物に対しては良溶媒であるところの溶媒と混合して析出沈澱させ、得られた析出物を濾別し、減圧乾燥することを特徴とする半導体超微粒子分散材料の製造方法。
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