JP3726151B2 - ディスク装置及びリムーバブル型磁気ディスク装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスク装置あるいは光ディスク装置等のディスク装置及びリムーバブル型磁気ディスク装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ、特にパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)の大きさは、デスクトップ形からラップトップ形、ノートブック形、更には手帳形というように小型化が進んでいる。これに伴い使用される磁気ディスク装置の小型化も3.5インチから2.5インチ、1.8インチ、更には1.3インチへと進んできた。光ディスク装置等においても磁気ディスク装置と同様に小型化が進む傾向にある。以下、磁気ディスク装置及び光ディスク装置等を総称して単にディスク装置と呼ぶ。
【0003】
このようなディスク装置の小型化に伴い出現してきたカード型と称される着脱式ディスク装置の機械的着脱及び実装技術としては、例えば特開平5−181565号公報や特開平4−356785号公報に記載のものがある。また、電気的接続インタフェースまで含めて標準化を図る代表的なものとしては、社団法人日本電子工業振興協会(JEIDA)及び米国PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)が協調して進めてきたパソコン用ICメモリカードの標準仕様がある。これは、当初ディスク装置を対象とするものではなかったがディスク装置の小型化に伴いディスク装置等も含めたものに拡張されてきた。このような可搬型の小型ディスク装置は、パソコンのメモリーカードスロットに直接あるいは中継ケーブルを介して間接的に接続され、ディスク装置自身を部分的に露出あるいは全体的に露出させた状態で動作させることもある。このため、ディスク装置自身から放射される不要輻射ノイズが規準値を超えないことや静電気放電による破壊や性能劣化の防止に配慮することが重要となる。
【0004】
また近年、情報技術機器を含む電気機器に対する電磁的両立性(EMC:Electro-Magnetic Compatibility)、すなわち、電磁的環境においてその環境の中にある対象に対して電磁的妨害を与えないで満足に機能できる装置やシステムの能力がいままで以上に要求されるようになってきた。例えば欧州連合域内では、1996.1.1以降、欧州EMC指令/336により所定のEMC規格を満足していることを確認し適合宣言がなされた上で、CEマークを表示した電気機器以外は市場での流通を禁止されることとなった。こうしたEMC規制はその他の地域も含め全世界的なものとなりつつある。
【0005】
ここで、上記EMC規制項目の中には静電気放電(ESD:Electrostatic Discharge)試験によるものがある。国際規格IEC801−2(1991−04)によると、一般に被試験機器やシステムが多様性をもつためこれらに対する静電気放電の影響を一般的な判断基準で評価し、確立することは困難である。被試験機器の動作条件と機能的仕様により試験結果は以下のような性能評価項目に分類される。
【0006】
1.仕様限度内の正常動作。
【0007】
2.自己回復性のある機能や動作の一時的な劣化や損失。
【0008】
3.操作者の介入やシステムリセットを要する機能や動作の一時的な劣化や損失。
【0009】
4.機器(素子)又はソフトウェアの損傷又はデータの損失による回復できない機能の劣化や損失。
【0010】
また試験条件としては被試験機器への直接放電である接触放電試験と気中放電試験及び間接放電試験がある。放電電圧には2、4、6、8、15kV等の段階がある。
【0011】
不特定多数のパソコン等への組込み部品である内蔵形の小型磁気ディスク装置(ハードディスクドライブ)は、組込み部品単品としては動作機能及び外装ケースをもたない。したがって、上記1〜3の項目について評価することは困難であるので、先ず非動作状態にある小型磁気ディスク装置単品の所定の取扱い部位への直接放電と近接部位への間接放電を加えた後にパソコンへ組込んで動作させることにより上記4の項目について評価し、この結果をEMC規制適合性判断の一部分とすることが国際的認証機関TUVより認められている。
【0012】
しかしながら、小型磁気ディスク装置を組込んだパソコン等としては、上記1〜3の項目について動作状態で静電気放電(ESD)試験を受けなければならず、更に可搬型の小型ディスク装置ではディスク装置自身を部分的にあるいは全体的に露出させた状態で動作させなければならない動作環境もあるので、小型磁気ディスク装置自身として動作状態での静電気放電に対する耐力を高めることが必要である。
