JP3725810B2 - 微量元素の測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶液中の炭素、窒素、あるいは硫黄などの微量非金属元素の定量分析方法に関し、特に半導体分野で使用される広範囲のpHを有するエッチング試薬中の非金属元素、特に全有機炭素の定量分析に適した微量元素の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工程において使用される超純水やエッチング溶液(HF,NH4F)においては、その溶液中に存在する微量の有機物が製造工程に影響を及ぼすことから、その含有量を正確に把握すること、あるいは極めて微量な有機物であっても、その存在を確実に把握することが必要となる。特に、近年の著しい半導体の高集積化に伴い、より高感度に超純水中や各種試薬中の微量有機物を測定し、その存在や濃度を把握することが求められている。
従来、水溶液中の有機物濃度を測定する場合、有機物を個別に定量することは極めて困難なため、全有機炭素量(Total Organic Carbon:TOC)として検出されていた。有機物の酸化方法や生成した二酸化炭素の検出方法には、以下に述べるようないくつかの種類がある。酸化方法としては、乾式酸化(燃焼法)と湿式酸化(紫外線酸化法、高圧加圧湿式酸化法、加熱酸化法)があり、検出方法としては、有機物が酸化されることによる水の導電率の変化を検出するものや、有機物の酸化により生成された二酸化炭素を非分散型赤外線ガス分析計(NDIR:Non−Dispersive Infrared Gas Analyzer)で検出する方式が知られている。
【0003】
燃焼酸化/赤外線式TOC分析法とは、試料水溶液に酸を添加してpH2以下にし、酸性曝気法と呼ばれる方法を利用する。すなわち、通気して無機体炭素(Inorganic Carbon:IC)を二酸化炭素として揮散・除去後、試料水の一定量をキャリアガスとともに、高温に保持された全炭素測定管に送り込み、有機物中の炭素を燃焼分解して、二酸化炭素とした後、該二酸化炭素の濃度をNDIRで測定してTOC濃度を求める方法である。
【0004】
湿式酸化/赤外線式TOC分析法とは、試料水に酸を添加してpHを2以下にし、通気してICを二酸化炭素として揮散・除去後、試料水の一定量をペルオキソ二硫酸塩などの酸化剤およびキャリアガスと共に湿式酸化反応器に送り込み、有機物中の炭素を二酸化炭素とした後、該二酸化炭素の濃度をNDIRで測定してTOC濃度を求める方法である。ここで、湿式酸化反応器とは、例えば200℃、20kgf/cm2の強い酸化雰囲気で有機物を二酸化炭素に分解するものや、低圧水銀ランプを光源とし、波長185nmおよび254nmを主波長とする低波長の放射率の多い紫外線を照射して有機物を酸化分解するもの、またはこれらを組み合わせたものなどがある。
【0005】
湿式酸化/導電率式TOC分析法とは、上記湿式酸化/赤外線式TOC分析法と同様に有機物の酸化分解を行なった後、分解によって生成した二酸化炭素の濃度を試料水の導電率の変化から求める方法である。具体的には紫外光が照射されている間の超純水の導電率変化を時間の関数としてモニターし、前記導電率の二次微分値が実質的にゼロに達した時間をT,この時間における導電率の一次微分値に乗じ、この結果得られた値と紫外光照射前に測定した初期導電率値とを、時間Tにおいて測定された導電率の値から差し引いて得られた値(ΔC)を基に有機炭素量を求める方法である。
【0006】
上述の従来のTOC分析方法には、下記のような様々な問題があった。まず、従来のTOC分析方法では、酸化方法、酸化条件、検出方法などの制限によって定量範囲が限定され、試料水の希釈や濃縮操作を行なわずに、広い濃度範囲のTOC分析を行なうことができないという制約があった。
すなわち、燃焼酸化/赤外線式TOC分析法においては、一度に多量の試料水を注入すると燃焼炉の温度が低下して分解率が低下するので、試料水の注入量が制限されるため、有機物濃度の低い試料水の分析はできない。
また、一般に湿式酸化法は、燃焼酸化法と比較すると有機物の分解率が低いため、純水などの有機物濃度が低い試料水に適しており、有機物濃度の高い試料水の分析には不向きである。
また、上述の従来のTOC分析方法では、検出にNDIRや導電率計のいずれかを用いた場合においてもICとTOCを区別して検出できないため、前処理として試料水のpHを酸性として、通気してICを除去する工程は不可欠であり、分析方法及び分析装置を複雑にしている。加えて、試料水中に低沸点の有機物が含まれる場合には、このIC除去工程によって、ICばかりでなく低沸点有機物の一部または大部分も同時に除去されてしまうため、TOC測定値の誤差の原因となっている。
