JP3726141B2 - Ni基合金及び当該Ni基合金の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Ni基合金及び当該Ni基合金の製造方法であって、特に、HCP基型のNi基合金及び当該Ni基合金の製造方法に関する。
ある特定の2種類以上の金属を溶かし合わせると、ある限られた組成範囲で、成分金属の原子数が比較的簡単な整数比をなし、各成分金属の原子が結晶格子の単位胞の中で定まった位置をしめ、成分金属とは異なる複雑な構造を示す金属化合物が存在する場合がある。かかる化合物を、一般に金属間化合物と呼ぶ。
金属間化合物は、異種原子が結晶格子の特定の位置を示す規則構造を形成する。この規則構造のため、その変形を担う転位のバーガース・ベクトルは、通常の合金に比べて大きく、例えばB2型化合物中ではbcc中の転位の2倍の<111>超格子転位として存在する。
金属材料は、一般に0.5Tm(Tmは融点)以上の高温になると急速に軟化する。しかし、化合物は、0.7〜0.8Tmまでの高強度を保つ。規則構造は、原子の拡散経路を複雑にし、そのため高温強度並びにクリープ強度が他の合金に比べ高くなる。降伏応力が変形温度の上昇とともに増加する異常強化現象とよばれる特異な現象が、Ni3Alで発見されて以来、Ni3Ga、Ni3Ge、Co3Ti(L12型)、FeCo、CoTi、CoZr、CuZn、FeAl(B2型),Ag2MgZn(L21型)、Fe3Al(DO3型)、Ti3Al、Mn3Sn(D019型)などの種々の化合物において、この異常強化現象が見出されて、これが高温耐熱材料として化合物を魅力あるものとしている。
この異常強化現象は、化合物中の転位の運動形態、分解様式が温度の上昇に伴い変化することに起因する。一例として、化合物中、一般に転位は2本の超格子部分転位に分解し運動するが、この際、分解した転位間には逆位相境界(APB)と呼ばれる面欠陥が形成される。温度が上昇するとこのAPBのエネルギーの異方性に基づき、らせん転位の一部が、低エネルギーのAPBを形成するすべり面以外の面にミクロに交差すべりを起こす。この交差すべりした部分が転位の障害物として働き、異常強化をもたらすものがある。
従来使用されているNi基超合金では、FCC構造をベースとするLl型化合物が主に強化相として用いられている。これは、Ll型化合物が、温度の上昇に伴いその強度が上昇するという特有の異常強化現象を示すことに強く起因する。このため、Ni基超合金の合金組成選択は、多くの場合、Ll型化合物が安定に存在する領域に限られることになる。
従来使用されているNi基超合金の中にも、強化相として今回注目したHCP基化合物相を含有するものはいくつか存在する。
例えば、HCP基化合物相を含む可能性があると考えられる実用超合金として、Inconel 718、Inconel706、Incoloy901などが挙げられる。
なお、これまでに開発された超合金(Ni基超合金含む)全般に関する、力学特性、合金組成、組織形態などに関する基礎的な技術については、C.T.Simsによって知られている(C.T. Sims and W.C. Hagel, The superalloys, John wiley and sons, Toronto, 1972.)。また、超合金の中でも、特にFCCをベースとしD0 22 構造を有するNi3Nb(γ''相)を強化相とした、Inconel 718系合金に関する技術が知られている(Superalloys 718, 625, 706 and various derivatives : proceedings of the International Symposium on Superalloys 718, 625, 706 andVarious Derivatives, held June 26-29, 1994 / edited by Edward A. Loria)。
(非)特許文献1
C.T. Sims and W.C. Hagel, The superalloys, John wiley and sons, Toronto, 1972.