【0013】
こうした背景において、可搬型データ記憶装置に関係した静電気放電対策の従来技術については、特開昭60−83287号公報や特開平7−58501号公報等に記載のものがある。これらは、装置が非動作状態の場合の静電気放電に対する耐力を高める技術であり、動作状態の場合の静電気放電に対する耐力を高めるものではない。
【0014】
動作状態の場合の静電気放電に対する耐力を高める効果を狙った技術としては、特開昭61−175991号公報や特開平1−299091号公報等に記載のものがあるが、ディスク装置に特に有効としたものではない。
【0015】
また、可搬型データ記憶装置の分野を離れ、データ電送分野では、光結合を用いることで電気回路を分離することにより静電気放電に対する耐力を高める技術がある。こうした光結合による電気回路分離用のICの例としては、MaximIntegrated Products,Inc.社のMAX1490Aがある。このICには、光結合による双方向のデータ電送系と、トランス及びDC−DCコンバータからなる電力電送系を含み、仕様上500Vrmsの分離を実現している。
【0016】
ここで、小型磁気ディスク装置自身として要求される動作状態での静電気放電(ESD)に対する耐力は、例えばIEC801−2による接触放電試験では4kV、気中放電試験では8kVである。
【0017】
以上のような観点から従来の磁気ディスク装置について、図3に示し検討してみる。図示するように従来の磁気ディスク装置は、ディスクドライブ・エンクロージャ201内のヘッドディスクアッセンブリ(HDA)202と、このHDA202を除いた構成部、主として電気回路部が搭載されたプリント回路基板(PCB)208とで主構成をなす。
【0018】
上記HDA202は、磁気ディスク203、磁気ヘッド204、スピンドルモータ205、リード/ライトプリアンプ207及びヘッド位置決め機構であるヘッドアクチュエータ(ボイスコイルモータ(VCM)206を含む)等からなる。
【0019】
またPCB208は、パソコン等の上位情報処理装置(図示せず)とデータ、信号の授受をすると共に上位情報処理装置から電源を受けるコネクタ211を備え、このコネクタ211を介しての前記データ、信号の授受及び電源供給により前記HDA202の制御、前記上位情報処理装置及びHDA202相互間におけるデータ、信号の処理等を行う電気回路を構成する。このPCB208は、上位情報処理装置(図示せず)と接続するための前記コネクタ211の他、フェライトビーズ220,223、インタフェースドライブコントローラ212、リード/ライトチャンネル215、マイクロプロッセサ216及びスピンドルモータ・VCMドライブ回路219等を備えてなる。なお、225は上位情報処理装置グランド、233は上位情報処理装置インタフェースライン、229は上位情報処理装置DC5V電源ライン、226はPCBグランド、227はフェライトビーズ220を経たHDA202用DC5V電源ライン、228はHDAグランド、232はフェライトビーズ223を経たPCB108用DC5V電源ライン、238はバスラインである。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
図示するように、従来の一般的な磁気ディスク装置では、上位情報処理装置とのインタフェースライン233、マイクロプロッセサ216によるシステム制御部及び位置決めディジタルサーボ制御部等のディジタル回路部分と、ディスク203上のデータの読出し回路部やスピンドルモータ205の回転検出回路部等のアナログ回路部分とが混在している。
【0021】
このうちディジタル回路部分は、振幅レベルの比較的大きな飽和領域の2値信号を利用し、入力はスレシュホールドレベルでH/L判別されること、及び、一般に誤動作タイミングはクロック立上がり/立下がりタイミングに限定されることにより、アナログ回路部分に比較して耐ノイズ性は高い。
【0022】
これに対してアナログ回路部分、特にデータの読出し回路部の耐ノイズ性は極めて低い。すなわち、このデータの読出し回路部における、ヘッド204からの読出し再生信号は、約0.5mVppと極めて微小なアナログ信号であり、これをプリアンプ207出力で100mVpp程度、最終的には約60dB(1000倍)近く増幅して後段のアンプ出力で500mVppないし1Vpp程度にした後にパルス化及びディジタル化する。このため、読出し動作中に受ける静電気放電(ESD)により信号ライン、グランド225,226,228及び電源ライン227,229へ誘導結合、容量結合、伝導結合等により載った比較的小さな外来ノイズさえもヘッド204からの読出し再生信号に載る増幅されたノイズとなって読み出され、データエラーや磁気ディスク装置動作のハングアップを引き起こすことがある。外来ノイズが大きい場合には回路破壊を引き起こすこともある等の問題があった。