また、上述の従来のTOC分析方法では、原理から見て、超純水のような極めて不純物濃度の低い水に限定して適用できるものであり、一般の酸試薬やアルカリ試薬には適用できず、薬液中の炭素分析などは困難であった。
【0007】
一方、従来微量分析装置として、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)が注目を集めている。この装置は無機元素の検出に用いるもので、吸光光度法や蛍光分析法に比較して高感度であり、定量範囲が広く、高感度な検出(ppqレベル)が可能なため、特に連続流れ系や循環系などの流通系における高感度検出方法として注目されている。
しかしながら、上記誘導結合プラズマ質量分析装置は、物質の質量によって分析するものであるため、質量が同じ異種の物質を分離して定量することが困難であるという欠点があり、その適用には十分な配慮が必要であった。すなわち、半導体試料の分析において、Cr,Fe,Niなどを分析する場合に、種々の妨害イオンが存在し、これらの着目元素の定量分析を困難にしていた。すでに知られる妨害イオンとしては、Cr(質量数52)に対する40Ar12C、Fe(質量数56)に対する40Ar16O、Ni(質量数58)に対する40Ar18OなどのAr関連分子イオンがある。誘導結合プラズマ質量分析では、キャリアガスとしてArが用いられているので、Arに関連した妨害イオンが発生するのである。
このように、誘導結合プラズマ質量分析装置においては、妨害イオンによる目的元素の定量の信頼性および検出能力の低下に問題があることから、この手段は組成が既知の比較的簡単な組成のマトリックス溶液のような試料を高精度に分析することを主眼として採用される方法であり、この手段を半導体製造工程における排水のような複雑な組成を有するマトリックス溶液試料の分析に適用するためには装置が複雑化するという欠点があり、従来全く検討されてもいなかった。
そして、微量非金属元素の高感度定量分析において、この誘導結合プラズマ質量分析装置に匹敵するような高感度な測定手段が無かった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来の微量分析における上記事情に鑑みてなされたもので、試料中に存在する妨害イオン等の影響を排除して、超純水以外にも、pHの範囲が広い酸性、アルカリ性試薬全般に渡って、測定可能である微量非金属元素の分析方法を提供することにある。
また、本発明は必ずしも試料の希釈や濃縮といった操作を行なわなくとも広い濃度範囲にわたる微量非金属元素の定量分析を可能とする微量非金属元素の測定方法をも提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述した従来のTOC分析方法及び分析装置の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、広範囲のpHを有する様々な水溶液において、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)を適用した場合、ICP−MSによって計測される質量スペクトルが従来法による測定値と広いTOC濃度範囲にわたって、優れた相関を示すことを見出し、本発明に至ったものである。また、同時に水溶液中に存在する窒素や硫黄も同様の質量スペクトルを効果的に利用することにより、測定が可能であることを発見した。即ち、本発明は、ICP−MS法を用いて純水をはじめ、酸溶液あるいはアルカリ溶液中の全有機炭素、全有機窒素、全硫黄の定量を行なうことを特徴とする微量元素の測定方法を提供するものである。
【0010】
すなわち、本発明は、溶液中に存在する炭素、窒素、硫黄の少なくともいずれか1つである微量非金属元素を測定する微量元素の測定方法において、
分子イオンやクラスターを生成する四重極型誘導結合プラズマ質量分析装置を用い、その高周波出力数を1.2kW〜1.6kWに設定して、溶液中の前記微量非金属元素の定量を行うことを特徴とする微量元素の測定方法である。
さらに、上記本発明は、全有機炭素、全有機窒素の微量元素の測定に適用することもできる。
【0011】
前記本発明において、前記分子イオンおよびクラスターは、キャリアガス中のアルゴン、水、炭素、窒素、及び硫黄の少なくとのいずれか1つから発生するものを用いることができる。
【0013】
以下に、本発明について、発明を完成するに至った経緯をもとに説明する。
前述したように、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)を利用した無機元素の検出方法が、吸光光度法や蛍光分析法に比較して高感度であり、定量範囲が広く、高感度な検出(ppq(fg/g)レベル〜ppt(pg/g)レベル)が可能なため、注目を集め、種々の試料への適用が検討されている。