(非)特許文献2
Superalloys 718, 625, 706 and various derivatives : proceedings of the International Symposium on Superalloys 718, 625, 706 and Various Derivatives, held June 26-29, 1994 / edited by Edward A. Loria
しかし、それら合金中において、HCP基化合物は、積極的に強化相として利用されるよりはむしろ、Ll2型化合物相(γ'相)を析出させる際の副産物として存在している場合が多く、多くの場合、HCP基化合物はその体積率ができるだけ小さくなるよう、いろいろな方策が検討されているのが実状である。
したがって、HCP基系においても、温度に対応して高強度と成り得る合金系を見出せれば、高温高強度、かつ優れたクリープ特性を備えた新材料を提供し得る。しかし、このような高温高強度の新材料を提供し得る単結晶はこれまで存在しない。
そこで、本発明は、高温高強度で、かつ優れた耐クリープ特性を有する材料を提供し得る金属間化合物、及び当該Ni基合金の製造方法を提供することにある。
これらHCP基化合物においても、特定の結晶方位に荷重を負荷した際には、従来のL1型化合物相と極めて類似の顕著な異常強化現象が発現することを見出した。本発明では、光学式浮遊帯溶融法を用いることにより、NiX(X=Nb,Ti,Snなど)組成を有する各HCP基化合物の単結晶が育成できることを見出し、上記知見に基づきこれら単結晶に適切な結晶方位制御を行なうことにより、優れた高温強度特性を有する新規化合物基高温構造材料として適応が期待できる。
そこで、本発明は、高温高強度、優れた耐クリープ性を併せもつ金属間化合物の提供、及び当該Ni基合金の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、発明者らは、HCP基型金属間化合物相に着目し、これらの異常強化現象について鋭意研究した結果、本発明の金属間化合物、及び当該Ni基合金の製造方法を見出すに至った。
本発明のNi基合金は、強化相としてHCP基型金属間化合物を含有することを特徴とする。
また、本発明のNi基合金の好ましい実施態様において、HCP基化合物が、HCP基NiX型化合物(但し、Xは、Nb、Ti、Snから選択される少なくとも1種である。)である。
また、本発明のNi基合金の好ましい実施態様において、HCP基化合物が、DOa型、DO24型、又はDO19型からなる群から選択される少なくとも1種の構造からなることを特徴とする。
また、本発明のNi基合金の製造方法は、請求項1〜3項のいずれか1項に記載のNi基合金の製造方法であって、HCP基化合物を構成する各相が単相、もしくは主たる構成相として存在する組成を有する母合金を溶融し、前記母合金に対して結晶方位制御を行って金属間化合物結晶を得て、前記金属間化合物結晶へ一定結晶方位に荷重を負荷することによって得ることを特徴とする。
また、本発明のNi基合金の製造方法の好ましい実施態様において、前記結晶方位制御を、浮遊帯域溶融法により行なうことを特徴とする。
また、本発明のNi基合金の製造方法の好ましい実施態様において、前記結晶方位制御された金属間化合物結晶が、単結晶又は柱状晶であることを特徴とする。
また、本発明のNi基合金の製造方法の好ましい実施態様において、前記一定結晶方位が、結晶ステレオ投影図上にて(0001)底面と(2-1-10)柱面との中間方位を中心とした半径30度程度の円内であることを特徴とする。
本発明によれば、各化合物は、いずれも高温度域において、温度の上昇に伴い強度が上昇する特徴的な力学特性を発現し、新材料の高温強化相として利用することができるという有利な効果を奏する。
また、本発明によれば、適切な結晶方位制御を行なうことにより顕著な異常強化現象が発現することに加えて、各化合物結晶は、HCP構造をベースとするので、塑性挙動が強い異方性を示すHCP基単結晶材料を提供することができるという有利な効果を奏する。