【0023】
トランスデューサからの再生信号レベルが数mV以下と微小である点は光ディスク装置においても磁気ディスク装置と同様であるので、光ディスク装置においても、読出し動作中に受ける静電気放電等によりデータエラーやディスク装置動作のハングアップ、更には回路破壊を引き起こすことがある等の問題があった。
【0024】
本発明の目的は、電磁的両立性(EMC)に優れ、非動作中だけでなく動作中においても静電気放電(ESD)による外来ノイズに対して耐力が高く、読出しデータエラーや装置動作のハングアップ、更には回路破壊を引き起こすことのないディスク装置及びリムーバブル型磁気ディスク装置を提供することにある。
【0029】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、ディスク状記憶媒体、この記憶媒体を回転させるスピンドルモータ、前記記憶媒体に対してデータの読書きを行うトランスデューサ、このトランスデューサを前記記憶媒体上の所定位置に位置付けるアクチュエータ、前記トランスデューサからの微小再生信号を増幅するアンプを備えてなるトランスデューサディスクアッセンブリと、
上位情報処理装置とデータ、信号の授受をすると共に上位情報処理装置から電源を受けるコネクタを備え、このコネクタを介しての前記データ、信号の授受及び電源供給により前記トランスデューサディスクアッセンブリの制御、前記上位情報処理装置及びトランスデューサディスクアッセンブリ相互間におけるデータ、信号の処理を行う電気回路と、
前記トランスデューサディスクアッセンブリ及び電気回路部分を導電性素材による電磁ノイズ遮蔽機能をもって覆い形成するエンクロージャとを具備してなるディスク装置において、
前記電気回路は微小なアナログ信号が伝送される第2電気回路部とこの第2電気回路部を除き前記コネクタを含む第1電気回路部とに電気的に分離された状態で2分され、
前記第1電気回路部のグランドは前記コネクタを介して前記上位情報処理装置のグランドに接続可能で、
前記アンプは前記第2電気回路部と電源及びグランドが各々共通接続され、
前記第1電気回路部及び第2電気回路部相互間にはそれら相互間のデータ、信号の授受を光学的結合により行う光学的データ、信号授受手段と、
前記エンクロージャに設けられ、前記導電性素材を前記上位情報処理装置のグランドと導通可能にするグランド導通手段と、
前記第1電気回路部と第2電気回路部のグランド相互間に設けられたインダクタンスと抵抗の直列回路とを備えることを特徴とする。
【0030】
また本発明は、前記第1の特徴のディスク装置において、エンクロージャの導電性素材と第1電気回路部及び第2電気回路部との間に、4kV以上の耐電圧をもつ絶縁手段を備えることを第2の特徴とする。
【0031】
更に本発明は、磁気ディスク、この磁気ディスクを回転させるスピンドルモータ、前記磁気ディスクに対してデータの読書きを行う磁気ヘッド、この磁気ヘッドを前記磁気ディスク上の所定位置に位置付けるアクチュエータ、前記磁気ヘッドからの微小再生信号を増幅するアンプを備えてなるヘッドディスクアッセンブリと、
上位情報処理装置とデータ、信号の授受をすると共に上位情報処理装置から電源を受けるコネクタを備え、このコネクタを介しての前記データ、信号の授受及び電源供給により前記ヘッドディスクアッセンブリの制御、前記上位情報処理装置及びヘッドディスクアッセンブリ相互間におけるデータ、信号の処理を行う電気回路と、
前記ヘッドディスクアッセンブリ及び電気回路部分を導電性素材による電磁ノイズ遮蔽機能をもって覆い形成するエンクロージャとを具備してなるリムーバブル型磁気ディスク装置において、
前記電気回路は微小なアナログ信号が伝送される第2電気回路部とこの第2電気回路部を除き前記コネクタを含む第1電気回路部とに電気的に分離された状態で2分され、前記第1電気回路部のグランドは前記コネクタを介して前記上位情報処理装置のグランドに接続可能で、
前記アンプは前記第2電気回路部と電源及びグランドが各々共通接続され、
前記第1電気回路部及び第2電気回路部相互間にはそれら相互間のデータ、信号の授受を光学的結合により行う光学的データ、信号授受手段と、
前記エンクロージャには前記導電性素材を前記上位情報処理装置のグランドに導通可能のグランド導通手段と、
前記第1電気回路部から第2電気回路部への電源供給を、両電気回路部相互間を電気的に分離した状態で行う電源供給手段と、
前記第1電気回路部と第2電気回路部のグランド相互間に接続されたインダクタンスと抵抗の直列回路と、