本発明者らは、半導体製造工程における各種試料において、妨害イオンの影響を回避し、分析検出限界を改善する問題を検討している過程で、従来Crに関しては40Ar12Cの妨害が大きいと考えられていたが、本発明者らが鋭意検討した結果、Crの質量数52に関しては36Ar16Oによる妨害の方が支配的であることを見出し、この妨害イオンの影響を排除するには低分解能(四重極)質量分析装置を使用する場合には高周波出力数を最適化すること、及び、高分解能(二重収束)質量分析装置を使用する場合には、質量分解能を最適化すればよいことを見いだした。
【0014】
この手法は、各種金属イオンの分析に適用するために検討した手法であるが、この手法をTOCの分析に適用しても、同様に、金属イオンなどの妨害イオンの影響を排除して分析できることに着目してさらに検討をした結果、広範囲のpHを有する様々な水溶液に、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)を適用した場合、ICP−MSによって計測される質量スペクトルが従来法による測定値と広いTOC濃度範囲にわたって、優れた相関を示すことを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
また、半導体の製造工程や分析では、酸やアルカリが用いられていることが多く、炭素が含まれていることも多い。しかしながら、従来の誘導結合プラズマ質量分析では、このような複雑な組成の試料について全く検討されていないため、炭素、窒素、硫黄が質量分析において、どのようなメカニズムで検出されるかは全く認識されていなかった。
しかし、本発明者は詳細に研究した結果、分析装置内で上記炭素、窒素、硫黄に由来する各元素と誘導結合プラズマ質量分析装置のキャリアガスであるArまたはマトリックス構成原子とが、クラスターイオンを形成し、これを利用することにより、誘導結合プラズマ質量分析装置で測定可能となることを発見した。そして、この分析は従来の超純水のみならず、酸性やアルカリ性試薬中の炭素などの非金属不純物にも適応できることを見出した。
【0015】
そこで、上記分析のクラスターイオンを形成すべく鋭意検討した結果、低分解能型(四重極)ICP−MSでは、高周波出力数を1.2kW〜1.6kWに設定することによって最適なクラスターイオンを生成できること、高分解能型ICP−MSでは、質量分解能を2000〜3500に設定することにより、マススペクトルにおける、例えばArCとArOやCrの各ピークとの分離が可能となることが判った。そして、それにより、Ar分子イオンや各金属イオンによる分析妨害の影響を排除でき、従って炭素などの微量非金属の検出感度を非常に向上させることができることが分かった。
従って、本発明の微量非金属元素の分析方法は、超高感度の分析が要求される半導体薬液等の分析に特に好適である。また、本発明の分析方法では、上述したように、分子妨害イオンの影響を排除できるので、例えばフッ酸含有液体の分析に特に好適である。また、低分解能型、および二重収束型質量分析装置は一般に高感度なので、この装置を使用すれば、微量非金属元素を高感度に測定することが可能となる。また、高周波数や質量分解能を最適条件に設定することにより、分析元素とAr系妨害イオンとを更に明確に分離することが可能となり、検出感度も向上する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明で使用する上記誘導結合プラズマ質量分析装置は、高周波電磁波により生じたプラズマを原子の励起に使う手法であり、多元素を同時にしかも高感度で測定できるという特徴を持っている。
この誘導結合プラズマ質量分析装置は、プラズマトーチ部、質量分析部、及び検出器から構成され、試料は装置内をArなどのキャリアガスによって移送されるようになっている。
プラズマトーチ部には、高周波電力が投入され、約8000℃の高温プラズマが生成する。このプラズマトーチ部に、試料水がネブライザによって霧状に注入され、イオン化される。生成したイオンは、次いで、質量分析部にキャリアガスによって移送される。
質量分析部は、上記プラズマトーチ部から移送されてくるイオンを質量によって分離する機能を果たすものであり、その構造としては、二重収束型、及び四重極型が知られている。二重収束型は、扇状磁場と静電場を用い、ドリフトチャンバーの出口に、磁場を持つ第二の収束スリットが組み合わされて構成されている。これにより、フラグメントビームが微小な断面積中に束縛され、フラグメント間の重なり合いが減少され、装置は複雑となるものの、高分解能が得られるという特徴を有する。
一方、四重極型の分析装置は、4本の電極を配置した電場においてイオンを分離するものであり、分解能は高くないものの、装置としては、簡単な構成とすることができるという特徴を有している。
また、検出器は、質量分析部において、分離されたイオンを計数するものである。