本発明にて作製される各HCP基単結晶材料は、適切な結晶方位制御を行なうことにより、顕著な異常強化現象が発現する。これに加えて、各化合物結晶はHCP構造をベースとするため、従来のFCC基化合物と異なり本来的にその塑性挙動が強い異方性を示す。このため、用途に応じて適切な結晶方位選択を行なうことにより、特定方位での加工性、高温高強度、優れた耐クリープ特性を併せ持つこれまでにない高温構造材料部材を提供し得るという有利な効果を奏する。
また、本発明のNi基合金においては、高温での相変態を考慮する必要なく、広い温度範囲で安定した使用が可能であるという有利な効果を奏する。
また、本発明のNi基合金の製造方法によれば、各HCP基単結晶材料を特定の荷重方向から変形させた際に、使用が期待される600℃〜800℃の温度域において、降伏強度は室温時に比べ最大5倍程度も上昇するという有利な効果を奏する。反対に、室温での強度は比較的低いため、室温での加工、取り扱いが容易であり、また、使用する高温度域では十分な強度を付与することができるという有利な効果を奏する。
本発明のNi基合金は、強化相としてHCP基化合物を含有する。ここで、強化相とは、例えば、従来のL1型化合物相(γ’相)を析出させる際の副産物として存在するような相と区別するために用いるもので、一般に母相より高い強度を有する析出物の相(金属間化合物の相)を意味する。
殆どのNi基合金は、Ni固溶体(母相)と析出物(金属間化合物)より構成されている。そして、この析出物は、一般に母相より高い強度もっているので、強化相とよばれている。そして、Ni固溶体(母相)は異常強化現象を示さないので、もし、強化相が異常強化挙動をしめせば、それは超合金の高温強度を確保するという上で大変重要な役割を果たす。
本発明では、強化相としてHCP基型金属間化合物を含有していれば足り特に、限定されるものではない。これは、HCP基金属間化合物についても本発明者らが異常強化現象を見出したことに起因する。この異常強化現象は、若干の不純物元素(例えば、O N Cなど)を含んでいても抑制されることはないため、本発明のNi基合金は、これら不純物元素を含んでいてもよい。
金属元素の結晶構造には、主として体心立法構造(BCC構造)、面心立法構造(FCC構造)、六方最密構造(HCP構造)に大別される。BCC構造は、単純立方構造の体心位置に同じ種類の元素を加えた構造で、単位格子は000と1/2 1/2 1/2の2個の原子からなる。FCC構造は、原子が立方体の隅と面の中心に位置しており、000;1/2 1/2 0;0 1/2 1/2:1/2 0 1/2に4個の原子が存在する構造である。これに対して、本発明において着目したHCP構造は、FCCと同じく、同じ大きさの球を最も密に充填していく場合に現れる構造の一つであり、FCCでは格子の3軸(a)がすべて同じ長さを持ち、互いに成す角が90°であるのに対し、HCPでは2軸(a)の長さは等しいものの、その間の成す角は120°であり、第3軸(c)は両a軸に対して直行するという特徴を有している。
HCP基化合物相を含む可能性がある実用超合金としては、Inconel 718, Inconel 706, Incoloy 901などが挙げられる。しかしながら、これら従来型の超合金中のNb、Ti等の元素はFCC構造をベースとした一般的な強化相であるγ'(ガンマプライム)、γ''(ガンマダブルプライム)、を析出させる目的に添加されており、実際、例えばInconel 718中ではNi3Nbは使用温度域ではγ''として存在し、使用されている。そして、これらγ'、γ''相は安定相ではなく準安定相であるため、温度が上昇するとNi3NbはHCPベースのD0a構造へ(δ相)、Ni3TiはD024型構造(η相)へと相変態する可能性が考えられる(Inconel 718では915℃、Inconel 706では885℃と言われている。)。
しかしながら、従来はこの相変態温度が、超合金のほぼ使用限温度だと考えられている。なぜなら、このとき析出する、安定相であるδ相やη相はHCP構造をベースとするため、FCCをベースとするNi固溶体母相との格子の整合性が低く、また母相中に均一に球形の形状で析出しない(Ni3Nbは針状、ウッドマンステッテン組織をとる)ことから、高温強度、クリープ強度の低下をもたらすからである。
このことから、δ相やη相は純粋な強化相とはみなされず、その単体の力学特性についてはほとんど評価されていないのが現状であった。