前記エンクロージャの導電性素材と前記第1電気回路部及び第2電気回路部との間に設けられた4kV以上の耐電圧をもつ絶縁手段と、
前記コネクタの入力ピンと前記第1電気回路部のグランド間に接続され、前記エンクロージャの前記上位情報処理装置への着脱に連動して開閉するスイッチとを備えることを第3の特徴とする。
【0032】
更に、前記スイッチを備えることによっては、エンクロージャが上位情報処理装置に装着、接続されていないときにはスイッチは閉じた状態であり、コネクタの入力ピンはグランドに接続され、コネクタの入力ピンに対する静電気放電が発生した場合でも内部回路の破壊が防止される。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0034】
図1は本発明によるディスク装置の一実施形態である磁気ディスク装置の一例を示すブロック図、図2は図1に示す本発明装置が適用されたPCMCIAカード型のリムーバブル型磁気ディスク装置の一例を示す斜視図である。
【0035】
図示するように本発明ディスク装置(磁気ディスク装置)は、ディスクドライブ・エンクロージャ101内のヘッドディスクアッセンブリ(HDA)102と、このHDA102を除いた構成部、主として電気回路部が搭載されたプリント回路基板(PCB)108とで主構成をなす。
【0036】
上記HDA102は、ディスク状の磁気記録媒体である磁気ディスク103と、このディスク103を回転させるスピンドルモータ105と、ディスク103に対しデータを電磁変換により読書きする磁気ヘッド104と、ディスク103上の所定位置(トラック)へヘッド104を位置決めするヘッド位置決め機構であるヘッドアクチュエータ(ボイスコイルモータ(VCM)106を含む)と、リード/ライトプリアンプ107等から構成される。
【0037】
またPCB108は、パソコン等の上位情報処理装置(図示せず)とデータ、信号の授受をすると共に上位情報処理装置から電源を受けるコネクタ111を備え、このコネクタ111を介しての前記データ、信号の授受及び電源供給により前記HDA102の制御、前記上位情報処理装置及びHDA102相互間におけるデータ、信号の処理等を行う電気回路を構成する。このPCB108は、ここでは上位情報処理装置と接続するための前記コネクタ111の他、フェライトビーズ120,122、インタフェースドライブコントローラ112、リード/ライトチャンネル115、マイクロプロッセサ116及びスピンドルモータ・VCMドライブ回路119等で主構成をなす。なお、113はバッファメモリ、117はクリスタル発振器、118はサーボゲートアレイである。また、125は上位情報処理装置グランド、133は上位情報処理装置インタフェースライン、129は上位情報処理装置DC5V電源ライン、126はPCB108の後述第1電気回路部グランド、127は同じく第2電気回路部グランド、128はHDAグランド、120aはフェライトビーズ120を経た後述第2電気回路部用DC5V電源ライン、130はフェライトビーズ122を経た後述第1電気回路部用DC5V電源ライン、131は後述第2電気回路部用DC5V電源ライン、132はHDA102用DC5V電源ライン、138はバスラインである。
【0038】
ここで、本発明装置においては、PCB108は電源、グランド、及びデータライン、信号ラインについて電気的に分離された第1電気回路部109と第2電気回路部110とに2分して構成されている。この場合、第1電気回路部109は、ここではコネクタ111と、フェライトビーズ120,122と、バッファメモリ113を有するインタフェースドライブコントローラ112とを備えてなる。この第1電気回路部109は、上位情報処理装置とは電源、グランド、及びデータライン、信号ラインについて各々電気的に共通とされている(分離されていない)。第2電気回路部110は、ここではリード/ライトチャンネル115と、クリスタル発振器117を有するマイクロプロッセサ116と、サーボゲートアレイ118と、スピンドルモータ・VCMドライブ回路119とを備えてなる。この第2電気回路部110は、HDA102(リード/ライトプリアンプ107)とは電源、グランド、及びデータライン、信号ラインについて、各々電気的に共通とされいる(分離されていない)。換言すれば、HDA102(アンプ107)も上記第1電気回路部109とは電気的に分離されており、この意味でHDA102(アンプ107)は第2電気回路部110に含まれるものと考え得る。
【0039】