これらの装置は、日刊工業新報社発行の「誘導結合プラズマ質量分析法」という文献に詳細に説明されている。
【0017】
本発明の分析方法においては、質量分解能を従来よりも遥かに高く設定するため、上記誘導結合プラズマ質量分析装置としては、高分解能を有する二重収束型が好ましいが、比較的低分解能であるとされている四重極型であっても高周波出力を最適化して分子イオンもしくはクラスターを生成させることにより、本発明において十分使用が可能である。
【0018】
本発明の分析方法においては、上記誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて、炭素、窒素、及び硫黄を分析するものであるが、これらの非金属微量元素を妨害イオンの影響を排除して検出限界の高い分析するためには、誘導結合プラズマ質量分析装置の操作条件を最適化することによって実現できる。
すなわち、上記誘導結合プラズマ質量分析装置において、低分解能型(四重極)ICP−MSでは、高周波出力数を1.2kW〜1.6kW、更に好ましくは1.3kW〜1.5KWに設定することで、また、高分解能型ICP−MSでは、質量分解能を2000〜3500、更に好ましくは2300から3000に設定する。これにより、上記Ar関連分子イオンの分析妨害を排除でき、従って高感度分析を行なうことが可能となる。高周波出力数が1.1kW以下では、ArOやArCの分子イオン生成効率が減少するため、質量分解能が2000未満では、マススペクトルにおいて、分析対象イオンと妨害イオンとの各ピークの分離が不完全で、妨害イオンの影響を受けるため、この場合は測定に補正が必要となる。また、高周波出力数が1.8kWおよび質量分解能が3500を超えると、イオン透過率の減少に伴い再び検出下限の悪化をきたすのみならず、分析に長時間を要する。好ましくは、低分解能型(四重極)ICP−MSでは、高周波出力数を1.2kW〜1.6kW、更に好ましくは1.3kW〜1.5KWに設定することで、また、高分解能型ICP−MSでは、質量分解能を2000〜3500、更に好ましくは2300から3000に設定することがよい。
【0019】
本発明の炭素、窒素、硫黄の測定は、炭素化学種、窒素化学種、硫黄化学種含有液体を対象に行なわれる。上記炭素化学種は、炭素元素を含む化学種であればイオン、分子、その他のいかなる形態のものも含まれる。具体的には炭素そのもの(C)、有機炭素化合物(CH2FCOO−)、フルオロカーボン化合物などが挙げられる。上記窒素化学種は、窒素元素を含む化学種であればイオン、分子、その他のいかなる形態のものも含まれる。具体的には、窒素そのもの(N)、窒素酸化物(NO2,NO3)、また窒素化合物として、アンモニア態窒素(NH4 +−N)、亜硝酸態窒素(NO2 ――N)、硝酸態窒素(NO3 ――N)などの無機態窒素と有機体窒素などが挙げられる。上記硫黄化学種は、硫黄元素を含む化学種であればイオン、分子、その他のいかなる形態のものも含まれる。具体的には、硫黄そのもの(S)、硫黄酸化物(SO2,SO3)などが挙げられる。
【0020】
本発明の分析法を実施するには、例えば上記誘導結合プラズマ質量分析装置を所望の質量分解能に設定し、適当なインジェクターなどで、試料溶液を上記誘導結合プラズマ質量分析装置に導入すればよい。
また、上記非金属元素として有機物質に起因する非金属元素を分析する場合には、試料溶液を前処理して、無機物起因の炭酸ガスなどの非金属元素を除去することによって可能である。この無機物起因の非金属元素の除去方法は、従来公知のTOCの湿式酸化分析において採用されている手法を使用することができる。
【0021】
このように本発明の分析方法は妨害イオンを排除できるので、分析対象は特に限定されるものではなく、あらゆる製造工程で使用される炭素、窒素、硫黄含有薬液に対し適用できる。従来これらの非金属元素とキャリア元素であるアルゴンとの分子イオンもしくはクラスターの妨害イオンと考えられる52Cr,24Mg,44Ca,54Mn,96Mo,もしくは64Znなどが存在するマトリックス溶液試料の分析にも適用できる。さらに、特に、上記半導体用薬液などのフッ酸含有液体はデバイス製造の基礎工程で使用されるので、これらに本発明の分析方法を用いると有利である。
【0022】
本発明の分析方法の対象元素種は、非常に広範囲である。特に、上述のように本発明の微量元素分析方法では、元素分析に際し、各種Ar系イオンの妨害を除去できるので、従来高感度で測定できなかった種々の元素も、本発明の分析方法では分析対象元素となり得る。例えば、Cは52CrでArCをもちいることで、Nは54Mnで、Sは96Sのクラスター分析が可能となる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明に関わる実施例および比較例により、更に詳細に本発明を説明する。
【0024】