これに対して、本発明者らはこのδ相やη相の力学特性について、単結晶を用いて評価を行い、その結果、適切な結晶方位の制御を行うことにより、これらの相も、γ'(ガンマプライム)と同様の異常強化現象を発現し、また十分な延性も得られることから、強化相としての積極利用が可能であることを初めて見出した。
これによって、はじめからHCP構造をベースとするδ相やη相をベースとした合金設計を行なうため、従来のような高温での相変態を考慮する必要がなく、広い温度範囲で安定した使用が可能であるという利点を有することとなる。
また、HCP基型金属間化合物としては、HCP基NiX型金属間化合物(但し、Xは、Nb、Ti、Snから選択される少なくとも1種である。)を挙げることができる。
上記HCP基型金属間化合物は、好ましい態様において、DOa型、DO24型、又はDO19型からなる群から選択される少なくとも1種の構造を取り得る。DOa型の例としては、Ni3Nbを挙げることができ、DO24型の例として、NiTiを挙げることができ、又はDO19型の例としては、Ni3Snを挙げることができる。なお、ここでは、DOa型構造をもつNi3Nbについても、HCP系に含めて考えることとする。すなわち、DOa型構造をもつNi3Nbについては、結晶学的に厳密にはHCP系ではなく斜方面体結晶に属するが、原子の種類(Nb、Ni)を無視し、原子配列のみに着目すると、HCPと全く同一の配置となっていることが分かる。このようなことから、ここでは、DOa型構造をもつNi3Nbについても、広義のHCP基に含めて考える。
次に、本発明のNi基合金の製造方法について説明する。本発明の方法によれば、上記本願発明のNi基合金の製造方法であって、HCP基金属間化合物を構成する各相が単相として存在する組成を有する母合金を溶融し、前記母合金に対して結晶方位制御を行った金属間化合物結晶を得て、前記金属間化合物結晶へ一定結晶方位に荷重を負荷することによって得られる。
HCP基金属間化合物を構成するのは、上述で説明したHCP基NiX型金属間化合物を意味し、上述の説明がそのまま本願発明のNi基合金の製造方法に適用される。例えば、DOa型-NiNb,DO24型-NiTi、DO19型-Ni3Sn各相が単相として存在する組成を有する母合金を使用することができる。溶融の方法は、母合金の成分にもより、特に限定されないが、例えば、1400℃程度にて、8時間から48時間の制御により結晶を育成することができる。
また、得られた母合金に対して結晶方位制御を行って当該金属間化合物結晶を得ることができる。
まず、本件金属間化合物結晶の変形挙動について説明すれば、以下のとおりである。結晶が変形する際には、局所的な原子の移動が起こるが(この局所的な原子の移動を転位と呼ぶ)、その際、転位は、結晶中の特定の面上を特定方向に動く。この特定面と特定方向の組み合わせをまとめて一般に「すべり系」と呼ぶ。本発明者らは今回、各HCP基化合物中で活動するすべり系を実験により明らかにし、その結果、幾何学的なすべり系の分類として1.底面すべり系、2.柱面すべり系、3.双晶変形の三種の変形モードの活動を明らかにした。
具体的にはNi3Nbでは2種の底面すべり「(010)[100], (010)[001]」、2種の柱面すべり「(001)[100], {201}<102> 」および、3種の双晶系「{211}<10 7 13>, {011}<011>, {012}<021> 」が活動する。またNi3Ti、Ni3Snでは、1種の底面すべり「(0001)<1120>」と1種の柱面すべり「{1010}<1210>」が活動する。
このうち、各結晶において、特定の底面すべり系(NiNbでは(010)[100], Ni3Ti、Ni3Snでは(0001)<1120>、両者は表記法は違うものの結晶幾何学的には同一のすべり系である。)が活動する際には、特に顕著な異常強化現象を発現することを見出した。
このことから、底面すべり系が示す優れた異常強化特性を最大限に発揮させるためには、他の活動すべり系の活動を抑制させる方策をとることが好ましい。つまり、底面すべり系以外のすべり系が活動するような方向へ応力が負荷されるのを防げばより効果的に異常強化現象を引き出すことが可能となる。このことが、本発明において「荷重軸方位の制御が必要」である理由であり、その結果として「底面すべり系を単独で活動させる」理由でもある。