このように、第1電気回路部109と第2電気回路部110とは電気的に分離される構成となっており、第1電気回路部109と第2電気回路部110との間のデータ、信号は、例えば光学的結合により、ここではデータシグナル・フォトカプラ114により授受可能となっている。第1電気回路部109と第2電気回路部110とを電気的に分離した状態でそれら相互間でデータ、信号の授受を行うには、その伝送媒体として光、音波、電波等を用いることが可能であるが、ここでは、音波や電波は構成上あるいは周辺部に与える音響学的あるいは電磁気的影響から実用的ではなく、赤外線等の光通信による光学的結合、例えば上記データシグナル・フォトカプラ114が最適である。
【0040】
また、第1電気回路部109から第2電気回路部110へのDC5V電源も例えば光学的結合により、ここではパワー・フォトトランスミッタ121により供給可能となっている。このような第1電気回路部109から第2電気回路部110への、電源ライン、グランドを各々電気的に分離しての電源供給は、上記パワー・フォトトランスミッタ121のような光学的結合の他、発電機や絶縁トランス等を用いた電磁誘導結合で行っても、またDC−DCコンバータを用いて行ってもよい。また、第2電気回路部110自身を、その動作電源として第1電気回路部109側に依存しない電池等を備えて構成してもよい。
【0041】
また、第1電気回路部109と第2電気回路部110のグランド126,127相互間には、インダクタンス142と抵抗143の直列回路が接続されている。この場合、インダクタンス142と抵抗143は等価的に存在すればよく、必ずしも部品として実際に接続しなければならないものではない。
【0042】
更に、ディスクドライブ・エンクロージャ101は、EMI(電磁妨害)シールド効果を得るためにシート状、メッシュ状あるいは粉体状等の導電性素材を含んで形成され、この導電性素材がアース専用のコネクタ123により上位情報処理装置のグランド、ここではシャーシグランド124に電気的に接続されるよう構成されている。なお、コネクタ123はピン形状であってもブラシ形状であっても、その他の形状であってもよいが、放射ノイズのシールド効果を十分なものとするには表皮効果による高周波インピーダンスの増大が小さいことが要求される。なお、図3にはブラシ形状のコネクタ123が例示されている。
【0043】
また、このディスクドライブ・エンクロージャ101の導電性素材と第1電気回路部109及び第2電気回路部110との間には、静電気放電に対して4kVより大きな耐電圧をもつ絶縁手段(図示せず)が施されている。この絶縁手段は、上記ディスクドライブ・エンクロージャ101の導電性素材と第1電気回路部109及び第2電気回路部110との間に、例えば、電気絶縁材(図示せず)を挿入し、かつ、その電気絶縁材表面に沿った所定の最小沿面距離及び所定の最小空間距離を確保することにより構成される。なお、安全確保のために回路間の絶縁確保に必要な最小沿面距離及び最小空間距離は、国際的製品安全規格IEC950の2.9.2.2で回路動作電圧に対応して規定されているのでこれに基いて設定できる。前記絶縁手段のもつ耐電圧を4kV以上としたのは、これにより小型磁気ディスク装置におけるEMC規格を満足することになるからである。
【0044】
また、コネクタ111のライン129,133との各接続ピン(コネクタ入力ピン)には、ディスクドライブ・エンクロージャ101の上位情報処理装置への着脱に連動してそのピンとグランド126の間を各々開閉するスイッチ144が設けられている。
【0045】
次に上述本発明装置の動作について説明する。
【0046】
通常動作時には、パソコン等の上位情報処理装置のインタフェースライン133と上位情報処理装置DC5V電源ライン129と上位情報処理装置グランド125は、コネクタ111により本発明装置側の電気回路(第1電気回路部109)と接続されて上位情報処理装置及び第1電気回路部109相互間のデータ、主として読書きデータ及び制御命令(信号)の授受と、上位情報処理装置から第1電気回路部109へのDC5V電源の供給がなされる。また、上位情報処理装置及び第1電気回路部109は共通のグランド124〜126とされる。
【0047】
上位情報処理装置からの読書きデータ及び制御命令の授受はインタフェースドライブコントローラ112がマイクロプロセッサ116の制御のもとで行う。マイクロプロセッサ116は、上位情報処理装置からの読書き制御命令に従いHDA102での読書きを実行するためにスピンドルモータ・VCMドライブ回路119を介してスピンドルモータ105への駆動電流を制御してディスク103を所定の速度で回転させたり、ヘッドアクチュエータの一部をなすVCM106への駆動電流を制御してヘッド104の所定のトラック上への移動及び位置決めを行う。
【0048】