(実施例1) 高周波出力と検量線の関係調査
超純水に有機炭素として、シュウ酸(和光純薬製)を添加し、検量線作成用標準液を調整した。次いで、この標準液を低分解能誘導結合プラズマ質量分析装置(セイコー電子工業製SPQ9000)により、高周波出力を0.8KWから1.8kWの11水準に設定し、測定分析を行なった。測定は、各出力において10回ずつ行なった。なお、試料溶液の誘導結合プラズマ質量分析装置への導入は、同軸型石英製ネブライザを使用した。
測定により得られた検量線から質量数52のArCの検出下限を、試料の10回測定した時の3シグマとして算出した。得られた検出下限を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1から明らかのように、質量数52のArCの検出下限は、高周波出力が1.2〜1.5kWで最大値を示し、高感度の測定が行なえることが分かる。
【0027】
(実施例2) 質量分解能と検出感度の関係調査
実施例1と同様に、超純水に有機炭素として、シュウ酸およびクロム化合物を添加し、検量線作成用標準液を調整した。次いで、この標準液を高分解能誘導結合プラズマ質量分析装置(マイクロマス社 Plasma Trace 2)により、質量分解能の設定を1500〜4000の間の6水準に設定し、測定・分析を行なった。測定は、質量分解能の各水準において10回ずつ行なった。なお、試料溶液の誘導結合プラズマ質量分析装置への導入は、同軸型石英製ネブライザを使用した。
測定により得られた検量線から質量数52のArCの検出下限を、試料の10回測定した時の3シグマとして算出した。得られた検出下限を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
表2から明らかなように、質量数52のArCの検出下限は、質量分解能が2000〜3500であれば低い値となっているが、質量分解能が1500と4000では検出下限が高くなっている。
また、質量分解能を2500としたときの52Cr,40Ar12C、36Ar18Oの各イオンカウントのピーク図を図1(a)に示す。比較のため、質量分解能が400である四重極質量分析装置による52Cr,40Ar12C、36Ar18Oの各イオンカウントのピーク図を図1(b)に示す。
上記図1から明らかのように、質量分解能が2500では52Crと36Ar18Oや40Ar12Cの各ピークが明確に分離できていることがわかる。
【0030】
(実施例3) 実試料への適用(超純水、フッ酸含有溶液、フッ化アンモニウム含有溶液)
半導体用グレードの超純水、フッ酸含有溶液(橋本化成製SA−XX級、濃度49%)、フッ化アンモニウム含有溶液をそれぞれ5重量%となるように純水で希釈した。この試料を高分解質量分析装置で測定した結果を表3に示す。炭素がそれぞれ10ppb、5ppm、130ppm含有されていることが分かった。
【0031】
【表3】
【0032】
(比較例1) 超純水試料の分析
実施例3と同様の超純水をTOC装置で分析した結果を、同様に表3に示す。超純水では10ppbの値が得られ、高分解能質量分析装置とよい一致を示している。しかしながら、フッ酸含有溶液、およびフッ化アンモニウム含有溶液は測定することが不可能であった。
【0033】
(実施例4) 実試料への適用 (シリコンウエハー)
200mmのシリコンウエハー表面酸化膜をHFで分解し、実施例2と同様に5%に希釈し、測定を行なった。その結果を表4に示す。シリコン酸化膜中から炭素などが5×1016atoms/cm2検出された。
【0034】
【表4】
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の微量元素の定量分析方法によれば、分析に際し、Ar分子イオンを利用することで、これまで測定することのできなかった炭素や窒素、硫黄などの非金属元素を妨害イオンの影響を排除して測定することができ、従って感度の非常に高い微量元素の分析が可能となる。その結果、例えば、半導体産業においてはデバイス製造での歩留まりや製品の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 52Cr,36Ar18O,40Ar12Cの各イオンカウントのピーク図である。(a),(b)はそれぞれ質量分解能を2500と400に設定した場合である。
Claims (1)
- 溶液中に存在する炭素、窒素、硫黄の少なくともいずれか1つである微量非金属元素を測定する微量元素の測定方法において、
分子イオンやクラスターを生成する四重極型誘導結合プラズマ質量分析装置を用い、その高周波出力数を1.2kW〜1.6kWに設定して、溶液中の前記微量非金属元素の定量を行うことを特徴とする微量元素の測定方法。
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