また、結晶方位制御とは、基本的には特定の結晶方位(底面すべり系が優先的に活動する方位)に荷重を与えること、を意図し、さらに最終的には、そのような方向に使用時に優先的に荷重がかかるように考慮して本発明のNi基合金からなる製品の成型を行なうことを意図する。
但し、例えば実際にタービンブレードの長手方向(一番荷重がかかる方向)が(2-1-10)と(0001)の中間方向(半径30度程度の円内を含む。)に平行になるように制御したタービンブレードを作製しようとすると、必然的に、結晶育成段階で、出来るだけ結晶の成長方向をその方位に近い方向になるように制御してやる必要があり(そうでないと大きなタービンブレードは作れない)、実際上は、試料成型加工時はもちろんのこと、それ以前の結晶育成段階から「結晶成長方向の方位制御」が必要となる場合が多い。これを解決するために、具体的には特定の方位を持った種結晶を用いて結晶を育成する。例えばこのことは、FZ法などで実現可能である。
好ましい実施態様において、前記結晶方位制御を、浮遊帯域溶融法により行なうことができる。浮遊帯域溶融法とは、FZ法とも呼ばれる。一般に、大型の大型の単結晶を作製する場合に、引上げ法と共に通常用いられる。前記結晶方位制御された金属間化合物結晶は、後工程での荷重負荷時において、金属間化合物に優れた特性を発揮させる(活動すべり系を制御する)という観点から、単結晶又は柱状晶で構成されることが好ましい。
要するに、本願発明の製造方法においては、金属間化合物の優れた特性を発揮するために、結晶方位制御が重要であり、これを実現する観点から、単結晶を育成することが好ましいが、方位制御されれば、単結晶である必要はない。
また、例えば、Ni3Sn系においては、FZ後にも単結晶にはならず、結晶内では、成長方向(熱流方向)に比較的大きな結晶粒が細長く伸びて成長しているのが観察される(すべての結晶粒が成長方向へ伸びている。いわゆる柱状晶)。この際、測定の結果、各結晶粒間の相対方位差は約10度以下と小さいために、単結晶でなくとも、荷重軸領域を制御することができ、結果として異常強化現象の発現を促すことができる。
実際のタービンブレードなどの製品成形法においては、適切な結晶方位を有する種結晶を用いて、一方向性凝固を行い、大きい単結晶(方位制御柱状晶)を得ることができる。
最終的には、本発明のNi基合金は、前記金属間化合物結晶へ一定結晶方位に荷重を負荷することによって得られる。また、本発明の金属間化合物の製造方法の好ましい実施態様において、前記一定結晶方位が、結晶ステレオ投影図上にて(0001)底面と(2-1-10)柱面との中間方位へ半径10度程度の円内である。
すなわち、異常強化現象を最大限に発揮させる方位、つまり底面すべり系を単独で活動させる方位としては、各結晶中、共通の領域としては(0001)底面と、(2-1-10)柱面との中間方向(Ni3Nbでは[100]と[010]の中間方向、両者は結晶幾何学的に同義)であるが、(0001)底面と、(2-1-10)柱面の中間から半径10程度の円内であっても好適な異常強化現象を付与することが可能である。また、NiTi、NiSnにおいては、活動する他のすべり系の種類が少ないので、さらにもう少し広い領域、例えば、半径10〜30程度の円内でも効果的な異常強化現象を付与することが可能である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
実施例1
状態図上にてDOa型-Ni3Nb、DO24型-Ni3Ti、DO19型-NiSn各相が単相として存在する組成(実施例はすべて化学量論組成 Ni-25.0at。%Xを選択)を有する母合金を溶製し(今回はアーク溶解法を用いて準備)、この母合金を用い、光学式浮遊帯溶融法(FZ法)により単結晶を作製した。この際、不活性ガス雰囲気中、比較的遅い速度(実施例では、2.5mm/h〜10mm/h)にて浮遊帯域を移動させ、単結晶を育成した。母合金組成によっては、この手法によっても単結晶が得られない場合もあるが(実施例においてはNiSnの場合)、その際においても、結晶は比較的低角な粒界を持つ粗大な柱状粒から構成されることから、後述するような結晶方位の制御が可能であった。この得られた結晶より、用途に応じた特性を引き出すべく、適切な結晶方位を有した材料の成型を行なう。