インタフェースドライブコントローラ112は、上位情報処理装置からの読書き制御命令に従いマイクロプロセッサ116に所望位置へのヘッドアクチュエータの位置決め制御を行わせる。また、ヘッド104が所望トラック上の所望セクタ位置に到達したタイミングでリード/ライトチャンネル115へのNRZデータ134送受の制御とリード/ライトコントロール137によるリード/ライト動作の制御をすることにより、所望ヘッド所望トラック上の所望セクタ位置でデータの読書き動作を行わせる。
【0049】
リード/ライトチャンネル115は、またヘッドアクチュエータの位置決め制御に必要なディスク103上のデータトラックのサーボデータ部から読み出されるサーボデータ139をマイクロプロセッサ116へ供給する。
【0050】
ヘッド104での読出し再生信号は約0.5mVppと極めて微小なアナログ信号であり、これをリード/ライトプリアンプ107の出力で100mVpp程度、最終的に約60dB(1000倍)近く増幅して後段のアンプ出力、すなわちリード/ライトチャンネル115内のピーク検出入力又はPRML方式サンプリングのA/D入力段階では500mVppないし1Vpp程度のアナログ信号にした後にパルス化及びディジタル化する。この極めて微小なアナログ信号を含むHDA102、換言すれば第2電気回路部110(HDA102は第2電気回路部110と電源、グランドが共通で、第1電気回路部109とは電気的に分離されているので電気的には第2電気回路部110と等価になっている)は、コネクタ123で上記グランド124に接続されたディスクドライブ・エンクロージャ101により静電気放電を含む誘導性及び容量性の外来放射ノイズからシールドされる。
【0051】
また、インタフェースドライブコントローラ112を含む第1電気回路部109と微小なアナログ信号を含む第2電気回路部110とのデータ、信号の授受、及び、同第1電気回路部109から第2電気回路部110への電源の供給は、グランドを異にするデータシグナル・フォトカプラ114及びパワー・フォトトランスミッタ121による光結合によって各々行われる。これにより、両電気回路部109,110は実質的には電気回路として分離され、第2電気回路部110は上位情報処理装置からのインタフェースライン133、DC5V電源ライン129及びグランド125経由の外来伝導ノイズに対して耐ノイズ性が著しく改善される。
【0052】
ディスクドライブ・エンクロージャ101の導電性素材と第1電気回路部109及び第2電気回路部110との間には、静電気放電に対して4kVより大きな耐電圧をもつ絶縁手段が施されている。これにより、ディスクドライブ・エンクロージャ101に対して静電気放電が発生した場合に、ディスクドライブ・エンクロージャ101から更に第1電気回路部109及び第2電気回路部110に静電気の再放電が発生して、例えばそれらの回路破壊、データエラー、装置動作のハングアップの発生が防止される。
【0053】
コネクタ111の各入力ピンのスイッチ144は、ディスクドライブ・エンクロージャ101の上位情報処理装置への着脱に連動して開閉する。すなわち、ディスクドライブ・エンクロージャ101が上位情報処理装置に装着、接続されているときには各スイッチ144は開いた状態にあり、装置動作に必要な電源供給、データ、信号の授受が可能である。逆に、ディスクドライブ・エンクロージャ101が上位情報処理装置に装着、接続されていないときには各スイッチ144は閉じた状態であり、コネクタ111の各入力ピンはグランドに接続される。これにより、コネクタ111の入力ピンに対する静電気放電が発生した場合でも内部回路の破壊が防止される。
【0054】
また、第1電気回路部109と第2電気回路部110のグランド126,127相互間には、インダクタンス142と抵抗143の直列回路が接続されているので装置動作に影響を与えることなく第2電気回路部110から第1電気回路部109への帯電電荷の比較的緩やかな放出が可能である。これにより、第2電気回路部110に静電気が過度に蓄積してこの第2電気回路部110から第1電気回路部109ないしその他の部分に静電気放電が発生し、装置自身及び装置動作に悪影響(回路破壊、データエラー、装置動作のハングアップの発生)を及ぼすことが防止される。また特に、インダクタンス142の存在によっては高調波成分の阻止機能をもつことになり、第1電気回路部109のデジタル系ノイズが第2電気回路部110の微小なアナログ信号(再生信号)に重畳することが防止される。なお、前述したようにHDA102は電気的には第2電気回路部110に含まれるものと考え得るので、第1電気回路部109のデジタル系ノイズがHDA102中のリード/ライトプリアンプ107からの極めて微小なアナログ信号(再生信号)に重畳することも防止されるといえる。
【0055】
ここで、抵抗143の抵抗値設定について説明する。
【0056】
静電気放電について考えるときの対象電圧はkVオーダであるので約5V以下である装置動作電圧は無視できる。また、インダクタンス142はここで考える帯電電荷の比較的緩やかな放出が直流とみなせるのでその抵抗成分を無視できる。そこで、第2電気回路部110での発生帯電電荷をQ(t)[クーロン/秒]、蓄積電荷はQ(t)dt[クーロン]、抵抗143の抵抗値Rを流れる放出電流はI、第2電気回路部110に対する相対帯電電位をVsとして、このVsが第1電気回路部109と第2電気回路部110との間の電気絶縁耐電圧(4kV)を越えないようにすることとすると、
Vs=I・R
I=−d/dt∫Q(t)dt
|Vs|<4[kV]
となる。
【0057】
これにより、
R<|4[kV]/d/dt∫Q(t)dt|
となる。
【0058】
実際上は、
R<|4[kV]/MaxQ(t)|
を満足する大きなRの抵抗値を、帯電電荷の比較的緩やかな放出を可能とする抵抗値として設定することができる。
【0059】
ここで、第1電気回路部109と第2電気回路部110との間の静電容量C[ファラッド]を用いると、
∫Q(t)dt=C・Vs
であるので、MaxQ(t)は第1電気回路部109と第2電気回路部110との間の静電容量C[ファラッド]を測定し、Rを∞としたときのVs変化を観測してMax d/dt Vsを測定することにより、
MaxQ(t)=C・Max d/dt Vs
として求めることができる。このとき、静電気放電及び回路動作に関係する高周波成分は除外する。
【0060】
なお、図1に示す本発明装置は、図2に示すようなPCMCIAカード型のリムーバブル型磁気ディスク装置のみに適用されるものでなく、例えば各種情報処理装置への内蔵組込み用のディスク装置についても適用可能である。
【0061】
また、上述実施形態では、本発明を磁気ディスク装置に適用した場合について述べたが、これのみに限定されることもない。例えば、MR磁気ヘッド等の磁気ヘッドに代わるトランスデューサ(光ヘッド)からの読出し再生信号レベルが数mV以下と微小である点は光ディスク装置においても上述磁気ディスク装置と同様であるので、本発明はこのような光ディスク装置等のディスク装置にも同様に適用でき、同様の効果が得られる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、電気回路を、微小なアナログ信号を扱う第2電気回路部とこれを除く第1電気回路部とに電気的に分離し、第1電気回路部のグランドを上位情報処理装置のグランドに接続可能とし、トランスデューサディスクアッセンブリのアンプを第2電気回路部と電源及びグランドを各々共通に接続した。また、第1及び第2電気回路部間にはそれらの間のデータ、信号の授受を光学的に行う光学的データ、信号授受手段を設け、トランスデューサディスクアッセンブリ及び電気回路部分を導電性素材による電磁ノイズ遮蔽機能をもって覆うエンクロージャには前記導電性素材を上位情報処理装置のグランドに導通可能のグランド導通手段を設けたので、電磁的両立性に優れ、非動作中だけでなく動作中においても静電気放電による外来ノイズに対して耐力が高く、読出しデータエラーや装置動作のハングアップ、更には回路破壊を引き起こすことのない装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるディスク装置の一実施形態である磁気ディスク装置の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す本発明装置が適用されたPCMCIAカード型のリムーバブル型磁気ディスク装置の一例を示す斜視図である。
【図3】従来装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
101…ディスクドライブ・エンクロージャ、102…ヘッドディスクアッセンブリ;HDA(トランスデューサディスクアッセンブリ)、103…磁気ディスク、104…磁気ヘッド(トランスデューサ)、105…スピンドルモータ、106…ボイスコイルモータ(VCM)、107…リード/ライトプリアンプ、108…プリント回路基板(PCB)、109…第1電気回路部、110…第2電気回路部、111…コネクタ、112…インタフェースドライブコントローラ、113…バッファメモリ、114…データシグナル・フォトカプラ(光学的データ、信号授受手段)、115…リード/ライトチャンネル、116…マイクロプロッセサ、117…クリスタル発振器、118…サーボゲートアレイ、119…・スピンドルモータ・VCMドライブ回路、120、122…フェライトビーズ、121…パワー・フォトトランスミッタ(電源供給手段)、123…コネクタ(グランド導通手段)、124…上位情報処理装置シャーシグランド、125…上位情報処理装置グランド、126…第1電気回路部グランド、127…第2電気回路部グランド、128…HDAグランド、129…上位情報処理装置DC5V電源ライン、130…第1電気回路部用DC5V電源ライン、131…第2電気回路部用DC5V電源ライン、132…HDA102用DC5V電源ライン、133…上位情報処理装置インタフェースライン、134…NRZデータ、138…バスライン、139…サーボデータ、142…インダクタンス、143…抵抗、144…スイッチ。