例えば、荷重負荷方向が、結晶ステレオ投影図上にて(0001)底面と(2-1-10)柱面との丁度中間方向となるように成型を行なうと、荷重負荷の際に、試料中にて底面すべり系のみが活動するようになり、その結果、図1に示すような顕著な異常強化特性を引き出すことができる。図1は、D0a型NiNb、DO24型NiTi、DO19型Ni3Sn各単結晶試料における降伏応力の温度依存性を示す。荷重負荷方向は、結晶ステレオ投影図上にて(0001)底面と(2-1-10)柱面とのちょうど中間方向となるように制御し、試験を行なっている。この方位では、いずれの結晶中においても荷重負荷に伴い底面すべり系が活動し、その結果、温度の上昇に伴い、材料強度(降伏応力)が上昇する、いわゆる異常強化現象が発現する。ピーク時の降伏強度は、室温時に比べ最大5倍程度もの増大を示す。
また、例えば荷重軸を[0001]方向へ取った際には、活動可能な変形モードを極めて限定させるようになるため、極めて高い材料強度、優れたクリープ特性を発現することが予想される。
本発明にて作製された各HCP基単結晶材料を特定の荷重負荷方向から変形させた際、図1に示すように、使用が期待される600℃〜800℃の温度域において、降伏強度は、室温時に比べ最大5倍程度も上昇する。室温での強度が低いため、室温での加工、取り扱いが容易であり、また使用する高温域では十分な強度を付与することができる。
また、図2は、種々の結晶構造(DO19、D024、D0aなど)を示す。図2中に示される荷重軸方向から、荷重を加えた場合には、良好な異常強化現象を発現させることが今回判明した。図2は、ステレオ投影図と呼ばれる、結晶中の方位を示す地図である。0001 1010 2110 で囲まれたものが、六方晶系(Ni3Ti, Ni3Sn)におけるステレオ投影図で、100 010 001 で囲まれたものが斜方晶系(Ni3Nb)におけるステレオ投影図であり、それぞれの指数が結晶方位を示している。例えば0001上なら、[0001]方向を示す。そして図中丸で示しているのが、今回選択した荷重軸方位に対応する。
なお、本実施例において、圧縮試験としては2×2×5mm3 の角柱試験片および引張試験としてはゲージ部 1×2×5 mm3の板状試験片、という非常に小さなものを用いて試験を行ったので、FZ法により作られた単結晶(12mmφ×10cm)からは、放電加工機により容易に試験片を切り出すことが出来た。
航空宇宙関連分野、ガスタービン翼、ボイラーなどの高温耐熱性構造部材などを必要とする分野に広く利用可能である。
図1は、D0a型Ni3Nb、D024型NiTi,D019型NiSn各単結晶試料における、降伏応力の温度依存性を示す。荷重負荷方向は、結晶ステレオ投影図上にて(0001)底面と(2-1-10)柱面とのちょうど中間方向となるように制御し、試験を行なっている。この方位では、いずれの結晶中においても荷重負荷に伴い底面すべり系が活動し、その結果、温度の上昇にともない、材料強度(降伏応力)が上昇するいわゆる異常強化現象が発現する。ピーク時の降伏強度は、室温時に比べ最大5倍程度もの増大を示す。 図2は、種々の金属間化合物の結晶構造(DO19、D024、D0aなど)、ならびに、今回、異常強化現象の発現を確認した各結晶中の荷重軸方位を示す。右に示すステレオ投影図上にて、(0001)底面と(2-1-10)柱面との中間方位(Ni3Nbにおいては(010)と(100)との中間、両者は幾何学的に同一。)を中心とした半径10〜30度程度の円内で荷重負荷することにより、図1に示した顕著な異常強化現象が発現する。

Claims (3)

  1. HCP基化合物を構成する各相が単相、もしくは主たる構成相として存在する組成を有する母合金を溶融し、前記母合金に対して結晶方位制御を行って金属間化合物結晶を得て、前記金属間化合物結晶へ一定結晶方位に荷重を負荷することによって得るNi基合金の製造方法であって、前記一定結晶方位が、結晶ステレオ投影図上にて(0001)底面と(2-1-10)柱面との中間方位を中心とした半径10〜30度の円内であることを特徴とするNi基合金の製造方法。
  2. 前記結晶方位制御を、浮遊帯域溶融法により行なう請求項1記載の方法。
  3. 前記結晶方位制御された金属間化合物結晶が、単結晶又は柱状晶である請求項1又は2項に記載の方法。
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