Claims (3)
- ディスク状記憶媒体、この記憶媒体を回転させるスピンドルモータ、前記記憶媒体に対してデータの読書きを行うトランスデューサ、このトランスデューサを前記記憶媒体上の所定位置に位置付けるアクチュエータ、前記トランスデューサからの微小再生信号を増幅するアンプを備えてなるトランスデューサディスクアッセンブリと、
上位情報処理装置とデータ、信号の授受をすると共に上位情報処理装置から電源を受けるコネクタを備え、このコネクタを介しての前記データ、信号の授受及び電源供給により前記トランスデューサディスクアッセンブリの制御、前記上位情報処理装置及びトランスデューサディスクアッセンブリ相互間におけるデータ、信号の処理を行う電気回路と、
前記トランスデューサディスクアッセンブリ及び電気回路部分を導電性素材による電磁ノイズ遮蔽機能をもって覆い形成するエンクロージャとを具備してなるディスク装置において、
前記電気回路は微小なアナログ信号が伝送される第2電気回路部とこの第2電気回路部を除き前記コネクタを含む第1電気回路部とに電気的に分離された状態で2分され、
前記第1電気回路部のグランドは前記コネクタを介して前記上位情報処理装置のグランドに接続可能で、
前記アンプは前記第2電気回路部と電源及びグランドが各々共通接続され、
前記第1電気回路部及び第2電気回路部相互間にはそれら相互間のデータ、信号の授受を光学的結合により行う光学的データ、信号授受手段と、
前記エンクロージャに設けられ、前記導電性素材を前記上位情報処理装置のグランドと導通可能にするグランド導通手段と、
前記第1電気回路部と第2電気回路部のグランド相互間に設けられたインダクタンスと抵抗の直列回路とを備えることを特徴とするディスク装置。 - エンクロージャの導電性素材と第1電気回路部及び第2電気回路部との間に、4kV以上の耐電圧をもつ絶縁手段を備えることを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
- 磁気ディスク、この磁気ディスクを回転させるスピンドルモータ、前記磁気ディスクに対してデータの読書きを行う磁気ヘッド、この磁気ヘッドを前記磁気ディスク上の所定位置に位置付けるアクチュエータ、前記磁気ヘッドからの微小再生信号を増幅するアンプを備えてなるヘッドディスクアッセンブリと、
上位情報処理装置とデータ、信号の授受をすると共に上位情報処理装置から電源を受けるコネクタを備え、このコネクタを介しての前記データ、信号の授受及び電源供給により前記ヘッドディスクアッセンブリの制御、前記上位情報処理装置及びヘッドディスクアッセンブリ相互間におけるデータ、信号の処理を行う電気回路と、
前記ヘッドディスクアッセンブリ及び電気回路部分を導電性素材による電磁ノイズ遮蔽機能をもって覆い形成するエンクロージャとを具備してなるリムーバブル型磁気ディスク装置において、
前記電気回路は微小なアナログ信号が伝送される第2電気回路部とこの第2電気回路部を除き前記コネクタを含む第1電気回路部とに電気的に分離された状態で2分され、前記第1電気回路部のグランドは前記コネクタを介して前記上位情報処理装置のグランドに接続可能で、前記アンプは前記第2電気回路部と電源及びグランドが各々共通接続され、
前記第1電気回路部及び第2電気回路部相互間にはそれら相互間のデータ、信号の授受を光学的結合により行う光学的データ、信号授受手段と、
前記エンクロージャには前記導電性素材を前記上位情報処理装置のグランドに導通可能のグランド導通手段と、
前記第1電気回路部から第2電気回路部への電源供給を、両電気回路部相互間を電気的に分離した状態で行う電源供給手段と、
前記第1電気回路部と第2電気回路部のグランド相互間に接続されたインダクタンスと 抵抗の直列回路と、
前記エンクロージャの導電性素材と前記第1電気回路部及び第2電気回路部との間に設けられた4kV以上の耐電圧をもつ絶縁手段と、
前記コネクタの入力ピンと前記第1電気回路部のグランド間に接続され、前記エンクロージャの前記上位情報処理装置への着脱に連動して開閉するスイッチとを備えることを特徴とするリムーバブル型磁気ディスク装置。
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